説明

土壌消毒機

【課題】作業者が薬液から受ける負荷を低減できる土壌消毒機を提供する。
【解決手段】薬液供給部30、制御部90、薬液注入部10からなり、薬液注入部10により土壌に薬液を注入する土壌消毒機1であって、薬液供給部30は、薬液を薬液注入部10に送り出す薬液送出ポンプ41に集中配置するとともに、運転席116から離間する位置に配置する。また、薬液供給部30と薬液注入部10とを連結する送出チューブ3を運転席116の外側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を土壌に注入するための土壌消毒機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土壌の殺菌および殺虫用の薬液を土壌に注入するための土壌消毒機の技術は公知となっている。
このような土壌消毒機に用いられる薬液には、例えば、クロロピクリン等の毒性の高い物質が用いられる。このため、薬液が土壌に注入されずに外部に漏れた場合(薬液がたれた場合)には、薬液の周辺に刺激臭が発生する等、作業者に負荷がかかる。従って、薬液がたれることを確実に防止できる土壌消毒機の技術が求められている。
【0003】
特許文献1に開示された土壌消毒機の技術は、駆動時に薬液がたれることを防止するための技術である。特許文献1に開示された土壌消毒機は、薬液タンク、吸入ホース、吐出ホース、間欠駆動ポンプ、薬液注入ノズル、薬液注入爪、薬液流確認計、およびコックを具備する。
薬液タンクには、土壌を消毒するための薬液が貯溜される。
吸入ホースは、薬液タンクと間欠駆動ポンプとを連結する。吐出ホースは、間欠駆動ポンプと薬液注入ノズルとを連結する。吸入ホースおよび吐出ホースは、それぞれ薬液によって腐食しない程度の耐食性を有する適宜の硬質な部材によって構成される。
間欠駆動ポンプは、吸入ホースを介して薬液タンクの薬液を吸い出して、吐出ホースを介して薬液注入ノズルに送り出す。
薬液注入ノズルには、外部に開口する開口部が形成される。開口部は、間欠駆動ポンプより送り出される薬液を吐出する。
薬液注入爪には、薬液注入ノズルが取り付けられる。
薬液流確認計には、薬液が流れたときに、かかる流れた方向に移動する遊動体が備えられる。薬液流確認計は、遊動体の移動方向が鉛直方向と平行となるように吸入ホースに支持される。
コックは、吐出ホースの中途部に取り付けられる。コックを操作することにより、吐出ホース内の流路を閉鎖するあるいは開放することができるように構成される。言い換えれば、コックは、間欠駆動ポンプより送られる薬液の流れを規制する、あるいは薬液の流れを許容することができる。
【0004】
このように構成される特許文献1に開示された土壌消毒機は、土壌の消毒を終了するとき、間欠駆動ポンプを停止させた後で、薬液の流れを規制するようにコックを操作する。これにより、薬液注入ノズルより薬液がたれることを完全に防止できる。
【0005】
しかし、特許文献1に開示された土壌消毒機は、間欠駆動ポンプを駆動させる前および停止させた後でコックを操作する必要があった。つまり、土壌の消毒を行う際の工程が増えるという点で不利であった。
また、土壌消毒機の操作に慣れていない作業者が作業する場合には、コックの操作を忘れる可能性があった。間欠駆動ポンプを駆動させる前にコックの操作を忘れた場合には、薬液の流路が閉鎖されているため、間欠駆動ポンプに負荷がかかる可能性があった。また、間欠駆動ポンプを停止させた後でコックの操作を忘れた場合には、薬液の流路が開放されているため、薬液注入ノズルより薬液がたれる可能性があった。
【0006】
このようなコックの操作を忘れにくくするという観点より、この種の土壌消毒機を作業車両で牽引した場合、コックは、作業者の近傍、つまり、土壌消毒機が取り付けられる作業車両の運転席の近傍に配置する必要がある。この場合、運転席の近傍を通るように吐出ホースを作業車両に取り付けることとなる。
このような場合においては、作業者の近傍を吐出ホースが通るため、例えば、作業者が作業車両を乗り降りするときに、吐出ホースに接触することで、吐出ホースが切断される可能性があった。また、二方コックより吐出ホースが外れる可能性があった。このとき、作業者の近傍で刺激臭が発生し、ひいては、作業者に負荷がかかる可能性があった。
また、二方コックの操作(開閉)を何回も繰り返すことにより二方コックが劣化し、ひいては、二方コックを操作する部分より液漏れする可能性があった。このとき、作業者の近傍で刺激臭が発生し、ひいては、作業者に負荷がかかる可能性があった。
また、キャビン付の作業車両では、運転席の近傍、すなわち、キャビン内に吐出ホース、二方コック、およびコントローラを取り付ける必要がある。この場合、キャビンのドアを開閉できなくなるため、キャビン付の作業車両に土壌消毒機を取り付けることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−195423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる土壌消毒機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
請求項1においては、薬液供給部、制御部、薬液注入部からなり、前記制御部を操作することで前記薬液注入部より土壌に薬液を注入する土壌消毒機であって、前記薬液を前記薬液注入部に送り出す薬液送出ポンプの近傍に前記薬液供給部を集中配置するとともに、前記薬液供給部を運転席から離間する位置に配置するものである。
【0011】
請求項2においては、前記薬液供給部と前記薬液注入部とを連結する連結部材を運転席の外側に配置するものである。
【0012】
請求項3においては、前記薬液供給部は、前記薬液を貯溜する薬液タンクと、前記薬液送出ポンプが停止したときに、前記薬液注入部より前記薬液がたれることを防止する液だれ防止弁と、前記薬液が前記薬液送出ポンプより前記薬液注入部に送り出されているかを確認する確認計と、を含むものである。
【0013】
請求項4においては、前記制御部は、前記薬液送出ポンプが停止したときに、前記液だれ防止弁を閉鎖することにより薬液供給経路を閉鎖し、前記薬液送出ポンプが駆動したときに、前記液だれ防止弁を開放することにより前記薬液供給経路を開放するものである。
【0014】
請求項5においては、前記液だれ防止弁は、外部から圧力を加えることにより前記薬液供給経路を閉鎖するものである。
【0015】
請求項6においては、前記液だれ防止弁を外側より覆うカバー部材を具備するものである。
【0016】
請求項7においては、前記カバー部材には、前記薬液供給経路に対応する位置に一対の連通孔が形成されるとともに、前記一対の連通孔に前記薬液供給経路の構成部材を保持する軟質部材が取り付けられるものである。
【0017】
請求項8においては、前記カバー部材には、前記液だれ防止弁が前記薬液供給経路を閉鎖する部分を視認可能な位置に貫通孔が形成されるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、作業者から離間する位置に薬液供給部を配置できるため、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。
【0020】
請求項2においては、作業者が連結部材と接触することを防止できるため、連結部材の切断を防止でき、ひいては、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。
【0021】
請求項3においては、作業者から離間する位置に薬液供給部を配置できるため、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。
【0022】
請求項4においては、薬液供給経路が閉鎖された状態で薬液送出ポンプが駆動することを防止できるため、薬液送出ポンプにかかる負荷を低減でき、ひいては、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。また、土壌消毒における作業工程を簡略化できる。
【0023】
請求項5においては、液だれ防止弁が薬液に直接接触することを防止できる。つまり、液だれ防止弁が薬液によって腐食することを確実に防止できる。従って、メンテナンス性を向上できる。
【0024】
請求項6においては、液だれ防止弁が外部に露出する部分を低減できる。従って、液だれ防止弁の劣化を防止することができ、ひいては、メンテナンス性を向上できる。
【0025】
請求項7においては、液だれ防止弁が薬液供給経路を閉鎖するときに送出チューブにかかる負荷を低減できる。つまり、メンテナンス性を向上できる。
【0026】
請求項8においては、液だれ防止弁の動作を容易に視認できるため、故障箇所の特定に寄与する。つまり、メンテナンス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】土壌消毒機が取り付けられる作業車両の全体的な構成を示す側面図。
【図2】薬液供給部の全体的な構成を示す一部側面断面図。
【図3】ピンチバルブおよびカバー部材の構成を示す拡大側面断面図。
【図4】ピンチバルブが第一送出チューブを押圧している状態を示す拡大側面断面図。
【図5】カバー部材の構成を示す分解斜視図。
【図6】薬液送出ポンプとカバー部材との連結状態を示す正面図。
【図7】制御部の動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明に係る土壌消毒機の実施の一形態である土壌消毒機1について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、土壌消毒機1は、移動可能な所定の作業車両、本実施形態ではトラクタ100に取り付けられる。土壌消毒機1は、トラクタ100の移動にともなって移動するとともに薬液を土壌に注入する。
なお、本実施形態の土壌消毒機1は、説明の便宜上、トラクタ100に適用されたものとするが、これに限定されるものでない。
また、以下において、説明の便宜上、図1に示すトラクタ100の進行方向(矢印A方向)を前後方向と規定する。
【0030】
以下では、トラクタ100の全体的な構成について説明する。
トラクタ100は、走行部110および装着部120等を具備する。
【0031】
走行部110は、エンジンフレーム111、前輪112・112、後輪113・113、ボンネット114、操向ハンドル115、運転席116、およびサイドコラム117を備える。
【0032】
エンジンフレーム111は、長手方向を前後方向として走行部110に設けられる。
前輪112・112は、車軸に支持された状態でエンジンフレーム111の前部に懸架される。また、後輪113・113は、車軸に支持された状態で前輪112・112の後方に配設される。
ボンネット114は、エンジンおよびバッテリ等が搭載され、エンジンフレーム111の前部に載置固定される。エンジンの動力が前輪112・112および後輪113・113に伝達されることにより、トラクタ100は移動可能に構成される。
操向ハンドル115は、ボンネット114の後部に配置される。操向ハンドル115をその周方向に沿って回動させることにより、トラクタ100はエンジンフレーム111を中心に操向可能に構成される。
運転席116は、操向ハンドル115の後方に配設される。
サイドコラム117は、主変速レバー、PTO変速レバー等の各種操作器具が配設され、運転席116の両側部に配置される。また、運転席116の前方、より詳細には、作業者が運転席116に着座したときに作業者の足元に対応する位置には、操作ペダル118(フットアクセルペダル等)が配設される。
【0033】
装着部120は、トップリンクおよびロアリンク等を備え、走行部110の後部に設けられる。トラクタ100は、所定の作業装置をトップリンクおよびロアリンク等に連結することで牽引可能に構成される。
【0034】
以下では、土壌消毒機1の構成について説明する。
土壌消毒機1は、薬液注入部10、載置部20、薬液供給部30、および制御部90を具備する。
【0035】
薬液注入部10は、薬液を土壌に注入するものである。薬液注入部10は、薬液注入爪11および薬液注入ノズル12を備える。
【0036】
薬液注入爪11は、土壌に挿し込んで所望の深さの溝を掘るものである。薬液注入爪11は、一端部が緩やかに折り曲げられ、図1において略J字状に形成される。薬液注入爪11は、トップリンクマスト等を介して装着部120に連結される。
【0037】
薬液注入ノズル12は、薬液を吐出するものである。薬液注入ノズル12は、両端部に開口するチューブ状の部材であり、所定のホルダーを介して薬液注入爪11の後部に取り付けられる。薬液注入ノズル12の他端部は、開口部12aとして形成される。
【0038】
このように構成される薬液注入部10は、トラクタ100に牽引されることにより、移動する。
【0039】
載置部20は、薬液供給部30をトラクタ100の前部に載置固定するものである。載置部20は、支持フレーム21、薬液タンク載置台22、およびガイド部材23を具備する。
【0040】
支持フレーム21は、ボンネット114と干渉しないようにエンジンフレーム111の前端部に取り付けられる。支持フレーム21は、複数の角パイプを連結することによって構成される。
【0041】
薬液タンク載置台22は、ステー等を介して支持フレーム21に取り付けられる。薬液タンク載置台22は、図1において略U字状となるように複数の板状部材を連結して形成される。
【0042】
図1および図2に示すように、ガイド部材23は、ステー等を介して支持フレーム21に取り付けられる。ガイド部材23の上端部には、上下両端部を後方向に向かって直角に折り曲げたような板状部材が取り付けられる。
【0043】
薬液供給部30は、薬液を薬液注入部10に供給するものである。薬液供給部30は、薬液タンク31、薬液送出ポンプ41、ピンチバルブ61、カバー部材71、および確認計81を備える。
【0044】
薬液タンク31は、薬液を貯溜するものである。薬液タンク31には、外部に開口する開口部が形成される。薬液タンク31は、薬液タンク載置台22に載置され、かかる薬液タンク載置台22の外周にゴムベルト22aを巻くことによって固定される。
薬液タンク31に貯溜される薬液としては、例えば、クロロピクリン等がある。
【0045】
薬液送出ポンプ41は、薬液タンク31内の薬液を薬液注入ノズル12に送り出すものである。薬液送出ポンプ41は、ポンプ駆動ケース42、駆動装置44、およびダイヤフラムポンプ52を備える。
【0046】
なお、以下において、薬液タンク31より薬液注入ノズル12までを通る薬液の流路を「薬液供給経路C」と称する。
また、薬液供給経路Cにおける薬液タンク31側を「薬液供給経路Cの上流側」と称し、薬液注入ノズル12側を「薬液供給経路Cの下流側」と称する。
【0047】
ポンプ駆動ケース42は、駆動装置44を収容するとともにポンプ駆動ケース42の上面にダイヤフラムポンプ52を載置した状態で、支持フレーム21に載置固定される。ここで、薬液タンク載置台22は前述のように支持フレーム21に取り付けられる。従って、薬液送出ポンプ41は、薬液タンク31に隣接して配置される。
【0048】
駆動装置44は、揺動クランク45を上下動させることによって、ダイヤフラムポンプ52を駆動させるものである。揺動クランク45の後部には、モータに連結される駆動軸46が偏心カム47等を介して連結される。また、揺動クランク45は、その中途部に支点カム48が取り付けられるとともに、その前上部で連結ロッド49および連結ピン50を介してダイヤフラムポンプ52に連結される。
これによれば駆動装置44は、駆動軸46が回動すると揺動クランク45が支点カム48を支点として上下動する構成となる。従って、揺動クランク45の上下動は、連結ロッド49および連結ピン50を介してダイヤフラムポンプ52に伝達される。
【0049】
ダイヤフラムポンプ52は、ダイヤフラム53を上下動させることによって、薬液を薬液注入ノズル12に送り出すものである。ダイヤフラムポンプ52は、ダイヤフラム53がダイヤフラム取付部材54および弁取付部材55に上下方向より挟まれた状態で、ポンプ駆動ケース42に載置固定される。
このようなダイヤフラムポンプ52には、吸入ポート52aおよび送出ポート52bが形成される。
【0050】
吸入ポート52aは、外部に開口するとともに、開口する側の端部に吸入チューブ2の一端部が連結される。
【0051】
吸入チューブ2の他端部は、薬液タンク31の開口部を通って、薬液タンク31の内側に配置される。これにより、吸入チューブ2は、薬液タンク31と薬液送出ポンプ41とを連結する。
【0052】
吸入ポート52aの中途部には、吸入側逆止弁56が設けられる。吸入側逆止弁56は、吸入ポート52aの開口する側より順に、バルブ56aおよびバネ56bが配設される。バルブ56aは、バネ56bによって係止されるとともに外部へ向かって付勢される。また、バルブ56aは、吸入ポート52aに係止される。
このような吸入側逆止弁56は、薬液供給経路Cの下流側より上流側(吸入ポート52aの外側より内側)へ向かう方向の流れを規制するとともに、所定の圧力を受けることで薬液供給経路Cの上流側より下流側(吸入ポート52aの内側より外側)へ向かう方向の流れを許容する。
【0053】
送出ポート52bは、外部に開口するとともに、開口する側の端部に送出チューブ3が連結される。
【0054】
送出チューブ3の他端部には、薬液注入ノズル12が連結される。このような送出チューブ3は、第一送出チューブ3aと第二送出チューブ3bとを継手4を介して連結することで構成される。継手4は、ピンチバルブ61と確認計81との間で、確認計81の近傍に配設される。
【0055】
第一送出チューブ3aは、薬液によって腐食しない程度の耐食性を有するとともに、外部からの圧力によって塑性変形しやすい軟質な部材によって構成される。このような第一送出チューブ3aとしては、例えば、シリコンチューブ等がある。
【0056】
第二送出チューブ3bは、薬液によって腐食しない程度の耐食性を有するとともに、外部からの圧力によって塑性変形しにくい適宜の硬質なチューブが用いられる。
【0057】
第二送出チューブ3bは、運転席116および操作ペダル118を迂回するように運転席116の外側を通って薬液注入ノズル12に連結される。
これにより、作業者が送出チューブ3を誤って踏む(接触する)ことを防止できる。つまり、第二送出チューブ3bの切断を防止できるため、作業者の近傍で刺激臭が発生し、作業者に負荷がかかることを防止できる。
【0058】
第二送出チューブ3bの薬液注入ノズル12の近傍には、二つの逆止弁5・5が取り付けられる。二つの逆止弁5・5は、それぞれ薬液供給経路Cの上流側より順に、バルブおよびバネが配置される。このような二つの逆止弁5・5は、それぞれ薬液供給経路Cの下流側より上流側へ向かう方向の流れを規制するとともに、所定の圧力を受けることで薬液供給経路Cの上流側より下流側へ向かう方向の流れを許容する。
このように送出チューブ3は、薬液送出ポンプ41と薬液注入ノズル12とを連結する。また、薬液供給部30と薬液注入部10とを連結する連結部材である送出チューブ3(第二送出チューブ3b)は、つなぎ目がなく運転席116の外側に配置される。
【0059】
送出ポート52bの中途部には、送出側逆止弁57が設けられる。送出側逆止弁57は、送出ポート52bの開口する側より順に、バネ57bおよびバルブ57aが配設される。バルブ57aは、バネ57bによって係止されるとともに外部へ向かって付勢される。また、バルブ57aは、吸入ポート52aに係止される。
このような送出側逆止弁57は、薬液供給経路Cの上流側より下流側(送出ポート52bの内側より外側)へ向かう方向の流れを規制するとともに、所定の圧力を受けることで薬液供給経路Cの下流側より上流側(送出ポート52bの外側より内側)へ向かう方向の流れを許容する。
【0060】
このように構成される薬液送出ポンプ41は、駆動装置44より伝達される動力によってダイヤフラム53を上下動させる。これにより、薬液タンク31の薬液が吸入ポート52aを通ってダイヤフラム53内に供給される。そして、ダイヤフラム53内の薬液が送出ポート52bを通って薬液注入ノズル12に送り出される。
【0061】
図3に示すように、液だれ防止弁としてのピンチバルブ61は、収容ケース62、接続部63、プランジャ64、バネ65、およびソレノイド66を備える。
【0062】
収容ケース62は、内部に空間が形成される所定の部材によって構成される。収容ケース62の内部には、プランジャ64とバネ65とソレノイド66とが収容される。収容ケース62の外部には、接続部63が取り付けられる。また、収容ケース62には、第一送出チューブ3aが挿通可能な形状を有するとともに内部の空間と外部とを連通する第一挿通部62aおよび第二挿通部62bが形成される。第一挿通部62aおよび第二挿通部62bは、それぞれ収容ケース62を切り欠くことで形成される。
【0063】
接続部63は、ケーブルを介して所定の電源に接続され、かかる電源より供給される電力をソレノイド66に供給する。
【0064】
プランジャ64は、上下方向に往復移動可能に構成される。プランジャ64には、第一押圧部64aおよび第二押圧部64bが形成される。第一押圧部64aおよび第二押圧部64bは、それぞれプランジャ64の下端部を切り欠くことで形成される。つまり、第一押圧部64aは、プランジャ64の切り欠かれた部分の上端部である。また、第二押圧部64bは、プランジャ64の切り欠かれた部分の下端部である。
【0065】
バネ65は、プランジャ64の外側に嵌装されて、プランジャ64を下方向に向かって付勢する。
【0066】
ソレノイド66は、収容ケース62の上部に配設される。
【0067】
このように構成されるピンチバルブ61に電力が供給されていない場合には、図4に示すように、バネ65の付勢力によって、プランジャ64は下方向に付勢される。従って、プランジャ64の第一押圧部64aと第一挿通部62aとが近接する。一方、プランジャ64の第二押圧部64bと第二挿通部62bとは離間する。
従って、第一挿通部64aに第一送出チューブ3aを挿通していた場合、第一送出チューブ3aは、プランジャ64の第一押圧部64aによって下方向に押圧される。このため、第一送出チューブ3aは、その内径を小さくするように、換言すれば、第一送出チューブ3aの流路を閉鎖するように塑性変形される。つまり、ピンチバルブ61は薬液の流れを規制する。
【0068】
ピンチバルブ61に電力が供給された場合には、図3に示すように、ソレノイド66の磁気作用によって、プランジャ64は上方向に付勢される。従って、プランジャ64の第一押圧部64aと第一挿通部62aとが離間する。一方、プランジャ64の第二押圧部64bと第二挿通部62bとは近接する。
従って、第一挿通部62aに第一送出チューブ3aを挿通していた場合、第一送出チューブ3aは、プランジャ64の第一押圧部64aによる下方向への押圧が解除される。このため、第一送出チューブ3aは、元の形状に戻る。これにより、ピンチバルブ61は薬液の流れを許容する。
【0069】
このように、第一挿通部62aに第一送出チューブ3aを挿通した場合、ピンチバルブ61は、電力が供給されたときに薬液供給経路Cを開放するとともに、電力が供給されなかったときに薬液供給経路Cを閉鎖する。
一方、第二挿通部62bに第一送出チューブ3aを挿通した場合、ピンチバルブ61は、電力が供給されたときに薬液供給経路Cを閉鎖するとともに、電力が供給されなかったときに薬液供給経路Cを開放する。
【0070】
また、ピンチバルブ61は、外部から圧力を加えることで第一送出チューブ3aを通る薬液供給経路Cを閉鎖する。従って、ピンチバルブ61は、薬液と直接接触することなく薬液の流れを規制できる。このため、ピンチバルブ61が薬液と直接接触する場合と比較して、ピンチバルブ61が薬液によって腐食することをより確実に防止できる。つまり、ピンチバルブ61の劣化を防止でき、ひいては、メンテナンス性を向上できる。
【0071】
図5に示すように、カバー部材71は、底板72、一対の側板73L・73R、天板74、および軟質部材75・75を備える。
【0072】
底板72は、略板状の部材の両端部をその板面に対して垂直に折り曲げたように形成される。
【0073】
一対の側板73L・73Rは、略板状の部材の両端部をその板面に対して垂直に折り曲げたように形成される。一対の側板73L・73Rの板面を成す部分の大きさは、底板72の板面を成す部分の大きさより小さくなるように形成される。
一対の側板73L・73Rの折り曲げられる両端部には、それぞれ第一送出チューブ3aの外径よりやや大きな内径を有する略半円状の第一切欠部73a・73aが形成される。また、第一切欠部73a・73aのいずれか一方(本実施形態では、後部の第一切欠部73a)の上部には、第一切欠部73aの内径よりやや小さな内径を有する略半円状の第二切欠部73cが形成される。
側板73Rの板面を成す部分には、略円状の貫通孔73eが形成される。
【0074】
天板74は、略板状の部材の両端部をその板面に対して垂直に折り曲げたように形成される。
【0075】
軟質部材75・75は、それぞれ略円状に形成される。軟質部材75・75には、それぞれ第一送出チューブ3aの外径と同程度の内径を有する孔部75aが形成される。軟質部材75・75は、それぞれゴム等の樹脂材料によって構成される。
【0076】
図3および図6に示すように、一対の側板73L・73Rは、その折り曲げられる端部同士が当接した状態で、下端部が底板72の内側に配置される。また、一対の側板73L・73Rの上端部は天板74の内側に配置される。そして、一対の側板73L・73Rは、ボルト等を介して、底板72および天板74に固定される。
これにより、一対の側板73L・73Rは、折り曲げられる部分同士が当接した状態で固定されることとなる。従って、第一切欠部73a・73aは、略円状の一対の第一連通孔73b・73bとして形成される。また、第二切欠部73cは、略円状の第二連通孔73dとして形成される。
【0077】
一対の第一連通孔73b・73bには、軟質部材75・75が取り付けられる。また、孔部75aには、第一送出チューブ3aが挿通される。このように、カバー部材71には、薬液供給経路Cに対応する位置に一対の第一連通孔73b・73bが形成されるとともに、薬液供給経路Cの構成部材である第一送出チューブ3aを保持する軟質部材75・75が一対の第一連通孔73b・73bに取り付けられる。
【0078】
図2および図6に示すように、カバー部材71は、ボルト等を介して底板72とポンプ駆動ケース42とを連結することで、ポンプ駆動ケース42に載置固定される。また、カバー部材71は、ボルト等を介して側板73Rとガイド部材23とを連結することで、ガイド部材23に固定される。
【0079】
また、カバー部材71の内側には、ボルト等を介してピンチバルブ61が取り付けられる。このとき、収容ケース62の第一挿通部62aには、第一送出チューブ3aが挿通される。また、接続部63は、ケーブルを介して制御部90に接続される。かかるケーブルは、第二連通孔73dを挿通する。
これにより、ピンチバルブ61(およびカバー部材71)は、薬液送出ポンプ41に隣接して配置される。また、カバー部材71は、ピンチバルブ61を外側より覆うこととなる。
【0080】
このように構成することにより、ピンチバルブ61が外部に露出する部分を低減できる。つまり、ピンチバルブ61の劣化を防止でき、ひいては、メンテナンス性を向上できる。
【0081】
確認計81は、薬液が薬液送出ポンプ41より薬液注入ノズル12に送り出されているかを確認するものである。図2に示すように、確認計81は、ガイド部材23の上端部にステー等を介して取り付けられる。従って、確認計81は、ピンチバルブ61の上部に配置される。つまり、確認計81は、薬液送出ポンプ41の近傍に配置される。
確認計81の内側には、浮子が備えられる。浮子は、確認計81に薬液が供給されたときに、確認計81の内部を移動する。従って、浮子が確認計81の内部を移動する状態を視認することによって、作業者は、薬液の流れを確認可能となる。また、確認計81には、第二送出チューブ3bが連結される。
このような確認計81は、浮子の移動方向が上下方向となるように配置される。従って、確認計81の近傍に配置される第二送出チューブ3bは、上下方向に沿った状態となる。
【0082】
また、第一送出チューブ3aのピンチバルブ61を通る部分は、水平方向に沿って配置される。従って、第一送出チューブ3aと第二送出チューブ3bとは、略直交することとなる。
ここで、第一送出チューブ3aは、前述のように軟質な部材によって構成されるため、取り回しが容易である。つまり、第二送出チューブ3bと連結される継手4まで容易に配設できる。また、ピンチバルブ61によってその流路を確実に閉鎖できる。
【0083】
これによれば、薬液供給部30は、運転席116から離間する位置に配置される。つまり、薬液供給部30を作業者から離間する位置に配置できるため、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。また、薬液供給部30は、薬液送出ポンプ41の近傍に薬液タンク31、ピンチバルブ61、および確認計81が配置される。また、薬液タンク31とピンチバルブ61と確認計81とは、それぞれ互いに近接する位置に配置される。言い換えれば、集中配置される。
また、例えば、薬液供給部30を一体部品(ユニット)として構成した場合には、当該一体部品を比較的小さなケースに収容し、各部材の間隔を短くするとともに運転席116から離間させることとにより、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。
【0084】
図1に示すように、制御部90は、サイドコラム117に取り付けられる。制御部90には、コントローラ91、ポンプスイッチ92、およびバルブスイッチ93が備えられる。
【0085】
コントローラ91は、ケーブル等を介してボンネット114内に搭載されるバッテリに接続される。また、コントローラ91は、ケーブル等を介して薬液送出ポンプ41およびピンチバルブ61の接続部63に接続される。
【0086】
ポンプスイッチ92は、薬液送出ポンプ41に電力を供給することが可能となるようにコントローラ91に連結される。従って、ポンプスイッチ92を切り替えることにより、薬液送出ポンプ41の駆動あるいは停止を行うことができる。
【0087】
バルブスイッチ93は、ピンチバルブ61に電力を供給することが可能となるようにコントローラ91に連結される。従って、バルブスイッチ93を切り替えることにより、ピンチバルブ61に電力の供給を行うあるいは電力の供給を停止できる。
つまり、バルブスイッチ93を切り替える(閉にする操作を行うあるいは開にする操作を行う)ことで、ピンチバルブ61による薬液供給経路Cの開放あるいは閉鎖を行うことができる。このとき、カバー部材71の貫通孔73eよりピンチバルブ61の動作を視認できる。
【0088】
次に、土壌消毒機1の制御構成ついて説明する。
【0089】
まず、薬液注入爪11は、土壌に挿し込まれる。そして、図1および図7に示すように、制御部90のポンプスイッチ92を切り替えてONにし、薬液送出ポンプ41に電力を供給する(S10、Yes)。これにより、薬液送出ポンプ41を駆動させるモータが駆動する。従って、薬液タンク31より薬液送出ポンプ41に薬液が吸い出される(図2に示す矢印Y1参照)。
このとき、コントローラ91によってバルブスイッチ93がONにされ、ピンチバルブ61にも電力が供給される。このため、図3および図7に示すように、ソレノイド66の磁気作用によってプランジャ64が上方向に付勢され、ピンチバルブ61は薬液供給経路Cを開放する(S20)。
【0090】
図2に示すように、薬液送出ポンプ41に吸い出された薬液は、送出ポート52bより薬液注入ノズル12に向かって送り出される。従って、薬液は、ピンチバルブ61および確認計81を通過する(図2に示す矢印Y2参照)。
そして、図1に示すように、確認計81を通過した後で、薬液は、薬液注入ノズル12の開口部12aより吐出される。
【0091】
このように、薬液注入ノズル12より薬液が吐出された状態で、トラクタ100を移動させることにより、土壌の消毒が行われる。そして、図1および図7に示すように、薬液の吐出を停止するときに、制御部90のポンプスイッチ92を切り替えてOFFにし、薬液送出ポンプ41への電力の供給を停止する(S10、No)。
このとき、コントローラ91によってバルブスイッチ93がOFFにされ、ピンチバルブ61への電力の供給が停止する。このため、図4および図7に示すように、プランジャ64にソレノイド66の磁気作用がかからなくなり、バネ65の付勢力によってプランジャ64が下方向に付勢される。従って、ピンチバルブ61は、第一送出チューブ3aを押圧する。つまり、ピンチバルブ61は薬液供給経路Cを閉鎖する(S30)。これにより、ピンチバルブ61によって薬液供給経路Cの上流側で薬液の供給を速やかに規制できるため、薬液注入ノズル12より薬液がたれることを防止できる。
【0092】
このように、ピンチバルブ61は、薬液送出ポンプ41が停止したときに、薬液注入ノズル12より薬液がたれることを防止する液だれ防止弁として機能する。また、制御部90は、ピンチバルブ61の開閉動作を制御する。
【0093】
また、図1に示すように、薬液供給経路Cの下流側では、二つの逆止弁5・5によって薬液送出ポンプ41が停止したときに送出チューブ3内に残された薬液が薬液注入ノズル12に送り出されることを規制する。つまり、薬液供給経路Cの上流側および下流側で薬液の流れを規制するため、薬液注入ノズル12より薬液がたれることを確実に防止できる。
【0094】
また、図4に示すように、軟質部材75・75は、第一送出チューブ3aをセンター出しできるため、ピンチバルブ61によって確実に第一送出チューブ3aを閉鎖できる。また、ピンチバルブ61に第一送出チューブ3aが押圧されたときに第一送出チューブ3aにかかる負荷を低減できる。このため、第一送出チューブ3aの劣化を防止でき、ひいては、メンテナンスの向上に寄与する。
【0095】
ピンチバルブ61の不具合等によって第一送出チューブ3aが押圧されたままの状態となっている場合があることを確認できるように、ピンチバルブ61を覆うカバー部材71の貫通孔73eよりピンチバルブ61が第一送出チューブ3aを閉鎖あるいは開放しているか視認できる。
このように、カバー部材71には、ピンチバルブ61が薬液供給経路Cを閉鎖する部分を視認可能な位置に貫通孔73eが形成される。このため、ピンチバルブ61に起因する土壌消毒機1の故障において、薬液を吐出しないで作業するというミスを防止できるとともに、その故障箇所の特定に寄与する。つまり、メンテナンス性を向上できる。
【0096】
なお、本実施形態の貫通孔73eは、略円状に形成したが、これに限定されるものでない。すなわち、貫通孔73eは、ピンチバルブ61の動作を確認できればよく、例えば、略四角形状であっても構わない。
【0097】
以下では、土壌消毒機1の取付けおよび取外しについて説明する。
【0098】
薬液タンク31とピンチバルブ61と確認計81とは、前述のように、薬液送出ポンプ41の近傍に配置される。このため、土壌消毒機1をトラクタ100に取り付けるときに、トラクタ100の周囲を移動することなく薬液供給部30を取り付けることができる。つまり、トラクタ100の前後両端部に分散して取り付けられる場合と比較して、容易に取り付けることができる。
また、土壌消毒機1をトラクタ100より取り外す場合においても、容易に取り外すことができる。つまり、薬液供給関連部材である薬液タンク31とピンチバルブ61と確認計81とを集中配置することで、土壌消毒機1のメンテナンス性を向上できる。
【0099】
以下では、本発明の効果を理解していただくために、送出チューブ3を閉鎖する手段として、ピンチバルブ61に代えて二方コックを備えた場合の土壌消毒機の操作について説明する。
【0100】
二方コックは、送出チューブ3に取り付けられ、作業者等が操作する(回動させる)ことにより、送出チューブ3の閉鎖あるいは開放を行うものである。このような二方コックは、例えば、制御部90の近傍に取り付けられる。
【0101】
まず、薬液送出ポンプ41を駆動させる前に、二方コックを操作して、送出チューブ3を解放する。そして、制御部90のポンプスイッチ92を切り替えて、薬液送出ポンプ41を駆動させる。これにより、薬液注入ノズル12より薬液が吐出される。かかる状態で、トラクタ100を移動させて土壌の消毒を行う。
土壌の消毒が終了すると、制御部90のポンプスイッチ92を切り替えて、薬液操出ポンプ41を停止させる。そして、二方コックを操作して、送出チューブ3を閉鎖する。
【0102】
ここで、二方コックを用いた土壌消毒機では、薬液送出ポンプ41を駆動させる前および停止させた後で、二方コックを操作する必要がある。
また、このような二方コックの操作を何回も繰り返すことにより二方コックが劣化し、ひいては、二方コックを操作する部分より液漏れする可能性がある。このとき、作業者の近傍で刺激臭が発生し、ひいては、作業者に負荷がかかる可能性がある。
【0103】
一方、ピンチバルブ61を用いた土壌消毒機1では、薬液送出ポンプ41に連動して、ピンチバルブ61が動作する。このため、別途送出チューブ3を閉鎖するための操作(工程)を行う必要がない。つまり、薬液がたれることを防止する手段としてピンチバルブ61を用いた場合には、土壌消毒における作業工程を簡略化できる。
また、二方コックを用いた場合にあるような、二方コックの操作する部分からの液漏れを防止できるため、作業者の近傍で刺激臭が発生し、作業者に負荷がかかることを防止できる。
【0104】
また、操作に慣れていない作業者等が二方コックを用いた土壌消毒機で土壌の消毒を行った場合、薬液送出ポンプ41を駆動させる前に二方コックを開にする操作を忘れる可能性がある。この場合、薬液送出ポンプ41は、薬液タンク31より吸い出した薬液を薬液注入ノズル12に送り出せない。つまり、薬液送出ポンプ41に負荷がかかる。
また、薬液送出ポンプ41を停止させた後で二方コックを閉にする操作を忘れる可能性がある。この場合、薬液送出ポンプ41を停止したときに薬液送出ポンプ41に残された薬液が、薬液注入ノズル12よりたれる場合がある。
【0105】
一方、ピンチバルブ61を用いた土壌消毒機1では、二方コックのように別途送出チューブ3を閉鎖あるいは解放するための操作を行う必要がない。従って、薬液送出ポンプ41を駆動させる前に、二方コックの操作を忘れることよって薬液送出ポンプ41に負荷がかかることを防止できる。言い換えれば、薬液送出ポンプ41にかかる負荷を低減でき、ひいてはメンテナンス性の向上に寄与する。また、薬液送出ポンプ41を停止させた後で、二方コックを閉にする操作を忘れることによって薬液注入ノズル12より薬液がたれることを防止できる。
【0106】
また、キャビンを具備するトラクタ100に土壌消毒機1を取り付ける場合(図1に示す符号130参照)、二方コックを用いた土壌消毒機では、運転席116の近傍、すなわち、キャビン内に送出チューブ3、二方コック、および制御部90を取り付ける必要がある。この場合、送出チューブ3によりキャビンのドアを開閉できなくなるため、キャビンを具備するトラクタ100に土壌消毒機を取り付けることができない。
【0107】
一方、ピンチバルブ61を用いた土壌消毒機1では、運転席116の外側に送出チューブ3が配置される。つまり、キャビンを具備するトラクタ100に土壌消毒機1を取り付けた場合でも、送出チューブ3をトラクタフェンダーの側面に沿わせるように配置することで、キャビンのドアを開閉できるため、キャビンを具備するトラクタに土壌消毒機1を取り付けることができる。
【0108】
このように、薬液を薬液注入ノズル12によって薬液供給経路Cを介して土壌に注入する土壌消毒機1であって、薬液を薬液注入ノズル12に送り出す薬液送出ポンプ41の近傍に薬液供給関連部材を集中配置するものである。
また、薬液供給関連部材は、薬液を貯溜する薬液タンク31と、薬液送出ポンプ41が停止したときに、薬液注入ノズル12より薬液がたれることを防止するピンチバルブ61と、薬液が薬液送出ポンプ41より薬液注入ノズル12に送り出されているかを確認する確認計81と、を含むものである。
【0109】
これにより、土壌消毒機1の取付けおよび取外しを容易に行える。つまりメンテナンス性を向上できる。
【0110】
また、制御部90は、薬液送出ポンプ41が停止したときに、ピンチバルブ61を閉鎖することにより薬液供給経路Cを閉鎖し、薬液送出ポンプ41が駆動したときに、ピンチバルブ61を開放することにより、薬液供給経路Cを開放するものである。
【0111】
これにより、二方コックを用いた場合にあるような、二方コックの閉め忘れを防止できる。つまり、薬液供給経路Cが閉鎖された状態で薬液送出ポンプ41が駆動することを防止できるため、薬液送出ポンプ41にかかる負荷を低減でき、ひいては、作業者が薬液から受ける負荷を低減できる。また、土壌消毒における作業工程を簡略化できる。
【0112】
また、ピンチバルブ61は、外部から圧力を加えることにより薬液供給経路Cを閉鎖するものである。
【0113】
これにより、ピンチバルブ61が薬液に直接接触することを防止できる。つまり、ピンチバルブ61が薬液によって腐食することを確実に防止できる。従って、メンテナンス性を向上できる。
【0114】
また、土壌消毒機1は、ピンチバルブ61を外側より覆うカバー部材71を具備するものである。
【0115】
これにより、ピンチバルブ61が外部に露出する部分を低減できる。つまり、ピンチバルブ61の劣化を防止でき、ひいては、メンテナンス性を向上できる。
【0116】
また、カバー部材71には、薬液供給経路Cに対応する位置に一対の連通孔73b・73bが形成されるとともに、一対の連通孔73b・73bに薬液供給経路Cの構成部材である送出チューブ3(第一送出チューブ3a)を保持する軟質部材75・75が取り付けられるものである。
【0117】
これにより、第一薬液送出チューブ3aをセンター出しできるため、ピンチバルブ61によって確実に第一薬液送出チューブ3aを閉鎖できる。また、ピンチバルブ61が薬液供給経路Cを閉鎖するときに送出チューブ3にかかる負荷を低減できる。つまり、メンテナンス性を向上できる。
【0118】
また、カバー部材71には、ピンチバルブ61が薬液供給経路Cを閉鎖する部分を視認可能な位置に貫通孔73eが形成されるものである。
【0119】
これにより、ピンチバルブ61の動作を容易に視認できるため、故障箇所の特定に寄与する。つまり、メンテナンス性を向上できる。
【0120】
また、本実施形態の薬液送出ポンプ41は、ダイヤフラム式のポンプを用いたが、これに限定されるものでない。すなわち、薬液送出ポンプ41は、往復駆動型であればよく、例えば、プランジャ式であっても構わない。
また、薬液送出ポンプ41や連結部材(例えば、送出チューブ3)や継手は、運転席116から離間する位置に配置することが好ましい。これにより、作業者が薬液から受ける負荷をより低減できる。
【0121】
また、本実施形態の薬液供給部30は、トラクタ100の走行部110の前部に挿着したが、これに限定されるものでない。すなわち、薬液供給部30は、トラクタ100の走行部110の後部に装着しても構わない。この場合、薬液供給経路Cが運転席116を跨がないため、作業者が薬液から受ける負荷をより低減できる。
【符号の説明】
【0122】
1 土壌消毒機
12 薬液注入ノズル
30 薬液供給部
31 薬液タンク
41 薬液送出ポンプ
61 ピンチバルブ
71 カバー部材
81 確認計
100 トラクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液供給部、制御部、薬液注入部からなり、前記制御部を操作することで前記薬液注入部より土壌に薬液を注入する土壌消毒機であって、
前記薬液を前記薬液注入部に送り出す薬液送出ポンプの近傍に前記薬液供給部を集中配置するとともに、前記薬液供給部を運転席から離間する位置に配置する土壌消毒機。
【請求項2】
前記薬液供給部と前記薬液注入部とを連結する連結部材を運転席の外側に配置する、
請求項1に記載の土壌消毒機。
【請求項3】
前記薬液供給部は、
前記薬液を貯溜する薬液タンクと、
前記薬液送出ポンプが停止したときに、前記薬液注入部より前記薬液がたれることを防止する液だれ防止弁と、
前記薬液が前記薬液送出ポンプより前記薬液注入部に送り出されているかを確認する確認計と、を含む請求項1または請求項2に記載の土壌消毒機。
【請求項4】
前記制御部は、
前記薬液送出ポンプが停止したときに、前記液だれ防止弁を閉鎖することにより薬液供給経路を閉鎖し、
前記薬液送出ポンプが駆動したときに、前記液だれ防止弁を開放することにより前記薬液供給経路を開放する請求項3に記載の土壌消毒機。
【請求項5】
前記液だれ防止弁は、
外部から圧力を加えることにより前記薬液供給経路を閉鎖する請求項3または請求項4に記載の土壌消毒機。
【請求項6】
前記液だれ防止弁を外側より覆うカバー部材を具備する請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の土壌消毒機。
【請求項7】
前記カバー部材には、
前記薬液供給経路に対応する位置に一対の連通孔が形成されるとともに、
前記一対の連通孔に前記薬液供給経路の構成部材を保持する軟質部材が取り付けられる請求項6に記載の土壌消毒機。
【請求項8】
前記カバー部材には、
前記液だれ防止弁が前記薬液供給経路を閉鎖する部分を視認可能な位置に貫通孔が形成される請求項7に記載の土壌消毒機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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