説明

土留壁の止水構造及び止水構造の構築方法

【課題】土留壁と本体構造物との間に異物(止水シート)が介在するのを防止し、土留壁と本体構造物との間での応力の伝達を確実に行う。
【解決手段】壁体2の内部に複数の鋼製の芯材3が間隔をおいて埋設された土留壁1を本体構造物35に利用する際に、該土留壁1を止水する土留壁1の止水構造10であって、前記土留壁1の前記本体構造物35側の壁面2aに設けられて、前記土留壁1の隣接する芯材3間を止水する止水手段11と、該止水手段11を前記芯材3に水密に連結する連結手段20と、前記止水手段11に設けられて前記土留壁1に作用する水を回収し、該水を貯水部に導く導水手段31とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土留壁の止水構造及び止水構造の構築方法に関し、特に、土留壁(地中連続壁等)を本体構造物の地下外壁等として利用する際に有効な土留壁の止水構造及び止水構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、地中に構築した土留壁(地中連続壁等)を本体構造物の地下外壁等として利用する場合、土留壁側から漏れ出た雨水や湧水等が本体構造物に作用し、本体構造物の耐久性に影響を与えるのを防止するため、土留壁の壁面に止水構造を施し、土留壁からの漏水が本体構造物に作用するのを防止している。
【0003】
このような土留壁からの漏水を防止する止水構造の一例として、例えば、特許文献1には、地中連続壁の構築後に、地中連続壁の前面側の地盤を掘削して地中連続壁の壁面を露出させ、この露出させた壁面の隣接する芯材のフランジ間に防水シートを配置し、防水シートの端部を両フランジの表面に両面接着体により接着することで、地中連続壁からの漏水を防止するように構成した止水構造が開示されている。
【0004】
しかし、このような構成の止水構造にあっては、地中連続壁の前面側に本体構造物の地下壁等を構築した場合に、地下壁等と地中連続壁の芯材のフランジとの間に異物(止水シート)が介在することになるため、本体構造物と地中連続壁との間で応力を確実に伝達させることが困難になる。
【0005】
一方、特許文献2には、地中連続壁の芯材のフランジの側部間に防水シートを配置し、防水シートの端部をフランジの側部に設けた受け部に弾性体を嵌合させることで固定するように構成した止水構造が開示されている。
【0006】
このような構成の止水構造にあっては、芯材のフランジの表面に防水シートが介在していないので、本体構造物と地中連続壁との間で応力を確実に伝達させることができる。
【0007】
しかし、受け部に弾性体を嵌合させることで、防水シートの端部をフランジの側部に固定しているため、地中連続壁に作用する水圧が大きい場合には、その水圧によって防水シートの端部が受け部から離脱し、防水シートによる防水性が損なわれてしまう虞がある。
【特許文献1】特開2005−307441号公報
【特許文献2】特開2004−232285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、土留壁(地中連続壁等)と本体構造物との間で応力を確実に伝達させることができるとともに、長期に亘って土留壁(地中連続壁等)を止水することができる土留壁の止水構造及び止水構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、壁体の内部に複数の鋼製の芯材が間隔をおいて埋設された土留壁を本体構造物に利用する際に、該土留壁を止水する土留壁の止水構造であって、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面に設けられて、前記土留壁の隣接する芯材間を止水する止水手段と、該止水手段を前記芯材に水密に連結する連結手段と、前記止水手段に設けられて前記土留壁に作用する水を回収し、該水を貯水部に導く導水手段とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
本発明による土留壁の止水構造によれば、土留壁の本体構造物側の壁面の隣接する芯材間が止水手段によって止水される。この場合、芯材の表面と本体構造物との間に異物(止水手段)が介在することはないので、土留壁と本体構造物との間で応力伝達を確実に行うことができる。また、止水手段は、土留壁に作用する水を回収して貯水部に導く導水手段を備えているので、土留壁に作用する水圧を低減させることができ、止水手段が水圧によって土留壁から離脱したりするのを防止できる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の土留壁の止水構造であって、前記止水手段は、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面に設けられて、前記土留壁の隣接する芯材間の壁面を止水するシート状の第1止水シートと、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面の下端部に設けられて、該下端部の壁面の全体及び該下端部と前記本体構造物の底版部との間を止水する第2止水シートと、前記本体構造物の底版部の表面を止水する第3止水シートとからなることを特徴とする。
【0012】
本発明による土留壁の止水構造によれば、土留壁の本体構造物側の壁面の隣接する芯材間が第1止水シートで止水され、土留壁の本体構造物側の壁面の下端部の全体、及び土留壁の壁面の下端部と本体構造物の底版部との間が第2止水シートで止水され、本体構造物の底版部の表面が第3止水シートによって止水されることになる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の土留壁の止水構造であって、前記連結手段は、前記芯材の側部に連結される内側支持部材と、該内側支持部材の表面に重合される内側シール部材と、該内側シール部材の表面に重合される外側シール部材と、該外側シール部材の表面に重合される外側支持部材と、前記外側支持部材、前記外側シール部材、前記内側シール部材、及び前記内側支持部材を一体に連結するねじ締結体とからなり、前記内側シール部材と前記外側シール部材との間で前記第1止水シートの端部が水密に挟持固定されることを特徴とする。
【0014】
本発明による土留壁の止水構造によれば、第1止水シートの端部を内側シール部材と外側シール部材との間で挟持し、この状態で第1止水シートの端部を内側支持部材の表面に重合し、外側シール部材の表面に外側支持部材を重合し、外側支持部材、外側シール部材、内側シール部材、及び内側支持部材をねじ締結体によって一体に連結することで、内側シール部材と外側シール部材との間で第1止水シートの端部が水密に挟持固定されることになる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の土留壁の止水構造であって、前記ねじ締結体は、前記外側支持部材、前記外側シール部材、前記内側シール部材、及び前記内側支持部材を貫通する締結ねじと、該締結ねじの前記内側支持部材から突出した先端部に螺着される締結ナットとを備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明による土留壁の止水構造によれば、外側支持部材、外側シール部材、内側シール部材、及び内側支持部材に締結ねじを貫通させ、内側支持部材から突出させた締結ねじの先端部に締結ナットを螺着させることで、外側支持部材、外側シール部材、内側シール部材、及び内側支持部材が一体に連結され、外側シール部材と内側シール部材との間で第1止水シートの端部が水密に挟持固定されることになる。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の土留壁の止水構造であって、前記外側支持部材の表面側には、前記締結ねじの貫通部をシールする補助シール部材が重合されていることを特徴とする。
【0018】
本発明による土留壁の止水構造によれば、外側支持部材の締結ねじの貫通部は、外側支持部材の表面側に重合される補助シール部材によってシールされることになる。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の土留壁の止水構造であって、前記締結ねじには、前記補助シール部材を前記外側支持部材の表面に圧接する補助ナットが螺着されていることを特徴とする。
【0020】
本発明による土留壁の止水構造によれば、補助ナットを締め付けることにより、補助シール部材が外側支持部材の表面に圧接され、外側支持部材の締結ねじの貫通部がシールされることになる。
【0021】
請求項7に係る発明は、請求項2から6の何れかに記載の土留壁の止水構造であって、前記第2止水シートは、内側に前記第1止水シートの下端部を介在させた状態で前記土留め壁の壁面の下端部に下端部が水密に一体に連結され、上端部が前記本体構造物の底版部の表面側に折り返された状態で、前記第3止水シートに水密に一体に連結されていることを特徴とする。
【0022】
本発明による土留壁の止水構造によれば、第2止水シートによって土留壁の下端部の壁面の全体、及び土留壁の下端部と本体構造物の底版部との間が止水されることになる。
【0023】
請求項8に係る発明は、壁体の内部に複数の鋼製の芯材が間隔をおいて埋設された土留壁を本体構造物に利用する際に、該土留壁を止水する土留壁の止水構造の構築方法であって、前記土留壁の構築後に、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面を削って前記芯材の表面を露出させるとともに、前記芯材の側部に予め取り付けておいた支持部材の表面を露出させる工程と、裏面側に予め導水部材を取り付けておいた第1止水シートの両端部を一対のシール部材間で挟持し、この状態で前記第1止水シートの両端部を前記支持部材の表面側に重合させ、さらに外側のシール部材の表面側に前記支持部材と対となる支持部材を重合させ、前記外側の支持部材、外側のシール部材、第1止水シート、内側のシール部材、及び内側の支持部材に締結ねじを貫通させ、該締結ねじに締結ナットを螺合させて締め付けることにより、前記第1止水シートの端部を前記芯材の側部に水密に連結する工程と、前記土留壁の前記本体構造物の底版部に対向する下端部の壁面の全体に第2止水シートを配置し、該第2止水シートの下端部を内側に前記第1止水シートの下端部を介在させた状態で該下端部の壁面に水密に一体に接合し、該第2止水シートの上端部を前記本体構造物の底版部の表面上に折り返して、底版部の表面に配置されている第3止水シートに水密に一体に接合する工程とを備えていることを特徴とする。
【0024】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の土留壁の止水構造の構築方法であって、前記内側の支持部材の表面側には前記締結ねじの貫通部を塞ぐ防護材が剥離可能に貼着され、前記内側の支持部材の裏面側の前記締結ねじの貫通部に対応する部分には締結ナットが接着され、該締結ナットの表面は被覆材によって被覆され、この状態で前記芯材を前記土留壁の構築場所に建て込み、該構築場所に充填材を打設して該充填材が固化した後に、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面を削って前記内側支持部材の表面側を露出させることを特徴とする。
【0025】
本発明による土留壁の止水構造の構築方法によれば、内側の支持部材の表面側には締結ねじの貫通部を塞ぐ防護材が剥離可能に貼着され、内側の支持部材の裏面側の締結ねじの貫通部に対応する部分には締結ナットが接着され、締結ナットの表面は被覆材によって被覆されているので、芯材を土留壁の構築場所に建て込んで構築場所に充填材を打設しても、充填材が内側の支持部材の締結ねじの貫通部に回り込んで、締結ねじの貫通を阻害するようなことはない。また、締結ナットのねじ孔に充填材が回り込んで、締結ナットのねじ孔への締結ねじの螺合を阻害するようなこともない。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明の土留壁の止水構造及び止水構造の構築方法によれば、土留壁の芯材の表面と本体構造物との間に異物(止水手段(第1止水シート))が介在することがないので、土留壁と本体構造物との間で応力を確実に伝達させることができる。また、第1止水シートの端部は芯材のフランジの側部に連結手段によって強固に連結されているので、土留壁に作用する水圧によって第1止水シートが剥離するようなことはなく、長期に亘って良好な止水性能を発揮することができる。さらに、第1止水シートには導水手段が設けられ、この導水手段によって雨水や湧水等の水が回収された貯水部に導かれることになるので、土留壁に作用する水圧を低減させることができ、これによっても止水手段が設置位置から離脱するのを防止でき、長期に亘って止水手段による良好な止水性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による土留壁の止水構造の一実施の形態が示されていて、図1は第1止水シートと土留壁との関係を示す断面図、図2は第2止水シート及び第3止水シートと土留壁との関係を示す断面図、図3は第1止水シートと連結手段との関係を示す断面図、図4は第1止水シートの平面図である。
【0028】
すなわち、本実施の形態に示す土留壁1の止水構造10は、土留壁1を本体構造物35の地下外壁等として利用する際に適用され、土留壁1を止水して土留壁1からの漏水が本体構造物35に作用するのを阻止するのに有効なものであって、土留壁1を止水する止水手段11と、止水手段11を土留壁1に連結する連結手段20と、土留壁1に作用する水を回収して貯水部に導く導水手段31とを備えている。
【0029】
土留壁1は、例えば、地盤に平面視長方形状の溝を所定の深さで掘削し、この溝内に複数の鋼製の芯材3を所定の間隔ごとに建て込み、溝内にトレミー管を用いて充填材としてのコンクリート6を打設することにより溝の形状に合致した壁体2を構築し、このような壁体2を地盤に連続して複数構築し、隣接する壁体2間を一体連結して構成した地中連続壁1であって、この地中連続壁1を本体構造物35の地下外壁等として利用するものである。
【0030】
本実施の形態においては、図1に示すように、地中連続壁1を構成する芯材3にH型鋼を用い、各芯材3のフランジ4の表面4aが壁体2の壁面2aに沿い、リブ5が壁体2の壁面2aと直交するように、複数の芯材3を各壁体2の内部に所定の間隔ごとに埋設している。
【0031】
止水手段11は、シート状の止水シート12、13、14であって、合成樹脂系、合成ゴム系、アスファルト系等の止水性を有する材料からなる市販の止水シートを用いることができる。本実施の形態においては、合成樹脂系の止水シート12、13、14(エバブリッド;商品名)を用い、図1及び図2に示すように、地中連続壁1の隣接する芯材3のフランジ4間に第1止水シート12を設け、地中連続壁1の本体構造物35の底版部36に対向する部分に第2止水シート13を設け、本体構造物35の底版部36の表面36aに第3止水シート14を設けている。
【0032】
第1止水シート12は、図4に示すように、地中連続壁1の隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aの全体を被覆する短冊状に形成され、この短冊状の第1止水シート12の幅方向の両端部を後述する連結手段20によってフランジ4の側部4bに水密に一体に連結することで、隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aが止水され、壁面2aからの漏水が防止される。
【0033】
第1止水シート12の裏面側の中央部には、導水手段31が第1止水シート12の略全長に亘って設けられ、この導水手段31によって地中連続壁1に作用する雨水や湧水等の水が回収されて地中連続壁1の開削底部に設けられている貯水部に導かれ、貯水部から排水ポンプによって外部に排水され、地中連続壁1に作用する水圧が低減され、第1止水シート12、後述する第2止水シート13、及び第3止水シート14に作用する水圧が低減される。なお、この排水ポンプによる水の回収作業は本体構造物35の構築が完了するまで連続して行われる。
【0034】
導水手段31としては、例えば、導水性を有する材料(各種の発泡樹脂等)からなる平板状の導水部材31を用いることができる。但し、これに限定することになく、第1止水シート12の裏面側に貯水部に水を導く導水路を形成することができるもの(例えば、スペーサ等)であればよい。
【0035】
連結手段20は、図3に示すように、芯材3のフランジ4の側部4bに一体に連結される支持部材21(内側支持部材21)と、内側支持部材21の表面に重合される一対のシール部材22、23(内側シール部材22及び外側シール部材23)と、一対のシール部材22、23の表面に重合される内側支持部材21と対となる支持部材24(外側支持部材24)と、外側支持部材24の表面側に重合される補助シール部材25と、補助シール部材25、外側支持部材24、外側シール部材23、内側シール部材22、及び内側支持部材21を一体に連結するねじ締結体26とを備えている。
【0036】
内側支持部材21は、平鋼等からなる帯板状をなすものであって、芯材3の略全長に亘る長さに形成され、芯材3のフランジ4の側部4b中央部に表裏面がフランジ4の表面4aと平行となるように配置し、この状態でフランジ4の側部4bとの間を全長に亘って所定の間隔ごとに溶接により一体に接合することでフランジ4の側部4bに一体に連結される。
【0037】
芯材3のフランジ4の側部4bと内側支持部材21との間は、それらの間を溶接により一体に連結した後に、その表面に芯材3の略全長に亘って防水シール15を接着剤により一体に接合することでシールされ、これにより、芯材3のフランジ4と内側支持部材21との間が止水される。
【0038】
内側支持部材21には、表裏面間を貫通する貫通孔21aが全長に亘って所定の間隔ごとに複数箇所に設けられ、各貫通孔21a内をねじ締結体26の締結ねじ27が貫通可能に構成されている。
【0039】
内側シール部材22は、水膨張性ゴムシール材(水に接した場合に、ゴム中の吸水成分が水を吸収し、自己の体積が膨張することにより、隙間を充填して水密性を高める機能を有する材料)からなる帯状をなすものであって、内側支持部材21と同一長さ、かつ内側支持部21材よりも小幅に形成される。
【0040】
内側シール部材22の内側支持部材21の貫通孔21aに対応する部分には、それぞれ表裏面間を貫通する貫通孔22aが設けられ、各貫通孔22a内をねじ締結体26の締結ねじ27が貫通可能に構成されている。内側シール部材22は、各貫通孔22aが内側支持部材21の各貫通孔21aと合致するように、内側支持部材21の表面側に重合される。本実施の形態においては、内側シール部材22にウルトラシール(商品名)を用いている。
【0041】
外側シール部材23は、内側シール部材22と同様に、水膨張性ゴムシール材からなる帯状をなすものであって、内側シール部材22と同一長さ、幅、厚みに形成され、内側シール部材22の各貫通孔22aに対応する部分にそれぞれ表裏面間を貫通する貫通孔23aが設けられ、各貫通孔23a内をねじ締結体26の締結ねじ27が貫通可能に構成されている。
【0042】
外側シール部材23は、内側シール部材22の表面側に各貫通孔23aが内側シール部材22の貫通孔22aと合致するように重合され、この外側シール部材23と内側シール部材22との間で第1止水シート12の幅方向の端部が水密に挟持固定される。本実施の形態においては、外側シール部材23に内側シール部材22と同様のウルトラシール(商品名)を用いている。
【0043】
外側支持部材24は、内側支持部材21と同様に、平鋼等からなる帯板状をなすものであって、内側支持部材21と同一幅、長さに形成されるとともに、内側支持部材21の貫通孔21aに対応する部分にそれぞれ表裏面間を貫通する貫通孔24aが設けられ、各貫通孔24a内をねじ締結体26の締結ねじ27が貫通可能に構成されている。外側支持部材24は、外側シール部材23の表面側に各貫通孔24aが外側シール部材23の貫通孔23aと合致するように重合される。
【0044】
ねじ締結体26は、外側支持部材24の表面側から外側支持部材24の貫通孔24a、外側シール部材23の貫通孔23a、内側シール部材22の貫通孔22a、及び内側支持部材21の貫通孔21aを貫通し、先端部が内側支持部材21の裏面側に突出する締結ねじ27と、内側支持部材21の裏面側に突出した締結ねじ27の先端部に螺着される締結ナット28とを備えている。
【0045】
内側シール部材22と外側シール部材23との間に第1止水シート12の幅方向の端部を位置し、この状態で締結ねじ27と締結ナット28とを相互に締め付けることにより、第1止水シート12の幅方向の端部が内側シール部材22と外側シール部材23との間で水密に挟持固定される。この場合、第1止水シート12の幅方向の両端部には、外側シール部材23の貫通孔23a及び内側シール部材22の貫通孔22aに対応する部分にそれぞれ表裏面間を貫通する貫通孔12aが設けられ、この貫通孔12a内を締結ねじ27が貫通するように構成されている。
【0046】
外側支持部材24の表面側の各貫通孔24aに対応する部分には補助シール部材25が重合され、この補助シール部材25の中心部を締結ねじ27を貫通させさた状態で、締結ねじ27の頭部27a側に螺着させた補助ナット29を締め付けることにより、補助シール部材25がワッシャ30を介して外側支持部材24の表面に圧接される。この補助シール部材25により、外側支持部材24の表面側から外側支持部材24の貫通孔24a、外側シール部材23の貫通孔23a、内側シール部材22の貫通孔22a、及び内側支持部材21の貫通孔21aがシールされる。
【0047】
補助シール部材25は、内側シール部材22及び外側シール部材23と同様に、水膨張性ゴムシール材からなるものであって、円板状をなすとともに、周縁部に全周に亘る環状の突起25bが一体に設けられ、この突起25bを外側支持部材23の表面に圧接させることで外側支持部材24の表面側から各貫通孔24a、23a、22a、21aがシールされる。本実施の形態においては、補助シール部材25にウルトラリング(商品名)を用いている。
【0048】
上記の場合、外側支持部材24の貫通孔24a、外側シール部材23の貫通孔23a、内側シール部材22の貫通孔22a、及び内側支持部材21の貫通孔21aにシール剤等を充填し、補助シール部材25とシール剤との協働によって各貫通孔24a、23a、22a、21aをシールするようにしてもよい。
【0049】
第2止水シート13は、図2に示すように、シート状をなすものであって、本体構造物35の底版部36に対向する地中連続壁1の下端部の壁面2aの全体を覆う大きさに形成され、内側に第1止水シート12の下端部を介在させた状態で下端部が地中連続壁1の下端部の壁面2a及び芯材3のフランジ4の表面4aに接着剤により一体に接合される。第2止水シート13は、下端部が地中連続壁1に接合された状態で、本体構造物35の底版部36の表面36a側に折り返され、上端部が底版部36の表面36aを覆うように配置されているシート状の第3止水シート14に接着剤により一体に接合される。
【0050】
第2止水シート13は、その下端部を地中連続壁1の下端部に接着剤によって一体に接合するだけでもよいが、芯材3のフランジ4の側部4bに対応する部分を連結手段20によってフランジ4の側部4bに連結するようにしてもよい。このように連結手段20によって第2止水シート13を地中連続壁1のフランジ4の側部4bに連結することで、さらに強固に第2止水シート13を地中連続壁1に接合することができる。
【0051】
この場合、第2止水シート13の連結手段20は、第1止水シート12と兼用の連結手段20でフランジ4の側部4bに連結してもよいし、第1止水シート12と別体の連結手段20によってフランジ4の側部4bに連結するようにしてもよい。
【0052】
次に、上記のように構成した土留壁1の止水構造10の構築方法について説明する。
まず、図5に示すように、H型鋼からなる芯材3のフランジ4の側部4bに内側支持部材21を溶接により一体に連結し、フランジ4の側部4bと内側支持部材21と間に防水シール15を接着剤によって一体に接合してそれらの間をシールする。
【0053】
この場合、内側支持部材21の表面がフランジ4の表面4aと平行となるように、かつ、内側支持部材21の表面に第1止水シート12を重合したときに、第1止水シート12の表面とフランジ4の表面4aとが面一となるように、フランジ4の側部4bに内側支持部材21を溶接により一体に連結する。
【0054】
次に、内側支持部材21の表面側に発泡スチロール等からなる板状の防護材16を接着剤により一体に接合し、内側支持部材21の各貫通孔21aの開口部を閉塞する。さらに、内側支持部材21の裏面側の各貫通孔21aに対応する部分に締結ナット28を接着剤により一体に取り付け、締結ナット28の表面を粘着テープ等からなる被覆材17によって被覆し、締結ナット28のねじ孔の開口部を閉塞する。
【0055】
そして、この状態で芯材3を地盤に設けた溝内に建て込み、図6に示すように、溝内にトレミー管によって充填材としてのコンクリート6を打設し、複数の芯材3が所定の間隔ごとに埋設された壁体2を構築し、このような構成の壁体2を複数連続して構築し、隣接する壁体2間を一体に連結することにより地中連続壁1を構築する。
【0056】
次に、コンクリート6が固化して所定の強度を発現した後に、地中連続壁1の前面側(本体構造物35側)の地盤を掘削して地中連続壁1の前面側を露出させ、地中連続壁1の前面側の破線で示すコンクリート6の部分を削って芯材3のフランジ4の表面4aを露出させ、さらに内側支持部材21の表面から防護材16を剥離させて内側支持部材21の表面を露出させる。
この場合、芯材3のフランジ4の表面4aと隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aが面一になるように、コンクリート6の表面を平滑化する。
【0057】
次に、図7に示すように、隣接する左側の芯材3のフランジ4に取り付けられている内側支持部材21の表面に内側シール部材22を重合し、内側支持部材21の貫通孔21aと内側シール部材22の貫通孔22aとを合致させ、この状態で内側シール部材22を内側支持部材21の表面に接着剤により一体に接合する。
【0058】
次に、図8に示すように、隣接する芯材3のフランジ4間に第1止水シート12を配置し、第1止水シート12の幅方向の一端部(左端部)を内側シール部材22の表面に重合し、第1止水シート12の幅方向の一端面(左端面)を芯材3のフランジ4の側部4bに当接させ、この状態で第1止水シートの幅方向の一端部(左端部)を内側シール部材22の表面に接着剤によって一体に接合する。
【0059】
次に、第1止水シート12の幅方向の一端部(左端部)を内側シール部材22の表面に重合した状態で、第1止水シート12の表面側から内側シール部材22の貫通孔22aの位置を確認し、きり等の工具を用いて内側シール部材22の貫通孔22aに対応する第1止水シート12の部分に貫通孔22aに連通する貫通孔12aを設ける。
なお、第1止水シートを現場に搬入する前に、予め第1止水シート12の幅方向の両端部に貫通孔12aを設けておいてもよい。
【0060】
次に、図9に示すように、第1止水シート12の幅方向の一端部(左端部)の表面に外側シール部材23を重合し、外側シール部材23の貫通孔23aを第1止水シート12の貫通孔12aに合致させ、この状態で外側シール部材23を第1止水シート12の表面に接着剤によって一体に接合する。
【0061】
次に、図10に示すように、外側シール部材23の表面に外側支持部材24を重合し、外側支持部材24の貫通孔24aを外側シール部材23の貫通孔23aに合致させ、仮固定する。例えば、外側支持部材24を外側シール部材23の表面に接着剤により一体に接合する。
【0062】
次に、図11に示すように、ねじ締結体26の締結ねじ27に補助ナット29、ワッシャ30、及び補助シール部材25をそれらの順に取り付ける。そして、図12に示すように、外側支持部材24の表面側から、締結ねじ27を外側支持部材24の貫通孔24a、外側シール部材23の貫通孔23a、第1止水シート12の貫通孔12a、内側シール部材22の貫通孔22a、及び内側支持部材21の貫通孔21a内を貫通させ、締結ねじ27の先端部を内側支持部材21の裏面側の締結ナット28に螺合させて締め付ける。
【0063】
そして、図13に示すように、補助ナット29を締め付け、ワッシャ30を介して補助シール部材25の突起25bを外側支持部材24の表面に圧接させ、内側シール部材22と外側シール部材23との間で第1止水シート12の幅方向の一端部(左端部)を水密に挟持固定する。
【0064】
次に、図14に示すように、隣接する右側の芯材3のフランジ4に取り付けられている内側支持部材21の表面に前述した手順と同様の手順によって内側シール部材22を接着剤によって一体に接合し、この状態で、第1止水シート12の幅方向の他端部(右端部)を隣接する右側の芯材3のフランジ4の側部4bに取り付けられている内側支持部材21の表面とフランジ4の表面4aとの間に架け渡し、第1止水シート12の右端部をテープ18によってフランジ4の表面4aに仮止めする。
【0065】
この場合、第1止水シート12の裏面側に取り付けられている導水部材31は、地中連続壁1の前面側の開削底部に設けられている貯水部に下端部が挿入され、第1止水シート12の裏面側に導水部材31による水路が形成される。
【0066】
そして、図15に示すように、前述した手順と同様の手順により、第1止水シート12の他端部(右端部)の表面に外側シール部材22を重合し、外側シール部材22の表面に外側支持部材24を重合し、この状態でねじ締結体26の締結ねじ27を外側支持部材24の表面側から、外側支持部材24の貫通孔24a、外側シール部材23の貫通孔23a、第1止水シート12の貫通孔12a、内側シール部材22の貫通孔22a、及び内側支持部材21の貫通孔21a内を貫通させ、締結ねじ27の先端部を内側支持部材21の裏面側の締結ナット28に螺合させて締め付け、補助ナット29を締め付けてワッシャ30を介して補助シール部材25の突起25bを外側支持部材24の表面に圧接させ、内側シール部材22と外側シール部材23との間で第1止水シート12の幅方向の他端部(右端部)を水密に挟持固定する。そして、フランジ4の側部4bに合わせて第1止水シート12の他端部(右端部)の余長部分を切断する。
【0067】
そして、このような第1止水シート12の取付け作業を各隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aに対して行うことにより、地中連続壁1の壁体2の各隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aを止水することができる。
【0068】
そして、上記のように第1止水シート12を各隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aに取り付けた後に、図16に示すように、地中連続壁1の前面側の地盤を本体構造物35の底版部36を構築する位置まで更に深く掘り下げ、図17に示すように、底版部36に対向する地中連続壁1の下端部の隣接する芯材3のフランジ4間の壁面2aを平滑面6aに仕上げる。
【0069】
そして、図18に示すように、地中連続壁1の本体構造物35の底版部36に対向する下端部に第2止水シート13を配置し、第2止水シート13によって地中連続壁1の下端部の全体を覆い、この状態で第2止水シート13の下端部を地中連続壁1の下端部に接着剤により一体に接合する。
【0070】
この場合、第2止水シート13と地中連続壁1の壁面2aとの間に各第1止水シート12の下端部を介在させた状態で、第2止水シート13の下端部を地中連続壁1の壁面2a及び芯材3のフランジ4の表面4aに接着剤により一体に接合する。
【0071】
また、第2止水シート13の下端部の芯材3のフランジ4の側部4bに対応する部分を連結手段20によってフランジ4の側部4bに一体に連結する。
この場合、連結手段20は、内側支持部材21及び内側シール部材22に第1止水シート12の連結手段20と共通のものを用いているが別体でもよい。外側シール部材23及び外側支持部材24に第1止水シート12の連結手段20と別体のものを用い、第1止水シート12の外側シール部材23及び外側支持部材24の下端と第2止水シート13の外側シール部材23及び外側支持部材24の上端との間に隙間を形成する。
【0072】
そして、上記の隙間を介して第2止水シート13を第1止水シート12の外側支持部材24の表面側に引き出し、第2止水シート13の上端部をテープ18によって第1止水シート12の外側支持部材24の表面に仮止めする。そして、この状態で、本体構造物35の底版部36となる部分に砕石37を所定の厚みで敷設し、砕石37の上部に捨てコンクリート38を所定の厚みで打設し、本体構造物35の底版部36を構築する。なお、19は、第2止水シート13と外側支持部材24とが緩衝するのを防止するための弾性体からなる緩衝材である。
【0073】
そして、図19に示すように、第2止水シート13を本体構造物35の底版部36の表面側に折り返し、底版部36の表面に設けられている底版部36の表面を止水する第3止水シート14の端部に第2止水シート13の上端部を重合させ、重合部を接着剤によって一体に接合する。このようにして、第2止水シート13を設けることにより、地中連続壁1の下端部が止水されるとともに、地中連続壁1の下端部と本体構造物35の底版部36との間が止水されることになる。
【0074】
そして、上記のように第1止水シート12、第2止水シート13、及び第3止水シート14を設けた後に、底版部36の上部に鉄筋を配筋し、コンクリートを打設することにより、本体構造物35を構築することができる。
【0075】
上記のように構成した本実施の形態による土留壁1の止水構造10及び止水構造10の構築方法にあっては、地中連続壁1の隣接する芯材3のフランジ4間に第1止水シート12を設けて、第1止水シート12の幅方向の両端部を連結手段20によってフランジ4の側部4bに水密に一体に連結し、地中連続壁1の下端部に第2止水シート13を設けて、第2止水シート13によって地中連続壁1の下端部の全体を止水するとともに、第2止水シート13によって地中連続壁1の下端部と本体構造物35の底版部36との間を止水し、さらに、第3止水シート14によって本体構造物35の底版部36の表面36aを止水するように構成したので、地中連続壁1の芯材3のフランジ4の表面4aと本体構造物35との間に異物(第1止水シート12)が介在するようことはない。従って、地中連続壁1と本体構造物35との間で応力伝達を確実に行うことができる。
【0076】
また、第1止水シート12は、両端部が連結手段20によって地中連続壁1の芯材3のフランジ4の側部4bに強固に連結され、第2止水シート13は下端部が地中連続壁1に接着剤によって強固に接合され、上端部が接着剤によって第3止水シート14に強固に接合されているので、地中連続壁1に作用する水圧によって第1止水シート12が地中連続壁1から剥離したり、第2止水シート13と地中連続壁1との接合部、及び第2止水シート13と第3止水シート14との接合部に剥がれが生じたりするようなことはなく、長期に亘って良好な止水性能を発揮することができ、地中連続壁1からの漏水が本体構造物35に発生するのを防止することができる。
【0077】
さらに、第1止水シート12の裏面側に導水部材31を設けて、導水部材31によって地中連続壁1に作用する雨水、湧水等の水を回収して貯水部に導き、貯水部から排水ポンプによって外部に排水するように構成したので、工事期間中は地中連続壁1に作用する雨水、湧水等の水圧を低減させることができ、第1止水シート12、第2止水シート13、及び第3止水シート14に作用する水圧を低減させることができる。
【0078】
なお、上記の説明においては、地中連続壁1の壁体2の充填材にコンクリート6を用いた例をについて説明したが、コンクリート6の代わりにソイルセメントを用いてもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏するものである。
また、前記の説明においては、地中連続壁1の芯材3としてH型鋼を用いた例について説明したが、C型鋼、I型鋼等の他の鋼材を用いてもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明による土留壁の止水構造の一実施の形態の第1止水シートと土留壁との関係を示した断面図である。
【図2】第2止水シート及び第3止水シートと土留壁との関係を示した断面図である。
【図3】第1止水シートと連結手段との関係を示した断面図である。
【図4】第1止水シートの平面図である。
【図5】止水構造の構築方法を示した説明図であって、芯材のフランジに内側支持部材を取り付けた状態を示した断面図である。
【図6】土留壁の構築後に土留壁の前面側を削った状態を示した断面図である。
【図7】隣接する左側の芯材のフランジに取り付けられている内側支持部材の表面に内側シール部材を重合した状態を示した断面図である。
【図8】内側シール部材の表面に第1止水シートの右端部を重合した状態を示した断面図である。
【図9】第1止水シートの表面に外側シール部材を重合した状態を示した断面図である。
【図10】外側シール部材の表面に外側支持部材を重合した状態を示した断面図である。
【図11】ねじ締結体に補助ナット、ワッシャ及び補助シール部材を取り付けた状態を示した説明図である。
【図12】内側支持部材、内側シール部材、第1止水シート、外側シール部材、外側支持部材にねじ締結体を取り付けた状態を示した説明図である。
【図13】ねじ締結体の補助ナットを締め付けることにより、内側シール部材と外側シール部材との間で第1止水シートを水密に挟持固定した状態を示した説明図である。
【図14】隣接する右側の芯材のフランジに取り付けられている内側支持部材に内側シール部材を重合し、第1止水シートの右端部を内側支持部材とフランジとの間に架け渡した状態を示した説明図である。
【図15】隣接する右側の芯材のフランジに第1止水シートの右端部を連結手段により水密に一体に連結した状態を示した説明図である。
【図16】土留壁の前面側の地盤を本体構造物の底版部に対応する深さまで掘り下げた状態を示した説明図である。
【図17】土留壁の下端部の壁面の状態を示した説明図である。
【図18】土留壁の下端部に第2止水シートの下端部に接合した状態を示した断面図である。
【図19】第2止水シートの上端部を本体構造物の底版部の表面上に折り返し、第2止水シートの上端部を底版部の表面に配置される第3止水シートに接合した状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0080】
1 土留壁(地中連続壁)
2 壁体 2a 壁面 3 芯材
4 フランジ 4a 表面 4b 側部
5 リブ 6 充填材(コンクリート) 6a 平滑面
10 止水構造 11 止水手段 12 第1止水シート
12a 貫通孔 13 第2止水シート 14 第3止水シート
15 防水シール 16 防護材 17 被覆材
18 テープ 19 緩衝材 20 連結手段
21 内側支持部材 21a 貫通孔 22 内側シール部材
22a 貫通孔 23 外側シール部材 23a 貫通孔
24 外側支持部材 24a 貫通孔 25 補助シール部材
25a 貫通孔 25b 貫通孔 26 ねじ締結体
27 締結ねじ 27a 頭部 28 締結ナット
29 補助ナット 30 ワッシャ 31 導水手段(導水部材)
35 本体構造物 36 底版部 36a 表面
37 砕石 38 捨てコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の内部に複数の鋼製の芯材が間隔をおいて埋設された土留壁を本体構造物に利用する際に、該土留壁を止水する土留壁の止水構造であって、
前記土留壁の前記本体構造物側の壁面に設けられて、前記土留壁の隣接する芯材間を止水する止水手段と、該止水手段を前記芯材に水密に連結する連結手段と、前記止水手段に設けられて前記土留壁に作用する水を回収し、該水を貯水部に導く導水手段とを備えてなることを特徴とする土留壁の止水構造。
【請求項2】
前記止水手段は、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面に設けられて、前記土留壁の隣接する芯材間の壁面を止水するシート状の第1止水シートと、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面の下端部に設けられて、該下端部の壁面の全体及び該下端部と前記本体構造物の底版部との間を止水する第2止水シートと、前記本体構造物の底版部の表面を止水する第3止水シートとからなることを特徴とする請求項1に記載の土留壁の止水構造。
【請求項3】
前記連結手段は、前記芯材の側部に連結される内側支持部材と、該内側支持部材の表面に重合される内側シール部材と、該内側シール部材の表面に重合される外側シール部材と、該外側シール部材の表面に重合される外側支持部材と、前記外側支持部材、前記外側シール部材、前記内側シール部材、及び前記内側支持部材を一体に連結するねじ締結体とからなり、前記内側シール部材と前記外側シール部材との間で前記第1止水シートの端部が水密に挟持固定されることを特徴とする請求項2に記載の土留壁の止水構造。
【請求項4】
前記ねじ締結体は、前記外側支持部材、前記外側シール部材、前記内側シール部材、及び前記内側支持部材を貫通する締結ねじと、該締結ねじの前記内側支持部材から突出した先端部に螺着される締結ナットとを備えていることを特徴とする請求項3に記載の土留壁の止水構造。
【請求項5】
前記外側支持部材の表面側には、前記締結ねじの貫通部をシールする補助シール部材が重合されていることを特徴とする請求項4に記載の土留壁の止水構造。
【請求項6】
前記締結ねじには、前記補助シール部材を前記外側支持部材の表面に圧接する補助ナットが螺着されていることを特徴とする請求項5に記載の土留壁の止水構造。
【請求項7】
前記第2止水シートは、内側に前記第1止水シートの下端部を介在させた状態で前記土留め壁の壁面の下端部に下端部が水密に一体に連結され、上端部が前記本体構造物の底版部の表面側に折り返された状態で、前記第3止水シートに水密に一体に連結されていることを特徴とする請求項2から6の何れかに記載の土留壁の止水構造。
【請求項8】
壁体の内部に複数の鋼製の芯材が間隔をおいて埋設された土留壁を本体構造物に利用する際に、該土留壁を止水する土留壁の止水構造の構築方法であって、
前記土留壁の構築後に、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面を削って前記芯材の表面を露出させるとともに、前記芯材の側部に予め取り付けておいた支持部材の表面を露出させる工程と、
裏面側に予め導水部材を取り付けておいた第1止水シートの両端部を一対のシール部材間で挟持し、この状態で前記第1止水シートの両端部を前記支持部材の表面側に重合させ、さらに外側のシール部材の表面側に前記支持部材と対となる支持部材を重合させ、前記外側の支持部材、外側のシール部材、第1止水シート、内側のシール部材、及び内側の支持部材に締結ねじを貫通させ、該締結ねじに締結ナットを螺合させて締め付けることにより、前記第1止水シートの端部を前記芯材の側部に水密に連結する工程と、
前記土留壁の前記本体構造物の底版部に対向する下端部の壁面の全体に第2止水シートを配置し、該第2止水シートの下端部を内側に前記第1止水シートの下端部を介在させた状態で該下端部の壁面に水密に一体に接合し、該第2止水シートの上端部を前記本体構造物の底版部の表面上に折り返して、底版部の表面に配置されている第3止水シートに水密に一体に接合する工程とを備えていることを特徴とする土留壁の止水構造の構築方法。
【請求項9】
前記内側の支持部材の表面側には前記締結ねじの貫通部を塞ぐ防護材が剥離可能に貼着され、前記内側の支持部材の裏面側の前記締結ねじの貫通部に対応する部分には締結ナットが接着され、該締結ナットの表面は被覆材によって被覆され、この状態で前記芯材を前記土留壁の構築場所に建て込み、該構築場所に充填材を打設して該充填材が固化した後に、前記土留壁の前記本体構造物側の壁面を削って前記内側支持部材の表面側を露出させることを特徴とする請求項8に記載の土留壁の止水構造の構築方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−30241(P2009−30241A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192315(P2007−192315)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】