説明

土壌改良材とその製造方法、及びそれに用いる製造装置

【課題】鶏等の鳥類の糞を原料とし、臭気の発生が少ない製造方法により製造した土壌改良材とその製造方法、及びそれに用いる製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】鳥類の糞を処理タンク2内に投入し、この糞の一部に着火して種火とし、投入した糞を燻すともに、蒸して土壌改良材を生成する土地改良材及びその製造方法。鳥類の糞を投入する処理タンク2を有し、該処理タンク2内への空気を導入するための通気口21を前記処理タンク2の下部に設け、この空気の通気量を調節する流量調整部22を設け、前記処理タンク2内への空気の通気量を調節することにより、処理タンク2内の温度を調節する土壌改良材の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良材とその製造方法、及びそれに用いる製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平成16年11月より施工された改正産業廃棄物処理法により、鶏糞を野積みや素掘り等により、処分することができなくなった。
【0003】
そのため、この法改正後における鶏糞の処分として、鶏糞を発酵させて肥料として再利用したり、鶏糞を焼却して廃棄することが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、鶏糞を発酵させて肥料とする方法においては、鶏糞を肥料化するまでに日数がかかるとともに、その発酵の際に臭気が発生するため、この臭気の消臭対策が問題となる。
【0005】
また、鶏糞を焼却するためには、焼却炉が必要となることから、環境アシスメントや産業廃棄物中間処理場等の許可の取得が必要になるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、鶏等の鳥類の糞を原料とし、臭気の発生が少ない製造方法により製造した土壌改良材とその製造方法、及びそれに用いる製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、鳥類の糞を、その一部に着火して燻すとともに蒸して生成したことを特徴とする土壌改良材である。
【0008】
請求項2記載の発明は、 鳥類の糞を処理タンク内に投入し、この糞の一部に着火して種火とし、投入した糞を燻すともに蒸して土壌改良材を生成することを特徴とする土壌改良材の製造方法である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記処理タンク内の温度調節を、処理タンク内への空気の流入量の調節により行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記処理タンク内の温度を、800℃を越えず、かつ、750℃を越えるように調節することを特徴とするものである。
【0011】
請求項5記載の発明は、鳥類の糞を投入する処理タンクを有し、該処理タンク内への空気を導入するための通気口を前記処理タンクの下部に設け、この空気の通気量を調節する流量調整部を設け、
前記処理タンク内への空気の通気量を調節することにより、処理タンク内の温度を調節することを特徴とする土壌改良材の製造装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記処理タンク内の気体を、水中に導入することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の土壌改良材、及び、その製造方法は、鳥類の糞を、該糞の一部に着火し種火として燻すとともに蒸すことにより製造された土壌改良材中に鳥類の糞に含まれる有用成分である燐酸やカリウム等を多く残存させることができ、この土壌改良材を土壌に撒くことにより土壌を改良することができる。
【0014】
請求項3記載の発明、及び、本発明の土壌改良材の製造装置は、処理タンク内への空気の通気量を調節することにより、処理タンク内の温度を調節するようにしたことにより、処理タンク内の鳥類の糞の燃焼状態や蒸し焼き状態を調節することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、更に、土壌改良材を製造する際に生じる気体(ガス)を、水中に導入することにより、気体に含まれる臭気を除くとともに、気体に含まれるタール成分を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1における土壌改良材の製造装置の前面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図1における処理タンクの部分縦断面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】図1における処理タンクの下部に設けられた下蓋部を示す底面図。
【図6】図1におけるホッパーを処理タンク側から見た図。
【図7】図1における脱臭装置の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態を図に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1乃至図7は本発明の実施例1を示す。
図1は、本実施例1の土壌改良材の製造装置1の前面図、図2は、図1の平面図を示し、該土壌改良材の製造装置1は、処理タンク(釜)2とホッパー3とホッパー昇降装置4と脱臭装置5を有している。
【0019】
前記処理タンク2は、図1乃至図4に示すように、上面形状が円形の円筒部10と、該円筒部10の下部に連設したテーパ部11を有する。前記円筒部10の内側面は、図1乃至4に示すように、その横断面が円形で、かつ、その内径が上下方向に亘って略同一となるように形成されている。前記テーパ部11の内側面は、その横断面が円形で、かつ、その上端の内径が前記円筒部10の下端の内径と同一で、下方に至るほど縮径するテーパ状に形成されて、逆裁頭円錐面に形成されている。
【0020】
前記円筒部10の上部には、上蓋12が固設され、該上蓋12には、処理タンク2の内外を連通する長方形状の投入口13が形成されている。該投入口13の上部には、開閉蓋14が、図1乃至図3に示すように、投入口13よりも処理タンク2の中心側に設けた回転軸14aを中心として上下方向に開閉可能に設けられている。前記開閉蓋14が開いた状態においては、前記投入口13が開口し、開閉蓋14が閉じた状態においては、開閉蓋14により前記投入口13が密閉状態に閉塞されるようになっている。
【0021】
前記開閉蓋14の上部には2本の腕15が、前記開閉蓋14に固設され、腕15の起倒とともに開閉蓋14が開閉するようになっている。前記2本の腕15は、図1乃至3に示すように、相互に平行し、かつ、その腕15の内側端(一端)が開閉蓋14の内側端面と同一に、腕15の外側端(他端)が処理タンク2の外周面よりも外側方向に突出するように設けられている。
【0022】
前記腕15の外側部は、下側方向に曲折して形成され、その外端部にはローラ16が回転可能に設けられている。
【0023】
前記テーパ部11の下部には、テーパ部11から外側方向に突出する通路部17a〜17dがテーパ部11の周方向に略等間隔で4箇所に設けられている。2つの通路部17a,17bは、対向して設けられ、他の2つの通路部17c,17dも、対向して設けられているとともに、一対の対向する2つの通路部17a,17bの軸と、他の2つの通路部17c,17dの軸とが直交するように設けられている。前記各通路部17a〜17dの主体部は略水平に形成され、その外側部は、図1、3に示すように、上方に向かって屈曲して形成されている。
【0024】
前記各通路部17a〜17d内には、図3に示すように、処理タンク2内と連通する通路18が形成され、該通路18の外側端は開口している。前記通路部17a〜17dの外側には、覗き窓19が回転軸19aを中心として開閉可能に設けられている。該覗き窓19は、固定金具20により、閉じた状態を保持できるようになっている。該覗き窓19を閉じて固定金具20でロックすることにより、前記通路18の外側開口部は、密閉的に閉塞できるようになっている。前記覗き窓19は、透明の部材で構成され、該覗き窓19を通して、処理タンク2と通路18内の様子(状態)を目視観察することができるようになっている。
【0025】
前記各通路部17a〜17dには、通気口21が形成され、該通気口21は通路18内と外部とに開口連通している。該通気口21には、外部から前記通路18内へ流入する空気の流通量を調節できる流量調整部22が設けられている。該流量調整部22としては、空気の流通量を調節できるものであればよく、ボールバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブルバルブ等の任意のものを使用することができるが、本実施例においては、ボールバルブを使用した。該流量調整部22による空気の流通量の調整は、手動で行っても良いし、温度センサ23の測定値を基に自動で制御するようにしてもよいが、本実施例においては手動で行うようになっている。
【0026】
前記円筒部10内の温度、実施例においては、処理タンク2内に投入された鳥類の糞より上部の空間の温度を測定する温度センサ23が円筒部10に設けられている。
【0027】
前記テーパ部11の下部(底部)には、処理タンク2の内外を連通する排出口25が形成されている。
【0028】
前記円筒部10の中央部には、図3,図4に示すように、上蓋12を貫通して垂設され、かつ、その軸を中心として回転する回転軸27が設けられ、該回転軸27は、処理タンク2の外部に設けた回転駆動手段であるモータ26により回転される。処理タンク2内に位置する回転軸27には、4本の腕28a,28bが放射方向に突設され、この各腕28a,28bの外端部には上下方向に長い長方形状の羽根29a,29bが固設されている。前記4本の腕のうち、対向する2本の腕28a,28aの長さは、他の対向する2本の腕28b,28bの長さよりも長く設定されている。対向する腕28a,28a相互と、対向する他の腕28b,28b相互は、夫々回転軸27の軸心を通る同一線上に配置され、かつ、2本の腕28a,28aの軸心と、他の2本の腕28b,28bの軸心が直交するように配置されている。前記の構成により、図4に示すように、2本の腕28a,28aに設けられた羽根29a,29aは円筒部10の内周面の近傍に位置し、他の2本の腕28b,28bに設けられた羽根29b,29bは、略前記排出口25の外縁の上部に位置して回動するようになっている。
【0029】
前記各羽根29a,29bは、その作用面が、図4に示すように、腕28a,28bの軸と直交する面に対して傾斜し、かつ、羽根29a,29bの回転方向の先端が回転軸27側に、他端が外側方向に位置するように設けられている。また、前記羽根29a,29bの長手方向が、図3に示すように、鉛直方向となるように設けられている。
【0030】
前記排出口25の下部には、図3、5に示すように、コ字状案内溝を形成した2つの案内部30,30が、夫々の凹部を内側に向くようにして平行に、かつ、処理タンク2の横方向(図2の前後方向)に設けられている。該案内部30,30の案内溝間には下蓋31が、案内部30に沿って摺動可能に設けられている。該下蓋31の下面には、図3、5に示すように、連結具32が固設され、該連結具32の内部には、その横方向に貫通するねじ穴32aが形成され、該ねじ穴32aには雌ねじが刻設されている。
【0031】
前記処理タンク2の下部には、雄ねじを軸方向全体に亘って刻設した雄ねじ体33が、前記連結具32のねじ穴32aに螺挿して前後方向に配置され、かつ、回転可能に設けられている。そして、処理タンク2の下部に設けられた回転駆動手段であるモータ34の正逆回転により、雄ねじ体33が正逆回転するようになっている。これにより、雄ねじ体33を正逆方向に回転することにより、連結具32、すなわち、下蓋31を横方向(図5のC−D方向)に移動して、下蓋31を開閉作動することができるようになっている。
【0032】
前記テーパ部11の下部には4本の脚35が、鉛直方向に立設されて、処理タンク2を支持している。
前記処理タンク10の上蓋12には排気口36が設けられ、該排気口36には配管37の一端が連結されている。配管37の他端には、図1に示すように、処理タンク2内の気体(空気等)を処理タンク2外へ排出するための排気手段である送風機39が設けられている。該送風機39の送気側には配管40の一端が連結され、該配管40の他端は前記脱臭装置5に連結されている。
【0033】
次に、前記ホッパー3について説明する。
ホッパー3は、図1、2、6に示すように、1対の側板41,41を有し、該側板41,41の処理タンク2側端に第1板42を設け、その反対側端に第2板43が設けられ、前記側板41,41と第1板42と第2板43間の下端には底板44が設けられている。側板41,41と第2板43間の上端には、外側方向に突出する鍔46が形成され、該鍔46は第1板42には設けられていない。前記ホッパー3は、図2に示すように、上部に開口45を有し、ホッパー3の上方からホッパー3内に鳥類の糞を投入できるようになっている。
【0034】
前記側板41は、図1の実線に示すように、ホッパー3が最下端に位置した状態において、その処理タンク2側の辺41aが下方から上方に向かって処理タンク側方向に傾斜する傾斜面に形成され、側板41の処理タンク2とは反対側の辺41bは鉛直方向に形成され、側板41の上側の辺41cが処理タンク2側から反対側方向に向かって下方に傾斜するように形成され、側板41の下側の辺41dが略水平方向となる四角形状に形成されている。
【0035】
前記第1板42は、長方形状に形成され、前記側板41の処理タンク2側の辺41aに沿って、底板44側から開口45側に向うほど処理タンク2側に位置するように設けられている。
【0036】
前記両側板41,41の上部で、かつ、処理タンク2側部には、図6に示すように、第1側腕50が、夫々の側板41から外側方向に突出するように設けられている。第1側腕50の外側部には、ローラ51が回転可能に設けられている。
【0037】
前記両側板41,41の下部で、かつ、処理タンク2側部には、図6に示すように、夫々板部材52が設けられ、該板部材52の処理タンク2側部は、側板41から処理タンク2側方向に突出している。前記板部材52の処理タンク側2部には、夫々貫通穴が形成され、該貫通穴に第2側腕53が挿通され、該第2側腕53の両端は、夫々の板部材52から外側方向に突出している。該第2側腕53の両端部には、ローラ54,54が回転可能に設けられている。この各ローラ54の内側には、チェーン固定部55が、第2側腕53に対して回転可能に設けられている。
【0038】
前記チェーン固定部55には、その軸と直交する方向の両端において、取付部材55aを介して、ローラーチェーン56,56の端部が連結されている。
【0039】
次に、前記ホッパー昇降装置4について説明する。
ホッパー昇降装置4は、1対の第1案内部である第1レール61と、1対の第2案内部である第2レール62と、第1歯車63と、第2歯車64と、回転駆動手段であるモータ65を有している。
【0040】
前記ホッパー3は、図2に示すように、その中心と前記開閉蓋14の中心を結ぶ線が、処理タンク2の中心を通る位置に配置されている。一対の第1レール61は、前記ホッパー3の両側に位置して配置され、かつ、その横断面形状がコ字状に形成されて、その凹部の開口側が内側に、すなわち、ホッパー3側に向くように配置されている。該第1レール61は、上下方向に立設する立上がり部61aと、該立上がり部61aの上部から上方に向うほど、処理タンク2側方向に湾曲する湾曲部61bと、該湾曲部61bの処理タンク2側部から処理タンク2側方向に延在する横移動部61cとで一体に構成されている。両横移動部61cの処理タンク2側部は、図2に示すように、投入口13の両側部に位置するように配設されている。
【0041】
前記1対の第2レール62は、前記1対の第1レール61に対して処理タンク2側とは反対側に隣接して、すなわち、前記ホッパー3の両側に位置して設けられている。該第2レール62は、横断面形状がコ字状に形成されて、その凹部の開口側が内側に、すなわち、ホッパー3側に向くように配置されている。両第1レール61,61間、及び、両第2レール62,62間には、前記ホッパー3が、その1対の側板41が、1対のレール61,62と略平行に位置するように配置されている。また、前記第1側腕50のローラ51が、前記第1レール61の凹部に遊嵌し、前記第2側腕53のローラ54が、前記第2レール62の凹部に遊嵌している。
【0042】
前記第1歯車63は、両第2レール62の下部に夫々1個、計2個設けられている。該第1歯車63は、モータ65により正逆に回転されるようになっている。第2歯車64は、両第2レール62の上部に夫々1個、計2個設けられている。第1歯車63と第2歯車64との間には、前記ローラーチェーン56が架設されている。
【0043】
そして、モータ65を正逆回転することにより、第1歯車63が回転し、ローラーチェーン56が上下方向に移動して、ローラーチェーン56に連結されているホッパー3が、レール61,62に沿って上下方向に移動するようになっている。ホッパー3は、その最下端又は最上端まで移動すると、図示しないセンサが反応して、モータ65の回転が停止するようになっている。
【0044】
次に、前記脱臭装置5について説明する。
脱臭装置5は、図7に示すように、中空の箱型形状の脱臭槽5aを有し、該脱臭槽5a内に水Wが貯留されている。前記配管40の他端が脱臭槽5aの側面における上下方向の中央部に連結されて、脱臭槽5a内に開口されており、処理タンク2内から排出されたガス等の気体が、配管40を通じて脱臭槽5aの側部に設けられた開口部40aから内部に導入されるようになっている。
【0045】
脱臭槽5aの側面には、図1に示すように、電磁弁71が配設され、該電磁弁71には、図示しない水を供給するための配管が接続されている。また、脱臭槽5a内には、図7に示すように、レベルセンサー72が配設されている。
【0046】
脱臭槽5a内の水Wの水位が、所定位置、例えば、前記配管40の開口部40aより若干上部の位置まで達していないと、レベルセンサー72はOFFとなり、電磁弁71が開弁して前記配管を通じて水が脱臭槽5a内に供給され、水Wの水位が、前記配管40の開口部40aより若干上部の位置まで達すると、レベルセンサー72がONとなり、電磁弁71が閉弁するようになっている。
【0047】
脱臭槽5a内には多孔板73が、横方向全体に渡って、かつ、配管40の開口部40aより若干上方に位置して設けられている。前記多孔板73の孔径は、この多孔板73で除去しようとする異物の大きさに応じて任意に設定する。
【0048】
脱臭槽5aの底部には、液体排出口74が設けられ、該液体排出口74には、手動で開閉可能な開閉弁75が設けけられている。また、脱臭槽5aの上部には、気体排出口76が設けられ、該気体排出口76には、配管77の一端が連結されている。配管77の他端には、脱臭槽5a内のガス等の気体を外部へと排出するための排気手段である送風機78が設けられている。送風機78には配管79の一端が連結され、配管79の他端は大気に開口している。
【0049】
次に、前記土壌改良材の製造装置1を用いた土壌改良材の製造方法について説明する。
先ず、図1の実線で示すように、ホッパー3を最下端に位置させた状態で、ホッパー3内に、採卵鶏やブロイラーやうずら等の鳥類の糞90を処理量分投入する。また、電磁弁71とレベルセンサー72の電源を入れ、脱臭槽5a内に水を注入するとともに、その水位が所定の高さとなるようにする。また、処理タンク2の4箇所の覗き窓19は全て閉め、下蓋31を閉めて排出口25を閉口させておく。
【0050】
次に、モータ65を正逆何れかの方向、例えば、正方向に回転させて、ローラ54が連結されている側のローラーチェーン56を上動させると、ホッパー3は、第1レール61の立上がり部61a及び第2レール62に案内されて、図1の実線の姿勢で上方に移動する。そして、ホッパー3が、図1に示す中間位置まで上昇すると、ホッパー3の鍔46の前端部が、開閉蓋14の腕15のローラ16の下面に当接する。その状態から、さらにホッパー3を上方に移動させると、ホッパー3の上部により腕15が上方に持ち上げられ、それとともに開閉扉14の外端側も上方に持ち上げられ、投入口13が徐々に開いていく。
【0051】
更に、ホッパー3が上動すると、ホッパー3側の第1側腕50のローラ51が、第1レール61の湾曲部61bと横移動部61cに沿って処理タンク2側方向に移動し、かつ、第2側腕53のローラ54が、第2レール62に沿って垂直方向の上方に移動するため、図1の最上位置で示すように、ホッパー3の開口45における処理タンク2側部より、その反対側部が上方に持ち上がるようにホッパー3が傾斜してゆき、その傾斜角度が徐々に大きくなる。また、それに伴い、開閉扉14が更に開作動されるとともに、ホッパー3の第1板42における開口45側より底板44側の方が上方に位置するようになり、鳥類の糞90は、第1板42に沿って開口45側に滑り落ち、処理タンク2の投入口13より処理タンク2内へと投入される。
【0052】
投入された鳥類の糞90は、図1に示すように、処理タンク2の円筒部10、テーパ部11及び各通路部17の通路18内にも入り込む。
【0053】
なお、ホッパー3が最上位置に達すると、図示しないセンサが感知して、モータ65が停止して、ホッパー3が最上端で静止する。
【0054】
鳥類の糞90が、全て処理タンク2内へと投入された後に、モータ65を先程とは逆向きに回転させて、ホッパー3を下方へ移動させる。これにより、ホッパー3は、前記とは逆の作動で下降するとともに、開閉蓋14は自重により下方向へ回動し、投入口13は自然に閉塞される。ホッパー3は最下端に達すると、図示しないセンサが感知して、モータ65が停止して、ホッパー3が最下端で静止する。
【0055】
次に、4箇所のうち少なくとも1箇所の覗き窓19を開けて、通路18の外側開口部より、通路18内の鳥類の糞90の一部に着火する。鳥類の糞90は、油脂類を多く含んでいるため、燃料を用いることなく着火することができる。
【0056】
なお、水分が多い採卵鶏の糞の場合には、鳥類の糞とともに、おがくずや籾殻等の水分調整材を投入口13から投入することにより、全体の平均水分量を低下させて、着火させることが好ましい。
【0057】
次に、覗き窓19を閉めて、4箇所のうち少なくとも1箇所の流量調整部22を開けて、通気口21より通路18内を通じて通路18及び処理タンク2内へと空気を流入させるとともに、送風機39、78を起動させる。また、モータ26を回転させて羽根29a,29bにより、処理タンク2内の鳥類の糞をゆっくりと攪拌する。
【0058】
流量調整部22を調節して空気の流入量を調節し、処理タンク2内の鳥類の糞の燃焼を緩やかにし、処理タンク2内の種火が消えない程度にする。
【0059】
また、温度センサ23の測定表示を見ながら手動で、又は、温度センサ23の測定温度に基づいて自動で、4箇所の流量調整部22の開度を手動又は自動で調節して、通気口21より通路18内を通じて処理タンク2内へ流入する空気の量を調節して、鳥類の糞の燃焼を調節しながら処理タンク2内の温度を徐々に上げていき、その温度を、できるかぎり750℃を越えるとともに、1000度、好ましくは800度を超えないように調節する。
【0060】
処理タンク内の温度を、前記の温度に調節することにより、処理タンク2内の鳥類の糞の燃焼を、緩やかな種火の状態として、この種火の状態を維持して熱源とするとともに、鳥類の糞が燻されて大量の煙や水蒸気等が発生し、この水蒸気等により鳥類の糞が蒸し焼き状態となり、土壌改良材が生成される。
【0061】
例えば、処理タンク2内に10tの採卵鶏の糞を投入した場合、着火してから24時間程度の間、上記の空気の流入する量を調節して処理タンク2内の温度を、前記の温度に調節することにより、黄土色(薄茶色)のさらさらとした臭気の少ない土壌改良材を得ることができ、その体積は、投入した処理前の採卵鶏の糞の約1/10に減量した。
【0062】
また、処理タンク2から排出された水蒸気や煙等のガスは、脱臭装置5内の水W中へ導入され、その水蒸気や煙等のガスが水Wと接触することにより、ガスに含まれる臭気が除かれるとともに、ガスに含まれていた灰等の異物を除去することができる。また、多孔板73によっても、ガスに含まれていた灰等を除去することができる。そのため、脱臭装置5から大気へと排出される排出ガスには、臭気が残存しておらず、周囲の環境への影響を抑えることができる。
【0063】
また、前記のガスが水Wと接触すること(混合すること)により、処理タンク2からの煙等の排出ガスに含まれていたタール分が分離されるとともに、このタール分は水よりも比重が重いために、脱臭装置5の脱臭槽5a内の下部に分離する。
【0064】
次に、処理タンク2内で、土壌改良材が生成された後、流量調整部22を全て全閉として、処理タンク2内の温度を低下させる。なお、流量調整部22を全て全閉とするのは、覗き窓19等より、処理タンク2内に黄土色(薄茶色)の土壌改良材が生成されていることを確認した後に行なう。
【0065】
次に、モータ34を回転させて、下蓋31を横方向(図5のC−D方向)の開方向に移動させて、排出口25を開口し、排出口25より土壌改良材を取り出す。
【0066】
なお、処理タンク2内の温度を1000度以上にすると、鳥類の糞は白い灰となってしまい、鳥類の糞に大量に含まれていた窒素、燐酸、カリウム等の栄養成分が残存せず、土壌改良材としては使用することは出来ない。
【0067】
また、処理タンク内の温度が700度以下となるように調節した場合、黒いまだら状のもので、臭気も多く残存したものとなってしまった。
【0068】
また、採卵鶏糞を原料として、前記の製造方法をとり、その際の処理タンク2内の温度を、できる限り750℃を越えるとともに、800度を超えないように調節して試作品(土壌改良材)を作成し、その成分の含有率を分析したところ、
窒素全量 :0.09%(肥料分析法4.1.1)
燐酸(P) :30.3% (肥料分析法4.2)
カリウム(KO):19.0% (肥料分析法4.3 フレーム光度法)
であった。
【0069】
農水省農地試験場:昭和58年度家畜ふん尿処理利用研究資料によれば、採卵鶏糞中における成分は、
水分 :57.7%
窒素全量 : 2.6%
燐酸(P) :12.1%
カリウム(KO): 4.1%
とあり、本発明の土壌改良材には、採卵鶏糞に含まれていた有用成分である燐酸やカリウム等の多くが残存していることが分った。このように多くの栄養成分を含む本発明の土壌改良材を、土壌に撒くことにより土壌を改良することができる。
【0070】
また、廃棄物である鳥類の糞を原料として、上記の製造方法により、有用な土壌改良材を容易に製造することができるとともに、鶏糞を発酵して肥料とする従来の製造方法に比べて製造日数を大幅に削減することができる。
【0071】
また、本発明の土壌改良材は、鶏類の糞の一部を種火として用いるため、別途の燃料は必要とせず、安価に土壌改良材を製造することができる。
【0072】
また、前記土壌改良材の製造装置1においては、処理タンク2から排出された水蒸気や煙等のガスは、脱臭装置5内の水中へと導入することにより、製造装置1から大気へ排出されるガスには、臭気は殆どなく、周囲の環境へ及ぼす影響を抑えることができる。
【0073】
また、処理タンク2から排出された水蒸気や煙等のガスを、脱臭装置5内の水中へ導入することにより、処理タンク2からの煙等の排出ガスに含まれていたタール分が分離されるとともに、このタール分は水よりも比重が重いために、脱臭装置5の脱臭槽5a内の下部に分離する。この下方に分離したタール分は、脱臭装置5の底部の液体排出口74より取り出すことができる。このタール分もリサイクル商品として、販売することができる。
【0074】
また、本発明の土壌改良材の製造装置1は、1000度、好ましくは800度以下の温度で、鶏類の糞を燻すとともに蒸すため、焼却炉には該当せず、環境アシスメントや産業廃棄物中間処理場等の許可の取得が必要とはならない。
[その他の実施例]
前記実施例1においては、羽根29a,29bの長手方向が、鉛直方向となるように設定したが、羽根29a,29bの下部が回転軸27側に位置し、上部が外側に位置するように傾斜して設けるようにしても良い。
【0075】
前記実施例1においては、回転軸27に対して、腕28a,28bを所定位置に固設したが、羽根29a,29bを備えた腕28a、28bを、処理タンク2内の鳥類の糞の量に応じて、手動又は自動で回転軸27に対して上下方向に移動できるようにしてもよい。
【0076】
例えば、回転軸27の軸方向全体に亘って雄ねじを刻設し、腕28a,28bの基部に設けた円筒部の内部に雌ねじを刻設し、前記雄ねじに前記雌ねじを螺合して、羽根29a,29bを上下させたいときは、回転軸27を一旦停止して、回転軸27に対して前記円筒部を正逆の何れかの方向に回転させることにより、羽根29a,29bの高さを上下することが出来るようにする。そして、所定の高さに移動した後に、適宜手段により、回転軸27に対して前記円筒部を回転不能とし、この状態で、回転軸27を回転するようにしても良い。
【0077】
前記実施例1においては、処理タンク2内と連通する通路18を4本形成したが、該通路の数は、複数個であればよく、その位置及び数は、任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 土壌改良材の製造装置
2 処理タンク
5 脱臭装置
21 通気口
22 流量調整部
W 水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類の糞を、その一部に着火して燻すとともに蒸して生成したことを特徴とする土壌改良材。
【請求項2】
鳥類の糞を処理タンク内に投入し、この糞の一部に着火して種火とし、投入した糞を燻すともに蒸して土壌改良材を生成することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
【請求項3】
前記処理タンク内の温度調節を、処理タンク内への空気の流入量の調節により行うことを特徴とする請求項2記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項4】
前記処理タンク内の温度を、800℃を越えず、かつ、750℃を越えるように調節することを特徴とする請求項2又は3記載の土壌改良材の製造方法。
【請求項5】
鳥類の糞を投入する処理タンクを有し、該処理タンク内への空気を導入するための通気口を前記処理タンクの下部に設け、この空気の通気量を調節する流量調整部を設け、
前記処理タンク内への空気の通気量を調節することにより、処理タンク内の温度を調節することを特徴とする土壌改良材の製造装置。
【請求項6】
前記処理タンク内の気体を、水中に導入することを特徴とする請求項5記載の土壌改良材の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−57846(P2011−57846A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208819(P2009−208819)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(509255026)
【Fターム(参考)】