説明

圧力調理器

【課題】調圧機構と弁機構とを有する圧力調理器において、調圧機構が閉塞した場合に使用者に報知する報知機構を製造コスト、設計変更の手間を大幅に増加させることなく設ける。
【解決手段】上端開口の鍋10と第1貫通孔63,64および第2貫通孔66を有する蓋60とを有し、第1貫通孔63,64を囲繞するように蓋60の外面に設けられた調圧機構68,95および第2貫通孔66を囲繞するように蓋60の外面に設けられた弁機構203を備える圧力調理器において、蓋60の鍋10側に、第2貫通孔66と同軸に配置された流出孔132を含む流出部125、および、該流出部125の流出孔132と軸方向に間隔をあけて前記流出孔132と同軸に配置された流入孔160を含み、流出部125との間に発音空間を形成する流入部157を有する発音体を設け、鍋10の内部が設定圧力より高い異常圧力になると、発音体が音を発するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調理の効率を上昇させるために、内部と外部とを連通する排気通路に調圧弁を設け、この調圧弁の開度を調節することにより内部の圧力を制御して大気圧より高い圧力で調理する圧力調理器が知られている。
【0003】
この圧力調理器の前記排気通路には、調圧弁が閉塞した状態のまま正常に作動しなくなり容器内の圧力が設定圧を超えた場合に作動するリリーフ弁を備えている。このリリーフ弁によって内圧が異常な圧力のまま放置されるのを回避できるが、万一、調圧弁とリリーフ弁の両方が閉塞することも考えられる。この状態を使用者に知らせるために、圧力調理器に警報アラームを設けることができるが、圧力調理器の制御手段に追加する場合、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させてしまう。
【0004】
一方、特許文献1には、調理物が沸騰状態であることを報知する笛吹き機構を有する加熱調理器が開示されている。この加熱調理器の加熱容器の開口を閉塞する蓋の持手部には、その中心部を軸方向に貫通するように筒抜け孔が形成されている。笛吹き機構は、筒抜け孔の上部開口を覆うように持手部に回動可能に設けられている。そして、笛吹き機構には、孔が設けられている。調理物が加熱され加熱容器の内圧が上昇すると、高圧蒸気が持手部の筒抜け孔内を通って笛吹き機構の孔から外側に出ていくので、それによって笛吹き音を鳴らすようになっている。このようにして、調理物が沸騰している間、この孔の笛吹き音が継続し、加熱容器内の調理物の沸騰状態を使用者に報知する。
【0005】
しかしながら、この加熱調理器では、加熱容器内と外部とが笛吹き機構の孔を介して連通しているため、加熱容器内の圧力を大気圧より高い所望の圧力に維持することができない。また、加熱容器内が正常な範囲の加圧状態においては、笛吹き音を鳴らないようにする必要がある。したがって、前記笛吹き機構は、圧力調理器に対しては採用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−216024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、内部と外部とが調圧機構および弁機構を有する排気通路を介して連通する圧力調理器において、調圧機構が閉塞した場合に使用者に報知する報知機構を、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させることなく設けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明の圧力調理器は、上端開口の鍋と該鍋を閉塞し第1貫通孔および第2貫通孔を有する蓋とを有し、前記第1貫通孔を囲繞するように前記蓋の外面に設けられた調圧機構および前記第2貫通孔を囲繞するように前記蓋の外面に設けられた弁機構を備え、大気圧より高い設定圧力で調理する圧力調理器において、前記蓋の前記鍋側に、前記第2貫通孔と同軸に配置された流出孔を含む流出部、および、該流出部の流出孔と軸方向に間隔をあけて前記流出孔と同軸に配置された流入孔を含み、前記流出部との間に発音空間を形成する流入部を有する発音体を設け、前記鍋の内部が前記設定圧力より高い異常圧力になると、前記発音体が音を発するように構成した。
【0009】
この構成によれば、調理物の侵入により調圧機構に設けた通気孔が閉塞した場合、鍋内の高圧蒸気は、蓋の第2貫通孔から弁機構を介して外部へ移動する。その際、高圧蒸気は流入孔を通じて発音体の発音空間に流入し、流出孔を通じて発音体から流出する。これにより、高圧蒸気が発音体を通過する際に音を発することができる。したがって、調圧機構が閉塞した場合に使用者に報知する報知機構を簡易な構造とすることができ、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させることなく圧力調理器に設けることができる。
【0010】
前記弁機構は、一側が閉塞し他側が開口した筒部、および、該筒部の開口と連続し端部が前記蓋に圧接され内圧が高くなると外向きに弾性変形可能な弾性変形部を備えることが好ましい。この構成によれば、調理物の侵入により調圧機構が閉塞し鍋内の圧力値が設定圧力より高い異常な圧力値となるまで上昇すると、第2貫通孔を通して筒部の内圧も異常な圧力値となるまで上昇し、弁機構の弾性変形部が蓋から離れる外向きの方向に弾性変形する。その結果、弁機構の弾性変形部と蓋との間に隙間が形成されるので、鍋内の高圧蒸気を前記隙間から外部へと流出させることができる。したがって、鍋内の圧力値が異常な圧力値となっている場合にのみ第2貫通孔を通して外部へ向かう高圧蒸気の流れを生じさせることができ、この流れによって発音体から音を発することができる。したがって、調圧機構が閉塞した場合に使用者に報知する報知機構を簡易な構造とすることができ、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させることなく圧力調理器に設けることができる。
【0011】
前記筒部の閉塞側が圧力センサであることが好ましい。この構成によれば、筒部の閉塞側として圧力センサを使用することにより、部品点数の増加を抑制できる。
【0012】
前記第1貫通孔を囲繞するように前記蓋の前記鍋側に設けられ、前記蓋に取り付けられたフィルタベース部、および、該フィルタベース部に開閉可能に取り付けられ前記鍋内と外部とを連通するとともに調理物を通過させないフィルタ孔が形成されたフィルタ部を有するフィルタセットを備え、前記フィルタベース部に前記流出部を形成し、前記フィルタ部に前記流入部を形成することが好ましい。この構成によれば、鍋側から調圧機構、弁機構への調理物の侵入を防止するフィルタセットに発音体を一体形成でき、部品点数の増加を抑制できる。また、フィルタセットを開いて発音体を洗浄できるので発音体の内部の汚れを完全に除去することができ、鍋内が異常圧力まで上昇した場合に確実に異常圧力報知機構を作動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、調理物の侵入により調圧機構が閉塞した場合、鍋内の高圧蒸気は、流入孔を通じて発音体の発音空間に流入し、流出孔を通じて発音体から流出するので、高圧蒸気が発音体を通過する際に音を発することができる。したがって、調圧機構が閉塞した場合に使用者に報知する報知機構を簡易な構造とすることができ、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させることなく圧力調理器に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の炊飯器を示す断面図。
【図2】内蓋に配設された異常圧力報知機構を示す図。
【図3】蓋体の構成を示す斜視図。
【図4】異常圧力報知機構の拡大図。
【図5】内蓋に配設された調圧弁、リリーフ弁、および、フィルタセットを示す図。
【図6】フィルタセットの分解斜視図。
【図7】(a)はフィルタベース部の当接部を示す図、(b)はフィルタベース部の負圧防止弁収容孔の断面図。
【図8】(a)はフィルタ部を示す図、(b)はフィルタ部の軸部の断面図。
【図9】フィルタセットの干渉部を示す図。
【図10】(a)は内鍋内が通常圧力である場合の弁機構を示す図、(b)は内鍋内が異常圧力となった場合の高圧蒸気の流れを示す図。
【図11】(a)はフィルタ部を閉じた状態を示す図、(b)はフィルタ部を開いた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る圧力調理器の一例である圧力炊飯器を示す。この圧力炊飯器は、電磁誘導加熱される内鍋(鍋)10を着脱可能に収容する本体11と、該本体11に回動可能に取り付けた蓋体23とを備えている。蓋体23には内蓋(蓋)60が着脱可能に取り付けられている。また、蓋体23の内部には、内鍋10内と外部とを連通する排気通路が設けられている。この圧力炊飯器には、図2に示すように、内鍋10内が異常圧力まで上昇した状態を報知する異常圧力報知機構204が設けられている。
【0017】
本体11は、筒形状をなす胴体12と、該胴体12の下端開口を閉塞する底体13と、胴体12の上端開口を覆うように取り付けた肩体14とからなる外装体を備えている。この肩体14は、その略中央に内鍋10を着脱可能に配置するための開口部15を備え、この開口部15の正面側(図1中左側)に、蓋体23の閉塞状態を維持するための孔からなる係合受部16が設けられている。また、肩体14の開口部15には、筒状をなす内胴17と、非導電性材料からなる受け皿状の保護枠18とが配設されている。この保護枠18の下部外周面には、誘導加熱コイル19がフェライトコア20を介して配設されている。また、内胴17の外周部には、胴ヒータ21が配設されている。さらに、保護枠18には、該保護枠18を貫通して内部の内鍋10を介して調理物の温度を検出するための内鍋用温度センサ22(サーミスタ)が配設されている。
【0018】
蓋体23は、肩体14の背部に形成されたヒンジ受部に開閉(回動)可能に取り付けられ、本体11の上端開口を閉塞するものである。この蓋体23は、本体11の外装体と共に外表面材を構成する上板24と、該上板24の底を閉塞する下板27とを備えている。蓋体23は、ヒータカバー30に着脱可能に装着される内蓋60を備えている。内蓋60には、排気通路の開閉または開度調整を行う調圧弁(調圧機構)68と図5に示すリリーフ弁(調圧機構)95が設けられている。前記排気通路は、内蓋60に取り付けられた調圧弁68およびリリーフ弁95の内部、これらと後述する収容部32,36との隙間、内蓋本体61とヒータカバー30との隙間、および、後述する蒸気口ユニット26内を経た経路によって構成される。
【0019】
上板24には、その前部に蓋体23を開放操作するための操作部材25が配設されている。この操作部材25は、図示しないキックバネによって上向きに付勢されている。また、上板24の背部には、排気通路の出口を構成する蒸気口ユニット26が着脱可能に配設されている。
【0020】
図3に示すように、下板27は、肩体14の上側の凹状の窪み形状と対応する形状をなす。下板27の背部には、肩体14のヒンジ受部に軸によって回動可能に軸着されるヒンジ接続部28が設けられている。また、下板27の背部には、蒸気口ユニット26の下部に位置するように、該蒸気口ユニット26を着脱可能に接続する被接続部29が設けられている。さらに、下板27の底には、金属製のヒータカバー30を介して蓋ヒータ(図示せず)が配設されている。
【0021】
この下板27の前部には、蓋体23を本体11に対して閉塞した状態に維持する蓋ロック部材31が回動可能に取り付けられている。蓋ロック部材31は、図示しないキックバネによって図1に示す係合位置に付勢され、肩体14の係合受部16に着脱可能に係合する。蓋ロック部材31は、操作部材25が押し込まれることにより、係合受部16との係合が解除されるようになっている。
【0022】
また、下板27には、図1および図3に示すように、内蓋60に配設された調圧弁68を収容する調圧弁収容部32が設けられている。この調圧弁収容部32は、上下端を開口した筒状のもので、その上端開口には調圧弁用パッキン33が配設され、下端開口にはヒータカバー30との間をシールする調圧弁用シール部材34が配設されている。また、図3に示すように、この調圧弁収容部32の横(左側)には、リリーフ弁95を収容するリリーフ弁収容部36が設けられている。このリリーフ弁収容部36は、下端開口のドーム形状のもので、その側壁前部には駆動用開口部37が設けられ、この駆動用開口部37がリリーフ弁用パッキン38により閉塞されている。また、リリーフ弁収容部36の下端開口には、ヒータカバー30との間をシールするリリーフ弁用シール部材(図示せず)が配設されている。
【0023】
そして、下板27には、調圧弁収容部32の背面側に調圧弁68の駆動手段であるステッピングモータ40が配設されている。また、このステッピングモータ40の正面側には、その駆動力を調圧弁68に伝える押下部材41が回動可能に配設されている。押下部材41は、調圧弁用パッキン33の中心に配設された樹脂製の受部材42を介して調圧弁68を押し下げるように構成している。また、下板27には、リリーフ弁収容部36の正面側にリリーフ弁95の駆動手段であるソレノイド44が配設されている。このソレノイド44は、通電の有無により進退するロッド(図示せず)を備えている。ソレノイド44には、リリーフ弁用パッキン38を介してリリーフ弁収容部36内に位置する後述のリリーフ弁95の球状部材106を押圧する押圧部材45が配設されている。さらに、下板27には、蓋体用温度センサ(図示せず)が配設されている。
【0024】
下板27の調圧弁収容部32の正面側には、内蓋60側に突出する円筒状の連通部47が設けられている。図4に示すように、連通部47には、内鍋10内の圧力を検出する差圧式の圧力センサ46が配設されている。この圧力センサ46は、内部に圧力を検出する閉塞空間(図示せず)を有し、外部に前記閉塞空間と連通するポート52を有している。圧力センサ46のポート52は、連通部47の内部に配置されている。ポート52と後述する内蓋60の圧力センサ用貫通孔(第2貫通孔)66との間には、圧力センサ用シール部材48が配設されている。圧力センサ46の閉塞空間と内鍋10内とは、内蓋60の圧力センサ用貫通孔66を介して連通する。圧力センサ46、および、圧力センサ用シール部材48は、弁機構203を構成する。
【0025】
圧力センサ用シール部材48は、両端開口の円筒状の接続部49と、該接続部49の一方の開口と連続し端部に向かって末広がりとなるように形成された末広がり部(弾性変形部)50とを備えている。圧力センサ用シール部材48の末広がり部50は、弾性変形可能な弾性体からなっている。末広がり部50は、内鍋10の内圧が異常圧力になると変形する。末広がり部50の端部は、圧力センサ用貫通孔66を囲繞する。圧力センサ用シール部材48の接続部49と圧力センサ46とは、筒部51を構成する。末広がり部50の端部は、内蓋60に圧接されている。末広がり部50の外周面は、排気通路の内部に配置されている。
【0026】
図5に示すように、内蓋60は、金属製の内蓋本体61と蓋パッキン62とを備えている。内蓋本体61には、図6に示すように、調圧弁用貫通孔(第1貫通孔)63、リリーフ弁用貫通孔(第1貫通孔)64、負圧防止弁用貫通孔65、および、圧力センサ用貫通孔66が設けられている。調圧弁用貫通孔63、リリーフ弁用貫通孔64、負圧防止弁用貫通孔65、および、圧力センサ用貫通孔66は、それぞれ排気通路と連通する。蓋パッキン62は、内鍋10の上端開口の内周壁に密着してシールするもので、外周部に樹脂枠67を配設することにより、内蓋本体61に対して離脱不可能に装着されている。この内蓋60の内蓋本体61には、図5に示すように、下板27の調圧弁収容部32内に配置される調圧弁68、リリーフ弁収容部36内に配置されるリリーフ弁95、および、フィルタセット110が一体的に配設されている。
【0027】
調圧弁68は、弁座69、弁構造体70、および、調圧弁通気孔73を備えている。
【0028】
弁座69は、内蓋本体61の調圧弁用貫通孔63に内鍋10側から挿通されるものである。弁座69は、挿通部71と挿通部71の端部に形成されたフランジ部72とを備えている。
【0029】
挿通部71は、円筒状に形成されており、その中心には、排気通路の一部(第1の入口)となる調圧弁通気孔73が形成されている。すなわち、調圧弁通気孔73は、内鍋10内と弁構造体70とを連通する。挿通部71には、後述する弁構造体70のカバー75の係止溝91に係止する係止爪77が設けられている。挿通部71のフランジ部72側の外周部分には、シール部材78を配設するための凹溝79が設けられている。
【0030】
フランジ部72は、外径が後述するフィルタベース部120の調圧弁挿通孔123より大きくなるように形成されている。
【0031】
弁構造体70は、弁体82と、加圧用付勢機構と、開放用付勢部材80と、カバー75とを備えている。弁体82は、調圧弁通気孔73を開閉する。加圧用付勢機構は、作動受部材87と加圧用付勢部材85とを有し弁体82を下向きに付勢する。開放用付勢部材80は、弁体82を上向きに付勢する。カバー75は、弁体82を囲繞するとともに加圧用付勢機構および開放用付勢部材80を内側で装着する。カバー75の下部には、弁座69の係止爪77を係止する係止溝91が設けられている。
【0032】
このように構成した調圧弁68は、ステッピングモータ40の駆動により弁体82が開放位置に移動されると、調圧弁通気孔73を介して内鍋10内を大気圧と平衡させる。即ち、調圧弁通気孔73は、内鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積を有する。また、ステッピングモータ40の駆動により、内鍋10内を1.30atmまで加圧することが可能である。因みに、この調圧弁68による加圧可能な圧力は、ステッピングモータ40の駆動により押下部材41を介して作動受部材87を下向きに移動させる移動量を調節することにより、1.00〜1.30atmの範囲で変更可能である。
【0033】
リリーフ弁95は、弁座96、弁構造体97、および、リリーフ弁通気孔101を備えている。
【0034】
弁座96は、内蓋本体61のリリーフ弁用貫通孔64に内鍋10側から挿通されるものである。弁座96は、挿通部98と挿通部98の端部に形成されたフランジ部99とを備えている。
【0035】
挿通部98は、上端を閉塞した台形筒状をなし、内蓋本体61のリリーフ弁用貫通孔64を貫通する。挿通部98は、平坦な上端閉塞面中央に、排気通路の一部(第2の入口)となるリリーフ弁通気孔101が形成されている。リリーフ弁通気孔101は、内鍋10内と弁構造体97とを連通する。このリリーフ弁通気孔101は、内鍋10内が沸騰状態で、該内鍋10の内圧が大気圧と同等になるように排気可能な開口面積を有する。挿通部98には、後述する弁構造体97のカバー100の係止爪103を係止する係止溝102が設けられている。挿通部98のフランジ部99側の外周部分には、シール部材104を配設するための凹溝105が設けられている。
【0036】
フランジ部99は、外径が後述するフィルタベース部120のリリーフ弁挿通孔124より大きくなるように形成されている。
【0037】
弁構造体97は、球状部材106とカバー100とを備えている。そして、ソレノイド44の駆動により、押圧部材45が進出されると、内鍋10内と外部とを遮断して内鍋10内を大気圧より高い圧力に加圧可能とするものである。
【0038】
球状部材106は、リリーフ弁通気孔101を閉塞することにより、内鍋10内の空気を外部に排気するのを防止して、内鍋10内を加圧可能とする。また、押圧部材45により押圧されてリリーフ弁通気孔101上から離反されると、内鍋10の内圧を大気圧に戻す(平衡)ものである。この球状部材106は、内鍋10内の圧力が1.30atmに昇圧すると、その蒸気の圧力でリリーフ弁通気孔101上から離反するように転動する重量のものを使用している。
【0039】
カバー100は、球状部材106を収容した状態で挿通部98の係止溝102に係止爪103を組み付けることにより、弁座96を介して内蓋本体61に対して離脱不可能に装着するものである。このカバー100には、リリーフ弁収容部36のリリーフ弁用パッキン38の後側に、ソレノイド44の押圧部材45を進退可能に挿通する孔(図示せず)が設けられている。
【0040】
フィルタセット110は、排気通路の入口、すなわち調圧弁68の調圧弁通気孔73、および、リリーフ弁95のリリーフ弁通気孔101を囲繞するように配設され、内鍋10内から調圧弁通気孔73、および、リリーフ弁通気孔101への調理物の侵入を防止するものである。図6に示すように、フィルタセット110は、フィルタベース部120、フィルタ部150、バネ111、および、ロック部180を備えている。フィルタセット110には、負圧防止弁113、および、還流弁117が取り付けられる。
【0041】
図6および図7(a)に示すように、フィルタベース部120は、薄板状であり略矩形の外形を有するように形成されている。フィルタベース部120は、内蓋本体61と当接する当接部121、および、当接部121と反対側に位置する取り付け部122を備えている。
【0042】
取り付け部122には、調圧弁挿通孔123、リリーフ弁挿通孔124、フィルタベース側発音空間形成部(流出部)125、および、負圧防止弁収容孔126、ロック部材装着部127が設けられている。
【0043】
調圧弁挿通孔123は、内蓋60の調圧弁用貫通孔63の下に設けられている。調圧弁挿通孔123は、調圧弁68の挿通部71の外周と略一致する形状である。調圧弁挿通孔123の当接部121側の内周には、内フランジ部128が設けられている。調圧弁挿通孔123には、調圧弁68の挿通部71が挿通され、フランジ部72と内フランジ部128とが当接する。
【0044】
リリーフ弁挿通孔124は、調圧弁挿通孔123の左側の内蓋60のリリーフ弁用貫通孔64の下に設けられている。リリーフ弁挿通孔124は、リリーフ弁95の挿通部98の外周と略一致する形状である。リリーフ弁挿通孔124の当接部121側の内周には、内フランジ部129が設けられている。リリーフ弁挿通孔124には、リリーフ弁95の挿通部98が挿通され、フランジ部99と内フランジ部129とが当接する。
【0045】
フィルタベース側発音空間形成部125は、調圧弁用貫通孔63の前側の圧力センサ用貫通孔66の下に設けられている。フィルタベース側発音空間形成部125は、円形の凹部130、凹部130の開口縁から略直交する方向に突出する環状凸部131、および、内蓋60の圧力センサ用貫通孔66の下に設けられた流出孔132を備えている。凹部130は、後述するフィルタ部150のフィルタ側発音空間形成部(流入部)157の凹部158とにより、発音空間を形成する。フィルタベース側発音空間形成部125とフィルタ側発音空間形成部157とは、発音体を構成する。そして、発音体、内蓋60の圧力センサ用貫通孔66、および、弁機構203は、異常圧力報知機構204を構成する。
【0046】
図7(b)に示すように、負圧防止弁収容孔126は、負圧防止弁113を収容する。負圧防止弁収容孔126の開口の一部の領域には、内蓋60の負圧防止弁用貫通孔65が配置されている。
【0047】
ロック部材装着部127は、フィルタベース側発音空間形成部125と負圧防止弁収容孔126との間に設けられている。ロック部材装着部127では、後述するロック部材181の後側がバネ(図示せず)を介して連結される。ロック部材装着部127の前側の当接部121には、ガイド部136が設けられている。ガイド部136は、ロック部材181が前後方向に進退可能となるように案内する。
【0048】
フィルタベース部120の後側部分には、支持部140が左右両側に対をなすように設けられている。図2,6,7,および,9に示すように、一方の支持部140が他方の支持部140と対向する面の後ろ側の部分には、内蓋60と当接するように開いた状態のフィルタ部150の凸部152aと係合する凸部140aが設けられている。凸部140aは、内蓋60側に向かうにつれて対向する支持部140側に膨らんでいる。支持部140,140には、後述するフィルタ部150の軸部163,163を収容する大径部141が設けられている。大径部141の軸方向外側には、小径部142が設けられている。小径部142は、フィルタ部150に一部を挿入したバネ111の残りの一部を収容する。大径部141と内蓋60とにより、フィルタ部150の軸部163が回転可能に軸支される。
【0049】
図6および図8(a)に示すように、フィルタ部150は、薄板状であり略矩形の外形を有し、フィルタベース部120と略同形状に形成されている。フィルタ部150は、カバー部151と連結部152とを備えている。
【0050】
カバー部151は、フィルタベース部120の取り付け部122側にそれぞれ独立した部屋を有するように互いに区画された複数の凹部153を備えている。複数の凹部153は、調圧弁挿通孔123、および、リリーフ弁挿通孔124の両方をカバーする領域、負圧防止弁収容孔126をカバーする領域、ロック部材装着部127を収容する領域それぞれに設けられている。各凹部153の周縁はフィルタベース部120の取り付け部122と当接する。
【0051】
カバー部151の、調圧弁挿通孔123とリリーフ弁挿通孔124の間に位置する凹部153には、還流弁取り付け部162が設けられている。調圧弁挿通孔123、および、リリーフ弁挿通孔124の両方をカバーする領域と負圧防止弁収容孔126をカバーする領域の凹部153の底面には、それぞれ、調理物(例えば、雑穀類のアマランサス)を通過させないフィルタ孔156が複数設けられている。フィルタ孔156の径は1.5mmであるが、1.5mm以下としてもよい。フィルタ孔156は、内鍋10内と前記排気通路とを調圧弁68、リリーフ弁95、負圧防止弁113、および、弁機構203を介して連通する。フィルタ部150の前側の面には、フィルタベース部120に連結されたロック部180のロック部材181に係止されるフック部161が設けられている。
【0052】
カバー部151には、フィルタベース部120のフィルタベース側発音空間形成部125の下に位置するようにフィルタ側発音空間形成部157が設けられている。フィルタ側発音空間形成部157は、円形の凹部158を備えている。凹部158の内周面には、円の中心方向に向かって突出する複数のガイド部159が間隔をあけて設けられている。凹部158の底面には、流入孔160が設けられている。流入孔160は、フィルタベース側発音空間形成部125の流出孔132と同径で同軸に配置されている。フィルタ側発音空間形成部157は、複数のガイド部159を介してフィルタベース側発音空間形成部125に嵌合する。
【0053】
連結部152は、支持部140,140の間に収容される幅で、軸部163の直径とほぼ同じ厚さを有し、カバー部151から後側に延びるように形成されている。図6、図8(a)および(b)に示すように、軸部163は、連結部152の後側に設けられている。図2,8(a),および、9に示すように、軸部163の前側で隣接した連結部152の内蓋10側領域には、内蓋60と当接するように開いた状態で、フィルタベース部120の凸部140aと係合する凸部152aが設けられている。凸部152aとフィルタベース部120の凸部140aとは、フィルタ部150を開いた状態に維持する係合部を構成する。連結部152には蓋体23を開いた状態で内蓋60の下方に位置するように露受け部167が設けられている。フィルタ部150には、露受け部167と内鍋10側の空間とを連通する取り込み孔173が形成されている。フィルタ部150の外周縁に、内鍋10側に突出する集水ガイド部174が設けられている。
【0054】
バネ111は、キックバネであり、一端がフィルタベース部120に係止され、他端がフィルタ部150に係止されている。バネ111は、フィルタベース部120に対してフィルタ部150を閉方向に付勢するものである。
【0055】
フィルタベース部120の支持部140、および、フィルタ部150の連結部152、および、バネ111は、ヒンジ接続部177を構成する。フィルタセット110は、ヒンジ接続部177、ロック部180、および、前記係合部を備えることにより、フィルタ部150がフィルタベース部120に当接する閉位置とフィルタベース部120に当接しない開位置のいずれか一方となるように開閉可能である。
【0056】
ロック部180は、フィルタ部150のフック部161に係止するロック部材181とロック部材181を付勢するバネ(図示せず)とを備えている。ロック部材181は、後側がフィルタベース部120のロック部材装着部127内でバネ(図示せず)を介してフィルタベース部120に取り付けられている。ロック部材181は、前側に引き出されると前記バネ(図示せず)が収縮し、フィルタ部150のフック部161から外れるようになっている。
【0057】
負圧防止弁113は、矩形状の弾性変形可能なゴムからなっている。図7(b)に示すように、負圧防止弁113は、一部が負圧防止弁収容孔126に収容され残りの一部が内蓋60とフィルタセット110のフィルタベース部120との間で挟持されている。
【0058】
還流弁117は、矩形状の弾性変形可能なゴムからなっている。図2に示すように、還流弁117は、フィルタ部150の還流弁取り付け部162に取り付けられている。還流弁117は、フィルタ部150とフィルタベース部120の間に侵入した「おねば」を内鍋10内に還流する。
【0059】
図9に示すように、フィルタセット110のフィルタ部150には、干渉部190が設けられている。干渉部190は、フィルタセット110が開きフィルタ部150が内蓋60に当接した状態で内蓋60より外側に位置するフィルタ部150の部分(ハッチング部分)である。フィルタセット110を開いた状態で蓋体23を閉じると、フィルタ部150の干渉部190は、本体11と干渉する。
【0060】
また、蓋体23には、図3に示すように、蓋ロック部材31と本体11の係合受部16との係合状態を検出し蓋体23の開閉状態を検出する蓋状態検出部189が設けられている。
【0061】
この炊飯器には、肩体14の正面上部に、使用者が炊飯条件を入力するためのスイッチと、その選択状態や動作状態を表示する液晶表示板とを有する操作パネル201が配設されている。また、外装体と保護枠18との間には、マイコン(図示せず)が実装された制御基板(図示せず)が配設されている。このマイコン(図示せず)は、操作パネル201に配設した炊飯スイッチの操作を検出すると、液晶表示板によって設定された炊飯条件に基づいて、炊飯プログラムに従って、飯米の予熱、昇温(中ぱっぱ)、沸騰維持、2度炊き、および、むらしの各工程からなる炊飯処理を実行した後、引き続いて、炊き上げた米飯を所定温度に保温する保温処理を実行する。
【0062】
フィルタセット110を排気通路の入口に配置することにより、調理物がフィルタ部150のフィルタ孔156を通過できなくなるので、調理物が内鍋10内から調圧弁68の通気孔73およびリリーフ弁95の通気孔101に侵入し、通気孔73,101を閉塞することを防止できる。
【0063】
しかしながら、万一、調圧機構68,95が閉塞した場合、内鍋10内の圧力値が異常な圧力値(1.5atm)となるまで上昇する。そうすると、第2貫通孔66を通して筒部51の内部の圧力値も異常な圧力値となるまで上昇し、図10(a)に示す状態から図10(b)に示す状態となるように、弁機構203の弾性変形部50が内蓋60から離れる外向きの方向に弾性変形する。その結果、弁機構203の弾性変形部50と内蓋60との間に隙間が形成されるので、内鍋10内の高圧蒸気を前記隙間から排気通路へと流出させることができる。したがって、内鍋10内の圧力値が異常な圧力値となっている場合にのみ第2貫通孔66を通して外部へ向かう高圧蒸気の流れを生じさせることができ、この流れによって発音体から音を発することができる。これにより、調圧機構68,95が閉塞した状態を使用者に確実に報知することができる。このように、調圧機構68,95が閉塞した場合に使用者に報知する異常圧力報知機構を制御基板等への追加によらない簡易な構造とすることができ、製造コストおよび設計変更の手間を大幅に増加させることなく圧力調理器に設けることができる。また、筒部51の閉塞側として圧力センサ46を使用することにより、部品点数の増加を抑制できる。さらに、内鍋10側から調圧機構68,95への調理物の侵入を防止するフィルタセット110に発音体を一体形成でき、部品点数の増加を抑制できる。
【0064】
使用後、蓋体23から内蓋60を外してフィルタセット110のロック部材181を、バネ(図示せず)の付勢力に抗して引き出し、フィルタ部150を開くと、フィルタ部150の凸部152aが図11(a)に示す位置から図11(b)に示す位置に移動し、フィルタ部150の凸部152aとフィルタベース部120の凸部140aとが係合する。そして、フィルタ部150をフィルタベース部120に仮止めできる。このようにして、フィルタ部150が開いた状態に維持される。フィルタ部150は、開いた状態に維持できるとともに、ヒンジ接続部177の軸部163を中心に回動できるので、フィルタセット110の外側だけでなく内側も確実に洗浄することができる。このようにして、発音体を洗浄できるので発音体の内部の汚れを完全に除去することができ、内鍋10内が異常圧力まで上昇した場合に確実に異常圧力報知機構204を作動させることができる。
【0065】
再び使用する前には、フィルタセット110を閉じ、内蓋60を蓋体23に取り付ける。フィルタセット110を閉じていない場合、図9に示すように、フィルタ部150は、フィルタベース部120に対してほぼ正反対の方向を向いた状態で内蓋60の外側にはみ出している。したがって、この状態で、蓋体23を閉じようとした場合、干渉部190が内蓋60と干渉することによって、フィルタセット110の前記係合部が解除される。その後、フィルタ部150は、バネ111の付勢力によって、自動的に閉じられる。したがって、異常圧力報知機構をセットした状態で確実に炊飯を開始することができる。なお、本実施形態においては、フィルタセット110を内蓋60に取り外し不可能に装着しているので、フィルタセット110を装着していない状態で誤って炊飯が開始されることを確実に防止できる。
【0066】
本発明は実施形態のものに限定されず、種々の変形が可能である。例えば、発音体とフィルタセット110とを一体形成せずにそれぞれに分割して、発音体を内蓋60の圧力センサ用貫通孔66の内鍋10側に単独で設けてもよい。
【0067】
なお、筒部51は、円筒や、断面が多角形で形成された角筒のようにいかなる断面形状により形成されたものでもよい。また、筒部51の閉塞側は、温度センサや湿度センサ等の内鍋10内の状態を検出するいかなるセンサであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 内鍋(鍋)
46 圧力センサ
50 末広がり部(弾性変形部)
51 筒部
60 内蓋(蓋)
63 調圧弁用貫通孔(第1貫通孔)
64 リリーフ弁用貫通孔(第1貫通孔)
66 圧力センサ用貫通孔(第2貫通孔)
68 調圧弁(調圧機構)
95 リリーフ弁(調圧機構)
110 フィルタセット
120 フィルタベース部
125 フィルタベース側発音空間形成部(流出部)
132 流出孔
150 フィルタ部
156 フィルタ孔
157 フィルタ側発音空間形成部(流入部)
160 流入孔
203 弁機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口の鍋と該鍋を閉塞し第1貫通孔および第2貫通孔を有する蓋とを有し、前記第1貫通孔を囲繞するように前記蓋の外面に設けられた調圧機構および前記第2貫通孔を囲繞するように前記蓋の外面に設けられた弁機構を備え、大気圧より高い設定圧力で調理する圧力調理器において、
前記蓋の前記鍋側に、前記第2貫通孔と同軸に配置された流出孔を含む流出部、および、該流出部の流出孔と軸方向に間隔をあけて前記流出孔と同軸に配置された流入孔を含み、前記流出部との間に発音空間を形成する流入部を有する発音体を設け、前記鍋の内部が前記設定圧力より高い異常圧力になると、前記発音体が音を発するように構成したことを特徴とする圧力調理器。
【請求項2】
前記弁機構は、一側が閉塞し他側が開口した筒部、および、該筒部の開口と連続し端部が前記蓋に圧接され内圧が高くなると外向きに弾性変形可能な弾性変形部を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧力調理器。
【請求項3】
前記筒部の閉塞側が圧力センサであることを特徴とする請求項2に記載の圧力調理器。
【請求項4】
前記第1貫通孔を囲繞するように前記蓋の前記鍋側に設けられ、前記蓋に取り付けられたフィルタベース部、および、該フィルタベース部に開閉可能に取り付けられ前記鍋内と外部とを連通するとともに調理物を通過させないフィルタ孔が形成されたフィルタ部を有するフィルタセットを備え、
前記フィルタベース部に前記流出部を形成し、前記フィルタ部に前記流入部を形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の圧力調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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