説明

圧縮機

【課題】ケーシングと端子との溶接部に生じる歪みを抑制し、信頼性を高める。
【解決手段】モータを収容する密閉ケーシング309に、モータに接続される端子304を抵抗溶接により接合する第1平面395と、端子4の周囲に配置される保護カバー305を抵抗溶接により接合する第2平面396とを設ける。第1平面395と第2平面396とは互いに離隔している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを収容するケーシングを備えた圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮機は、圧縮機構とそれを駆動するモータとをケーシング内に収容して構成されている。特許文献1、2の圧縮機においては、モータに接続される端子と端子の周囲に配置される保護カバーとが、ケーシングの外周面に形成された1つの平面に、溶接等により取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−55261号公報
【特許文献2】特開2004−92556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧縮機において、端子の溶接部に歪みがある場合には、ケーシングの内部圧力が繰り返し変化することで溶接部に金属疲労が生じることがある。その結果、ケーシングの密閉性が低下するという問題が生じる。引用文献2においては、端子溶接時に溶接部に歪みが生じることがないように、端子の溶接方法を工夫している。
【0005】
近年、温暖化への影響が少ないCO2冷媒を用いた圧縮機の開発が行われている。このような圧縮機においては、ケーシング内が非常に高圧となる。したがって、ケーシングの強度を高めるために、ケーシングの平面部をできるだけ小さくする必要がある。一方で、上述のような圧縮機においては、端子および保護カバーを取り付けるための平面を設ける必要がある。ここで、例えば、特許文献1、2のような圧縮機において、まず端子を抵抗溶接により取り付けた後、保護カバーを抵抗溶接の一種であるプロジェクション溶接により取り付ける場合を考える。このような場合に、端子および保護カバーを取り付ける平面の面積を小さくすると、端子の溶接部と保護カバーの溶接部との間の距離が従来に比べて近接する。且つ、端子と保護カバーとを同一平面に取り付けることになるので、溶接用の電極を使用して保護カバーを溶接する際の加圧力により平面が歪み、先に溶接した端子の溶接部まで歪むという問題が生じる。また逆に、先に保護カバーに取り付けたとしても、保護カバーを溶接する際の加圧力によって平面が歪み、端子を溶接する予定の部分まで歪むことが考えられる。このような場合には、端子が確実に取り付けられない可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ケーシングと端子との溶接部に生じる歪みを抑制できる信頼性の高い圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る圧縮機は、モータを収容するケーシングを備えた圧縮機であって、前記モータに接続される端子が、前記ケーシングの外周面に設けられた第1平面において抵抗溶接により接合され、前記端子の周囲に配置される保護カバーが、前記ケーシングの外周面に設けられた第2平面において抵抗溶接により接合されており、前記第1平面と前記第2平面とが離隔している。
【0008】
なお、「第1平面と第2平面とが離隔している」とは、第1平面と第2平面との間に、第1平面を含む第1仮想平面と第2平面を含む第2仮想平面とのいずれの仮想平面にも含まれない面(曲面または平面)が設けられることを意味する。
【0009】
この圧縮機では、端子を溶接する第1平面と保護カバーを溶接する第2平面とが離隔しており、保護カバー溶接時の加圧力による歪みが、第1平面と第2平面との間に設けられた面を介して端子の溶接部(第1平面)に伝わるため、端子の溶接部に生じる歪みを抑制できる。したがって、端子や保護カバーを取り付けるための平面の面積を小さくしても、ケーシングと端子との溶接部の歪みを抑制できる。
【0010】
第2の発明に係る圧縮機は、第1の発明に係る圧縮機において、前記ケーシングの外周面は、互いに離隔した複数の前記第2平面を有している。
【0011】
この圧縮機では、保護カバーを複数箇所で溶接する場合に、1つの第2平面上に溶接するよりも、平面の面積を小さくできる。したがって、ケーシングの強度低下を防ぐことができる。
【0012】
第3の発明に係る圧縮機は、第2の発明に係る圧縮機において、複数の前記第2平面をそれぞれ含む複数の仮想平面の少なくとも2つが同一である。
【0013】
この圧縮機では、複数の第2平面においてそれぞれ溶接する保護カバーの形状を簡易にできる。また、複数の第2平面が同じ方向を向くので、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、複数の第2平面における加圧方向が同一となる。したがって、複数の第2平面における保護カバーの溶接作業を一度に行うことができる。
【0014】
第4の発明に係る圧縮機は、第2の発明に係る圧縮機において、複数の前記第2平面をそれぞれ含む複数の仮想平面の少なくとも2つが互いに平行である。
【0015】
この圧縮機では、複数の第2平面が同じ方向を向くので、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、複数の第2平面における加圧方向が同一となる。したがって、複数の第2平面における保護カバーの溶接作業を一度に行うことができる。
【0016】
第5の発明に係る圧縮機は、第1〜第3のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記第1平面を含む仮想平面と前記第2平面を含む仮想平面とが同一である。
【0017】
この圧縮機では、保護カバーの形状を簡易にできる。また、端子と保護カバーとの位置決めを容易にできる。
【0018】
第6の発明に係る圧縮機は、第1〜第5のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記第2平面は、前記ケーシング表面において前記保護カバーと対向する領域の内側に設けられている。
【0019】
この圧縮機では、第2平面は、保護カバーと対向する領域からはみ出した部分、すなわち、溶接には関係のない無駄な部分がない。したがって、第2平面を小さくし、ケーシングの強度低下を防ぐことができる。
【0020】
第7の発明に係る圧縮機は、第1〜第6のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記保護カバーは、1つの前記第2平面において複数箇所で抵抗溶接される。
【0021】
この圧縮機では、1つの第2平面において複数箇所で溶接することで、確実に保護カバーをケーシングに接合させることができる。
【0022】
第8の発明に係る圧縮機は、第1〜第7のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記保護カバーには、圧縮機を吊り下げ可能な孔が形成されており、前記孔は、前記端子の溶接位置より前記保護カバーの溶接位置の近くに設けられている。
【0023】
この圧縮機では、圧縮機を吊り下げ可能な孔と保護カバーの溶接位置との間の距離を比較的短くできるので、圧縮機製作時や圧縮機運搬時に吊り下げた際に、保護カバーの溶接が剥がれにくい。したがって、孔を端子の溶接位置側に設ける場合に比べて、保護カバーの溶接強度を小さくできる。よって、保護カバー溶接時の加圧力を小さくでき、加圧力によって生じる歪みを小さく抑えることができる。
【0024】
第9の発明に係る圧縮機は、第1〜第8のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記保護カバーは、前記端子の周囲の全周を覆っている。
【0025】
この圧縮機では、端子が溶接される第1平面に生じる歪みを抑制しつつ、端子の全周を覆う保護カバーにより確実に端子を保護することができる。
【0026】
第10の発明に係る圧縮機は、第1〜第9のいずれかの発明に係る圧縮機において、前記第1平面および前記第2平面は、前記ケーシングにおいて高圧となる空間を画定する部分に設けられている。
【0027】
この圧縮機では、第1平面および第2平面を小さくし、ケーシングの強度低下を防ぐことができる本発明を適用するのが効果的である。
【0028】
第11の発明に係る圧縮機は、第1〜第10のいずれかの発明に係る圧縮機において、冷媒としてCO2冷媒を用いる。
【0029】
この圧縮機では、CO2冷媒を用いる場合は、高圧に耐えられるようにケーシングの平面の面積を小さくする必要があるので、本発明を適用するのが効果的である。
【発明の効果】
【0030】
以上の説明に述べたように、本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0031】
第1の発明では、端子を溶接する第1平面と保護カバーを溶接する第2平面とが離隔しており、保護カバー溶接時の加圧力が、第1平面と第2平面との間に設けられた面を介して端子の溶接部(第1平面)に伝わるため、端子の溶接部に生じる歪みを抑制できる。したがって、端子や保護カバーを取り付けるための平面の面積を小さくしても、ケーシングと端子との溶接部の歪みを抑制できる。
【0032】
第2の発明では、保護カバーを複数箇所で溶接する場合に、1つの第2平面上に溶接するよりも、平面の面積を小さくできる。したがって、ケーシングの強度低下を防ぐことができる。
【0033】
第3の発明では、複数の第2平面においてそれぞれ溶接する保護カバーの形状を簡易にできる。また、複数の第2平面が同じ方向を向くので、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、複数の第2平面における加圧方向が同一となる。したがって、複数の第2平面における保護カバーの溶接作業を一度に行うことができる。
【0034】
第4の発明では、複数の第2平面が同じ方向を向くので、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、複数の第2平面における加圧方向が同一となる。したがって、複数の第2平面における保護カバーの溶接作業を一度に行うことができる。
【0035】
第5の発明では、保護カバーの形状を簡易にできる。また、端子と保護カバーとの位置決めを容易にできる。
【0036】
第6の発明では、第2平面は、保護カバーと対向する領域からはみ出した部分、すなわち、溶接には関係のない無駄な部分がない。したがって、第2平面を小さくし、ケーシングの強度低下を防ぐことができる。
【0037】
第7の発明では、1つの第2平面において複数箇所で溶接することで、確実に保護カバーをケーシングに接合させることができる。
【0038】
第8の発明では、圧縮機を吊り下げ可能な孔と保護カバーの溶接位置との間の距離を比較的短くできるので、圧縮機製作時や圧縮機運搬時に吊り下げた際に、保護カバーの溶接が剥がれにくい。したがって、孔を端子の溶接位置側に設ける場合に比べて、保護カバーの溶接強度を小さくできる。よって、保護カバー溶接時の加圧力を小さくでき、加圧力によって生じる歪みを小さく抑えることができる。
【0039】
第9の発明では、端子が溶接される第1平面に生じる歪みを抑制しつつ、端子の全周を覆う保護カバーにより確実に端子を保護することができる。
【0040】
第10の発明では、第1平面および第2平面を小さくし、ケーシングの強度低下を防ぐことができる本発明を適用するのが効果的である。
【0041】
第11の発明では、CO2冷媒を用いる場合は、高圧に耐えられるようにケーシングの平面の面積を小さくする必要があるので、本発明を適用するのが効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図2】図1の圧縮機の上視図である。
【図3】図1の圧縮機の上視図であって、保護カバーの図示を省いたものである。
【図4】図2の密閉ケーシングのA-A線に沿う部分断面図である。
【図5】図1の端子の溶接方法を説明する図である。
【図6】図1の保護カバーの溶接前の状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のX視矢視図、(c)は(a)のY視矢視図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる圧縮機の側面図である。
【図8】図7の圧縮機の上視図である。
【図9】(a)は図8のB-B線に沿った断面図であり、(b)は図8のB−C線に沿った断面図である。
【図10】図7に示す保護カバーを示す図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のX視矢視図、(c)は(a)のD−D線に沿った断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る圧縮機の概略断面図である。
【図12】図11の密閉ケーシングの本体における保護カバーの溶接部周辺の側面図であって、保護カバーの図示を省いたものである。
【図13】(a)は図11のE−E線に沿った断面図、(b)は図11のF−F線に沿った断面図、(c)は図11のG−G線に沿った断面図である。
【図14】第2実施形態の変形例にかかる圧縮機における密閉ケーシングの上部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
本実施形態は、ロータリ圧縮機に本発明を適用した一例である。
図1に示すように、本実施形態の圧縮機1は、密閉ケーシング9と、密閉ケーシング9内に配置される圧縮機構10および駆動機構6を備えている。なお、図1は、駆動機構6の断面を示すハッチングを省略して表示している。この圧縮機1は、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機であって、例えば、空調装置などの冷凍サイクルに組み込まれて使用され、吸入管2から導入された冷媒(本実施形態では、CO2)を圧縮して排出管3から排出する。図1の上下方向を単に上下方向として、圧縮機1について以下説明する。
【0044】
密閉ケーシング9は、両端が塞がれた円筒状の容器であり、両端が開口した筒状の本体91と、本体91の上端の開口を閉鎖する上蓋体92と、下端の開口を閉鎖する下蓋体93とで構成されている。上蓋体92および下蓋体93は、いずれも全体として中空の外側に膨らむように湾曲している。上蓋体92には、排出管3と、駆動機構6の後述する固定子7bのコイルに電流を供給するための端子4と、端子4を保護する保護カバー5とが設けられている。図2に示すように、保護カバー5は、端子4の周囲の全周を覆う保護壁5bを有している。後で詳述するように、端子4と保護カバー5とは、抵抗溶接により密閉ケーシング9に接合されている。なお、図1では、コイルと端子4とを接続する配線は省略して表示している。また。密閉ケーシング9の本体91には、吸入管2が設けられている。密閉ケーシング9内の下部には、圧縮機構10の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。密閉ケーシング9の内部には、駆動機構6と、圧縮機構10とが上下に並んで配置されている。
【0045】
駆動機構6は、圧縮機構10を駆動するために設けられており、駆動源となるモータ7と、このモータ7に取り付けられたシャフト8とから構成されている。
【0046】
モータ7は、密閉ケーシング9の内周面に固定されている略円環状の固定子7bと、この固定子7bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子7aとを備えている。回転子7aは磁石(図示省略)を有し、固定子7bはコイルを有している。モータ7は、コイルに電流を流すことによって発生する電磁力によって、回転子7aを回転させる。
【0047】
シャフト8は、モータ7の駆動力を圧縮機構10に伝達するために設けられており、回転子7aの内周面に固定されて、回転子7aと一体的に回転する。また、シャフト8は、後述する圧縮室31内となる位置に、偏心部8aを有している。偏心部8aは、円柱状に形成されており、その軸心がシャフト8の回転中心から偏心している。この偏心部8aには、圧縮機構10の後述するピストン40が装着されている。
【0048】
圧縮機構10は、密閉ケーシング9の内周面に固定されるフロントヘッド20と、フロントヘッド20の上側に配置されるマフラー11と、フロントヘッド20の下側に配置されるシリンダ30と、シリンダ30の内部に揺動自在に配置されるピストン40と、シリンダ30の下側に配置されるリアヘッド50とを備えている。詳細は後述するが、シリンダ30は、略円環状の部材であって、その中央部に圧縮室31が形成されている。シリンダ30は、リアヘッド50と共に、フロントヘッド20の下側にボルトにより固定されている。
【0049】
図1に示すように、フロントヘッド20およびリアヘッド50は、いずれも略円環状の部材であって、その中央部に、シャフト8が回転可能に挿通される軸受け孔21、51がそれぞれ形成されている。フロントヘッド20は圧縮室31の上端を閉塞しており、リアヘッド50は圧縮室31の下端を閉塞している。マフラー11は、フロントヘッド20の上面にボルトによって取り付けられ、フロントヘッド20との間に吐出孔(図示省略)からの冷媒が吐出されるマフラー空間Mを形成している。
【0050】
シリンダ30には、上述した圧縮室31と、圧縮室31内に冷媒を導入するための吸入孔32とが形成されている。圧縮室31には、偏心部8aに装着されたピストン40が、揺動自在に配置されている。
【0051】
圧縮機構10において、吸入管2から吸入孔32を介して圧縮室31に冷媒を供給しつつ、モータ7の駆動によりシャフト8を回転させると、偏心部8aに装着されたピストン40は、圧縮室31の周壁面に沿って移動する。これに伴って、ピストン40の外周面と圧縮室31の周壁面とによって形成される空間の容積が小さくなる。これにより、圧縮室31内で冷媒が圧縮される。そして、圧縮室31内で圧縮された冷媒は、フロントヘッド20の吐出孔(図示省略)を介してマフラー空間Mに吐出される。マフラー空間Mに吐出された冷媒は、マフラー11のマフラー吐出孔(図示省略)から圧縮機構10の外に吐出される。したがって、密閉ケーシング9の内部空間は高圧となる。圧縮機構10から吐出された冷媒は、固定子7bと回転子7aとの間のエアギャップなどを通過した後、最終的に、排出管3から密閉ケーシング9の外に排出される。
【0052】
ここで、密閉ケーシング9の上蓋体92の端子4およびその保護カバー5の接合部について説明する。
図3および図4に示すように、上蓋体92の表面には、端子4を溶接するための第1平面95と、保護カバー5を溶接するための第2平面96とが設けられている。なお、上述のように、上蓋体92は、全体として中空の外側に膨らむように湾曲している。すなわち、上蓋体92の表面における第1平面95および第2平面96以外の部分のほとんどは曲面となっている。図2においては、第2平面96を二点鎖線で示している。端子4は、抵抗溶接により第1平面95に溶接される。保護カバー5は、抵抗溶接の一種であるプロジェクション溶接により第2平面96に溶接される。
【0053】
第1平面95および第2平面96は、互いに離隔しており、且ついずれも同一の仮想平面P1(図4において二点破線で示す平面)に含まれている。すなわち、第1平面95を含む仮想平面と第2平面96を含む仮想平面とが同一である。そして、第1平面95と第2平面96との間には、仮想平面P1に含まれない曲面97が設けられている。曲面97は、中空の外側に膨らむように湾曲した上蓋体92の表面を構成する曲面の一部である。第1平面95と第2平面96とは、曲面97で繋がっている。
【0054】
端子4は、4本の端子ピン4aと、端子ピン4aを保持する略円板形状の保持部材4bとで構成されている。端子ピン4aは、保持部材4bを貫通している。保持部材4bの下端部は、下端に近付くほど次第に径が大きくなる拡径部4cとなっている。第1平面95には、端子4が嵌め込まれる開口95aが形成されている。より詳細には、開口95aには、端子4の保持部材4bの上端部が嵌め込まれる。端子4は、開口95aに嵌め込まれた状態で、第1平面95に抵抗溶接により接合される。
【0055】
ここで、図5を参照しつつ、端子4の溶接方法について説明する。まず、上述のように、第1平面95に形成された開口95aに、端子4の保持部材4bの上端部を嵌め込む。このとき、保持部材4bの拡径部4cは、開口95aの下方に位置する。そして、抵抗溶接機70の下電極71を保持部材4bの下面に押しあてると共に、上電極72を第1平面95に押しあて、両電極71、72間に通電する。これにより、第1平面95と保持部材4bとの接触部分が溶融して一体化する。
【0056】
図6に示すように、保護カバー5は、略長方形形状を有する平板状の底壁5aと、底壁5aの縁から底壁5aに対して垂直に立ち上げられた保護壁5bとで構成されている。底壁5aの長手方向略半分(図6(a)の上半分)には、端子4の保持部材4bが挿通される開口5cが形成されている。また、底壁5aの長手方向に関して開口5cが形成されている側とは反対側の半分部分(図6(a)の下半分部分)には、3つの溶接突起5dが形成されている。溶接突起5dは、保護カバー5を第2平面96にプロジェクション溶接により接合するためのものである。保護壁5bは、底壁5aの全周に設けられている。
【0057】
また、図6(c)に示すように、底壁5aの長手方向に関して溶接突起5dが形成されている側の端部に設けられた保護壁5bには、圧縮機1を吊下げるための孔5eが形成されている。すなわち、孔5eは、開口5cの形成位置(換言すると、端子4の溶接位置)よりも溶接突起5dの形成位置(換言すると、保護カバー5の溶接位置)の近くに設けられている。したがって、図4において矢印で示すように、圧縮機1を吊下げた際に力が加わる位置と、保護カバー5の溶接位置との距離を、端子4の溶接位置の近くに孔5eを設ける場合に比べて短くすることができる。
【0058】
なお、保護カバー5内には、オーバーロードリレー等の圧縮機保護装置(図示省略)が取り付けられることがある。したがって、底壁5aの溶接突起5dが形成されている部分の短手方向の両側に設けられた保護壁5bには、保護装置を取り付ける際の止め具を固定するための開口5fが形成されている。
【0059】
保護カバー5は、第1平面95に溶接された端子4を開口5cに挿通した状態で、3つの溶接突起5dを第2平面96と対向させ、プロジェクション溶接電極により各溶接突起5dに電流を流して加熱すると同時に加圧することで、第2平面96に接合される。すなわち、保護カバー5は、第2平面96において3箇所で溶接される。なお、上述のように、第1平面95を含む仮想平面と第2平面96を含む仮想平面とが同一であるので、図4に示すように、平板状の底壁5aの下面は、第1平面95および第2平面96の両方に当接する。
【0060】
また、図2に示すように、第2平面96は、保護カバー5の底壁5aと対向する領域の内側のみに設けられており、底壁5aと対向する領域からはみ出ていない。なお、第2平面96は、上述のように保護カバー5内に保護装置が取り付けられる場合に、保護装置のセンサ面との当接面となる。本実施形態では、第2平面96は、保護装置のセンサ面より大きく確保している。したがって、センサ面の全面を密閉ケーシング9に設けられた第2平面96に当接させ、密閉ケーシング9の温度を正確に検知することができる。保護装置を取り付けない圧縮機では、密閉ケーシング9の強度を確保する観点から、第2平面96は、保護カバー5を溶接可能な最低限の大きさとすることが好ましい。
【0061】
<本実施形態の圧縮機1の特徴>
本実施形態の圧縮機1では、モータ7を収容する密閉ケーシング9に、モータ7に接続される端子4を抵抗溶接により接合する第1平面95と、端子4の周囲に配置される保護カバー5を抵抗溶接により接合する第2平面96とが設けられている。そして、第1平面95と第2平面96とが離隔している。
したがって、端子4を溶接する第1平面95と保護カバー5を溶接する第2平面96とが離隔しており、保護カバー5溶接時の加圧力による歪みが、第1平面95と第2平面96との間に設けられた曲面97を介して端子4の溶接部(第1平面95)に伝わるため、端子4の溶接部に生じる歪みを抑制できる。よって、端子4や保護カバー5を取り付けるための平面の面積を小さくしても、密閉ケーシング9と端子4との溶接部の歪みを抑制できる。
【0062】
また、本実施形態の圧縮機1では、第1平面95を含む仮想平面と第2平面96を含む仮想平面とが同一である。したがって、保護カバー5の形状を簡易にできる。本実施例では、保護カバー5の底壁5aを平板状に形成しているので、第1平面95および第2平面96の両方に当接させることができる。このとき、底壁5aに形成された開口5cに対して第1平面95に溶接された端子4を挿通することで、端子4と保護カバー5との位置決めを容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態の圧縮機1では、第2平面96は、密閉ケーシング9表面において保護カバー5の底壁5aと対向する領域の内側のみに設けられている。したがって、第2平面96は、保護カバー5の底壁5aと対向する領域からはみ出した部分、すなわち、溶接には関係のない無駄な部分がない。よって、第2平面96を小さくし、密閉ケーシング9の強度低下を防ぐことができる。
【0064】
さらに、本実施形態の圧縮機1では、保護カバー5は、1つの第2平面96において3箇所でプロジェクション溶接される。したがって、確実に保護カバー5を密閉ケーシング9に接合させることができる。
【0065】
加えて、本実施形態の圧縮機1では、保護カバー5に形成された吊下げ用の孔5eは、端子4の溶接位置より保護カバー5の溶接位置の近くに設けられている。したがって、吊り下げ用の孔5eと保護カバー5の溶接位置との間の距離を比較的短くできるので、作成時や運搬時に圧縮機1を吊り下げた際に、保護カバー5の溶接が剥がれにくい。よって、孔5eを端子4の溶接位置側に設ける場合に比べて、保護カバー5の溶接強度を小さくできる。その結果、保護カバー5溶接時の加圧力を小さくでき、加圧力によって生じる歪みを小さく抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態の圧縮機1では、保護カバー5の保護壁5bは、端子4の周囲の全周を覆っている。したがって、保護カバー5により確実に端子4を保護することができる。
【0067】
さらに、本実施形態の圧縮機1では、第1平面95および第2平面96が設けられる密閉ケーシング9は、高圧となる空間を画定している。したがって、第1平面95および第2平面96を小さくし、密閉ケーシング9の強度低下を防ぐことができる本発明を適用するのが効果的である。
【0068】
また、本実施形態の圧縮機1では、冷媒としてCO2冷媒を用いている。CO2冷媒を用いる場合は、高圧に耐えられるように密閉ケーシング9の平面の面積を小さくする必要があるので、本発明を適用するのが効果的である。
【0069】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態の圧縮機201は、保護カバー205の構成が上記第1実施形態と異なっている。その他の構成は上記第1実施形態とほぼ同様であるので、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0070】
図7に示すように、圧縮機201は、第1実施形態の圧縮機1と同様に、内部に駆動機構6および圧縮機構10が配置される筒状の容器である密閉ケーシング209を備えている。密閉ケーシング209は、本体291、上蓋体292、および下蓋体293で構成されている。密閉ケーシング209の上蓋体292には、端子204および保護カバー205が設けられている。また、密閉ケーシング209の本体291には、吸入管202および排出管203が設けられている。
【0071】
図8および図9に示すように、密閉ケーシング209の上蓋体292は、略半球形状を有しており、その表面に、端子204を溶接するための第1平面295と、保護カバー205を溶接するための第2平面296とが設けられている。なお、図8に示すように、第2平面296は3つ設けられており、各第2平面296において、後で詳述する保護カバー205の2つの第1溶接脚205bおよび1つの第2溶接脚205cの合計3つの溶接脚がそれぞれ溶接される。この第1平面295および3つの第2平面296は、互いに離隔している。すなわち、第1平面295と第2平面296との間には、第1平面295を含む仮想平面と第2平面296を含む仮想平面とのいずれの仮想平面にも含まれない曲面297が配置されている。図9(b)に示すように、第1平面295と、第2溶接脚205cが溶接される第2平面296との間の曲面297は、略半球形状を有する上蓋体292の表面を構成する球面の一部である。そして、3つの第2平面296のうち第1溶接脚205bが溶接される2つの第2平面296(すなわち、図9(a)に表れている2つの第2平面296)は、いずれも同一の仮想平面P3(図9(a)において二点鎖線で示す平面)に含まれている。すなわち、この2つの第2平面296をそれぞれ含む2つの仮想平面は同一である。なお、仮想平面P3は、第1平面295よりも下方に位置している。第1平面295には、端子204が嵌め込まれる開口295aが形成されている。端子204は、開口295aに挿通された状態で、第1平面295に抵抗溶接により接合される。
【0072】
保護カバー205は、図8、9に示すように、上面視でU字形状を有しており、端子204の周囲を部分的に覆う保護壁205aを有している。保護壁205aの下縁には、2つの第1溶接脚205bと1つの第2溶接脚205cとが設けられている。図10(a)に示すように、第1溶接脚205bおよび第2溶接脚205cは、いずれも、保護壁205aで囲まれた領域の外側に延びている。
【0073】
2つの第1溶接脚205bは、U字形状の保護壁205aの下縁における両端部近傍にそれぞれ設けられている。図10(b)に示すように、第1溶接脚205bは、保護壁205aの下縁から保護壁205aとほぼ直交する方向に延びている。2つの第1溶接脚205bの下面は、同一の仮想平面P2(図10(b)において二点鎖線で示す平面)に含まれている。第2溶接脚205cは、U字形状の保護壁205aの下縁における湾曲部に設けられている。より詳細には、第2溶接脚205cは、保護壁205aの湾曲部の中心からずれた位置(図10(b)においては湾曲部の中心から右方にずれた位置)に設けられている。図10(c)に示すように、第2溶接脚205cは、保護壁205aの下縁から保護壁205aと直交する方向よりもやや下方に向かって斜めに延びている。第2溶接脚205cの角度は、この第2溶接脚205cが溶接される第2平面296とほぼ同じ角度になっている。
【0074】
2つの第1溶接脚205bおよび1つの第2溶接脚205cは、上述のように密閉ケーシング209の上蓋体292に設けられた3つの第2平面296にそれぞれ当接するようになっている。より詳細には、2つの第1溶接脚205bは、3つの第2平面296のうち、同一の仮想平面P3に含まれている2つの第2平面296にそれぞれ当接し、第2溶接脚205cは、残りの第2平面296に当接する。保護カバー205は、第1溶接脚205bおよび第2溶接脚205cを第2平面296に当接させた状態で、各溶接脚205b、205cでプロジェクション溶接を行うことで、第2平面296に接合される。
【0075】
なお、上蓋体292は複数の種類の圧縮機に汎用するので、極力上蓋体292に溶接時の加圧力をかけないことが望ましい。したがって、圧縮機が比較的軽量な場合等、圧縮機を吊り下げる強度が確保できれば、第2溶接脚205cでの溶接を省略し、第1溶接脚205bのみで溶接してもよい。このとき、第2溶接脚205cは、位置決め用として利用することもできる。
【0076】
また、図10(b)に示すように、保護カバー205の保護壁205aには、圧縮機201を吊下げるための孔205eが形成されている。孔205eは、保護壁205aの湾曲部の中心からずれた位置(図10(b)においては湾曲部の中心から左方にずれた位置)に設けられている。
【0077】
<本実施形態の圧縮機201の特徴>
本実施形態の圧縮機201では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、端子204を溶接する第1平面295と保護カバー205を溶接する第2平面296とが離隔しており、保護カバー205溶接時の加圧力による歪みが、第1平面295と第2平面296との間に設けられた曲面297を介して端子204の溶接部(第1平面295)に伝わるため、端子204の溶接部に生じる歪みを抑制し、密閉ケーシング209に端子204および保護カバー205を適正に取り付けることができる。
【0078】
また、本実施形態の圧縮機201では、密閉ケーシング209に、保護カバー205を溶接する第2平面296が3つ設けられている。したがって、保護カバー205を複数箇所で溶接する場合に、1つの第2平面上に複数箇所溶接するよりも、平面の面積を小さくできる。よって、密閉ケーシング209の強度低下を防ぐことができる。
【0079】
さらに、本実施形態の圧縮機201では、3つの第2平面296のうちの2つは、同一の仮想平面P3に含まれている。したがって、この2つの第2平面296にそれぞれ溶接される2つの第1溶接脚205bは、その下面が同一の仮想平面P2に含まれるように形成すればよい。よって、複数の第2平面296においてそれぞれ溶接する保護カバー205の形状を簡易にできる。また、2つの第1溶接脚205bを溶接する2つの第2平面296は同じ方向を向くので、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、2つの第2平面296における加圧方向が同一となる。したがって、2つの第2平面296における保護カバー205の溶接作業を一度に行うことができる。
【0080】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態は、スクロール圧縮機に本発明を適用した一例である。
図11に示すように、本実施形態の圧縮機301は、密閉ケーシング309と、密閉ケーシング309の内部に配置される圧縮機構310および駆動機構306を備えている。図11は、駆動機構306の断面を示すハッチングを省略して表示している。この圧縮機構310も、いわゆる高圧ドーム型の圧縮機である。図11の上下方向を単に上下方向として、圧縮機301について以下説明する。
【0081】
密閉ケーシング309は、第1実施形態の密閉ケーシング9と同様に、両端が塞がれた円筒状の容器であり、本体391、上蓋体392、および下蓋体393で構成されている。密閉ケーシング309の上蓋体392には、冷媒を導入するための吸入管302が設けられている。密閉ケーシング309の本体391には、圧縮された冷媒を排出するための排出管303と、駆動機構306の後述する固定子307bのコイルに電気を供給するための端子304と、端子304を保護する保護カバー305とが設けられている。後で詳述するように、端子304と保護カバー305とは、抵抗溶接により密閉ケーシング309に接合されている。また、密閉ケーシング309内の下部には、圧縮機構310の摺動部の動作を滑らかにするための潤滑油Lが貯留されている。密閉ケーシング309の内部には、圧縮機構310と、駆動機構306とが上下に並んで配置されている。
【0082】
駆動機構306は、駆動源となるモータ307と、このモータ307に取り付けられたシャフト308とを有する。モータ307と、モータ307の駆動力を圧縮機構310に伝達するためのシャフト308とを有する。
【0083】
モータ307は、第1実施形態のモータ7とほぼ同様の構成であって、密閉ケーシング309の内周面に固定されている略円環状の固定子307bと、この固定子307bの径方向内側にエアギャップを介して配置される回転子307aとを備えている。
【0084】
シャフト308は、モータ307の駆動力を圧縮機構310に伝達するために設けられており、固定子307bの内周面に固定されて、回転子307aと一体的に回転する。シャフト308は、その上端部に偏心部308aを有している。偏心部308aは、円柱状であって、その軸心がシャフト308の回転中心から偏心している。この偏心部308aには、可動スクロール340の後述する軸受部343が装着されている。
【0085】
圧縮機構310は、密閉ケーシング309の内周面に固定されるハウジング320と、ハウジング320の上側に配置される固定スクロール330と、ハウジング320と固定スクロール330との間に配置される可動スクロール340とを備えている。
【0086】
ハウジング320は、略円環状の部材であって、その中央部には、偏心部収容孔321と、この偏心部収容孔321よりも径の小さい軸受け孔322とが上下に並んで形成されている。偏心部収容孔321の内側には、シャフト308の偏心部308aが、可動スクロール340の軸受部343の内側に挿入された状態で収容されている。軸受け孔322は、筒状の軸受323を介して、シャフト308を相対回転可能に支持している。
【0087】
固定スクロール330の下面の中央部には、略円形状の凹部331が形成されている。また、この凹部331の底面には、下方に突出する渦巻状の固定側ラップ332が形成されている。また、固定スクロール330には、いずれも固定スクロール330の上面に開口していると共に凹部331に連通する吸入路333および吐出孔336が形成されている。吸入路333は、上面視で凹部331の縁部近傍に設けられており、その上端に吸入管302の下端が内嵌されている。吐出孔336は、上面視で凹部331の中央部に設けられている。
【0088】
また、固定スクロール330の上面の略中央部には、窪み部334が形成されており、この窪み部334を覆うようにカバー部材335が固定スクロール330に取り付けられている。また、ハウジング320および固定スクロール330にそれぞれ形成された連通孔325、337により、窪み部334とカバー部材335とによって囲まれた空間と、ハウジング320の下方の空間とが連通している。
【0089】
可動スクロール340は、円盤状の平板部341と、この平板部341の上面から上方に突出する渦巻き状の可動側ラップ342と、平板部341の下面から下方に突出する円筒状の軸受部343とから構成されている。軸受部343の内側には、偏心部308aが相対回転可能に挿入されている。
【0090】
平板部341は、可動スクロール340の自転運動を阻止するための部材であるオルダムリング350を介して、ハウジング320に支持されている。可動スクロール340の可動側ラップ342は、固定スクロール330の固定側ラップ332とほぼ対称な形状であって、固定側ラップ332と噛み合うように平板部341に配置されている。
【0091】
圧縮機構310において、吸入管302から吸入路333を介して凹部331に冷媒を供給しつつ、モータ307の駆動によりシャフト308を回転させると、偏心部308aに装着された可動スクロール340は、自転することなく旋回する。これに伴って、可動側ラップ342の側面と、固定側ラップ332の側面および凹部331の周壁面とによって形成される空間は、中心に向かって移動しつつ、その容積が小さくなる。これにより、凹部331内で冷媒が圧縮される。そして、この空間が吐出孔336と連通し、空間内の圧縮された冷媒が吐出孔336から吐出される。吐出孔336から吐出された冷媒は、固定スクロール330の連通孔337と、ハウジング320の連通孔325とを通過して、ハウジング320の下方の空間に排出された後、最終的に、排出管303から密閉ケーシング309の外へ吐出される。したがって、密閉ケーシング309の内部空間は高圧となる。
【0092】
ここで、密閉ケーシング309の本体391の端子304およびその保護カバー305の接合部について説明する。
図11〜図13に示すように、密閉ケーシング309の本体391の外周面には、端子304を溶接するための第1平面395と、保護カバー305を溶接するための第2平面396とが設けられている。この第1平面395および第2平面396は、第1実施形態の第1平面95および第2平面96と同様に、互いに離隔しており、且ついずれも同一の仮想平面P4(図11において二点鎖線で示す平面)に含まれている。そして、第1平面395と第2平面396との間には、仮想平面P4に含まれない曲面397が設けられている。図13(c)に示すように、曲面397は、筒状の本体391の表面の一部である。第1平面395には、端子304が挿通される開口395aが形成されている。端子304は、開口395aに挿通された状態で、第1平面395に抵抗溶接により接合される。
【0093】
図13に示すように、保護カバー305には、第1実施形態の保護カバー5と同様に、端子304が挿通される開口305cが形成された底壁305aと、吊り下げ用の孔305eが形成された保護壁305bとで構成されている。そして、保護カバー305は、第1平面395に溶接された端子304を開口305cに挿通した状態で、プロジェクション溶接により第2平面396に接合される。
【0094】
<本実施形態の圧縮機301の特徴>
本実施形態の圧縮機301では、第1実施形態の圧縮機1と同様に、端子304を溶接する第1平面395と保護カバー305を溶接する第2平面396とが離隔しており、保護カバー305溶接時の加圧力による歪みが、第1平面395と第2平面396との間に設けられた曲面397を介して端子304の溶接部(第1平面395)に伝わるため、端子304の溶接部に生じる歪みを抑制し、密閉ケーシング309に端子304および保護カバー305を適正に取り付けることができる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0096】
例えば、上述の第2実施形態では、図9および図10に示すように、保護カバー205に設けられた2つの第1溶接脚205bの下面が、同一の仮想平面P2に含まれており、第1溶接脚205bを溶接する2つの第2平面296が、いずれも同一の仮想平面P3に含まれている場合について説明したが、これには限定されない。図14に示すように、第2実施形態の変形例においては、保護カバー405の2つの第1溶接脚405bの下面の高さレベルが異なっている。すなわち、2つの第1溶接脚405bをそれぞれ含む仮想平面P4、P5は、互いに平行である。そして、この2つの第1溶接脚405bを溶接する2つの第2平面496についても、それぞれ互いに平行な仮想平面P4、P5に含まれている。なお、端子404が溶接される第1平面495は、仮想平面P4、P5の上方に位置している。
【0097】
上述の変形例においても、第2実施形態と同様に、抵抗溶接時に電極を使用する場合に、2つの第2平面496における加圧方向が同一となるので、2つの第2平面496における保護カバー405の溶接作業を一度に行うことができる。
【0098】
また、保護カバー205に設けられた全ての溶接脚205b、205cを溶接する第2平面296をそれぞれ含む3つの仮想平面が同一であってもよいし、3つの仮想平面が互いに平行であってもよい。さらに、3つの仮想平面が、いずれも平行でなくてもよい。
【0099】
加えて、上述の第1および第3実施形態では、端子4(304)を溶接する第1平面95(395)を含む仮想平面と、保護カバー5(305)を溶接する第2平面96(396)を含む仮想平面とが、同一である場合について説明したが、これには限定されない。例えば、これらの仮想平面は平行であってもよいし、平行でなく互いに異なる方向を向いた面であってもよい。
【0100】
さらに、上述の第1および第3実施形態では、第2平面96(395)は、密閉ケーシング9(309)表面において保護カバー5(305)と対向する領域の内側に設けられている場合について説明したが、第2平面96(395)は、保護カバー5(305)と対向する領域からはみ出ていてもよい。
【0101】
加えて、上述の第1および第3実施形態では、保護カバー5(305)が、1つの第2平面96(396)において3箇所でプロジェクション溶接される場合について説明したが、溶接箇所は3箇所に限定されるものではない。すなわち、溶接箇所は、1箇所であってもよいし、2箇所であってもよい。また、4箇所以上で溶接してもよい。
【0102】
さらに、上述の第1および第3実施形態では、保護カバー5(305)に形成された吊下げ用の孔5e(305e)は、端子4(304)の溶接位置より保護カバー5(305)の溶接位置の近くに設けられている場合について説明したが、これには限定されない。孔5e(305e)は、保護カバー5(305)の溶接位置より端子4(304)の溶接位置の近くに設けられていてもよい。
【0103】
また、上述の第1〜第3実施形態では、第1平面95(295、395)および第2平面96(296、396)が設けられる密閉ケーシング9(209、309)が、高圧となる空間を画定している場合について説明したが、密閉ケーシング9(209、309)は、低圧となる空間を画定するものであってもよい。
【0104】
また、上述の第1〜第3実施形態では、冷媒としてCO2冷媒を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、CO2冷媒以外の冷媒を利用する圧縮機にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明を利用すれば、ケーシングと端子との溶接部に生じる歪みを抑制し、信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0106】
1、201、301 圧縮機
5、205、305、405 保護カバー
5e、205e、305e 孔
7、307 モータ
9、209、309 密閉ケーシング
4、204、304、404 端子
95、295、395、495 第1平面
96、296、396、496 第2平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するケーシングを備えた圧縮機であって、
前記モータに接続される端子が、前記ケーシングの外周面に設けられた第1平面において抵抗溶接により接合され、
前記端子の周囲に配置される保護カバーが、前記ケーシングの外周面に設けられた第2平面において抵抗溶接により接合されており、
前記第1平面と前記第2平面とが離隔していることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ケーシングの外周面は、互いに離隔した複数の前記第2平面を有していることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
複数の前記第2平面をそれぞれ含む複数の仮想平面の少なくとも2つが同一であることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
複数の前記第2平面をそれぞれ含む複数の仮想平面の少なくとも2つが互いに平行であることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記第1平面を含む仮想平面と前記第2平面を含む仮想平面とが同一であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第2平面は、前記ケーシング表面において前記保護カバーと対向する領域の内側に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記保護カバーは、1つの前記第2平面において複数箇所で抵抗溶接されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記保護カバーには、圧縮機を吊り下げ可能な孔が形成されており、
前記孔は、前記端子の溶接位置より前記保護カバーの溶接位置の近くに設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記保護カバーは、前記端子の周囲の全周を覆っていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項10】
前記第1平面および前記第2平面は、前記ケーシングにおいて高圧となる空間を画定する部分に設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧縮機。
【請求項11】
冷媒としてCO2冷媒を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−215072(P2012−215072A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78788(P2011−78788)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】