説明

圧着ハガキ検査装置

【課題】 圧着ハガキの角折れに対し、浮き上がり量の小さいものや内側に折れ込んだものでも検出可能とする圧着ハガキ検査装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 圧着ハガキ検査装置30は、検査対象である圧着ハガキ10に記録された識別コード14を読み取るコード読取器31、圧着ハガキ10の角部の所定の検査領域を撮像する画像取込カメラ32、同装置全体を制御し圧着ハガキ10の良否を判定する検査制御部33を持ち、検査制御部33は、画像取込カメラ32から取り込まれた検査画像から角部に印された検査用パターンを判読することにより、角折れの有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着ハガキの製造工程における製品の形状欠陥を判別する技術に関し、特に貼り合わせ部の形状の異常を摘出する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイレクトメールに、圧着ハガキと呼ばれるハガキが多用されている。圧着ハガキは、シート状素材(例えば連続用紙)に対して、秘匿事項が記載された面を内側にして二つ折(V型)または三つ折(Z型)にし、対向する面同士を加圧接着して形成されており、形態はハガキでありながら秘匿事項が露出しないことが特徴である。特に、最近は、プリンタ技術を利用して可変情報を記載することにより、圧着ハガキの情報秘匿の特徴が活かされ、より重用されるに至っている。
【0003】
圧着ハガキの製造は、各種記載事項の印刷と折り曲げや接着などの加工を一貫して行うため、設備の整った工場でなされるが、加工の途上で発生する不良は大きな障害となる。特に、宛先によって記載事項の異なる「パーソナル印刷」用途では、不良の摘出とともに、その補充を確実に行うため、不良がどの宛先のものかを特定し再発行などに繋げる処置が必要となる。
【0004】
圧着ハガキの製造工程における不良の代表的なものはハガキ角部に生ずるいわゆる「角折れ」である。角折れは、シート状素材を折り畳む過程や、圧着する過程で生じる形状不良であるが、角折れは、単に外観が見苦しいだけでなく、圧着ハガキの配送途上で角折れの部分から剥離が生じ、秘匿された記載内容が露出するといった重大事故を引き起こす原因となる。また、角部には、開封時の剥がし始めの切っ掛けとなるよう接着力を弱める加工が施されているが、製造や配送の過程でこの部分から角折れが生じ易いという問題がある。
【0005】
特許文献1は、圧着ハガキの形状欠陥の検出装置に関する発明であり、レーザー光線により圧着ハガキの「角折れ」を検出する技術を開示している。しかし、特許文献1の角折れの検出方法は、角折れによる角部の浮き上がりを検出するため、浮き上がりが小さいもの、あるいは角折れが内側に折れ込んだようなものは検出できないという問題がある。
また、特許文献2は、搬送中の記録体の角折れの検出に関する発明であり、光学センサにより角折れを検出するが、前記記録体は一層であり、かつ、幅方向の端部の位置から角折れを判定するものである。したがって、圧着ハガキのように、折り重ねて多層状に形成されるうちの一層が折れ込むような角折れは検出できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−127730号公報
【特許文献2】特開2008−133123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、圧着ハガキの角折れに対し、角部の浮き上がり量の小さいもの、多層構成の表面の一層に角折れが生じたもの、さらに内側に折れ込んだ角折れをも検出可能とする圧着ハガキ検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の圧着ハガキ検査装置は、
シート状素材の角部を重ね合わせて折り畳み、重なり合う面を貼り合わせて一体に形成した圧着ハガキを被検物とし、前記角部に配置した検査用パターンを読み取ることにより前記ハガキの形状欠陥を検査する圧着ハガキ検査装置であって、該圧着ハガキ検査装置は、前記ハガキを個別に特定するために該ハガキに記録された識別コードを読み取るコード読取部と、前記角部を含む近傍を検査領域として撮像する画像取込部と、前記取込部により前記検査領域を撮像して得られる検査画像から前記パターンを抽出し、前記パターンの形状を基に前記形状欠陥の有無を判定する欠陥判定部と前記判定部が出力する判定結果とコード読取部が出力するハガキ識別結果から、個々のハガキの判定結果を判定情報として記録する判定情報記録部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記パターンは、機械読み取りが可能な文字記号であることを特徴とする。
なお、前記パターンは、前記角部に設けられた、剥がし位置を示す剥がしマークであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧着ハガキ検査装置は、圧着ハガキの製造過程で発生する角折れを検出することにより不良品の混入を防止する。これにより、圧着ハガキの形状不良のみならず、配送途上での誤開封を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】圧着ハガキの構成を示す図
【図2】圧着ハガキの角折れの態様を示す図
【図3】本発明の圧着ハガキ検査装置の構成図
【図4】本発明の圧着ハガキ検査装置における検査制御部の機能ブロック図
【図5】検査用パターンによる角折れ検出の態様を示す図
【図6】剥がしマークによる角折れ検出のフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<圧着ハガキの構成>
図1は、圧着ハガキの構成を示す図であり、図1(A)は三つ折で構成した例、図1(B)は二つ折で構成した態様を表わす。圧着ハガキ(11、12)は図1に示すように、1枚のシート状素材15を折り畳んで形成するが、折り込まれて向かい合う面同士は加圧接着され、同ハガキが投函される際は一体となったシート状に成型される。接着面は、受取人が一旦開封すると再接着が困難となるよう構成され、配送途中での不正な開封を防止している。また、受取人が開封する際に目印となるよう、角部には開封の位置を示す剥がしマーク13があり、さらに、開封の切っ掛けとなるよう角部を擬接着状態にして接着力を弱めるなどの工夫がなされている。
【0013】
また、圧着ハガキ(11,12)の表面には識別コード14が記録されており、同コードを読み取ることにより、圧着ハガキ個々の特定が可能となっている。なお、識別コード14は、通常の観察条件では不可視となるよう、紫外発光インキ等で形成されることが好ましい。
【0014】
<角折れ>
図2は、圧着ハガキの角折れの態様を示す図であり、図2(A)の正常品に対し、図2(B)は角折れを生じた状態を表わす。なお、図2(B)では、角折れ25が圧着ハガキ22の表面側にある態様を表わしているが、角折れ25が内側に折れ込む場合もある(図示せず)。
【0015】
<圧着ハガキ検査装置>
図3は、本発明の圧着ハガキ検査装置の構成図である。
圧着ハガキ検査装置30は、検査対象である圧着ハガキ10に記録された識別コード14を読み取るコード読取器31、圧着ハガキ10の角部の所定の領域を撮像する画像取込カメラ32、同装置全体を制御し圧着ハガキ10の良否を判定する検査制御部33などで構成される。図示の例では、さらに、検査対象を整列させ、順に搬送する搬送部34を備え、搬送部34は不良品を取り除く排出機構35を持つ。
【0016】
なお、図3では圧着ハガキ10の加工にかかわる加工装置37および加工制御部38を含めた態様を示しており、圧着ハガキの未加工品100から製品101までの加工および検査の一連の工程を表わしている。ここで、加工装置37は、固定データの印刷、接着剤塗布、ミシン目加工が施された半製品である未加工品100に対し、可変データの印刷、折り込み、接着、切り離しなどの加工を施す工程を担い、個々に切り離された圧着ハガキ10を搬送部34に供給する。
【0017】
図4は、本発明の圧着ハガキ検査装置の検査制御部の機能ブロック図である。
検査制御部33は、コード読取部61、画像取込部62、欠陥判定部63、判定出力部64、判定情報記録部68からなるものである。
【0018】
コード読取部61は、コード読取器31を制御し、コード読取器31が読み取った識別コードを識別データに変換する。同識別データはハガキ識別結果として判定情報記録部68に記録される。
【0019】
画像取込部62は、画像取込カメラ32から検査用画像を取り込み、欠陥判定部63に送信する。
欠陥判定部63は、検査画像から角折れの有無を判定し、判定結果を前記ハガキ識別結果と関連付け、判定情報として判定情報記録部68に送信する。
【0020】
判定出力部64は、判定結果により搬送部34に付帯する排出機構35を作動させるとともに、判定結果を加工制御部38に送信することにより不良品の再発行に備える。
なお、判定情報記録部68は、上記のような判定情報の記録のみならず、検査の過程で発生するデータや作業履歴を記録することもできる。
また、これら検査にかかわる工程全体の進行や操作者とのインターフェースは管理部60が実行する。
【0021】
<角折れの検出>
以下に角折れの検出手法について説明する。
図5および6は、本発明の角折れ検出の過程を示す図であり、欠陥判定部63において、検査画像から、角折れの有無を判定する手順を表わす。
なお、図5、6の(a)は角折れのない状態(正常時)、(b)は角折れが生じた状態を表わす。
【0022】
図5に示す方法では、検査領域17に検査用パターン16を施し、同パターン16を検出することにより、角折れ25の有無を検出する。図5の例では、検査用パターン16として機械読取り可能な文字としてOCR−Bフォントの「A」の文字を配置しており、ここでは「A」の文字が判読できるか否かにより角折れの有無を判別している。すなわち、欠陥判定部63において、検査画像から検査用パターン16が「A」と判読できれば角折れナシ、また、「A」と判読できない場合は検査用パターン16の一部または全部が隠されたことになり角折れアリと判定することができる。
なお、OCR−BフォントのOCRはOptical Character Readerを表わし、OCRフォントとはOCR装置で機械読取り可能な文字記号である。
【0023】
図6は、剥がしマークを検査用パターンとしたときの角折れ検出の手順を表わす。角折れは、開封用に設けた擬接着の部分から発生することが多いため、この部分を検査することの必要性は高い。
以下、図6を参照して、欠陥判定部63における角折れ検査の処理手順を説明する。
【0024】
画像51a、51bは、画像取込カメラ32で撮像され画像取込部62から欠陥判定部63に送られた検査用画像である(検査画像の取込み:S51)。
画像51a、51bは、2値化の処理により不要な濃淡情報が除去される(2値化:S52)。これにより、剥がしマーク13と境界線の像が残る(画像52a、52b)。
続いて、線状の像を除去する(線成分除去:S53)。
線成分除去により、正常品の検査画像(画像51a)では面積を持つ剥がしマーク13の像は黒の成分が残り(画像53a)、剥がしマークのない検査画像(51b)は黒の面積が減少する(画像53b)。
画像53aと画像53bの黒の量を比較することにより検査用パターン16の有無を判別する(比較判定:S54)。例えば、画像53aと画像53bの黒の量の差が所定の量より大であれば角折れが生じたものと判定する。
【0025】
さらに、剥がしマーク13の位置を特定するマスクを併用して剥がしマーク13を抽出すれば、他の異物を剥がしマーク13と誤認することもなく、より信頼性の高い検査とすることも可能となる。
なお、線成分除去の手法(S53)としては、画像の「膨張」「収縮」を適宜繰り返すモルフォロジーと呼ばれる画像処理法がある。モルフォロジーについては例えば特開2004−318693に記載がある。
【0026】
以上説明したように、本発明の圧着ハガキ検査装置によれば、圧着ハガキの製造過程で発生する角折れに対し、従来困難であった内側に折れ込んだ角折れをも検出可能となるため、より高度な不良防止効果が得られる。
【符号の説明】
【0027】
10、11、12 圧着ハガキ
14 識別コード
13 剥がしマーク
15 シート状素材
25 角折れ
30 圧着ハガキ検査装置
31 コード読取器
32 画像取込カメラ
33 検査制御部
34 搬送部
35 排出機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状素材の角部を重ね合わせて折り畳み、重なり合う面を貼り合わせて一体に形成した圧着ハガキを被検物とし、前記角部に配置した検査用パターンを読み取ることにより前記ハガキの形状欠陥を検査する圧着ハガキ検査装置であって、
該圧着ハガキ検査装置は、
前記ハガキを個別に特定するために該ハガキに記録された識別コードを読み取るコード読取部と、
前記角部を含む近傍を検査領域として撮像する画像取込部と、
前記取込部により前記検査領域を撮像して得られる検査画像から前記パターンを抽出し、前記パターンの形状を基に前記形状欠陥の有無を判定する欠陥判定部と
前記判定部が出力する判定結果とコード読取部が出力するハガキ識別結果から、個々のハガキの判定結果を判定情報として記録する判定情報記録部と、
を有することを特徴とする圧着ハガキ検査装置。
【請求項2】
前記パターンは、機械読み取りが可能な文字記号であることを特徴とする請求項1記載の圧着ハガキ検査装置。
【請求項3】
前記パターンは、前記角部に設けられた、剥がし位置を示す剥がしマークであることを特徴とする請求項1記載の圧着ハガキ検査装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2907(P2013−2907A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133209(P2011−133209)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】