説明

圧力検出装置

【課題】検出流体の圧力が周期的に変動するよう場合であっても過渡的な圧力変動を精度よく検出する。
【解決手段】圧力検出装置1は、隔壁11によって互いに隔てられた前室10A及び後室10Bを備える本体ケース10と、隔壁11の連通口11aを覆うように配置されて前室10Aと後室10Bとを仕切る圧電膜20と、隔壁11の連通口11bを覆うように配置されて前室10Aと後室10Bとを仕切る抵抗板30と、を有しており、抵抗板30は、この抵抗板30を貫通する一つ以上の貫通孔を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電膜を利用して圧力を検出する圧力検出装置が知られている。この圧力検出装置は、圧電膜によって仕切られた一対の圧力室を備えており、一方の圧力室に検出流体を導入する。検出流体の圧力に応じて圧電膜に応力が作用すると、圧電膜が電荷を発生し、これを電気的に検出することで、検出流体の圧力を検出する。
【0003】
例えば特許文献1には、圧電膜を利用した流体振動検出装置が開示されている。この流体振動検出装置では、第1のハウジングと第2のハウジングとを圧電膜を介してシート型接着剤である接合部により接着している。この場合、第1のハウジング内に形成される圧力室に対して一方の圧力が加えられ、第2のハウジング内に形成される圧力室に対して他方の圧力が加えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−3171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された手法では、圧力変動の全てを検出してしまうため、検出流体の圧力が周期的に変動するようなケースにおいて、周期的な変動をベースとして起こる過渡的な圧力変動を精度よく検出することができないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、検出流体の圧力が周期的に変動するよう場合であっても過渡的な圧力変動を精度よく検出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、第1の圧電膜と、第1の圧電膜によって互いに仕切られた第1の圧力室と第2の圧力室とを備える本体ケースと、圧力の検出対象となる検出流体を第1の圧力室及び第2の圧力室にそれぞれ導入する導入部と、一つ以上の貫通孔を備える抵抗板と、を有する圧力検出装置を提供する。この場合、導入部は、一方の圧力室である第2の圧力室に対して抵抗板を介して検出流体を導入することを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明において、本体ケースが、第1の圧力室と第2の圧力室とを隔てる隔壁を備えるとともに、導入部が、第1の圧力室に接続する流路と、前記隔壁に形成された連通口とで構成されることにより、抵抗板は、隔壁に形成された連通口を覆うように配置されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号から、前記検出流体の圧力を演算可能としたことが好ましい。
【0010】
また、本発明は、本体ケース内に収容されており、この本体ケースを構成する壁面に面的に接触して配置される第2の圧電膜をさらに有することが好ましい。この場合、圧力検出装置は、第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号と、第2の圧電膜に発生する電荷に応じた信号とから、温度に起因する外乱成分を補正した検出流体の圧力を演算可能としたことが望ましい。
【0011】
さらに、本発明は、本体ケース内に収容されており、第1の圧電膜と比較して、本体ケースに作用する振動に対応した変位が同位相となるとともに検出流体の圧力変化に対応した変位が逆位相となる関係に配置された第2の圧電膜をさらに有することが好ましい。この場合、圧力検出装置は、第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号と、第2の圧電膜に発生する電荷に応じた信号とから、振動に起因する外乱成分を補正した検出流体の圧力を演算可能な構成としたこと望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1の圧力室には検出流体がそのまま導入されるが、第2の圧力室には抵抗板を介して検出流体が導入されることとなる。この流体抵抗により、定常状態において第1の圧力室と第2の圧力室との間の差圧を同じとしたり、検出流体の過渡的な変化状態において当該差圧を生じさせたりといったように、差圧のコントロールを実現することができる。そのため、圧力が周期的に変化するようなシーンであっても、過渡的な圧力変動のみを適切に捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態にかかる圧力検出装置の構成を模式的に示す断面図
【図2】圧電膜の変位の形態を示す説明図
【図3】第2の実施形態にかかる圧力検出装置の構成を模式的に示す断面図
【図4】第3の実施形態にかかる圧力検出装置の構成を模式的に示す断面図
【図5】変形例としての圧力検出装置の構成を模式的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる圧力検出装置1の構成を模式的に示す断面図である。圧力検出装置1は、気体や液体などの検出流体の圧力を検出するものであって、例えばガスメータ内など流体の圧力が変動する部位に設けられる。この圧力検出装置1は、本体ケース10と、圧電膜20と、抵抗板30とを主体に構成されている。
【0015】
本体ケース10は、例えば矩形又は正方形といった所望の形状を備える箱状の筐体であり、その内部には、空間を二分する隔壁11が配置されている。本体ケース10は、隔壁11により互いに隔てられた一対の圧力室、具体的には、前室10Aと後室10Bとを備える。
【0016】
一対の圧力室である前室10A及び後室10Bのうちの一方の圧力室、本実施形態では、前室10Aには、当該前室10Aに検出流体を導入するための流路である導入部12が接続されている。
【0017】
隔壁11には、圧電膜用の連通口11aと、抵抗板用の連通口11bとがそれぞれ形成されている。個々の連通口11a,11bは、前室10Aと後室10Bとを互いに連通するために隔壁11に形成された開口である。抵抗板用の連通口11bは、圧電膜用の連通口11aの近傍に配置されている。また、この抵抗板用の連通口11bは、前室10Aを介して検出流体を後室10Bに導入する機能を担っており、前述の流路とともに導入部12の一部として機能する。
【0018】
圧電膜20は、隔壁11に形成された圧電膜用の連通口11aを覆うように配置されて、前室10Aと後室10Bとを仕切っている。すなわち、この圧電膜20は、前室10Aと後室10Bとの圧力差に応じて変位するように、隔壁11の連通口11aにダイアフラム状に配置されている。圧電膜20は、前室10Aと後室10Bとの間の気密性を確保するために、その全周に亘るように隔壁11に対して固定されている。具体的な固定手法としては、接着材による接着、Oリングによる締め付け等が挙げられる。
【0019】
圧電膜20は、例えば高分子圧電膜で構成されており、その両面に形成された電極(図示せず)に電極端子21が接続されて構成されている。例えば、電極は、高分子圧電膜の表裏にAlやAg等の金属を蒸着することにより形成されている。この圧電膜20は、検出流体の圧力に応じた圧電膜20の応力変化を圧力信号として電極端子21を通じて出力する。電極端子21を通じて出力された圧力信号は、CPU等の圧力算出部(図示せず)に送信され、圧力算出部の演算により検出流体の圧力が求められることとなる。
【0020】
抵抗板30は、隔壁11に形成された抵抗板用の連通口11bを覆うように配置されて、前室10Aと後室10Bとを仕切っている。抵抗板30は、例えば板厚の薄い金属板で構成されており、当該抵抗板30を貫通する貫通孔としての小孔(図示せず)を備えている。この小孔は、連通口11bを介して前室10Aと後室10Bとの間を行き来する流体に対する抵抗(流体抵抗)として機能するものであり、その数及び大きさは所望の流体抵抗に応じて予め設定されている。抵抗板30も、圧電膜20と同様、前室10Aと後室10Bとの間の気密性を確保するために、その全周に亘るように隔壁11に対して固定されている。具体的な固定手法としては、接着材による接着等が挙げられる。
【0021】
抵抗板30は、例えばドリルやレーザー等により金属板に小孔を形成することにより作成することができるが、抵抗板30を貫通する貫通孔を備える限り、これ以外の形態を採用することができる。例えば、抵抗板30としては、多孔質セラミックスで作成してもよく、内部に空いている無数の微細な穴を貫通孔として機能させてもよい。また、抵抗板30としては、板材に中空の細管(或いは細管束)を貫通させて作成してもよく、個々の細管を貫通孔として機能させてもよい。この場合、隔壁11に抵抗板用の連通口11bを設けずに、当該領域に中空の細管(或いは細管束)を貫通させ、隔壁11と細管とにより抵抗板30を構成してもよい。
【0022】
このような構成の圧力検出装置1において、次に、圧力検出装置1の基本動作を説明する。なお、以下では、本実施形態に係る圧力検出装置1をガス流路等に配置した場合を例に説明する。
【0023】
まず、導入部12を通じて本体ケース10内にガスが導入される。ここで、本体ケース10内に導入されたガスは、前室10Aに導入される一方、抵抗板30に形成された小孔を通じて後室10Bにも導入される。
【0024】
ここで、導入部12を通じて本体ケース10内に導入されたガスに圧力変化が無い場合、あるいは、圧力変化があってもその変化が緩やかな場合には、前室10Aと後室10Bとの圧力、すなわち、圧電膜20の表裏(前後)の圧力は等しくなる。これにより、圧電膜20は、撓むことがなく、電極端子21からの出力は特定の値で安定する。
【0025】
一方、導入部12を通じて本体ケース10内に導入されたガスの圧力が過渡的に高くなった場合、ガスが後室10Bに伝わるまでに抵抗板30Aの小孔を経ることから、後室10Bの圧力は即座に高くならない。これに対して、前室10Aへは導入部12を通じてガスが直接的に至ることから、前室10Aの圧力は比較的早期に高くなる。よって、図2(a)に示すように、圧電膜20は後室10B側へ変位することとなり、電極端子21からの出力は変化する。CPU等の圧力算出部(図示せず)は、この変化量をとらえることで検出流体の圧力を検出することとなる。なお、本体ケース10内に導入されたガスの圧力が過渡的に低くなった場合は、図2(b)に示すように、ダイアフラム11aが前室10A側に撓むこととなり、同様に圧力が検出される。
【0026】
この場合、圧力検出装置1は、後室10Bの容積をCとし、抵抗板30による流体抵抗をRとした擬似的なRC回路を備えることとなる。すなわち、圧力検出装置1は、後室10Bの容積と、抵抗板30による流体抵抗(小孔の大きさ及び数)とにより、検出対象となる周波数域が設定されることとなる。
【0027】
このように、本実施形態に係る圧力検出装置1は、隔壁11によって互いに隔てられた前室10A及び後室10Bを備える本体ケース10と、隔壁11の連通口11aを覆うように配置されて前室10Aと後室10Bとを仕切る圧電膜20と、隔壁11の連通口11bを覆うように配置されて前室10Aと後室10Bとを仕切る抵抗板30と、を有しており、抵抗板30は、この抵抗板30を貫通する一つ以上の貫通孔を備えている。
【0028】
かかる構成によれば、小孔が形成された抵抗板30が、前室10Aと後室10Bとの間の連通部において流体抵抗として機能する。この流体抵抗は、定常状態において前室10Aと後室10Bとの間の差圧を同じとしたり、検出流体の過渡的な変化状態において当該差圧を生じさせたりといったように、差圧のコントロールを実現することができる。これにより、圧力が周期的に変化するようなシーンであっても、過渡的な圧力変動のみを適切に捉えることができる。例えば、圧力検出装置1をガスメータ内の気体の圧力を検出する場合であれば、定圧配管の微圧振動を検出することができるといった如くである。
【0029】
また、圧力検出装置1が、後室10Bの容積をCとし、抵抗板30による流体抵抗をRとした擬似的なRC回路を備えることで、特定周波数帯の圧力のみを適切に検出することができる。また、空間部25の容積と抵抗板30による流体抵抗とを適宜設定することにより、検出対称となる圧力の周波数域を自在にコントロールすることができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、電極端子21を独立して設けているが、金属板である抵抗板30の一部を延在させ、電極端子21として利用してもよい。
【0031】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態にかかる圧力検出装置2の構成を模式的に示す断面図である。この第2の実施形態にかかる圧力検出装置2が第1の実施形態のそれと相違する点は、温度による外乱補正機能を備えていることである。第1の実施形態と重複する構成については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0032】
本実施形態にかかる圧力検出装置2は、第1の実施形態と同様、本体ケース10と、圧電膜(以下「第1の圧電膜」という)20と、抵抗板30とを含み、さらに、第2の圧電膜22を備えて構成されている。ここで、本体ケース10及び抵抗板30の構成は、第1の実施形態のそれと同じである。また、第1の圧電膜20は、第1の実施形態と同様、隔壁11に形成された圧電膜用の連通口11aを覆うように配置されて、前室10Aと後室10Bとを仕切っている。
【0033】
第2の圧電膜22は、本体ケース10内に収容されて、第1の圧電膜20の近傍に配置されており、隔壁11と平面領域と面的に接触するように配置されている。この第2の圧電膜22は、前室10Aと後室10Bとの間に圧力差が発生した場合であっても、物理的な変形が隔壁11によって規制されることとなる。ここで、第2の圧電膜22は、第1の圧電膜20と同様、例えば高分子圧電膜で構成されており、その両面に形成された電極(図示せず)に電極端子23が接続されて構成されている。例えば、電極は、高分子圧電膜の表裏にAlやAg等の金属を蒸着することにより形成されている。この第2の圧電膜22は、当該第2の圧電膜22に発生する電荷に応じた圧力信号を電極端子21を通じて出力する。電極端子23を通じて出力された圧力信号は、CPU等の圧力算出部(図示せず)に送信され、圧力算出部にて演算により参照圧力が求められることとなる。
【0034】
このような構成の圧力検出装置1において、圧力算出部は、第1の圧電膜20から求められた圧力と、第2の圧電膜22から求められた参照圧力との差分を求めることにより、検出流体の圧力を求めることができる。個々の圧電膜20,22は、その特性として、温度変化に応じて電荷を発生する焦電効果を備えている。そのため、第1の圧電膜20から出力される圧力信号には、前室10Aと後室10Bとの圧力差に起因した変位に応じた成分と、温度変化に応じた成分とが含まれることとなる。ここで、温度変化に応じた成分は、焦電効果による発生電荷としての温度ノイズとして作用する。一方、第2の圧電膜22は、隔壁11によって前室10Aと後室10Bとの圧力差に応じた変位が規制されるため、第2の圧電膜22の変位に応じて出力される圧力信号には、温度変化に応じた成分のみが含まれることとなる。
【0035】
このように、第1の圧電膜20から求められた圧力(温度ノイズを含む検出流体の圧力)と、第2の圧電膜22から求められた参照圧力との差分を求めることにより、焦電効果により発生する電荷を無視することができる。これにより、第1の実施形態と同様の効果に加え、温度に起因する外乱成分の補正を行うことができるので、検出流体の圧力をより精度よく検出することができる。
【0036】
なお、第2の圧電膜22は、前室10Aと後室10Bとの圧力差に応じて変位しない状態で配置されれば足り、必ずしも隔壁11に配置する必要はない。すなわち、第2の圧電膜22は、本体ケース10内に収容されて、この本体ケース10を構成する壁面に面的に接触して配置されていれば足りる。
【0037】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態にかかる圧力検出装置3の構成を模式的に示す断面図である。第3の実施形態にかかる圧力検出装置3が第1の実施形態のそれと相違する点は、振動による外乱補正機能を備えていることである。第1の実施形態と重複する構成については説明を省略することとし、以下、相違点を中心に説明を行う。
【0038】
この圧力検出装置3は、本体ケース10と、第1の圧電膜20と、第2の圧電膜24と、第1の抵抗板30と、第2の抵抗板31とで構成されている。
【0039】
本体ケース10は、例えば矩形又は正方形といった所望の形状を備える箱状の筐体であり、その内部には、それぞれが空間を二分する一対の隔壁(第1及び第2の隔壁)11,13が配置されている。ここで、第1及び第2の隔壁11,13は、互いに平行となるような関係に設定されている。この本体ケース10は、第1及び第2の隔壁11,13により互いに隔てられた3つの圧力室、具体的には、前室10Aと、この前室10Aにそれぞれ隣接する第1及び第2の後室10BA,10BBとを備えている。ここで、第1の後室10BAと、第2の後室10BBとは、前室10Aを介して対称となるような関係に設定されている。
【0040】
個々の隔壁11,13には、第1の実施形態と同様、圧電膜用の連通口11a,13aと、抵抗板用の連通口11b,13bとがそれぞれ形成されている。
【0041】
第1の圧電膜20は、第1の隔壁11に形成された圧電膜用の連通口11aを覆うように配置されて、前室10Aと第1の後室10BAとを仕切っている。すなわち、この第1の圧電膜20は、前室10Aと第1の後室10Bとの圧力差に応じて変位するように、隔壁11に対してダイアフラム状に配置されている。
【0042】
この第1の圧電膜20は、例えば高分子圧電膜で構成されており、その両面に形成された電極(図示せず)に電極端子21が接続されて構成されている。この第1の圧電膜20は、検出流体の圧力に応じた第1の圧電膜20の応力変化を圧力信号として電極端子21を通じて出力する。電極端子21を通じて出力された圧力信号は、CPU等の圧力算出部(図示せず)に送信され、圧力算出部にて演算により検出流体の圧力が求められることとなる。
【0043】
第2の圧電膜24は、第2の隔壁13に形成された圧電膜用の連通口13aを覆うように配置されて、前室10Aと第2の後室10BBとを仕切っている。すなわち、この第2の圧電膜24は、前室10Aと後室10Bとの圧力差に応じて変位するように、隔壁11に対してダイアフラム状に配置されている。
【0044】
この第2の圧電膜24は、例えば高分子圧電膜で構成されており、その両面に形成された電極(図示せず)に電極端子25が接続されて構成されている。この第2の圧電膜24は、検出流体の圧力に応じた第2の圧電膜24の応力変化を圧力信号として電極端子25を通じて出力する。電極端子25を通じて出力された圧力信号は、CPU等の圧力算出部(図示せず)に送信され、圧力算出部にて演算により検出流体の圧力が求められることとなる。
【0045】
第1の抵抗板30は、第1の隔壁11に形成された抵抗板用の連通口11bを覆うように配置されて、前室10Aと第1の後室10BAとを仕切っている。一方、第2の抵抗板31は、第2の隔壁13に形成された抵抗板用の連通口13bを覆うように配置されて、前室10Aと第2の後室10BBとを仕切っている。個々の抵抗板30,31の構成は、第1の実施形態に示す抵抗板30と同様とすることができる。
【0046】
このような構成の圧力検出装置1において、圧力算出部は、第1の圧電膜20から求められた圧力と、第2の圧電膜24から求められた圧力との差分を求め、この演算結果に応じて検出流体の圧力を求めることができる。
【0047】
具体的には、導入部12を通じて本体ケース10内に導入されたガスの圧力が高くなった場合、第1の圧電膜20は第1の後室10BA側へ変位し、第2の圧力膜24は第2の後室10BB側へ変位することとなる。すなわち、互いに対向する一対の後室10BA,10BBによって前室10Aが挟まれている関係上、第1の圧電膜20と第2の圧力膜24との変位は、それが検出流体の圧力変化に起因するものであれば、逆位相となる。一方、外部から力が加わり本体ケース10に振動が生じた場合、個々の圧電膜20,24も振動によって変位すれば、振動に起因する場合、個々の圧電膜20,24の変位は同位相となる。
【0048】
このように、第1の圧電膜20から求められた圧力と、第2の圧電膜24から求められた圧力との差分を求めることにより、振動によるノイズ成分を特定することができる。そのため、第1の圧電膜20から求められた圧力、或いは、第2の圧電膜24から求められた圧力から振動によるノイズ成分を除いた、検出流体の圧力のみを適切に検出することができる。これにより、第1の実施形態と同様の効果に加え、振動に起因した外乱の補正を行うことができるので、検出流体の圧力をより精度よく検出することができる。
【0049】
なお、本実施形態に示す第2の圧電膜24の配置形態は例示的なものであり、上述の効果を奏する限り、その構成は任意に設定することができる。すなわち、第2の圧電膜24は、本体ケース10内に収容されて、第1の圧電膜20と比較して、本体ケース10に作用する振動に対応した変位が同位相となるとともに検出流体の圧力変化に対応した変位が逆位相となる関係に配置されていれば足りる。
【0050】
なお、上述した各実施形態では、後室10Bに検出流体を導入する場合、抵抗板用の連通口11bを導入部として、前室10Aを経由して検出流体を後室10Bに導入している。しかしながら、これに限定されず、図5に示すように、導入部12を2系統の流路12a,12bに分割して、一方の系統の流路12aで前室10Aに検出流体を導入し、他方の系統の流路12bで後室10Bに検出流体を導入してもよい。この場合、他方の系統の流路12bと後室10Bとの間(図5参照)、或いは、他方の系統の流路12bの任意の場所に、抵抗板30を配置すればよい。すなわち、圧力検出装置1は、導入部12により、前室10Aと後室10Bとのそれぞれに検出流体を導入して、かつ、導入部12が、一方の圧力室である後室10Bに対して抵抗板30を介して検出流体を導入する形態であれば足りる。なお、このような手法は、第2及び第3の実施形態に示す圧力検出装置2,3についても同様に適用することができる。
【0051】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態に係る圧力検知装置はガスメータ内の気体の圧力を検出する例を説明したが、他の気体の圧力を検出することも可能であり、さらに、液体の圧力検出に用いられてもよく、流体の圧力を検出する用途に広く適用することができる。また、第2の実施形態に示す手法と、第3の実施形態に示す手法とをそれぞれ組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1〜3 圧力検出装置
10 本体ケース
10A 前室
10B 後室
11 隔壁
11a 連通口
11b 連通口
12 導入部
13 第2の隔壁
20 圧電膜(第1の圧電膜)
21 電極端子(第1の電極端子)
22 第2の圧電膜
23 第2の電極端子
24 第2の圧電膜
25 第2の電極端子
30 抵抗板(第1の抵抗板)
31 第2の抵抗板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の圧電膜と、
前記第1の圧電膜によって互いに仕切られた第1の圧力室と第2の圧力室とを備える本体ケースと、
圧力の検出対象となる検出流体を前記第1の圧力室及び前記第2の圧力室にそれぞれ導入する導入部と、
一つ以上の貫通孔を備える抵抗板と、を有し、
前記導入部は、一方の圧力室である前記第2の圧力室に対して前記抵抗板を介して検出流体を導入することを特徴とする圧力検出装置。
【請求項2】
前記本体ケースが、第1の圧力室と第2の圧力室とを隔てる隔壁を備えるとともに、
前記導入部が、前記第1の圧力室に接続する流路と、前記隔壁に形成された連通口とで構成されることにより、
前記抵抗板は、前記隔壁に形成された連通口を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載された圧力検出装置。
【請求項3】
前記第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号から、前記検出流体の圧力を演算可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載された圧力検出装置。
【請求項4】
前記本体ケース内に収容されており、当該本体ケースを構成する壁面に面的に接触して配置される第2の圧電膜をさらに有し、
前記第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号と、前記第2の圧電膜に発生する電荷に応じた信号とから、温度に起因する外乱成分を補正した前記検出流体の圧力を演算可能としたことを特徴とする請求項3に記載された圧力検出装置。
【請求項5】
前記本体ケース内に収容されており、前記第1の圧電膜と比較して、前記本体ケースに作用する振動に対応した変位が同位相となるとともに前記検出流体の圧力変化に対応した変位が逆位相となる関係に配置された第2の圧電膜をさらに有し、
前記第1の圧電膜に発生する電荷に応じた信号と、前記第2の圧電膜に発生する電荷に応じた信号とから、振動に起因する外乱成分を補正した前記検出流体の圧力を演算可能な構成としたことを特徴とする請求項3に記載された圧力検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−68447(P2013−68447A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205563(P2011−205563)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】