説明

圧力平衡化低摩擦シール

【課題】軸方向運動を含む相対運動を行なう要素間で圧力を平衡化するシールを実現するシステムおよび方法に関する。
【解決手段】圧力バランスシール110は、径方向内側に面するシール面116と、ステータに接合する少なくとも一つの表面を有するステータ境界面とを含む。圧力バランスシール110は、摩擦低減機構を更に含む。摩擦低減機構は、シール面116に空隙を含む。空隙は、流体を受け取り、流体の圧力によって生じる力で、圧力バランスシール110に作用する力を平衡化するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してシールの分野に関し、より詳細には、軸方向運動を含む相対運動を行う要素間で圧力を平衡化するシールを実現するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストンリングは、ガスタービンエンジンにおいて、高圧区画から低圧区画への漏れを防ぐために、軸方向に移動するピストンと、静置チャンバとの間に幅広く利用されている。これと同じ圧力は、ピストンに対してリングを押しつけて、摩擦荷重を付与するように作用する。ガスタービン又は蒸気タービンの始動工程中には各種異なるレベルの圧力が存在し得るため、ピストンリングに作用する結果的な圧力は、広い範囲で変化し得る。圧力が上昇するにつれて、結果的に生じるピストンリングとピストンの間の摩擦が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6367806B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、タービン内の相対軸方向運動を有する要素間の摩擦を低減する効果的な技法を開発することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、圧力バランスシールが提供される。この圧力バランスシールは、径方向内側に面するシール面と、ステータと接合する少なくとも一つの表面を有するステータ境界面とを含む。また、圧力バランスシールは、摩擦低減機構を更に含む。摩擦低減機構は、シール面上の空隙を含む。この空隙は、流体を受け入れ、流体の圧力によって生成される力で、圧力バランスシールに作用する垂直抗力を平衡化するように構成される。
【0006】
一実施形態において、圧力バランスシールは蒸気タービンに組み込まれる。
【0007】
他の実施形態によれば、ステータと、ロータと、非接触端面シールアセンブリとを含む大型タービンの組み立て方法が提供される。このタービン組み立て方法は、少なくとも第1シール要素と第2シール要素を備える圧力バランスシールを設けることを含む。次に、少なくとも一方のシール要素は、ステータアセンブリ内の環状間隙の中に配置される。
【0008】
前述したもの、並びに他の本発明の特徴、態様、及び利点は、付属の図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことでより適切に理解されるであろう。図面において、同様の符号は、図面全体で同様の部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様を実施するシールアセンブリの部分斜視図、及びその一部の拡大図である。
【図2】図1のシールアセンブリの角状空洞内の圧力バランスシールを示す側面図である。
【図3】図1の圧力バランスシールの部分正面図である。
【図4】本発明の他の態様を実施する圧力バランスシールを部分的に示す図である。
【図5】本発明の複数の態様に係る、圧力バランスシールの貫通穴構造を示した、圧力バランスシールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、単数形式で表され、「一つの」という言葉の後に記載される要素又は機能は、特に排除することが明示的に記載されていない限り、その要素又は機能が複数存在することを排除しないものとして理解されたい。また、請求項に記載された本発明の「一実施形態」についての言及は、請求項に記載された機能が組み込まれる他の実施形態の存在を除外するものとして解釈されるべきではない。
【0011】
図1は、例えば蒸気タービンで利用できる、本発明の一態様を実施するシールアセンブリ100の部分断面図である。図1に、ステータの第1ステータ要素102及び第2ステータ要素104、ステータ要素102とステータ要素104の間の環状間隙106、並びに少なくとも部分的に環状間隙106内に配置される二次圧力バランスシール110を示す。図示したステータ要素102,104は、軸方向160に沿ってピストン(図示せず)が移動するための円筒容積を画定する。径方向は、図1において参照番号170で示されている。圧力バランスシール110は、特定の実施形態ではピストンリング110であり、蒸気タービン内で、圧力が異なる少なくとも2つの蒸気(又は空気)空洞の間にシールを提供するように構成される。一実施形態によれば、蒸気タービン内の高圧領域は一般に、温度が華氏約1200度で、圧力差が通常最大で1800psiであるが、場合によっては3000psiの高さになる空気若しくは蒸気、又はその両方を含む。当業者であれば、この温度及び圧力差は、タービン用途が異なれば変化することは理解されるであろう。ピストンリング110は、シール面116を有するシール境界面と、例えば、ステータ要素102,104を備えるステータと接合する複数の表面を有するステータ境界面とを含む。例えば、図1及び図2において、ステータ境界面は、シール面116のほぼ反対側にある背面124と、第1ステータ要素102と実質的に接合する第1表面114と、第2ステータ要素104と実質的に接合する第2表面118とを含む。ステータ境界面は、ステータ、すなわちステータ要素102,104と接合する、圧力バランスシール110の全ての表面を表す。ステータ(図にはその一部のみが示されている)は、一体型の1部品ステータで構成されても、又は2部品(図1及び図2に示すもの)を含んでも、又は2つより多くの部品を含んでも良い。ステータ要素102,104は単に、圧力バランスシール110が存在する環状間隙106を識別するために特徴的にマーキングされている。従って、一実施形態において、ステータ要素102,104は、単一部品のステータに属する。他の実施形態によれば、ステータ要素102,104は、多部品ステータのうちの異なる部品に属し、例えば、図1に示すように、第1ステータ要素102及び第2ステータ要素104は、2部品ロータの第1部品及び第2部品にそれぞれ所属する。
【0012】
また、図示例において、ピストンリング110、すなわち圧力バランスシール110は、ほぼ均等にそれぞれ第1半円シール要素130及び第2半円シール要素140に分割されて、半分割ピストンリングを提供する。半分割ピストンリング110は、第1シール要素130を含み、この第1シール要素130は、予め策定された重複部112によって第2シール要素140の上に延びる。予め策定された重複部112は、図1に示すように、例えば、ピストンリング110のシール面116に沿って密接して突き合わされる重複輪郭によって、2つのシール要素130と140の間の漏れを低減する。圧力バランスシール110のリングは、少なくとも一つの回転防止機構、例えば、リテーナスロット108を更に含む。一実施形態によれば、リテーナスロット108は、予め策定された重複部112内の背面124に沿った空間であり、ステータ(又はステータ要素102,104の一方)からの隆起部(図示せず)と噛み合って、環状空洞106内のピストンリング110の相対円形移動を阻止する。本明細書では、特に明記しない限り、シール要素140に関して説明する概念は、通例、圧力バランスシール110(シール要素130を含む)に適用され、その逆も同様であることは理解されよう。また、本明細書では、半分割圧力バランスシール110が例示されるが、本発明は、2つより多くのシール要素を有するシール、又は全円リングの外周に沿って、例えば、少なくとも1箇所で分割される全円リングシールも含み得ることも理解されよう。
【0013】
次に図2を参照すると、環状空洞106内に配置されたシール要素140の正面図が示されている。シール要素140は、第1表面114の端縁と背面124とで形成される外形輪郭、例えば、面取り部126を含む。動作上の利点の一つによれば、面取り部126は、シール要素140とステータ構成要素(例えば、第1ステータ要素102及び第2ステータ要素104を含む)との間の干渉又は絡み合いを防ぐ役割を担う。シール要素140は、第2表面118から垂直に延びる突出部128を更に含む。複数の実施形態に係る突出部128は、例えば図3に図示するように、シール要素140の長さ全体に亘って延びる。突出部128は、シール要素140が、環状空洞106から、例えば径方向内側に外れることを防ぐように作用できる。面取り部126及び突出部128は、圧力バランスシール110の捩れを防ぐ作用も有する。例えば、面取り部126(図2に、シール110の断面の左上部に位置する状態で図示)及び突出部128(図2に、シール110の断面の左下部から突出する状態で図示)は、図2に示される状態とは異なって位置するように構成されても良い。代替の実施形態において、面取り部126及び突出部128は、圧力バランスシール110の断面の底面左側に連続して構成される。有利な点として、面取り部126及び突出部128は、圧力バランスシール110(又はシール要素140)の断面の重心を調整して、結果的に生じる力が圧力バランスシール110上に作用する点から圧力バランスシール110の断面の重心までの距離が短くなるように配置できる。この距離の短縮は、環状間隙106内でシール要素140が捩れる可能性を低減する。
【0014】
図2に、圧力バランスシール要素110を取り巻く環状空洞106内に、例えば、タービン(例えば、蒸気タービン)の動作中に加圧されるタービン内の流体によってもたらされる圧力プロファイルの例を更に示して、背面124、面取り部126、及び突出部128を含むステータ境界面の表面に各種の力が作用する様子を表した。図2には、更に、環状空洞106内の流体圧力によってシール要素140のステータ境界面にもたらされる力150,152,154の例が示されている。ピストンリング110の最大厚さ及び対応する溝寸法は、小さい有限の隙間を提供するように選択される。これは、環状間隙106に対するピストンリング110の軸方向移動を規制すると共に、ピストンの軸方向運動と周期的圧力の複合効果のもとでのピストンリング110の断面の各種の捩れ又は歪みを規制する。ここで、例示した図は原寸に比例したものではなく、特定の側面又は特徴物は、説明を明瞭にするために誇張される場合があることを注記しておく。例えば、表面114と第1ステータ要素102の間の隙間距離、若しくは第2表面118(又は突出部128)と第2ステータ要素118の間の隙間距離、又はその両方は、図2を見易くするために拡大されている。
【0015】
また、動作において、シール要素140(及び全体としては圧力バランスシール110)のシール面116上の流体圧力は、一般に、シール要素140に作用する、環状空洞106内の流体圧力よりも低い。結果的に生じる垂直抗力は、シール要素140を径方向内側に仕向け、軸方向に移動可能なピストン(図には記載せず)にシール要素を押し付ける。このような垂直抗力は、シール要素140と、シール面116に接合しているピストンとの摩擦を大きくする。
【0016】
次に、図3を参照すると、本発明の一態様を実施する、図1の圧力バランスシール110のシール要素140の部分図が示されている。シール要素140は、図1に記載された第1ステータ要素102と第2ステータ要素104の間の環状間隙106(図1)の中に位置するように構成される。動作において、シール要素130,140とステータ(第1ステータ要素102及び第2ステータ要素104を含む)との間で、環状間隙106内に高い圧力が存在する(又は発生する)。この高い圧力は、圧力バランスシール110のステータ境界面とステータの間の領域内の流体(例えば、蒸気又は空気)によって生成される。シール面116は、通常、比較的圧力の低い流体を受けるため、圧力バランスシール上に最終的な垂直抗力(ネット(net)垂直抗力)が生じる。この垂直抗力は、圧力バランスシール110に対して径方向内側に作用して、圧力バランスシール110とピストンの間の摩擦を大きくする。本発明の有利な態様によれば、摩擦低減機構120は、シール面116に、流体を受け入れる空隙120を含み、これにより、シール要素140に作用する垂直抗力が、空隙120内の流体の圧力によって平衡化される。図3に示すようなより具体的な実施形態において、空隙120は、シール要素130,140のいずれか一方のシール面116上に閉じた溝を含み、この溝は、図3のシール要素140のシール面116内に、開始点121及びその開始点121と同様の終了点(図示せず)を含む。すなわち、溝120は、分割シール要素、例えば、図1の分割シール要素130及び140にまたがって連続してはいない。従って、動作において、溝120は、開口部(穴又は切り欠き)を除いて閉じている(又はほぼ閉じている)空隙を、ピストン面と協働してシール面116に画定する。開口部は、開示する実施形態によって有利に配設されるものであるが、これについては後で説明する。異なる表現を用いると、空隙120は、シール面116の連続した境界に取り囲まれている。シール面120に沿って空隙120を取り囲む連続した境界は、動作中、開示する実施形態によって有利に配設される開口部(例えば、切り欠き)を除いて、ピストン面と接触している。
【0017】
図3に図示した実施形態において、摩擦低減機構120は、穴122とも称される貫通穴を更に含み、この穴122は、シール面116の空隙120から、圧力バランスシール110のステータ境界面である複数の表面のうちの少なくとも一つまで延びる。穴122は、シール/ピストン境界面、例えば、シール面116に、高圧領域と溝120の間の経路を提供する。一実施形態に係る動作において、前述したように、穴122を除き、溝120は、シール面116に近接した位置のピストンと協働して、シール面116に実質的に閉じた空隙を提供する。
【0018】
図3に記載した実施形態において、穴122は、シール面116上の摩擦低減機構120の空隙からシール要素140の背面124まで延びる。摩擦低減機構120は、これ以外の場合には密封される、背面124近くの高圧流体が、シール面116に隣接した低圧領域、具体的には、空隙120まで移動できるようにする。その結果、シール面116に隣接した領域の圧力が上昇し、シール要素140に対して径方向外側に作用する力が生じるため、シール要素140に作用する最終的な垂直抗力が小さくなる(又は平衡化される)。シール面140上の最終的な垂直抗力の低減により、シール要素140とピストンとの摩擦が小さくなる。図5に、一実施形態に係る穴122が背面124に貫通して穴500として顕現した状態を示す。他の実施形態によれば、穴122は、空隙120と第2表面118の間に延び、第2表面118上に穴504として顕現する。更に他の実施形態において、穴122は、面取り部126まで貫通し、穴502として顕現する。本明細書において、穴122は、圧力バランスシール110に近接した、圧力の異なる領域間に経路を提供するように機能するものであり、このため、穴122は、図3及び図5に記載した貫通穴構造に限定されないことは理解されよう。また、理解されるであろうが、本明細書において、「平衡化する」という用語は、反対(逆)方向に力を印加することにより、圧力バランスシール110の最終的な力が低下することを意味し、(特に明記しない限り)最終的な力がゼロになるような、完全な均衡状態、又は力の無効化を必ずしも含意するものではない。
【0019】
図4に、本発明の他の態様を実施するシール要素400の部分図を示す。シール要素400は、いくつか他の特徴に加え、特に、シール面406と、第1表面404、第2表面408、及び背面414を有するステータ境界面とを含む。シール要素400は、シール要素400のシール面406に空隙410(例えば、溝)を提供する摩擦低減機構410も含む。溝410は、シール要素400のシール面406内に開始点411及び終了点(図示せず)を含む。摩擦低減機構410は、シール要素400に近接した高圧領域と低圧領域の間に流体の漏れ経路を提供する、少なくとも一つの切り欠き412を含む。具体的には、図4に、シール面406近くの領域及び第2表面408近くの領域を含む、他の場合には実質的に密封される少なくとも2つの領域間の漏れ経路を提供する切り欠き412が示されている。各種の実施形態によれば、切り欠き412は、シール要素400の表面に形成されるチャンネルである。図示した実施形態において、切り欠き412は、シール要素400のシール面406に形成されて、第2表面408からシール面406への流体の経路を形成するチャンネルである。切り欠き412を含む摩擦低減機構410により、第2表面408近くの高圧流体は、シール面406、具体的には空隙410に隣接した低圧領域まで移動できる。その結果、シール面406に隣接した領域の圧力が上昇して、シール要素400に対して径方向外側に作用する力が生じるため、シール要素400に作用する最終的な垂直抗力が低減される。シール要素400の最終的な垂直抗力の低減により、シール要素400と、軸方向に移動可能なピストンとの摩擦が小さくなる。前述したように、切り欠き412を除いて、溝410は、動作において、シール面406に近接して位置するピストンと協働して、シール面406に実質的に閉じた空隙を提供する。
【0020】
図3及び図4に基づいて説明した摩擦低減機構は、高圧領域と、シール要素140(又は400)近くの低圧領域の間の圧力の動的平衡を維持することによって、圧力補正構造を物理的に維持する。また、シール要素140の周方向全体に、シール要素140の中央平面を通る図3の穴122と同様の複数の径方向貫通穴を利用することで、環状間隙106内の高圧領域と、シール面116上の低圧領域との間の漏れ経路において平均圧力を交換できる。同様に、シール要素140の周方向全体に、図4の切り欠き412のような複数の切り欠きを利用することで、環状間隙106内の高圧領域と、シール面406上の低圧領域の間の漏れ経路において平均圧力を交換できる。更に、必要に応じて、所定のシール要素と共に、切り欠き及び穴を一緒に利用しても良い。
【0021】
再び図2及び図3を参照して説明すると、面取り部126は、軸方向における圧力バランスシール110の向上した圧力バランスを有利に提供する。第1表面114は第1ステータ要素102と結合して、二次シール面を形成する。動作において、第1表面114の両端に、径方向内側に向かう上流側圧力から下流側圧力への圧力低下が存在する。面取り部126は、第1表面114の径方向長さを短縮して、より低い圧力に曝される第1表面116の領域を小さくする役割を担う。図示したように、面取り部126の存在により、例えば、軸方向における圧力バランスシール(すなわちピストンリング)110の向上した圧力バランスが達成されるため、第1ステータ要素102に向かってピストンリング110の第1表面114を押しやる力が低減される。ピストンリング110の軸方向圧力バランスのこのような向上は、第1表面114上の径方向の摩擦力を低減し、ピストンリング140が、径方向において、例えば、環状空洞106内で比較的自由に移動することを可能にする。ピストンリング110の径方向移動に対する抵抗の低下は、動的動作状況において、シール面116に作用する力を低減し、このことは、間接的にピストンリング110の摩擦性能を改善する。
【0022】
前述したように、圧力バランスシール110,400の動作モードには各種のものが存在し、上記に提示した説明に適合する複数のシナリオが存在するが、これらは、当業者が容易に思い付くものであり、本発明の範囲及び精神に包含される。このような動作モードは複数の利点を提供する。例えば、図4に例示した分割ピストンリング設計の利用は、ロータの水平取り付けを可能にする。具体的には、2つの半片から成るピストンリング設計を利用することによって、据え置き型のガスタービン及び蒸気タービンの用途でのロータの組み立てを実現できる。2つのピストンリング半片の間の漏れを最小化するために、重畳した設計が考慮される。2つのシール半片の回転を防ぐ追加の機構も提案される。提案するピストンリングの概念は、ピストンリング内の圧力均衡を達成することによって、ピストンリングとピストン表面の間に生じる摩擦力を低減するというものである。非接触端面シールにおける二次シールとして機能し得るリング内の摩擦力を低減することで、一次シールの動的応答が向上する。
【0023】
本明細書に記載した説明は、いくつかの例を利用して、最良の形態を含む本発明を開示し、当業者が本発明を実現及び利用できるようにするものである。本発明の特許範囲は、請求項によって定義され、また、当業者が想到する他の例を包含し得る。このような他の例は、その例が、請求項の文言通りの内容と相違しない構造要素を有する場合、又は、請求項の文言通りの内容とほとんど相違しない等価の構造要素を有する場合、請求項の範囲内に入ることが意図される。
【0024】
特に別段の定義がない限り、本明細書で用いる技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されているとおりの意味を有する。本明細書で用いた「第1」、「第2」などの用語は、何らかの順序、数量、又は重要性を表すものではなく、むしろ、一つの要素と別の要素とを区別するために用いられたものである。「一つの」という表現は、数量を限定するものではなく、むしろ、参照する要素が少なくとも一つ存在することを意味するものであり、「前」、「後」、「底」、若しくは「上」、又はこれら全ての用語は、特に指定がない限り、単に説明の便宜上使用しただけであり、特定の一つの位置、又は空間的方位を限定しない。範囲が開示されている場合、同一の構成要素又は特性に対する範囲はすべて終点を包含することに加え、独立して組み合わせることができる(例えば、「最大で約25重量%まで、より具体的には、約5重量%から約20重量%」の範囲は、その終点、及び約5重量%から約25重量%の範囲内の全ての中間値を包含する等)。数量に関して用いられる「約」という修飾語は、言及した値を含むと共に、内容によって求められるとおりの意味を有する(例えば、特定の測定品質に対応付けられた誤差の程度を包含する)。
【符号の説明】
【0025】
100 シールアセンブリ
102 第1ステータ要素
104 第2ステータ要素
106 102及び104の間の環状間隙
108 回転防止機構又はリテーナスロット
110 圧力バランスシール又はピストンリング
112 重複部
114 第1ステータ要素と接合する第1表面
116 ピストンが移動するための内側円筒空洞容積に面するシール面
118 第2ステータ要素と接合する第2表面
120 摩擦低減機構−116の空隙又は溝
121 溝120の開始点(終了点)
122 貫通穴又は穴
124 シール面116の反対側にある背面
126 114の端縁と124とで形成される外形輪郭−面取り部
128 シール要素140の第2表面118に沿った突出部
130 第1シール要素
140 第2シール要素
150 面取り部126の表面に作用する力
152 背面124に作用する力
154 突出部128に作用する径方向外側の力
160 軸方向
170 径方向
400 第2実施形態の圧力バランスシール要素
402 重複部
404 第1表面
406 シール面
408 第2表面
410 406の溝
411 溝410の開始点(終了点)
412 切り欠き
414 背面
416 面取り部
418 シール要素400の第2表面408に沿った突出部
500 背面124に顕現する空隙120からの貫通穴
502 面取り部126に顕現する空隙120からの貫通穴
504 第2表面118に顕現する空隙120からの貫通穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ステータ要素(102)及び第2ステータ要素(104)を含むステータの環状空洞(106)内に配置される圧力バランスシール(110)であって、
径方向内側に面するシール面(116)と、
前記ステータと接合する少なくとも一つの表面を含むステータ境界面と、
前記シール面(116)上の空隙を含む摩擦低減機構(120)とを含み、
前記空隙は、前記ステータ境界面の少なくとも一部分に隣接する少なくとも一つの高圧領域から、前記シール面(116)に隣接する少なくとも一つの低圧領域に流体が移動できる、前記シール面(116)に沿った溝(120)として構成され、前記圧力バランスシール(110)に作用する垂直抗力が、前記流体の圧力によって生成される力で平衡化されることで、前記圧力バランスシール(110)と、軸方向に移動するピストン(160)との間の摩擦を低減する、圧力バランスシール。
【請求項2】
前記摩擦低減機構(120)は、前記ピストンリングを通って延びて、前記少なくとも一つの高圧領域から前記シール面(116)に近接した領域に流体を供給する少なくとも一つの貫通穴(122)を更に含み、前記貫通穴は、前記溝(120)と、前記ステータ境界面の背面(124)、第2表面(118)、及び面取り部(126)のうちの少なくとも一つとの間に延びる、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項3】
前記摩擦低減機構(120/410)は、前記シール面(116/406)から第2表面(408)まで延びる少なくとも一つの切り欠き(412)を含む、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項4】
前記圧力バランスシール(110)の第1表面(114)の端縁及び背面(124)に形成される面取り部(126)を更に含み、前記面取り部(126)は、前記圧力バランスシール(110)が捩じれる可能性を低減するように構成される、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項5】
第2表面(118)と垂直に延びる突出部(128)を更に含み、前記突出部(128)は、前記圧力バランスシール(110)が捩じれる可能性を低減するように構成される、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項6】
少なくとも1箇所で分割される全円リング、すなわち多区画リングを含む、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項7】
前記多区画リングは、予め策定された重複部(112)により、半片の第2シール要素(140)の上に延びる、半片の第1シール要素(130)を含む、請求項6に記載の圧力バランスシール。
【請求項8】
前記第1ステータ要素(102)と前記第2ステータ要素(104)の間の前記環状間隙(106)に対する前記圧力バランスシールの相対回転を阻止するように構成される、少なくとも一つの回転防止機構を更に含み、前記少なくとも一つの回転防止機構は、リテーナスロット(108)、及び前記ステータから突出するリテーナを含むことで、前記ステータに対する前記多区画リングの回転を防止する、請求項6に記載の圧力バランスシール。
【請求項9】
前記空隙(120)は、前記シール面(116)に沿った連続境界によって囲まれ、前記連続境界は、前記空隙(120)を包囲して、動作中、少なくとも部分的に前記ピストンに接触するように構成される、請求項1に記載の圧力バランスシール。
【請求項10】
前記圧力バランスシール(110)は、タービン内の非接触端面シールアセンブリ(100)のピストンリングを含む、請求項1に記載の圧力バランスシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−117603(P2011−117603A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269996(P2010−269996)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】