説明

圧縮機用ケーシング

【課題】円筒状の胴体部に有底円筒状の鏡板部を接合してなる圧縮機用ケーシングにおいて、圧縮機用ケーシングにおける剛性の低下をできるだけ抑える。
【解決手段】鏡板部12,13における円筒部12b、13bの内径d4を胴体部11の開口端の内径d1よりも小さくする。これにより、鏡板部12,13の内径d4を胴体部11の内径d1よりも小さくしない場合に比べて、鏡板部12,13の剛性を強くすることができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機用ケーシングに関し、特に胴体部と鏡板部とを突き合わせ溶接で接合してなる圧縮機用ケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体を圧縮する圧縮機構が収容された圧縮機用ケーシングが知られている。そして、これらの圧縮機用ケーシングの中には、特許文献1に示すように、上記胴体部の開口端と上記鏡板部の開口端とを突き合わせ溶接で接合してなるものがある。
【0003】
特許文献1における圧縮機用ケーシングの鏡板部は、円筒部と該円筒部の開口部を閉塞する底部とが一体形成され、且つ該底部が縦断面視で略楕円円弧状に形成されている。このように、上記底部を略楕円円弧状に形成することで、上記圧縮機ケーシングの内部に圧力が作用したときに、この底部に生じる応力を曲げ応力中心から膜応力中心へ変化させるとともに、この底部の中央近傍の最大応力値を低下させることができるようになる。これにより、上記鏡板部の剛性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−122074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、共に同じ肉厚の鋼板に、曲げ加工を施して円筒状の胴体部を形成する場合と鋼板に絞り加工を施して有底円筒状の鏡板部を形成する場合とで形成後の最小肉厚を比較すると、上記鏡板部の方が薄くなりやすい。これは、上記絞り加工により、上記鏡板部の底部と該底部の外周端から延びる円筒部との境目付近が最も曲率が高くなり、この境目付近の肉厚が他の部分に比べて薄くなってしまうからである。
【0006】
このことから、上記胴体部よりも上記鏡板部の方が、肉厚が薄くなる部位を有する分だけ剛性が低下しやすいという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、円筒状の胴体部に有底円筒状の鏡板部を接合してなる圧縮機用ケーシングにおいて、該圧縮機用ケーシングにおける剛性の低下をできるだけ抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、円筒状の胴体部(11)及び有底円筒状の鏡板部(12,13)の開口端同士を突き合わせ溶接で接合してなる圧縮機用ケーシングを前提としている。
【0009】
そして、上記圧縮機用ケーシングの鏡板部(12,13)は、円筒部(12b,13b)と該円筒部(12b,13b)の開口部を閉塞する底部(12a,13a)とが一体に形成されてなり、上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の内径(d4)を上記胴体部(11)の開口端の内径(d1)よりも小さくしたことを特徴としている。
【0010】
第1の発明では、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を小さくしている。これにより、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を上記胴体部(11)の内径(d1)よりも小さくしない場合に比べて、上記鏡板部(12,13)の剛性を強くすることができるようになる。尚、上記突き合わせ溶接の場合、上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の各内径(d1,d4)を同じにするのが一般的であるが、第1の発明では積極的に各内径(d1,d4)を異ならせている。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の突き合わせ溶接のための円筒状の裏当金部(1a,1b)を備え、上記裏当金部(1a,1b)の基端部(2)には、上記胴体部(11)へ内嵌される大径部(2a)が形成され、上記裏当金部(1a,1b)の先端部(3)には、上記鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)へ内嵌され且つ上記大径部(2a)よりも外径の小さい小径部(3a)が形成されていることを特徴としている。
【0012】
第2の発明では、上記裏当金部(1a,1b)が突き合わせ溶接時のスパッタの混入や溶接金属の溶け込み不足を防ぐためのものであり、上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)における内径の大小関係に合わせて、上記裏当金部(1a,1b)における基端部(2)及び先端部(3)の外径を異ならせている。
【0013】
つまり、上記胴体部(11)に上記裏当金部(1a,1b)の大径部(2a)が内嵌し、上記胴体部(11)よりも内径の小さい上記鏡板部(12,13)に上記裏当金部(1a,1b)の小径部(3a)が内嵌している。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記小径部(3a)は、上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端へ隙間嵌め及び締まり嵌めの一方で内嵌され、上記大径部(2a)は、上記胴体部(11)の開口端へ隙間嵌め及び締まり嵌めの他方で内嵌されていることを特徴としている。
【0015】
第3の発明では、上記小径部(3a)が上記鏡板部(12,13)へ隙間嵌め及び締まり嵌めの一方で内嵌し、上記大径部(2a)が上記胴体部(11)へ隙間嵌め及び締まり嵌めの他方で内嵌している。
【0016】
ここで、仮に、上記小径部(3a)及び大径部(2a)の両方を締まり嵌めにし、上記大径部(2a)を上記胴体部(11)へ圧入した後で、上記小径部(3a)を上記鏡板部(12,13)へ圧入したとする。
【0017】
この場合において、例えば上記胴体部(11)に対する上記大径部(2a)の固定が弱かったとすると、上記鏡板部(12,13)を小径部(3a)へ圧入する際に、該鏡板部(12,13)で小径部(3a)と共に上記裏当金部(1a,1b)全体を必要以上に上記胴体部(11)側へ押し込んでしまうことがある。この結果、上記裏当金部(1a,1b)における軸方向の位置が胴体部(11)側へずれてしまう。
【0018】
そこで、第3の発明では、上記裏当金部(1a,1b)における小径部(3a)及び大径部(2a)のうち、どちらか一方を締まり嵌めとし、他方を隙間嵌めにしている。これにより、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の両方へ圧入しないため、上述した裏当金部(1a,1b)の位置ずれが生じなくなる。
【0019】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、上記裏当金部(1a,1b)の外周面は、上記小径部(3a)に外嵌する上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端が当接する段差面(4)を備えていることを特徴としている。
【0020】
第4の発明では、上記鏡板部(12,13)の開口端が上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)に当接するまで嵌め込まれる。これにより、上記鏡板部(12,13)の開口端と上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)との間に形成される隙間を塞ぐことができるようになる。
【0021】
第5の発明は、第1の発明において、上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の突き合わせ溶接のための円筒状の裏当金部(1a,1b)を備え、上記裏当金部(1a,1b)の基端部(2)には、上記胴体部(11)へ締まり嵌めで内嵌される大径部(2a)が形成され、上記裏当金部(1a,1b)の先端部(3)には、上記鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)へ内嵌され且つ上記胴体部(11)側から上記鏡板部(12,13)側へ向けて漸次縮径するテーパ部(3a)が形成され、上記テーパ部(3a)の外面と上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端とは互いに当接していることを特徴としている。
【0022】
第5の発明では、上記鏡板部(12,13)の開口端が上記裏当金部(1a,1b)に形成されたテーパ部(3a)のテーパ面に当接するまで嵌め込まれる。これにより、上記テーパ部(3a)に上記鏡板部(12,13)が嵌め込まれる際に、上記鏡板部(12,13)の開口端と上記テーパ部(3a)のテーパ面との間に形成される隙間を塞ぐことができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を小さくすることより、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を上記胴体部(11)の内径(d1)よりも小さくしない場合に比べて、上記鏡板部(12,13)の剛性を強くすることができる。
【0024】
ここで、上述したように、同じ肉厚の鋼板から胴体部(11)及び鏡板部(12,13)を形成した場合、上記鏡板部(12,13)の方が最小肉厚が小さくなり、剛性が低下する。この剛性の低下を、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を上記胴体部(11)の内径(d1)よりも小さくすることで補うことができる。
【0025】
また、上記第2の発明によれば、上記裏当金部(1a,1b)において、上記基端部(2)の外径(d2)よりも上記先端部(3)の外径(d3)の方を小さくしている。そして、上記胴体部(11)に上記裏当金部(1a,1b)の基端部(2)を内嵌させ、上記胴体部(11)よりも内径の小さい上記鏡板部(12,13)に、上記基端部(2)よりも外径の小さい先端部(3)を内嵌させている。
【0026】
このように、上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)における開口部の内径の大小関係に合わせて、上記裏当金部(1a,1b)の外径を異ならせている。これにより、上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に上記裏当金部(1a,1b)を上手に嵌め込むことができる。
【0027】
また、上記第3の発明によれば、上記裏当金部(1a,1b)における小径部(3a)及び大径部(2a)のうち、どちらか一方を締まり嵌めとし、他方を隙間嵌めにしている。これにより、上記裏当金部(1a,1b)の軸方向の位置をずらすことなく、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に嵌め込むことができる。
【0028】
また、上記第4の発明によれば、上記鏡板部(12,13)の開口端が上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)に当接するまで嵌め込まれる。これにより、上記鏡板部(12,13)の開口端と上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)との間に形成される隙間を塞ぐことができる。このように隙間を塞ぐことで、突き合わせ溶接する際に生じる溶接スパッタ等の異物が上記ケーシング(10)の内部へ入り込むのをより確実に防ぐことができる。
【0029】
また、上記第5の発明によれば、上記鏡板部(12,13)の開口端が上記裏当金部(1a,1b)に形成されたテーパ部(3a)のテーパ面に当接するまで嵌め込まれる。これにより、上記テーパ部(3a)に上記鏡板部(12,13)が嵌め込まれる際に、上記鏡板部(12,13)の開口端と上記テーパ部(3a)のテーパ面との間に形成される隙間を塞ぐことができる。このように隙間を塞ぐことで、突き合わせ溶接する際に生じる溶接スパッタ等の異物が上記ケーシング(10)の内部へ入り込むのをより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態に係る圧縮機用ケーシングの縦断面図である。
【図2】実施形態に係る胴体部及び鏡板部の寸法及び材質を表した比較表である。
【図3】実施形態に係る裏当金部の縦断面図である。
【図4】実施形態に係る圧縮機用ケーシングの裏当金部付近の拡大図である。
【図5】変形例1に係る圧縮機用ケーシングの裏当金部付近の拡大図である。
【図6】変形例2に係る圧縮機用ケーシングの裏当金部付近の拡大図である。
【図7】変形例3に係る圧縮機用ケーシングの裏当金部付近の拡大図である。
【図8】その他の実施形態に係る圧縮機用ケーシングの裏当金部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0032】
本実施形態の圧縮機用ケーシング(10)(以下、単にケーシング(10)という。)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続される圧縮機に用いられるものである。このケーシング(10)の内部には、図1に示すように、上記冷媒回路の冷媒を圧縮する圧縮機構(20)と該圧縮機構(20)を駆動する電動機(30)とが収容されている。
【0033】
上記ケーシング(10)は、縦長円筒状の密閉容器で構成されており、円筒状の胴体部(11)と該胴体部(11)の上側開口部を閉塞する有底円筒状の上側鏡板部(12)と上記胴体部(11)の下側開口部を閉塞する有底円筒状の下側鏡板部(13)とを備えている。
【0034】
そして、上記胴体部(11)の上側開口端と上側鏡板部(12)の開口端とが上側裏当金部(1a)を介して突き合わせ溶接で接合され、上記胴体部(11)の下側開口端と下側鏡板部(13)の開口端とが、裏当金部(1a,1b)を介して突き合わせ溶接で接合されている。
【0035】
−胴体部−
上記胴体部(11)は、鋼板に曲げ加工を施すことで円筒状に形成されている。この胴体部(11)の内周面に、上記圧縮機構(20)及び上記電動機(30)が固定されている。
【0036】
又、上記胴体部(11)の下側部分を貫通してインレットチューブ(14)が取り付けられている。このインレットチューブ(14)の端部が上記圧縮機構(20)の吸入部(図示なし)に接続されている。このインレットチューブ(14)を通じて、上記冷媒回路の冷媒が上記圧縮機構(20)へ吸入される。
【0037】
又、上記胴部(14a)の上側部分を貫通して吐出管(15)が取り付けられている。この吐出管(15)の端部は、上記ケーシング(10)の内部に開口している。上記圧縮機構(20)の吐出部(図示なし)は上記ケーシング(10)の内部に開口しており、上記圧縮機構(20)から吐出された冷媒は、上記ケーシング(10)の内部と上記吐出管(15)を通じて上記ケーシング(10)の外側へ流出する。
【0038】
又、上記胴体部(11)における外周面の両端には、上述した突き合わせ溶接のための胴体側開先部(16)が形成されている。
【0039】
−鏡板部−
上側鏡板部(12)及び下側鏡板部(13)は、鋼板に絞り加工を施すことで有底円筒状に形成されている。具体的に、各鏡板部(12,13)は、椀状の底部(12a,13a)と該底部(12a,13a)の外周端から軸方向へ延びる円筒部(12b,13b)とが一体に形成されてなる。
【0040】
尚、上記各鏡板部(12,13)を形成する鋼板と上記胴体部(11)を形成する鋼板とは、同じ肉厚のものを使用している。上述したように、上記胴体部(11)と上記各鏡板部(12,13)とを比較すると、上記各鏡板部(12,13)の方が最小肉厚が薄くなりやすい。図示しないが、上記底部(12a,13a)及び上記円筒部(12b,13b)の境目付近の肉厚が他の部分に比べて薄くなっている。ここで、この肉厚が薄い部分が形成されるため、図2に示すように、上記胴体部(11)に比べて上記鏡板部(12,13)の方が最小肉厚が薄くなっている。
【0041】
このことから、上記各鏡板部(12,13)の剛性は、肉厚が薄くなった分だけ低下している。本実施形態では、図2に示すように、この剛性の低下を抑えるため、各鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)の内径(d4)を、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも小さくしている。尚、図1では、上記各鏡板部(12,13)の内径(d4)と上記胴体部(11)との内径(d1)の違いを誇張して示している。
【0042】
−裏当金部−
上記各裏当金部(1a,1b)は、突き合わせ溶接時のスパッタの混入や溶接金属の溶け込み不足を防ぐためのものであり、且つ上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の位置決め部材でもある。この各裏当金部(1a,1b)は、図3に示すように、円筒状に形成されている。この裏当金部(1a,1b)は、互いに外径が異なる基端部(2)及び先端部(3)が一体に形成されてなる。
【0043】
具体的には、上記基端部(2)の外径(d2)が上記先端部(3)の外径(d3)よりも大きい。つまり、上記基端部(2)が上記裏当金部(1a,1b)の大径部(2a)を構成し、上記先端部(3)が上記裏当金部(1a,1b)の小径部(3a)を構成する。尚、上記大径部(2a)及び上記小径部(3a)の境目には、軸直角方向へ延びる段差面(4)が形成されている。
【0044】
上記小径部(3a)の外径(d3)は、上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の内径(d4)よりも僅かに大きい。この小径部(3a)が、上記鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)に圧入されている。
【0045】
一方、上記大径部(2a)の外径(d2)は、図4に示すように、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも僅かに小さい。この大径部(2a)が、上記胴体部(11)に隙間嵌めで内嵌している。
【0046】
このように、上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)のうち、内径の小さい方(鏡板部(12,13))に上記小径部(3a)が嵌め込まれ、内径の大きい方(胴体部(11))に上記大径部(2a)が嵌め込まれている。つまり、上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)における内径の大小関係に合わせて、上記裏当金部(1a,1b)の外径を段差面(4)を境にして異ならせている。
【0047】
尚、この大径部(2a)は、上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)と上記胴体部(11)における胴体側開先部(16)の先端とが略一致するまで、上記胴体部(11)に内嵌されている。この段差面(4)で、上記裏当金部(1a,1b)と上記胴体部(11)との位置決めを行っている。
【0048】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記各鏡板部(12,13)の剛性は、絞り加工によって肉厚が薄くなった分だけ低下するが、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも上記鏡板部(12,13)の内径(d4)を小さくすることより、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)と上記胴体部(11)の内径(d1)とが同じ寸法となる場合に比べて、上記鏡板部(12,13)の剛性を強くすることができる。これにより、上記鏡板部(12,13)の剛性が強くなった分だけ、上記圧縮機用ケーシング(10)全体の剛性を強くすることができ、上述した絞り加工による剛性の低下を補うことができる。
【0049】
又、本実施形態によれば、上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)における内径の大小関係に合わせて、上記裏当金部(1a,1b)の外径を異ならせている。これにより、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に上手に嵌め込むことができる。
【0050】
又、本実施形態によれば、上記小径部(3a)を上記鏡板部(12,13)へ締まり嵌めで内嵌し、上記大径部(2a)を上記胴体部(11)へ隙間嵌めで内嵌している。ここで、仮に、上記小径部(3a)及び大径部(2a)の両方を締まり嵌めにし、上記大径部(2a)を上記胴体部(11)へ圧入した後で、上記小径部(3a)を上記鏡板部(12,13)へ圧入したとする。
【0051】
この場合において、例えば上記胴体部(11)に対する上記大径部(2a)の固定が弱かったとすると、上記鏡板部(12,13)を小径部(3a)へ圧入する際に、該鏡板部(12,13)で小径部(3a)と共に裏当金部(1a,1b)を必要以上に上記胴体部(11)側へ押し込んでしまうことがある。この結果、上記裏当金部(1a,1b)の位置が軸方向へずれてしまう。
【0052】
そこで、本実施形態では、上述したように、上記小径部(3a)を上記鏡板部(12,13)へ締まり嵌めで内嵌し、上記大径部(2a)を上記胴体部(11)へ隙間嵌めで内嵌している。これにより、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の両方へ締まり嵌めで内嵌しないため、上述した裏当金部(1a,1b)の位置ずれが生じなくなる。
【0053】
この結果、上記裏当金部(1a,1b)の軸方向の位置をずらすことなく、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に嵌め込むことができる。
【0054】
本実施形態によれば、上記小径部(3a)を締まり嵌めとし、上記大径部(2a)を隙間嵌めとしているので、この隙間嵌めの隙間で、上記裏当金部(1a,1b)の寸法誤差を所定範囲で吸収させることができる。これにより、胴体部(11)及び鏡板部(12,13)における径方向の位置決めの精度が向上し、突き合わせ溶接前の上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の各中心軸の位置合わせを容易に行うことができる。
【0055】
−実施形態の変形例1−
図5は、変形例1のケーシング(10)における上側裏当金部(1a)付近の拡大図である。この変形例1では、上記裏当金部(1a,1b)の小径部(3a)の内径(d3)が上記鏡板部(12,13)の内径(d4)よりも僅かに小さく、上記大径部(2a)の外径(d2)は、上記胴体部(11)の内径(d1)よりも僅かに大きい。
【0056】
これにより、上記小径部(3a)が上記鏡板部(12,13)へ隙間嵌めで内嵌し、上記大径部(2a)が上記胴体部(11)へ締まり嵌めで内嵌する。上記実施形態とは、隙間嵌めと隙間嵌めとの関係が逆になっている。このような場合でも、上記実施形態と同様に、上記裏当金部(1a,1b)の軸方向の位置をずらすことなく、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に嵌め込むことができる。
【0057】
−実施形態の変形例2−
図6は、変形例2のケーシング(10)における上側裏当金部(1a)付近の拡大図である。この変形例2では、上記鏡板部(12,13)の開口端が上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)に当接するまで嵌め込まれている。これにより、上記鏡板部(12,13)の開口端と上記裏当金部(1a,1b)の段差面(4)との間に形成される隙間を塞ぐことができる。このように隙間を塞ぐことで、突き合わせ溶接する際に生じる溶接スパッタ等の異物が上記ケーシング(10)の内部へ入り込むのをより確実に防ぐことができる。
【0058】
−実施形態の変形例3−
図7は、変形例3のケーシング(10)における上側裏当金部(1a)付近の拡大図である。この変形例3では、上記実施形態とは違い、上記先端部(3)にテーパ部(3b)が形成されている。このテーパ部(3b)の外面は、上記胴体部(11)側から上側鏡板部(12)側へ向けて漸次拡縮している。上記テーパ部(3b)の最大外径は、上記裏当金部(1a,1b)の大径部(2a)の外径(d2)と同じ寸法であり、上記テーパ部(3b)の最小外径は、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)よりも小さい。
【0059】
したがって、このテーパ部(3b)に上記鏡板部(12,13)を嵌め込んだとき、上記テーパ部(3a)の外面に上側鏡板部(12)における円筒部(12b)の開口端全周が当接するようになる。これにより、このテーパ部(3b)で上記鏡板部(12,13)を保持できるとともに、このテーパ部(3b)のテーパ面と上記鏡板部(12,13)の開口端との間に形成される隙間を塞ぐことができる。
【0060】
これにより、突き合わせ溶接をする際の上記鏡板部(12,13)の保持が容易に行うことができるとともに、突き合わせ溶接する際に生じる溶接スパッタ等の異物が上記ケーシング(10)の内部へ入り込むのをより確実に防ぐことができる。
【0061】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0062】
上記実施形態では、上記裏当金部(1a,1b)に段差面(4)を設けていたが、これに限定される必要はなく、例えば、図8に示すように、段差面(4)を設けなくてもよい。この場合には、上記裏当金部(1a,1b)の外径が、上記鏡板部(12,13)の内径(d4)よりも僅かに大きく且つ上記胴体部(11)の内径(d1)よりも僅かに小さくする。
【0063】
これにより、上記裏当金部(1a,1b)の一端(図8の上端)と上記鏡板部(12,13)とが絞り嵌めとなり、上記裏当金部(1a,1b)の他端(図8の下端)と上記胴体部(11)とが隙間嵌めとなる。
【0064】
こうすることで、上記裏当金部(1a,1b)の軸方向の位置をずらすことなく、上記裏当金部(1a,1b)を上記鏡板部(12,13)及び上記胴体部(11)の間に嵌め込むことができる。又、この隙間嵌めの隙間で、上記裏当金部(1a,1b)の寸法誤差を所定範囲で吸収させることができる。
【0065】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明は、圧縮機用ケーシングに関し、特に胴体部と鏡板部とを突き合わせ溶接で接合してなる圧縮機用ケーシングについて有用である。
【符号の説明】
【0067】
1a 上側裏当金部(裏当金部)
1b 下側裏当金部(裏当金部)
2 基端部
2a 大径部
3 先端部
3a 小径部
4 段差面
10 圧縮機用ケーシング
11 胴体部
12 上側鏡板部(鏡板部)
13 下側鏡板部(鏡板部)
20 圧縮機構
30 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴体部(11)及び有底円筒状の鏡板部(12,13)の開口端同士を突き合わせ溶接で接合してなる圧縮機用ケーシングであって、
上記鏡板部(12,13)は、円筒部(12b,13b)と該円筒部(12b,13b)の開口部を閉塞する底部(12a,13a)とが一体に形成されてなり、
上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の内径(d4)を上記胴体部(11)の開口端の内径(d1)よりも小さくしたことを特徴とする圧縮機用ケーシング。
【請求項2】
請求項1において、
上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の突き合わせ溶接のための円筒状の裏当金部(1a,1b)を備え、
上記裏当金部(1a,1b)の基端部(2)には、上記胴体部(11)へ内嵌される大径部(2a)が形成され、
上記裏当金部(1a,1b)の先端部(3)には、上記鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)へ内嵌され且つ上記大径部(2a)よりも外径の小さい小径部(3a)が形成されていることを特徴とする圧縮機用ケーシング。
【請求項3】
請求項2において、
上記小径部(3a)は、上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端へ隙間嵌め及び締まり嵌めの一方で内嵌され、
上記大径部(2a)は、上記胴体部(11)の開口端へ隙間嵌め及び締まり嵌めの他方で内嵌されていることを特徴とする圧縮機用ケーシング。
【請求項4】
請求項2又は3において、
上記裏当金部(1a,1b)の外周面は、上記小径部(3a)に外嵌する上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端が当接する段差面(4)を備えていることを特徴とする圧縮機ケーシング。
【請求項5】
請求項1において、
上記胴体部(11)及び上記鏡板部(12,13)の突き合わせ溶接のための円筒状の裏当金部(1a,1b)を備え、
上記裏当金部(1a,1b)の基端部(2)には、上記胴体部(11)へ締まり嵌めで内嵌される大径部(2a)が形成され、
上記裏当金部(1a,1b)の先端部(3)には、上記鏡板部(12,13)の円筒部(12b,13b)へ内嵌され且つ上記胴体部(11)側から上記鏡板部(12,13)側へ向けて漸次縮径するテーパ部(3a)が形成され、
上記テーパ部(3a)の外面と上記鏡板部(12,13)における円筒部(12b,13b)の開口端とは互いに当接していることを特徴とする圧縮機用ケーシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−117380(P2012−117380A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264952(P2010−264952)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】