圧力変換器用の管体
【課題】耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れた圧力変換器用の管体の提供。
【解決手段】内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の管体1の内周面にシール層2を設ける。圧力変換器用の管体1において、この管体1はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものである。
【解決手段】内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の管体1の内周面にシール層2を設ける。圧力変換器用の管体1において、この管体1はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力変換器用の管体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、逆浸透膜を具備した海水淡水化装置から流出する濃縮海水(ブライン)の残留圧力を回収して供給圧力の一部とすることで、海水の動力回収効率を従来の80%以上90%未満から90%以上に引き上げる圧力変換器が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示される圧力変換器は、図1に図示したように高圧ポンプ51から導入される海水を、逆浸透モジュール52へ移送し、この逆浸透モジュール52内部の逆浸透膜を透過した水を透過液(淡水)として取り出す海水淡水化装置に設けられる切換弁58やピストン55・56が夫々内装された円筒状の管室53・54等から成る二室圧力変換器である。図1中、符号57はピストン55・56や切換弁58等を適宜制御・調節するための制御兼調節ユニット、60は逆止弁である。
【0004】
具体的には、図1では、海水は、逆浸透モジュール52だけでなく管室54のピストン56の左側に移送されてピストン56を右側に押しながら管室54内に溜められ、管室54のピストン56の右側の濃縮海水は既に圧力を伝達して低圧化しているためピストン56に押されてバルブ61を介して排出される。一方、逆浸透モジュール52の逆浸透膜を透過しなかった高い残留圧力を有する濃縮海水は、管室53のピストン55の右側に移送されてピストン55を左側に押しながら管室53内に溜められ、この濃縮海水の残留圧力を利用してピストン55の左側に溜められていた海水を押してブースタポンプ59を介して高圧ポンプ51から移送される海水と共に逆浸透モジュール52へと移送する(この後ピストン55・56が夫々終端まで到達すると切換弁58が切り換わり管室53・54の役割が切り換わる。)。尚、圧力変換器には、濃縮海水と海水の浸透圧の差を利用してピストンなしで海水を圧送する方式もある。
【0005】
ところで、この圧力変換器の海水・濃縮海水が導入される管室(管体)には、高圧(60〜70kg/cm2)が周期的に繰り返し作用し、また、海水・濃縮海水に接するため、極めて高い耐圧力性・耐腐食性が求められる。
【0006】
従って、圧力変換器の管室は耐孔触係数(PREN:Pitting Resistance Equivalent Number(PREN=Cr+3.3×Mo+16×N [%]))が38以上の、例えば254SMOなどのスーパーステンレスやA890−5Aなどの二相ステンレスが使われており、PREN38以上のステンレスで耐腐蝕性を上げ、管室の厚さを厚く設計製作することで耐圧力性を確保している。
【0007】
ところが、PREN38以上のステンレスは、クロム、モリブデン及びニッケルを多く含有しているため、高価になるばかりか(クロム、モリブデン及びニッケルは相場取引となるため、価格が安定しないことが多い)、ステンレスの押し出し成形時若しくは鋳造時に、より高熱がかかるため管室の内径精度が、例えば、長さ7500mm、内径φ355で±2mmレベルに留まっている。この内径精度が大きいと、管室に溜め込んだ海水を濃縮海水の押圧によって供給する際、管室とピストンとの間に隙間ができることになり、海水の供給効率を低下させることになる。
【0008】
更に、管室の材質がステンレスの場合は、圧力印加時の長さ方向の伸びが温度の影響を受ける(温度が高い、例えば、50℃近傍の場合、押圧時に管室が伸び変形をおこしてしまう)ので、押圧変形に対する配慮も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−177753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れた圧力変換器用の管体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体1は繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製のものであり、この管体1の内周面にはシール層2が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の圧力変換器用の管体において、この管体1はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0014】
また、請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して単一角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0015】
また、請求項3記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0016】
また、請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して夫々異なる単一角度で巻回された2層以上の層構造を有するものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0017】
また、請求項5記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回されて成る層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して85°±5°の角度で巻回されて成る層とから成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0018】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、前記シール層2の厚さが0.5mm以上に設定されていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の両端部には該管体1を封止する封止機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0020】
また、請求項8記載の圧力変換器用の管体において、前記封止機構には、この管体1と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0021】
また、請求項8,9いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の端部を閉塞する閉塞蓋7を、この管体1の内周面に設けられた凹部26に配設されるリテイナーリング24にボルト21で接合することで該管体1を封止する封止機構が採用されていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0022】
また、請求項1〜10いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の周面には該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部が設けられ、この導入出部にはこの管体1と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0023】
また、請求項1〜11いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、耐内圧強度が60〜105kg/cm2であることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上述のように構成したから、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れた圧力変換器用の管体となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】圧力変換器の概略説明図である。
【図2】本実施例の概略説明側面図である。
【図3】本実施例の端部の拡大概略説明斜視図である。
【図4】本実施例の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図5】別例1の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図6】別例2の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図7】別例3の拡大概略説明横断面図である。
【図8】別例3のスペーサーの概略説明斜視図である。
【図9】別例4の拡大概略説明横断面図である。
【図10】別例4のスペーサーの概略説明斜視図である。
【図11】内圧破壊試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
本発明は、繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の管体1であり、内面にシール層2を設けた構成であるから、極めて耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、しかもステンレス製に比し安価に作製可能となる。
【0028】
従って、本発明は、極めて高い耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度が求められる圧力変換器に用いても長期間安定的に使用可能で且つコスト性にも秀れたものとなる。
【0029】
更に、例えばフィラメントワインディング法やテープワインディング法により形成することで、樹脂による硬化成形時のひずみは、ステンレス製の管体の成形時(ステンレスの押し出し成形時若しくは鋳造時)のひずみより大幅に小さいことから、内径精度がステンレス製の管体に比し向上し(小さくなり)、例えば管体にピストンを設ける構成であっても該ピストンと管体1の内壁との間の隙間を可及的に狭くすることができ、より一層効率的な圧力伝達が可能となる。
【0030】
また、ステンレス製の管体に比し、印加圧力に対して、伸び難い構成であり、更に長さ方向の伸びが温度の影響を受け難く、より寸法安定性に秀れたものとなり、赤道付近の暖海水のような高温下でも良好に使用可能となる。
【0031】
また、例えば、管体1を、連続繊維を管体1の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回して形成するか若しくは連続繊維を管体1の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回して成る層と85°±5°の角度で巻回して成る層とから構成した場合には、一層引っ張り強度に秀れたものとなり、繰り返し応力が連続的に作用しても長期にわたって破断等のおそれなく良好に使用することが可能なものとなる。
【実施例】
【0032】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、図1に図示したような海水淡水化装置に設けられ内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体1は図2に図示したようなフィラメントワインディング法により連続繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の円筒状のものである。尚、本実施例に係る圧力変換器は海水淡水化装置に限らず、他の逆浸透膜を用いて濃度の異なる溶液を取り出す装置に用いることも可能である。
【0034】
具体的には本実施例は、公知のフィラメントワインディング法により、エポキシ樹脂とこれらの硬化剤を含む樹脂を含浸したガラス繊維を円筒状のマンドレルに該マンドレルの軸芯方向(管体1の軸芯方向)に対して所定の角度αで連続的に必要量を巻回(ヘリカル巻)し、エポキシ樹脂を加熱硬化させ、続いて、マンドレルを脱型することで形成される円筒状のものであり、上述したような圧力変換器の管室(管体1)として用いられるものである。尚、エポキシ樹脂に限らず、ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等、他の樹脂を用いても良いし、ガラス繊維に限らず、カーボン繊維等、他の繊維を用いても良い。また、フィラメントワインディング法に限らず、テープワインディング法やシートワインディング法を用いても良い。
【0035】
本実施例においては、所定の引っ張り強度を確保するため、上記角度αは±50°(+50°と−50°とは繊維の長さ方向は互いに直交する方向となるが、軸芯に対する角度は同一であるため、本実施例においてはこれも単一角度に含まれるものとする。)に設定されており、管体1は連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±50°の単一角度で巻回されて形成されている。
【0036】
尚、本実施例においては、管体1を上記角度αを±50°に設定した単層構造としているが、±50°±5°の範囲で適宜調整しても良いし、菅体1を連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±45°±5°の単一角度で巻回されて成る内層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±85°±5°の単一角度で巻回されて成る外層とからなる複層構造としても良い。この場合も引っ張り強度に秀れた構成となる。
【0037】
また、管体1の内周面には厚さ0.5mm以上(好ましくは1.5mm以上)のシール層2が設けられている。本実施例においてシール層2の厚さは約3mmに設定されている。このシール層2はテープワインディング法により形成されている。このシール層2により、管体1の内周面は平滑で略同一径となり、ピストンを内装した場合に可及的にピストンの外周と管体1の内周面との間の隙間が小さくなり、圧力変換器に用いた際に圧力の伝達を良好に行うことが可能となる。また、シール層2の存在により内周面強度も向上しピストンの摺動による摩耗も可及的に抑制される。尚、本実施例においては、上述のようにピストンを内装した場合について説明しているが、ピストンを内装しないタイプに用いることも勿論可能である。
【0038】
また、図3,4に図示したように、管体1の両端部には該管体1を封止する封止機構が設けられている。具体的には、封止機構は管体1の両端部に夫々形成される肉厚部に穿設される螺子孔4に螺着されるスタッドボルト5及びナット6、このスタッドボルト5及びナット6により管体1の端面に密着状態で連結される金属製、FRP製、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製若しくはPES(ポリエーテルスルフォン)製またはこれらの樹脂をガラス繊維で強化したFRTP(繊維強化熱可塑性プラスチック)製の閉塞蓋7並びに該閉塞蓋7と管体1の端面との間に設けられるOリング8とで構成されている。本実施例においては金属製の閉塞蓋7が採用されている。また、本実施例においては、上述した管体の繊維の巻回方向と封止機構とにより管体の圧力変換器の運転時の圧力が、60〜105kg/cm2に耐えられるように構成されている。
【0039】
この封止機構には、閉塞蓋7と他の部材とを接合するための接合機構が設けられている。具体的には、接合機構は、閉塞蓋7の外面側に穿設される螺子孔9に螺着されるスタッドボルト10であり、このスタッドボルト10及びナット17を用いて閉塞蓋7の外面に、フランジ12を有する管部材11の該フランジ12を密着状態で連結し得るように構成されている。図中、符号13は管部材11のフランジ12と閉塞蓋7との間に設けられるOリング、14はワッシャ、15はボルト6が挿通する挿通孔、16はスタッドボルト10が挿通する挿通孔、18は脱気孔である。
【0040】
また、図3,4に図示した例は所謂外部締結型と呼ばれる封止機構を採用した場合を示すものであるが、図5に図示したような別例1のように所謂内部締結型と呼ばれる封止機構を採用しても良い。この場合、管体1の内周面と略同径の閉塞蓋7を、図5に図示したように管体1の内周面に設けられた凹部26に配設されるリテイナーリング24にボルト21で接合することで閉塞されている。
【0041】
図中、符号22はボルト21と螺合するナット、23は管体1の内周面に設けられる凹部27に配設され前記リテイナーリング24を支持するインナーリング、25は閉塞蓋7と管体1の内周面(シール層2)との間を閉塞するOリングである。また、図5においては、リテイナーリング24と閉塞蓋7との間に管部材11のフランジ12が挟持されるように該管部材11を配設し、前記ボルト21により管部材11のフランジ12を閉塞蓋7と共にリテイナーリング24に接合するように構成されている。尚、インナーリング23は必ずしも必要な部材ではなく、リテイナーリング24と凹部26との係合度合い(支持強度)によってはインナーリング23(及び凹部27)を設けない構成としても良い。
【0042】
また、図6に図示した別例2のように、管体1の周面に該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部を設け、この導入出部にこの管体1と他の部材とを接合するための接合機構を設ける構成としても良い。図6においては、導入出部は管体1の周面に穿設された導入出孔29と該導入出孔29に設けられ一端側に鍔部30を有する筒体31とから成り、この筒体31の鍔部30を、管体1の内周面に設けた係止溝32に係止せしめている。図中、符号33は筒体31を管体1の外周面に係止するスナップリング、34はOリング、35は係止溝32の底部と鍔部30の上面との間を封止する平パッキン、36は接合機構としてのビクトリックジョイント等が係止する接合用係止溝である。この場合、T字型のバルブ(二又管)を管体内部に設けることが可能となり、一層実用的となる。
【0043】
尚、図6に図示した別例2のように筒体31を係止溝32に係止させる構成に限らず、係止溝32を形成せずに、図7,8に図示した別例3及び図9,10に図示した別例4のように、筒体31の鍔部30と管体1の内周面との間にこの内周面の湾曲形状に沿った上面形状を有するFRP製のスペーサー37を設ける構成としても良い。このスペーサー37は、その上面37aが管体1の内周面の凹湾曲形状に沿うように凸湾曲形状とした所謂かまぼこ形状であり、中央には筒体31の胴部が挿通する挿通孔37bが設けられている。ここで、図7,8に図示した別例3はスペーサー37と管体1の内周面及び筒体31の鍔部30との間に設ける封止部材として平パッキン40・41を採用した例であり、図9,10は図示した別例4は上記封止部材としてOリング42・43を採用した例である。別例4においては、スペーサー37の挿通孔37bの下端開口周縁部37cを面取りすると共にスペーサー37の上面37aにOリング配設溝37dを形成し、この下端開口周縁部37cの面取り部分及びOリング配設溝37dにOリングを夫々配設している。別例3,4の場合には、管体1の内周面に係止溝32を形成する必要なく筒体31を鍔部30により抜け止めすることが可能となり、それだけ管体1を肉薄化できる。
【0044】
また、本実施例に係る管体1の連続繊維の巻回角度(ヘリカル角度)は上述の通り±50°に設定しているが、上記同様の構造で長さ7500mmの管体の両端を閉塞した状態で内部に6.9MPaの圧力(圧力変換器の管体として用いる場合にかかる圧力と同様の圧力)を10万回繰り返し印加し、この圧力の印加前後の管体の長さ方向における伸長度を測定したところ、圧力印加前は0.96mmで印加後は0.98mmであった。従って、10万回の繰り返し圧力印加後も伸長度はほとんど変化せず、極めて伸び難く、繰り返し圧力が作用する環境でも長期間安定的に使用可能であることが確認できた。これは、ヘリカル角度を最適化とすることで、管体の長さ方向にかかる圧力に対し繊維が適正に配されたためと考えられる。尚、菅体1を連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±45°±5°の角度で巻回されて成る内層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±85°±5°の角度で巻回されて成る外層とからなる複層構造とした場合も、同様の結果が得られることを確認している。
【0045】
また、上記同様の構造で且つ上記6.9MPaで10万回の繰り返し圧力印加後の長さ7500mmの管体の両端を閉塞した状態で、徐々に印加圧力を増やして破壊圧力を測定したところ、図11に図示したように、上記6.9MPaの6倍の基準値41.4MPaを超える45.7MPaであり、十分な耐圧力を有するものであることが確認できた。
【0046】
本実施例は上述のように構成したから、極めて耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、しかもステンレス製に比し安価に作製可能となる。従って、極めて高い耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度が求められる圧力変換器に用いても長期間安定的に使用可能で且つコスト性にも秀れたものとなる。
【0047】
更に、内径精度がステンレス製の管体に比し向上し(小さくなり)、ピストンと管体1の内壁との間の隙間を可及的に狭くすることができ、より一層効率的な圧力伝達が可能となる。また、ステンレス製の管体に比し伸び難い構成であり、更に長さ方向の伸びが温度の影響を受け難く、より寸法安定性に秀れたものとなり、高温下でも良好に使用可能となる。
【0048】
よって、本実施例は、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 管体
2 シール層
7 閉塞蓋
21 ボルト
24 リテイナーリング
26 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力変換器用の管体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、逆浸透膜を具備した海水淡水化装置から流出する濃縮海水(ブライン)の残留圧力を回収して供給圧力の一部とすることで、海水の動力回収効率を従来の80%以上90%未満から90%以上に引き上げる圧力変換器が知られている。
【0003】
この特許文献1に開示される圧力変換器は、図1に図示したように高圧ポンプ51から導入される海水を、逆浸透モジュール52へ移送し、この逆浸透モジュール52内部の逆浸透膜を透過した水を透過液(淡水)として取り出す海水淡水化装置に設けられる切換弁58やピストン55・56が夫々内装された円筒状の管室53・54等から成る二室圧力変換器である。図1中、符号57はピストン55・56や切換弁58等を適宜制御・調節するための制御兼調節ユニット、60は逆止弁である。
【0004】
具体的には、図1では、海水は、逆浸透モジュール52だけでなく管室54のピストン56の左側に移送されてピストン56を右側に押しながら管室54内に溜められ、管室54のピストン56の右側の濃縮海水は既に圧力を伝達して低圧化しているためピストン56に押されてバルブ61を介して排出される。一方、逆浸透モジュール52の逆浸透膜を透過しなかった高い残留圧力を有する濃縮海水は、管室53のピストン55の右側に移送されてピストン55を左側に押しながら管室53内に溜められ、この濃縮海水の残留圧力を利用してピストン55の左側に溜められていた海水を押してブースタポンプ59を介して高圧ポンプ51から移送される海水と共に逆浸透モジュール52へと移送する(この後ピストン55・56が夫々終端まで到達すると切換弁58が切り換わり管室53・54の役割が切り換わる。)。尚、圧力変換器には、濃縮海水と海水の浸透圧の差を利用してピストンなしで海水を圧送する方式もある。
【0005】
ところで、この圧力変換器の海水・濃縮海水が導入される管室(管体)には、高圧(60〜70kg/cm2)が周期的に繰り返し作用し、また、海水・濃縮海水に接するため、極めて高い耐圧力性・耐腐食性が求められる。
【0006】
従って、圧力変換器の管室は耐孔触係数(PREN:Pitting Resistance Equivalent Number(PREN=Cr+3.3×Mo+16×N [%]))が38以上の、例えば254SMOなどのスーパーステンレスやA890−5Aなどの二相ステンレスが使われており、PREN38以上のステンレスで耐腐蝕性を上げ、管室の厚さを厚く設計製作することで耐圧力性を確保している。
【0007】
ところが、PREN38以上のステンレスは、クロム、モリブデン及びニッケルを多く含有しているため、高価になるばかりか(クロム、モリブデン及びニッケルは相場取引となるため、価格が安定しないことが多い)、ステンレスの押し出し成形時若しくは鋳造時に、より高熱がかかるため管室の内径精度が、例えば、長さ7500mm、内径φ355で±2mmレベルに留まっている。この内径精度が大きいと、管室に溜め込んだ海水を濃縮海水の押圧によって供給する際、管室とピストンとの間に隙間ができることになり、海水の供給効率を低下させることになる。
【0008】
更に、管室の材質がステンレスの場合は、圧力印加時の長さ方向の伸びが温度の影響を受ける(温度が高い、例えば、50℃近傍の場合、押圧時に管室が伸び変形をおこしてしまう)ので、押圧変形に対する配慮も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−177753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような現状に鑑みなされたもので、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れた圧力変換器用の管体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体1は繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製のものであり、この管体1の内周面にはシール層2が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0013】
また、請求項1記載の圧力変換器用の管体において、この管体1はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0014】
また、請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して単一角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0015】
また、請求項3記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0016】
また、請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して夫々異なる単一角度で巻回された2層以上の層構造を有するものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0017】
また、請求項5記載の圧力変換器用の管体において、この管体1は前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回されて成る層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して85°±5°の角度で巻回されて成る層とから成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0018】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、前記シール層2の厚さが0.5mm以上に設定されていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0019】
また、請求項1〜7いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の両端部には該管体1を封止する封止機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0020】
また、請求項8記載の圧力変換器用の管体において、前記封止機構には、この管体1と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0021】
また、請求項8,9いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の端部を閉塞する閉塞蓋7を、この管体1の内周面に設けられた凹部26に配設されるリテイナーリング24にボルト21で接合することで該管体1を封止する封止機構が採用されていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0022】
また、請求項1〜10いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体1の周面には該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部が設けられ、この導入出部にはこの管体1と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【0023】
また、請求項1〜11いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、耐内圧強度が60〜105kg/cm2であることを特徴とする圧力変換器用の管体に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上述のように構成したから、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れた圧力変換器用の管体となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】圧力変換器の概略説明図である。
【図2】本実施例の概略説明側面図である。
【図3】本実施例の端部の拡大概略説明斜視図である。
【図4】本実施例の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図5】別例1の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図6】別例2の端部の拡大概略説明縦断面図である。
【図7】別例3の拡大概略説明横断面図である。
【図8】別例3のスペーサーの概略説明斜視図である。
【図9】別例4の拡大概略説明横断面図である。
【図10】別例4のスペーサーの概略説明斜視図である。
【図11】内圧破壊試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0027】
本発明は、繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の管体1であり、内面にシール層2を設けた構成であるから、極めて耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、しかもステンレス製に比し安価に作製可能となる。
【0028】
従って、本発明は、極めて高い耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度が求められる圧力変換器に用いても長期間安定的に使用可能で且つコスト性にも秀れたものとなる。
【0029】
更に、例えばフィラメントワインディング法やテープワインディング法により形成することで、樹脂による硬化成形時のひずみは、ステンレス製の管体の成形時(ステンレスの押し出し成形時若しくは鋳造時)のひずみより大幅に小さいことから、内径精度がステンレス製の管体に比し向上し(小さくなり)、例えば管体にピストンを設ける構成であっても該ピストンと管体1の内壁との間の隙間を可及的に狭くすることができ、より一層効率的な圧力伝達が可能となる。
【0030】
また、ステンレス製の管体に比し、印加圧力に対して、伸び難い構成であり、更に長さ方向の伸びが温度の影響を受け難く、より寸法安定性に秀れたものとなり、赤道付近の暖海水のような高温下でも良好に使用可能となる。
【0031】
また、例えば、管体1を、連続繊維を管体1の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回して形成するか若しくは連続繊維を管体1の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回して成る層と85°±5°の角度で巻回して成る層とから構成した場合には、一層引っ張り強度に秀れたものとなり、繰り返し応力が連続的に作用しても長期にわたって破断等のおそれなく良好に使用することが可能なものとなる。
【実施例】
【0032】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0033】
本実施例は、図1に図示したような海水淡水化装置に設けられ内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体1は図2に図示したようなフィラメントワインディング法により連続繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製の円筒状のものである。尚、本実施例に係る圧力変換器は海水淡水化装置に限らず、他の逆浸透膜を用いて濃度の異なる溶液を取り出す装置に用いることも可能である。
【0034】
具体的には本実施例は、公知のフィラメントワインディング法により、エポキシ樹脂とこれらの硬化剤を含む樹脂を含浸したガラス繊維を円筒状のマンドレルに該マンドレルの軸芯方向(管体1の軸芯方向)に対して所定の角度αで連続的に必要量を巻回(ヘリカル巻)し、エポキシ樹脂を加熱硬化させ、続いて、マンドレルを脱型することで形成される円筒状のものであり、上述したような圧力変換器の管室(管体1)として用いられるものである。尚、エポキシ樹脂に限らず、ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂等、他の樹脂を用いても良いし、ガラス繊維に限らず、カーボン繊維等、他の繊維を用いても良い。また、フィラメントワインディング法に限らず、テープワインディング法やシートワインディング法を用いても良い。
【0035】
本実施例においては、所定の引っ張り強度を確保するため、上記角度αは±50°(+50°と−50°とは繊維の長さ方向は互いに直交する方向となるが、軸芯に対する角度は同一であるため、本実施例においてはこれも単一角度に含まれるものとする。)に設定されており、管体1は連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±50°の単一角度で巻回されて形成されている。
【0036】
尚、本実施例においては、管体1を上記角度αを±50°に設定した単層構造としているが、±50°±5°の範囲で適宜調整しても良いし、菅体1を連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±45°±5°の単一角度で巻回されて成る内層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±85°±5°の単一角度で巻回されて成る外層とからなる複層構造としても良い。この場合も引っ張り強度に秀れた構成となる。
【0037】
また、管体1の内周面には厚さ0.5mm以上(好ましくは1.5mm以上)のシール層2が設けられている。本実施例においてシール層2の厚さは約3mmに設定されている。このシール層2はテープワインディング法により形成されている。このシール層2により、管体1の内周面は平滑で略同一径となり、ピストンを内装した場合に可及的にピストンの外周と管体1の内周面との間の隙間が小さくなり、圧力変換器に用いた際に圧力の伝達を良好に行うことが可能となる。また、シール層2の存在により内周面強度も向上しピストンの摺動による摩耗も可及的に抑制される。尚、本実施例においては、上述のようにピストンを内装した場合について説明しているが、ピストンを内装しないタイプに用いることも勿論可能である。
【0038】
また、図3,4に図示したように、管体1の両端部には該管体1を封止する封止機構が設けられている。具体的には、封止機構は管体1の両端部に夫々形成される肉厚部に穿設される螺子孔4に螺着されるスタッドボルト5及びナット6、このスタッドボルト5及びナット6により管体1の端面に密着状態で連結される金属製、FRP製、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製若しくはPES(ポリエーテルスルフォン)製またはこれらの樹脂をガラス繊維で強化したFRTP(繊維強化熱可塑性プラスチック)製の閉塞蓋7並びに該閉塞蓋7と管体1の端面との間に設けられるOリング8とで構成されている。本実施例においては金属製の閉塞蓋7が採用されている。また、本実施例においては、上述した管体の繊維の巻回方向と封止機構とにより管体の圧力変換器の運転時の圧力が、60〜105kg/cm2に耐えられるように構成されている。
【0039】
この封止機構には、閉塞蓋7と他の部材とを接合するための接合機構が設けられている。具体的には、接合機構は、閉塞蓋7の外面側に穿設される螺子孔9に螺着されるスタッドボルト10であり、このスタッドボルト10及びナット17を用いて閉塞蓋7の外面に、フランジ12を有する管部材11の該フランジ12を密着状態で連結し得るように構成されている。図中、符号13は管部材11のフランジ12と閉塞蓋7との間に設けられるOリング、14はワッシャ、15はボルト6が挿通する挿通孔、16はスタッドボルト10が挿通する挿通孔、18は脱気孔である。
【0040】
また、図3,4に図示した例は所謂外部締結型と呼ばれる封止機構を採用した場合を示すものであるが、図5に図示したような別例1のように所謂内部締結型と呼ばれる封止機構を採用しても良い。この場合、管体1の内周面と略同径の閉塞蓋7を、図5に図示したように管体1の内周面に設けられた凹部26に配設されるリテイナーリング24にボルト21で接合することで閉塞されている。
【0041】
図中、符号22はボルト21と螺合するナット、23は管体1の内周面に設けられる凹部27に配設され前記リテイナーリング24を支持するインナーリング、25は閉塞蓋7と管体1の内周面(シール層2)との間を閉塞するOリングである。また、図5においては、リテイナーリング24と閉塞蓋7との間に管部材11のフランジ12が挟持されるように該管部材11を配設し、前記ボルト21により管部材11のフランジ12を閉塞蓋7と共にリテイナーリング24に接合するように構成されている。尚、インナーリング23は必ずしも必要な部材ではなく、リテイナーリング24と凹部26との係合度合い(支持強度)によってはインナーリング23(及び凹部27)を設けない構成としても良い。
【0042】
また、図6に図示した別例2のように、管体1の周面に該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部を設け、この導入出部にこの管体1と他の部材とを接合するための接合機構を設ける構成としても良い。図6においては、導入出部は管体1の周面に穿設された導入出孔29と該導入出孔29に設けられ一端側に鍔部30を有する筒体31とから成り、この筒体31の鍔部30を、管体1の内周面に設けた係止溝32に係止せしめている。図中、符号33は筒体31を管体1の外周面に係止するスナップリング、34はOリング、35は係止溝32の底部と鍔部30の上面との間を封止する平パッキン、36は接合機構としてのビクトリックジョイント等が係止する接合用係止溝である。この場合、T字型のバルブ(二又管)を管体内部に設けることが可能となり、一層実用的となる。
【0043】
尚、図6に図示した別例2のように筒体31を係止溝32に係止させる構成に限らず、係止溝32を形成せずに、図7,8に図示した別例3及び図9,10に図示した別例4のように、筒体31の鍔部30と管体1の内周面との間にこの内周面の湾曲形状に沿った上面形状を有するFRP製のスペーサー37を設ける構成としても良い。このスペーサー37は、その上面37aが管体1の内周面の凹湾曲形状に沿うように凸湾曲形状とした所謂かまぼこ形状であり、中央には筒体31の胴部が挿通する挿通孔37bが設けられている。ここで、図7,8に図示した別例3はスペーサー37と管体1の内周面及び筒体31の鍔部30との間に設ける封止部材として平パッキン40・41を採用した例であり、図9,10は図示した別例4は上記封止部材としてOリング42・43を採用した例である。別例4においては、スペーサー37の挿通孔37bの下端開口周縁部37cを面取りすると共にスペーサー37の上面37aにOリング配設溝37dを形成し、この下端開口周縁部37cの面取り部分及びOリング配設溝37dにOリングを夫々配設している。別例3,4の場合には、管体1の内周面に係止溝32を形成する必要なく筒体31を鍔部30により抜け止めすることが可能となり、それだけ管体1を肉薄化できる。
【0044】
また、本実施例に係る管体1の連続繊維の巻回角度(ヘリカル角度)は上述の通り±50°に設定しているが、上記同様の構造で長さ7500mmの管体の両端を閉塞した状態で内部に6.9MPaの圧力(圧力変換器の管体として用いる場合にかかる圧力と同様の圧力)を10万回繰り返し印加し、この圧力の印加前後の管体の長さ方向における伸長度を測定したところ、圧力印加前は0.96mmで印加後は0.98mmであった。従って、10万回の繰り返し圧力印加後も伸長度はほとんど変化せず、極めて伸び難く、繰り返し圧力が作用する環境でも長期間安定的に使用可能であることが確認できた。これは、ヘリカル角度を最適化とすることで、管体の長さ方向にかかる圧力に対し繊維が適正に配されたためと考えられる。尚、菅体1を連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±45°±5°の角度で巻回されて成る内層と前記連続繊維が該管体1の軸芯方向に対して±85°±5°の角度で巻回されて成る外層とからなる複層構造とした場合も、同様の結果が得られることを確認している。
【0045】
また、上記同様の構造で且つ上記6.9MPaで10万回の繰り返し圧力印加後の長さ7500mmの管体の両端を閉塞した状態で、徐々に印加圧力を増やして破壊圧力を測定したところ、図11に図示したように、上記6.9MPaの6倍の基準値41.4MPaを超える45.7MPaであり、十分な耐圧力を有するものであることが確認できた。
【0046】
本実施例は上述のように構成したから、極めて耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、しかもステンレス製に比し安価に作製可能となる。従って、極めて高い耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度が求められる圧力変換器に用いても長期間安定的に使用可能で且つコスト性にも秀れたものとなる。
【0047】
更に、内径精度がステンレス製の管体に比し向上し(小さくなり)、ピストンと管体1の内壁との間の隙間を可及的に狭くすることができ、より一層効率的な圧力伝達が可能となる。また、ステンレス製の管体に比し伸び難い構成であり、更に長さ方向の伸びが温度の影響を受け難く、より寸法安定性に秀れたものとなり、高温下でも良好に使用可能となる。
【0048】
よって、本実施例は、耐圧力性・耐腐食性・引っ張り強度に秀れ、ステンレスを用いる場合に比し安価に作製可能であり、しかも内径精度も小さくできる極めて実用性に秀れたものとなる。
【符号の説明】
【0049】
1 管体
2 シール層
7 閉塞蓋
21 ボルト
24 リテイナーリング
26 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体は繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製のものであり、この管体の内周面にはシール層が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項2】
請求項1記載の圧力変換器用の管体において、この管体はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項3】
請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して単一角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項4】
請求項3記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項5】
請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して夫々異なる単一角度で巻回された2層以上の層構造を有するものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項6】
請求項5記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回されて成る層と前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して85°±5°の角度で巻回されて成る層とから成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、前記シール層の厚さが0.5mm以上に設定されていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の両端部には該管体を封止する封止機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項9】
請求項8記載の圧力変換器用の管体において、前記封止機構には、この管体と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項10】
請求項8,9いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の端部を閉塞する閉塞蓋を、この管体の内周面に設けられた凹部に配設されるリテイナーリングにボルトで接合することで該管体を封止する封止機構が採用されていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の周面には該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部が設けられ、この導入出部にはこの管体と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、耐内圧強度が60〜105kg/cm2であることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項1】
内部に印加される圧力が周期的に変化する圧力変換器用の管体であって、この管体は繊維を巻回積層して成る繊維強化樹脂製のものであり、この管体の内周面にはシール層が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項2】
請求項1記載の圧力変換器用の管体において、この管体はフィラメントワインディング法若しくはテープワインディング法により連続繊維を巻回積層して成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項3】
請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して単一角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項4】
請求項3記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して50°±5°の角度で巻回されて成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項5】
請求項2記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して夫々異なる単一角度で巻回された2層以上の層構造を有するものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項6】
請求項5記載の圧力変換器用の管体において、この管体は前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して45°±5°の角度で巻回されて成る層と前記連続繊維が該管体の軸芯方向に対して85°±5°の角度で巻回されて成る層とから成るものであることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、前記シール層の厚さが0.5mm以上に設定されていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の両端部には該管体を封止する封止機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項9】
請求項8記載の圧力変換器用の管体において、前記封止機構には、この管体と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項10】
請求項8,9いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の端部を閉塞する閉塞蓋を、この管体の内周面に設けられた凹部に配設されるリテイナーリングにボルトで接合することで該管体を封止する封止機構が採用されていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、この管体の周面には該周面から流体を導入若しくは導出する導入出部が設けられ、この導入出部にはこの管体と他の部材とを接合するための接合機構が設けられていることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載の圧力変換器用の管体において、耐内圧強度が60〜105kg/cm2であることを特徴とする圧力変換器用の管体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−261488(P2010−261488A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111430(P2009−111430)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000155698)株式会社有沢製作所 (117)
【Fターム(参考)】
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