説明

圧縮木製品の製造方法、および圧縮木製品

【課題】開口を有する箱状のブランク材を成形する際に割れを発生することがなく、成形後に適切な強度を付与する。
【解決手段】略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、木材の繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差するブランク材を形成するブランク材形成工程と、前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、前記軟化工程で軟化したブランク材に圧縮力を加えることによって前記軟化工程前のブランク材よりも容積が小さくかつ前記軟化工程前のブランク材と異なる箱状に変形させる圧縮工程と、前記圧縮工程によって変形したブランク材の形状を固定化する固定化工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を所定の三次元形状に圧縮成形された圧縮木製品の製造方法、および圧縮木製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことの出来る素材として木材が注目されており、その成形技術も飛躍的に進歩しつつある。
【0003】
従来より、木材の圧縮成形技術として、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって三次元形状を有する木材を成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、まず木材を軟化させた状態で木材を圧縮して仮固定を行う。その後、仮固定した木材をスライスした板材を金型にセットし、高圧水蒸気内で再度板材を軟化させ、曲げ処理を行なう。続いて、曲げ処理を行なった湾曲状の部材を再度金型にセットして再び軟化させ、プレス機によってプレスすることにより、最終形状を得る。
【0004】
また、別な木材の圧縮成形技術として、抗膨潤能(ASE)を向上させることによって寸法安定性が向上した木材を製造するために、木材に蒸気加熱加圧処理を施した後、二次工程としてその木材に加熱加圧処理を行う技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。この技術では、実施例として、平板状の木材に対して加熱加圧処理を行うことにより、その木材の寸法安定性が向上することの記載がなされている。
【0005】
上述した圧縮成形技術を用いることにより、例えば主面が略長方形をなす平板状の主板部と、この主板部の周縁部から湾曲して立ち上がる側板部とを備え、開口を有する箱状をなす圧縮木製品を形成することができる(例えば、特許文献3を参照)。この技術では、圧縮によって予め減少する分の容積を加えた容積を有し、成形後の形状とは異なる箱状をなすブランク材を、一対の金型を用いて圧縮成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−77619号公報
【特許文献2】特許第2855139号公報
【特許文献3】特開2005−205674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、箱状をなす圧縮木製品を成形する場合、強度面を考慮して、主板部の長手方向と木材の繊維方向が略平行となるようにすることが多い。しかしながら、主板部の長手方向と木材の繊維方向が略平行となるように形取る場合、側板部の中にはその肉厚方向が木材の繊維方向と略平行となる部分が生じる。この部分では、木材の繊維の長さが短いため、圧縮時に、隣接して延びる木材の繊維同士を引き裂く方向に曲げ応力が作用すると割れが発生してしまう可能性が高かった。また、たとえ圧縮によって割れが発生しなくても、木材の繊維の長さが短いために圧縮後に適切な強度を付与することができないおそれもあった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、開口を有する箱状のブランク材を成形する際に割れを発生することがなく、成形後に適切な強度を付与することができる圧縮木製品の製造方法および圧縮木製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、木材を圧縮することによって曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品を製造する圧縮木製品の製造方法であって、略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、木材の繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差するブランク材を形成するブランク材形成工程と、前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、前記軟化工程で軟化したブランク材に圧縮力を加えることによって前記軟化工程前のブランク材よりも容積が小さくかつ前記軟化工程前のブランク材と異なる箱状に変形させる圧縮工程と、前記圧縮工程によって変形したブランク材の形状を固定化する固定化工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記ブランク材について、前記木材の繊維方向と前記主板部の主面における略長方形の四辺とが該主面上でそれぞれ交差する角度は、30度以上60度以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記固定化工程は、大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で前記ブランク材の固定化を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記圧縮工程は、大気よりも高温高圧であり、かつ前記固定化工程を行なう水蒸気雰囲気よりも低温低圧の水蒸気雰囲気中で前記ブランク材に圧縮力を加えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る圧縮木製品の製造方法は、上記発明において、前記圧縮工程は、一対の凸金型および凹金型によって前記ブランク材を挟持して圧縮力を加えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る圧縮木製品は、木材を圧縮することによって製造され、曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品であって、略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、自らの繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る圧縮木製品は、上記発明において、前記繊維方向と前記主板部の主面における略長方形の四辺とが該主面上でそれぞれ交差する角度は、30度以上60度以下であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る圧縮木製品は、上記発明において、電子機器を外装する電子機器用外装体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、木材の繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差するブランク材を圧縮成形しているため、ブランク材の中で隣接して延びる繊維同士が、圧縮時の曲げ応力によって剥がれにくくなっている。したがって、開口を有する箱状のブランク材を圧縮成形する際に割れを発生することがなく、成形後に適切な強度を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の概要を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法のブランク材形成工程の概要を模式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法のブランク材形成工程によって形成されたブランク材の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3の矢視A方向から見た模式図である。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の圧縮工程の概要を模式的に示す図である。
【図6】図6は、図5のB−B線断面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の圧縮工程において、ブランク材の変形がほぼ完了した状態を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の加熱整形工程において、一対の加熱整形用凹金型と加熱整形用凸金型とを型締めした状態を模式的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の構成を示す斜視図である。
【図11】図11は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品の適用例であるデジタルカメラの外装体の構成を示す斜視図である。
【図12】図12は、図11に示す外装体によって外装されるデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態に係る圧縮木製品の製造方法の処理の概要を示すフローチャートである。図1において、まずブランク材を形成する(ステップS1)。図2は、ブランク材形成工程の概要を模式的に示す図である。ブランク材形成工程では、無圧縮状態にある無垢材などの原木1からブランク材2を切削等によって形取る。
【0021】
図3は、ブランク材2の構成を示す斜視図である。図4は、図3の矢視A方向の平面図である。なお、図4では、ブランク材2の木目Gを省略している。ブランク材2は、略長方形の主面を有する平板状の主板部21と、主板部21の周縁から主板部21に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部22とを備えた箱状をなす。ブランク材2の繊維方向Lは、主板部21の主面の外縁をなす略長方形の四辺(二つの長辺21aおよび二つの短辺21b)とそれぞれ交差するとともに、側板部22の端面の略全周にわたって該端面の厚さ方向(例えば図4のT1〜T4)と交差する。側板部22は、互いに平行な二つの長辺21aの各々から延在する二つの第1側板部22aと、互いに平行な二つの短辺21bの各々から延在する二つの第2側板部22bとを備える。なお、ここでいう略長方形には、長方形から若干ゆがんだ平行四辺形や正方形に近い形状も含まれるものとする。
【0022】
以上の構成を有するブランク材2では、主板部21から側板部22にかけて木材の繊維がつながる。また、ブランク材2では、側板部22のほぼ全域にわたって木材の繊維の長さが側板部22の肉厚よりも長い。特に、ブランク材2の繊維方向Lが主板部21の長辺21aとなす角度をθ1とする一方、主板部21の短辺21bとなす角度をθ2とすると、θ1、θ2がそれぞれ30度以上60度以下であれば、側板部22の各部分における肉厚とその部分を通る木材の繊維長さとの比のバラツキを抑制することができるため、より好ましい。
【0023】
次に、ブランク材2を、高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置して、ブランク材2を軟化させる(ステップS2)。この水蒸気雰囲気は、圧力が0.1〜0.8MPa程度であり、温度が100〜170℃程度である。このような水蒸気雰囲気は、圧力容器を用いることによって実現される。圧力容器を用いる場合には、上記水蒸気雰囲気を有する圧力容器の中にブランク材2を放置することによって軟化させればよい。なお、高温高圧の水蒸気雰囲気中でブランク材2を軟化させる代わりに、マイクロ波によってブランク材2を加熱して軟化させてもよい。またブランク材2を煮沸して軟化させてもよい。
【0024】
この後、軟化させたブランク材2を圧縮する(ステップS3)。この工程では、軟化工程と同じ水蒸気雰囲気中で一対の金型を用いてブランク材2を挟持して圧縮力を加えることにより、ブランク材2を軟化工程前とは異なる箱状に変形させる。圧力容器の中でブランク材2を軟化させた場合には、引き続きその圧力容器の中でブランク材2を圧縮すればよい。
【0025】
図5は、圧縮工程の概要を示すとともに、圧縮工程で使用する金型の要部の構成を示す図である。図6は、図5のB−B線断面図である。図5および図6に示すように、ブランク材2は、一対の凹金型101、凸金型102によって挟持され、所定の圧縮力が加えられる。
【0026】
圧縮工程の際にブランク材2の上方から圧縮力を加える凹金型101は、ブランク材2の突出している外側面に当接する平滑面を有する凹部111を備える。主板部21から第1側板部22aにかけて湾曲する部分の表面であって凹金型101と対向する側の表面の曲率半径をROとし、この表面に当接する凹部111の表面の曲率半径をRAとすると、二つの曲率半径RO、RAは、RO>RAという関係を満たす。
【0027】
一方、圧縮工程の際にブランク材2の下方から圧縮力を加える凸金型102は、ブランク材2の窪んでいる内側面に当接する平滑面を有する凸部121を備える。主板部21から側板部22aにかけて湾曲する部分の表面であって凸金型102と対向する側の表面の曲率半径をRIとし、この表面に当接する凸部121の表面の曲率半径をRBとすると、二つの曲率半径RI、RBは、RI>RBという関係を満たす。
【0028】
図7は、圧縮工程において、凹金型101および凸金型102によってブランク材2が挟持されて所定の圧力が加えられた状態を示す図であり、ブランク材2の変形がほぼ完了した状態を示す図である。図7に示す状態で、ブランク材2は、凹金型101および凸金型102から圧縮力を受けることにより、凹金型101と凸金型102が最接近した状態で凹部111および凸部121が形成する隙間に相当する形状、すなわち軟化工程前とは異なる箱状に変形する。この隙間形状は、後述する加熱整形工程(ステップS6)を経て得られる形状と略相似する形状をなしている。
【0029】
以上説明した圧縮工程において、側板部22は、主板部21から立ち上がる角度が圧縮後に大きくなる方向へ曲げられる。この際には、側板部22の外周面において、隣接して延びる繊維同士を引き裂くような力が加わるが、ブランク材2における繊維は、側板部22のほぼ全域にわたって側板部22の厚さ方向と交差しているため、繊維が側板部の厚さ方向と平行な場合と比較して、隣接する繊維同士が引き裂かれにくい。したがって、ブランク材2においては、圧縮工程において割れを生じる可能性が小さい。
【0030】
圧縮工程が終了した後、凹金型101および凸金型102によってブランク材2を挟持したままの状態で、上述した水蒸気雰囲気よりもさらに高温高圧の水蒸気雰囲気を凹金型101および凸金型102の周囲に形成することにより、ブランク材2の形状を固定化する(ステップS4)。このときの水蒸気雰囲気は、圧力が0.6〜3.4MPa程度であるとともに、温度が160〜240℃程度であり、圧縮工程における水蒸気雰囲気よりも高温高圧となるように定められる。この固定化処理を圧力容器中で行う場合には、軟化工程における容器内圧力を上述した範囲に含まれる値とすればよい。
【0031】
続いて、凹金型101、凸金型102、およびブランク材2を大気中へ放出し、ブランク材2を乾燥させる(ステップS5)。この際には、凹金型101と凸金型102を離間することによってブランク材2の乾燥を促進するようにしてもよい。乾燥工程後の主板部21の肉厚は、圧縮工程前の主板部21の厚さの20〜50%程度であるのが好ましい。ここで、乾燥工程後のブランク材をブランク材12と称すると、ブランク材12は、厚さに若干のバラツキを有している可能性がある。そのため、本実施の形態においては、ブランク材12の肉厚の最小値が、後述する加熱整形工程後の形状における肉厚以上となるように設定されることが望ましい。
【0032】
乾燥工程の後、大気中でブランク材12を加熱しながらブランク材12と略相似する形状に整形する(ステップS6)。図8は、この加熱整形工程の概要を模式的に示す図である。加熱整形工程では、一対の加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202を用いてブランク材12を挟持することにより、ブランク材12を整形する。
【0033】
図8でブランク材12の上方に位置する加熱整形用凹金型201は、ブランク材12の突出している側の表面に当接する平滑面を有する凹部211を備える。一方、図8でブランク材12の下方に位置する加熱整形用凸金型202は、ブランク材12の窪んでいる側の表面に当接する平滑面を有する凸部221を備える。
【0034】
図9に示すように、加熱整形用凹金型201と加熱整形用凸金型202を型締めしたときに凹部211と凸部221によって形成される隙間の形状は、ブランク材12を加熱整形した後に得られるべき最終形状に対応している。この最終形状の容積は、加熱整形工程によって減少する分だけブランク材12の容積よりも小さい。なお、加熱整形工程後のブランク材12の形状は、最終形状と一致することが望ましいが、個々のブランク材12には個体差があるため、最終形状とは若干の誤差が生じる場合もある。
【0035】
加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202の内部には、熱を発生するヒータ203、204がそれぞれ設けられている。ヒータ203、204は、温度制御機能を有する制御装置205にそれぞれ接続されており、制御装置205のもとで発熱し、加熱整形用凹金型201および加熱整形用凸金型202にそれぞれ熱を加える。制御装置205は、ブランク材12を挟持している時の金型温度を、木質部の非結晶領域が結晶化する温度以上であって木質部の熱分解温度以下となるように制御する。
【0036】
このようにして、制御装置205が金型温度を制御することにより、加熱整形工程の最中に木質部の結晶化が進むと同時に木質部の密度が一段と高くなるため、木質部の表面硬度が増加する。その結果、吸湿がなく形状安定性に優れた圧縮木製品を得ることができる。
【0037】
また、ブランク材12の表面を大気中で加熱整形することにより、木質部の細胞壁の内部に含まれている物質が表面に抽出され、その表面に色、艶が生じる。その結果、木材ならではの独特の風合いを醸し出すことができる。
【0038】
ところで、加熱整形用凹金型201の凹部211と対向するブランク材12の外側表面に整形代を設ける一方、加熱整形用凸金型202の凸部221の形状を図5等に示す凸金型102の凸部121の形状と等しくすれば、加熱整形時にブランク材12の外側表面に働く引っ張り力を極力抑えることができる。したがって、この場合には、加熱整形時におけるブランク材12の表面の割れ等を一段と確実に防止することができる。
【0039】
図10は、以上説明した圧縮木製品の製造方法によって製造された圧縮木製品の構成を示す斜視図である。同図に示す圧縮木製品3は、ブランク材2の主板部21に対応し、略長方形の主面を有する平板状の主板部31と、側板部22に対応し、主板部31の周縁から該主板部31に対して斜め方向に湾曲して延在する側板部32とを有する。側板部32は、ブランク材2の第1側板部22aおよび第2側板部22bにそれぞれ対応する第1側板部32aおよび第2側板部32bを有する。圧縮木製品3は、圧縮工程前のブランク材2よりも容積が小さく、ブランク材2とは異なる箱状をなしている。
【0040】
また、圧縮木製品3の繊維方向は、主板部31の主面と略平行であり、かつ主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差している。このことにより、第1側板部32aおよび第2側板部32bに適切な強度が付与される。なお、第1側板部32aおよび第2側板部32bに同程度の強度が付与されるためには、この交差する角度が、30度以上60度以下であることが望ましい。
【0041】
図11は、圧縮木製品3の適用例であるデジタルカメラの外装体の構成を示す斜視図である。同図に示す外装体4は、デジタルカメラの前面側(被写体と対向する側)を外装するものであり、圧縮木製品3の主板部31、側板部32(第1側板部32a、第2側板部32b)にそれぞれ対応する主板部41、側板部42(第1側板部42a、第2側板部42b)を備える。主板部41は、デジタルカメラの撮像部を表出する円筒形状の開口部411と、デジタルカメラのフラッシュを表出する直方体形状の開口部412とを有する。第1側板部42aは、シャッターボタンを表出する半円筒形状の切り欠き421を有する。
【0042】
図12は、外装体4によって前面側が外装されるデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。同図に示すデジタルカメラ301は、撮像部302と、フラッシュ303と、シャッターボタン304とを有する。撮像部302およびフラッシュ303が表出するデジタルカメラ301の前面側は、外装体4によって外装される。一方、デジタルカメラ301の背面側は、圧縮木製品3を用いて外装体4と同様に形成される外装体5によって外装される。このように、本実施の形態に係る圧縮木製品を、デジタルカメラの外装体として適用する場合には、肉厚が1.0〜1.6mm程度となるようにすれば好ましい。加えて、最終形状の湾曲部分の外周側および内周側の曲率半径に相当する図6のRA、RBは、ともに10mm以下であればより好ましい。
【0043】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、略長方形の主面を有する平板状の主板部21と、主板部21の周縁から主板部21に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部22とを備えた箱状をなし、木材の繊維方向Lが、主板部21の主面と略平行であり、かつ主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺(二つの長辺21a、二つの短辺21b)とそれぞれ交差するブランク材2を圧縮成形しているため、ブランク材2の中で隣接して延びる繊維同士が、圧縮時の曲げ応力によって剥がれにくくなっている。したがって、開口を有する箱状のブランク材2を圧縮成形する際に割れを発生することがなく、成形後に適切な強度を付与することが可能となる。
【0044】
なお、本発明に係る圧縮木製品は、主板部と側板部との境界外周部を湾曲させる代わりに面取りを施してもよい。特に、デジタルカメラの外装体として適用する場合には、面取り部分の幅を10mm以下とするのが好ましい。
【0045】
また、本発明に係る圧縮木製品は、デジタルカメラ以外の電子機器用外装体としても適用可能である。また、本発明に係る圧縮木製品は、例えば食器、各種筐体、建材などにも適用可能である。
【0046】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 原木
2、12 ブランク材
3 圧縮木製品
4、5 外装体
21、31、41 主板部
22、32、42 側板部
22a、32a、42a 第1側板部
22b、32b、42b 第2側板部
101 凹金型
102 凸金型
111、211 凹部
121、221 凸部
201 加熱整形用凹金型
202 加熱整形用凸金型
203,204 ヒータ
205 制御装置
301 デジタルカメラ
302 撮像部
303 フラッシュ
304 シャッターボタン
G 木目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を圧縮することによって曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品を製造する圧縮木製品の製造方法であって、
略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、木材の繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差するブランク材を形成するブランク材形成工程と、
前記ブランク材形成工程で形成したブランク材を軟化させる軟化工程と、
前記軟化工程で軟化したブランク材に圧縮力を加えることによって前記軟化工程前のブランク材よりも容積が小さくかつ前記軟化工程前のブランク材と異なる箱状に変形させる圧縮工程と、
前記圧縮工程によって変形したブランク材の形状を固定化する固定化工程と、
を有することを特徴とする圧縮木製品の製造方法。
【請求項2】
前記ブランク材について、前記木材の繊維方向と前記主板部の主面における略長方形の四辺とが該主面上でそれぞれ交差する角度は、30度以上60度以下であることを特徴とする請求項1記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項3】
前記固定化工程は、
大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で前記ブランク材の固定化を行うことを特徴とする請求項1または2記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項4】
前記圧縮工程は、
大気よりも高温高圧であり、かつ前記固定化工程を行う水蒸気雰囲気よりも低温低圧の水蒸気雰囲気中で前記ブランク材に圧縮力を加えることを特徴とする請求項3記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項5】
前記圧縮工程は、
一対の凸金型および凹金型によって前記ブランク材を挟持して圧縮力を加えることを特徴とする請求項4記載の圧縮木製品の製造方法。
【請求項6】
木材を圧縮することによって製造され、曲面を含む3次元形状を有する圧縮木製品であって、
略長方形の主面を有する平板状の主板部と、前記主板部の周縁から該主板部に対して斜め方向に湾曲して延在し、周回する開口端面を有する側板部とを備えた箱状をなし、
自らの繊維方向が、前記主板部の主面と略平行であり、かつ前記主面上で該主面の外縁をなす略長方形の四辺とそれぞれ交差することを特徴とする圧縮木製品。
【請求項7】
前記繊維方向と前記主板部の主面における略長方形の四辺とが該主面上でそれぞれ交差する角度は、30度以上60度以下であることを特徴とする請求項6記載の圧縮木製品。
【請求項8】
電子機器を外装する電子機器用外装体であることを特徴とする請求項6または7記載の圧縮木製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−148275(P2011−148275A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13542(P2010−13542)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】