説明

土壌洗浄装置

【課題】酸性の処理液などのように腐食性の高い処理液で土壌を洗浄するのに適した土壌洗浄装置の提供を目的とした。
【解決手段】土壌洗浄装置10は、処理槽20と、この処理槽20の内容物を外部に取り出した後、再び処理槽20内に戻すことによって攪拌可能な攪拌手段30とを有する。攪拌手段30は、処理槽20の外部に配されており、攪拌物流路34と、高圧気体導入手段36と、取出流路32とを有する。取出流路32は、処理槽20の底部22に設けられた排出口24と高圧気体導入手段36の中途部分に設けられた合流部37とをつないでいる。高圧気体導入手段36により攪拌物流路34内に気体を高圧状態で導入すると、攪拌物流路34内が負圧になり、処理槽20の内容物が取出流路32を介して吸引される。その後、内容物は、攪拌物流路34内を上昇し、処理槽20に対して上方から戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌洗浄装置に関するものであり、特に酸性の処理液などのように腐食性の高い処理液で土壌を洗浄するのに適したものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場跡地等の再開発に伴い、工場における排水の漏洩等により有害物質が土壌中に排出された、いわゆる土壌汚染の存在が明らかになるケースが度々報告されており、問題視されている。
【0003】
そこで、かかる問題に対処すべく、従来より例えば下記特許文献1や特許文献2に開示されているような技術を用いて汚染土壌が処理されている。
【0004】
下記特許文献1に開示されている土壌処理装置は、加熱室に土壌を収容して加熱することにより、土壌に含まれている有機ハロゲン化合物を揮発させ、汚染土壌を処理するものである。また、特許文献2に開示されている土壌処理方法は、先ず汚染土壌を洗浄処理し、これにより得られた脱水ケーキに生石灰などのカルシウム化合物を添加して造粒し、次いでこれを高温の酸化性雰囲気下で加熱処理するものである。
【0005】
ここで、上記した従来技術の土壌処理方法では、汚染土壌中に含まれている汚染物質の処理に際して、土壌に含まれている汚染物質が分解する程度の高温に加熱処理する必要がある。そのため、上記した従来技術によれば、汚染土壌の処理に膨大な熱エネルギーを要するという問題点がある。また、上記したような処理方法では、一度に処理可能な汚染土壌の量も限定され、汚染土壌の処理に膨大な時間を要することとなる。従って、従来技術の土壌処理方法は、処理能力が不十分であり、その分だけ汚染土壌の処理に要する費用も高くなってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明者は、下記特許文献3に開示されているような土壌処理装置や土壌処理方法を開発した。これにより、上記した従来技術を用いた場合よりも汚染土壌の無害化に要するエネルギー消費量や費用を抑制でき、汚染土壌の処理能力も格段に向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−35218号公報
【特許文献2】特開2006−43660号公報
【特許文献3】特開2008−119682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、本発明者らが提供した特許文献3に係る土壌処理装置や土壌処理方法は、従来技術の処理装置や処理方法に比べて格段にエネルギー効率や処理費用、処理能力の面で優れたものであった。しかし、本発明者らがさらに鋭意研究したところ、一定の条件下においては、処理対象である土壌を酸性条件下において攪拌して洗浄することでより一層処理効率が向上することを見いだした。その一方で、酸性条件下にさらして土壌を洗浄しようとすると、土壌洗浄装置をなす槽などが腐食しやすくなるという問題があり、これが原因で本発明者らによって開発された土壌処理方法を工業化する上で支障となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、酸性の処理液などのように腐食性の高い処理液で土壌を洗浄するのに適した土壌洗浄装置の提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成すべく提供される本発明の土壌洗浄装置は、腐食性を有する処理液および土壌を投入可能な処理槽と、当該処理槽の内容物を処理槽外に取り出した後、処理槽内に戻すことにより、前記内容物を攪拌可能な攪拌手段と、を有し、当該攪拌手段が、前記処理槽の外部に配され、一端側に流入部を有し他端側に流出部を有する筒状の攪拌物流路と、当該攪拌物流路に対して高圧状態で気体を導入可能な高圧気体導入手段と、前記攪拌物流路の中途に設けられた合流部と前記処理槽とをつなぐ取出流路と、を有し、前記高圧気体導入手段によって前記攪拌物流路内に気体を導入することにより、前記攪拌物流路内を負圧とし、前記取出流路を介して前記処理槽の内容物を吸引して前記処理槽から取り出すと共に、当該内容物を攪拌物流路内において前記気体の流れ方向上流側から下流側に向けて流動させ、前記流出部を介して前記処理槽に戻すことにより、前記内容物を攪拌可能であることを特徴としている(請求項1)。
【0011】
本発明の土壌洗浄装置は、攪拌手段として高圧気体導入手段によって攪拌物流路内に気体を導入して当該攪拌物流路内を負圧とすることで処理槽の内容物を吸引し、処理槽から取り出すことが可能なものが採用されている。そのため、本発明の土壌洗浄装置で採用されている攪拌手段は、処理槽の内容物が土壌を含む流動性の悪いものであっても、スムーズに処理槽の外側に取り出し処理槽に戻すことが可能であり、土壌と処理液との攪拌を十分促進させることが可能である。
【0012】
本発明の土壌処理装置では、攪拌手段の主要部をなす攪拌物流路が処理槽の外側に設けられているため、腐食性の高い処理液を用いても攪拌手段が腐食しにくい。また、攪拌物流路が処理槽の外側に設けられているため、攪拌手段の使用に伴って攪拌物流路が腐食等しても、容易に交換やメンテナンスを行うことが可能である。
【0013】
上記した本発明の土壌洗浄装置は、取出流路が、処理槽の底部に接続されており、高圧気体導入手段によって攪拌物流路内に気体を導入することにより、前記処理槽から取り出された処理槽の内容物を処理槽の底部側から上方に向けて流動させることが可能であることを特徴とするものであってもよい(請求項2)。
【0014】
かかる構成とした場合、処理槽の底部から取出流路を介して取り出された処理槽の内容物が、処理槽の上部から戻されることになるため、内容物全体が十分攪拌されることになる。また、処理槽の底部から取り出された内容物は、攪拌物流路の内部を上昇する際に乱流条件下にさらされるばかりか、高圧気体導入手段によって導入された高圧気体の影響によって塊状になっている土壌がほぐされることになる。そのため、本発明の土壌洗浄装置によれば、効率よく土壌を洗浄することが可能であり、処理液による洗浄効果をより一層高めることが可能となる。
【0015】
ここで、本発明の土壌洗浄装置では、攪拌手段を構成する攪拌物流路内を塊状に固まった土壌が通過する可能性がある。また、本発明の土壌洗浄装置では、高圧気体導入手段によって導入された高圧気体の影響で、土壌が勢いよく攪拌物流路の内壁面に衝突する。さらに、攪拌物流路内には、土壌とともに腐食性の高い処理液が流れる。そのため、これらの要因が相まって、本発明の土壌洗浄装置では、攪拌物流路を構成する配管が比較的劣化しやすいものと想定される。
【0016】
そこで、かかる知見に基づいて提供される本発明の土壌洗浄装置は、攪拌物流路の一部又は全部が、処理槽の外側において着脱自在なように配されていることを特徴としている(請求項3)。
【0017】
かかる構成によれば、仮に上述したような要因で攪拌物流路が劣化するようなことがあっても、これを適宜容易に交換することが可能である。
【0018】
また、上記した本発明の土壌洗浄装置は、処理槽の内面が、処理液に対する耐食性を有する耐食性材料によって形成されていることが望ましい(請求項4)。
【0019】
かかる構成によれば、処理槽の内面が処理液によって腐食されるのをより一層確実に防止可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、酸性の処理液などのように腐食性の高い処理液で土壌を洗浄するのに適した土壌洗浄装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る土壌洗浄装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す土壌処理装置の変形例を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る土壌処理装置の使用例を示す平面図である。
【図4】図1に示す土壌処理装置の使用例に係る土壌処理方法の流れを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、本発明の一実施形態に係る土壌洗浄装置10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、土壌洗浄装置10は、処理槽20と、攪拌手段30とを有する。処理槽20は、腐食性を有する処理液および土壌が投入されるものである。本実施形態では、処理液として希硫酸などの酸性の液体が用いられる。また、処理液には、pH=3.5〜4.5の範囲内のものが使用される。そのため、処理槽20は、内面が前記したような処理液に対する耐食性(耐酸性)を有する耐食性材料によって形成されている。具体的には、処理槽20の内面は、耐食性の強いステンレス鋼や、繊維強化プラスチック(FRP;Fiber Reinforced Plastics)に代表される合成樹脂などで形成されることが望ましい。また、これらの素材によって形成される処理槽20の内面を構成する部分が内圧に耐えられるよう、外側を鉄筋コンクリートなどで補強することが望ましい。さらに、処理槽20の内面には、ポリエステル樹脂や、アクリル樹脂とエポキシ樹脂との混合液、などが耐食性塗料として塗布されている。
【0023】
処理槽20の底部22には、排出口24が設けられている。本実施形態の土壌洗浄装置10では、処理対象である土壌が処理槽20に投入されることになるが、その粒径は大小様々である。具体的には、処理対象の土壌の大きさは、0.07mm〜5mm程度のものであり、これが土壌洗浄装置10によって洗浄する間に排出口24を通過することになる。そのため、土壌によって排出口24が詰まるのを防止すべく、排出口24の開口径は、100mm以上とされている。
【0024】
攪拌手段30は、処理槽20内に投入された土壌および処理液の混合物からなる内容物をいったん処理槽20のそ底部22から取り出した後、処理槽20の上端に設けられた開口から戻すことにより、攪拌可能なものである。攪拌手段30は、取出流路32と、攪拌物流路34と、高圧気体導入手段36とを有する。
【0025】
取出流路32は、処理槽20の底部22に設けられた排出口24に接続されている。取出流路32は、処理槽20の底部22側においてほぼ水平に伸びている。取出流路32はに、排出口24から排出された土壌と処理液の混合物からなる処理槽20の内容物が流れる。そのため、土壌等が詰まるのを防止すべく、取出流路32の内径は、上述した排出口24の開口径と同様に100mm以上とされている。
【0026】
攪拌物流路34は、上述した処理槽20の側面に沿って上下方向に伸びる流路である。攪拌物流路34は、下端に流入部38を有し、上端側に流出部40を有する筒体によって構成されている。また、攪拌物流路34の中途には、上述した取出流路32が接続されている。言い換えれば、攪拌物流路34は、この中途に設けられた合流部37と処理槽20の底部22に設けられた排出口24との間をつなぐ取出流路32を介して、処理槽20の内容物(土壌と処理液の混合物)を取り込むことが可能な流路である。
【0027】
攪拌物流路34は、内径が100mm〜200mmとされている。また、攪拌物流路34の内径は、取出流路32の内径と略同径とされている。
【0028】
上記した攪拌物流路34は、処理槽20や取出流路32に対して着脱自在なように接続されている。そのため、土壌洗浄装置10は、攪拌物流路34を適宜取り外してメンテナンスや交換を行うことが可能である。また、上述した取出流路32および攪拌流路34の近辺において、処理槽20は、鉄筋コンクリートなどの補強材26によって補強されている。
【0029】
高圧気体導入手段36は、攪拌物流路34に対して高圧状態で気体を導入可能なものである。本実施形態では、高圧気体導入手段36は、処理液を構成する酸、具体的には希硫酸の溶液を、空気とともに高圧状態で導入可能なものとされている。また、高圧気体導入手段36は、上述した取出流路32と攪拌物流路34との合流部37よりも攪拌物流路34の上流側に配置されている。
【0030】
攪拌手段30は、高圧気体導入手段36によって攪拌物流路34内に気体を導入することにより、攪拌物流路内34を負圧とすることが可能である。また、攪拌物流路34内を負圧とすることにより、取出流路32を介して処理槽20の内容物たる土壌と処理液との混合物を底部22側から吸引し、処理槽20から取り出すことが可能である。また、攪拌手段30は、高圧気体導入手段36によって導入された空気の圧力を利用して、内容物を攪拌物流路34内において空気流の流れ方向上流側から下流側、すなわち攪拌物流路34の下方から上方に向けて流動させた後、流出部40を介して処理槽20に上方から戻すことが可能である。
【0031】
上記したように、高圧気体導入手段36を作動させることにより処理槽20の内容物を流動させると、処理槽20の上下間で内容物が順次入れ替わり、攪拌される。また、処理槽20から取り出された内容物は、処理槽20よりも内径の小さな取出流路32や攪拌物流路34内を高圧条件下で通過することになる。また、攪拌物流路34内を流れる内容物は、高圧気体導入手段36によって導入された気流(空気流)の影響により乱流状態になる。さらに、高圧気体導入手段36によって導入された気流に内容物をなす土壌がさらされることにより、仮に土壌が塊状であったとしても十分ほぐされた状態になる。そのため、上記した攪拌手段30を用いて内容物を攪拌すると、前記した様々な要因が相まって、土壌が処理液中において十分攪拌され、洗浄された状態になる。
【0032】
図1に示すように、土壌洗浄装置10では、攪拌手段30が複数(本実施形態では2つ)設けられており、その分だけ内容物を効率よく攪拌し、洗浄することが可能である。また、2つの攪拌手段30,30は互いに処理槽22の周方向に離れた位置(本実施形態では周方向に約90度離れた位置)に設けられている。そのため、処理槽22の内容物をムラなく攪拌することが可能である。
【0033】
上記したように、本実施形態の土壌洗浄装置10で採用されている攪拌手段30は、高圧気体導入手段36によって攪拌物流路34内に高圧状態の空気を導入することにより攪拌物流路34内を負圧とするものである。そのため、上記した攪拌手段30によれば、処理槽20の内容物が粒径の大きな土壌の塊が含む等して流動性の低いものであったとしても、スムーズに吸引し、攪拌することが可能である。
【0034】
また、土壌洗浄装置10では、土壌の塊がぶつかるなどして比較的消耗が激しいと想定される攪拌物流路34を取出流路32や処理槽20から自由に着脱することができる構成とされている。そのため、土壌洗浄装置10は、攪拌物流路34のメンテナンスや交換を容易に行える。また、土壌洗浄装置10では、処理槽20の内面が、酸性溶液に対する耐食性に優れた素材でコーティングされたものであるため、処理槽20が腐食などを起こしにくい。
【0035】
上記実施形態で示した土壌処理装置10は、攪拌手段30の攪拌物流路34によって処理槽20の底部22から汲み上げられた内容物を必ず処理槽20の上部開口部分から処理槽20内に戻すものであったが、本発明はこれに限定されず、適宜処理槽20の外側に排出可能な構成としてもよい。具体的には、図2に示すように、処理槽20の上部側において、攪拌物流路34の流出部40の下方に差し入れ可能な庇42を設け、これを適宜流出部40の下方に差し入れることにより、流出部40から排出された内容物を処理槽20の外側に排出可能な構成としてもよい。なお、庇42は、作業者が手動で移動させるものであっても、エアシリンダに代表されるような動力源を用いて機械的に移動させるものであってもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、土壌処理装置10を単体で使用する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すように単一の処理系等内に土壌処理装置10を複数配置して使用することとしてもよい。具体的には、図3に示す例では、4つの土壌処理装置10が並べて配置されており、スパイラル分級機などの他の装置46との間で流路系統48を介して処理槽20から取り出された水などを循環させることが可能とされている。このように、複数の土壌処理装置10を並列、あるいは、直列に配置して使用することとすると、より一層処理能力を高めることが可能となる。
【実施例1】
【0037】
続いて、上述した土壌洗浄装置10の使用例の一例として、土壌洗浄装置10を用いた土壌処理方法について説明する。本実施例に係る土壌処理方法は、重金属類によって汚染された汚染土壌を無害化するものであり、例えば図4に示す土壌処理プラント50のようなものを用いて実施することができる。土壌処理プラント50は、洗浄手段70や、凝集手段80、酸洗手段90、無害化処理手段100を有し、酸洗手段90として上述した土壌洗浄装置10が採用されている。また、土壌処理プラント50は、一次分離手段110aや、二次分離手段110bも備えている。
【0038】
トラック等によって搬送されてきた汚染土壌は、本実施形態で示す土壌処理方法に適したものであるか否かを判定され、選別された上でトラック等によって洗浄手段70に搬送されてくる。具体的には、粒度分布試験などを行ったり、大きな塊状になっているものを取り除くなどされた土壌が、トラック等を用いて洗浄手段70に搬送されてくる。洗浄手段70は、トラックなどで搬送されてきた汚染土壌を塩基性の処理水中で洗浄するために設けられたものである。洗浄手段70において使用する処理水は、pH=4.0〜7.5の範囲のものが好ましく、pH=5.0〜7.0の範囲のものが好ましい。本実施例では、pH=10〜12程度の処理水が、洗浄手段70において使用される。また、洗浄手段70で使用する処理水には、例えばセメント工場などにおいて発生した排水などを用いることが可能である。
【0039】
また、洗浄手段70は、洗浄効果を高めるべく、汚染土壌を処理水中において撹拌可能な撹拌手段設けたものであることが好ましい。具体的には、洗浄手段70は、別途設けられた動力源から動力を受けて作動する撹拌翼や、処理水中に空気などの気体を吹き込むことで撹拌可能なものなどを撹拌手段として備えていることが好ましい。攪拌翼や、気体を吹き込んで攪拌可能なものは、処理槽20内に砂相が部分沈殿することを防止するための攪拌の補助手段として十分に機能し、より一層洗浄手段70における攪拌効率や洗浄効率を高めることが可能となる。
【0040】
凝集手段80は、洗浄手段70での処理後、しばらく静置した後に得られる水相部分に凝集剤を投入して処理するためのものである。凝集手段80は、洗浄手段70から取り出された水相部分を貯留するための槽や、凝集剤を投入するための薬剤投入手段を備えたものとすることができる。
【0041】
酸洗手段90は、後に詳述する一次分離手段110aにより洗浄手段70から取り出された砂相や、後に詳述する二次分離手段110bによって取り出されたヘドロ相を酸性条件下にさらす酸洗工程を実施するために設けられたものである。酸洗手段90では、上述した土壌洗浄装置10が使用される。土壌洗浄装置10は、酸にさらされる処理槽20が内表面を防錆特性に優れた材質でコーティングされたものであり、酸性条件下にヘドロ相をさらすのに適している。また、土壌洗浄装置10は、攪拌手段30を備えているため、砂相やヘドロ相を撹拌することが可能である。
【0042】
無害化処理手段100は、一次分離手段110aで得られた砂相や、二次分離手段110bで得られたヘドロ相、酸洗手段90で酸洗された砂相、ヘドロ相などに対して薬剤を投入し、これらに含まれている重金属類を無害化するためのものである。
【0043】
一次分離手段110aは、洗浄手段70で洗浄された処理水と汚染土壌との混合物を、砂を含む砂相と、主として水からなる水相とに分離するものである。一次分離手段110aは、洗浄手段70を構成する機材にその機能を持たせたものであってもよく、洗浄手段70とは別に設けられたものであってもよい。
【0044】
二次分離手段110bは、凝集手段80において凝集剤を投入することによって形成されるヘドロ状のもの(以下、「ヘドロ相」とも称す)と、水相とに分離するためのものである。二次分離手段110bは、上記した一次分離手段110aと同様のものによって構成することができる。
【0045】
図4に示すように、一次分離手段110aにおいて分離された砂相のうち、重金属類の濃度が低いものは、そのまま再生土壌として再利用することが可能である。また、一次分離手段110aにおいて分離された砂相のうち、重金属類の濃度が極端に高くないもの(中濃度のもの)は、無害化処理手段100において薬剤を投入して無害化処理することにより再生土壌として利用することが可能である。さらに、一次分離手段110aにおいて分離された砂相のうち、重金属類の濃度が高いものについては、上記実施形態に係る土壌洗浄装置10によって構成された酸洗手段90において酸性の処理液にさらされた後、無害化処理手段100において薬剤を投入して無害化することにより再生土壌として利用可能な状態にすることが可能である。
【0046】
二次分離手段110bにおいて処理され、分離されたヘドロ相のうち、重金属類の濃度が低いものについては、無害化処理手段100において薬剤を投入して無害化した後、再生土壌として利用することが可能である。また、二次分離手段110bにおいて処理されたヘドロ相のうち、重金属類の濃度が極端に高くないものについては、いったん土壌洗浄装置10からなる酸洗装置90において酸性条件下にさらされた後、無害化処理手段100において薬剤の存在下で無害化されることにより、再生土壌として利用可能な状態になる。なお、二次分離手段110bにおいて分離されたヘドロ相が重金属類を大量に含む者である場合は、無害化処理が困難であったり、無害化に大幅に手間やコストを要するものと想定されるため、通常は廃棄処分される。
【0047】
上記したように、土壌洗浄装置10は、重金属類によって汚染された汚染土壌を処理する場合のように、流動性が低いと想定される土壌を含む混合物を酸にさらすために好適に使用することが可能である。なお、上記実施例に係る土壌処理方法は、本発明の一実施形態に係る土壌洗浄装置10の使用例の一例を示したものに過ぎず、酸などの腐食性の高い処理液の下で土壌を洗浄する他の用途にも使用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 土壌洗浄装置
20 処理槽
22 底部
24 排出口
30 攪拌手段
32 取出流路
34 攪拌物流路
36 高圧気体導入手段
37 合流部
38 流入部
40 流出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性を有する処理液および土壌を投入可能な処理槽と、
当該処理槽の内容物を処理槽外に取り出した後、処理槽内に戻すことにより、前記内容物を攪拌可能な攪拌手段と、を有し、
当該攪拌手段が、
前記処理槽の外部に配され、一端側に流入部を有し他端側に流出部を有する筒状の攪拌物流路と、
当該攪拌物流路に対して高圧状態で気体を導入可能な高圧気体導入手段と、
前記攪拌物流路の中途に設けられた合流部と前記処理槽とをつなぐ取出流路と、を有し、
前記高圧気体導入手段によって前記攪拌物流路内に気体を導入することにより、前記攪拌物流路内を負圧とし、前記取出流路を介して前記処理槽の内容物を吸引して前記処理槽から取り出すと共に、当該内容物を攪拌物流路内において前記気体の流れ方向上流側から下流側に向けて流動させ、前記流出部を介して前記処理槽に戻すことにより、前記内容物を攪拌可能であることを特徴とする土壌洗浄装置。
【請求項2】
取出流路が、処理槽の底部に接続されており、
高圧気体導入手段によって攪拌物流路内に気体を導入することにより、前記処理槽から取り出された処理槽の内容物を処理槽の底部側から上方に向けて流動させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の土壌洗浄装置。
【請求項3】
攪拌物流路の一部又は全部が、処理槽の外側において着脱自在なように配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の土壌洗浄装置。
【請求項4】
処理槽の内面が、処理液に対する耐食性を有する耐食性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土壌洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−269220(P2010−269220A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121345(P2009−121345)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(505073406)EACLE有限会社 (10)
【Fターム(参考)】