説明

圧力容器

【課題】軽量化を図ることができる圧力容器を提供する。
【解決手段】容器本体と、容器本体の口部に設けられる口金15とを有する圧力容器であって、口金15は、金属部材35と該金属部材35よりも比重の小さい非金属製部材36との複合構造とされており、金属部材35と非金属製部材36とが円周方向に交互に配置されている。あるいは、口金を炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器に関し、特にその軽量化に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガス等の高圧ガスを充填保管する圧力容器においては、車両への搭載や取り扱い性等を考慮して極力軽量化することが望まれている。このため、例えば容器本体を樹脂製とする技術がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−211783号公報
【特許文献2】特開2000−266289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の圧力容器においては、容器本体については樹脂製として軽量化が図られているものの、口金は金属製であり、この点で、軽量化が十分ではなかった。また、特許文献2に記載の圧力容器においても、容器本体を樹脂製としており、さらに口金が金属を主体としその外側を金属より軽量のゴム皮膜で被覆しているものの、やはり軽量化が十分ではなかった。
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、軽量化を図ることができる圧力容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明に係る圧力容器は、容器本体と、該容器本体の口部に設けられる口金とを有する圧力容器であって、前記口金は、金属部材と該金属部材よりも比重の小さい非金属製部材との複合構造とされており、前記金属部材と前記非金属製部材とが円周方向に交互に配置されているものである。
【0006】
かかる構成によれば、口金を、金属部材と非金属製部材とが円周方向に交互に配置された複合構造としているため、簡素な構造で軽量化を図ることができる。しかも、軽量化のため金属部材を抜いた部分を非金属製部材で埋めているため、形状の連続性を保つことができる。よって、例えば、容器本体の内殻と外殻との間に口金を介装する構造であっても、口金の外側に外殻を良好に形成することができる。
【0007】
また、本発明に係る圧力容器は、容器本体と、該容器本体の口部に設けられる口金とを有する圧力容器であって、前記口金は、炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造とされているものである。
【0008】
かかる構成によれば、口金を、炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造としているため、軽量化を図ることができる。しかも、各部位の応力モードを考慮して、例えば高応力を受け持つ範囲は炭素繊維強化樹脂で形成し、低応力範囲はガラス繊維強化樹脂で形成する等して、強度を確保しつつ低コスト化を図ることができる。
【0009】
この場合、前記口金は、半径方向内側に配設される円筒状部と、該円筒状部よりも半径方向外側の軸線方向中間部に配置される中間円環状部と、前記円筒状部よりも半径方向外側における前記中間円環状部の軸線方向両外側にそれぞれ配置される外側円環状部と、これら円筒状部、中間円環状部及び両外側円環状部の半径方向外側を覆う被覆部とを有しており、前記円筒状部及び前記被覆部は炭素繊維強化樹脂からなり、前記中間円環状部及び前記両外側円環状部はガラス繊維強化樹脂からなる構成としても良い。
【0010】
かかる構成によれば、高応力部位である円筒状部及び被覆部を炭素繊維強化樹脂で形成し、低応力部位である中間円環状部及び外側円環状部をガラス繊維強化樹脂で形成するため、強度を確保しつつ低コスト化を図ることができる。また、円筒状部、中間円環状部、両外側円環状部及び被覆部の5部品で構成することで各部の成形品質を向上できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧力容器によれば、簡素な構造で軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図4を参照して、本発明の第1実施形態に係る圧力容器について説明する。
【0013】
図1は、内部に常圧よりも高圧の高圧ガス(例えば、30MPa〜70MPaの水素ガス、燃料ガス)を充填保管するための第1実施形態に係る圧力容器10を示している。この圧力容器10は、ガス透過性の低い合成樹脂からなるライナー(内殻)11の外側を、繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなる補強部(外殻)12で被覆して構成される容器本体13と、この容器本体13の端部に形成された内外を連通する口部14に設けられる口金15とを有している。
【0014】
ライナー11は、円筒状の胴部20と、胴部20の軸線方向一端側に胴部20から軸線方向に離れるほど縮径するように形成された肩部21と、肩部21の内端縁から中心軸線側に向かうに従って小径側(半径方向内側)の部位ほどライナー11の軸線方向内側に位置するように傾斜しつつ延出する内側延出部22と、内側延出部22の肩部21とは反対側からライナー11の軸線方向に沿ってライナー11内に突出する円筒状の端末部23とを有している。
【0015】
口金15は、図2及び図3に示すように、略円筒状をなすとともに内周面にバルブVを取り付けるための雌ネジ24が形成された主円筒状部27と、この主円筒状部27の軸線方向一端側に形成されるとともに、この主円筒状部27よりも大径の内径を有する内側円筒状部28と、主円筒状部27の軸線方向における内側円筒状部28側に形成されたフランジ部29とを有している。
【0016】
フランジ部29は、その軸線方向における内側円筒状部28とは反対側が、内側円筒状部28に近づくほど大径となる外側テーパ面31とされ、その軸線方向における内側円筒状部28側が、内側円筒状部28に近づくほど小径となる内側テーパ面32とされている。つまり、フランジ部29は、半径方向外側ほど薄くなる先細形状をなしている。
【0017】
そして、第1実施形態においては、口金15が、ステンレス鋼材あるいはアルミニウム合金等の金属部材からなる口金本体35と、この口金本体35よりも比重が小さい非金属製軽量部材であるゴムからなる結合部材36との複合構造とされている。
【0018】
口金本体35は、主円筒状部27の全体と、内側円筒状部28の全体と、フランジ部29の一部とが一体に形成されたもので、主円筒状部27から半径方向外方に延出してフランジ部29の一部を構成するフランジ構成部38が円周方向に所定の等間隔で複数形成されている。その結果、円周方向に隣り合うフランジ構成部38同士の間が半径方向外側に抜ける形状の切欠部39となっており、この切欠部39も円周方向に所定の等間隔で複数形成されている。
【0019】
各切欠部39には、その底部40の軸線方向中間部に円周方向に沿って延在する結合溝41が形成されている。この結合溝41は、底側が軸線方向の幅が広い幅広部42とされ、開口側が幅広部42よりも軸線方向の幅が狭い幅狭部43とされている。また、切欠部39には、その両側面44の半径方向の中間部かつ軸線方向の中間部に、円周方向に凹む結合凹部45が形成されている。
【0020】
ゴム製の結合部材36は、フランジ部29の残りの一部を構成するもので、口金本体35の切欠部39を埋める形状をなしている。つまり、結合部材36は、図4にも示すように、先細形状の主部48と、主部48の基端側から突出する首部49と、首部49の主部48とは反対側にあって首部49よりも幅広の係合部50と、主部48の両側面51から突出する凸部52とを有している。
【0021】
そして、結合部材36は、係合部50を切欠部39の結合溝41の幅広部42に嵌合させ、首部49を結合溝41の幅狭部43に嵌合させ、両凸部52を接着剤を塗布した状態で両結合凹部45に嵌合させることで、切欠部39に結合される。結合部材36をすべての切欠部39にそれぞれ結合することで、円周方向に連続する形状のフランジ部29が形成される。この状態で、口金15は、そのフランジ部29が、金属部材のフランジ構成部38とゴム製の結合部材36とが円周方向に交互に配置された複合構造となる。
【0022】
このようにして口金本体35に結合部材36を結合して形成された口金15が、ライナー11の口部14に取り付けられる。このとき、口金15は、その内側円筒状部28がライナー11の端末部23に嵌合し、フランジ部29の内側テーパ面32がライナー11の内側延出部22に当接する。この状態で、フィラメントワインディング(FW)成形法によって、ライナー11及び口金15の外側を覆うように繊維強化樹脂からなる補強部12が形成される。
【0023】
つまり、長尺状の繊維強化材を樹脂に含浸させながら、マンドレルとしてのライナー11及び口金15に巻き付けて成形し、その後、樹脂を硬化させることで補強部12を形成する。これにより、口金15はライナー11と補強部12との間に介装された状態で容器本体13の口部14に設けられることになる。
【0024】
以上に述べた第1実施形態に係る圧力容器10によれば、口金15を、金属部材からなる口金本体35とこれより比重の小さいゴムからなる結合部材36との複合構造とし、しかも、金属部材からなるフランジ構成部38とゴムからなる結合部材36とが円周方向に交互に配置された構造としているため、簡素な構造で軽量化を図ることができる。具体的には口金を全て金属で形成する場合に比べて約20%の軽量化を図ることができる。
【0025】
勿論、バルブVが締結される主円筒状部27及び容器本体13への取り付けのためのフランジ構成部38は一体の金属からなるため、バルブVの締結性能、耐圧性能及びシール性能を損なうことはない。
しかも、軽量化のために口金本体35の金属部材を抜いた切欠部39をゴムからなる結合部材36で埋めているため、形状の連続性を保つことができる。よって、上記のように容器本体13のライナー11と補強部12との間に口金15を介装する構造であっても、口金15の外側に補強部12を良好に形成することができる。
【0026】
次に、図5〜図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る圧力容器について説明する。
【0027】
図5は、内部に常圧よりも高圧の高圧ガス(例えば、30MPa〜70MPaの水素ガス、燃料ガス)を充填保管するための第2実施形態に係る圧力容器10Aを示している。この圧力容器10Aは、第1実施形態と同様、合成樹脂製のライナー11の外側を、繊維強化樹脂からなる補強部12で被覆して構成される容器本体13を有しており、この容器本体13の端部に形成された内外を連通する口部14に設けられる口金15Aが第1実施形態に対し相違している。
【0028】
第2実施形態の口金15Aは、全体として、繊維強化樹脂で形成されており、炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造とされている。
【0029】
具体的に、口金15Aは、図6に示すように、半径方向内側に配設される円筒状部55と、この円筒状部55よりも半径方向外側の軸線方向中間部に配置される中間円環状部56と、円筒状部55よりも半径方向外側の軸線方向中間部における中間円環状部56の軸線方向両外側にそれぞれ配置される一対の外側円環状部57,58と、これら円筒状部55、中間円環状部56及び一対の外側円環状部57,58の半径方向外側を全体的に覆う被覆部59とを有している。
【0030】
円筒状部55は、略一定内径及び略一定外径となっている。半径方向をR方向、軸線方向をZ方向とした場合に、図7に示すように、円筒状部55は、積層方向がR方向であり、繊維の配向が0°/90°/±45°sとされ、材質が炭素繊維強化樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)となっている。
【0031】
一方の外側円環状部57は、略一定内径であり、外径側に、軸線方向の一側から軸線方向他側にかけて徐々に小径となるテーパ面61を有する形状をなしている。他方の外側円環状部58も、略一定内径であり、外径側に、軸線方向の一側から軸線方向他側にかけて徐々に小径となるテーパ面62を有する形状をなしている。
【0032】
図7に示すように、一方の外側円環状部57は、積層方向がRZ45°方向であり、繊維の配向が0°/90°/±45°sとされ、材質がガラス繊維強化樹脂(GFRP:Glass Fiber Reinforced Plastics)となっている。他方の外側円環状部58は、積層方向がRZ135°方向であり、繊維の配向が0°/90°/±45°sとされ、材質がガラス繊維強化樹脂となっている。
【0033】
中間円環状部56は、略一定内径であり、外径側に、軸線方向の中央から軸線方向両外側にかけて徐々に小径となるテーパ面63,64を有する形状をなしている。図7に示すように、中間円環状部56は、積層方向がZ方向であり、繊維の配向が0°/90°/±45°sとされ、材質がガラス繊維強化樹脂となっている。
【0034】
上記した円筒状部55、一対の外側円環状部57,58及び中間円環状部56をそれぞれ単品の状態でフィラメントワインディング成形法によって成形する。そして、円筒状部55の外側に、軸線方向に沿って一方の外側円環状部57、中間円環状部56、他方の外側円環状部58の順に組み付ける。このとき、一方の外側円環状部57のテーパ面61と、中間円環状部56のテーパ面63とが略連続することになり、他方の外側円環状部58のテーパ面62と、中間円環状部56のテーパ面64とが略連続することになる。
【0035】
そして、これらの組立体をマンドレルとして被覆部59をフィラメントワインディング成形法によって成形する。つまり、被覆部59は、図7に示すように、積層方向が組立面直であり、繊維の配向が0°/90°sとされ、材質が炭素繊維強化樹脂となっている。
【0036】
上記のように、円筒状部55の外側に、一対の外側円環状部57,58及び中間円環状部56を組み付け、これらの外側を被覆部59で覆った後、円筒状部55の内周面にネジ加工を施し、バルブVを取り付けるための雌ネジ24を形成するコイル状のヘリサート66を挿入することで、第2実施形態の口金15Aが形成される。
【0037】
この口金15Aは、円筒状部55とこれを覆う被覆部59とヘリサート66とで、略円筒状をなすとともに内周面にバルブVを取り付けるための雌ネジ24が形成された主円筒状部27Aが形成され、一対の外側円環状部57,58及び中間円環状部56とこれらを覆う被覆部59とで、両側に外側テーパ面31A及び内側テーパ面32Aを備えたフランジ部29Aが形成される。
【0038】
そして、このようにして繊維強化樹脂で形成された口金15Aが、ライナー11の口部14に取り付けられる。このとき、口金15Aは、その主円筒状部27Aの一端側がライナー11の端末部23に嵌合し、フランジ部29Aの内側テーパ面32Aがライナー11の内側延出部22に当接した状態となり、この状態で、フィラメントワインディング成形法により、ライナー11及び口金15の外側を覆うように繊維強化樹脂からなる補強部12が形成される。
【0039】
以上に述べた第2実施形態に係る圧力容器10Aによれば、口金15Aを、炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造としているため、軽量化を図ることができる。具体的には口金を全て金属で形成する場合に比べて約30%の軽量化を図ることができる。勿論、バルブVが締結される円筒状部27A及び容器本体13への取り付けのためのフランジ部29Aがすべて繊維強化樹脂からなるため、バルブVの締結性能、耐圧性能及びシール性能を損なうことはない。
【0040】
しかも、各部位の応力モードを考慮して、例えば高応力を受け持つ範囲は炭素繊維強化樹脂で形成し、低応力範囲はガラス繊維強化樹脂で形成する等して、強度を確保しつつ低コスト化を図ることができる。
【0041】
つまり、高応力部位である円筒状部55及び被覆部59を炭素繊維強化樹脂で形成し、低応力部位である中間円環状部56及び外側円環状部57,58をガラス繊維強化樹脂で形成するため、強度を確保しつつ低コスト化を図ることができる。また、円筒状部55、中間円環状部56、両外側円環状部57,58及び被覆部59の5部品で構成することで各部の成形品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力容器の要部を示す断面図である。
【図2】図1に示す圧力容器の口金を示す部分断面図である。
【図3】図1に示す圧力容器の口金を示す部分平面図である。
【図4】図1に示す圧力容器の口金の結合部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る圧力容器の要部を示す断面図である。
【図6】図5に示す圧力容器の口金を示す部分断面図である。
【図7】図5に示す圧力容器の口金の各部を説明する図表である。
【符号の説明】
【0043】
10,10A…圧力容器、13…容器本体、14…口部、15,15A…口金、35…口金本体(金属部材)、38…フランジ構成部、36…結合部材(非金属製部材)、55…円筒状部、56…中間円環状部、57,58…外側円環状部、59…被覆部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、該容器本体の口部に設けられる口金とを有する圧力容器であって、
前記口金は、金属部材と該金属部材よりも比重の小さい非金属製部材との複合構造とされており、前記金属部材と前記非金属製部材とが円周方向に交互に配置されている圧力容器。
【請求項2】
容器本体と、該容器本体の口部に設けられる口金とを有する圧力容器であって、
前記口金は、炭素繊維強化樹脂とガラス繊維強化樹脂との複合構造とされている圧力容器。
【請求項3】
前記口金は、半径方向内側に配設される円筒状部と、該円筒状部よりも半径方向外側の軸線方向中間部に配置される中間円環状部と、前記円筒状部よりも半径方向外側における前記中間円環状部の軸線方向両外側にそれぞれ配置される外側円環状部と、これら円筒状部、中間円環状部及び両外側円環状部の半径方向外側を覆う被覆部とを有しており、前記円筒状部及び前記被覆部は炭素繊維強化樹脂からなり、前記中間円環状部及び前記両外側円環状部はガラス繊維強化樹脂からなる請求項2記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−232273(P2008−232273A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72948(P2007−72948)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】