説明

圧縮機制御装置

【課題】エアコンECUを一種類としながらエンジン駆動圧縮機に対しても電動圧縮機に対しても効率よく制御を実施可能な汎用性の高い圧縮機制御装置を提供する。
【解決手段】エアコンECU(10)は、環境パラメータ検出手段(20〜25)からの環境パラメータに応じてエンジン駆動圧縮機(40)の電磁クラッチ(44)の断接信号を生成し出力するとともに環境パラメータの信号をそのまま出力する一種類の制御ユニットからなり、電磁クラッチ(44)の電磁部及び電動圧縮機(30)の電動モータ制御部(34)は、エアコンECUから出力された電磁クラッチの断接信号(クラッチ断接信号)または環境パラメータの信号(各種センサ値)を選択的に入力することで、エンジン駆動圧縮機においては電磁クラッチを断接作動し或いは電動圧縮機においては電動モータの回転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機制御装置に係り、詳しくは、車両用エアコンディショナの圧縮機を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用エアコンディショナ(以下、エアコン)としては、従来、エンジンの駆動力で冷凍サイクルの圧縮機を作動させるものが一般的である。このようなエンジン駆動圧縮機では、エンジンと圧縮機との間にクラッチを介装し、各種センサ情報に基づきエアコン電子コントロールユニット(エアコンECU)により演算処理したクラッチ制御指令に応じて当該クラッチを断接操作し、圧縮機の出力を調節するようにしている。
【0003】
一方、最近ではバッテリの電力で作動する電動圧縮機も多用されつつあり、当該電動圧縮機では、各種センサ情報に基づきエアコンECUにより目標回転速度を演算し、当該目標回転速度指令に応じて電動モータの回転速度を制御することで圧縮機の出力を調節するようにしている。
このようにエンジン駆動圧縮機と電動圧縮機とが存在していると、同一の車種においても車両仕様等によりエンジン駆動圧縮機を搭載する車両と電動圧縮機を搭載する車両とが混在することが有り得、この場合、それぞれ対応する専用のエアコンECUを準備する必要がある。
【0004】
しかしながら、二種類のエアコンECUを持つことは、製造面及び管理面でコストが嵩むという問題がある。
そこで、エアコンECUの共用化を図ることが考えられる。しかしながら、この場合、クラッチ制御指令の演算処理と回転速度指令の演算処理という異なる二つの機能を併せ有する必要があるところ、回転速度指令の演算処理はクラッチ制御指令の演算処理よりも演算が複雑であることから処理能力の高い高価な仕様のエアコンECUを必要とし、エンジン駆動圧縮機では不要であるにも拘わらず全体としてエアコンECUの製造コストが嵩むという問題がある。
【0005】
このようなことから、例えば、エンジンと電動モータとを駆動源に有したハイブリッド車両において、エアコンECUとは別に新たに設けられるハイブリッドECUを利用して圧縮機用電動モータの回転速度を調節する構成の装置が開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−276908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、車両がハイブリッド車両であって、ハイブリッドECUを用いて圧縮機用電動モータの回転速度を調節することができる場合にのみ適用が限られており、汎用的なものとは言い難い。
即ち、ハイブリッドECUが無い場合には、必然的に上記の如く二種類のエアコンECUを用意するか或いはエアコンECUの共用化を図る必要が生じ、依然として上記問題が課題として存在する。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、エアコンECUを一種類としながらエンジン駆動圧縮機に対しても電動圧縮機に対しても効率よく制御を実施可能な汎用性の高い圧縮機制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するべく、請求項1の圧縮機制御装置は、車両用エアコンディショナの冷凍サイクルに介装されたエンジン駆動圧縮機または電動圧縮機と、前記車両用エアコンディショナの制御に必要な環境パラメータを検出する環境パラメータ検出手段と、エンジンから前記エンジン駆動圧縮機への駆動力の伝達を断接操作する電磁クラッチの電磁部または前記電動圧縮機の電動モータの回転を制御する電動モータ制御部に電気的に接続され、前記環境パラメータ検出手段により検出した環境パラメータに応じて前記電磁クラッチ及び前記電動モータを含む前記車両用エアコンディショナの運転を制御するエアコン制御ユニットとを備え、前記エアコン制御ユニットは、前記環境パラメータに応じて前記電磁クラッチの断接信号を生成し出力するとともに前記環境パラメータの信号をそのまま出力する一種類の制御ユニットからなり、前記電磁クラッチの電磁部及び前記電動モータ制御部は、前記エアコン制御ユニットから出力された前記電磁クラッチの断接信号または前記環境パラメータの信号を選択的に入力することで前記電磁クラッチを断接作動し或いは前記電動モータの回転を制御し、それぞれ前記エンジン駆動圧縮機または前記電動圧縮機を作動させることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の圧縮機制御装置は、請求項1において、前記電動圧縮機の前記電動モータ制御部は、前記環境パラメータの信号を選択的に入力して該環境パラメータに基づき目標回転速度を求め、該目標回転速度に応じて前記電動モータの回転を制御することを特徴とする。
また、請求項3の圧縮機制御装置は、請求項1または2において、前記エンジン駆動圧縮機の前記電磁クラッチの電磁部は、前記エアコン制御ユニットと電気的に接続され、前記電動圧縮機の前記電動モータ制御部は、前記エアコン制御ユニットとLAN接続されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の圧縮機制御装置によれば、エアコン制御ユニットは、環境パラメータに応じて電磁クラッチの断接信号を生成し出力するとともに環境パラメータの信号をそのまま出力する一種類の制御ユニットからなり、エンジン駆動圧縮機の電磁クラッチの電磁部及び電動圧縮機の電動モータ制御部は、エアコン制御ユニットから出力された電磁クラッチの断接信号または環境パラメータの信号を選択的に入力することで電磁クラッチを断接作動したり或いは電動モータの回転を制御したりするので、エアコン制御ユニットの仕様をエンジン駆動圧縮機及び電動圧縮機のいずれか一方の処理側に偏らず他方にとって無駄にならないようにしながら該エアコン制御ユニットの共用化を図るようにでき、専用のエアコン制御ユニットを二種類以上用意する場合と比較して、圧縮機制御装置の製造コスト及び管理コストを全体として低く抑えることができる。
【0011】
これにより、エアコンの圧縮機がエンジン駆動圧縮機であっても電動圧縮機であっても効率よく制御可能であり、汎用性の高い圧縮機制御装置を実現することができる。
請求項2の圧縮機制御装置によれば、電動圧縮機の電動モータの目標回転速度を環境パラメータに応じて当該電動圧縮機の電動モータ制御部で直接求めるようにすることにより、エアコン制御ユニットの負荷を良好に低減して該エアコン制御ユニットの共用化を実現することができる。
【0012】
請求項3の圧縮機制御装置によれば、エンジン駆動圧縮機の電磁クラッチの電磁部を前記エアコン制御ユニットと電気的に接続し、電動圧縮機の電動モータ制御部をエアコン制御ユニットにLAN接続することにより、エンジン駆動圧縮機と電動圧縮機が必要な信号をそれぞれ容易に選択可能にしてエアコン制御ユニットの共用化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面により本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る圧縮機制御装置を示すブロック図である。
圧縮機制御装置は、車両に搭載された車両用エアコンディショナ(以下、エアコン)の空調制御を行う一構成要素であり、冷凍サイクルに介装された冷媒圧縮機の運転制御を行うものである。なお、エアコン及び冷凍サイクルの一般的な構成及び作用については公知であり、ここでは説明を省略する。
【0014】
同図に示すように、圧縮機制御装置は、各種センサ類がエアコン電子コントロールユニット(以下、エアコンECU、エアコン制御ユニット)10の入力側に電気的に接続され、当該エアコンECU10の出力側にコンプレッサユニット(圧縮機)が電気的に接続されて構成されている。
詳しくは、エアコンECU10の入力側には、エアコンの制御に必要な環境パラメータを取得すべく、日射センサ20、外気温センサ21、内気温センサ22、エバポレータ出口空気温度センサ23、水気温センサ24、車速センサ25等の各種センサ類(環境パラメータ検出手段)が接続されており、一方、出力側には、車種或いは車両仕様に応じて、電動コンプレッサユニット(電動圧縮機)30が車内LAN(車内ローカルエリアネットワーク)50を介して接続され、或いは、エンジン駆動式のコンプレッサユニット(エンジン駆動コンプレッサユニット、エンジン駆動圧縮機)40が電気回線51を介して電気的に接続されている。電動コンプレッサユニット30は、電動モータを有する電動コンプレッサ本体32と電動コンプレッサECU(電動モータ制御部)34からなり、エアコンECU10からの信号に基づき電動コンプレッサECU34によって電動コンプレッサ本体32が作動制御されるよう構成されている。ここに、電動コンプレッサ本体32としては例えば電動スクロール型圧縮機が採用される。
【0015】
エンジン駆動コンプレッサユニット40は、エンジン駆動コンプレッサ本体42と当該エンジン駆動コンプレッサ本体42へのエンジン(図示せず)の駆動力の伝達を断接操作する電磁クラッチ44からなり、電磁クラッチ44がエアコンECU10からのクラッチ断接信号に基づき接続作動されている間は、エンジン駆動コンプレッサ本体42がエンジン回転速度に応じて作動制御されるよう構成されている。ここに、エンジン駆動コンプレッサ本体42としては上記同様例えばスクロール型圧縮機が採用される。
【0016】
詳しくは、電動コンプレッサユニット30の電動コンプレッサECU34は、エアコンECU10を介して上記各種センサ20〜25からの情報を選択的に車内LAN50から取得し、これら各種センサ20〜25からの情報に基づき直接に電動コンプレッサ本体32の電動モータの目標回転速度Ntを設定する機能を有しており、当該目標回転速度Ntに応じて電動コンプレッサ本体32を作動制御する。なお、電動コンプレッサECU34は元来比較的高い演算負荷が要求されるものであることから、目標回転速度Ntを設定することについては十分な処理能力を有している。
【0017】
一方、エンジン駆動コンプレッサユニット40の電磁クラッチ44は、当該電磁クラッチ44の電磁部が上記各種センサ20〜25からの情報に基づきエアコンECU10により生成され出力されたクラッチ断接信号を選択的に電気回線51から取得し、当該クラッチ断接信号に基づいてクラッチを電磁的に断接操作する。
このようなことから、エアコンECU10は、電動コンプレッサユニット30のために上記各種センサ20〜25からの各種センサ値をそのまま車内LAN50に出力する機能と、エンジン駆動コンプレッサユニット40のために上記各種センサ20〜25からの情報に基づきクラッチ断接信号を生成して電気回線51に出力する機能とを併せ有し、統一された一種類の制御ユニットとして構成されている。
【0018】
ところで、エアコンECU10の有する機能は、このように各種センサ20〜25からの情報をそのまま車内LAN50に出力する機能とクラッチ断接信号を生成し電気回線51に出力する機能のみであることから、演算負荷は低くその処理は比較的簡単なものである。故に、エアコンECU10は、当該簡単な処理を実施できれば十分であり、低処理能力にして低廉な仕様で構成されている。
【0019】
これより、本発明に係る圧縮機制御装置では、電動コンプレッサユニット30を用いる場合とエンジン駆動コンプレッサユニット40を用いる場合とでエアコンECU10を共用していることになるのであるが、このようにエアコンECU10を共用化しても、エアコンECU10の仕様が電動コンプレッサユニット30を用いる場合とエンジン駆動コンプレッサユニット40を用いる場合のいずれか一方の処理側に偏らず他方にとって無駄(過剰スペック)にならないようにしつつ、圧縮機制御装置の製造コストを全体として低く抑えることができる。
【0020】
また、エアコンECU10を一種類に統一することで、エアコンECUを二種類以上用意する場合と比較して、圧縮機制御装置の管理コストも低く抑えることができる。
従って、例えばエンジンと電動モータとを駆動源に有したハイブリッド車両において、エアコンに電動コンプレッサを用いる場合であっても、エンジン駆動コンプレッサを用いる場合と同一のエアコンECU10をそのまま流用するようにでき、専用のエアコンECUを別途準備する必要がない。
【0021】
このように、本発明に係る圧縮機制御装置によれば、エアコンのコンプレッサユニットが電動コンプレッサユニット30であってもエンジン駆動コンプレッサユニット40であっても効率よく制御可能であり、汎用性の高い圧縮機制御装置を実現可能である。
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
【0022】
例えば、上記実施形態では、環境パラメータを取得するセンサとして日射センサ20、外気温センサ21、内気温センサ22、エバポレータ出口空気温度センサ23、水気温センサ24、車速センサ25を用いるようにしているが、環境パラメータを取得するセンサはこれらに限られるものではなく、他の環境パラメータを用いるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、電動コンプレッサ本体32やエンジン駆動コンプレッサ本体42として例えば電動スクロール型圧縮機を採用しているが、圧縮機はこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る圧縮機制御装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0024】
10 エアコンECU(エアコン制御ユニット)
20〜25 各種センサ類(環境パラメータ検出手段)
30 電動コンプレッサユニット(電動圧縮機)
32 電動コンプレッサ本体
34 電動コンプレッサECU(電動モータ制御部)
40 エンジン駆動コンプレッサユニット(エンジン駆動圧縮機)
42 エンジン駆動コンプレッサ本体
44 電磁クラッチ
50 車内LAN
51 電気回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用エアコンディショナの冷凍サイクルに介装されたエンジン駆動圧縮機または電動圧縮機と、
前記車両用エアコンディショナの制御に必要な環境パラメータを検出する環境パラメータ検出手段と、
エンジンから前記エンジン駆動圧縮機への駆動力の伝達を断接操作する電磁クラッチの電磁部または前記電動圧縮機の電動モータの回転を制御する電動モータ制御部に電気的に接続され、前記環境パラメータ検出手段により検出した環境パラメータに応じて前記電磁クラッチ及び前記電動モータを含む前記車両用エアコンディショナの運転を制御するエアコン制御ユニットとを備え、
前記エアコン制御ユニットは、前記環境パラメータに応じて前記電磁クラッチの断接信号を生成し出力するとともに前記環境パラメータの信号をそのまま出力する一種類の制御ユニットからなり、
前記電磁クラッチの電磁部及び前記電動モータ制御部は、前記エアコン制御ユニットから出力された前記電磁クラッチの断接信号または前記環境パラメータの信号を選択的に入力することで前記電磁クラッチを断接作動し或いは前記電動モータの回転を制御し、それぞれ前記エンジン駆動圧縮機または前記電動圧縮機を作動させることを特徴とする圧縮機制御装置。
【請求項2】
前記電動圧縮機の前記電動モータ制御部は、前記環境パラメータの信号を選択的に入力して該環境パラメータに基づき目標回転速度を求め、該目標回転速度に応じて前記電動モータの回転を制御することを特徴とする、請求項1記載の圧縮機制御装置。
【請求項3】
前記エンジン駆動圧縮機の前記電磁クラッチの電磁部は、前記エアコン制御ユニットと電気的に接続され、前記電動圧縮機の前記電動モータ制御部は、前記エアコン制御ユニットとLAN接続されてなることを特徴とする、請求項1または2記載の圧縮機制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−302799(P2008−302799A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151482(P2007−151482)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】