説明

圧力容器

【課題】簡易な構造で確実にシールすることができる圧力容器を提供することを課題とする。
【解決手段】突出するネック部2cを備え、気体又は液体を収容する中空の樹脂ライナー2と、ネック部2cの内側に取り付けられた口金部材3と、口金部材3の内側に取り付けられたバルブ6と、樹脂ライナー2とバルブ6との間に設けられたシール部材7と、を有する圧力容器1であって、ネック部2cは、筒状を呈する筒部11と、筒部11の上端に設けられシール部材7を取り付ける取付座面12aと、取付座面12aの外側に立ち上がる立上り壁13と、を有し、シール部材7は、バルブ6の一部及び取付座面12aに当接していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体又は液体を貯留する圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液化石油ガス(Liquefied petroleum gas)は、ブタン、プロパンなどを主成分とし、圧縮することにより常温で容易に液化できる気体燃料として知られている。LPGを液化することで、その体積は気化ガス時の250分の1になり、耐圧の低い圧力で貯蔵や輸送が可能となる。LPGを貯蔵する材料としては、これまでは一般に、スチール製やアルミニウム合金製の圧力容器が採用されてきた。しかし、金属製の圧力容器は、強度が高く、信頼性が高い利点を有するが、重量が重くなるという問題があった。
【0003】
このような問題点に鑑み、近年では、圧力容器の軽量化を目的として、合成樹脂製の薄肉容器(樹脂ライナー)を、樹脂が含浸された繊維強化層で被い、その後樹脂を硬化させる複合構造の圧力容器が提案されている。例えば特許文献1に記載の圧力容器は、樹脂ライナーと、この樹脂ライナーの外面を補強する繊維強化樹脂層(FRP層)と、樹脂ライナー及び繊維強化樹脂層の外側に突出し、LPGの注排口となる金属製の口金部材とで構成されている。口金部材の筒部の内周面には例えば雌ネジが形成されており、この雌ネジにバルブを締結して、バルブから圧力容器の内部のLPGを注排する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−10004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂ライナーと口金部材とは材料が異なるため、これらの部材を気体や液体がリークしないように隙間なく接合することは容易ではない。一方で、リークしないようにシール構造を複雑化させると、製造作業が煩雑になったり、製造コストが増加したりするという問題がある。また、シール構造が複雑化すると、メンテナンスやシール部分の管理も困難になる。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、簡易な構造で確実にシールすることができる圧力容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、突出するネック部を備え、気体又は液体を収容する中空の樹脂ライナーと、前記ネック部の内側に取り付けられた口金部材と、前記口金部材の内側に取り付けられたバルブと、前記樹脂ライナーと前記バルブとの間に設けられたシール部材と、を有する圧力容器であって、前記ネック部は、筒状を呈する筒部と、前記筒部の上端に設けられ前記シール部材を取り付ける取付座面と、前記取付座面の外側に立ち上がる立上り壁と、を有し、前記シール部材は、前記バルブの一部及び前記取付座面に当接していることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、シール部材を樹脂ライナーの取付座面とバルブとの間に介設するだけで気体又は液体のリークを確実に防ぐことができる。また、取付座面の外側に立上り壁を設けたことにより、シール部材の取付性を向上させることができる。また、立上り壁を設けたことにより、圧力容器に内圧が作用した際に、シール部材がはみ出るのを防ぐことができる。また、樹脂ライナーとバルブとの間にシール部材を介設しているため、バルブを外せばシール部材を視認できる。これにより、メンテナンスやシール部分の管理が容易になる。
【0009】
また、本発明は、突出するネック部を備え、気体又は液体を収容する中空の樹脂ライナーと、前記ネック部の内側に取り付けられた口金部材と、前記口金部材の内側に取り付けられた補助部材と、前記補助部材の内側に取り付けられたバルブと、前記樹脂ライナーと前記補助部材との間に設けられたシール部材と、を有する圧力容器であって、前記ネック部は、筒状を呈する筒部と、前記筒部の上端に設けられ前記シール部材を取り付ける取付座面と、前記取付座面の外側に立ち上がる立上り壁と、を有し、前記シール部材は、前記補助部材の一部及び前記取付座面に当接していることを特徴とする。
【0010】
かかる構成によれば、シール部材を樹脂ライナーの取付座面と補助部材との間に介設するだけで気体又は液体のリークを確実に防ぐことができる。また、口金部材とバルブの間に補助部材を設けることにより、様々な種類のバルブに対応することができる。また、取付座面の外側に立上り壁を設けたことにより、シール部材の取付性を向上させることができる。また、立上り壁を設けたことにより、圧力容器に内圧が作用した際に、シール部材がはみ出るのを防ぐことができる。また、樹脂ライナーとバルブとの間にシール部材を介設しているため、バルブ及び補助部材を外せばシール部材を視認できる。これにより、メンテナンスやシール部分の管理が容易になる。
【0011】
また、前記口金部材は、リング状のフランジ部と、前記フランジ部の内周に突出する筒状の突出部と、を有し、前記突出部の外周には、半径方向に延設された大径部が設けられており、前記取付座面の下に前記大径部が配置されていることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、樹脂製の取付座面が金属製の口金部材の大径部で支持されているため、取付座面の強度を向上させることができる。これにより、シール部分の耐久性を向上させることができる。
【0013】
また、前記バルブは、前記口金部に接合される本体筒部と、前記本体筒部から外側に張り出し、前記立上り壁の上端及び前記口金部材の上端を覆う押え部を有し、前記押え部には、前記立上り壁の外側に配置されたサポート部が延設されていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、立上り壁の外側にサポート部が配置されるため、樹脂ライナーに内圧が作用した際に、立上り壁や筒部が外側に倒れるのを防ぐことができる。
【0015】
また、前記補助部材は、前記口金部材に接合されるとともに前記バルブが取り付けられる基部と、前記基部から外側に張り出し、前記立上り壁の上端及び前記口金部材の上端を覆う押え部を有し、前記押え部には、前記前記立上り壁の外側に配置されたサポート部が延設されていることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、補助部材を用いた場合であっても、立上り壁の外側にサポート部が配置されるため、樹脂ライナーに内圧が作用した際に、立上り壁や筒部が外側に倒れるのを防ぐことができる。
【0017】
また、前記口金部材の外周に、凹溝が設けられており、前記凹溝に前記樹脂ライナーを構成する樹脂が充填されていることが好ましい。かかる構成によれば、樹脂ライナーに対する口金部材の回転を規制することができるため、樹脂ライナーと口金部材との結合性を高めることができる。
【0018】
また、前記口金部材と前記樹脂ライナーとの間に粉体塗装による塗膜が形成されていることが好ましい。かかる構成によれば、口金部材と樹脂ライナーとの結合性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧力容器によれば、簡易な構造で確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一実施形態に係る圧力容器を示す一部破断側断面図である。
【図2】第一実施形態に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。
【図3】第一実施形態に係る口金部材を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】第一実施形態に係る圧力容器の製造方法の口金部材保持工程を示した模式断面図である。
【図6】第一実施形態に係る圧力容器の製造方法の型締め工程を示した模式断面図である。
【図7】第一実施形態に係る圧力容器の製造方法のブロー工程を示した模式断面図である。
【図8】変形例に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。
【図9】第二実施形態に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。
【図10】変形例に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態に係る圧力容器1は、樹脂ライナー2と、樹脂ライナー2の端部に形成された口金部材3と、口金部材3の外周面に形成された塗膜4と、樹脂ライナー2の外周を覆う繊維強化樹脂層5と、口金部材3に取り付けられたバルブ6と、シール部材7とで主に構成されている。圧力容器1は、例えば、内部に液体又は気体を収容することができる容器である。
【0022】
樹脂ライナー2は、図1及び図2に示すように、樹脂製であって内部が中空になっている。樹脂ライナー2の材料は特に制限されないが、収容する気体又は液体の種類や用途に応じて、例えば、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリアミド、ポリケトン、ポリフェニレンサルフィド(PPS)などが用いられる。樹脂ライナー2を樹脂で形成することで、軽量化を図ることができる。
【0023】
樹脂ライナー2は、本実施形態では、筒状を呈する胴部2aと、胴部2aの端部側を構成する曲面を備えた肩部2bと、肩部2bから中心軸C方向に向けて突出するネック部2cとで構成されている。樹脂ライナー2の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球形であってもよい。
【0024】
ネック部2cは、図2に示すように、筒部11と、張出部12と、立上り壁13とを備えている。筒部11は、円筒状を呈し、その内側には口金部材3が取り付けられている。
【0025】
張出部12は、筒部11の内面に沿って内側(中心軸C方向)に張り出している。張出部12の上面は、シール部材7を取り付ける取付座面12aになっている。取付座面12aは、パーティングラインの無い平面になっており、平面視リング状に形成されている。
【0026】
立上り壁13は、取付座面12aの外側に形成されている。立上り壁13は、筒部11の上端から上方に突出しており、平面視リング状に形成されている。立上り壁13の形状は、断面視矩形になっている。
【0027】
口金部材3は、図2、図3の(a)及び(b)に示すように、環状のフランジ部21と、フランジ部21に突出した突出部22とで構成されている。口金部材3は、金属製であって、その内側にバルブ6が取り付けられる。
【0028】
フランジ部21は、リング状を呈する板状部位である。図2に示すように、フランジ部21の下面と、樹脂ライナー2の肩部2bの内面とは略面一になっている。
【0029】
突出部22の内周面には、バルブ6を取り付けるための雌ネジが形成されている。突出部22には、半径方向に延設された大径部23が形成されている。大径部23の外周は平面視略円形になっている。大径部23は、樹脂ライナー2のネック部2cで覆われる部位である。成形後には、図2に示すように、張出部12の直下に大径部23が配置される。
【0030】
大径部23の外周面には、周方向において等間隔に複数の凹溝25が形成されている。凹溝25は、図4に示すように、樹脂ライナー2を構成する樹脂が充填されることにより、樹脂ライナー2に対する口金部材3の回転を規制するための部位である。凹溝25は、水平断面が長方形であって、突出部22の突出方向(注排方向)に沿って延設されている。
【0031】
本実施形態では、凹溝25の上方(突出部22の突出方向側)が開放されている。これにより、凹溝25に樹脂を充填する際に、空気が抜けやすいため凹溝25の内部に空気溜まりができにくい。凹溝25は、本実施形態では前記したように形成したが、樹脂ライナー2が充填されることで、樹脂ライナー2に対する口金部材3の回転を規制する形状であれば、これに限定されるものではない。例えば、凹溝25は、少なくとも一つ設けられているだけでもよい。また、本実施形態では、凹溝25の突出部22の突出方向側が開放されているが、閉鎖した形状であってもよい。また、凹溝25は、ディンプルのように丸く繰り抜かれた形状であってもよい。
【0032】
また、突出部22には外側に張り出した鍔部26が形成されている。鍔部26は、円板状に形成されている。鍔部26は、樹脂ライナー2を構成する樹脂で覆われることにより、樹脂ライナー2に対する口金部材3の脱落を防止する部位である。
【0033】
なお、口金部材3は、前記した形状に限定されるものではない。例えば大径部23、凹溝25及び鍔部26は省略してもよい。
【0034】
口金部材3の製造方法は、特に制限されないが、本実施形態では鍛造により一体成形されている。鍛造によれば、凹溝25を成形する際に切削加工が不要になるため、製造期間や作業を省略することができる。
【0035】
塗膜4は、図2に示すように、粉体塗装によって形成されており、例えばポリオレフィン系樹脂からなる接着層である。塗膜4は、樹脂ライナー2と口金部材3とが接触する部分及び凹溝25の内面に塗布されている。塗膜4が形成されることにより、樹脂ライナー2と口金部材3との接着性(結合性)を向上させることができる。
【0036】
また、粉体塗装を行う前処理として、表面を粗面化することが望ましく、例えば、サンドブラスト、ショットブラスト、化学的な処理剤の塗布等を行ってもよい。また、樹脂ライナー2と口金部材3との結合性を向上させるものであれば他の接着剤で塗膜4を形成しても構わない。
【0037】
繊維強化樹脂層5は、FRP(繊維強化プラスチック)であり、樹脂ライナー2の外周を覆うように形成されている。繊維強化樹脂層5は、例えば、フィラメントワインディング法、ハンドレイアップ法等によって、樹脂が含浸された織布が積層されることによって設けられている。
【0038】
繊維強化樹脂層5に使用される樹脂としては、強度が高いことからエポキシ系樹脂が一般的である。熱的な安定性を求める場合などは、フェノール系樹脂も使用することができる。繊維強化樹脂層5の形成方法については特に制限されないが、繊維の連続性を保つことができるとともに高い強度を容易に実現でき、かつ、薄肉化が図れるフィラメントワインディング法が好ましい。
【0039】
バルブ6は、図2に示すように、口金部材3の内側に螺合されている。バルブ6は、本体筒部31と、本体筒部31の外周から外側に張り出した押え部32とで構成されている。本体筒部31の内部には、樹脂ライナー2の内部に連通する連通孔31aが形成されている。本体筒部31の外周には、口金部材3に螺合される雄ネジが形成されている。押え部32は、円板状に形成されており、シール部材7を覆うようにシール部材7の外径よりも大きい外径で形成されている。本実施形態では、押え部32は、ネック部2cと同等の半径で形成されている。
【0040】
シール部材7は、Oリングであって、取付座面12aに取り付けられている。シール部材7は、圧力容器1の内部に貯留された気体又は液体のリークを防ぐ部材である。シール部材7は、本実施形態では、取付座面12aと押え部32の下面32aとに当接している。なお、シール部材7は、取付座面12a及び下面32aに加えて、口金部材3の突出部22及び立上り壁13の内面13aの少なくとも一方に当接させてもよい。これにより、気体又は液体のリークをより確実に防ぐことができる。
【0041】
次に、本実施形態に係る圧力容器の製造方法について説明する。圧力容器の製造方法については特に制限されないが、本実施形態ではブロー成形によって製造する場合を例示する。圧力容器の製造方法では、口金部材保持工程と、パリソン供給工程と、型締め工程と、ブロー工程と、繊維強化樹脂層成形工程、部品取付工程を行う。
【0042】
図5は、本実施形態に係る圧力容器の製造方法の口金部材保持工程を示した模式断面図である。図6は、本実施形態に係る圧力容器の製造方法の型締め工程を示した模式断面図である。図7は、本実施形態に係る圧力容器の製造方法のブロー工程を示した模式断面図である。
【0043】
口金部材保持工程では、図5に示すように、口金部材3をブロー装置41に装着する。口金部材3の表面には粉体塗装が予め施されている。ブロー装置41は、外筒部42と、内筒部43と、ブローピン44と、ボールBとで主に構成されている。口金部材3は、口金部材3の突出部22と外筒部42の先端とが対向するようにして装着される。ブロー装置41は、内筒部43及びブローピン44を口金部材3の突出部22に挿入し、ボールBを外側に押し出すことによりロックされるようになっている。一方、ブローピン44を縮退させるとボールBが内側に移動してロックが解除されるようになっている。ブロー装置41と口金部材3とは、簡易に着脱可能であれば他の構造であってもよい。
【0044】
外筒部42は、筒部材であって、先端には平面視リング状の先端面51が形成されている。また、先端面51には、平面視リング状に突出した突条52が形成されている。突条52は断面視矩形で形成されている。先端面51の内側には内側先端面51a、外側には外側先端面51bがそれぞれ形成されている。突条52の内側には突条内面52a、上側には突条天面52b及び外側には突条外面52cがそれぞれ形成されている。口金部材3の突出部22は、内筒部43と突条52の間に挟持されている。
【0045】
パリソン供給工程では、口金部材3の外側であり、かつ、後記する第1型K1と第2型K2の間に筒状のパリソンPを供給する。なお、図5及び図6では、説明の便宜上、パリソンの描画を省略している。
【0046】
型締め工程では、図6に示すように、第1型K1と第2型K2とで型締めを行う。第1型K1の端部の内面K1a及び第2型の端部の内面K2aは外筒部42に密接するように半円状にくり抜かれている。型締めを行うことにより、口金部材3、突条天面52b、突条外面52c、外側先端面51b、第1型K1の内面K1a及び第2型の内面K2aとで囲まれたキャビティが形成される。このキャビティによって樹脂ライナー2のネック部2cが成形される。
【0047】
ブロー工程では、図7に示すように、ブローピン44に空気を供給して、パリソンPを第1型K1及び第2型K2に転写させる。パリソンPは、溶融した樹脂であって、後に樹脂ライナー2となる材料である。ブロー成形の際の空気の圧力によって、パリソンPが流動し、前記したキャビティにパリソンPが確実に充填される。
【0048】
ブローが終了したら、ブローピン44を第1型K1及び第2型K2の外部に縮退させて、脱型する。これにより、樹脂ライナー2と口金部材3とが一体化された複合部材が形成される。
【0049】
繊維強化樹脂層成形工程では、具体的な図示は省略するが、例えば、ブロー工程で成形された複合部材について、フィラメントワインディング法により、樹脂ライナー2の外周に、繊維強化樹脂層5を形成する。
【0050】
部品取付工程では、取付座面12aにシール部材7を取り付けるとともに、バルブ6を口金部材3に螺合する。以上の工程によって、圧力容器1が形成される。
【0051】
圧力容器1の製造方法は、前記した工程に限定されるものではない。本実施形態では、ブロー成形によって製造したが、例えば、口金部材3を金型にインサートした後に、インジェクション成形、回転成形等で成形工程を行ってもよい。
【0052】
以上説明した圧力容器1によれば、シール部材7を樹脂ライナー2の取付座面12aとバルブ6との間に介設するだけで気体又は液体のリークを確実に防ぐことができる。また、取付座面12aの外側に立上り壁13を設けたことによりシール部材7の位置決めが容易になり、シール部材7の取付性を向上させることができる。また、立上り壁13を設けたため、圧力容器1に内圧が作用した際に、シール部材7が外部にはみ出るのを防ぐことができる。また、立上り壁13とバルブ6の押え部32とでシール部材7を覆うことにより、シール部材7に直接太陽光が当らないため、シール部材7の劣化を防ぐことができる。
【0053】
また、樹脂ライナー2とバルブ6との間にシール部材7を介設しているため、バルブ6を外せばシール部材7を視認できる。これにより、メンテナンスやシール部分の管理が容易になる。また、バルブ6を螺合する際に、シール部材7がよれるのを防ぐことができるため、取付時にシール性能が低下するのを回避できる。
【0054】
また、樹脂製の取付座面12aを備えた張出部12を金属製の口金部材3の大径部23で支持しているため、張出部12(取付座面12a)の強度を向上させることができる。これにより、シール部分の耐久性を高めることができる。
【0055】
また、口金部材3の外周に、凹溝25が設けられており、凹溝25に樹脂ライナー2を構成する樹脂が充填されているため、樹脂ライナー2に対する口金部材3の回転を規制することができる。これにより、樹脂ライナー2と口金部材3との結合性を高めることができる。
【0056】
ここで、シール部材7が配置される部位にパーティングラインがあると、シール部分に隙間が発生し、シール性能を低下させるおそれがある。本実施形態の製造方法によれば、第1型K1及び第2型K2により、筒部11の外周面には少なくとも2条のパーティングラインが形成されるが、取付座面12a及び立上り壁13の内面13aにはパーティングラインが形成されない。取付座面12aは、図6に示すように、突条52の突条天面52bで成形される。また、立上り壁13の内面13aは、突条52の突条外面52cで成形される。つまり、突条天面52b及び突条外面52cはいずれも連続するリング状になっているため、成形時にこれらの面にパーティングラインは形成されない。これにより、本実施形態に係る圧力容器の製造方法及び圧力容器1によれば、シール性能をより向上させることができる。
【0057】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、大径部23の上端は、本実施形態では下方に傾斜しているが、突出部22に対して垂直に延設されていてもよい。
【0058】
図8は、変形例に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。図8に示すように、変形例に係る圧力容器1Aでは、バルブ6Aにサポート部33が形成されている点で前記した実施形態と相違する。また、口金部材3Aには大径部23及び鍔部26が形成されていない点で前記した実施形態と相違する。
【0059】
バルブ6Aは、本体筒部31と、本体筒部31の外周から外側に張り出した押え部32と、押え部32から延設されたサポート部33とで構成されている。押え部32は、口金部材3の上端及び立上り壁13の上端を覆っている。
【0060】
サポート部33は、押え部32の先端側から下方に垂下しており、中心軸Cに対して立上り壁13の外側に配置されている。サポート部33は、断面視矩形を呈し、平面視してリング状に形成されている。サポート部33は、立上り壁13よりも長くなっており、押え部32から筒部11の上部まで延設されている。サポート部33の内周面と立上り壁13の外周面とは接触していてもよいし、わずかに離間していてもよい。また、立上り壁13と押え部32とは接触していてもよいし、わずかに離間していてもよい。また、サポート部33が立上り壁13の外側に配置されているのであれば、サポート部33の長さは、立上り壁13の長さ以下に設定してもよい。
【0061】
樹脂製の立上り壁13の外側に金属製のサポート部33が配置されるため、樹脂ライナー2に内圧が作用した際に、立上り壁13や筒部11が外側に倒れるのを防ぐことができ、圧力容器1Aの耐久性の向上を図ることができる。
【0062】
[第二実施形態]
第二実施形態に係る圧力容器1Bは、図9に示すように、補助部材61を取り付けている点で第一実施形態と相違する。圧力容器1Bは、樹脂ライナー2と、樹脂ライナー2の端部に形成された口金部材3と、口金部材3の外周面に形成された塗膜4と、樹脂ライナー2の外周を覆う繊維強化樹脂層5と、口金部材3の内側に取り付けられた補助部材61と、補助部材61の内側に取り付けられたバルブ71と、シール部材7とで主に構成されている。補助部材61及びバルブ71以外の部材は第一実施形態と略同等であるため、補助部材61及びバルブ71を中心に説明する。
【0063】
補助部材61は、口金部材3の内側に接合されるとともに、バルブ71が着脱される部材である。補助部材61は、本実施形態では金属で形成されているが、樹脂製であってもよい。補助部材61は、基部62と、基部62の先端から外側に張り出した押え部63と、押え部63の外縁に設けられたサポート部64とで構成されている。
【0064】
基部62は、筒状を呈する部位である。基部62の内周面には雌ネジが形成されており、バルブ71が螺合されるようになっている。また、基部62の外周面には雄ネジが形成されており、口金部材3に螺合されるようになっている。
【0065】
押え部63は、平面視円形を呈し、基部62の上端から外側に向けて張り出している。押え部63の外径は、筒部11の外径よりも大きくなっている。
【0066】
サポート部64は、押え部63の外縁から下方に垂下しており、中心軸Cに対して立上り壁13の外側に配置されている。サポート部64は、断面視矩形を呈し、平面視リング状に形成されている。サポート部64は、立上り壁13よりも長くなっており、押え部63から筒部11の上部まで延設されている。サポート部64の内周面と立上り壁13の外周面とは接触していてもよいし、わずかに離間していてもよい。また、立上り壁13と押え部63とは接触していてもよいし、わずかに離間していてもよい。また、サポート部64が立上り壁13の外側に配置されているのであれば、サポート部64の長さは、立上り壁13の長さ以下に設定してもよい。
【0067】
バルブ71は、内部に連通孔が形成された本体筒部72を備えている。本体筒部72は、補助部材61の基部62に接合される部位である。本実施形態では、本体筒部72の先端側には先端に向けて先細りとなるテーパー部72aが形成されている。テーパー部72aの外周面には、雄ネジが形成されている。
【0068】
また、テーパー部72aと補助部材61の基部62との間には、シール部材65が介設されている。シール部材65は、例えば、シールテープを用いる。
【0069】
以上のように構成された第二実施形態であっても、第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。第一実施形態で用いたバルブ6には、押え部32及びサポート部33が形成されているが、押え部32及びサポート部33が形成されていないバルブも存在する。このような場合には、口金部材3とバルブ71の間に補助部材61を設けることで、様々な種類のバルブに対応することができる。
【0070】
また、補助部材61には、立上り壁13の外側に配設されるサポート部64が形成されているため、樹脂ライナー2に内圧が作用した際に、立上り壁13や筒部11が外側に倒れるのを防ぐことができ、圧力容器1Bの耐久性の向上を図ることができる。また、シール部材65を設けることにより、補助部材61とバルブ71の間のシール性を高めることができる。
【0071】
図10は、変形例に係る圧力容器を示す要部拡大側断面図である。図10に示すように、圧力容器1Cでは、バルブ81の構成及びシール部材65にOリングを用いている点で第二実施形態と相違する。
【0072】
バルブ81は、内部に連通孔が形成された本体筒部82を備えている。本体筒部82は、補助部材61の基部62に接合される部位である。本変形例では、本体筒部82には、雄ネジが形成された接合部82aと、接合部82aよりも先端側に形成された先端部82bと、先端部82bに形成された凹部82cとが形成されている。
【0073】
先端部82bは略円柱状を呈する。凹部82cは、先端部82bの外周面に形成された窪みである。凹部82cには、シール部材(Oリング)65が配設される。
【0074】
補助部材61の基部62の内周面62aは、先端部82bの外周面と対向する。シール部材65が、内周面62aと凹部82cとに当接されることにより、補助部材61とバルブ81との間のシール性を高めることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 圧力容器
2 樹脂ライナー
2a 胴部
2b 肩部
2c ネック部
3 口金部材
4 塗膜
5 繊維強化樹脂層
6 バルブ
7 シール部材
11 筒部
12 張出部
12a 取付座面
13 立上り壁
21 フランジ部
22 突出部
23 大径部
25 凹溝
31 本体筒部
32 押え部
33 サポート部
61 補助部材
62 基部
63 押え部
64 サポート部
71 バルブ
72 本体筒部
81 バルブ
82 本体筒部
K1 第1型
K2 第2型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出するネック部を備え、気体又は液体を収容する中空の樹脂ライナーと、
前記ネック部の内側に取り付けられた口金部材と、
前記口金部材の内側に取り付けられたバルブと、
前記樹脂ライナーと前記バルブとの間に設けられたシール部材と、を有する圧力容器であって、
前記ネック部は、筒状を呈する筒部と、前記筒部の上端に設けられ前記シール部材を取り付ける取付座面と、前記取付座面の外側に立ち上がる立上り壁と、を有し、
前記シール部材は、前記バルブの一部及び前記取付座面に当接していることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
突出するネック部を備え、気体又は液体を収容する中空の樹脂ライナーと、
前記ネック部の内側に取り付けられた口金部材と、
前記口金部材の内側に取り付けられた補助部材と、
前記補助部材の内側に取り付けられたバルブと、
前記樹脂ライナーと前記補助部材との間に設けられたシール部材と、を有する圧力容器であって、
前記ネック部は、筒状を呈する筒部と、前記筒部の上端に設けられ前記シール部材を取り付ける取付座面と、前記取付座面の外側に立ち上がる立上り壁と、を有し、
前記シール部材は、前記補助部材の一部及び前記取付座面に当接していることを特徴とする圧力容器。
【請求項3】
前記口金部材は、リング状のフランジ部と、前記フランジ部の内周に突出する筒状の突出部と、を有し、
前記突出部の外周には、半径方向に延設された大径部が設けられており、
前記取付座面の下に前記大径部が配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記バルブは、
前記口金部に接合される本体筒部と、
前記本体筒部から外側に張り出し、前記立上り壁の上端及び前記口金部材の上端を覆う押え部を有し、
前記押え部には、前記立上り壁の外側に配置されたサポート部が延設されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の圧力容器。
【請求項5】
前記補助部材は、
前記口金部材に接合されるとともに前記バルブが取り付けられる基部と、
前記基部から外側に張り出し、前記立上り壁の上端及び前記口金部材の上端を覆う押え部を有し、
前記押え部には、前記前記立上り壁の外側に配置されたサポート部が延設されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の圧力容器。
【請求項6】
前記口金部材の外周に、凹溝が設けられており、
前記凹溝に前記樹脂ライナーを構成する樹脂が充填されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の圧力容器。
【請求項7】
前記口金部材と前記樹脂ライナーとの間に粉体塗装による塗膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の圧力容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36603(P2013−36603A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229388(P2011−229388)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(390023917)八千代工業株式会社 (186)
【Fターム(参考)】