説明

土練機

【課題】断面に渦状のスクリュー痕がほとんど無く、均一な密度を持った坏土を得ることが可能な土練機を提供する。
【解決手段】ドラム3内部にスクリュー5を備え、ドラム3内部に導入された成形用原料をスクリュー5にて混練し、ドラム3先端の開口部8より成形用の坏土として押し出す土練機1であって、ドラム3先端の開口部8を覆うようにしてスクリュー5の先端部に一体的に取り付けられた整流用治具9を備え、当該整流用治具9に、開口部8から押し出された坏土が流入する2つ以上の入口側開口部10と、入口側開口部10から流入した坏土を1つの流れにまとめて排出する1つの出口側開口部11とを連通させてなる流路が形成された土練機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用原料を混練して成形用の坏土を得るために使用される土練機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車排ガスをはじめとした各種内燃機関排気ガスの浄化触媒用担体や脱臭用触媒担体、各種濾過機器用フィルタ、熱交換器ユニット、或いは燃料電池の改質触媒用担体等の化学反応機器用担体として、ハニカム状の構造体(ハニカム構造体)が広く使用されている。通常、このようなハニカム構造体は、セラミック原料等からなる坏土を押出成形して所定のハニカム構造を持った成形体(ハニカム成形体)を得、これを乾燥・焼成することにより製造される。
【0003】
一般に、このような成形体の成形に用いられる坏土は、図3に示すような土練機を用いて得られる。この土練機21は、内部に一次スクリュー4を備えた一次ドラム2と、内部に二次スクリュー5を備えた二次ドラム3とを有し、一次ドラム2と二次ドラム3とは、複数の流路(貫通孔)が形成された多孔板6を介して内部的に連通した構造となっており、一次スクリュー4及び二次スクリュー5には、その回転軸の全体に渡って螺旋状の羽根15、16が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
原料投入口7より一次ドラム2内に導入された成形用原料は、まず、この一次ドラム2内において一次スクリュー4の回転によりせん断力を付与されながら混練された後、多孔板6に設けられた複数の流路を通過して二次ドラム3内に移動し、二次ドラム3内において真空引きされるとともに、二次スクリュー5の回転により再びせん断力を付与されながら更に混練され、出口である二次ドラム3先端の開口部8より成形用の坏土として押し出される。
【0005】
ところで、このような従来の土練機において、開口部8から押し出された坏土の断面を調べると、渦状のスクリュー痕が観察される。このスクリュー痕は、坏土の密度に差が有ることを意味し、このように断面において密度差のある坏土が、そのままの状態で成形機に送られてしまうと、最終的に得られる成形体にも各部で密度差が生じやすく、それが変形等の欠陥を発生させる原因の1つとなる。
【特許文献1】特開2005−66946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、断面に渦状のスクリュー痕がほとんど無く、均一な密度を持った坏土を得ることが可能な土練機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の土練機が提供される。
【0008】
[1] ドラム内部にスクリューを備え、前記ドラム内部に導入された成形用原料を前記スクリューにて混練し、前記ドラム先端の開口部より成形用の坏土として押し出す土練機であって、前記ドラム先端の前記開口部を覆うようにして前記スクリューの先端部に一体的に取り付けられた整流用治具を備え、当該整流用治具に、前記開口部から押し出された坏土が流入する2つ以上の入口側開口部と、前記2つ以上の入口側開口部から流入した坏土を1つの流れにまとめて排出する1つの出口側開口部とを連通させてなる流路が形成された土練機。
【0009】
[2] 前記2つ以上の入口側開口部の合計面積が、前記ドラム先端の前記開口部の面積の20〜80%である[1]に記載の土練機。
【発明の効果】
【0010】
本発明の土練機によれば、断面に渦状のスクリュー痕がほとんど無く、均一な密度を持った坏土を得ることができる。そして、本発明の土練機により得られた均一な密度を持った坏土にて成形体の成形を行えば、変形等の欠陥が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施形態について図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0012】
図1は、本発明に係る土練機の構造の一例を示す概略断面図である。この土練機1は、内部に一次スクリュー4を備えた一次ドラム2と、内部に二次スクリュー5を備えた二次ドラム3とを有し、一次ドラム2と二次ドラム3とは、複数の流路(貫通孔)が形成された多孔板6を介して内部的に連通した構造となっている。
【0013】
更に、この土練機1は、本発明の特徴的な構成として、二次ドラム3先端の開口部8を覆うようにして二次スクリュー5の先端部に取り付けられた整流用治具9を備える。図2A〜Cは、この整流用治具9の構造の一例を示す説明図で、図2Aは断面図、図2Bは一端面側から見た平面図、図2Cは他端面側から見た平面図である。この整流用治具9は、連結部材13によって、二次スクリュー5の先端部に一体的に取り付けられており、二次スクリュー5と共に回転するようになっている。また、この整流用治具9には、開口部8から押し出された坏土が流入する2つ以上の入口側開口部10と、それら2つ以上の入口側開口部10から流入した坏土を1つの流れにまとめて排出する1つの出口側開口部11とを連通させてなる流路12が形成されている。
【0014】
原料投入口7より一次ドラム2内に導入された成形用原料は、まず、この一次ドラム2内において一次スクリュー4の回転によりせん断力を付与されながら混練された後、多孔板6に設けられた複数の流路を通過して二次ドラム3内に移動し、二次ドラム3内において真空引きされるとともに、二次スクリュー5の回転により再びせん断力を付与されながら更に混練され、二次ドラム3先端の開口部8より坏土として押し出されて、整流用治具9の入口側開口部10より流路12内に流入する。こうして、2つ以上の入口側開口部10から流路12内に流入した坏土は、整流用治具9の内部において合流し、1つの流れにまとめられて、1つの出口側開口部11から押し出される。このように、スクリュー5によって混練された坏土を、整流用治具9により、一旦複数の流れに分岐させた後、再び1つの流れにまとめて排出するという過程を経ることにより、坏土からスクリュー痕を消失させ、密度の均一な坏土とすることができる。
【0015】
2つ以上の入口側開口部10と1つの出口側開口部11とを連通する流路12は、複数の流路が整流用治具9の内部で1本の流路に合流する構造となっている。整流用治具9の入口側開口部11については、同形状・同寸法の開口部が二次スクリュー5の軸心を中心とする同心円上に等間隔で配置されていることが、流路12内への坏土の流入をスムーズにし、また、坏土の密度を均一化する観点から好ましい。入口側開口部10の数は2つ以上であれば特に制限はないが、入口側開口部10の合計面積が、二次ドラム3先端の開口部8の面積の20〜80%であることが好ましい。この面積比率が20%未満では、流路12内へ坏土が流入しにくくなる場合があり、一方、80%を超えると、坏土の密度を均一化が不十分となる場合がある。なお、入口側開口部10が1つでは、坏土の密度を均一化することは難しい。整流用治具9の出口側開口部11は、二次スクリュー5の軸心と中心が一致するような円形の開口部であることが好ましい。
【0016】
なお、本発明の土練機1においては、整流用治具9とそれが取り付けられる二次スクリュー5の先端部以外の構造は、特に特殊な構造とする必要はなく、従来の土練機の構造をそのまま採用することができる。
【0017】
また、上記実施形態は、スクリューを内部に備えたドラムを2個有する土練機の例を示しているが、本発明の土練機は、スクリューを内部に備えたドラムを1個のみ有するものであっても良いし、3個以上有するものであっても良い。ただし、何れの場合においても、先端部に整流用治具が取り付けられるのは、坏土の最終的な出口となる開口部を有するドラム内に備えられたスクリューである。
【0018】
本発明の土練機により得られる坏土の用途は特に限定されるものではないが、例えば、セルを仕切る隔壁が肉薄で、坏土の密度の不均一である場合に成形体に変形が生じやすいハニカム成形体の押出成形などに好適に使用できる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例)
成形原料として、セラミックス粉末、分散媒、バインダ等の混合物用い、これを図1に示すような土練機1であって、二次スクリュー5の先端部に、図2A〜Cに示すような2つの入口側開口部10と1つの出口側開口部11とを連通する流路12が形成された整流用治具(入口側開口部10の合計面積は、二次ドラム3先端の開口部8の面積の50%)を取り付けたものに投入して混練し、整流用治具9の出口側開口部11より500kg/hの押出量で断面直径が30cmの円柱状の坏土を押し出した。こうして押し出された坏土を20cmの長さに切断して、その押出方向に平行な断面と、押出方向に直交する断面とを観察したところ、スクリュー痕はほとんど見られず、坏土の密度の均一性が高いことが確認された。
【0021】
(比較例)
二次スクリュー5の先端部に整流用治具が取り付けられていない以外は実施例で用いた土練機と同様の構造を有する図3に示すような従来構造の土練機21に、実施例と同じ成形原料を投入して混練し、二次ドラム3の開口部8より500kg/hの押出量で断面直径が30cmの円柱状の坏土を押し出した。こうして押し出された坏土について、実施例と同様に断面の観察を行ったところ、スクリュー痕が明瞭に見られ、坏土の密度にバラツキが有ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、ハニカム成形体などの成形に使用する坏土を得るための土練機として好適に利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る土練機の構造の一例を示す概略断面図である。
【図2A】本発明に係る土練機においてスクリュー先端部に取り付けて使用される整流用部材の構造の一例を示す断面図である。
【図2B】本発明に係る土練機においてスクリュー先端部に取り付けて使用される整流用部材の構造の一例を示す一端面側から見た平面図である。
【図2C】本発明に係る土練機においてスクリュー先端部に取り付けて使用される整流用部材の構造の一例を示す他端面側から見た断面図である。
【図3】従来の土練機の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1:土練機、2:一次ドラム、3:二次ドラム、4:一次スクリュー、5:二次スクリュー、6:多孔板、7:原料投入口、8:開口部、9:整流用治具、10:入口側開口部、11:出口側開口部、12:流路、13:連結部材、15:羽根、16:羽根、21:土練機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム内部にスクリューを備え、前記ドラム内部に導入された成形用原料を前記スクリューにて混練し、前記ドラム先端の開口部より成形用の坏土として押し出す土練機であって、
前記ドラム先端の前記開口部を覆うようにして前記スクリューの先端部に一体的に取り付けられた整流用治具を備え、当該整流用治具に、前記開口部から押し出された坏土が流入する2つ以上の入口側開口部と、前記2つ以上の入口側開口部から流入した坏土を1つの流れにまとめて排出する1つの出口側開口部とを連通させてなる流路が形成された土練機。
【請求項2】
前記2つ以上の入口側開口部の合計面積が、前記ドラム先端の前記開口部の面積の20〜80%である請求項1に記載の土練機。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−126592(P2008−126592A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316108(P2006−316108)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】