説明

圧力制御弁

【課題】1次側圧力が変動することによっては2次側圧力が変動することのない圧力制御弁を提供する。
【解決手段】圧力制御弁(21)の1次側ポート(23)に供給された流体の圧力(P)が弁体(31)を弁座(32)に密着させようとする力と、1次側ポート(23)に供給された流体の圧力(P)が弁体(31)を弁座(32)から離隔させようとする力とが互いに打ち消し合うように、弁体(31)に圧力制御弁(21)の流体通路の外部の圧力が作用する外圧受圧面(B)を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を予め設定された圧力に変換する圧力制御弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力制御弁は、その使用目的によって、1次側の高い圧力を2次側に必要な安定した圧力に減圧して供給するための減圧弁、予め設定された圧力(以下、設定圧力という。)よりも高圧になったときに圧力を放出して設定圧力を維持するためのリリーフ弁、危険な圧力範囲よりも高圧になった圧縮空気を迅速にかつ大量に放出するための安全弁、設定圧力を検知してその圧力を信号として利用するためのシーケンス弁などに分類される。
【0003】
更に、これらの圧力制御弁は、それぞれ、その機能によって分類される。例えば減圧弁は、一般的な直動形減圧弁、圧力特性及び流量特性に優れたパイロット形減圧弁、遠隔操作によって圧力を調整することができる外部パイロット形減圧弁、精密な圧力調整を行うことができる精密形減圧弁、チェック弁機能を内蔵したチェック弁付き減圧弁などに分類される。
【0004】
図1及び2に直動形減圧弁の一例を示す。図1は直動形減圧弁の縦断面図であり、図2は図1の要部を拡大した図である。減圧弁1の基底部材2には、1次側ポート2と弁室3と2次側ポート4が形成され、弁室3には、バルブスプリング5によって支持された弁体6が収容されている。基底部材2にはシリンダ部材7が嵌合装着され、シリンダ部材7は、基底部材2にボルト8によって固定されたハウジング部材9によって係止されている。
【0005】
シリンダ部材7の中央部には、弁室3に開口する貫通孔10が形成され、貫通孔10の弁室3側の開口部を囲繞する形態で弁座11が形成されている。シリンダ部材7には、弁体6の方向に往復動自在にピストン12が嵌合する。ピストン12とシリンダ部材7との間には圧力室13が画成され、また、ピストン12とハウジング部材9の内面との間にはバネ室14が画成されている。貫通孔10は圧力室13と弁室3の間に延在している。
【0006】
ピストン12には、弁室3の方向に延在する突起部12aが形成され、突起部12aは貫通孔10を通って弁体6の上面に当接している。ピストン12にはその軸線に沿ってリリーフ通路12bが形成され、リリーフ通路12bは、ピストン12のバネ室14側の面と突起部12aの端面とに開口している。図示のように、突起部12aに弁体6が密着しているときにはリリーフ通路12bは閉鎖されているが、図示の位置からピストン12がバネ室14内に後退すると、突起部12aが弁体6から離隔して、圧力室13をバネ室14に連通させる。
【0007】
シリンダ部材7には、圧力室13と2次側ポート4を連通する貫通孔15が形成され、圧力室13と2次側ポート4の間の流体の流れを許容する。バネ室14には圧力設定スプリング16とバネ受け17が収容され、圧力設定スプリング16はピストン12とバネ受け17の間に介装されている。
図1中、参照番号18は、圧力設定スプリング16の弾発力を調整するための圧力調整ボルトを示し、圧力調整ボルト18はハウジング部材9の頂部に螺合されている。また、参照番号19は、圧力調整ボルト18を回転させるために、圧力調整ボルト18のヘッド部に嵌合された回転つまみを示す。そして、参照番号20は、ハウジング部材9に形成された大気連通孔を示す。
【0008】
図1を参照して減圧弁1の作用を説明する。減圧弁1が作動していないときには、ピストン12は圧力設定スプリング16の弾発力によって弁室3の方向に移動し、これにより、弁体6は弁座11から離隔すると共に、ピストン12の突起部12aが弁体6に密着してリリーフ通路12bを閉鎖している。
【0009】
次いで、1次側ポート2に高圧の圧縮空気が供給されると、圧縮空気は弁室3、弁体6と弁座11の間隙、貫通孔10、圧力室13及び貫通孔15を経て2次側ポート4に流れる。減圧弁1の1次側ポート2に供給された圧縮空気を2次側ポート4に導く流体通路は、弁室3、弁体6と弁座11の間隙、貫通孔10、圧力室13及び貫通孔15によって構成されている。
【0010】
減圧弁1の1次側ポート2に供給された高圧空気の圧力は、2次側ポート4の予め設定された流体圧力よりも高いから、弁室3から圧力室13に流入した圧縮空気の圧力によってピストン12が圧力設定スプリング16の弾発力に抗してバネ室14の内部に後退する。これによって、弁体6が弁座11に密着し、貫通孔10が閉鎖される。
【0011】
このとき、2次側ポート4が閉鎖されている等の原因で圧力室13の内部の圧縮空気が貫通孔15を通って2次側ポート4に流れず、圧力室13の内部の空気の圧力が高圧のままであるときには、ピストン12は、圧力室13の内部の空気圧により、更にバネ室14の内部に後退する。これにより、ピストン12の突起部12aが弁体6から離隔し、圧力室13がリリーフ通路12bを介してバネ室14に連通する。バネ室14は、大気連通孔20を介して大気中に連通しているから、圧力室13及び2次側ポート4の内部の空気圧は、圧力室13がバネ室14に連通することによって大気中に解放される。
【0012】
こうして、圧力室13の内部の圧力が2次側ポート4から流出する空気の設定圧力付近まで低下すると、ピストン12は圧力設定スプリング16の弾発力によって弁室3の方向に変位し、弁体6を弁座11から離隔させる。これにより、減圧弁1の1次側ポート2と2次側ポート4を連通する流体通路が形成される。この流体通路を流れる高圧空気は、弁体6と弁座11の間の通路断面積によって絞られるから、ベルヌーイの定理によって、1次側ポート2に供給された高圧空気は設定圧力まで減圧され、圧力室13を通って2次側ポート4に供給される。
【0013】
2次側ポート4の空気圧は種々の原因によって増減する。2次側ポート4の空気圧が設定圧力よりも高圧になると、貫通孔15によって2次側ポート4に連通している圧力室13の内部の空気圧も同様に高圧になるから、ピストン12は、圧力設定スプリング16の弾発力に抗してバネ室14の内部に後退する。これにより、弁体4と弁座11の間隙が減少するから、1次側ポート2に供給された高圧空気はより低い圧力まで減圧されて圧力室13に供給される。また、2次側ポート4の空気圧が設定圧力よりも低圧になると、圧力室13の内部の空気圧も同様に低圧になるから、ピストン12は、圧力設定スプリング16の弾発力によって弁室3の方向へ変位する。これにより、弁体4と弁座11の間隙が増大するから、より高い圧力の圧縮空気が圧力室13に供給される。減圧弁1は、このような圧力制御を行うことにより、2次側ポート4の空気圧を予め設定された圧力に維持する。
【特許文献1】特許第3358428号公報
【非特許文献1】仙田良二著 「わかりやすい空気圧の技術」株式会社日本理工出版会 2002年9月10日初版発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図1及び2に示した減圧弁1は、1次側ポート2に供給される圧縮空気の圧力P(以下、1次側圧力という。)が変動すると、2次側ポート4から得られる圧縮空気の圧力P(以下、2次側圧力という。)も変動し、予め設定された2次側圧力を維持することができない。表1は、図1のシリンダ部材7の内径、即ちシリンダ径φが10mmの減圧弁を使用し、1次側圧力Pを3.9MPaから3.1MPaまで0.1MPa単位で低下させたときの2次側圧力Pの圧力値を示す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1の仕様に記載されたFは、減圧弁1の圧力設定スプリング16のスプリング荷重を示し、Fはバルブスプリング5のスプリング荷重を示す。また、図2に示すように、Dはピストン12の直径であり、Dは貫通孔10の直径を示す。Dはピストン12の突起部12aの外径寸法を示し、Dは、弁体6が弁座11に密着したときの密着部の外縁の径を示す。
【0017】
は、ピストン12が減圧弁1の流体通路内で2次側圧力Pを受ける面積(受圧面積)を示し、Aは次の数式1で表される。
【0018】
【数1】

【0019】
は、弁体6が減圧弁1の流体通路内で2次側圧力Pを受ける面積(受圧面積)を示し、Aは次の数式2で表される。
【0020】
【数2】

【0021】
は、弁体6が減圧弁1の流体通路内で1次側圧力Pを受ける面積(受圧面積)を示し、Aは次の数式3で表される。
【0022】
【数3】

【0023】
以上から、図1及び2に示した減圧弁1の2次側圧力Pは次の数式4で表される。
【0024】
【数4】

【0025】
数式4は、1次側圧力Pが弁体6の受圧面積Aに作用していることを示し、数式4から、図1及び2に示した減圧弁では、2次側圧力Pが1次側圧力Pの変動に応じて変化することが解る。
【0026】
本発明の目的は、1次側圧力が変動しても、予め設定された圧力値の2次側圧力を出力することができる圧力制御弁を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡単な構造で、製造が容易な圧力制御弁を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、汎用性の高い圧力制御弁を提供することにある。
本発明のその他の特徴は、図3乃至5を参照してなされる以下の説明から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のもっとも基本的な特徴は、1次側に供給された流体を2次側に導く流体通路と、前記流体通路に形成された弁座と、前記流体通路の1次側に配置され、かつ、前記弁座と協働して前記流体通路の断面積の大きさを規制する、弁体と、前記流体通路の2次側の圧力変動に応じて前記弁体を前記弁座に関して変位させ、前記流体通路の1次側に供給された流体の圧力を予め設定された2次側の流体圧力に変換する、弁開度変更手段とを有する、圧力制御弁において、前記1次側に供給された流体の圧力が前記弁体を前記弁座に密着させようとする力と、前記1次側に供給された流体の圧力が前記弁体を前記弁座から離隔させようとする力とが互いに打ち消し合うように、前記弁体に前記流体通路の外部の圧力が作用する外圧受圧面を形成したことにある。
【発明の効果】
【0028】
本発明の圧力制御弁は、1次側に供給された流体の圧力が弁体を弁座に密着させようとする力と、1次側に供給された流体の圧力が弁体を弁座から離隔させようとする力とが互いに打ち消し合うように、弁体に流体通路の外部の圧力が作用する外圧受圧面を形成したから、弁体は1次側圧力によって開弁方向及び閉弁方向への力を受けない。よって、本発明の圧力制御弁は、1次側圧力が変動した場合にも、2次側圧力を予め設定された圧力値に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明においては、圧力制御弁の2次側圧力が1次側圧力の影響を受けないように、弁体の1次側圧力の受圧面積と弁体の外圧受圧面の面積との比率が特定される。しかし、弁体が弁座に着座したとき流体通路が確実に閉鎖されるように、弁体の全部又は一部を弾性材料で構成する場合がある。弾性材料は弁座に密着したときに変形するため、圧力制御弁毎に弁体の1次側圧力の受圧面積が異なる虞がある。弁体の1次側圧力の受圧面積が異なると、その圧力制御弁の2次側圧力と予め2次側圧力として設定された圧力との間に差異を生じる。そこで、このような場合には、圧力制御弁毎に2次側圧力の調整手段を設けることが望ましい。この調整手段は、2次側圧力を設定するための圧力設定スプリングを備えた圧力制御弁の場合には、圧力設定スプリングの弾発力調整手段によって構成することができる。
【実施例1】
【0030】
図3及び4は、本発明の圧力制御弁の一実施例として、直動形減圧弁21を示す。図3は直動形減圧弁21の縦断面図であり、図4は図2の要部を拡大した図である。減圧弁21の基底部材22には、1次側ポート23と2次側ポート24とが形成されている。基底部材22の底面には弁体支持部材25が螺着され、弁体支持部材25の中央部には弁体嵌合孔26が形成されている。基底部材22の上面にはシリンダ部材27が嵌合装着され、シリンダ部材27は、基底部材22にボルト28によって固定されたハウジング部材29によって係止されている。基底部材22と弁体支持部材25とシリンダ部材27によって基底部材22の内部に弁室30が画成される。
【0031】
弁体31は、耐摩耗性の弾性材料で形成された弁頭部32と金属材料で形成された弁体延長部33とを一体化することによって構成されている。弁頭部32の上面の中央部には凹所32aが形成されている。弁体延長部33の頭部外周面にはバネ受け33aが形成され、弁体延長部33の下方部分には段差部33bを経て小径部33cが延在している。小径部33cの周面には環状溝33dが形成され、環状溝33dにはシールリング34が装着されている。
弁体31は弁室30に配置され、弁体31の小径部33cは弁体支持部材25の弁体嵌合孔26に軸方向へ摺動自在に挿入される。そして、弁体31のバネ受け33aと弁体支持部材25の間にバルブスプリング35が介装され、弁体31はバルブスプリング35の弾発力によって、常時、シリンダ部材27方向に附勢される。
そして、弁体31の小径部33cの端面Bは、弁室30の外部に露出する。
【0032】
シリンダ部材27の中央部には、弁室30に開口する貫通孔36が形成され、貫通孔36の弁室30側の開口部を囲繞する形態で弁座37が形成されている。シリンダ部材27には、弁体31の方向に往復動自在にピストン38が嵌合する。ピストン38とシリンダ部材27との間には圧力室39が画成され、また、ピストン38とハウジング部材29の内面との間にはバネ室40が画成される。貫通孔36は圧力室39と弁室30の間に延在する。
【0033】
ピストン38には、突起部38aが形成され、突起部38aは、貫通孔36を通って弁室30の方向に延在し、弁頭部32に対して凹所32aで当接している。ピストン38には、ピストン38の軸線に沿って延在するリリーフ通路38bが形成され、リリーフ通路38bはピストン38のバネ室40側の面と突起部38aの端部とに開口する。図示のように、突起部38aの端面が弁体31の弁頭部32に密着しているときにはリリーフ通路38bは閉鎖されているが、図示の位置からピストン38がバネ室40内に後退すると、突起部38aの端面が弁体6の弁頭部32から離隔して、圧力室39をバネ室40に連通させる。
【0034】
シリンダ部材27には、圧力室39と2次側ポート24を連通する貫通孔41が形成され、圧力室39と2次側ポート24の間に流体の流れを許容する。バネ室40には圧力設定スプリング41が配置され、圧力設定スプリング41は、ピストン38に装着されたバネ受け42と、圧力調整ボルト43に係合するバネ受け44との間に介装される。圧力調整ボルト43はハウジング部材29の頂部に螺着され、そのボルト頭部43aには圧力調整つまみ45が連結されている。圧力調整つまみ45を回転させることにより、圧力調整ボルト43はその軸線方向に移動し、圧力設定スプリング41の弾発力を調整することができる。図3及び4中の参照番号46、47、48は密封用のシール部材を示す。また、図3中の参照番号49は、ハウジング部材29に形成された大気連通孔を示す。
【0035】
以上のような構成を有する直動形減圧弁21において、1次側圧力をP、2次側圧力をP、ピストン38が圧力室39内の流体から受ける圧力の受圧面積をA、弁体31が貫通孔36内の流体から受ける圧力の受圧面積をA、弁体31が弁室30内の流体から受ける圧力の受圧面積をA、弁体31の端面Bの面積をA、圧力設定スプリング41のスプリング荷重をF、バルブスプリング35のスプリング荷重をFとし、図4に示すように、ピストン38の直径をD、貫通孔36の直径をD、ピストン38の突起部38aの直径をD、弁体31の弁頭部32が弁座37に密着したときの密着部の外縁の径をD、弁体31の端面Bの径をDとする。
は前述の数式1で表される。
は前述の数式2で表される。
は前述の数式3で表される。
また、Aは次の数式5で表される。
【0036】
【数5】

【0037】
以上のP、P、A、A、A、A、F、Fの関係式は、次の数式6で表される。
【0038】
【数6】

【0039】
数式6から、2次側圧力Pが1次側圧力Pから無関係に定まるためには、弁体31が弁室30内の流体から受ける圧力の受圧面積をAと弁体31の端面Bの面積をAを同じ値にすればよいことが解る。換言すれば、弁体31の弁頭部32が弁座37に密着したときの密着部の外縁の径をDと、弁体31の端面Bの径をDとを同値にすれば、1次側圧力Pが変動したときにも2次側圧力Pは1次側圧力Pの圧力変動の影響を受けることはなく、2次側圧力Pは、圧力設定スプリング41のスプリング荷重をFと、バルブスプリング35のスプリング荷重をFと、ピストン38が圧力室39内の流体から受ける圧力の受圧面積をAと、弁体31が貫通孔36内の流体から受ける圧力の受圧面積をAのみによって定まる。
【0040】
以上の観点から、上記実施例の直動形減圧弁21は、弁体31の弁頭部32が弁座37に密着したときの密着部の外縁の径をDと、弁体31の端面Bの径をDとが同じ値に設定されている。
【0041】
以下、直動形減圧弁21の作用を説明する。
先ず、直動形減圧弁21の通常の圧力制御動作は次のとおりである。
減圧弁21が作動していないときには、ピストン38は圧力設定スプリング41の弾発力によって弁室30の方向に移動し、これにより、弁体31の弁頭部32は弁座37から離隔すると共に、ピストン38の突起部38aが弁体31の弁頭部32に密着してリリーフ通路38bを閉鎖している。
【0042】
次いで、1次側ポート23に圧縮空気が1次側圧力Pで供給されると、圧縮空気は弁室30、弁頭部32と弁座37の間隙、貫通孔36、圧力室39及び貫通孔41を経て2次側ポート24に流れる。減圧弁21の1次側ポート23に供給された圧縮空気を2次側ポート24に導く流体通路は、弁室30、弁体31の弁頭部32と弁座11との間隙、貫通孔36、圧力室39及び貫通孔41によって構成される。
【0043】
減圧弁21の1次側ポート23に供給された圧縮空気の圧力Pは、2次側ポート24の予め設定された流体圧力よりも高いから、弁室30から圧力室39に流入した圧縮空気の圧力によってピストン38が圧力設定スプリング41の弾発力に抗してバネ室40の内部に後退する。これによって、弁体21の弁頭部32が弁座37に密着し、貫通孔36が閉鎖される。
【0044】
このとき、2次側ポート24が閉鎖されている等の原因で圧力室39の内部の圧縮空気が貫通孔41を通って2次側ポート24に流れず、圧力室39の内部の空気の圧力が高圧のままであるときには、ピストン38は、圧力室39の内部の空気圧により、更にバネ室40の内部に後退する。これにより、ピストン38の突起部38aが弁体31の弁頭部32から離隔し、圧力室39がリリーフ通路38bを介してバネ室40に連通する。バネ室40は大気連通孔49を介して大気中に連通しているから、圧力室39及び2次側ポート24の内部の空気圧は、圧力室39がバネ室40に連通することによって大気中に解放される。
【0045】
こうして、圧力室39の内部の圧力が2次側ポート24から流出する空気の設定圧力付近まで低下すると、ピストン38は圧力設定スプリング41の弾発力によって弁室30の方向に変位し、弁体31の弁頭部32を弁座37から離隔させる。これにより、減圧弁21の1次側ポート23と2次側ポート24を連通する流体通路が形成される。この流体通路を流れる圧縮空気流は、弁体31の弁頭部32と弁座37の間の通路断面積によって絞られるから、ベルヌーイの定理によって、1次側ポート23に供給された圧縮空気は設定圧力まで減圧され、圧力室39を通って2次側ポート24に供給される。
【0046】
2次側ポート24の空気圧は種々の原因によって増減する。
2次側ポート24の空気圧が設定圧力よりも高圧になると、貫通孔41によって2次側ポート24に連通している圧力室39の内部の空気圧も同様に高圧になるから、ピストン38は、圧力設定スプリング41の弾発力に抗してバネ室40の内部に後退する。これにより、弁体31の弁頭部32と弁座37との間隙が減少するから、1次側ポート23に供給された圧縮空気はより低い圧力まで減圧されて圧力室39に供給される。
また、2次側ポート24の空気圧が設定圧力よりも低圧になると、圧力室39の内部の空気圧も同様に低圧になるから、ピストン38は、圧力設定スプリング41の弾発力によって弁室30の方向へ変位する。これにより、弁体31の弁頭部32と弁座37との間隙が増大するから、より高い圧力の圧縮空気が圧力室39に供給される。
【0047】
以上が直動形減圧弁21の通常の圧力制御動作であるが、直動形減圧弁21は、弁体31の弁頭部32が弁座37に密着したときの密着部の外縁の径をDと、弁体31の端面Bの径をDとが同じ値に設定されているから、数式6のP×(A−A)の項は存在しない。よって、直動形減圧弁21の1次側圧力Pが変動した場合にも、1次側圧力Pの変動によって2次側圧力Pが変動することはない。
【0048】
表2は、実施例1の構成を有するシリンダ径φが10mmの直動形減圧弁21を使用し、1次側圧力Pを3.9MPaから3.1MPaまで0.1MPa単位で低下させたときの2次側圧力Pの圧力値を示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2を見ると、前述の仕様において1次側圧力Pを3.9MPaから3.1MPaまで変化させても、2次側圧力Pは2.4MPaを維持したことが解る。
【0051】
以上の実施例1の説明から明らかなように、本発明においては、圧力制御弁の2次側圧力が1次側圧力の影響を受けないように、弁体の1次側圧力の受圧面積(A)と弁体の外圧受圧面の面積(A)との比率を特定する必要がある。
しかし、実施例1で説明したように、弁体の全部又は一部を弾性材料で構成した場合には、弾性材料が弁座に密着したときに変形し、圧力制御弁毎に弁体の1次側圧力の受圧面積が異なる虞がある。弁体の1次側圧力の受圧面積が異なると、その圧力制御弁の2次側圧力と予め設定された2次側圧力との間に差異を生じる。
また、実施例1の構成を有する直動形減圧弁21を例にとると、ピストン38とシリンダ部材27の間の摺動抵抗や、弁体31の小径部33と弁体支持部材25との間の摺動抵抗を考慮して、弁体の1次側圧力の受圧面積(A)と弁体の外圧受圧面の面積(A)との比率を特定しなければならない場合もある。
そこで、このような場合には、実施例1の直動形減圧弁21に装着した圧力調整つまみ45を回転させることにより、圧力設定スプリング41のスプリング荷重を調整することで、2次側圧力Pを適正値に補正できるようにすることが望ましい。
【実施例2】
【0052】
表3は、本発明の圧力制御弁の作用を別の角度から検証した結果を示す。表3に示した数値は、図5に示した直動形減圧弁51を使用し、圧力設定スプリング52のスプリング荷重を種々に変更しつつ行われた。直動形減圧弁51の基本的な構成は、実施例1の説明に使用した直動形減圧弁21と同様である。先ず、1次側圧力Pが1.2MPaのときに、カム付きレバーLを回転させて、圧力設定スプリング52のスプリング荷重を任意の値に設定し、弁体支持部材52の穴径φが5.0mm、5.5mm、6.0mm及び0mm(穴無し)の各場合について、1次側圧力Pを0.3MPaずつ上昇させた。そして、このときの2次側圧力Pの変化を測定した。
【0053】
【表3】

【0054】
図5に示すように、直動形減圧弁51のハウジングHには1次側ポート53と弁室54と2次側ポート55が形成されると共に、ピストン56が摺動自在に嵌合装着されたシリンダ部57が形成されている。ハウジングHの底面部には弁体58を摺動自在に保持する弁支持部材59が螺着され、弁体58を弁室54に保持している。弁体58と弁支持部材59の間に介装されたバルブスプリング60はバネ荷重6Kgfであり、圧力設定スプリング52は高圧用減圧弁用バネを使用した。圧力設定スプリング52は、ピストン56と、カム付きレバーLに連動して変位する圧力変更用摺動部材61との間に介装される。同図中、参照番号62は、ピストン56に装着されたシール部材であり、参照番号63は、圧力変更用摺動部材61とハウジングHの内面との間に形成された大気連通用の間隙を示す。ピストン56の上方に位置するハウジングHの内部空間は、この間隙63を介して大気に連通している。また、参照番号64は弁室54を密封するために弁体58に装着されたシール部材であり、66は弁体58が着座可能な弁座である。弁座66の外径Dは7mmφとした。67は弁室54と圧力室68を連結する貫通孔であり、69は圧力室68と2次側ポート55を連結する貫通路である。70はピストン56の軸線に沿って形成されたリリーフ通路であり、71はカム付きレバーLのカム部72の回転軸を示す。
【0055】
表3に示すように、弁体支持部材52の穴径φが5.5mmのとき、1次側圧力Pを1.2MPaから2.4MPaまで0.3MPa単位で上昇させても、2次側圧力Pは1.2MPaを維持した。弁体支持部材52の穴径φが5.0mmのとき及び6.0mmのときには、1次側圧力Pを1.2MPaから2.4MPaまで変化させると、2次側圧力Pはいずれも若干下降することが認められた。弁体支持部材52の穴径φが5.5mmのときに2次側圧力Pが一定値を維持した理由は、前述したように、ピストン56とシリンダ部57の間の摩擦抵抗や弁体58と弁支持部材59の間の摩擦抵抗等の影響が考えられるほか、弁体58の頭部を比較的弾性の高いパッキン材で構成したため、弁体58の頭部が弁座66に密着したときに変形し、弁体58の外気受圧面Bの面積との間に差異を生じたためと考えられる。
【0056】
表3の弁体支持部材52の穴径φが5.5mmのときの測定結果から、本発明の圧力制御弁は1次側圧力Pが次第に上昇する場合にも2次側圧力Pを一定に維持することができることが解る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の圧力制御弁を直動形減圧弁を例にとって説明した。これらの直動形減圧弁を大気圧中で使用する場合には、弁体の外圧受圧面は大気圧を受けるから大気圧受圧面となる。本発明の圧力制御弁は直動形減圧弁に限定されない。例えば、弁体の外圧受圧面に負の圧力を作用させ、リリーフ通路を強制的に解放させることができる。また、弁体の外圧受圧面に制御された正又は負の圧力を作用させることにより、弁体の挙動を制御することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】従来の直動型減圧弁の縦断面図である。
【図2】図1の直動形減圧弁の要部断面図である。
【図3】本発明を適用した直動形減圧弁の縦断面図である。(実施例1)
【図4】図3の直動形減圧弁の要部断面図である。(実施例1)
【図5】本発明の圧力制御弁の作用を検証するための直動形減圧弁の縦断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0059】
B 外圧受圧面
21 直動形減圧弁
23 1次側ポート
24 2次側ポート
30 弁室
31 弁体
32 弁頭部
33 弁体延長部
38 ピストン
35 バルブスプリング
41 圧力設定スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次側に供給された流体を2次側に導く流体通路と、前記流体通路に形成された弁座と、前記流体通路の1次側に配置され、かつ、前記弁座と協働して前記流体通路の断面積の大きさを規制する、弁体と、前記流体通路の2次側の圧力変動に応じて前記弁体を前記弁座に関して変位させ、前記流体通路の1次側に供給された流体の圧力を予め設定された2次側の流体圧力に変換する、弁開度変更手段とを有する、圧力制御弁において、前記1次側に供給された流体の圧力が前記弁体を前記弁座に密着させようとする力と、前記1次側に供給された流体の圧力が前記弁体を前記弁座から離隔させようとする力とが互いに打ち消し合うように、前記弁体に前記流体通路の外部の圧力が作用する外圧受圧面を形成したことを特徴とする、圧力制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の圧力制御弁において、前記外圧受圧面は前記流体通路の1次側から前記流体通路の外部に露出することを特徴とする、前記圧力制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧力制御弁において、前記外圧受圧面の面積は、前記弁体と前記弁座の密着部の外縁によって画成されかつ囲繞される面積と実質的に同一の面積であることを特徴とする、前記圧力制御弁。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の圧力制御弁において、前記弁開度変更手段は、前記弁体を前記弁座に密着させる方向に附勢するバルブスプリングと、前記流体通路の前記弁座よりも2次側に形成されたシリンダ部と、前記シリンダ部に摺動自在に嵌合し、かつ、前記弁体を変位させる、ピストンと、前記ピストンを前記弁体の方向に附勢する荷重スプリングとを有し、前記弁体の一方の端面は前記ピストンが当接するピストン当接部を有し、前記弁体の他方の端面は前記外圧受圧面を有することを特徴とする、前記圧力制御弁。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の圧力制御弁において、前記流体通路の2次側の流体圧力が予め設定された2次側圧力よりも高圧になったときに、前記流体通路の2次側を前記流体通路の外部に開放し、前記流体通路の2次側の流体圧力を予め設定された2次側圧力付近まで低下させる、リリーフ通路を備えたことを特徴とする、前記圧力制御弁。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の圧力制御弁において、前記外圧受圧面は、大気圧が作用する大気圧受圧面であることを特徴とする、前記圧力制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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