説明

圧延ロールの表面観察装置

【課題】ノズルのストロークを稼ぎつつ、ノズルの伸縮がスムーズに行われるようにする。
【解決手段】ノズル2から圧延ロール50の表面に水を吐出し、ノズル2の先端部と圧延ロール50との間に水柱101を形成して、その水柱101を介して圧延ロール50の表面を撮像して観察するためのノズル装置100において、水が供給されるボディ1と、ボディ1から二段階のテレスコープ式に伸縮するノズル2と、ノズル2を縮ませる方向に付勢力を付与するスプリング4、6とを備え、ボディ1内の水圧によりノズル2がスプリング4、6の付勢力に抗して伸びる構成にした。この場合に、内側ノズル22の後端にドーナツ状の円板材28を接着等により固定し、両ノズル21、22の前進開始が略同タイミングとなるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を圧延する圧延ロールの表面を撮像して観察するのに用いて好適な圧延ロールの表面観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の製造ライン等における鋼板の熱間圧延機では、圧延ロールが圧延によって摩耗したり、圧延ローラにヒートクラックが発生したりするため、使用限界に達すると、圧延ロールの交換が必要となる。一般に、圧延ロールの交換は、圧延ロールの摩耗によるロールプロフィルの変形や、ヒートクラックによるロール表面の肌荒れが限界に達するまでの周期を経験的に予測して行われている。しかしながら、圧延ロールの摩耗やロールプロフィルの変形は使用状況によって極端に異なる場合があり、最適なタイミングで圧延ロールの交換を行うのは困難であった。
【0003】
このような不都合を解消するために、特許文献1、2等には、圧延ロールの使用限界を圧延ロールの表面を撮影することによって検査する方式が提案されている。ノズルから圧延ロールの表面に水を吐出し、ノズルの先端部と圧延ロールとの間に水柱を形成して、その水柱を介して圧延ロールの表面を撮影するものである。
【0004】
【特許文献1】特開平5−10888号公報
【特許文献2】特開2007−3506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2には、ノズル基部からノズル先端部を進退させる構成が開示されている。かかる構成により、例えば圧延ロールの交換や研磨等のメンテナンスを行う際に、ノズルを圧延ロールの表面から離間させることができ、ノズルの先端と圧延ロールとが衝突するのを避けることができる。
【0006】
ところが、圧延ロールのロール径は例えば800mm程度あるのに対して、ノズル先端部のストロークは50mm程度である。このような寸法関係を考慮すると、圧延ロールの交換や研磨等のメンテナンスを行う際にノズルを圧延ロールの表面から離間させる距離が十分であるとはいえない。
【0007】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、圧延ロールの表面観察に際して、ノズルのストロークを稼ぎつつ、ノズルの伸縮がスムーズに行われるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧延ロールの表面観察装置は、ノズルから圧延ロールの表面に水を吐出し、前記ノズルの先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成して、その水柱を介して前記圧延ロールの表面を撮像して観察するための圧延ロールの表面観察装置であって、水が供給されるボディと、前記ボディから多段階のテレスコープ式に伸縮するノズルと、前記ノズルを縮ませる方向に付勢力を付与する付勢手段とを備え、前記ボディ内の水圧により前記ノズルが前記付勢手段の付勢力に抗して伸びる構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズルが多段階のテレスコープ式に伸縮するので、ノズルのストロークを稼ぎことができる。したがって、広い範囲のロール径の圧延ロールに対応可能であるとともに、圧延ロールの交換や研磨等のメンテナンスを行う際に、ノズルを圧延ロールの表面から十分に離間させることができ、ノズルの先端と圧延ロールとが衝突するのを確実に避けることができる。しかも、外側ノズルの受圧面積と内側ノズルの受圧面積とのうちいずれか一方を他方に合わせて設定したり、ノズルを縮ませる方向に流体圧を作用させることのできる流体圧作用機構を備えたりすることにより、多段階のノズルの伸縮がスムーズに行われるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る圧延ロールの表面観察システムの概略構成を示す図である。圧延ロールの表面観察システムは、本発明でいう圧延ロールの表面観察装置に相当するノズル装置100を備える。ノズル装置100は、ノズル2から圧延ロール50の表面に向けて水を吐出し、ノズル2の先端部と圧延ロール50との間に水柱101を形成して、その水柱101を介して圧延ロール50の表面を撮像して観察するためのものである。
【0011】
また、圧延ロールの表面観察システムは、ノズル装置100により形成される水柱101を介して圧延ロール50の表面を撮影する撮影手段200、ノズル装置100に水を供給する水供給手段300、ノズル装置100にエアを供給するエア供給手段400、制御装置500、画像処理装置600を備える。
【0012】
ここで、図2、3を参照して、ノズル装置100について説明する。図2はノズル装置100のノズル2が伸びるときの様子を示すノズル装置100の断面図であり、図3はノズル2が縮むときの様子を示すノズル装置100の断面図である。なお、図2、3では、図1のノズル装置100の一部を簡略化して図示しているが、その構成は実質的に同一である。また、見易さを考慮して、各図において断面を示すハッチングは省略する。
【0013】
1はボディ(ノズル基部)であり、筒状の本体11と、本体11の先端に設けられたリング状部材12とにより構成される。リング状部材12の内径は本体11の内径よりも小さくなっており、ボディ1の先端内周面に突出部13が形成される。ボディ1(本体11及びリング状部材12)は、ステンレス鋼等の金属製である。
【0014】
2はノズルであり、ボディ1から二段階のテレスコープ式に伸縮する。すなわち、ノズル2は、筒状の外側ノズル21と、筒状の内側ノズル22とにより構成される。本実施形態では、内側ノズル22の内径が18〜22mm程度である。ノズル2(外側ノズル21及び内側ノズル22)は、アクリル樹脂や高分子ポリエチレン等の樹脂製である。なお、外側ノズル21と内側ノズル22とは必ずしも同材質でなくてもよく、例えば外側ノズル21にはボディ1との滑り性等を考慮して適宜な樹脂を選択し、内側ノズル22には外側ノズル21との滑り性等を考慮して適宜な樹脂を選択すればよい。
【0015】
外側ノズル21の後端外周面には鍔部23が設けられている。外側ノズル21が前進、後退するとき、外側ノズル21の外周面とボディ1の突出部13とが摺動し、鍔部23とボディ1の内周面とが摺動する。ボディ1の突出部13と鍔部23とが相まってスプリング室3が形成され、そこにスプリング4が設置される。スプリング4は、外側ノズル21を後退させる方向、すなわちノズル2を縮ませる方向に付勢力を付与する。なお、スプリング室3が本発明でいう第1の室に相当し、スプリング4が本発明でいう第1の付勢手段に相当するものである。また、外側ノズル21の先端内周面には突出部24が設けられている。
【0016】
内側ノズル22の後端外周面には鍔部25が設けられている。内側ノズル22が前進、後退するとき、内側ノズル22の外周面と外側ノズル21の突出部24とが摺動し、鍔部25と外側ノズル21の内周面とが摺動する。外側ノズル21の突出部24と鍔部25とが相まってスプリング室5が形成され、そこにスプリング6が設置される。スプリング6は、内側ノズル22を後退させる方向、すなわちノズル2を縮ませる方向に付勢力を付与する。なお、スプリング室5が本発明でいう第2の室に相当し、スプリング6が本発明でいう第2の付勢手段に相当するものである。
【0017】
ボディ1の後端付近には注水口14が設けられており、この注水口14を介して水供給手段300からボディ1内に水が供給される。
【0018】
また、ボディ1の先端にはエア導入口15が設けられており、このエア導入口15を介してエア供給手段400からスプリング室3、5にエアが供給される。より詳細には、エア導入口15は、ボディ1と外側ノズル21との間に形成されるスプリング室3に常時(外側ノズル21のストローク位置にかかわらず)連通する。また、外側ノズル21の先端付近には連通穴26が形成されており、外側ノズル21が所定ストロークだけ後退したとき(図示例では、外側ノズル21がボディ1に略収容されたときに(図3(b)を参照)、外側ノズル21と内側ノズル22との間に形成されるスプリング室5が連通穴26を介してスプリング室3に連通する。
【0019】
ボディ1の後端付近の内周面にはストッパ16が配設されている。ストッパ16は、外側ノズル21の後端面に当接して、外側ノズル21がそれ以上後退するのを規制するためのものである。ストッパ16は、例えば本体11の内周面に一体形成された薄壁からなる。
【0020】
また、外側ノズル21の後端付近の内周面にはストッパ27が配設されている。ストッパ27は、内側ノズル22の後端面に当接して、内側ノズル22がそれ以上後退するのを規制するためのものである。ストッパ27は、例えば外側ノズル21の内周面に等間隔で配置され、立設されたピンからなる。
【0021】
ボディ1の後端にはガラス又は樹脂からなる透明窓7が嵌め込まれている。この透明窓7を介して圧延ロールRの表面が観察される。
【0022】
このようにしたノズル装置100では、ボディ1内に水を供給すると、図2に示すように、外側ノズル21の受圧面及び内側ノズル22の受圧面が水圧を受けて(図2(b)の矢印を参照)、両ノズル21、22がスプリング4、6の付勢力に抗して前進し、ノズル2が伸びることになる。
【0023】
ところで、両ノズル21、22の後端の厚み(鍔部23、25の高さ)が同程度である場合、大径の外側ノズル21の受圧面積(後端面の面積)の方が、小径の内側ノズル22の受圧面積(後端面の面積)に比べて大きくなる。そのため、ボディ1内の水圧が所定の値に達すると、まず外側ノズル21だけが前進し、その後、水圧が更に高くなってはじめて内側ノズル22が前進することになる。
【0024】
しかしながら、両ノズル21、22の前進開始タイミングがずれていると、それだけノズル2が伸びるまでに時間がかかってしまう。その結果、圧延ロールRの表面を撮影する作業に時間がかかってしまう。また、ボディ1内の水圧によっては、外側ノズル21だけが前進し、内側ノズル22はほとんど前進しないといった不具合が生じるおそれもある。
【0025】
そこで、図2に示すように、内側ノズル22の後端にドーナツ状の円板材28を接着等により固定している。円板材28は、内側ノズル22の後端の外径と略同じ外径を有するとともに、内側ノズル22の内径よりも小さな内径を有するものである。この場合、図4にも示すように、円板材28の面積が内側ノズル22の受圧面積となるので、その大きさを外側ノズル21の受圧面積(後端面の面積)に合わせて適宜設定し、両ノズル21、22の前進開始が略同タイミングとなるように調整する、換言すれば、ボディ1内の水圧が所定の値に達すると両ノズル21、22が共に前進するように調整する。なお、円板材28の内径を小さくとりすぎると、内側ノズル22が最も前進したときに表面観察する視野を妨げることになるので、所望の視野の大きさに応じて設定するとよい。
【0026】
一方、ボディ1内への水の供給を停止する等してボディ1内の水圧が低下すると、図3に示すように、スプリング4、6の付勢力により両ノズル21、22が後退し、ノズル2が縮むことになる。
【0027】
ところで、スプリング4、6の付勢力を強いものとすると、それだけノズル2を伸ばすためのボディ1内の水圧を高く(換言すれば、供給水量を多く)する必要となるため、通常、スプリング4、6のバネ定数は比較的小さな値(0.05〜0.07N/mm程度)に設定されている。しかしながら、スプリング4、6の付勢力が弱いと、例えば外側ノズル21や内側ノズル22に付着した油や塵が原因となって、スプリング4、6の付勢力による外側ノズル21や内側ノズル22の後退が妨げられることがありうる。
【0028】
そこで、ボディ1内の水圧が低下しても外側ノズル21や内側ノズル22が後退しない場合、エア導入口15を介してスプリング室3にエアを供給する。スプリング室3に導かれたエア圧は、外側ノズル21を後退させるように鍔部23に作用し、外側ノズル21の後退をアシストすることができる。そして、図3(b)に示すように、外側ノズル21が所定ストロークだけ後退すると、スプリング室5が連通穴26を介してスプリング室3に連通するので、スプリング室5にもエアが導かれる。スプリング室5に導かれたエア圧は、内側ノズル22を後退させるように鍔部25に作用し、内側ノズル22の後退をアシストすることができる。
【0029】
図1に説明を戻して、撮影手段200において、201はカメラボックスであり、このカメラボックス201にノズル装置100のボディ1の後端が固定される。202はカメラボックス201に内蔵されたカメラであり、その撮影方向がノズル装置100の吐出方向と同軸上に配され、透明窓7及び水柱101を介して圧延ロール50の表面を撮影する。203はリング型の照明部であり、透明窓7を介して圧延ロール50の表面に光を照射する。
【0030】
水供給手段300において、301は水の供給源となる水供給部である。302は調整弁であり、水供給部301からノズル装置100に供給する水量を調整する。303は水量計であり、調整弁302により調整された水量を計測する。
【0031】
エア供給手段400において、401はエアの供給源となるコンプレッサである。402は調整弁であり、コンプレッサ401からノズル装置100に供給するエア量を調整する。403はエア量計であり、調整弁402により調整されたエア量を計測する。
【0032】
制御装置500は、照明部203の点灯制御やデジタルカメラ202の駆動制御等を行う。また、制御装置500は、水供給手段300やエア供給手段400の制御も行う。例えば、デジタルカメラ202による圧延ロール50の表面の撮影画像が、ノズル2の先端部と圧延ロール50の表面との距離(間隔)が不適切で水柱101が形成されずに撮影されたものである場合や、水柱101は形成されているが十分な太さとなっておらず撮影画像の画質が不適である場合に、水供給手段300からの供給水量を制御する。
【0033】
画像処理装置600は、デジタルカメラ202による圧延ロール50の表面の撮影画像に対して記録処理や表示処理等を行う。
【0034】
次に、本実施形態に係る圧延ロールの表面観察システムの動作について説明する。水量に対するノズル2の可動範囲(ストローク)を予め測定しておく。また、ノズル2から圧延ロール50の表面に水を吐出した際に、水柱101を安定して形成可能な圧延ロール50の表面との距離も測定しておく。
【0035】
そして、測定したノズル2の可動範囲、及び、水柱101を安定して形成可能な圧延ロール50の表面との距離を考慮して、ノズル装置100を所定の位置に設置する。具体的には、圧延ロール50の表面との接触を避けるために圧延ロール50の表面との距離をノズル2の可動範囲以上離間させるとともに、少なくともノズル2の先端部が圧延ロール50の表面に最も接近した際に、圧延ロール50の表面との間で水柱101を安定して形成可能な距離を確保できる位置にノズル装置100を設置する。
【0036】
圧延ロール50の表面を撮影する際、水供給手段300からノズル装置100に水を供給する。これにより、供給水量に応じた水圧が外側ノズル21の受圧面及び内側ノズル22の受圧面に作用するので、図2(b)に示すように、外側ノズル21及び内側ノズル22がスプリング4、6の付勢力に抗して前進し、ノズル2の先端部が圧延ロール50の表面に接近する。この場合に、上述したようにノズル2の各段階の伸び始め(両ノズル21、22の前進開始)が略同タイミングとなっている。
【0037】
また、ノズル2から圧延ロール50の表面に水が吐出され、ノズル2の先端部と回転している圧延ロール50の表面との間に水柱101が形成される。この状態で、水柱101を介して撮影手段200により圧延ロール50の表面を撮影する。
【0038】
圧延ロール50の表面の撮影を終了する際には、水供給手段300からノズル装置100への水の供給を停止する。これにより、外側ノズル21の受圧面及び内側ノズル22の受圧面に作用する水圧が低下するので、スプリング4、6の付勢力により外側ノズル21及び内側ノズル22が後退し、ノズル2の先端部が圧延ロール50の表面から離間する。この場合に、上述したように、ボディ1内の水圧が低下しても外側ノズル21や内側ノズル22が後退しない場合、エア導入口15を介してスプリング室3、5にエアを供給し、ノズル21、22の後退をアシストする。
【0039】
図5は、圧延ロールの表面観察方法の手順の一例を説明するフローチャートである。このフローチャートにおける各ステップは、例えば制御装置500により行われる。まずステップS101において操業開始が判断される。この判断の結果、操業開始であればステップS102に進み、上述したように水供給手段300からノズル装置100に水を供給する。
【0040】
次に、ステップS103に進み、ノズル2の先端部と圧延ロール50の表面との間隔が適切であるか判断する。この判断の結果、間隔が適切でなかった場合にはステップS104に進み、水供給手段300からの供給水量を増加させ、ノズル2の先端部を圧延ロール50の表面にもう少し接近させるようにする。なお、本実施形態においては、供給水量を徐々に増加させるように制御しているので、ステップS103の判断の結果、ノズル2の先端部と圧延ロール50の表面との間隔が近すぎることのないように制御している。
【0041】
供給水量を増加させた結果、ノズル2の先端部と圧延ロール50の表面との間隔が適切となった場合にはステップS105に進み、撮影手段200により圧延ロール50の表面を撮影して画質の良否を判断する。これは、水柱101が十分な太さに形成されていない場合には良好な画質が得られないことがあるので、これを確認するために行う処理である。なお、ノズル2の先端部を圧延ロール50の表面との間隔が予めほぼ適切に設定することが可能なときには、ステップS103を省略してもよい。
【0042】
ステップS105の判断の結果、撮影画質が不十分であった場合にはステップS106に進み、水供給手段300からの供給水量を増加させ、適正な水柱101を形成できるようにする。
【0043】
ステップS105の判断の結果、良好な画質が得られた場合にはステップS107に進み、圧延ロール50の表面を撮影する。この撮影の合間にステップS108において操業終了か否かを判断し、操業終了の操作が行われるまで圧延ロール50の表面の撮影を実行する。そして、ステップS108の判断の結果、操業終了の操作が行われたら、既述したように、水供給手段300からノズル装置100への水の供給を停止して、ノズル2の先端部を圧延ロール50の表面から後退させて操業を停止する。その後、圧延ロール50の交換や研磨等のメンテナンスが必要に応じて行われることになる。
【0044】
以上述べたように、ノズル装置100のノズル2が二段階のテレスコープ式に伸縮するので、ノズル2のストロークを稼ぎことができる。したがって、広い範囲のロール径の圧延ロール50に対応可能であるとともに、圧延ロール50の交換や研磨等のメンテナンスを行う際に、ノズル2を圧延ロール50の表面から十分に離間させることができ、ノズル2の先端と圧延ロール50とが衝突するのを確実に避けることができる。
【0045】
図6は、本実施形態のノズル装置100における流量(供給水量)と前進量との関係を示す特性図である。同図に示すように、供給水量の増加に従ってノズル2の前進量が大きくなるので、供給水量を調整することでノズル2の前進量を制御することができる。そして、本実施形態では、両ノズル21、22の全長が80mm程度とされており、同図に示すように、ノズル2の前進量(ボディ1の先端面からノズル2の先端部までの距離)が最大で100mmを超える。
【0046】
しかも、内側ノズル22の受圧面積を外側ノズル21の受圧面積に合わせて設定し、また、ノズル2を縮ませる方向にエア圧を作用させることのできる流体圧作用機構を備えたので、二段階のノズル2の伸縮がスムーズに行われるようにすることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、本発明でいう受圧面積調整部として、内側ノズル22の後端に円板材28を設ける例を説明したが、その形状等は限定されるものではない。例えば図7に示すように、内側ノズル22の後端内周面に筒材29を挿設する等してもよい。この場合に、筒材29の内径が先端に向かって徐々に拡径するようにしておけば、必要な受圧面積を確保しつつ、ボディ1側から内側ノズル22へ水が流れる際に渦流の発生等を抑えることができる。
【0048】
また、受圧面積調整部を円板材28や筒材29のように別部材とするのではなく、内側ノズル22に一体形成するようにしてもよい。また、以上ではノズル2として、ボディ1から二段階のテレスコープ式に伸縮する構成について説明したが、三段階以上の多段階としても良い。ただし、あまりが段数多いと、内側ノズルの位置調整が難しくなるので注意が必要である。
【0049】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、図8に示すように、ノズル装置100の前端面に蓋8を設置している。なお、ノズル装置100自体の構成は第1の実施形態で説明したものと変わるところはなく、主要な要素にのみ符号を付すとともに、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図8に示すように、蓋8は、その一辺部分がヒンジ8aにより軸支されて開閉自在とされており、ノズル2が伸びるときにノズル2の先端部に押されて開き、ノズル2が縮むときに自重と蝶番に設けたバネ(図示せず)の力により閉じる構成となっている。
【0051】
この種のノズル装置100では、その内部に油や塵が侵入すると、それがノズル2に付着して動作不良を引き起こしたり、透明窓7に付着して画質劣化を招いたりすることがある。そこで、第2の実施形態では、圧延ロール50の非観察時、すなわちノズル装置100の不使用状態(ノズル2の収容状態)で蓋8が閉じるようにし、ノズル2からボディ1内に油や塵が侵入するのを防ぐようにしたものである。
【0052】
さらに、圧延ロール50の非観察時にもノズル装置100に少量の水を供給して、ボディ1やノズル2の内部を水で充填するとともにノズル2から垂れ流すようにしておけば、ボディ1やノズル2の内部を洗浄するとともに、油や塵が侵入するのをより確実に防ぐことができる。
【0053】
以上、本発明を種々の実施形態とともに説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施形態に係る圧延ロールの表面観察システムの概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るノズル装置の断面図であり、ノズルが伸びるときの様子を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るノズル装置の断面図であり、ノズルが縮むときの様子を示す図である。
【図4】外側ノズルの受圧面及び内側ノズルの受圧面の関係を説明するための図である。
【図5】圧延ロールの表面観察方法の手順の一例を説明するフローチャートである。
【図6】第1の実施形態のノズル装置における流量(供給水量)と前進量との関係を示す特性図である。
【図7】第1の実施形態に係るノズル装置の変形例の断面図である。
【図8】第2の実施形態に係るノズル装置の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ボディ
2 ノズル
3 スプリング室
4 スプリング
5 スプリング室
6 スプリング
7 透明窓
11 本体
12 リング状部材
13 突出部
14 注水口
15 エア導入口
16 ストッパ
21 外側ノズル
22 内側ノズル
23 鍔部
24 突出部
25 鍔部
26 連通穴
27 ストッパ
28 円板材
29 筒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから圧延ロールの表面に水を吐出し、前記ノズルの先端部と前記圧延ロールとの間に水柱を形成して、その水柱を介して前記圧延ロールの表面を撮像して観察するための圧延ロールの表面観察装置であって、
水が供給されるボディと、
前記ボディから多段階のテレスコープ式に伸縮するノズルと、
前記ノズルを縮ませる方向に付勢力を付与する付勢手段とを備え、
前記ボディ内の水圧により前記ノズルが前記付勢手段の付勢力に抗して伸びる構成にしたことを特徴とする圧延ロールの表面観察装置。
【請求項2】
前記ノズルの各段階の伸び始めが略同タイミングとなっていることを特徴とする請求項1に記載の圧延ロールの表面観察装置。
【請求項3】
前記ノズルは外側ノズル及び内側ノズルを有し、
前記外側ノズルの受圧面積と前記内側ノズルの受圧面積とのうちいずれか一方を他方に合わせて設定し、前記外側ノズルの前進開始と前記内側ノズルの前進開始とが略同タイミングなっていることを特徴とする請求項2に記載の圧延ロールの表面観察装置。
【請求項4】
前記ノズルは外側ノズル及び内側ノズルを有し、
前記内側ノズルの受圧面積を前記外側ノズルの受圧面積に合わせて設定するための受圧面積調整部を前記内側ノズルに設けたことを特徴とする請求項1に記載の圧延ロールの表面観察装置。
【請求項5】
前記ノズルを縮ませる方向に流体圧を作用させることのできる流体圧作用機構を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧延ロールの表面観察装置。
【請求項6】
前記ノズルは外側ノズル及び内側ノズルにより構成されており、
前記ボディと前記外側ノズルとの間に形成され、前記付勢手段としての第1の付勢手段が設置される第1の室を備え、
前記第1の室に導かれた流体圧が前記外側ノズルを後退させるように作用する構成にしたことを特徴とする請求項5に記載の圧延ロールの表面観察装置。
【請求項7】
前記外側ノズルと前記内側ノズルとの間に形成され、前記付勢手段としての第2の付勢手段が設置される第2の室を備え、
前記外側ノズルが所定ストロークだけ後退したときに、前記第2の室が前記第1の室に連通し、前記第2の室に導かれた流体圧が前記内側ノズルを後退させるように作用する構成にしたことを特徴とする請求項6に記載の圧延ロールの表面観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−85843(P2009−85843A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257948(P2007−257948)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】