説明

圧力センサ

【課題】ハウジングに圧力検出部を有するステムを2つ備えた圧力センサにおいて、圧力媒体の低圧から高圧までの幅広い圧力レンジで圧力を検出するに際し、低圧の圧力を精度良く検出する。
【解決手段】ハウジング10に2つのステムを設け、一方のステムのダイヤフラムを薄くして感度を向上させて低圧用とし、他方を高圧用とする。また、低圧用のステムに対応した圧力導入孔13の開口部12に、一定値の圧力が導入されると開口部12を閉塞する弁部材16を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出部が形成されたダイヤフラムを有するステムを圧力導入可能なハウジングに2個ネジ結合してなる圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧力導入可能な圧力導入通路を有するハウジングに、圧力検出部が形成されたダイヤフラムを有する2個のステムが備えられた圧力センサが、例えば特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、軸一端側に圧力検出用のダイヤフラムおよび当該ダイヤフラムの変形に応じた電気信号を出力するセンサチップを有し、軸他端側にハウジングの圧力導入通路と連通する開口部を有する中空筒状の金属製ステムがハウジング内にネジを利用して2個収納されている圧力センサが提案されている。
【0003】
上記圧力センサに用いられる各ステムはそれぞれ同じ構造をなしており、各センサチップにおいて同じ出力関数で圧力測定全領域が測定されるようになっている。このような圧力センサは、例えば内燃機関への燃料供給に用いられるコモンレール内の圧力を検出する際に用いられる。
【特許文献1】特開2001−272297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ハウジングに圧力検出のためのステムが2つ設けられているものの、各ステムそれぞれでは低圧から高圧まで幅広い圧力レンジの圧力が検出されるため、センシング精度を向上できなかった。このような場合、特に低圧での測定精度を高めることが困難だった。
【0005】
そこで、低圧の測定精度を高める方法として、各ステムのうち一方を低圧域用、他方を高圧域用として測定領域を分けることが考えられる。具体的に、各ステムのうち低圧域を測定するもののダイヤフラムを薄くすることで圧力変形の歪みを感度良くとることが考えられる。しかし、薄くしたダイヤフラムの強度不足により、当該ダイヤフラムが高圧域の圧力によって破壊される可能性があった。
【0006】
本発明は、上記点に鑑み、ハウジングに圧力検出部を有するステムを2つ備えた圧力センサにおいて、圧力媒体の低圧から高圧までの幅広い圧力レンジで圧力を検出するに際し、低圧の圧力を精度良く検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、各ステム(20)のうち一方のステムのダイヤフラム(21)上の検出部で第1の圧力範囲の圧力が検出され、他方のステムのダイヤフラム上の検出部(30)で第2の圧力範囲の圧力が検出されるようになっており、一方のステムに対応した圧力導入孔(13)の開口部(12)には、第1の圧力範囲の最大圧力値が導入されると開口部の壁面に密着して開口部を閉塞する閉塞部材(16、19)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
これにより、第1の圧力範囲の圧力を超える圧力が各圧力導入孔に導入される場合、閉塞部材が設けられた圧力導入孔が当該閉塞部材によって閉塞することができるので、他方のステムに備えられた検出部にて第2の圧力範囲の圧力を検出する際に、一方のステムのダイヤフラムや検出部の破壊を防止することができる。
【0009】
すなわち、第1の圧力範囲が低圧域等の精度良く検出したい圧力範囲に相当する場合、閉塞部材にて開口部が閉塞されていない状態では検出部にて単位圧力当たりの出力値幅を増加させて第1の圧力範囲の圧力を精度良く検出することができる。そして、第1の圧力範囲が高圧域に相当する場合、第1の圧力範囲を検出する検出部やステムを保護しつつ、当該高圧域の圧力を検出することができる。以上のようにして、圧力媒体の圧力を幅広い圧力レンジで検出することができる。
【0010】
この場合、一方のステムに対応した圧力導入孔の開口部を、当該開口部から圧力導入孔側に径が小さくなるテーパー面(15)とし、開口部に第1の圧力範囲の最大圧力値が導入されると閉塞部材をテーパー面に密着させて開口部を閉塞することができる。このように、開口部の形状をテーパー面とすることもできる。
【0011】
上記第2の圧力範囲は、第1の圧力範囲の最大圧力値を含んだ範囲とすることができる。このようにして圧力範囲を設定する場合、第1の圧力範囲を圧力媒体の低圧域、第2の圧力範囲を第1の圧力範囲の圧力よりも大きい圧力が含まれる高圧域と規定することができる。
【0012】
そして、各ステムのうち一方のステムのダイヤフラムを、他方のステムのダイヤフラムよりも薄くすることもできる。これにより、ダイヤフラムが薄くされ感度が向上されたステムに設けられた検出部にて精度良く圧力検出を行うことができる。
【0013】
上記閉塞部材は、板が球面状に加工され、板の一方の面が凸面(16a)、当該凸面に対向する面が凹面(16b)となった形態になっており、当該板の球面部分に切り込みが入れられることによって凸面から突出したばね部(16c)が設けられた弁部材(16)とすることができる。このような弁部材を用いても、開口部を閉塞することができる。
【0014】
このような弁部材のばね部は、テーパー面に接触するように開口部に設置されていることが好ましい。すなわち、圧力が大きくなっていくと、弁部材の球面部分(詳しくは凹面)が圧力媒体によってテーパー面側に押されていき、やがてばね部が球面部分に収納されることで球面部分がテーパー面に密着し、開口部を閉塞することができる。
【0015】
また、圧力媒体を開口部内に導入する貫通孔(17a)を備えた蓋部材(17)をハウジングに取り付けることで閉塞部材を開口部内に収納することができる。これにより、閉塞部材がハウジングから外れてしまうことを防止できる。
【0016】
さらに、閉塞部材を圧力導入孔の径よりも大きい弾性体(19)とすることもできる。このような弾性体は、圧力媒体を開口部内に導入する貫通孔を備えた蓋部材(18)がハウジングに取り付けられ開口部内に収納されていることが好ましい。これにより、弾性体がハウジングから外れてしまうことを防止できる。
【0017】
そして、各センサチップの出力信号をそれぞれ信号処理する処理回路が形成された回路基板(40)が備えられ、当該回路基板の処理回路では、一方のステムのダイヤフラム上の検出部の出力に対する増幅率を、他方のステムのダイヤフラム上の検出部の出力の対する増幅率よりも大きくすることもできる。これにより、第1の圧力範囲の圧力を高感度で検出することができる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0020】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される圧力センサは、自動車の燃料噴射系(例えばコモンレ−ル)における燃料パイプに取り付けられ、この燃料パイプ内の圧力媒体としての液体または気液混合気の圧力(例えば200MPa程度)を検出するものとして用いられる。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る圧力センサの断面図である。この図に示されるように、圧力センサ100は、ハウジング10と、ステム20と、センサチップ30と、回路基板40と、ピン50と、メタルケース60と、ターミナル70と、コネクタケース80とを備えて構成されている。
【0022】
ハウジング10は、切削や冷間鍛造等により加工された中空形状の金属製のケースであり、その一端側の外周面には、燃料配管等の被測定体にネジ結合可能なネジ部11が形成されている。ハウジング10の一端側には、ハウジング10の一端に形成された2つの開口部12からハウジング10の他端側に延びる2つの孔、すなわち2つの圧力導入孔13が形成されており、各圧力導入孔13が圧力導入通路としての役割を果たす。各圧力導入孔13は、各開口部12からハウジング10の他端側に向かって斜めに形成されている。また、ハウジング10は、ボディアースとしての役割を果たすものである。
【0023】
ステム20は、中空円筒形状に加工された金属製の部材であり、ハウジング10の他端側に2個取り付けられ、ハウジング10内に収納されている。各ステム20は、外周部に設けられた雄ねじ部21が、ハウジング10の圧力導入孔13に形成された雌ねじ部14にネジ止めされてハウジング10内にそれぞれ固定されている。これにより、ステム20は高いシール面圧を発生させる軸力を維持してハウジング10に固定されている。本実施形態では、ハウジング10に2つ設けられた各圧力導入孔13に対応した2つのステム20がハウジング10にネジ結合されている。
【0024】
各ステム20は、その軸の一端側にハウジング10に導入された圧力によって変形可能な薄肉状のダイヤフラム21を有し、軸の他端側にダイヤフラム21に繋がる通路22を有する。そして、当該通路22とハウジング10の圧力導入孔13とが連通された状態にされ、被測定体の圧力が圧力導入孔13からダイヤフラム21に伝えられるようになっている。
【0025】
センサチップ30は、単結晶Si(シリコン)からなる圧力検出用のチップであり、各ステム20のダイヤフラム21上に低融点ガラスを介してそれぞれ接合固定されている。各センサチップ30はブリッジ回路を有しており、各ステム20のうち各圧力導入孔13と連通する通路22を介して各ステム20内部に導入された圧力によって各ダイヤフラム21が変形したとき、この変形に応じた抵抗値変化を電気信号に変換して出力する検出部(歪みゲージ)として機能するものである。なお、センサチップ30は、本発明の検出部に相当する。
【0026】
回路基板40は、各ステム20の各ダイヤフラム21上の2つのセンサチップ30から出力された各検出信号を増幅・特性調整する回路を備えたものである。この回路基板40は、各ステム20の各ダイヤフラム21側に配置され、各センサチップ30と回路基板40に設けられた回路とがワイヤボンディングされ、各センサチップ30の出力が回路基板40の回路に入力されるようになっている。
【0027】
ピン50は、回路基板40で処理された電気信号を外部に出力するための部材であり、回路基板40の回路と電気的に接続されている。本実施形態では、各センサチップ30に対応して2本のピン50が樹脂部材51にモールド成型されている。
【0028】
メタルケース60は、電磁環境適合性(EMC;Electro Magnetic Compatibility)を確保するためのものであり、各ピン50に対応したコンデンサ61が備えられている。各コンデンサ61は各ピン50によって貫かれた状態になっており、当該コンデンサ61によって外部から圧力センサ100に入力されたノイズを除去できるようになっている。
【0029】
ターミナル70は、回路基板40で処理された各センサチップ30に対応した信号をそれぞれ圧力センサ100の外部に出力するものである。本実施形態では、少なくとも各センサチップ30に対応したターミナル70が樹脂部材71にインサート成型されている。各ターミナル70は、各ピン50にはんだ等により電気的に接続されている。
【0030】
コネクタケース80は、圧力センサ100で検出された圧力値の信号を外部に出力するためのコネクタをなすものであり、樹脂等により形成されたものである。このようなコネクタケース80は、各ターミナル70が露出するようにハウジング10の他端側にかしめられ固定されている。そして、コネクタケース80に図示しない外部コネクタが接続されることで、自動車のECU等へ配線部材を介して電気的に接続される。以上が、本実施形態に係る圧力センサ100の全体構成である。
【0031】
本実施形態では、各ステム20にそれぞれ設けられる各センサチップ30は、低圧用のものと高圧用のものとが採用される。このように各センサチップ30に検出する圧力領域を分担させるため、各ステム20のうち低圧測定に対応するもののダイヤフラム21が高圧測定に対応するダイヤフラム21よりも薄くされている。これにより、低圧用のステム20における圧力の検出感度を向上させている。
【0032】
図2は、図1に示される圧力センサ100において検出可能な圧力レンジを示した図である。この図に示されるように、圧力センサ100で検出可能な圧力レンジにおいて、低圧領域の圧力は各センサチップ30のうち低圧用のもので検出され、高圧領域の圧力は各センサチップ30のうち高圧用のもので検出されるようになっている。このように、本実施形態では、各センサチップ30が検出する圧力領域が分かれており、圧力媒体の圧力の大きさに応じて、圧力を検出するセンサチップ30が異なっている。なお、圧力領域のうち、低圧域の圧力範囲が本発明の第1の圧力範囲に相当し、高圧域が本発明の第2の圧力範囲に相当する。
【0033】
また、低圧用のセンサチップ30が備えられたステム20に対応する圧力導入孔13の開口部12には、圧力媒体が高圧領域になると当該開口部12を閉じる弁部材が設置されている。図3は、図1に示される圧力センサ100のA部の拡大図である。この図に示されるように、圧力導入孔13の開口部12は、テーパー形状をなしている。すなわち、開口部12からハウジング10の他端側に径が小さくなる先細り状になっており、テーパー面15が形成されている。
【0034】
このような開口部のテーパー面15に弁部材16が設置されている。当該弁部材16は、圧力導入孔13に一定値の圧力が導入された場合、開口部12を閉じる機能を有するものである。すなわち、図2に示される圧力領域のうち、圧力媒体の圧力が低圧領域である場合、弁部材16は圧力導入孔13と被測定体とを繋げ、圧力媒体が圧力導入孔13に導入され、低圧用のセンサチップ30にて圧力が検出される。なお、弁部材16は、本発明の閉塞部材に相当する。
【0035】
そして、図2に示される圧力領域のうち、圧力媒体の圧力が高圧領域である場合、弁部材16は開口部12を閉じて圧力導入孔13を密閉し、圧力媒体が圧力導入孔13に導入されず、高圧用のセンサチップ30にて圧力が検出される。
【0036】
このような機能を有する弁部材16は、金属板が加工され、半球面状をなしている。すなわち、板の一方の面が凸面16a、当該凸面16aに対向する面が凹面16bになっている。そして、板に複数のばね部16cが設けられている。
【0037】
図4は、図3のB矢視図であり、弁部材16の平面図を示したものである。この図に示されるように、本実施形態では弁部材16の球面部分に切り込みが入れられることによってばね部16cが例えば4カ所設けられており、各ばね部16cは凸面16aから突出している。これにより、凸面16aと凹面16bとが貫通した貫通孔16dが設けられている。
【0038】
そして、圧力導入孔13に圧力が導入されない状態では、図3に示されるように、複数のばね部16cが開口部12のテーパー面15に接触した状態となっており、圧力媒体が弁部材16の各貫通孔16dから圧力導入孔13に導入されるようになっている。逆に、弁部材16に一定値の圧力が加わると、弁部材16の凸面16aが圧力媒体によって開口部12のテーパー面15に押し付けられ、密着する。これにより、弁部材16の各貫通孔16dが閉じて開口部12が閉塞され、圧力導入孔13に圧力媒体が導入されないようになっている。
【0039】
上記弁部材16は、図3に示されるように、板状の蓋部材17の外縁部がハウジング10に溶接されることで開口部12内に収納されている。当該蓋部材17には、開口部12内に圧力媒体を導く貫通孔17aが設けられている。本実施形態では、メッシュ状の貫通孔17aが蓋部材17に設けられている。
【0040】
かかる構成を有する圧力センサ100の組付方法について説明する。まず、センサチップ30が低融点ガラスで接合された各ステム20をハウジング10にそれぞれネジ結合し、各ステム20をハウジング10に固定する。次に、回路基板40をハウジング10内に設置するとともに、回路基板40上に各ピン50がインサート成型された樹脂部材51を配置し、回路基板40の回路と各ピンとを電気的に接続する。
【0041】
この後、コンデンサ61が設けられたメタルケース60を樹脂部材51上に配置し、各コンデンサ61と各ピン50とをはんだ等により接合する。そして、各ターミナル70がインサート成型された樹脂部材71をメタルケース60上に配置して各ピン50と各ターミナル70とを電気的に接続し、樹脂部材71等をハウジング10の他端側に収納するようにコネクタケース80をハウジング10にかしめ固定する。
【0042】
この後、上記弁部材16を用意し、各ステム20のうち、一方のダイヤフラム21が他方よりも薄くされた低圧用のステム20に対応した圧力導入孔13の開口部12に上記弁部材16を収納し、蓋部材17をハウジング10に溶接する。こうして、上記図1に示される圧力センサ100が完成する。
【0043】
かかる圧力センサ100は、ハウジング10のネジ部11が被測定体に形成されたネジ穴に直接結合し取り付けることによって、被測定体に接続固定される。そして、被測定体内の圧力媒体が、各圧力導入孔13を通じて、各ステム20の通路に導入されたときに、その圧力によって各ダイヤフラム21が変形する。この変形が各センサチップ30により電気信号に変換され、圧力検出が行われる。
【0044】
ここで、本実施形態では、各圧力導入孔13に導入される圧力媒体の圧力が一定値を超えると、低圧用センサチップ30に対応した圧力導入孔13の開口部12に設けられた弁部材16が当該開口部12を閉塞する。
【0045】
すなわち、図2に示されるように、弁部材16が開口部12を閉塞せずに低圧用のセンサチップ30にて圧力検出がなされるが、破線で示す圧力値を超えると、弁部材16の凹面16bがテーパー面15側に移動し、やがて凹面16bがテーパー面15に密着して開口部12が閉塞される。これにより、低圧用のセンサチップ30での圧力検出は行われなくなり、低圧用のセンサチップ30が保護される。
【0046】
そして、圧力媒体の圧力が一定値を超えると、高圧用のセンサチップ30にて圧力検出が行われることとなる。なお、本実施形態では、低圧用、高圧用の各センサチップ30にて圧力検出範囲をオーバーラップさせている。これは、圧力が一定値の境界でも圧力検出を確実に行うためである。すなわち、高圧域を検出するセンサチップ30の圧力検出範囲は、低圧域を検出するセンサチップ30の圧力検出範囲の最大圧力値を含んだ範囲になっている。このようにして、各センサチップ30にて圧力値に応じた圧力検出が行われる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、ハウジング10に2つのステム20を設け、一方のステム20のダイヤフラム21を薄くして低圧用とし、他方を高圧用としている。また、低圧用のステム20に対応した圧力導入孔13の開口部12に、一定値の圧力が導入されると開口部12を閉塞する弁部材16を設けたことが特徴となっている。
【0048】
これにより、圧力媒体の圧力が低圧である場合、ダイヤフラム21が薄くされ感度が向上されたステム20に設けられたセンサチップ30にて精度良く圧力検出を行うことができる。また、高圧領域の圧力を検出する場合、弁部材16の働きによって低圧用のセンサチップ30にて圧力検出ができないようにすることで薄くされたダイヤフラム21が破壊されることを防止できる。この場合、高圧用のセンサチップ30にて圧力検出を行うことができる。
【0049】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。第1実施形態では、低圧用のステム20に対応した圧力導入孔13の開口部12に金属板を加工した弁部材16を設置していたが、本実施形態では、開口部12に弾性体を用いることが特徴となっている。
【0050】
図5は、本実施形態に係る圧力センサ100のA部の拡大図である。この図に示されるように、低圧用のステム20に対応した圧力導入孔13の開口部12に弾性体19が設置されている。当該弾性体19は、圧力導入孔13の径よりも大きいクッション体であり、例えば金属が採用される。
【0051】
そして、弾性体19は、開口部12に設けられた蓋部材18によって開口部12内に収納されている。なお、蓋部材18には、例えば図示しないメッシュ状の貫通孔が設けられており、圧力媒体の圧力が開口部12から圧力導入孔13に導入されるようになっている。
【0052】
本実施形態では、圧力導入孔13に圧力が導入されない状態では、弾性体19が開口部12のテーパー面15に接触した状態となっており、圧力媒体が弁部材16の各貫通孔16dから圧力導入孔13に導入されるようになっている。また、弾性体19に一定値の圧力が加わると、弾性体19が変形して開口部12のテーパー面15に押し付けられ、密着する。これにより、開口部12が閉塞され、圧力導入孔13に圧力媒体が導入されないようになっている。
【0053】
なお、圧力が下がれば弾性体19が弾性力によってもとの形に戻るため、開口部12は再び開口した状態になる。また、弾性体19は、本発明の閉塞部材に相当する。
【0054】
以上のように、クッション体として構成される弾性体19を開口部12の弁として用いることによっても、低圧用のステム20のダイヤフラム21を高圧の圧力から保護することができる。
【0055】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、ハウジング10に2つのステム20が設けられた例について説明したが、ステム20の数は2つに限らず、複数個設けても良い。この場合、各ステム20に対応した圧力導入孔13をハウジング10にそれぞれ設ければ良い。
【0056】
上記各実施形態では、各ステム20のうち一方のダイヤフラム21を他方よりも薄くして低圧領域の圧力を検出する感度を向上させているが、各ステム20のダイヤフラム21の厚さを同じとし、回路基板40における処理回路にて低圧用のセンサチップ30の出力の増幅率を上げることで低圧の検出精度を向上させるようにしても良い。
【0057】
上記各実施形態では、図2に示されるように、低圧領域での圧力検出が限界となると、高圧用のセンサチップ30にて圧力検出を行うことになるが、その際、高圧用のセンサチップ30の出力値が0から増加するようになっている。しかし、低圧用のセンサチップ30が一定値の圧力を超えて飽和した状態となった場合、高圧用のセンサチップ30は低圧用のセンサチップ30から出力される飽和した値からの変化量を検出することもできる。
【0058】
上記各実施形態では、圧力センサ100の開口部12を塞ぐものとして弁部材16や弾性体19を用い、これらを金属で形成していたが、例えば樹脂等の変形可能な材料を採用することができる。この場合、変形した後にもとの形に戻る材質を採用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係る圧力センサの断面図である。
【図2】図1に示される圧力センサにおいて検出可能な圧力レンジを示した図である。
【図3】図1に示される圧力センサのA部の拡大図である。
【図4】図3のB矢視図である。
【図5】第2実施形態に係る圧力センサのA部の拡大図である。
【符号の説明】
【0060】
10…ハウジング、12…開口部、13…圧力導入孔、15…テーパー面、16…閉塞部材としての弁部材、16a…凸面、16b…凹面、16c…ばね部、17…蓋部材、17a…貫通孔、18…蓋部材、19…閉塞部材としての弾性体、20…ステム、21…ダイヤフラム、22…通路、30…検出部としてのセンサチップ、40…回路基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(12)から圧力導入可能な圧力導入孔(13)を有するハウジング(10)と、
中空筒形状であって、この中空筒形状の軸の一端側に前記ハウジングに導入された圧力によって変形可能なダイヤフラム(21)を有し、前記軸の他端側に前記圧力導入孔と連通する通路(22)を有するステム(20)と、
前記ダイヤフラム上に設けられ、前記ダイヤフラムの変形に応じた電気信号を出力する検出部(30)と、を備える圧力センサであって、
前記ステムは少なくとも2個設けられ、前記各ステムに対応した前記圧力導入孔がそれぞれ前記ハウジングに設けられており、
前記一方のステムのダイヤフラム上の検出部で第1の圧力範囲の圧力が検出され、前記他方のステムのダイヤフラム上の検出部で第2の圧力範囲の圧力が検出されるようになっており、
前記一方のステムに対応した圧力導入孔の開口部には、第1の圧力範囲の最大圧力値が導入されると前記開口部の壁面に密着して前記開口部を閉塞する閉塞部材(16、19)が設けられていることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記一方のステムに対応した圧力導入孔の開口部は、当該開口部から前記圧力導入孔側に径が小さくなるテーパー面(15)をなしており、
前記閉塞部材は、前記開口部に前記第1の圧力範囲の最大圧力値が導入されると前記テーパー面に密着して前記開口部を閉塞するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記第2の圧力範囲は、前記第1の圧力範囲の最大圧力値を含んだ範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記各ステムのうち一方のステムのダイヤフラムが、前記他方のステムのダイヤフラムよりも薄くされていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記閉塞部材は、板が球面状に加工されると共に、板の一方の面が凸面(16a)、当該凸面に対向する面が凹面(16b)となった形態をなしており、当該板の球面部分に切り込みが入れられることによって前記凸面から突出したばね部(16c)が設けられた弁部材(16)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記弁部材のばね部は、前記テーパー面に接触するように前記開口部に設置されていることを特徴とする請求項5に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記弁部材は、圧力媒体を前記開口部内に導入する貫通孔(17a)を備えた蓋部材(17)が前記ハウジングに取り付けられることで前記開口部内に収納されていることを特徴とする請求項5または6に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記閉塞部材は、前記圧力導入孔の径よりも大きい弾性体(19)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記弾性体は、圧力媒体を前記開口部内に導入する貫通孔を備えた蓋部材(18)が前記ハウジングに取り付けられることで前記開口部内に収納されていることを特徴とする請求項8に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記各センサチップの出力信号をそれぞれ信号処理する処理回路が形成された回路基板(40)が備えられており、
前記処理回路では、前記一方のステムのダイヤフラム上の検出部の出力に対する増幅率が、前記他方のステムのダイヤフラム上の検出部の出力の対する増幅率よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−145377(P2008−145377A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−335576(P2006−335576)
【出願日】平成18年12月13日(2006.12.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】