説明

圧力管および関連用途に使用するためのHDPE樹脂

本発明はバイモダルポリエチレン樹脂を提供するが、該樹脂の中の高分子量エチレン共重合体成分は代表的には比較的狭い分子量分布を有しており、その分子量分布にわたって実質的に一定である短鎖枝分れ含量を持っている。本発明の樹脂は代表的には、それらを圧力管用途に有効ならしめる改善された靭性と緩慢亀裂伝播抵抗を特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についてのクロスリファレンス)
本願は、その全体が本明細書の中に組み入れられる「圧力管および関連用途に使用するためのHDPE樹脂(HDPE RESINS FOR USE IN PRESSURE PIPE AND RELATED APPLICATIONS)」と題する米国特許出願10/835,755号に対する優先権を主張する。
(発明の技術分野)
本発明はポリオレフィン組成物、ポリオレフィン組成物製造方法、ポリオレフィン組成物を使用する製造物品、およびポリオレフィン組成物を使用する製造物品を製造する方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)は米国では毎年1千万メートルトンを超える量で消費される。ポリエチレンの半結晶質の特質はそれを多くの商品および特製品の用途に選ばれる素材にしている。結晶化度は、剛性(stiffness)、強度(strength)、気体輸送に対する障壁(barrier to gas transport)、耐薬品性、および寸法安定性のような、多くの望ましい特性をPEに与える。非晶質相は靭性(toughness)および緩慢亀裂生長抵抗(resistance to slow crack growth)のような属性を付与することができる。
【0003】
現在は、様々なPE樹脂は水、気体およびその他流体の輸送用途に使用される高剛性パイプを製造するのに使用できる。PE−100、MRS10、またはASTM D3350主要セル分類(typical cell classification)345566Cとして分類されるポリエチレンパイプはより高い圧力等級を要求する条件下での使用に特に望ましい。PE−100分類を得るためには、PE−100パイプは剛性、緩慢亀裂生長抵抗、化学攻撃抵抗、および低温靭性(急速亀裂伝播(rapid crack propagation)として表わされる)を特定する一定の標準を満たすことを要求される。さらに、そのようなパイプは高温時の圧力の下で決定される変形基準を満足しなければならない。小半径(直径が1インチ〜12インチ)および大半径(直径が12インチより大きい)両方のPE−100パイプを製造するのに使用できる樹脂は、その全体が本明細書の中に組み入れられる米国特許第6,827,678号明細書(2003年10月23日に刊行された)の中に記載されている。
【0004】
PE−100パイプが靭性を示すことも望ましい。この特性は多くのポリエチレンパイプ用途たとえばパイプが地下に埋設される場合またはパイプが粗い若しくは研磨スラリーを輸送するのに使用される場合において重要であり得る。従って、改善された物理的性質を有しそして耐性を付与する樹脂およびそれから作られたPE−100パイプが必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の記載)
本発明はポリオレフィン組成物、ポリオレフィン組成物製造方法、ポリオレフィン組成物を使用する製造物品、およびポリオレフィン組成物を使用する製造物品を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は改善された靭性を有するPE−100分類ポリエチレンパイプの製造およびかかるパイプを製造するのに使用される樹脂に関する。
【0006】
本発明はポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン(high density polyethylene)樹脂、ポリエチレン樹脂を製造および使用する方法、ポリエチレン樹脂を使用する製造物品、およびポリエチレン樹脂を使用する製造物品を製造する方法をカバーする。ポリマーブレンドを試験する過程において、多分散性(polydispersity)、短鎖枝分布(short chain branch distribution)、長鎖枝分れ(long chain branching)、流動学的性質(rheological properties)などのような性質の有効な組合せを与える高性能ポリマー組成物が、シャルピー衝撃靭性(Charpy impact toughness)および高応力PENT緩慢亀裂生長抵抗値のような尺度によって示される通り、開発された。たとえば、本発明の樹脂は用途の中でも特に圧力管用途に適する加工特性および諸性質を示す。
【0007】
一態様においては、本発明は2つの異なるポリエチレンのブレンドを該ブレンドがPE100HDPE樹脂として特化するための幾つかの規準を満たすように提供する。本発明の成分ポリエチレン類は代表的には、チーグラーナッタ型(Ziegler-Natta-type)またはメタロセン型(metallocene-type)触媒を使用し直列または並列どちらかの反応器手法を使用することによって製造できる。ポリマーブレンドを含むポリマー組成物は既知のいずれかの方法で製造することができ、その方法としては、限定されるものではないが、2つの異なるエチレンポリマーをブレンドすること、または、直列または並列どちらかの反応器手法を使用して触媒作用でそれらポリマーを製造することが挙げられる。一般に、PE100樹脂を製造するための現行の商業的手法は異なる分子量と短鎖枝分れ(short-chain branching)(SCB)含量を特徴とする2つの広い分子量分布(molecular weight distribution)(MWD)のポリエチレンをブレンドすることを包含する。
【0008】
別の態様においては、本発明はそのMWDにわたって実質的に一様な短鎖枝分れ(SCB)分布を有するエチレン共重合体を含む高分子量成分と、エチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分とを含むポリマー組成物を提供する。
【0009】
本発明の更に別の態様は、
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(short-chain branches)(SCB)の数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分
を含む組成物である。
【0010】
一態様においては、低分子量成分および高分子量成分のエチレン単独重合体または共重合体は流動学的に有意に長い枝の低量(low level)を特徴としている。代表的には、組成物は45〜75重量部の高分子量成分と55〜25重量部の低分子量成分を含むことができる。更には、高分子量成分のエチレン共重合体は更に250〜1,000kg/モルのM分子量範囲を特徴とすることができる。別の態様においては、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数は5〜7であることができる。
【0011】
本発明の更に別の態様は、ポリマーブレンド組成物についてのレザーノッチ付き室温シャルピーエネルギー(Razor-Notched Room-Temperature Charpy Energy)および高応力PENT(3.8MPaの初期負荷(initial loading)を使用しての標準PENT)が格別の性能を示すポリマー組成物である。この態様においては、たとえば、組成物は1.5Jより大きい室温シャルピー衝撃靭性と0.94g/cc以上の密度を特徴とすることができる。他の態様においては、組成物は2Jより大きい室温シャルピー衝撃靭性と0.94g/cc以上の密度を特徴とすることができる。本発明のポリマーブレンド組成物はまた、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT緩慢亀裂生長抵抗値1000時間以上、又は3000時間以上、又は5000時間以上、又は6000時間以上を特徴とすることができる。
【0012】
更に別の態様においては、本発明は
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分
を含む組成物を含む物品を提供する。この態様においては、物品はパイプ、容器、家庭用品(utensil)、フィルム、フィルム製品、ドラム、燃料タンク、ジオメンブレン(geomembrane)、ライナー(liner)などである。更に、物品はPE−100パイプを含むことができる。
【0013】
本発明は更に、ここに開示されたポリマー組成物を溶融状態でダイから押し出してPE−100パイプを形成しそしてパイプを冷却することを含むPE−100パイプ製造方法を提供する。
【0014】
加えて、本発明は
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分45〜75重量部;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分55〜25重量部
を合わせることを含む、組成物製造方法を提供する。
【0015】
更に、本発明は、流体ポリマー組成物を押し出すことを含むポリマーフィルムの製造方法であって、該組成物がここに開示された通りである、前記方法を提供する。
【0016】
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様、実施態様および利点は開示特性の下記の更なる詳細記述を検証した後に明らかになるであろう。
【0017】
(発明の詳細)
本発明は、ポリエチレン樹脂組成物、ポリエチレン組成物の製造および使用の方法、ポリエチレン組成物を使用する製造物品、およびポリエチレン組成物を使用する製造物品の製造方法を提供する。従って、本発明は高性能材料を与える諸性質、たとえば、多分散性、短鎖枝分布、長鎖枝分れ、流動学的性質など、の有効な組合せを特徴とするポリマー組成物を提供する。高性能の特性はこれら樹脂の改善された靭性および緩慢亀裂伝播抵抗の性質によって立証されることができ、そのことがそれらの圧力管における有用性を例証している。
【0018】
一態様においては、本発明は高分子量成分と低分子量成分を含むバイモダル(bimodal)樹脂を提供する。代表的には、高分子量成分は、1)比較的狭い分子量分布;2)分子量分布にわたって実質的に一定である短鎖枝分れ分布;かつ、3)流動学的に有意に長い枝の実質的量の欠如;を特徴とすることができる。代表的には、低分子量成分は流動学的に有意に長い枝の低量を含む。本発明の樹脂は代表的には、シャルピー衝撃靭性と高応力PENTによって測定されたときの改善された靭性と緩慢亀裂生長抵抗を特徴とする。本発明はまた、広い分子量分布の樹脂を提供し、そこでは、短鎖枝分れ(SCB)は分布の高分子量末端(high molecular weight end)の中に実質的に隔離されておりそして短鎖枝分れ分布は高分子量末端の上に実質的に均一である。
【0019】
本発明のバイモダル樹脂ばかりでなく、SCBが高分子量末端の中に実質的に隔離されている広い分子量の樹脂は様々な方法によって製造することができ、限定されるものではないが、成分ポリマーの物理的混合ブレンド、直列または多ゾーン反応器を使用する重合法、多成分触媒を使用する重合法、などが挙げられる。従って、本発明の組成物は組成物を製造するいずれかの一つの方法に従って限定されるものではない。
【0020】
ポリマー組成物の成分
本発明は高分子量成分と低分子量成分を含むバイモダル樹脂を提供する。更に、本発明はまた、広い分子量分布(molecular weight distribution)(MWD)の樹脂を提供し、そこでは、バイモダル樹脂の高分子量成分向けにここに開示された特性は広いMWDの高分子量末端の中に見出される。従って、本発明のバイモダル樹脂の高分子量成分に帰属させられたいずれの性質、特性または特徴も、本発明のいずれの広い分子量分布の樹脂のMWDの高分子量末端にも帰属させられることができる。
【0021】
ここで使用される幾つかの代表的なブレンド成分の分子量特徴は第2表に提供されている。同表には、NMRを使用して推定されたそれらのSCB含量(1−ヘキセンコモノマーからの)も掲載されている。HP−1およびHP−2樹脂は狭いMWDの高分子量単独重合体であり、HP−2の分子量はHP−1のそれよりもかなり高い。CP−1樹脂は、5.6SCB/1000骨格炭素をもつ、狭いMWDの高分子量共重合体である。CP−1とHP−1は分子量およびMWDが似ているが、SCB含量が異なる。LCP−1および516−2樹脂は低分子量のブレンド用成分であり、LCP−1は共重合体である。CP−1およびLCP−1の平均SCB含量はそれらのMWD全体にわたって実質的に一定であることが最近開発された逐次(sequential)SEC−FTIR技法(P. J. DesLauriers, D. C. Rohlfing and E. T. Hsieh, Polymer, 43, 159 (2002)を参照;これはその全体が本明細書の中に組み入れられる)を使用して証明された。従って、CP−1およびLCP−1の中の平均SCB含量はそれらのMWDにわたってほぼ一定である。
【0022】
高分子量成分。一態様においては、本発明は、
a)3.5以下のM/M(多分散性指数(polydispersity index)またはPDI)と、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分
を含む組成物を提供することができる。
【0023】
従って、この態様においては、高分子量成分は代表的には、1)比較的狭い分子量分布;2)分子量分布にわたって実質的に一定である短鎖枝分れ分布;3)流動学的に有意に長い枝の欠如を特徴とすることができる。第2表は本発明の発明ポリマーブレンド類および比較ポリマーブレンド類を製造するのに使用された幾つかの代表的な個々の高分子量ポリマー成分についての特性データ(characterization data)を提供している。第2表の中に列挙されている高分子量成分はCP−1、HP−1、HP−2、および516−1である。
【0024】
別の態様においては、本発明の高分子量成分ポリマーは流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴としており、それは重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(zero shear viscosity)(η、パスカル秒で)の比が代表的には1,500パスカル秒/kg/モル以下であることを意味する。このη/M比は1,000パスカル秒/kg/モル未満であることができ、そして別の態様においては、700パスカル秒/kg/モル未満であることができる。
【0025】
本発明の更に別の態様においては、本発明の高分子量成分ポリマーは流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴としており、それは重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が代表的には100〜1,500パスカル秒/kg/モルであることを意味する。このη/M比は200〜1,000パスカル秒/kg/モル、または300〜700パスカル秒/kg/モル、であることもできる。
【0026】
別の態様においては、実施例および表の中に提供された発明ポリマーの一特性は、中でも、高分子量成分が代表的にはメタロセン触媒を使用して製造されそしてその短鎖枝分れ分布がMWDにわたって実質的に一定であることである。比較においては、H516B樹脂の高分子量成分(516−1)は古典的なチーグラーナッタ触媒を使用して製造されそしてそのSCB分布はそのMWDにわたって不均質である。
【0027】
高分子量成分の比較的狭い分子量分布はその低い多分散性指数に見ることができる。従って、本発明の高分子量成分は3.5以下のM/Mを特徴とするエチレン共重合体を含むことができる。更に別の態様においては、高分子量成分は3.3以下のまたは3.1以下のM/Mを特徴とするエチレン共重合体を含むことができる。比較では、516−1の多分散性指数は4.5であると測定されている。
【0028】
本発明はまた、一態様においては、3以下のM/Mを特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分を提供する。別の態様においては、エチレン共重合体は2.7以下のまたは2.5以下のM/Mを特徴とすることができる。
【0029】
代表的には、たとえば、実験的に測定したときに250〜1,000kg/モルのM分子量範囲において、分子量分布にわたって実質的に一定である短鎖枝分れ分布は、CP−1高分子量成分についての図1の中に見られる。図1は本発明の高分子量成分のポリマーがその分子量分布にわたって平坦な又は実質的に平坦な短鎖枝分れプロフィールを有することを示している。この特性は本発明ポリマーの短鎖枝分れが比較的に狭い範囲の分子量にわたって実質的に一定のままであるということを示している。一態様においては、用語実質的に一定はここでは代表的には、骨格炭素原子1000個(1000C)当りの短鎖枝(SCB)の範囲が分子量プロフィールにわたって1000C当り1SCB以下の全較差で変動可能であるということを表示するために使用されている。すなわち、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)の範囲における偏差は代表的には、ポリマーの分子量プロフィールにわたって1000C当り1SCB以下の全較差の代わりに、その分子量プロフィールにわたって平均SCB含量から±0.5SCB/1000Cで変動できる。本発明の高分子量成分については、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)の範囲における偏差は、1000C当り0.8SCB以下の全較差の代わりに、その分子量プロフィールにわたって平均SCB含量から±0.4SCB/1000Cで変動できる。それでも、別の態様においては、本発明の高分子量成分は骨格炭素原子1000個当り短鎖枝(SCB)4〜8つの短鎖枝(SCB)数を特徴とするエチレン共重合体を含むことができる。従って、SCB/1000Cのこの数字はSCB/1000Cの数の実質的に一定不変の本質とは異なるパラメーターまたは測定値である。この態様において、SCBはまた、4.5〜7.5SCB/1000C、又は5〜7SCB/1000C、又は6SCB/1000Cであることができる。
【0030】
用語高分子量成分はここでは代表的には、250〜1000kg/モルのMを特徴とするポリマーを表わすために使用される。別の態様においては、高分子量成分は275〜800kg/モルの、又は300〜600kg/モルの、Mを特徴とすることができる。
【0031】
別の態様においては、本発明の高分子量成分は、250〜1000kg/モルのM分子量範囲において、3.5以下のM/Mと、MWDにわたって骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含むことができる。エチレン共重合体は代表的には、250〜1000kg/モルのM分子量範囲において、3.5以下のM/Mと、MWDにわたって骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数5〜7を特徴とすることもできる。
【0032】
本発明の組成物は所期の樹脂性質を提供するために、45〜75重量部の高分子量成分と55〜25重量部の低分子量成分を含むことができる。更に、本発明の組成物は50〜60重量部の高分子量成分と50〜40重量部の低分子量成分を含むこともできる。
【0033】
本発明の別の態様においては、高分子量成分は、エチレンともう一つのα−オレフィン(モノ−1−オレフィン)との共重合体を含むことができ、そこでは、該共重合体はモノ−1−オレフィンを0.001〜30重量%有することができ、そしてモノ−1−オレフィンは3〜12個の炭素原子を有することができる。
【0034】
低分子量成分。一態様においては、そしてここに開示されたエチレン共重合体を含む高分子量成分に加えて、本発明は代表的には、エチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分を含むことができ、この単独重合体または共重合体は15〜75kg/モルのMを特徴とすることができる。更に、低分子量成分エチレン単独重合体または共重合体は25〜60kg/モルのM、または30〜50kg/モルのMを特徴とすることができる。第2表には、本発明のポリマーブレンドを製造するために使用された幾つかの代表的な個々の低分子量成分と高分子量成分についての特性データが提供されている。第2表に掲載されている低分子量成分はLCP−1と516−2である。
【0035】
別の態様においては、本発明の低分子量成分ポリマーは流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴とし、それは重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が代表的には1,500パスカル秒/kg/モル以下であることを意味している。このη/M比は1,000パスカル秒/kg/モル未満であることもでき、そして別の態様においては700パスカル秒/kg/モル以下であることができる。
【0036】
本発明の更に別の態様においては、本発明の低分子量成分ポリマーは、重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が100〜1,500パスカル秒/kg/モルになるように、流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴とする。η/M比は200〜1,000パスカル秒/kg/モル未満、または300〜700パスカル秒/kg/モルであることもできる。
【0037】
ポリマーブレンド成分の製造
本発明はエチレン共重合体を含む高分子量成分とエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分とを含む組成物を提供する。ポリマーブレンド用成分は商業的に得ることができる又は当業者に既知のいずれかの方法に従って製造できる。触媒組成物の個々の成分を得る一方法はメタロセン系触媒システムを使用する触媒方法によるものである。これらの方法の幾つかの例がここに提供される。しかしながら、ここに開示された組成物は個々の成分がどのように製造されたか又は得られたかに依存しない。更には、ここに開示された組成物はポリマーブレンド用成分を製造する方法またはポリマーブレンド自体を製造する方法に依存しない。
【0038】
高分子量成分のコモノマー。一態様においては、本発明のポリマー組成物の高分子量成分は代表的には、エチレンと分子当り3〜12個の炭素原子を有しかつ少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する別のオレフィン化合物との共重合体を含む。従って、エチレンの高分子量共重合体は代表的には、主要量のエチレン(>50モル%)と少量のコモノマー(<50モル%)を含むが、これは必須要件というわけではない。別の態様においては、エチレンと共重合できるコモノマーは分子当り3〜10個の炭素原子、又は分子当り3〜8個の炭素原子、又は分子当り3〜6個の炭素原子を有することができる。
【0039】
一態様においては、非環式、環式、多環式、末端(α)、中間、線状、分枝状、置換、非置換、官能化、および非官能化オレフィンが本発明におけるコモノマーとして使用されてもよい。たとえば、本発明の高分子量成分を形成するのにエチレンと共重合されてもよい代表的なオレフィンは、限定されるものではないが、次のものが挙げられる:プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、3−メチル−1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、4種のノルマルオクテン、4種のノルマルノネン、5種のノルマルデセン、およびこれらのいずれか2つの又はそれ以上の混合物。環式および二環式オレフィンはここに開示された通りエチレンと共重合されてもよく、限定されるものではないが次のものが挙げられる:シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルニレン、ノルボルナジエンなど。
【0040】
一態様においては、共重合体を製造するために反応器ゾーンの中に導入されるコモノマーの量は一般にモノマーとコモノマーの全重量に基づいて0.001〜30重量%のコモノマーである。別の態様においては、コモノマーの量はモノマーとコモノマーの全重量に基づいて0.01〜20重量%のコモノマーまたは0.1〜10重量%のコモノマーであることもできる。代わりに、そして別の態様においては、コポリマー自体における重量によってコモノマーの上記濃度を与えるのに十分なコモノマーの量を使用することができる。
【0041】
一態様においては、本発明のポリマー組成物の低分子量成分は、高分子量成分と同じ様に、エチレンと分子当り3〜12個の炭素原子を有しかつ少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する別のオレフィン化合物との共重合体を含むこともできる。この事例においては、エチレンの低分子量共重合体はまた、代表的には、主要量のエチレン(>50モル%)と少量のコモノマー(<50モル%)を含むが、これは必須要件というわけではない。別の態様においては、エチレンと共重合されることができるコモノマーは分子当り3〜12個の炭素原子、又は分子当り3〜10個の炭素原子、又は分子当り3〜8個の炭素原子、又は分子当り3〜6個の炭素原子、を有することができる。
【0042】
ポリオレフィン成分の触媒作用的製造。ポリマーブレンドを含む本発明のポリマー組成物は当業者に既知のいずれかの方法で製造することができ、その方法としては、限定されるものではないが、2重触媒をもって単一反応器の中でポリマーを触媒作用的に製造するか、又は直列もしくは並列どちらかの反応器手法で操作される2重反応器を使用してポリマーを触媒作用的に製造するかして、2種の異なるエチレンポリマーをブレンドすることが挙げられる。代表的には、PE100樹脂を製造するための現行の商業的手法は、異なる分子量と短鎖枝分れ(SCB)含量を特徴とする2つの広い分子量分布(MWD)のポリエチレンをブレンドすることを包含する。一態様においては、高分子量エチレン共重合体および低分子量エチレン単独重合体は商業的供給源から得ることができる、又は当業者に既知の方法に従って製造できる。
【0043】
別の態様においては、本発明のポリマーを製造できる方法は限定されるものではないが、少なくとも一つのメタロセン化合物と少なくとも一つ有機アルミニウム化合物と少なくとも一つの化学処理済み固体酸化物との接触生成物(contact product)を含む触媒をもってオレフィンモノマーを処理することが挙げられる。
【0044】
一態様においては、本発明の樹脂を製造するのに使用できる代表的な触媒組成物は少なくとも一つのメタロセン化合物、少なくとも一つの有機アルミニウム化合物、および少なくとも一つの化学処理された固体酸化物を包含し、そこでは、
a)メタロセンは式(X)(X)(X)(X)Mを有する(式中、
はチタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選ばれ;
(X)および(X)は独立に、シクロペンタジエニル、インデニル、フルオレニル、またはそれらの置換類似体から選ばれ;
場合によっては、(X)と(X)は、次のものを含む置換または非置換橋かけ基によって連結されていてもよい:
i)(X)および(X)の両方に結合された炭素、ケイ素、ゲルマニウムまたはスズから選ばれた一つの原子;または
ii)一方が(X)に結合されそして他方が(X)に結合されている、鎖の中の2つ以上の連続する炭素原子;そして
(X)、(X)、(X)上のいずれの置換基、(X)上のいずれの置換基、および任意的な置換橋かけ基の上のいずれの置換基も独立に、脂肪族基、芳香族基、環式基、脂肪族基と環式基の組合せ、酸素基、硫黄基、窒素基、燐基、砒素基、炭素基、珪素基、ゲルマニウム基、錫基、鉛基、ホウ素基、アルミニウム基、無機基、有機金属基、またはそれらの置換誘導体(そのいずれのものも炭素原子1〜20個;ハライド;または水素を有する)から選ばれる);
b)有機アルミニウム化合物は式Al(X)(X)3−nを有する(式中、
(X)は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり;(X)はアルコキシドまたはアリールオキシドから選ばれ、そのいずれのものも炭素原子1〜20個、ハライド、またはヒドリドを有し;そしてnは1〜3(境界を含む)の数である);そして
c)賦活剤−支持体は電子吸引性アニオンで処理された固体酸化物を含む(ここで、
固体酸化物はシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、燐酸アルミニウム、ヘテロポリタングステン酸塩、チタニア、ジルコニア、マグネシア、ボリア、酸化亜鉛、それらの混合酸化物、またはそれらの混合物から選ばれ;そして
電子吸引性アニオンはフッ化物、塩化物、臭化物、燐酸塩、トリフレート(triflate)、重硫酸塩、硫酸塩、またはそれらのいずれかの組合せから選ばれる)。
【0045】
固体賦活剤−支持体の例は、限定されるものではないが、塩素化アルミナ、フッ素化アルミナ、硫酸化アルミナ、フッ素化シリカ−アルミナ、柱状クレー(pillared clay)、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0046】
本発明の別の態様においては、有機アルミニウム化合物は式Al(X)(X)3−nの化合物を含み、式中、(X)は1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビルであり;(X)はアルコキシドまたはアリールオキシドから選ばれ、そのいずれのものも炭素原子1〜20個、ハライド、またはヒドリドを有し;そしてnは1〜3(境界を含む)の数である。別の態様においては、有機アルミニウム化合物はトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、ジエチルアルミニウムエトキシド、トリブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、トリイソブチルアルミニウム、またはジエチルアルミニウムクロリドから選ばれてもよい。有機アルミニウム化合物の例は、限定されるものではないが、トリエチルアルミニウム(TEA)またはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)が挙げられる。
【0047】
本発明の高分子量成分を製造するのに使用できる触媒システムの例は、限定されるものではないが、(η−インデニル)HfCl、フッ素化シリカ−アルミナ、およびトリイソブチルアルミニウムが挙げられる。
【0048】
本発明に使用できるメタロセン系触媒を製造および使用するための多数の方法が報告されている。たとえば、米国特許第4,939,217号、第5,191,132号、第5,210,352号、第5,347,026号、第5,399,636号、第5,401,817号、第5,420,320号、第5,436,305号、5,451,649号、第5,496,781号、第5,498,581号、第5,541,272号、第5,554,795号、第5,563,284号、第5,565,592号、第5,571,880号、第5,594,078号、第5,631,203号、第5,631,335号、第5,654,454号、第5,668,230号、第5,705,478号、第5,705,579号、第6,187,880号および第6,509,427号の各明細書はかかる方法を記載しており、その各々はその全体が本明細書の中に組み入れられる。本発明に使用できるメタロセン化合物を製造するためのその他の方法は例えば次のような刊行物の中に報告されている:Koeppl, A. Alt, H. G. J. Mol. Catal A. 2001, 165, 23; Kajigaeshi, S.; Kadowaki, T.; Nishida, A.; Fujisaki, S. The Chemical Society of Japan, 1986, 59, 97; Alt, H. G.; Jung, M.; Kehr, G. J. Organomet. Chem. 1998, 562, 153−181; およびAlt, H. G.; Jung, M.; Kehr, G. J. Organomet. Chem. 1998, 568, 87-112; その各々はその全体が本明細書の中に組み入れられる。次の論説にもかかる方法が記載されている:Wailes, P. C.; Coutts, R. S. P.; Weigold, H. in Organometallic Chemistry of Titanium, Zironium, and Halnium, Academic; New York, 1974; Cardin, D. J.; Lappert, M. F.; and Raston, C. L.; Chemistry of Organo-Zirconium and -Hafnium Compounds; Halstead Press; New York, 1986。
【0049】
本発明に使用できる化学的に処理された固体酸化物(賦活剤または賦活剤−支持体とも称される)を製造するための様々な方法が報告されている。たとえば、米国特許第6,107,230号、第6,165,929号、第6,294,494号、第6,300,271号、第6,316,553号、第6,355,594号、第6,376,415号、第6,391,816号、第6,395,666号、第6,524,987号および第6,548,441号の各明細書はかかる方法を記載しており、その各々はその全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0050】
重合法。本発明の高分子量エチレン共重合体および低分子量単独重合体または共重合体の重合は既知のいずれかのやり方で実施できる。かかる重合法は、限定されるものではないが、スラリー重合、気相重合、溶液重合などが挙げられ、それらの多反応器組合せも挙げられる。従って、エチレン含有ポリマーを製造するのに既知のいずれの重合ゾーンが利用されてもよい。たとえば、攪拌反応器が回分方式向けに利用できるし、又はループ反応器(loop reactor)で若しくは連続攪拌反応器で反応が連続的に行われることもできる。
【0051】
一態様においては、代表的な重合方法はスラリー重合法(粒子形態法(particle form process)としても知られている)であり、それは周知でありそして例えばその全体が本明細書の中に組み入れられる米国特許第3,248,179号明細書の中に記載されている。スラリー法向けの本発明のその他の重合方法は、それらの全体が本明細書の中に組み入れられる米国特許第3,248,179号、第5,565,175号および第6,239,235号の各明細書の中に開示されているタイプのループ反応器を使用するもの、および反応条件が異なる反応器の中では異なっている直列、並列またはそれらの組合せのいずれかの複数の攪拌反応器の中で利用されるものである。
【0052】
スラリー重合に使用される適切な希釈剤は周知であり、そして反応条件下で液状である炭化水素を包含する。この開示において使用される用語「希釈剤」は必ずしも不活性材料を意味する必要は無く、この用語は重合プロセスに寄与してもよい化合物および組成物を包含することを意味する。希釈剤として使用できる炭化水素の例は、限定されるものではないが、次のものが挙げられる:シクロヘキサン、イソブタン、n−ブタン、プロパン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、およびn−へキサン。代表的にはイソブタンがスラリー重合における希釈剤として使用される。この重合技術の例は米国特許第4,424,341号、第4,501,885号、第4,613,484号、第4,737,280号、および第5,597,892号の各明細書の中に見出され、その各々はその全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0053】
本発明に適する重合反応器は少なくとも一つの原料供給システム、触媒もしくは触媒組成物のための少なくとも一つの供給システム、少なくとも一つの反応器システム、少なくとも一つのポリマー回収システムまたはそれらのいずれかの適する組合せを含むことができる。本発明にとって適する反応器は更に、触媒貯蔵システム、押出システム、冷却システム、希釈剤再循環システム、またはコントロールシステムの、いずれか一つまたは組合せを含むことができる。かかる反応器は触媒、希釈剤およびポリマーの連続引取(continuous take-off)と直接再循環を含むことができる。一般的な用語においては、直接再循環は、流出槽(flash tank)の中の液体から固体を分離した後に液体の大部分を分留無しで反応器に戻して再循環させるプロセスを含む。再循環される液体は主として希釈剤および未反応モノマーを含有しているが、オリゴマーを含有することもある。一般に、連続プロセスは、モノマー、触媒および希釈剤を重合反応器の中に連続導入することと、この反応器からポリマー粒子と希釈剤を含む懸濁物を連続除去することを含むことができる。
【0054】
本発明の一態様においては、重合反応器システムは少なくとも一つのループスラリー反応器を含むことができる。かかる反応器は既知であり、そして垂直または水平ループを含むことができる。かかるループは単ループまたは一連ループを構成することができる。多重ループ反応器は垂直および水平両方のループを含むことができる。スラリー重合は触媒とポリマーを分散できる有機溶剤の中で遂行できる。モノマー、溶剤、触媒および任意コモノマーは重合が起こるループ反応器へ連続的に供給される。重合は低い温度および圧力において起こることができる。反応器流出物(reactor effluent)は固体樹脂を回収するために液体を急速蒸発させられることができる。
【0055】
本発明の更に別の態様においては、重合反応器は少なくとも一つの気相反応器を含むことができる。かかるシステムは重合条件下で触媒の存在下の流動床を通って連続的に循環される一つまたはそれ以上のモノマーを含有する連続再循環システムを使用できる。再循環流を流動床から引き出しそして反応器の中へ戻して再循環させることができる。同時に、ポリマー生成物を反応器から引き出すことができ、そして重合されたモノマーの代わりに新しいまたは新鮮なモノマーを添加することができる。かかる気相反応器はオレフィンの多段階気相重合のためのプロセスを含むことができ、そこではオレフィンは少なくとも2つの独立した気相重合ゾーンの中で重合され、第一重合ゾーンで形成された触媒含有ポリマーが第二重合ゾーンに供給される。
【0056】
本発明の更に別の態様においては、重合反応器は管状反応器(tubular reactor)を含むことができる。管状反応器は遊離基開始剤によって、又は一般に配位重合に使用される触媒を用いることによって、ポリマーを製造できる。管状反応器は新鮮モノマー、開始剤または触媒が添加されるところの幾つかのゾーンを有することができる。モノマーは不活性気体流の中に包含されていることができる又は反応器の一つのゾーンで導入されることができる。開始剤、触媒、および/または触媒成分は気体流の中に包含されていることができる又は反応器の別のゾーンで導入されることができる。それら気体流は重合のために相互混合される。熱および圧力は最適重合反応条件を得るように適切に使用することができる。
【0057】
本発明の別の態様においては、重合反応器は溶液重合反応器を含むことができる。溶液重合中に、モノマーは適切な攪拌またはその他の手段によって触媒組成物と接触させられる。不活性有機希釈剤または過剰モノマーを含むキャリヤを使用できる。望むならば、モノマーは蒸気相の中で、液状材料の存在下または不在下で、接触反応生成物と接触させられることができる。重合ゾーンは反応媒体中のポリマー溶液の形成を生じるであろう温度および圧力に維持される。より良好な温度コントロールを得るため及び重合ゾーンを通して均一重合混合物を維持するために重合中に攪拌を使用することができる。重合の発熱反応熱を消散させるために適切な手段が利用される。重合は回分式または連続式で行うことができる。反応器は所期ポリマーを分離するのに高圧と低圧を使用する少なくとも一つの分離器の直列を含むことができる。
【0058】
本発明の更なる態様においては、重合反応器システムは2つまたはそれ以上の反応器の組合せを含むことができる。複数反応器でのポリマーの製造は、第一重合反応器から得られるポリマーを第二反応器の中に移すことを可能にする移送器(transfer device)によって相互連結された少なくとも2つの個別の重合反応器の中での幾つかの段階を包含することができる。それら反応器のうちの一つにおける所期重合条件は他の反応器の操作条件とは異なっていることができる。代わりに、複数反応器の中での重合は連続重合向けには一つの反応器からのポリマーを後続反応器に手動で移すことを包含することができる。かかる反応器は、限定されるものではないが、次のものを含めていずれかの組合せを包含することができる:複数ループ反応器、複数気体反応器、複数管状反応器、ループ反応器と気体反応器の組合せ、オートクレーブ反応器または溶液反応器と気体またはループ反応器との組合せ、管状反応器とオートクレーブ反応器の組合せ、複数溶液反応器、または複数オートクレーブ反応器、など。
【0059】
ポリマーは製造された後に、それらは、限定されるものではないが、家庭用容器、家庭用品、フィルム製品、ドラム、燃料タンク、パイプ、ジオメンブレン、およびライナーを含めて、様々な物品に形成されることができる。様々なプロセスがこれら物品を形成することができる。通常、所期物品を提供するためには、ポリマーに添加剤および改質剤(modifiers)が添加される。
【0060】
従って、本発明の一態様は、
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分55〜25重量部
を含む組成物を含むPE−100パイプである。
【0061】
本発明は更に、この組成物を溶融状態でダイから押出してPE−100パイプを形成しそして冷却することを含むPE−100パイプ製造方法をカバーする。本発明は更に、
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分45〜75重量部;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分55〜25重量部
を合わせることを含む組成物製造方法をカバーする。
【0062】
本発明はまた、ここに開示された通りのエチレン組成物を流動状態で押出すことを含むポリマーフィルム製造方法をカバーする。
【0063】
ポリマー組成物の性質
ここに開示されている表、図および実施例の試験は本発明の樹脂性質の更なる記載を次の通りに提供する。本発明の様々な態様を例証するために、様々な狭いMWD(分子量分布)の線状(流動学的に有意に長い枝の低量)のポリエチレンからの2成分ブレンドの3組が、各組のブレンドにおいて複数組合せをもって、製造された。これらブレンドは枝分れ(1−ヘキセンコモノマーからの)が高分子量または低分子量どちらかのブレンド用成分の上に専ら存在するように製造された。各々のブレンド用成分の中の平均枝分れ含量はそのMWDにわたってほぼ一定であることが証明された。
【0064】
ここに提供された表、図および実施例はそのMWDにわたって実質的に均質な分布のSCBをもった狭いMWD成分を基材としたバイモダルブレンドを例証している。単独重合体と共重合体を選択的にブレンドすることによって、それらのMWDおよび平均SCB含量においては類似しているがそれらのSCBプロフィールにおいては異なっているブレンド類が生成された。ここに提供されたデータは選択的SCB配置およびSCB分布プロフィールがポリエチレン(PE)のバルク結晶化速度論(bulk crystallization kinetics)、引張およびその他の物理的性質にどのように影響するかを実証している。
【0065】
第1表は本発明の個々成分ポリマーの製造条件の幾つかの非限定的な例を、本発明の触媒、重合条件および得られる樹脂性質の幾つかの非限定的な例を含めて、提供している。ポリマーブレンドを含むポリマー組成物は既知のいずれかの方法で製造することができ、限定されるものではないが、2つの異なるエチレンポリマーをブレンドすること、二重触媒をもって単一反応器の中でポリマーを製造すること、又は直列若しくは並列どちらかの反応器手法を使用して触媒作用でポリマーを製造することが挙げられる。第1表に呈示されたポリマーが第1表に示されたメタロセン触媒を使用して製造されることは必ずしも必要ではない。
【0066】
第2表は本発明のポリマーブレンドを製造するのに使用された幾つかの代表的な個々のポリマー成分を、これらポリマーの幾つかの代表的な物理的性質と共に説明している。従って、重量平均分子量(M)を示すサイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)(SEC)からの分子量データ、数平均分子量(M)に対する重量平均分子量(M)の比、および重量平均分子量(M)に対するz平均分子量(M)の比が提供されている。第2表はブレンド成分の中の短鎖枝分れ含量の尺度としてのポリマー骨格中の炭素原子1000個当りの短鎖枝数も提供されている。分子量分布の2つの尺度、M/MおよびM/Mも第2表に提供されている。
【0067】
第3表は本発明の幾つかの代表的なポリマーブレンド組成物を、ブレンドを製造するのに使用された各々の個々の成分の重量%と共に、説明している。第3表には比較ブレンドのポリマーブレンド組成物も提供されている。シリーズ−2組成物と名づけられたポリマーブレンド組成物は本発明の発明組成物である。従って、シリーズ−2ブレンドの性質はここではその他のブレンドの性質と比較されるばかりでなく、H516Bの性質とも比較されている。H516B樹脂はシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー(Chevron Phillips Chemical Company)LPによって製造された従来のPE100パイプ級HDPEであり、それは2つの広いMWDのチーグラーナッタ系ポリエチレンのブレンドである。詳しくは、H516Bは高分子量成分516−1と低分子量成分516−2の54/46ブレンド(重量比)である。
【0068】
第4表は本発明の発明ポリマーブレンドおよび比較のためのH516Bを含めて比較ポリマーブレンドの分子量および剪断流動学的特性(shear rheological characteristics)のいくつかを提供している。
【0069】
第5表は圧力管用途に関連する本発明の発明ポリマーブレンドおよびH516Bを含めて比較ポリマーブレンドの代表的な物理的性質を例証している。第5表に例証されている通り、本発明のポリマーブレンドのレザーノッチ付き室温シャルピーエネルギーおよび高応力PENT(初期負荷3.8MPaにおける標準PENT)は示されているその他のブレンドのものよりも優れている。また、本発明のポリマーのこれら性能尺度はH516B樹脂のものより優れてもいる。
【0070】
一態様においては、本発明のポリマー組成物は30以下のM/Mと10以下のM/Mを特徴とすることができる。本発明のポリマー組成物は18以下のM/Mと5以下のM/Mを特徴とすることもできる。
【0071】
別の態様においては、本発明のポリマー組成物は30以下の、25以下の、20以下の、15以下の、または10以下の、M/Mを特徴とすることができる。更に別の態様は、10以下の、7以下の、または5以下の、M/Mを特徴とすることができる本発明のポリマー組成物である。
【0072】
一態様においては、本発明のポリマーブレンドを含むポリマー組成物は、重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が代表的には1,500パスカル秒/kg/モル以下であることを意味する、流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴とする。このη/M比は1,000パスカル秒/kg/モル未満であることができ、そして別の態様においては、700パスカル秒/kg/モル未満であることができる。
【0073】
本発明の別の態様においては、本発明のポリマーブレンドを含むポリマー組成物は、重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が100〜1,500パスカル秒/kg/モルであることを意味する、流動学的に有意に長い枝の低量を有することを特徴とする。このη/M比は200〜1,000パスカル秒/kg/モル、または300〜700パスカル秒/kg/モル、であることもできる。
【0074】
本発明の別の態様は組成物の性能特性である。従って、ポリマー組成物は1.5Jより大きい室温シャルピー衝撃靭性と0.94g/cc以上の密度を特徴とすることができる。室温シャルピー衝撃靭性は2Jより大きいこともでき、そして密度は0.94g/cc以上。別の態様においては、本発明のポリマー組成物は初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値が1000時間以上であることを特徴とすることができる。本発明のポリマー組成物は初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値が3000時間以上、又は5000時間以上、又は6000時間以上であることを特徴とすることもできる。
【0075】
更に別の態様においては、本発明の組成物は初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値6000時間以上と、密度0.94g/cc以上を特徴とすることができる。組成物は2Jより大きいシャルピー衝撃靭性と、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値6000時間以上を特徴とすることもできる。
【0076】
本発明の組成物の別の特徴または態様は1.5×10パスカル秒以下のゼロ剪断粘度ηを特徴とするポリマー組成物である。ゼロ剪断粘度ηは1×10パスカル秒以下であることもできる。
【0077】
当該ブレンドの非等温(non-isothermal)および等温(isothermal)の溶融結晶化特性(melt-crystallization characteristics)も示差走査熱量測定(Different Scanning Calorimetry)(DSC)を使用して調べた。長い分子の上(高M成分の中)に配置されたSCBをもつブレンドの非等温結晶化速度論は似たようなMWDおよび平均SCB含量をもつが短い分子の上に配置されたSCBをもつブレンドと比べたときに、熱履歴に対してより低い感受性を示した。等温結晶化発熱量(isothermal crystallization exotherms)は結晶化温度の増大と共により長い時間にシフトしそして拡大することが観察された。与えられた過冷却度(degree of undercooling)、MWD、平均SCB含量および全結晶化度については、結晶化速度論は長い分子の上にSCBをもつそれらポリエチレンについては実質的により遅かった。更には、結晶化半時間(crystallization half time)の温度依存性は長い分子の上にのみ配置されたSCBをもつそれらブレンドについては実質的により急勾配であった。理論的に拘束するつもりはないが、この観察は温度に対する半時間のプロットがポリエチレンのSCBプロフィールの粗指標(crude indicator)として使用されてもよいということを示唆するかもしれない。やはり、理論的に拘束するつもりはないが、結晶化結果は次のことを示唆した: SCBをもつ分子はあたかもそれらがはるかに長いかの如く挙動する;言い換えれば、結晶化展望からは、SCBをもつ分子は同じ長さの完全に線状の分子と比べて反応がにぶい。従って、PE製品の結晶化過程および従って究極形態学(ultimate morphology)は分子量、MWDおよび全SCB含量に加えてSCB分布プロフィールに依存するとみられる。
【0078】
瞬間引張特性(instantaneous tensile properties)(弾性率(modulus)、降伏応力(yield stress)および歪(strain))は結晶化度に依存することも観察されたし、そして分子量、MWDおよびSCB分布プロフィールのようなその他の要因には実質的に依存しないことが注目された。極限引張特性(破断応力(break stress)および破断歪)はSCB分布プロフィールに強く依存することも観察された。長い分子に沿ってのSCBの配置は破断前に実質的により高いレベルの応力に耐える能力を可能にする;しかしながら、破断がより低い伸びにおいて起こる。従って、本発明の一態様においては、極限引張特性は分子量および結晶化度に加えてSCB分布プロフィールの関数である。更には、引張歪硬化(tensile strain-hardening)の着手は長い鎖の上に優先的に配置されたSCBをもつそれらポリエチレンについては有意により低い伸びにおいて起こる。
【0079】
本明細書の中に組み込まれたいずれかの文書によって提供されたいずれかの定義または語法がここに与えられた定義または語法と矛盾しない程度には、ここに与えられた定義または語法が統制する。
【0080】
ここでは用語ポリマーはエチレンを含む単独重合体およびエチレンともう一つのオレフィン性コモノマーとの共重合体を文脈の要求通りに意味するために使用される。
【0081】
ここでは用語流動学的に有意に長い枝の低量はこのように特徴付けられたポリマーが次の基準の少なくとも一つを満足することを表示するために使用される。流動学的に有意に長い枝の低量をもったポリマーの第一基準は、ポリマーは重量平均分子量(M、kg/モルで)に対するゼロ剪断粘度(η、パスカル秒で)の比が代表的には1,500パスカル秒/kg/モル以下あるということである。流動学的に有意に長い枝の低量をもったポリマーの第二基準は、ポリマーが代表的には次式を満足するCarreau-Yasuda(CY)「a」幅パラメーター(breadth parameter)を有するということである: a0.77−0.08(M/M)。従って、用語「流動学的に有意に長い枝の低量」はここでは、ポリマーがこれら上記基準の両方を満足することを特徴とするということを表示するのに使用することもできる。
【0082】
用語「分子量分布にわたって」はここでは、一般に、ポリマーの全分子量分布内に存在する分子の90%を称するのに使用される。用語「全分子量分布」はその間にわたってサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)シグナル(粘度検出素子(viscosity detector))が検出可能であるところの限度として定義される。
【0083】
用語「実質的に一定」はここでは、一般に、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)の範囲における偏差がその分子量プロフィールにわたって平均SCB含量から±0.5SCB/1000Cであることを称するのに使用される。すなわち、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)の範囲は代表的には、ポリマーの分子量プロフィールにわたって1000C当り1SCB以下の全較差で変動可能である。
【0084】
ここに記載されたものに類似の又は均等ないずれの方法、装置および材料も本発明の実施または試験に使用できるが、代表的な方法、装置および材料がここに記載されている。
【0085】
ここに挙げた全ての刊行物および特許は、たとえば、現時点での記載発明に関連して使用されるであろう刊行物記載の構成および方法論を説明し開示する目的で本明細書の中に組み入れられている。上記にそして本文中に論じられている刊行物は本出願の出願日に先立つそれらの開示のみが提供されている。ここでは、本発明者らが先行発明に基づいてかかる開示に先んずる権利を与えられないことを承認するものとしては何も構成されてはいない。
【0086】
ここに開示されたいずれの具体的化合物についても、呈示されたいずれの一般構造もまた、全ての配座異性体(conformational isomers)、レジオ異性体(regioisomers)、および特定組の置換基から生じるかもしれない立体異性体(stereoisomers)をカバーする。一般構造は、立体異性体の混合物ばかりでなく対掌体またはラセミの形態かどうかにかかわらず、全ての対掌体、ジアステレオマー(diastereomers)、およびその他の光学異性体をも、文脈の要求通りに、カバーする。
【0087】
実施例
次に実施例によって更に本発明を説明するが、それらはどのようにも発明の範囲を限定するものではない。そうではなくて、ここの記載を閲読した後には本発明の本質または特許請求の範囲を逸脱することなく当業者に示唆されるであろう様々なその他の態様、実施態様、変更およびその均等物を頼みとしてもよいということが明白に理解されるはずである。
【0088】
一般試験方法
得られたポリマーの分析は次の手順に従って行われた。ポリマー密度はASTM D1505−68およびASTM D1928、条件C、に従って、15℃/時で冷却しそして室温25℃で24時間コンディショニングした圧縮成形サンプルに対してg/cm(g/cc)で測定した。
【0089】
高荷重メルトインデックス(high load melt index)(HLMI)はASTM D1238、条件190/21.6、に従って、21,600g重量をもって190℃における10分当りのポリマーのグラム数(g/10分)で測定した。
【0090】
メルトインデックス(MI)はASTM D1238、条件190/2.16、に従って、2,160g重量をもって190℃における10分当りのポリマーのグラム数で測定した。
【0091】
PENT緩慢亀裂生長抵抗値は試験を加速させるために初期負荷が3.8MPaであったこと以外はASTM F1473(2001)に従って80℃(176°F)で得られた。この3.8MPaでのPENT試験はここでは「高応力」PENT試験と称してもよい。
【0092】
シャルピー試験はASTM F2231に従って行われたレザーノッチ付き室温シャルピーエネルギー試験であった。
【0093】
分子量および分子量分布は、PL220SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)高温クロマトグラフィーユニット(ポリマーラボラトリーズ(Polymer Laboratories))を使用して溶剤としてトリクロロベンゼン(TCB)を用いて、145℃の温度において1mL/分の流量で、得られた。TCBの中の安定剤として0.5g/Lの濃度のBHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)が使用された。200μLの射出容量が1.5mg/mLの公称ポリマー濃度と共に使用された。安定化されたTCBの中へのサンプルの溶解は、時折の穏やかな攪拌を伴って150℃で5時間加熱することによって行われた。次いで、サンプルは130℃に約18時間(夜を徹して)維持され、その後に、射出に先立って150℃に2時間再加熱された。使用された容量は3つのPLゲル混合A LSカラム(7.8×300mm)であり、そして分子量を測定するための広い線状ポリエチレン標準(シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー・マーレックス(Marlex)(登録商標)BHB5003)で較正された。
【0094】
短鎖枝分れプロフィールをもつ分子量分布はFTIR検出素子を使用してサイズ排除クロマトグラフィーを通して得られた。クロマトグラフィーの条件は上に記載したものであり、そしてサンプル射出容量は500μLであった。サンプルは加熱された移送ラインおよびフローセル(flow cell)(KBrウィンドウ(windows)、1mm光路(optical path)、および約70μLのセル容積)を経由してFTIR検出素子に導入された。移送ラインおよびフローセルの温度はそれぞれ、143±1℃および140±1℃に保たれた。これら研究には、狭バンドのテルル化水銀カドミウム(mercury cadmium telluride)(MCT)検出素子を装備したパーキンエルマー(Perkin Elmer)FTIR分光光度計(PE2000)が使用された。該手順の更なる詳細は、DesLauriers, P. J., Rohlfing, D. C., and Hsieh, E. T.による、Polymer 2002:43:159の中に見出すことができる。
【0095】
溶融レオロジー測定値(melt rheology measurements)は次の通りに得られた。ペレットサンプルを182℃において全体で3分間圧縮成形した。サンプルは比較的低圧で1分間溶融するにまかされ、それから、高い成形圧を更に2分間受けた。それから、この成形サンプルを常温(室温)プレス機で急冷した。次いで、成形スラブ(molded slabs)からレオロジー特性測定用に2mm×25.4mm直径のディスクを型押しした。
【0096】
小歪(small strain)(10%)交番剪断測定(oscillatory shear measurements)はレオメトリックス・サイエンティフィック社(Rheometrics Scientific, Inc.)のARESレオメーター上で平行プレート配置(parallel-plate geometry)を使用して190℃の温度で行った。レオメーターの試験チャンバーはポリマー崩壊を最小にするために窒素でブランケットされた。レオメーターは研究の試験温度に予熱された。サンプルに負荷を加えそしてオーブンが熱平衡に達した後に、試験片(specimens)をプレート間で1.6mm厚さに絞り、そして過剰物をトリミングした。サンプルをプレート間に挿入した時刻と振動数掃引(frequency sweep)(0.03〜100ラジアン/秒)を開始した時刻との間に全8.0分間が経過した。それから、改変された3パラメーターCarreau-Yasuda(CY)実験モデルを使用して複素粘度(complex viscosity)(η)−対−振動数(ω)のデータを曲線に合わせてCYパラメーター、すなわち、ゼロ剪断粘度η、特性緩和時間τη、および幅パラメーターa、を得た。
【0097】
簡素化されたCarreau-Yasuda(CY)実験モデルは次の通りである。
【0098】
【数1】

【0099】
式中、
|η(ω)|は複素剪断粘度の大きさであり;
ηはゼロ剪断粘度であり;
τηは粘性緩和時間であり;
aは「幅」パラメーターであり;
nは最終パワー規定勾配(final power law slope)を固定するものであり、2/11で固定され;そして
ωは交番剪断変形の角振動数である。
【0100】
CYモデルおよび由来パラメーターの意義および解釈の詳細は次の刊行物の中に見出せる:C. A. Hieber and H. H. Chiang, Rheol. Acta, 28, 321 (1989); C. A. Hieber and H. H. Chiang, Polym. Eng. Sci., 32, 931 (1992); およびR. B. Bird, R. C. Armstrong and O. Hasseger, Dynamics of Polymeric Liquids, Volume 1, Fluid Mechanics, 2nd Edition, John Wiley & Sons (1987); それらの各々はその全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0101】
全てのDSC実験は、全ての実験について亜鉛とインジウム標準を使用して較正されたパーキンエルマーダイヤモンドDSC計測器を使用して行われた。サンプルと参照パン(reference pans)は測定中に窒素でブランケットされた。
【0102】
非等温結晶化データはNadkarniモデルを含めて様々な実験式を使用して分析された。次の刊行物を参照:V. M. Nadkarni, N. N. Bulakh and J. P. Jog, Advances in Polymer Technology, 12, 73 (1993); それはその全体が本明細書の中に組み入れられる。この手法はポリマーの結晶化度および加工条件主に冷却速度に対するそれらの感受性を特徴付ける量的パラメーターを誘導するための手順を提供した。非等温結晶化度データは、後の加熱走査におけるTと結晶化着手時の温度Tとの間の温度差として定義された過冷却度ΔTの観点から分析された。冷却速度χをもってのΔTの変動量は次の式に合致させられる:
【0103】
【数2】

【0104】
式中、ΔTはゼロ冷却速度の限度において要求される過冷却度でありそして核形成のための熱力学的推進力と関連させられ、そして勾配Pは反応速度論的効果(kinetic effects)を考慮に入れるプロセス感度因子である。
【0105】
個々の樹脂成分の源
本発明の個々成分樹脂の一般的な源および性質は次の通りである。この共重合体のメルトインデックス、分子量、および短鎖枝分れ(SCB)特性は第2表に与えられている。ここで516−2樹脂と表示されている低分子量エチレン単独重合体は、シェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニー・パサデナ・プラスチックス・コンプレックスにおいて、第2表に与えられている通りの諸性質を有するポリマーを形成する通常のチーグラーナッタ触媒および方法を使用して、たとえば、エンジェルハード(Engelhard)からのLynx(登録商標)−100触媒システムを補助触媒としてのトリエチルアルミニウム(TEA)および分子量コントロールのためのHと共に使用して、製造された。516−2樹脂の毛羽密度(fluff density)は0.965g/cc以上に維持され、そしてMI範囲は80〜120dg/分、代表的には約90dg/分。
【0106】
この単独重合体のメルトインデックス、分子量、および短鎖枝分れ(SCB)特性も第2表に与えられている。
【0107】
ここにおける表および実施例の中に比較例として使用されているH516Bはシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニーによって製造された従来のPE100パイプ級HDPEであり、それは2つの広いMWDのチーグラーナッタ系ポリエチレンのブレンドである。H516Bは516−1として表示されている高分子量成分と516−2として表示されている低分子量成分との54/46(重量比)ブレンドである。
【0108】
ここで「CP1」、「HP1」、および「HP2」として表示されている本発明の高分子量の個々の成分樹脂はここの実施例に従って製造された。本発明の高分子量樹脂を製造するのに使用されたフッ素化シリカ−アルミナ賦活剤−支持体は、その全体が本明細書の中に組み入れられるWO9960033号公報の中に開示されている。
【実施例1】
【0109】
代表的なポリマー成分の製造
全ての重合実験は1ガロン(3.785リットル)のステンレス鋼製反応器の中で行われた。第1表は、本発明の個々の成分ポリマー高分子量および低分子量両方についての製造条件の幾つかの代表的な例を、触媒、重合条件および本発明の得られた樹脂特性の幾つかの非限定的な例を含めて、提供している。
【0110】
第2表に示された製造の全てに2リットルのイソブタンとアルキルアルミニウムが使用された。共重合体を製造するのに使用されたオレフィンコモノマーは、使用される場合には、1−ヘキセンであった。メタロセン溶液(1mg/mL)は通常、5mLのヘキセンと5mLの15重量%TEAと10mLのトルエンとの混合物の中に20mgのメタロセンを溶解することによって製造された。
【0111】
代表的な重合手順は次の通りである。イソブタン蒸気をガス抜きしている間に、仕込み口(charge port)から、アルキルアルミニウム、化学的処理された固体酸化物、およびメタロセン溶液をその順番で添加した。仕込み口を閉じ、そして2リットルのイソブタンを1−ヘキセン(コモノマーが使用される場合)と共に添加した。反応器の内容物を攪拌し、そして所期実験温度に加熱し、それからエチレンを導入した。エチレンは、第1表に示されている通り、重合実験の特定長さの間にわたって特定圧力を維持する要求のもとに供給された。反応器は自動化された加熱−冷却システムによって実験を通して所期実験温度に維持された。
【0112】
【表1】

【実施例2】
【0113】
代表的な高分子量ポリマー成分および低分子量ポリマー成分の分子量、物理的性質および枝分れ特性
第2表は本発明のポリマーブレンドを製造するのに使用した幾つかの代表的な個々のポリマー成分を、これらポリマーの幾つかの代表的な物理的性質と共に、例証している。従って、実施例に提供されたときの得られた分子量データ、重量平均分子量(M)、重量平均分子量(M)対数平均分子量(M)の比、およびz平均分子量(M)対重量平均分子量(M)の比を示す、が提供されている。
【0114】
第2表はまた、ポリマー中の短鎖枝分れ量の尺度としてポリマー骨格の炭素原子1000個当りの短鎖枝数を提供している。第2表には、分子量分布の一尺度、Mw/Mn、も提供されている。第2表はSCBが発明樹脂組成物の高分子量成分または比較樹脂組成物の低分子量成分どちらかに限られていたことを説明している。
【0115】
【表2】

【実施例3】
【0116】
代表的なポリマーブレンド組成物
第3表には、本発明の代表的なポリマーブレンド、発明ブレンドおよび比較ブレンドの両方、が例証されている。本発明の発明組成物はシリーズ−2と表示されたポリマーブレンド組成物である。従って、ここでは、シリーズ−2ブレンドの性質はその他のブレンドの性質ばかりでなくH516Bの性質とも比較されている。H516B樹脂はシェブロン・フィリップス・ケミカル・カンパニーによって製造された従来のPE100パイプ級HDPEであり、それは2つの広いMWDのチーグラーナッタ系ポリエチレンのブレンドである。
【0117】
試験すべき究極ブレンドの中のSCBの目標配置によって発揮される影響を可能にする一連のブレンド類を生成するために高分子量成分(HP−1、HP−2、およびCP−1)を低分子量成分(LCP−1および516−2)とブレンドした。これらブレンド類は第3表に記載されており、そしてシリーズ−1、シリーズ−2およびシリーズ−3と表示されている。比較ポリマーブレンドはシリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドであり、そしてこれらブレンドはSCBをMWDの低末端に沿ってのみ含有しており、シリーズ−3はブレンドの比較的高分子量の集りである。発明シリーズ−2ブレンドの分子量特性はそれらの対向品シリーズ−1と似ていることが証明されたが、SCBがシリーズ−2ブレンドでは長い分子に沿って配置されていた。
【0118】
【表3】

【実施例4】
【0119】
本発明の代表的な発明ポリマーブレンドおよび比較ポリマーブレンドの分子量および流動学的特性
第4表に説明されている通り、本発明の発明ポリマーブレンドの、およびH516Bを含めて比較ポリマーブレンドの、分子量および剪断流動学的特性が測定されそして提供されている。
【0120】
【表4】

【実施例5】
【0121】
本発明の代表的な発明ポリマーブレンドおよび比較ポリマーブレンドの密度、RTシャルピーおよびPENT特性
第5表に例証されている通り、本発明のポリマー組成物は、シャルピー衝撃靭性および高応力PENT緩慢亀裂生長抵抗値のような尺度によって表示される通り高性能材料を与える多分散性、長鎖枝分れ、流動学的特性などのようなポリオレフィン性質の有効な組合せを提供した。これら性質はこれら樹脂を、他の用途の中でも、圧力管用途に適するものにした。
【0122】
第5表に見られる通り、本発明のポリマーブレンドのレザーノッチ付き室温シャルピーエネルギーおよび高応力PENT(初期負荷3.8MPaにおける標準PENT)は他の表示ブレンドのものよりも優れている。また、本発明のポリマーのこれら性能尺度はH516B樹脂のものより優れてもいる。
【0123】
【表5】

【実施例6】
【0124】
本発明の代表的な発明ポリマーブレンドおよび比較ポリマーブレンドの非等温溶融結晶化特性
当該ブレンド類の非等温溶融結晶化特性はブレンドをDSC計測器で様々な速度で170℃から0℃まで冷却することによって試験された。結晶化発熱位置は高い冷却速度においては、反応速度論的効果によって、低い温度にシフトした。冷却速度に対する発熱ピーク位置(exotherm peak location)の勾配はシリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドについては平均−0.27である。しかしながら、シリーズ−2ブレンドについての同勾配は−0.21である。理論的に拘束するつもりはないが、この観察は、非等温溶融結晶化の反応速度論はSCB分布プロフィールによって影響され、結晶化速度はより長い分子に沿って配置されたSCBをもつブレンドでは冷却速度に対してより敏感でない、ということを示唆している。上記の非等温的に結晶化された試験片の融解特性もまた特徴付けられた。その非等温的に結晶化された試験片のピーク融点(T)は増大した冷却速度では低下した。高い冷却速度(大きな過冷却)では、比較的完全性の低い結晶が形成され、それは結局、より低い温度で融解した。与えられた冷却履歴については、Tは分子量の増大と共に低下した。更には、与えられた冷却履歴、MWD、および平均SCB含量については、TはSCBがより長い分子の上に配置されたポリマーではより低かった。やはり、理論的に拘束するつもりはないが、これらT結果は板状厚さ(lamellar thickness)における性向に原因を求められた。
【0125】
非等温結晶化データはまた、後の加熱走査におけるTと結晶化着手における温度Tとの間の温度差として定義された過冷却度ΔTの観点から分析された。冷却速度χをもってのΔTの偏差は次の式に合致させられる:
【0126】
【数3】

【0127】
式中、ΔTはゼロ冷却速度の限度において要求される過冷却度でありそして核形成のための熱力学的推進力と関連させられ、そして勾配Pは反応速度論的効果を考慮に入れるプロセス感度因子である。従って、ブレンド全てについてΔTは3℃ウィンドウ内にあることが観察された。パラメーターPはシリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドに比べてシリーズ−2ブレンドではより小さいことが観察された。理論的に拘束するつもりはないが、この観察は、より長い分子に沿って存在したSCBをもつポリマーについてのプロセス履歴に対してはより小さい感受性を示す結果を確認しているようにみえる。
【実施例7】
【0128】
本発明の代表的な発明ポリマーブレンドおよび比較ポリマーブレンドの等温結晶化特性
これらのブレンドの等温結晶化特性も調べた。結晶化発熱は、一般に、より高い温度においてはより広くなりそしてその位置はより長い時間にシフトした。更には、結晶化のエンタルピーはまた、温度が増すと共に僅かに減少した。等温結晶化発熱のピーク位置(tpeak)は図2の中にブレンド全てについて結晶化温度の関数としてプロットされている。理解できる通り、tpeakはブレンド全てについて温度が増すと指数関数的に増大した;しかしながら、この依存性(勾配)は発明のシリーズ−2ブレンドでははるかに大きかった。一般に、この勾配は各ブレンドシリーズについて、分子量が増すと増大し、より長い分子についてはより遅い結晶化反応速度論を示す。更には、この勾配がシリーズ−2ブレンドでは有意に大きいことは明らかであった。たとえば、ブレンドBM1−1およびBM2−1については似たような分子量、MWD、剪断流動学および平均SCB含量にもかかわらず、BM2−1の結晶化反応速度論は実質的により遅かった。理論的に拘束するつもりはないが、より長い分子の上のSCBの配置はそれを結晶化見込みよりも遅くするらしい。
【0129】
上記の等温結晶化された試験片は後で等温結晶化温度から加熱されて溶融転移(melting transition)を捕獲した。図2はブレンド全てについて結晶化温度の関数としてプロットされたピーク融点(T)を示す。図2には、結晶化温度増大によるTの体系的増大が明白に証明されている。理論的に拘束するつもりはないが、より厚いそしてより完全な板状結晶はより高い温度(より低い過冷却)で形成されたようであり、それはより高い観察融点に言い換えられる。与えられた熱履歴については、シリーズ−2ブレンドのTはシリーズ−1またはシリーズ−3どちらのブレンドのそれよりも、これらブレンドがそれらのMWDおよび平均SCB含量の点でかなり対等であった場合でさえ、終始一貫して低かった。
【0130】
更に、比較のシリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドについては、Tは分子量の増大と共に増大した。Tは主として、存在した板状結晶の平均厚さの関数であるので、やはり理論的に拘束するつもりはないが、シリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドについての分子量をもって増大するTは長い線状分子の結晶化過程中のより少ない中断(fewer interruptions)によって説明できる。しかしながら、最も長い分子に沿ってSCBをもったシリーズ−2ブレンドは結晶化過程中に多数の中断を体現するらしい。やはり、理論的に拘束するつもりはないが、結晶格子から排斥されなければならないこれらSCBが結晶増粘過程(crystal thickening process)を中断し、従って、平均板状厚さを低下させるということが考えられる。多分、この中断はSCBをもつ分子のより遅い結晶化反応速度論の原因にもなるらしい。
【実施例8】
【0131】
本発明の代表的な発明ポリマーブレンドおよび比較ポリマーブレンドの引張特性
当該ブレンド類の引張特性は圧縮成形プラック(plaques)を使用しそこからドッグボーン(dog-bone)試験片を型押して調べて。瞬間引張特性すなわち弾性率、降伏応力および降伏歪は密度または結晶化度にほとんど完全に依存することが判明した。極限の性質(破断応力および破断歪)は結晶化度および分子量の両方に依存することが知られている。ここでは、PEの極限引張特性に対しての、SCB分布によって与えられる影響が立証される。図4は組成物の関数としてプロットされたブレンドの破断応力および破断歪を示す。破断応力は初期には分子量によっていくらか増大する;しかしながら、各シリーズの中の最も高い分子量では、破断応力がいくらか減少している。理論的に拘束するつもりはないが、この、破断応力−対−ブレンド組成における、極大は、分子量と結晶化度の間の競合効果に起因するであろう。注目すべき興味ある特性は、シリーズ−2ブレンドについての破断応力がシリーズ−1ブレンドおよびシリーズ−3ブレンドのそれよりも、MWDおよび平均SCB含量においては似ているにもかかわらず、終始一貫して実質的により高い、ということである。シリーズ−2ブレンド類ついての破断応力は、それらが他の2組のブレンド類の中のそれらの対向品に比べて平均的により結晶性でないにもかかわらず、実質的により高いということも重要である。シリーズ−2ブレンドについての破断応力は高いが、それらの破断応力は他のブレンドのそれよりも終始一貫してかなり低い。従って、極限引張特性はSCB分布プロフィールに強く依存することが気づかされる。長い分子に沿ってのSCBの配置は結晶化反応速度論を遅らせ、そしてその結果、タイ−分子濃度(tie-molecule concentration)を、半結晶質構造が破断前に実質的により高いレベルの応力に耐える能力を可能にするように、十分に増大させる。すなわち、PEの最も長い分子上に多少のSCBを配置することは有意により高い分子量のポリマーの引張特色を生じ、その他は全て等しい。更には、3組のブレンドシリーズ間の結晶化度および分子量の相違にもかかわらず、SCB分布がPEの極限引張特性に対して最も強い影響を及ぼすように見える。
【0132】
図5は荷重−対−伸び(load versus extension)としてプロットした原引張曲線(raw tensile curves)を示す。低い歪における直線の弾性領域(linear elastic region)の後には、負荷のピークが降伏点の付近にはっきり見られる。負荷は降伏後に降下しそしてその後に負荷の平坦域(plateau)が続く。この平坦域中に、材料は降伏後の回復不能変形(non-recoverable deformations)を受けるようであり、それは板状結晶の分解(destruction)と再形成(re-formation)を伴う。有意に高い歪においては、荷重−変位曲線(load-displacement curve)の勾配の明瞭な増大がはっきり見える。この勾配の増大は通常、「歪−硬化」の着手に関連づけられる。歪−硬化が起こり始めるところの伸びがポリマーのMWDにわたるSCB分布に明白に依存することは注目される。特に、歪−硬化の着手はより長い鎖の上に配置されたSCBをもつそれらポリエチレンでは有意により低い伸びにおいて起こる。更には、歪−硬化の着手は分子量の増加と共に僅かにより低い伸びにおいて起こることも注目される。従って、シリーズ−2ブレンドの破損(failure)前に高荷重に耐える能力は歪−硬化の早い着手の結果であることが注目される。自然延伸比(natural draw-ratio)とも称されるこの歪−硬化の着手はポリマー製品の耐荷力(load-bearing capability)に影響すると報告されているが、本発明の一態様はPEの歪−硬化特性と分子構成(molecular architecture)との間の関係である。
【実施例9】
【0133】
樹脂の延性−脆性転移温度(Ductile-Brittle Transition Temperature)(Tdb)測定値
室温で測定されたレザーノッチ付きシャルピー衝撃エネルギーはポリマーの固有破壊靭性(inherent fracture toughness)の良好な測定を提供する。温度が有意に低いときには試験片破損モードが「延性」から「脆性」に変化するだろうから、同じシャルピー試験(ASTM F2331)を多数の温度で行った。この破損モード変化が起こる温度を延性−脆性転移温度(Tdb)と称する。Tdbは圧力管用途に関連するもう一つの物理的性質であり、より低いTdbが望ましい。第6表は発明組成物および比較組成物についてのTdbデータを例証している。
【0134】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】CP−1高分子量成分樹脂の分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分布を説明するグラフである。この樹脂はシリーズ−2発明樹脂の高分子量成分として使用される。
【図2】発明ポリマーブレンド類と比較ポリマーブレンド類について結晶化温度に関して等温結晶化発熱量のピーク位置(tpeak)を説明する比較グラフである。
【図3】発明ポリマーブレンド類および比較ポリマーブレンド類について結晶化温度の関数としてプロットしたピーク融点(T)のプロットである。
【図4】組成物に関して発明ポリマーブレンド類と比較ポリマーブレンド類についての破断応力および破断歪の比較グラフを提供する。
【図5】荷重−対−伸びとしてプロットした本発明の発明ポリマーブレンド類および比較ポリマーブレンド類についての原引張曲線のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分
を含む組成物。
【請求項2】
高分子量成分のエチレン共重合体が更に250〜1,000kg/モルのM分子量範囲を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項3】
高分子量成分のエチレン共重合体が更に275〜800kg/モルのM分子量範囲を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項4】
高分子量成分のエチレン共重合体が更に300〜600kg/モルのM分子量範囲を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項5】
骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数が5〜7である、請求項1の組成物。
【請求項6】
骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数が6である、請求項1の組成物。
【請求項7】
組成物が45〜75重量部の高分子量成分と55〜25重量部の低分子量成分を含む、請求項1の組成物。
【請求項8】
組成物が50〜60重量部の高分子量成分と50〜40重量部の低分子量成分を含む、請求項1の組成物。
【請求項9】
高分子量成分がエチレンと3〜12個の炭素原子を有するモノ−1−オレフィンコモノマーとの共重合体を含む、請求項1の組成物。
【請求項10】
高分子量成分のエチレン共重合体が更に2.5以下のM/Mを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項11】
高分子量成分のエチレン共重合体が300〜600kg/モルのM分子量範囲において骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数5〜7を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項12】
低分子量成分のエチレン単独重合体または共重合体が25〜60kg/モルのMを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項13】
低分子量成分のエチレン単独重合体または共重合体が30〜50kg/モルのMを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項14】
組成物が更に、流動学的に有意に長い枝の低量を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項15】
組成物が30以下のM/Mと10以下のM/Mを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項16】
組成物が18以下のM/Mと5以下のM/Mを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項17】
更に、1.5Jより大きい室温シャルピー衝撃靭性と0.94g/cc以上の密度を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項18】
更に、2Jより大きい室温シャルピー衝撃靭性と0.94g/cc以上の密度を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項19】
更に、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値1000時間以上を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項20】
更に、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値3000時間以上を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項21】
更に、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値5000時間以上を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項22】
更に、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値6000時間以上を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項23】
更に、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値6000時間以上と、0.94g/cc以上の密度を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項24】
更に、2Jより大きいシャルピー衝撃靭性と、初期負荷3.8MPaにおける高応力PENT値6000時間以上を特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項25】
更に、1.5×10パスカル秒以下のηを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項26】
更に、1×10パスカル秒以下のηを特徴とする、請求項1の組成物。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項の組成物を含む物品。
【請求項28】
物品がパイプ、容器、家庭用品、フィルム、フィルム製品、ドラム、燃料タンク、ジオメンブレン、またはライナーである、請求項1〜26のいずれか一項の組成物を含む物品。
【請求項29】
請求項1〜26のいずれか一項の組成物を含むPE−100パイプ。
【請求項30】
請求項1の組成物を溶融状態でダイから押し出してPE−100パイプを形成しそして該パイプを冷却することを含む、PE−100パイプ製造方法。
【請求項31】
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分45〜75重量部;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分55〜25重量部
を合わせることを含む、組成物製造方法。
【請求項32】
流体エチレン組成物を押し出すことを含むポリマーフィルム製造方法であって、前記組成物が、
a)3.5以下のM/Mと、分子量分布にわたって実質的に一定の短鎖枝分れ(SCB)プロフィールと、骨格炭素原子1000個当りの短鎖枝(SCB)数4〜8を特徴とするエチレン共重合体を含む高分子量成分;および
b)15〜75kg/モルのMを特徴とするエチレン単独重合体または共重合体を含む低分子量成分
を含む、前記ポリマーフィルム製造方法。
【請求項33】
高分子量成分および低分子量成分を、単一の重合反応器の中で二重触媒を用いて触媒作用で重合することを含む、請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項34】
高分子量成分および低分子量成分を二重反応器の中で触媒作用で重合することを含む、請求項1の組成物を製造する方法。
【請求項35】
二重反応器が直列で操作される、請求項34の方法。
【請求項36】
二重反応器が並列で操作される、請求項34の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−535612(P2007−535612A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511026(P2007−511026)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/014877
【国際公開番号】WO2005/108484
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(502303175)シェブロン フィリップス ケミカル カンパニー エルピー (42)
【Fターム(参考)】