説明

圧入装置

【課題】 圧入の良否を容易かつ確実に判定する。
【解決手段】 圧入すべきバルブシートVSを圧入ホーン3を介して起振する超音波振動子4と、起振されたバルブシートVSを押圧してこれをシリンダヘッドCHのポート開口POに圧入するエアシリンダ2と、超音波振動子4の振幅を一定にするように当該超音波振動子4への投入電力を制御する超音波発信回路8と、エアシリンダ2による圧入荷重を検出する荷重センサ7と、エアシリンダ2による圧入ストロークを検出するストロークセンサ5と、圧入が良好になされた時の投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化を基準変化として記憶しておき、圧入作業時における投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化の少なくとも一つが上記基準変化から外れた時に圧入不良と判定する判定回路6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧入装置に関し、特に、超音波振動を利用して圧入を行う圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドのポート開口内にバルブシートを圧入する圧入装置等においては、従来、油圧シリンダで圧入ヘッドを作動させて1〜2t/cm2程度の大きな荷重をバルブシートに印加することにより圧入している。そしてこの場合、バルブシートの圧入の良否は、油圧シリンダに付設したストロークセンサや荷重センサの信号を解析して判定している。なお、特許文献1には超音波を印加しながら圧入する方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭50−36343
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の圧入装置では、圧入代や圧入時の摩擦係数のばらつき等の影響を受けて確実な圧入良否の判定ができないという問題があった。
【0004】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、圧入の良否を容易かつ確実に判定できる圧入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、圧入すべき部品(VS)を起振する超音波振動子(4)と、起振された部品(VS)を押圧してこれを被圧入部材(CH)に圧入する押圧手段(2)と、超音波振動子(4)の振幅を一定にするように当該超音波振動子(4)への投入電力を制御する制御手段(8)と、押圧手段(2)による圧入荷重を検出する荷重検出手段(7)と、押圧手段(2)による圧入ストロークを検出するストローク検出手段(5)と、圧入が良好になされた時の投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化を基準変化として記憶しておき、圧入作業時における投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化の少なくとも一つが上記基準変化から外れた時に圧入不良と判定する判定手段(6)とを備える。
【0006】
本発明において、圧入時にカジリ等を生じると圧入負荷が変動し、これに応じて圧電振動子への投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの少なくとも一つが正常圧入時の基準変化から外れる。したがって、この基準変化からの外れを知ることによって容易かつ確実に圧入の良否を判定することができる。
【0007】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、圧入の良否を容易かつ確実に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に圧入装置の構成を示す。図1において、圧入器1が設けられて、当該圧入器1はエアシリンダ2と、エアシリンダ2によって上下に移動させられる圧入ホーン3を備えている。圧入ホーン3の基端部内には超音波振動子4が設けられている。エアシリンダ1の移動量(圧入ストローク)はこれに付設されたストロークセンサ5で検出されて、ストローク信号5aとして判定回路6に入力している。エアシリンダ2と圧入ホーン3の間には荷重センサ7が設けられて圧入荷重が検出されており、荷重信号7aとして判定回路6に入力している。
【0010】
超音波振動子4は制御手段としての超音波発信回路8に接続されており、超音波発信回路8には、所定周波数で超音波振動子4を振動させるように、公知の周波数制御回路、電力増幅回路、昇圧トランス等が備えられている。超音波発信回路8にはまた、圧入負荷に応じて供給電力を増大させて超音波振動子4の振幅値を一定に保つ公知の定振幅化回路が備えられており、この時の超音波振動子4への供給電力が検出されてこれに応じた電力信号8aが超音波発信回路8から上記判定回路6に入力している。
【0011】
このような圧入装置で部品としてのバルブシートVSを被圧入部材としてのシリンダヘッドCHのポート開口PO内に圧入する場合には、圧入ホーン3の先端をバルブシートVSに当てた状態で超音波振動子4、そして圧入ホーン3を振動させ、エアシリンダ2を下方へ伸長させて圧入ホーン3によってバルブシートVSをシリンダヘッドCHのポート開口PO内に押し込む。
【0012】
圧入が良好になされた場合には、ストローク信号5aが直線的に変化して(図2)圧入ストロークはスムーズに変化し、荷重信号7aで示される圧入荷重は途中でピークを示しつつ(図3)、圧入端で急激に上昇する。この圧入の間、図4に示すように、超音波振動子4への投入電力を示す電力信号8aはほぼ一定の値となる。
【0013】
これに対して、カジリ等の発生によって圧入が良好になされない場合には、ストローク信号5aが途中で急変して(図5)圧入ストロークの変化がスムーズでなくなり、荷重信号7aも圧入端に至る前に急激に上昇する(図6)。そして、電力信号8aは急激に上昇変動する(図7)。
【0014】
そこで、判定回路6は、圧入が良好に行われた時の上記ストローク信号5a、荷重信号7a、電力信号8aの波形(図2〜図4)を予め基準変化波形として記憶している。そして、判定回路6は、実際の圧入作業の際に得られるストローク信号5a、荷重信号7a、電力信号8aの少なくとも一つの波形が例えば図5〜図7で示すように上記基準変化波形から所定量外れた場合に圧入不良と判定する。このようにして、簡易かつ確実に圧入の良否が判定される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す圧入装置の全体構成を示す図である。
【図2】圧入が良好になされている場合の圧入深さの経時変化を示す図である。
【図3】圧入が良好になされている場合の圧入荷重の経時変化を示す図である。
【図4】圧入が良好になされている場合の供給電力の経時変化を示す図である。
【図5】圧入が良好になされていない場合の圧入深さの経時変化を示す図である。
【図6】圧入が良好になされていない場合の圧入荷重の経時変化を示す図である。
【図7】圧入が良好になされていない場合の供給電力の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1…圧入器、2…エアシリンダ、3…圧入ホーン、4…超音波振動子、5…ストロークセンサ、6…判定回路、7…荷重センサ、8…超音波発信回路、CH…シリンダヘッド、VS…バルブシート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入すべき部品を起振する超音波振動子と、起振された前記部品を押圧してこれを被圧入部材に圧入する押圧手段と、前記超音波振動子の振幅を一定にするように当該超音波振動子への投入電力を制御する制御手段と、前記押圧手段による圧入荷重を検出する荷重検出手段と、前記押圧手段による圧入ストロークを検出するストローク検出手段と、圧入が良好になされたときの投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化を基準変化として記憶しておき、圧入作業時における投入電力、圧入荷重および圧入ストロークの各変化の少なくとも一つが前記基準変化から外れた時に圧入不良と判定する判定手段とを備えた圧入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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