説明

圧力検出装置用基体および圧力検出装置

【課題】 圧力検出装置の検出精度を向上させる。
【解決手段】 圧力検出装置用基体1は、絶縁基板11と、絶縁基板11の上面に設けられた第1電極2と、絶縁基板11の上面に第1電極2を囲んで設けられた枠体12と、枠体12上に絶縁基板11および枠体12とともに密閉空間17を形成するように設けられたダイヤフラム13と、ダイヤフラム13の下面に設けられた、第1電極2と対向する第2電極3と、ダイヤフラム13の上面のうち第2電極3と上下に重なり合う部分に設けられた金属層14と、金属層14を覆うように設けられたセラミック層15とを備えている。これにより、金属層14が変質して圧力が加わった際のダイヤフラム13の撓み量が変化することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧力を検出するための圧力検出装置として、静電容量型の圧力検出装置が知られている。このような圧力検出装置に用いられる圧力検出装置用パッケージ(以下、単にパッケージとも言う)としては、例えば、特許文献1に記載の圧力検出装置用パッケージが挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載のパッケージにおいては、外圧に起因する静電容量の変化を測定することによって、セラミック板にかかる圧力の大きさを検知する。
【0004】
従来のパッケージでは、製造時においてセラミック板が大きな反りが発生してしまうことがあり、その場合には、使用時におけるセラミック板が撓む量を精度よく検出することが難しい。そこで、特許文献1に記載のパッケージでは、セラミック板の上面に補助メタライズ層が設けられている。これにより、セラミック板の下面に塗布される第二メタライズ電極用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響を、セラミック板の上面に塗布される補助メタライズ層用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響によって打ち消すことができる。その結果、製造時にセラミック板に大きな反りが発生する可能性を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−130745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のパッケージでは、圧力の検出精度を向上させることが困難な場合があった。具体的には、使用時に補助メタライズ層が外部の影響を受けることにより変質して、圧力が加わった際のセラミック板の撓み量が変化してしまう可能性がある。この場合には、使用時に検出される静電用容量が変化してしまい、圧力検出装置の感度が変化してしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る圧力検出装置用基体は、絶縁基板と、絶縁基板の上面に設けられた第1電極と、絶縁基板の上面に第1電極を囲んで設けられた枠体と、枠体上に絶縁基板および枠体とともに密閉空間を形成するように設けられたダイヤフラムと、ダイヤフラムの下面に設けられた、第1電極と対向する第2電極と、ダイヤフラムの上面のうち第2電極と上下に重なり合う部分に設けられた金属層と、金属層を覆うように設けられたセラミック層とを備えている。
【0008】
本発明の一実施形態に係る圧力検出装置は、上記の圧力検出装置用基体と、第1電極および第2電極に電気的に接続された半導体素子とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置によれば、金属層を覆うように設けられたセラミック層が設けられていることから、金属層が外部の影響を受ける
可能性を低減できる。このため、金属層が変質して圧力が加わった際のダイヤフラムの撓み量が使用時に変化することを抑制でき、圧力検出装置の感度が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置をA−A’線で切った断面図である。
【図3】図2に示す圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置をB−B’線で切って上方向から見た断面図である。
【図4】図2に示す圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置をC−C’線で切って下方向から見た断面図である。
【図5】図2に示す圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置をD−D’線で切って下方向から見た断面図である。
【図6】圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置の変形例1を示す断面図である。
【図7】圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置の変形例2を示す断面図である。
【図8】圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置の変形例3を示す断面図である。
【図9】圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置の変形例4を示す断面図である。
【図10】圧力検出装置用基体およびこれを用いた圧力検出装置の変形例5を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る圧力検出装置および圧力検出装置用基体について図面を参照して説明する。
【0012】
<圧力検出装置の構成>
図1〜5に示すように、本発明の一実施形態の圧力検出装置100は、圧力検出装置用基体(以下、単に基体とも言う)1と、圧力検出装置用基体1に設置された半導体素子4とを備えている。圧力検出装置100は、気体の圧力を検出することに用いることができる。具体的には、例えば、タイヤの空気圧を検出するため、あるいは、エンジンのような燃焼機関の内部の圧力を検出するために圧力検出装置が用いられる。タイヤの空気圧を検出する場合には、圧力検出装置はタイヤの内部に設けられる。また、燃焼機関の内部の圧力を検出する場合には、圧力検出装置は、燃焼機関の内部に設けられる。
【0013】
<圧力検出装置用基体1の構成>
本発明の一実施形態の圧力検出装置用基体1は、絶縁基板11と、絶縁基板11の上面に設けられた第1電極2と、絶縁基板11の上面に設けられた枠体12と、枠体12上に設けられたダイヤフラム13と、ダイヤフラム13の下面に設けられた第2電極3と、ダイヤフラム13の上面に設けられた金属層14と、金属層14を覆うように設けられたセラミック層15とを備えている。
【0014】
本実施形態における絶縁基板11は、板状の部材であって、平面視したときの形状が四角形状であり、側面にはキャスタレーションが設けられている。絶縁基板11は、枠体12を介してダイヤフラム13を支持するために設けられている。また、絶縁基板11の下面には、半導体素子4を収納するための凹部17が形成されている。凹部17は、平面視
したときの内周の形状が四角形状である。
【0015】
絶縁基板11の材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。
【0016】
枠体12は、絶縁基板11の上面に設けられている。これにより、絶縁基板11とダイヤフラム13との間に所定の間隔を確保することができる。その結果、ダイヤフラム13に外部から圧力が加わったときに、ダイヤフラム13を絶縁基板11に向かって(図においては下方に向かって)撓ませることが可能になる。
【0017】
本実施形態における枠体12は、平面視したときの内周の形状が円形状であって、外周の形状が四角形状である。このように、平面視したときの枠体12の内周の形状が円形状であることから、ダイヤフラム13に外部からの圧力が加わった際に枠体12に伝わる力を分散させて絶縁基板11に伝えることができる。詳しくは、枠体12の内周の形状が多角形状の場合、ダイヤフラム13に外部からの圧力が加わった際に枠体12の内周の角部に応力が集中する可能性がある。枠体12の内周の形状が円形状であることによって、このように応力が集中することを抑制できる。その結果、絶縁基板11に部分的に圧力が集中する可能性を低減することができるので、圧力検出装置用基体1の信頼性を向上させることができる。
【0018】
枠体12の材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。本実施形態においては、枠体12は絶縁基板11とともに一体的に形成されている。
【0019】
本実施形態における第1電極2は、絶縁基板11の上面であって、枠体12に囲まれるように枠体12の内側に設けられている。第1電極2と後述する第2電極3との間には静電容量が形成される。ダイヤフラム13が外部から圧力を受けたときに、この圧力によってダイヤフラム13が撓むので、第1電極2と第2電極3との間隔が変化する。これにより、第1電極2と第2電極3との間の静電容量が変化する。この静電容量の変化を測定して、演算を行なうことによって、圧力の大きさを求めることができる。
【0020】
圧力の大きさを求めるための演算は、例えば、絶縁基板11の下面の凹部17に収納される半導体素子4を設け、この半導体素子4を用いて行なうことができる。図1に示す圧力検出装置100では、凹部17に設けた半導体素子4を凹部17に充填した樹脂8で気密封止した状態を示している。
【0021】
また、圧力検出装置用基体1の外部に別途装置を設け、この装置を用いて同様の演算を行なうこともできる。圧力検出装置用基体1の外部に別途装置を設ける場合、半導体素子4は圧力の大きさを求めるための演算を行なうためのものではなく、単に第1電極2および第2電極3から送られた信号を増幅するだけの機能を有しているものであってもよい。
【0022】
第1電極2は、平面透視したときの形状が円形状である。第1電極2の外周の形状が、枠体12の内周の形状と相似であることにより、第1電極2を広い範囲に形成することができる。そのため、第2電極3との間に形成される静電容量を大きくすることができる。結果として、圧力検出装置用基体1の外部からの圧力の変化を検出する精度を向上させることができる。
【0023】
第1電極2としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、例え
ば、タングステン、モリブデン、銅もしくは銀等の金属材料またはそれらを用いた合金を用いることができる。
【0024】
本実施形態におけるダイヤフラム13は、板状の部材であって、平面視したときの形状が四角形状である。ダイヤフラム13は、絶縁基板11と枠体12とともに気密封止された空間16を形成するように枠体12の上面に接合されている。ダイヤフラム13が枠体12の上面に接合されることにより、円形状の可撓領域が形成される。
【0025】
ダイヤフラム13は、絶縁材料によって形成される。具体的には、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。本実施形態においては、ダイヤフラム13は枠体12とともに一体的に形成されている。
【0026】
また、ダイヤフラム13、絶縁基板11および枠体12によって囲まれた領域に気密封止された空間16が形成されていることによって、第1電極2および第2電極3が外気の影響を受けて変質する可能性を抑制できる。その結果、圧力検出装置用基体1の信頼性を向上させることができる。空間16の内部には、不活性気体を充填することができる。不活性気体としては、窒素またはアルゴンを用いることができる。これにより、第1電極2および第2電極3が変質する可能性をさらに抑制することができる。
【0027】
本実施形態における第2電極3は、ダイヤフラム13の下面に設けられている。第2電極3は、平面透視したときに第1電極2と重なる領域に位置している。第2電極3と第1電極2との間に静電容量が形成される。
【0028】
第2電極3は、平面透視したときの形状が円形状である。
【0029】
第2電極3としては、導電性の良好な材料を用いることが望ましい。具体的には、例えば、タングステン、モリブデン、銅もしくは銀等の金属材料またはそれらを用いた合金を用いることができる。
【0030】
本実施形態における金属層14は、ダイヤフラム13の上面のうち第2電極3と上下に重なり合う部分に設けられている。金属層14は、平面透視したときに枠体12の内側に位置している。ダイヤフラム13の上面に金属層14が設けられていることにより、基体1の製造時にダイヤフラム13に大きな反りが発生する可能性を抑制できる。具体的には、ダイヤフラム13の下面に塗布される第2電極3用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響をダイヤフラム13の上面に塗布される金属層14用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響によって打ち消すことができ、製造時のダイヤフラム13の反りを小さくすることができる。
【0031】
金属層14は、平面透視したときの形状が円形状である。金属層14の形状が第2電極3の形状と相似な形状であることにより、ダイヤフラム13に大きな反りが発生する可能性をより抑制できる。なお、ここでいう「相似」とは、厳密に金属層14と第2電極3とが相似形状である必要はない。具体的には、配線の引き回しのための多少の差異は許容することができる。また、製造誤差程度の差異も許容することができる。
【0032】
さらに、本実施形態における金属層14は、平面透視したときの形状が第2電極3の形状と同一である。これにより、ダイヤフラム13に大きな反りが発生する可能性をさらに抑制できる。なお、ここでいう「同一」とは厳密に金属層14と第2電極3とが同一の形状である必要はない。具体的には、配線の引き回しのための多少の差異は許容することができる。また、製造誤差程度の差異も許容する。
【0033】
金属層14としては、例えば、タングステン、モリブデン、銅もしくは銀等の金属材料またはそれらを用いた合金を用いることができる。好ましくは、金属層14は第2電極3と同じ金属で形成されることが良い。これにより、ダイヤフラム13に大きな反りが発生する可能性をより抑制できる。
【0034】
本実施形態におけるセラミック層15は、金属層14を覆うように設けられている。セラミック層15は、ダイヤフラム13の上面および金属層14の上面に位置している。セラミック層15は、平面視したときの形状が四角形状である。
【0035】
セラミック層15は、セラミック材料によって形成される。具体的には、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのようなセラミック材料を用いることができる。本実施形態においては、セラミック層15はダイヤフラム13とともに一体的に形成されており、セラミック層15は、絶縁基板11、枠体12、ダイヤフラム13と同質のセラミックスが用いられる。
【0036】
セラミック層15が金属層14を覆うように設けられていることにより、金属層14が外部の影響を受ける可能性を低減できる。このため、金属層14が変質して圧力が加わった際のダイヤフラム13の撓み量が使用時に変化することを抑制でき、圧力検出装置の感度が低下することを抑制することができる。なお、セラミック層15は外部の影響を受けにくいことから、セラミック層15は外部に露出していて構わない。
【0037】
好ましくは、セラミック層15の密度がダイヤフラム13の密度よりも小さいことが良い。これにより、セラミック層15が弾性変形しやすくなることから、セラミック層15が設けられることによってダイヤフラム13の撓み量が変化することを抑制できる。その結果、良好にダイヤフラム13を撓ませつつ、金属層14を保護することができる。
【0038】
セラミック層15の密度をダイヤフラム13の密度よりも小さくする方法としては、例えばバインダの量を調整する方法が挙げられる。具体的には、セラミック層15用のセラミックグリーンシートに用いるバインダの量をダイヤフラム13用のセラミックグリーンシートに用いるバインダの量よりも多く設定すれば良い。
【0039】
基体1は、さらに第1接続導体5、第2接続導体6および外部接続導体7を備えている。第1接続導体5は、第1電極2および絶縁基板11の凹部17に設けられる半導体素子4を電気的に接続するために設けられている。また、第2接続導体6は第2電極3および半導体素子4を電気的に接続するために設けられている。また、外部接続導体7は、半導体素子4および外部回路を電気的に接続するために設けられている。第1接続導体5は、絶縁基板11の内部に設けられており、絶縁基板11の上面と絶縁基板11の凹部17に引き出されている。第2接続導体6は、枠体12および絶縁基板11の内部に設けられており、枠体12の上面および絶縁基板11の凹部17に引き出されている。外部接続導体7は、凹部17から絶縁基板11の下面のうち凹部17以外の領域に引き出されている。第1接続導体5、第2接続導体6および外部接続導体7は、短絡することがないように、それぞれ離して設けられている。
【0040】
第1接続導体5、第2接続導体6および外部接続導体7としては、例えば、タングステン、モリブデン、銅もしくは銀等の金属材料またはそれらを用いた合金を用いることができる。
【0041】
ここで、基体1の寸法の一例を示すと、絶縁基板11および枠体12、ダイヤフラム1
3の外形寸法は縦7mm×横7mm、絶縁基板11の厚みは1mm、枠体12の内径は5mmφ、厚みは0.05mm、ダイヤフラム13の厚みは0.2mm、第1電極2、第2電極3および金属層14の直径はそれぞれ3mmφ、第1電極2、第2電極3、金属層14の厚みは0.005mm、セラミック層15の厚みは0.2mm、第1電極2と第2電極3との間隔は0.04mmとして作製することができる。
【0042】
<半導体素子の構成>
半導体素子4は、第1接続導体5、第2接続導体6および外部接続導体7に接続されている。半導体素子4は、第1接続導体5および第2接続導体6を介して伝達された第1電極2と第2電極3との間の静電容量の変化から、ダイヤフラム13に加えられた圧力を算出し、その結果を外部接続導体7に出力する機能を備えている。具体的には、ダイヤフラム13に加えられた圧力の大きさと圧力が加えられたときの静電容量の大きさとの関係のデータを半導体素子4にあらかじめ記録させておき、このデータと検出された静電容量の大きさとを照合することによって、ダイヤフラム13に加えられた圧力の大きさを求めることができる。このように、圧力の大きさと静電容量の大きさとの関係のデータを半導体素子4にあらかじめ記録させておくことから、ダイヤフラム13に加えられた圧力の大きさの変化と静電容量の大きさの変化が正比例の関係でなくても、正確に圧力の測定を行なうことができる。
【0043】
半導体素子4は、絶縁基板11の下面の凹部17に設けられており、樹脂8によって気密封止されている。半導体素子4が絶縁基板11の下面に設けられていることにより、別部材に半導体素子4が設けられている場合と比較して、第1電極2および第2電極3と半導体素子4との間の配線長さを短くすることができる。これにより、第1接続導体5および第2接続導体6の間で形成される不要な静電容量を低減できる。その結果、圧力検出装置100は、ダイヤフラム13に加えられた外部からの圧力の大きさを精度よく検知することができる。また、半導体素子4は、樹脂8によって気密封止されていることにより、耐久性が向上されている。
【0044】
第1接続導体5、第2接続導体6、および外部接続導体7と半導体素子4との接続方法としては、例えば、はんだバンプ、金バンプ、導電性樹脂またはボンディングワイヤを用いることができる。
【0045】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、本実施形態においては、絶縁基板11を平面視したときの外周形状が四角形状であるが、円形状、楕円形状または多角形状であってもよい。また、本実施形態においては、枠体12の内周形状は円形状が好ましいが、四角形状、楕円形状または多角形状であってもよい。さらに、本実施形態においては、絶縁基板11、枠体12、ダイヤフラム13およびセラミック層15が一体的に形成されているが、枠体12は絶縁基板11と別々に形成されていてもよく、また枠体12と絶縁基板11とが異なる材料によって形成されていてもよい。また、本実施形態においては、第1電極2は平面視したときの形状が円形状であることが好ましいが、四角形状、楕円形状または多角形状であってもよい。また、本実施形態においては、第2電極3は平面視したときの形状が円形状であることが好ましいが、四角形状、楕円形状または多角形状であってもよい。また、本実施形態においては、金属層14はダイヤフラム13の焼成時の撓みを防止することを目的として設けられているが、その他の目的のために設けられていてもよい。具体的には、金属層14をグランド電位と電気的に接続することで、外部からの電磁波に対するシールド層として用いることもできる。
【0046】
<変形例−1>
圧力検出装置100の変形例−1について説明する。なお、本変形例−1の各構成にお
いて、前述の圧力検出装置100と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
上述した実施形態に係る圧力検出装置100は、平面視したときに、第2電極3および金属層14が枠体12の内周面よりも内側に位置していたが、これに限られない。具体的には、例えば、図6に示すように第2電極3の周縁および金属層14の周縁が枠体12の内周面よりも外側に位置していてもよい。
【0048】
本変形例−1では、第2電極3の周縁および金属層14の周縁が枠体12の内周面よりも外側に位置している。このように金属層14の周縁が枠体12の内周面よりも外側に位置していることによって、圧力の測定時に外圧によってダイヤフラム13が内側に撓んだ際に、金属層14の周縁に力が集中することを抑制できる。具体的には、金属層14の周縁とセラミック層15との間、つまり異なる材料からなる部材が隣接する部分に力が集中することを抑制することができる。その結果、基体1の外部の圧力の検出精度を向上させることができる。
【0049】
さらに、金属層14の周縁が枠体12の内周面よりも外側に位置しているとともに、第2電極層3の周縁が枠体12の内周面よりも外側に位置していることから、基体1の製造時にダイヤフラム13に大きな反りが発生する可能性をさらに抑制できる。具体的には、ダイヤフラム13の下面に塗布される第2電極3用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響をダイヤフラム13の上面に塗布される金属層14用のメタライズペーストの焼成時の収縮による影響によって、より効果的に打ち消すことができる。
【0050】
<変形例−2>
圧力検出装置100の変形例−2について説明する。なお、本変形例−2の各構成において、前述の圧力検出装置100と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
上述した変形例−1の圧力検出装置100は、セラミック層15の上面の全体が露出していたがこれに限られない。例えば、図7に示すようにセラミック層15の上面に補強部材19がさらに設けられていてもよい。
【0052】
本変形例−2では、セラミック層15の上面のうち枠体12と重なり合う位置に補強部材19が設けられている。補強部材19は、枠形状の部材であって、平面視したときの内周の形状が円形状であり外周の形状が四角形状である。
【0053】
本変形例−2では、補強部材19が設けられていることによって、セラミック層15とダイヤフラム13と間の密着強度を高めることができる。具体的には、圧力の測定時に外圧によってセラミック層15の中央付近が下方向に撓むと、これに対応してセラミック層15の周縁付近には上方向に変形しようとする力が生じる。このような力が生じるセラミック層15の周縁付近の上面に補強部材19を設けることによって、セラミック層の周縁付近に生じる変形を低減することができる。その結果、セラミック層15とダイヤフラム13との間の密着強度を高めることができる。
【0054】
補強部材19の材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックスのような絶縁材料を用いることができる。本変形例−2においては、補強部材19はセラミック層15とともに一体的に形成されている。
【0055】
<変形例−3>
圧力検出装置100の変形例−3について説明する。なお、本変形例−3の各構成において、前述の圧力検出装置100と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0056】
上述した変形例2の圧力検出装置100は、補強部材19はセラミック層15のみに接合されていたが、これに限られない。例えば、図8に示すように、補強部材19は、セラミック層15だけではなく、ダイヤフラム13とも接合されていてもよい。
【0057】
本変形例−3では、セラミック層15の外縁がダイヤフラムの外縁よりも内側に位置しており、補強部材19の下面は、セラミック層15の上面およびダイヤフラム13の上面と接合されている。これにより、セラミック層15を互いに接合されたダイヤフラム13と補強部材19とによって挟むように保持することができる。そのため、セラミック層15とダイヤフラム13との間の密着強度をさらに高めることができる。
【0058】
好ましくは、セラミック層15は、上面が外縁に向かうに連れて低くなるように傾斜している傾斜面を有していることが良い。セラミック層15の上面がこのような傾斜面を有していることによって、セラミック層15をダイヤフラム13と補強部材19とによってより強固に挟むことができる。そのため、セラミック層15とダイヤフラム13との間の密着強度をさらに高めることができる。
【0059】
<変形例−4>
圧力検出装置100の変形例−4について説明する。なお、本変形例−4の各構成において、前述の圧力検出装置100と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
上述した実施形態に係る圧力検出装置100は、セラミック層15の外径がダイヤフラム12の外径と等しく形成されていたが、これに限られない。たとえば、図9に示すように平面透視したときに枠体12と重なり合わない位置にセラミック層15が設けられていてもよい。
【0061】
本変形例−4では、セラミック層15の周縁が枠体12の内周面よりも内側に位置している。これにより、圧力の測定時にダイヤフラム13を撓ませやすくすることができる。具体的には、ダイヤフラム13は、圧力の測定時に、枠対12の内周面の直上に位置する領域を起点として撓む。この領域にセラミック層15が形成されていないことによって、撓みの起点となる領域を薄く形成することができる。その結果、圧力の測定時にダイヤフラム13を撓ませやすくすることができる。
【0062】
<変形例−5>
圧力検出装置100の変形例−5について説明する。なお、本変形例−5の各構成において、前述の圧力検出装置100と同様の構成および機能を有する部材については、同じ参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
上述した実施形態に係る圧力検出装置100は、ダイヤフラム12の下面に設けられた第2電極3が空間16に露出していたが、これに限られない。たとえば、図10に示すように第2電極3が第2セラミック層18に覆われていてもよい。
【0064】
本変形例−5では、ダイヤフラム12の下面に第2セラミック層18が設けられるとともに、第2セラミック層18が第2電極3を覆っている。この第2セラミック層18が設けられていることによって、想定外の大きさの圧力が印加された際に第1電極2と第2電極3とが短絡することを抑制できる。
【0065】
好ましくは、第2セラミック層18はセラミック層15と同じ材料で形成されていることが好ましい。これにより、焼成の際にダイヤフラムに反りが生じる可能性を抑制できる。
【0066】
<圧力検出装置の製造方法>
まず、圧力検出装置用基体1の製造方法について説明する。圧力検出装置用基体1において、例えば、絶縁基板11が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等のセラミック原料粉末に適当な有機バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤を添加混合してペースト状とし、これをドクタブレード法によってシート状に成形することで、セラミックグリーンシートが形成される。このセラミックグリーンシートを所定形状で打ち抜いて積層し、焼成することによって一体化された絶縁基板11、枠体12、ダイヤフラム13およびセラミック層15を作製することができる。
【0067】
第1電極2、第2電極3、金属層14、第1接続導体5、第2接続導体6および外部接続導体7は、タングステン等の金属粉末に適当な有機バインダ、溶剤、可塑剤および分散剤等を添加混合して得たメタライズペーストをスクリーン印刷法によって絶縁基板11用、枠体12用またはダイヤフラム13用のセラミックグリーンシートに所定のパターンに印刷塗布し、これを絶縁基板11用、枠体12用またはダイヤフラム13用のセラミックグリーンシートとともに焼成することによって所定のパターンに形成される。
【0068】
最後に、圧力検出装置用基体1に半導体素子4を搭載することで圧力検出装置100とすることができる。
【符号の説明】
【0069】
11:絶縁基板
12:枠体
13:ダイヤフラム
14:金属層
15:セラミック層
16:空間
17:凹部
2:第1電極
3:第2電極
4:半導体素子
5:第1接続導体
6:第2接続導体
7:外部接続導体
8:樹脂
1:圧力検出装置用基体
100:圧力検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
該絶縁基板の上面に設けられた第1電極と、
前記絶縁基板の上面に前記第1電極を囲んで設けられた枠体と、
該枠体上に前記絶縁基板および前記枠体とともに密閉空間を形成するように設けられたダイヤフラムと、
該ダイヤフラムの下面に設けられた、前記第1電極と対向する第2電極と、
前記ダイヤフラムの上面のうち前記第2電極と上下に重なり合う部分に設けられた金属層と、
該金属層を覆うように設けられたセラミック層とを備えたことを特徴とする圧力検出装置用基体。
【請求項2】
平面視したときに、前記第2電極の周縁および前記金属層の周縁が前記枠体の内周面よりも外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置用基体。
【請求項3】
平面視したときに、前記金属層は前記第2電極と同じ形状であることを特徴とする請求項1に記載の圧力検出装置用基体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の圧力検出装置用基体と、前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続された半導体素子とを備えた圧力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−113639(P2013−113639A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258295(P2011−258295)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】