説明

圧延コイル管理システム

【課題】本発明は、熱間圧延で製作した圧延コイルの保管状況を、圧延コイルの熱的経時変化を含めて、視覚的かつ直接的に表示できる圧延コイル管理システムを提供する。
【解決手段】本発明の圧延コイル管理システムでは、記憶装置に格納された圧延コイル毎の配置時間情報から各々の配置経過時間を求め、該配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する圧延コイル毎に対応した図形Rnが作成されて、圧延コイル毎の配置位置情報に基づいて、コイル置場に係るマップ上の位置を特定され、該コイル置場における圧延コイル毎の配置を表すマップ情報が作成され、端末装置の画面X1に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の熱間圧延によって製作された圧延コイルの保管状況を画面に視覚的に表示することができる圧延コイル管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼材の熱間圧延によって製作された圧延コイルの保管状況を把握するために、圧延コイル管理システムが使用されている。その圧延コイル管理システムについて、図5を参照しながら以下に説明する。
【0003】
図5には、圧延コイルの置場Lが示され、その上方から見た概要が図示されている。置場Lの左端側が、熱間圧延ラインの出口であり、その左端側が、圧延コイルの出荷方向(白矢印)になっている。置場Lの左端側には、図示のX軸方向に移動可能な天井クレーンCが待機している。この天井クレーンCには、図示を省略しているが、圧延コイルを把持して吊り上げ、又は、降ろすことができる把持装置が取り付けられており、この把持装置は、天井クレーンC上を、Y軸方向に動くことができる。
【0004】
この天井クレーンCと把持装置は、圧延コイル管理システムにおける端末装置からの指示に従って、置場L上を移動され、例えば、圧延コイルRnを搬入する場合には、熱間圧延ラインの出口で圧延コイルを吊り上げ、次いで置場Lの目標位置まで搬送し、そこで降ろして、所定位置に保管される。或いは、置場Lに既に保管された圧延コイルを出荷する場合には、該保管位置で吊り上げ、出荷出口に搬送する。
【0005】
この様に、把持装置を置場L上でX軸及びY軸方向に移動させることにより、圧延コイルRnを置場Lへの搬入、搬出、又は移動を自在に行うことができる。この天井クレーンCと把持装置の移動操作は、オペレータが圧延コイル管理システムと通信できる端末装置に所定情報を入力することによって行われる。
【0006】
この入力においては、オペレータが、これから取り扱う圧延コイルに関する所定情報、例えば、コイル製品番号、コイル幅、コイル厚み、コイル重量、区分、コイル移動先位置などを、キーボードなどにより入力し、コイル搬入時間、コイル搬入位置、コイル移動時間、コイル払出時間、コイル出荷時間などについては、圧延コイル管理システム側で自動的に検出して、所定情報と共に管理システムに備えられた記憶装置に格納される。
【0007】
図5には、以上のような移動操作によって、複数の圧延コイルがコイル置場Lに配置された状況が示されている。図中に表示された実線枠は、圧延コイルRnが、その位置に置かれていることを表し、図中の破線枠は、圧延コイルRnが配置されていない、空き状態を表している。熱間圧延ラインで製造された圧延コイルは、コイル置場Lで保管されることにより冷却されるため、各圧延コイルの温度が変化していることを考慮して、オペレータは、コイル置場Lにおける圧延コイルの配置状況を目視しながら、圧延コイルの配置を管理することになる。
【0008】
ところで、オペレータは、この圧延コイルの配置を管理するとき、配置状況の目視だけでなく、図6に示される画面X0を、コイル置場Lに保管された圧延コイルに係る情報について、圧延コイル管理システムと通信できる端末装置に表示させ、参考にすることができる。この画面X0においては、圧延コイル管理システムの記憶装置にデータベースとして格納されたキャラクタ情報が表示されるだけであった。
【0009】
一方、商品の保管場所における配置状況を、端末装置の画面に、直感的に把握することができるように表示することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この端末装置では、商品の載置場所であるロケーションの許容容積等のロケーション情報と商品の寸法や積み上げ可能段数等の商品情報とを物流拠点サーバから通信ネットワークを介して取得し、取得した情報に基づいて、商品の積み上げ段数の残りを判定し、商品の積み上げ段数を考慮した倉庫の空き状況を端末装置の画面に図形表示して、視覚的かつ直感的に把握することができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−1832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
熱間圧延ラインで製造された圧延コイルは、コイル置場Lで保管されることにより冷却されるため、オペレータが圧延コイルを管理するときには、保管された圧延コイルの各々の温度状況を把握しなければ、圧延コイルの保管管理を適切に行うことができない。しかしながら、従来の圧延コイル管理システムにおける端末装置では、コイル情報がキャラクタベースで羅列して表示されるだけであり、この表示された情報から、直接、保管されている圧延コイルの温度情報を得ることができない。圧延コイルの保管管理を適切に行うには、このコイル情報を参考にして冷却状況を把握しなければならないが、この把握には、オペレータの経験と勘を必要とし、適切な圧延コイルの保管管理、特に、最適なコイル配置をとることに支障を来たした。
【0012】
また、倉庫の空き状況を端末装置の画面に図形表示し、視覚的かつ直感的に把握することを可能とすることが、特許文献1により提案されているが、その提案では、倉庫の空き状況が単に図形表示されただけのものであり、しかも、倉庫に保管される商品は、時間と共に状態が変化するというものではないため、直ちに、倉庫の空き状況を図形表示するという着想を圧延コイルの保管管理に適用することができない。
【0013】
そこで、本発明では、鋼材から熱間圧延によって製作された圧延コイルの保管状況を圧延コイルの熱的経時変化を含めて画面に、視覚的かつ直接的に、表示することができる圧延コイル管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の課題を解決するため、本発明の圧延コイル管理システムでは、コイル置場に配置された複数の圧延コイルに対応して、少なくともコイル識別情報、配置時間情報及び配置位置情報を含むコイル情報を格納するコイル情報格納手段と、該コイル情報格納手段から読み出した前記配置時間情報から前記圧延コイル毎の配置経過時間を求める時間情報作成手段と、該配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する前記圧延コイル毎に対応した図形を作成し、該作成された前記圧延コイル毎の図形について、前記コイル情報格納手段から読み出した前記圧延コイル毎の前記配置位置情報に基づいて、前記コイル置場に係るマップ上の位置を特定し、前記コイル置場における前記圧延コイル毎の配置を表すマップ情報を作成するマップ作成処理手段と、該マップ作成処理手段で作成された前記マップ情報に基づいた画像を表示する表示手段と、を備えることとした。
【0015】
さらに、前記コイル情報格納手段を含むサーバ装置と、前記サーバ装置と第1ネットワークを介して通信でき、前記時間情報作成手段及び前記マップ作成処理手段を含む分散サーバ装置と、前記分散サーバ装置と第2ネットワークを介して通信でき、前記表示手段を含む端末装置と、を有し、該端末装置が前記分散サーバ装置にマップ情報要求信号を送出したとき、前記分散サーバ装置は、前記コイル情報格納手段に格納された前記コイル情報に基づいて前記マップ作成処理手段によって作成された前記マップ情報を前記端末装置に伝送することとした。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の圧延コイル管理システムでは、コイル情報格納手段に格納された圧延コイル毎の配置時間情報から各々の配置経過時間を求め、該配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する前記圧延コイル毎に対応した図形が作成されて、前記圧延コイル毎の前記配置位置情報に基づいて、コイル置場に係るマップ上の位置を特定した、該コイル置場における前記圧延コイル毎の配置を表すマップ情報が作成され、端末装置の画面に表示されるので、オペレータは、その画面に表示された圧延コイルのマップから、圧延コイル毎の配置経過時間の長さを視覚的に簡単に読み取ることができる。
【0017】
例えば、読み取った配置経過時間の長さが短ければ、圧延コイルの温度が高く、或いは、その配置経過時間が長ければ、保管中に冷却されて圧延コイルの温度が低い、というように、その配置経過時間の長さに応じて、圧延コイル毎の温度状況がどのようになっているかを視覚的かつ直接的に把握することが可能となる。そのため、オペレータの経験や勘に頼らず、安定的な圧延コイルの保管管理が容易となり、効率的なコイル置場の利用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の圧延コイル管理システムに接続された端末装置における圧延コイル置場に係る圧延コイルマップ情報の表示画面例を説明する図である。
【図2】本実施形態の圧延コイル管理システムの構成概要を説明する図である。
【図3】本実施形態の圧延コイル管理システムのホスト装置、分散サーバ及び端末装置の間における情報の流れを説明するタイムチャートである。
【図4】本実施形態の圧延コイル管理システムにおけるマップ情報の作成手順を説明するフローチャートである。
【図5】コイル置場における圧延コイルの保管状況を説明する図である。
【図6】従来の端末装置におけるコイル置場に保管された圧延コイルに係る情報の表示画面例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の圧延コイル管理システムに関する実施形態について、図1乃至図4を参照しながら、以下に説明する。
【0020】
上述したように、従来から用いられていた圧延コイル管理システムでは、コイル置場Lに保管された圧延コイルに係るコイル情報は、図6に示されるように、キャラクタ情報が単に羅列表示されていた。そのため、従来の圧延コイル管理システムを利用しただけでは、保管されている圧延コイルの温度状況を把握することが難しく、オペレータの経験と勘に頼らざるを得なかった。
【0021】
そこで、本実施形態の圧延コイル管理システムでは、図1に示すように、コイル置場Lに保管された圧延コイルを図形で表し、その図形をコイル置場における保管位置に対応させて、端末装置に備えられた画面に表示するようにした。そして、圧延コイルの各々に対応する図形について、個々の圧延コイルに係る温度状況が把握できるように、コイル置場Lに保管されてからの時間が経過するほど、圧延コイルの温度が低下することに着目して、圧延コイル毎の配置時間情報から各々の配置経過時間を求め、その配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を採用することとした。
【0022】
図1には、オペレータが使用する端末装置における表示画面の例が示されている。同図中、X1は、表示画面を表し、その画面X1は、図5に示されたコイル置場Lを例にして、コイル置場を上方から見た状態の画像を示している。その表示画面X1には、天井クレーンCが待機状態で表示されており、コイル置場Lに配置保管された圧延コイルについては、実線枠による図形(代表的にRnで示す)で表示される。
【0023】
そして、圧延コイルが配置されていない空き状態の位置には、破線枠の図形で表示し、圧延コイルを配置保管することができる候補を表しているが、この破線枠の図形を表示しないで、空白のままでもよい。ここでは、四角枠で表示したが、これに限られず、圧延コイルに対応する図形は、例えば、円図形、特定形状のマークなどでもよい。
【0024】
図1に示した表示画面X1の例では、コイル置場Lに保管されている圧延コイルの各々に対応する図形Rnについて、コイル置場での配置経過時間の長さに応じて、異なる塗潰し処理が施されている。図1の表示画面X1の下方に例示したが、配置経過時間の長さを、「24時間以内」、「2日以内」、「5日以内」、「5日以上」に区分けして、異なる塗潰し処理が施されている。さらに、区分け段階を増やして、より細かい配置管理を行えるようにすることも可能である。
【0025】
図1に示した表示画面X1の例では、配置経過時間の長さを区分けする手段として、異なる塗潰し処理を採用したが、配置経過時間の長さに応じて異なる色で図形Rnを表示することもできる。例えば、赤色の濃淡を多段階とした色分けにすることもでき、各圧延ロールの冷却状況を視覚的又は直感的に把握し易くすることもできる。
【0026】
次に、以上に説明した表示画面X1を、オペレータが操作する端末装置の表示手段に表示することができる圧延コイル管理システムについて、図2を参照しながら、以下に説明する。図2には、圧延コイル管理システムの構成例の概要が示され、ホスト装置1、分散サーバ装置2及び端末装置3が、互いに通信ネットワークN、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)などを介して接続されている。さらに、端末装置3には、天井クレーンC及びそのコイル把持装置(図示を省略)を移動制御するための駆動制御装置4が、例えば、近距離通信システムなどを介して接続され、双方向通信が可能となっている。なお、端末装置3には、ノート型又はデスクトップ型パーソナルコンピュータを使用することができる。
【0027】
ホスト装置1は、ホストとして機能するためのコンピュータを有する制御処理装置11と、通信ネットワークNを介して他の装置と通信を行う送受信装置13と、コイル置場Lに保管されている圧延コイルに関するコイル情報を格納する記憶装置14とを備えている。制御処理装置11は、記憶装置14に格納されていたコイル情報が更新されたときに、その更新コイル情報を、送受信装置13を介して、通信ネットワークNに送出する更新情報送信処理手段を有している。
【0028】
また、分散サーバ装置2は、分散サーバとして機能するためのコンピュータを有する制御処理装置21と、通信ネットワークNを介して他の装置と通信を行う送受信装置24と、サーバ装置1から伝送された更新コイル情報を格納する記憶装置25とを備えている。制御処理装置21には、記憶装置25に格納された更新コイル情報に基づいて、圧延コイルのコイル置場Lでの配置経過時間を求める時間情報作成手段22と、記憶装置25に格納された圧延コイルに係る図形情報と更新コイル情報とに基づいてマップ情報を作成するマップ情報を作成するマップ情報作成手段とが備えられている。
【0029】
端末装置3は、入力用のキーボード又はマウスに接続され、操作画面や、コイル置場Lの圧延コイル配置マップの画面などを表示する表示手段を備えている。その操作画面に、圧延コイルの保管管理に必要な操作プログラムに対応するアイコンとして、例えば、「コイル受入」、「コイル移動」、「コイル払出」、「コイル出荷」、「データ表示」、「コイルマップ表示」などのボタンを表示すると、操作、指示などの入力が簡単に行えるようになる。
【0030】
以上のような圧延コイル管理システムにおいて、図1に示される主次画面X1のような、圧延コイルの保管状況を示すマップ情報の作成・表示に関する手順の概要について、図3のタイムチャートを参照して、以下に説明する。図3には、図2の圧延コイル管理システムにおけるホスト装置1、分散サーバ装置2及び端末装置3との間の情報の流れが示されている。
【0031】
先ず、ホスト装置1の記憶装置14には、コイル置場に保管された圧延コイルに関するコイル情報が格納される(ステップS1)。このコイル情報には、例えば、コイル製品番号(識別コード)、コイル幅、コイル厚み、コイル重量、区分などの圧延コイルに関する情報を含むコイル識別情報と、コイル置場の当該場所に保管された位置を示す配置位置情報と、当該場所に保管された時を示す配置時間情報と、が含まれる。
【0032】
次いで、記憶装置14に格納されたコイル情報が更新されたとき、更新情報送信処理手段12は、この更新されたコイル情報について送信処理を実行し、更新コイル情報が、送受信装置13によって、通信ネットワークNに送出され、分散サーバ装置2の送受信装置24に受信される(a)。
【0033】
分散サーバ装置2において、送受信装置24で受信した更新コイル情報は、記憶装置25に格納される。ここで、既に格納されていたコイル情報がある場合には、そのコイル情報は、受信した更新コイル情報に従って更新される(ステップS2)。
【0034】
一方、オペレータは、端末装置3を使用して、「コイル受入」、「コイル移動」、「コイル払出」、「コイル出荷」などの作業を行うに際し、コイル置場における圧延コイルの保管状況を把握するには、図1に示された表示画面X1を表示させる(ステップS3)。ここで、オペレータが、画面に表示されたボタン「コイルマップ表示」を押すと、端末装置3から分散サーバ装置2に対して、マップ情報を求める要求信号が通信ネットワークNを介して送信される(b)。
【0035】
分散サーバ装置2では、端末装置3から要求信号を受信すると、制御処理装置21は、記憶装置25に格納された更新コイル情報を読み出し、この更新コイル情報に基づいて、コイル置場に保管された圧延コイルの各々についての配置経過時間を求め、その配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する圧延コイル毎に対応した図形を作成する。作成された図形の各々について、コイル置場に係るマップ上の位置を特定した、圧延コイル毎の配置を表すマップ情報を作成する(ステップS4)。
【0036】
次に、分散サーバ装置2は、要求信号を送信した端末装置3への応答として、作成したマップ情報を、通信ネットワークNを介して端末装置3に伝送する(c)。端末装置3は、このマップ情報を受け取ると、表示装置の画面に、図1に示されるような表示画面X1を表示装置に表示する(ステップS5)。
【0037】
そこで、オペレータは、端末装置3に表示された表示画面X1から、圧延コイルの保管状況、特に、保管されている各圧延コイルの冷却状況を把握することができるので、「コイル受入」、「コイル移動」、「コイル払出」、「コイル出荷」などの作業に係る操作、指示をし易くなり、作業効率が向上し、圧延コイルの保管・管理を適切に行うことができる。
【0038】
以上では、圧延コイル管理システムにおける、圧延コイルの保管状況を示すマップ情報の作成・表示に関する手順の概要が説明されたが、以下においては、図4のフローチャートを参照しながら、マップ情報の作成までの詳細手順を説明する。図4のフローチャートにおけるステップS11は、図3に示されたタイムチャートにおけるステップS1に、ステップS12及びS13は、同じくステップS2に、ステップS14は、同じくステップS3に、ステップS15は、同じくステップS4、ステップS16及びS17は、同じくステップS5に、それぞれ対応している。
【0039】
ステップS11におけるコイル情報のホスト装置への格納について説明する。先ず、オペレータが、端末装置3の表示画面において、ボタン「コイル受入」を押して入力画面を表示させ、これからコイル置場Lに受入(搬入)しようとしている圧延コイルに関する所定情報、例えば、コイル製品番号(識別コード)、コイル幅、コイル厚み、コイル重量、区分などについて、端末装置3の入力手段(マウス、キーボードなど)により入力する。そして、コイル置場Lにおける当該圧延コイルの保管位置を入力して、天井クレーンCの駆動制御装置4に当該圧延コイルの搬入を指示する。
【0040】
コイル受入の指示を受けた駆動制御装置4は、天井クレーンC及び把持装置を移動制御して、吊り上げていた当該圧延コイルを、指示された保管位置で降ろす作業を実行する。この作業が完了したとき、駆動制御装置4は、当該作業の完了を示す確認信号を端末装置3に送信する。そこで、端末装置3は、この確認信号を受信した時刻を当該圧延コイルのコイル置場へのコイル搬入時間として自動的に検出し記録する。
【0041】
以上で、当該圧延コイルのコイル置場Lへの受入作業が完了したことになるので、ここで、端末装置3は、当該圧延コイルに関するコイル識別情報と、コイル置場の当該場所に保管された位置を示す配置位置情報と、当該場所に保管された時刻(コイル搬入時間)を示す配置時間情報と、を含めた当該圧延コイルに係るコイル情報を、通信ネットワークNを介してホスト装置1に送信する。
【0042】
当該圧延コイルに係るコイル情報を送受信装置13で受信したホスト装置1では、制御処理装置11が、その受信したコイル情報を記憶装置14にデータベースとして格納する。さらに、別の圧延コイルについて、コイル置場Lへの受入作業が行われると、上述した手順が繰り返され、別の圧延コイルに係るコイル情報が、端末装置3からホスト装置1に送信され、記憶装置14に格納される。
【0043】
以上では、圧延コイルをコイル置場Lに搬入する受入作業におけるコイル情報の格納について説明したが、「コイル移動」、「コイル払出」、「コイル出荷」などの作業においても、上述の受入作業の場合と同様の手順で、その作業が完了する毎に、更新コイル情報が端末装置3からホスト装置1に送信される。この更新コイル情報では、その作業の完了時刻が配置時間情報に含められ、特に、コイル置場L内で保管位置を移動させる「コイル移動」作業の場合には、前の保管位置を含む配置位置情報が、移動先の新しい保管位置に更新された配置位置情報に更新される。
【0044】
次に、ステップS12におけるコイル情報の分散サーバ装置への送信については、上述した図3のフローチャートにおける(a)の送信と同様であり、ステップS13におけるコイル情報の分散サーバ装置への格納については、上述のステップS2の処理内容と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0045】
また、ステップS14における端末装置から分散サーバ装置へのマップ情報の要求についても、上述した図3のフローチャートにおけるステップS3の処理内容及び(b)の送信と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0046】
次いで、ステップS15におけるコイル情報に基づいたマップ情報の作成について説明する。分散サーバ装置2では、端末装置3からマップ情報作成の要求信号を受信すると、制御処理装置21は、記憶装置25に格納された更新コイル情報を読み出し、時間情報作成手段22が、この更新コイル情報に含まれる配置時間情報に基づいて、コイル置場に保管された圧延コイルの各々についての配置経過時間を演算して求める。
【0047】
マップ情報作成手段23が、記憶装置25に格納された図形情報を読み出し、求められた圧延コイルの各々についての配置経過時間に基づいて、配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する圧延コイル毎に対応した図形を作成する。作成された図形の各々について、更新コイル情報に含まれる圧延コイル毎の配置位置情報に従い、コイル置場に係るマップ上の位置を特定し、該コイル置場における圧延コイル毎の配置を表すマップ情報を作成する。
【0048】
以上で作成されたマップ情報は、ステップS16において、上述した図3のフローチャートにおける(c)送信の場合と同様に、分散サーバ装置2の送受信装置により、通信ネットワークNを介して端末装置3に伝送される。そして、ステップS16において、上述した図3のフローチャートにおけるステップS5のマップ情報表示の場合と同様に、端末装置3は、受け取ったマップ情報に基づいて、表示装置の画面に、図1に示されるような表示画面X1を表示装置に表示する。
【0049】
以上に説明した本実施形態の圧延コイル管理システムでは、更新コイル情報がホスト装置1の記憶装置14に格納されると、この更新コイル情報が、分散サーバ装置2に伝送され、記憶装置25にも格納されるようにしたが、端末装置3からのマップ情報作成の要求信号が分散サーバ装置2に送信されたときに、制御処理装置21がホスト装置1に対して更新コイル情報の取得を要求し、記憶装置14から読み出された更新コイル情報を記憶装置25に格納するようにしてもよい。
【0050】
また、図2に示した本実施形態の圧延コイル管理システムでは、ホスト装置1と分散サーバ装置2とを備えることとしたが、これらを一つのサーバ装置に構成することもできる。この場合には、制御処理装置及び記憶装置については、少なくとも一つずつを備えていればよい。そして、制御処理装置が、マップ情報作成の要求信号を受信したときに、更新コイル情報を、直接、記憶装置から読み出すことができるので、更新情報送信処理手段12は、不要となる。ここでは、端末装置3が、サーバ装置に対するクライアントの役割を持つ。
【0051】
以上に説明した本実施形態の圧延コイル管理システムでは、圧延コイルに対応する図形を作成する際に、配置経過時間の長さを、保管の経過日数に換算して、その日数に応じて図形の表示形態を異ならせていたが、これに限られず、例えば、配置経過時間の長さから圧延コイルの温度を推定して、その温度に応じて図形の表示形態を異ならせることもできる。この場合には、予め取得した時間−温度曲線情報をテーブル形式で記憶装置に格納しておき、図形作成の際に、求めた配置経過時間に対応する温度を読み出し、その温度に対応して図形の表示色を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 ホスト装置
2 分散サーバ装置
3 端末装置
4 駆動制御装置
11、21 制御処理装置
12 更新情報送信処理手段
13、24 送受信装置
14、25 記憶装置
22 時間情報作成手段
23 マップ情報作成手段
C 天井クレーン
L コイル置場
N 通信ネットワーク
Rn 圧延コイル図形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル置場に配置された複数の圧延コイルに対応して、少なくともコイル識別情報、配置時間情報及び配置位置情報を含むコイル情報を格納するコイル情報格納手段と、
前記コイル情報格納手段から読み出した前記配置時間情報から前記圧延コイル毎の配置経過時間を求める時間情報作成手段と、
前記配置経過時間の長さに応じて異なる表示形態を有する前記圧延コイル毎に対応した図形を作成し、該作成された前記圧延コイル毎の図形について、前記コイル情報格納手段から読み出した前記圧延コイル毎の前記配置位置情報に基づいて、前記コイル置場に係るマップ上の位置を特定し、前記コイル置場における前記圧延コイル毎の配置を表すマップ情報を作成するマップ作成処理手段と、
前記マップ作成処理手段で作成された前記マップ情報に基づいた画像を表示する表示手段と、
を備えた圧延コイル管理システム。
【請求項2】
前記コイル情報格納手段は、前記圧延コイルの移動に応じて更新された前記コイル情報を格納し、
前記時間情報作成手段は、前記更新されたコイル情報に基づいて前記圧延コイル毎の前記配置経過時間を求めることを特徴とする請求項1に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項3】
前記コイル情報格納手段、前記時間情報作成手段及び前記マップ作成処理手段を含むサーバ装置と、
前記サーバ装置とネットワークを介して通信でき、前記表示手段を含む端末装置と、を有し、
前記端末装置が前記サーバ装置にマップ情報要求信号を送出したとき、前記サーバ装置は、前記マップ作成処理手段によって作成された前記マップ情報を前記端末装置に伝送することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項4】
前記コイル情報格納手段を含むサーバ装置と、
前記サーバ装置と第1ネットワークを介して通信でき、前記時間情報作成手段及び前記マップ作成処理手段を含む分散サーバ装置と、
前記分散サーバ装置と第2ネットワークを介して通信でき、前記表示手段を含む端末装置と、を有し、
前記端末装置が前記分散サーバ装置にマップ情報要求信号を送出したとき、前記分散サーバ装置は、前記コイル情報格納手段に格納された前記コイル情報に基づいて前記マップ作成処理手段によって作成された前記マップ情報を前記端末装置に伝送することを特徴とする請求項1又は2に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項5】
前記分散サーバ装置は、格納手段を有し、
前記サーバ装置は、前記圧延コイルの移動に応じて更新された前記コイル情報を前記分散サーバに伝送し、
前記分散サーバ装置は、伝送された前記コイル情報を前記格納手段に格納し、
前記時間情報処理手段は、格納された前記コイル情報に基づいて前記圧延コイル毎の前記配置経過時間を求めることを特徴とする請求項4に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項6】
前記圧延コイル毎の図形は、前記コイル識別情報に含まれる種別に応じて異なる表示形態で表示されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項7】
前記圧延コイル毎の図形は、前記配置経過時間の長さに応じて異なる塗潰し処理が施されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧延コイル管理システム。
【請求項8】
前記圧延コイル毎の図形は、前記配置経過時間の長さに応じて色分け表示されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧延コイル管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−202368(P2010−202368A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51206(P2009−51206)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】