説明

圧力調整弁

【課題】排出側からガス流入が可能な圧力調整弁を提供する。
【解決手段】 二次圧を受ける受圧面を備えた第1のピストン5と、弁体4と、ピストン5と弁体4とを接続する接続部材6を備え、減圧作動中には、接続部材6を介して、ピストン5と弁体4とが一体として駆動する圧力調整弁1において、接続部材6の挿脱部61がピストン5の挿脱穴54に挿脱自在に挿入されており、二次圧室25に形成された排出口251側からガスが送入された場合、挿脱部61が挿脱穴54から弁体4の方向へ移動し、弁体4がピストン5から離れて開閉口231を開放する。この弁体4の移動により、排出側からのガスの送入が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力調整弁に係り、詳しくは、排出側からのガス送入が可能な圧力調整弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、消火設備を有する建築物などにおいては、不活性ガスなどの消火用のガスを、例えば火災が発生しているような消火対象領域に噴射して、消火を行う消火設備が設けられている。
このような消火設備では、消火用のガスを大量に貯蔵しておく必要があり、貯蔵区域に大量の貯蔵用ボンベを配置しなければならない。一方、このような施設は、常時使用されるものではなく、貯蔵区域は極力狭くしたい要請がある。
【0003】
このため、貯蔵用ボンベに貯蔵されるガスのガス圧を高くし、ボンベの数を減らす構成が採られている。ボンベ内のガス圧を高くすると、消火作動が開始された時のガスの流出圧も高くなり、ガスを導く配管についても、高いガス圧に耐え得るものが要求され、コスト高となるため、ガス圧を減圧する圧力調整弁が取り付けられている。上記圧力調整弁は、下記特許文献1に示されているように、内蔵されているスプリングによる圧力と、一次圧とのバランスによって、二次圧の値が決定される方式のものと、スプリングの変わりに、基準ガス圧が加えられ、この基準ガス圧の値によって、二次圧の値が決定される方式のものが存在する。
【特許文献1】実用新案登録第3072106号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、不活性ガスを放出する消火設備においては、ガスを貯蔵するボンベを収納するスペースが必要となる。しかし、消火設備は通常使用されない設備であり、収納スペースは、小さいことが好ましく、配管やその他の附帯設備も、コンパクトであることが要求される。また、火災などを鎮火させるために一旦ガスを放出してしまうと、空のボンベにガスを充填する作業が必要となるが、充填するための附帯設備も小型であることが望まれる。
【0005】
基準ガス圧により二次圧の値を定める方式の圧力調整弁では、基準ガスのための配管やボンベが必要となり、設備の小型化を図るための障害となる。また、上記特許文献1に記載されているように、スプリングを用いる方式のものは、ガスを充填するための充填口が別個に設けられ、充填用の管路を別個に設ける必要があった。
つまり、何れの方式によっても、消火ガス用の配管の他に、配管設備を設ける必要があるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、排出側からガス流入が可能な圧力調整弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、以下の本発明によって達成される。
(1)一次圧側から流入する高圧ガスを二次側へ減圧させて排出する圧力調整弁であって、
ガス流通路中に取り付けられる本体と、
一次圧側に開口する開口部と、
前記開口部に連通する弁室と、
二次圧側に開口する排出口と、
前記排出口に連通する第1の二次圧室と、
前記弁室と第1の二次圧室との間を連通する開閉口と、
前記弁室内に設けられ、前記開閉口を塞ぐ閉位置と、開閉口から離れた開位置との間で移動可能な弁体と、
前記排出部内に臨む受圧面を有し、気密状態を維持しつつ往復動自在に設けられた移動体と、
前記弁体と前記移動体との間に設けられ、両者間の押圧力を伝達する接続部材とと、
前記弁体が開位置へ移動する方向へ、前記移動体を付勢する第1の付勢部材とを有し、
前記弁体は、調圧作動状態における前記弁体と前記移動体との間隔よりも、離れた領域の範囲内で、前記弁体が往復動自在に構成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【0008】
(2) 前記接続部材は、前記移動体に対して出没自在に接続されている上記(1)に記載の圧力調整弁。
【0009】
(3) 前記弁体に構成され、前記弁室側に設けられた挿入孔に挿入される挿入部を有し、前記挿入部と前記移動体は、同一軸線上を移動するものである上記(1)又は(2)に記載の圧力調整弁。
【0010】
(4) 前記挿入部と挿入孔とによって形成された第2の二次圧室と、
前記接続部材と前記弁体内を挿通し、一端が第1の二次圧室内に、他端が第2の二次圧室内に開口する連通路とを備えている上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の圧力調整弁。
【0011】
(5) 前記弁体を閉位置へ向けて付勢する第2の付勢部材を有する上記(1)〜(4)のいずれか1に記載の圧力調整弁。
【0012】
(6) 第1の付勢部材を圧縮し、前記弁体を開位置へ移動させる起動手段を有する上記(1)〜(5)のいずれか1に記載の圧力調整弁。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の本発明によれば、第1の二次圧室が一次圧となると、移動体の受圧面に一次圧が作用して、移動体が後退する。これにより、弁体を支える接続部材が後退し得る状態となり、開閉口に流入するガス圧により弁体が閉位置に移動する。そして、第1の二次圧室に一次圧側からのガスが流入しなくなり、第1の二次圧室のガス圧が低下する。このガス圧の低下により、第1の付勢部材の付勢力によって、移動体は弁体の方向へ押し出され、接続部材を介して、弁体は開位置へ移動させられる。弁体の開位置への移動によって、一次圧側からガスが流入し、二次圧室が一次圧となる。この繰り返しにより、圧力調整弁の圧力調整作用が発揮される。そして、排出口側からガスを送り込む際には、移動体の位置に関わらず、弁体は開位置に押し出され、開放状態が維持されるので、ガスは、第1の二次圧室から弁室へと流れ続けることができる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、接続部材が移動体に対して出没自在に接続されているので、組立てが容易となる。移動体自体が弁体の往復動を支持する支持部として機能し、弁体の動きをより安定的に補助することができる。
請求項3に記載の本発明によれば、さらに、弁室側に形成された挿入孔によって、挿入部を介して弁体が支持されているので、弁体単体での往復動をより安定させることができる。
【0015】
請求項4に記載の本発明によれば、弁室側に第2の二次圧室を設けることで、二次圧室の圧力を、弁体が閉位置に復帰する力として用いることができる。このため、弁体を確実に閉位置に復帰させることができ、圧力調整弁としての作用を確実に発揮させることができる。
請求項5に記載の本発明によれば、前記弁体を閉位置へ向けて付勢する第2の付勢部材を設けることで、この付勢力を、弁体が閉位置に復帰する力として用いることができる。このため、弁体を確実に閉位置に復帰させることができ、圧力調整弁としての作用を確実に発揮させることができる。
【0016】
請求項6に記載の本発明によれば、第1の付勢部材を圧縮し、前記弁体を開位置へ移動させる起動手段を設けることにより、高圧ガス容器の調圧弁と、開放弁の両方の機能を持たせることができる。つまり、起動手段により作動させるまでは、閉じ状態を維持し、起動手段により作動させられることにより開放され、容器内ガスを排出すると同時に、排出されるガスを、所定のガス圧に調整する調圧弁として作用させることができる。また、排出後は、排出口からガスを送入することができるので、排出口を充填口として利用することができ、充填口を別に設ける必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適実施形態について、添付図面に基づいて、詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の圧力調整弁である減圧弁1の側面断面図である。この実施形態の減圧弁1は、消火設備における不活性ガスの高圧容器又はその近傍に装着され、消火作動時に高圧容器内の高圧ガスを、各配管の先端に設けられた噴射ノズルまで送り届けるため、容器内圧(一次圧)を、ノズル噴射に必要とされるガス圧(二次圧)へ減圧する場合に用いられるものである。
【0019】
減圧弁1は、本体2と、蓋体3と、弁体4と、移動体である受圧ピストン5と、弁体4と受圧ピストン5とを接続する接続部材6と、第1の付勢部材であるスプリング7とを備えている。本体2は、第1部材2aと、第2部材2bとの端部を螺合することにより構成されている。第1部材2aは、消火用の不活性ガスが貯蔵されているガスボンベに接続される接続部21と、弁体等を収容する収容部22と、収容部22の開口内壁に形成された雌ネジ部221とを有している。接続部21の先端面には、ガスボンベ内に臨む複数の開口部211が形成され、各開口部211は、それぞれ形成された流入路212を介して、収容部22に連通している。接続部21の周面には、ガスボンベに螺合される雄ネジ部213が形成されている。
【0020】
収容部22の底部には、弁室220を形成するための内部材222が挿入されている。収容部22の底面と内部材222の内側面によって弁室220が形成される。
【0021】
内部材222は、収容部22の底部内壁に螺入され、内側に弁体4を摺動自在に収納する。内部材222の一端は開口して、収容部22の底面に当接し、内側に流入路212の端部開口が接続されている。内部材222の他端には、隔壁23が形成され、隔壁23の中央には開閉口231が形成されており、開閉口231の周端部には、弁室220側に隆起した弁座232が形成されている。隔壁23の外周面と、収容部22の内壁との間には、シール材であるOリング233が介挿され、弁室220の気密性を保っている。
【0022】
弁室220の底部中央には、挿入穴223が、本体2の軸線上に形成されており、挿入穴223には、弁体4の中心において軸方向に形成された挿入部41が出没自在に挿入されている。挿入部41の外周面と挿入穴223の内壁との間には、シール材としてのOリング411が介挿されている。このOリングによって、挿入部41は挿入穴223に対して気密状態を維持しつつ、移動可能に構成される。即ち、挿入部41と挿入穴223は、ピストンとシリンダの関係となる。挿入部41の先端の受圧面412と挿入穴223の内壁によって、第2の二次圧室43が画成される。受圧面412には、連通路42の一端である開口421が形成されている。
【0023】
弁体4は、開閉口231に押し当てられ、弁室220から開閉口231へのガス流入を止める閉位置と、開閉口231から離れて、開閉口231へのガス流入を許容する開位置との間で移動自在に構成されている。弁体4の開閉口231に対向する面には、シール材44が埋設され、弁体4が閉位置にある場合には、弁座232にシール材44が当接し、ガスの流通を阻止する。弁体4と弁室220の底面との間には、第2の付勢部材である圧縮スプリング45が介挿され、この圧縮スプリング45により、弁体4は開閉口231の方向へ付勢されている。
【0024】
図2に示されているように、弁体4は平面視で矩形に形成され、その4つの頂点部46において、弁室220の内壁に摺接する。弁体4と弁室220の内壁の間には、隙間40が形成され、この隙間40を介して一次圧側のガスが、開閉口231に流入する。このように、弁体4は、挿入部41が挿入穴223で往復動自在に支持され、また、弁体4自体が、弁室220の内壁によって案内される構成となっており、これら挿入穴223と弁室220の内壁とによって、弁体4の閉位置と開位置との間での往復動を滑らかにし、かつ適正な姿勢を維持しつつ移動できるように構成されている。
【0025】
収容部22の開口内壁に形成された雌ネジ部221には、第2部材2bの一端が螺入されており、第2部材2bの他端には、蓋体3が螺合されている。第2部材2bの一端面と、収容部22の間には、受け部材24が介挿されており、受け部材24の中央には、シリンダ部241が形成され、受け部材24と収容部22の内壁との間には、シール材としてのOリング242が介挿されている。上記隔壁23と収容部22と受け部材24とによって、第1の二次圧室25が画成される。第1の二次圧室25と弁室220とは、隔壁23に形成された開閉口231に連通する流通路230により連通している。
【0026】
また、第1の二次圧室25の側面には、本体2に形成された孔によって排出口251が設けられており、排出口251の外側には、排出ラインを接続する接続部252が設けられている。接続部252は、内周に雌ネジ部を形成することにより構成される。
【0027】
受け部材24のシリンダ部241には移動体である受圧ピストン5の挿入部51が挿入されている。受圧ピストン5の外周面とシリンダ部241の内周面との間には、シール材としてのOリング52が介挿されており、受圧ピストン5の挿入部51は気密状態を維持しつつ、シリンダ部241内を往復動可能に構成されている。
【0028】
挿入部51の先端面は、第1の二次圧室25内のガス圧を受ける受圧面53として作用する。受圧面53の中心部には、挿脱穴54が形成されており、この挿脱穴54には、接続部材6の一端に形成された挿脱部61が挿脱自在に挿入されている。
【0029】
挿脱部61の基端には、挿脱穴54の内径よりも大きな径を有する当接部62が形成され、挿脱部61が挿脱穴54に対して、所定深さ以上に没しないように構成されている。接続部材6の他端は、弁体4の中央部に接続されており、弁体4と受圧ピストン5とを接続している。この接続部材6により、弁体4と受圧ピストン5は、所定の距離を維持しつつ、接続部材6に対して圧縮力を加えつつ移動する際には一体として移動し得る状態となり、相互に離れる方向に移動する際には、別々に移動し得る状態となる。換言すると、当接部62が受圧面53に当接している際の受圧ピストン5と弁体4との距離(作動状態における距離)以上に、両者は接近することはできないように構成され、該作動状態における距離よりも離れる方向に移動する場合には、挿脱部61が挿脱穴54から完全に抜け出ない範囲で、相互に干渉されずに往復移動可能となる。
【0030】
接続部材6内には、既述の連通路42が形成され、当接部62の近傍において、開口422が形成されている。開口422の形成位置は、弁体4の位置(開位置又は閉位置)にかかわらず、常時第1の二次圧室25内に位置する場所に形成されている。この、連通路42によって、第1の二次圧室25と第2の二次圧室43が連通し、両者のガス圧が等しくなる。
【0031】
第2部材2bの一端には、受圧ピストン5を収容するピストン収容部261が形成され、該ピストン収容部261には、受圧ピストン5の外周径より小さく形成された内径を有する段部261aが設けられている。受圧ピストン5は、受け部材24と、段部261aの間で往復動する。また、第2部材2bの他端には、ピストン収容部262が形成され、スプリング受ピストン27が往復動自在に挿入されている。スプリング受ピストン27の外周面とピストン収容部262の間には、シール材とてのOリング271が介挿され、気密状態を維持されている。
【0032】
該ピストン収容部262には、スプリング受ピストン27の外周径より小さく形成された内径を有する段部262aが設けられている。スプリング受ピストン27は、蓋体3と段部262aの間で往復動する。スプリング受ピストン27と蓋体3との間には、起動圧室32が画成される。この起動圧室32には、起動ガスを供給する供給口31が連通している。供給口31には、起動ガス圧のガスを充填した容器が、開閉弁等の流通制御機構を介して接続されている。ガス放出を開始する場合には、起動ガスが供給口31を介して起動圧室32に供給され、スプリング受ピストン27が、段部262aに押し付けられる。このように、起動ガスを供給する容器、供給口31、起動圧室32、スプリング受ピストン27、段部262aによって、起動手段が構成される。
【0033】
ピストン収容部261、262の間にはスプリング収容部28が形成され、該スプリング収容部28内には、受圧ピストン5とスプリング受ピストン27との間に、介挿されたスプリング7が収容されている。スプリング7は、受圧ピストン5とスプリング受ピストン27とを離す方向に付勢力を作用させる。
以上のような構成において、受圧ピストン5、スプリング受ピストン27、接続部材6、弁体4、挿入部41は、同一軸線上に配置され、該同一軸線上を往復動可能に構成されている。
【0034】
なお、本体2には、圧力計を接続する計器接続部282を備え、該接続部282は、通路281を介して弁室220に連通している。通路281には、開閉弁283が設けられている。容器内のガス圧を計測する場合、接続部282に計器を接続し、開閉弁283を開けることにより、計器にガス圧を導入し、容器内圧を計測することができる。
【0035】
本発明の作用について説明する。図3は、消火設備における、高圧ガス容器に不活性ガスが充填された状態(待機状態)を示すものである。一次圧側の開口部211からは、一次圧ガスが流入し、弁室220は一次圧となっている。従って、弁体4は、一次圧P1のガスによって、開閉口231に押し付けられた状態となっており、ガスの流出は止められている。この時、接続部材6により、受圧ピストン5は、スプリング7を圧縮する方向に押し込まれた状態であり、スプリング7の復元力よりも、一次ガス圧による弁体4を抑える力が大きい状態である。
【0036】
高圧ガス容器から不活性ガスを放出する場合には、起動圧室32に起動ガス容器から所定圧力(P0)のガスを供給する。起動ガスの供給によって、スプリング受ピストン27が、段部262aに押し付けられ、スプリング7が待機状態における圧縮量にくらえて、さらに圧縮される。起動ガス容器から加えられる起動ガスは、常時起動圧室32に加わった状態が維持され、減圧作動中は、スプリング受ピストン27は、段部262aに接触した状態に維持される。具体的には起動ガス供給源と起動圧室32の間に逆止弁などの逆流抑止手段を位置し、起動圧室32内の起動圧を維持する構成を採ることができる。
【0037】
このスプリング7の変形によって、受圧ピストン5に作用するスプリング7の付勢力が増し、弁体4に加わっている一次ガス圧による力よりも、スプリング7の付勢力が大きくなる。スプリング7の付勢力は、受圧ピストン5と接続部材6を介して弁体4に伝わり、弁体4を開位置へ押し出す。
【0038】
図4は、起動ガスの供給により開放された減圧弁1の状態を示すものである。弁体1が開位置に移動することで、容器内のガスは、開閉口231、流通路230を通って、第1の二次圧室25に流入し、第1の二次圧室25内と弁室220内の各ガス圧は等しくなる。このとき、第2の二次圧室43のガス圧も弁室220と等しくなっている。このとき、受圧ピストン5の受圧面53と、弁体4の挿入部41の受圧面412に、一次圧のガス圧が作用し、弁体4と受圧ピストン5を押し戻す力(即ち、スプリング7を圧縮する力)が作用する。そして、受圧ピストン5は、スプリング7を圧縮する方向に押し戻され、弁体4も受圧面412に作用する圧力と、スプリング45の作用により、閉位置に戻される。
【0039】
図5は、起動後に弁体4が閉位置に戻された状態を示すものである。開閉口231が閉じられると、第1、第2の二次圧室25、43のガスが排出口251から排出されて、圧力が低下し、再びスプリング7の付勢力により弁体4が開位置へ押し込まれ、開閉口231が開放される(図4の状態)。
このように、図4と図5の状態を繰り返すことにより、容器内のガス圧である一次圧は、所望の圧力(二次圧)に減圧されて排出口251から排出される。一次圧と二次圧の関係は、スプリング7の弾性係数と、Oリング52とOリング411の径によって決められる。即ち、Oリングの径によって受圧面の面積が規定され、この面積によって、弁体4を閉位置へ押し付ける力が決定される。受圧面53、412に加わる荷重に釣り合うようにスプリング7の荷重を変更することで二次圧力値を変更する。
【0040】
次に、高圧ガス容器にガスを充填する場合の作用について説明する。空の容器にガスを充填する場合には、排出口251側からガスを送入する。この場合、二次圧室25の圧力が弁室4内の圧力よりも高くなり、受圧面412の面積に対して、流通路230の断面積を十分広く採ることにより、弁体4を開位置に押し出す力が生じ、開口部231は開かれる。充填中は、ガス流が、第1の二次圧室25側から弁室220へ流れているので、弁体4は、開位置へ押し出された状態で維持され、ガスの充填が行われる。このとき、接続部材6は、挿脱部61が挿脱穴54から露出し、弁体4のみが開位置に移動した状態となっている。このように、弁体4が、受圧ピストン5から離れて、単独で開位置へ移動できる構成とすることで、排出口251から開口部211へのガスの送入が可能となる。
【0041】
ガスの充填が完了すると、第1の二次圧室25から弁室220へのガスの流れは止まるので、弁体4は、スプリング45の付勢力により閉位置に戻され、図3に示される待機状態となる。スプリング45を設けない場合にも、第1の二次圧室25側の圧力が低くすることにより、流出するガスの流れにより弁体4は閉位置に復帰することができる。
なお、第2の二次圧室43は、二次圧室の圧力によって、弁体4を閉位置へ復帰させる力と、スプリング7の付勢力との力のバランスを取るために設けられており、所望される二次圧値に応じて、第2の二次圧室43を設けない構成を取ることもできる。
【0042】
第2の二次圧室43又はスプリング45の一方が設けられていてもよく、或は、第2の二次圧室43及びスプリング45のような、弁体4を閉位置に復帰させる構成がなくてもよい。この場合には、1次圧ガスが、弁室4から第1の二次圧室25に流入際に、ガス流により弁体4が閉位置へ復帰させられる。
【0043】
本発明は、上記説明した消火施設の高圧ガス容器に用いる場合に限られず、他の構成においても用いることができる。即ち、圧力調整弁に対して、逆方向からガスを送り込むことが必要な構成において用いることができる。例えば、特定の高圧ガス容器から、所定の圧力に減圧されたガスを取り出す場合において、本発明の圧力調整弁を用いることができる。つまり、ガスが使い果たされた空の容器に対して、高圧ガスを再充填する場合に、充填口を別個に設けることなく、取り出すガスの流路を利用して、ガス充填することが可能となる。
【0044】
具体的には、燃料電池に水素ガスを供するシステムにおいて、高圧燃料ガス容器から所定圧力に減圧してガスを取り出す場合の減圧弁に用いることができる。この場合には、起動手段を設けず、蓋体3に形成された供給口31は不要となり、スプリング7は、蓋体3(本体2側)と受圧ピストン5の間に介挿され、スプリングは作動時の状態に圧縮されて介挿されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の減圧弁の無加圧状態を示す側面全体断面図である。
【図2】本発明の減圧弁の弁室部分における全体平面図である。
【図3】本発明の減圧弁の待機状態を示す側面全体断面図である。
【図4】本発明の減圧弁の起動時状態を示す側面全体断面図である。
【図5】本発明の減圧弁の作動状態を示す側面全体断面図である。
【図6】本発明の減圧弁のガス充填状態を示す側面全体断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 減圧弁
2 本体
211 開口部
220 弁室
231 開閉口
25 第1の二次圧室
251 排出口
3 蓋体
4 弁体
5 受圧スプリング
53 受圧面
6 接続部材
7 スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次圧側から流入する高圧ガスを二次側へ減圧させて排出する圧力調整弁であって、
ガス流通路中に取り付けられる本体と、
一次圧側に開口する開口部と、
前記開口部に連通する弁室と、
二次圧側に開口する排出口と、
前記排出口に連通する第1の二次圧室と、
前記弁室と第1の二次圧室との間を連通する開閉口と、
前記弁室内に設けられ、前記開閉口を塞ぐ閉位置と、開閉口から離れた開位置との間で移動可能な弁体と、
前記排出部内に臨む受圧面を有し、気密状態を維持しつつ往復動自在に設けられた移動体と、
前記弁体と前記移動体との間に設けられ、両者間の押圧力を伝達する接続部材とと、
前記弁体が開位置へ移動する方向へ、前記移動体を付勢する第1の付勢部材とを有し、
前記弁体は、開位置への移動時における前記弁体と前記移動体との間隔よりも、離れた領域の範囲内で、前記弁体が往復動自在に構成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記接続部材は、前記移動体に対して出没自在に接続されている請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記弁体に構成され、前記弁室側に設けられた挿入穴に挿入される挿入部を有し、前記挿入部と前記移動体は、同一軸線上を移動するものである請求項1又は2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
前記挿入部と挿入孔とによって形成された第2の二次圧室と、
前記弁体内を挿通し、一端が第1の二次圧室内に他端が第2の二次圧室内に開口する連通路とを備えている請求項1〜3のいずれか1に記載の圧力調整弁。
【請求項5】
前記弁体を閉位置へ向けて付勢する第2の付勢部材を有する請求項1〜4のいずれか1に記載の圧力調整弁。
【請求項6】
第1の付勢部材を圧縮し、前記弁体を開位置へ移動させる起動手段を有する請求項1〜5のいずれか1に記載の圧力調整弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−31453(P2006−31453A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210115(P2004−210115)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(591148369)株式会社ハマイ (9)
【Fターム(参考)】