説明

圧縮可能な薬品貯槽を備える薬品送出装置

薬品貯槽(10)とピストン(11)とを含む薬品送出装置(50)が提供される。薬品貯槽(10)は薬品を包含するよう提供され、可撓壁(22)と、薬品送出装置(50)の環境内に薬品を計量分配するための計量分配孔(15)とを含む。ピストン(11)は、計量分配孔(15)を通じてある量の薬品を押し出すために、可撓壁(22)を圧迫するよう提供される。ピストン(11)の表面と可撓壁(22)との間の接着界面(51)が、ピストン(11)の表面と可撓壁(22)との間の滑りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピストンと、薬品とピストンとを包含するための薬品貯槽とを含む、薬品送出装置に関する。薬品貯槽は、可撓壁と、薬品を薬品送出装置の環境内に計量分配するための計量分配孔とを含む。ピストンは、可撓壁を圧迫して、計量分配孔を通じてある量の薬品を押し込むために薬品貯槽を圧縮するよう配置される。
【背景技術】
【0002】
そのような薬品供給装置は、小型電気モータ、例えば、その作動が搭載マイクロプロセッサによって制御されるステップモータを含み得る。ステップモータはピストンを壁に対して前進させ、例えば、ネジロッド機構によって押される。速度及びストロークに関する限り、ピストンは制御された方法で移動される。ピストンは可撓壁を薬品貯槽内に押し込む。その結果的、薬品貯槽の容積は減少し、薬品貯槽内の圧力が増大する。圧力増大は、ある量の薬品を計量分配孔から押し出させる。ピストンが可撓壁を医薬貯槽内に押し込む間、それは最小表面エネルギに対応する形状を取る。そのような形状は通常不規則であり、その結果、有用薬品貯槽容積はより小さくなり、ピストンの前進に対する抵抗はより高くなる。薬品貯槽がより空になる、可撓壁は、ピストンが襞(fold)及び薬品粘性からの抵抗に最早打ち勝ち得なくなるまで折り重なり(fold)始め、計量分配を停止する。ピストンが計量分配を停止すると、薬品は襞内に残留する。結果的に、薬品貯槽を完全に空にすることは可能ではない。加えて、ピストンが折り重ねられた可撓壁の表面に沿って滑り、計量分配孔からの如何なる薬品の押出しをも引き起こさないという問題がある。何故ならば、ピストン機構は効果的でないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
薬品貯槽をより確実に空にすることのできる、上述の薬品送出装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一の特徴によれば、この目的は、薬品貯槽と、ピストンと、接着界面とを含む、薬品送出装置を提供することによって達成される。薬品貯槽は、可撓壁と、薬品送出装置の環境内に薬品を計量分配するための計量分配孔とを含む。ピストンは、可撓壁を圧迫して、計量分配孔を通じてある量の薬品を押し出すために薬品貯槽を圧縮するよう配置される。接着界面は、ピストンの表面と可撓壁との間の滑りを防止するために、ピストンの表面と可撓壁との間に位置付けられる。
【0005】
接着界面は、可撓壁がピストン表面に適合させる状態を維持し、両方の表面が互いに滑り合うことを防止する。可撓壁内への並びに送出孔の方向におけるピストンのあらゆるステップで、その表面のより大きな部分が可撓壁表面によって覆われ、可撓壁表面に接着する。可撓壁の表面は折り重ならず、ピストン表面の周りで摺動させられる。
【0006】
接着界面は、例えば、ピストン表面の上、及び/又は、可撓壁の上の粘着塗膜であり得る。代替的に、所要の接着をもたらすために、2つの表面のうちの少なくとも一方の上で磁性塗膜が使用される。
【0007】
好適実施態様において、可撓壁は、接着界面に配置される少なくとも1つの非可撓部分を含む。非可撓部分の利点は、非可撓部分が折り重ねられたり皺にされたりしないことである。ピストンが非可撓部分を圧迫するとき、その形状は変わらない。可撓壁の可撓部分は、その一方で、可撓壁が全体的に依然として変形可能であり、且つ、薬品貯槽を圧縮するために可撓壁を使用し得ることを保証する。
【0008】
1つだけの或いは幾つかの非可撓性部分を備える可撓壁において、非可撓性部分の表面は、ピストン表面との間の接触領域で、ピストン表面の輪郭に従うことが好ましい。これは可撓壁に加えられる圧力の最適な分配を保証し、薬品貯槽を空にすることを更に促進する。加えて、予成形される可撓壁は、可撓壁に対して既に配置されたピストンを用いずに、薬品貯槽を正しい投与量まで充填することをより容易にする。
【0009】
本発明のこれらの及び他の特徴は、以下に記載する実施態様を参照してより明瞭に解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従った薬品送出装置を示す概略図である。
【図2】ピストンと非圧縮状態の薬品貯槽とを示す概略図である。
【図3】従来技術に従った薬品送出装置における部分的に圧縮された状態の薬品貯槽を示す概略図である。
【図4】従来技術に従った薬品送出装置における部分的に圧縮された状態の薬品貯槽を示す概略図である。
【図5】本発明に従った薬品送出装置における部分的に圧縮された状態の薬品貯槽を示す概略図である。
【図6】可撓壁内に非可撓部分を備える部分的に圧縮された状態の薬品貯槽を示す概略図である。
【図7】可撓壁内に多数の剛性部分を備える部分的に圧縮された状態の薬品貯槽を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明に従った薬品送出装置50を示している。薬品送出装置50は、患者の消化管に沿うどこかで解放される薬品と、解放されるべき薬品の量と前記解放の瞬間とを制御するための作動機構11,12とを含む、飲み込み可能なカプセルである。埋め込み可能な薬品送出装置と共に本発明を使用し得ることも付記されるべきである。解放されるべき薬品は、圧縮可能な医薬品貯槽10内に貯蔵される。薬品を、例えば、水中で溶解される乾燥粉末として、或いは、ゲル又は液体として貯蔵し得る。
【0012】
作動機構11,12は、ピストン11と、ネジロッド(screw rod)機構を用いてピストンを薬品貯槽10に向かって押すための小型電気モータ、例えば、ステップモータ12とを含む。ステップモータ12の代わりに、ピストン12を駆動するために、異なる駆動手段を使用し得る。例えば、(電)磁力又は膨張剤を使用して、ピストン11の駆動を実現し得る。ピストン11が医薬品貯槽10に対して押されるとき、医薬品貯槽10は圧縮され、医薬品貯槽10の内側の圧力が増大する。圧力増大の結果、薬品は計量分配孔15を通じて薬品送出装置50から押し出される。薬品解放を、例えば、内部クロック、pHセンサからのセンサ値、又は、電気的又は化学的な検出器素子からのトリガ信号によってもたらし得る。薬品送出装置50が無線通信のための手段を含むならば、薬品送出しを外部的に引き起こし得る。薬品送出装置50の全ての電子的機能の動作は、マイクロプロセッサ17によって制御され、且つ、電池16によって電力供給される。
【0013】
図2は、ピストン11と、非圧縮状態の薬品貯槽10とを示している。薬品貯槽10は、剛的なドーム形状のキャップ21と、可撓な壁22とを含む。図2に示される薬品貯槽10は、本発明が有利である薬品貯槽の一例である。しかしながら、本発明は可撓壁を備える他の薬品貯槽10を空にすることも改良する。例えば、薬品貯槽10は全体的に可撓であってよく、且つ/或いは、ドーム形状キャップ21及び/又は可撓壁22は図面中に示される形状と異なる形状を有してもよい。ピストン11が薬品貯槽10の可撓壁22内に駆動されると、貯槽容積は圧縮され、ある量の薬品が薬品送出孔15を通じて解放される。
【0014】
図3及び4は、従来技術に従った薬品送出装置における部分的に圧縮された状態の薬品貯槽10を示している。両方の図面において、薬品貯槽の可撓部分22は圧縮されているのに対し、ドーム形状キャップ21はその形状を維持している。図3において、可撓壁22は、図4におけるよりも少ない程度に圧縮されている。図3では、不均一な表面張力の故に、可撓壁の形状がピストン11のプロファイルに適合していないことが既に分かる。これはピストン11の抵抗の増大を引き起こし、薬品が可撓壁22の襞内に残存する。図4中に見ることができるように、不均一な表面張力及び薬品粘性は、半分入った薬品貯槽10の可撓壁22に多数の襞(fold)を形成させる。そのような襞は、ピストン11への抵抗を増大し、薬品の計量分配を完全に停止し得る。加えて、襞は可撓壁22とピストン11との間の接触面積を減少させ、両者の間の滑りを引き起こし、ピストンはその中心軸41に沿って移動しなくなる。何故ならば、ネジロッド機構は適切に機能しないからである。
【0015】
図5は、本発明に従った薬品送出装置50における部分的に圧縮された状態の薬品貯槽10を示している。この実施態様において、従来技術の問題は、ピストン11と可撓壁22との間に接着界面(adhesion interface)51を導入することによって解決されている。接着界面51は、可撓壁22がピストン11の表面に適合される状態を維持し、よって、両表面間の滑り及び可撓壁22の折重なり(fold)を防止する。接着界面51は、ピストン11の表面全体及び/又は可撓壁22の表面全体を覆い得る。好適実施態様において、接着界面51は、互いに接触するよう設計される表面の一部のみを覆う。代替的に、接着表面51は、想定される接触領域の一部のみを覆い得る。
【0016】
接着表面51は、ピストン11及び/又は可撓壁22の表面に塗布される粘着表面であってもよい。代替的に、磁性塗膜が一方の表面を覆い、他方の表面は磁性的であるか或いは磁化可能であり得る。他の選択肢は、静電帯電ポリマを使用する静電相互作用を利用することである。当業者は適切な接着表面51をもたらす多くの可能な方法を考え出し得るであろう。使用される接着表面51は、ピストン11又は薬品貯槽10に損傷を与えずに薬品貯槽10を再充填することを可能にするために、接着されるピストン11の表面から薬品貯槽10を依然として取り外し得るようであるのが好ましい。代替的に、薬品貯槽10及び/又は接着層51は、再使用のために薬品送出装置50を準備するときに交換される。
【0017】
ピストン11又は薬品貯槽10を損傷せずに表面を分離することを可能にするそのような接着層51は、更なる選択肢も可能にする。薬品貯槽10が完全に又は部分的に圧縮され、ピストン11の動作が逆転されるとき、薬品貯槽10の内側の圧力は降下し、体液が薬品貯槽10内に吸引される。
【0018】
図6は、可撓壁22内に非可撓部分61を備える、部分的に圧縮された薬品貯槽10を示している。非可撓部分61の形状は、対向するピストン11の表面に追従する。この実施態様において、これは非可撓部分61がドーム形状であることを意味する。この非可撓部分61の利点は、可撓部分が折り重ねられたり皺にされたりし得ないことである。ピストン11が非可撓部分61を圧迫するとき、その形状は変化しない。可撓壁22の可撓部分は、その一方で、可撓壁22が全体的に依然として変形可能であること、及び、薬品貯槽10が依然として圧縮可能であることを保証する。
【0019】
非可撓部分61は、ピストン11によって可撓壁22に加えられる圧力の最適な分配を保証し、薬品貯槽10を空にすることを更に促進する。加えて、予成形される可撓壁22は、可撓壁22に対して既に配置されたピストン11なしでも、薬品貯槽10を正しい投与量まで充填することをより容易にする。十分に可撓な薬品貯槽10が縁まで充填されるならば、薬品の粘性は、ピストンが動作を開始するには高すぎる抵抗をもたらし得る。
【0020】
図7は、可撓壁内に多数の剛性部分71を備える、部分的に圧縮された薬品貯槽10を示している。所要の可撓性を可撓壁22にもたらすよう、剛性部分71は可撓部分72と互い違いにされている。
【0021】
上述した実施態様は本発明を限定するというよりもむしろ例示するものであること、及び、当業者は付属の請求項の範囲から逸脱せずに多くの代替的な実施態様を設計し得ることが付記されるべきである。請求項において、括弧間の如何なる参照記号も請求項を制限するものと解釈されてはならない。「含む」という動詞及びそれらの活用形は、請求項中に述べられる以外の素子又はステップの存在を排除しない。ある素子に先行する不定冠詞の存在は、そのような素子が複数存在することを排除しない。幾つかの別個の素子を含むハードウェアを用いて並びに適切にプログラムされたコンピュータを用いて本発明を実施し得る。幾つかの手段を列挙する装置の請求項において、これらの手段の幾つかを1つの同じ品目によって具現化し得る。特定の手段が相互に異なる従属項において引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用し得ないことを示さない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬品を包含するための薬品貯槽を含み、該薬品貯槽は、
− 可撓壁と、
− 前記薬品を当該薬品送出装置の環境内に計量分配するための計量分配孔とを含む、
薬品送出装置であって、
前記計量分配孔を通じてある量の前記薬品を押し込むために前記薬品貯槽を圧縮するよう前記可撓壁を圧迫するピストンと、
該ピストンの表面と前記可撓壁との間の滑りを防止するための前記ピストンの前記表面と前記可撓壁との間の接着界面とを含む、
薬品送出装置。
【請求項2】
前記接着界面は、前記ピストンの前記表面の上の粘着塗膜を含む、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項3】
前記接着界面は、前記可撓壁の上の粘着塗膜を含む、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項4】
前記粘着塗膜は、シリコン基樹脂を含む、請求項2又は3に記載の薬品送出装置。
【請求項5】
前記接着表面は、磁性塗膜を含む、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項6】
前記接着表面は、静電的に帯電されるポリマを含む、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項7】
前記可撓壁は、前記接着界面に配置される少なくとも1つの非可撓部分を含む、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項8】
当該薬品送出装置は、飲み込み可能な薬品送出装置である、請求項1に記載の薬品送出装置。
【請求項9】
当該薬品送出装置は、埋め込み可能な薬品送出装置である、請求項1に記載の薬品送出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−501569(P2013−501569A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524322(P2012−524322)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/053610
【国際公開番号】WO2011/018753
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】