説明

圧縮空気用の空気清浄器

【課題】オイルフリー式のコンプレッサーによる圧縮空気について、ダスト粒子を効果的に捕捉してフィルタ寿命を延長できる圧縮空気用の空気清浄器を提供すること。
【解決手段】圧縮空気を供給するコンプレッサーと該コンプレッサーから供給された圧縮空気を利用する空気圧機器とを接続する圧縮空気配管の中途部に配置され、エアフィルタ20が内蔵されて圧縮空気を濾過することで清浄化する圧縮空気用の空気清浄器12において、前記コンプレッサーが、オイルフリー式であり、エアフィルタ20のフィルタエレメント21が、積層された三層の濾材によって設けられ、圧縮空気流れの上流側層に表面電荷を持ったエレクトレット不織布濾材21aが配され、圧縮空気流れの中間層に前記三層の中で最もダスト捕集効率の高いガラス繊維濾紙材21bが配され、圧縮空気流れの下流側層にガラス繊維濾紙材21bを補強する補強用不織布濾材21cが配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を供給するコンプレッサーと該コンプレッサーから供給された圧縮空気を利用する空気圧機器とを接続する圧縮空気配管の中途部に配置され、エアフィルタが内蔵されて圧縮空気を濾過することで清浄化する圧縮空気用の空気清浄器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気を濾過する空気清浄器(空気洗浄器)としては、圧縮空気を使用し、該圧縮空気の汚れをろ過するフィルターと、微細粉末加工した強磁性体よび遠赤外線放射セラミックスの粉末よりなる磁遠赤材に、電荷保持能力の高いエレクトレット粉末を混ぜた混合体、とで構成する(特許文献1参照)ものが開示されている。これは、電子部品や精密部品等の洗浄をするのに、フロンを全く必要とせず、またチリやホコリに帯電した静電気を中和させるための高電圧イオン発生器等も不要な、非常に安価で小型・軽量な空気洗浄器を得ることを目的(特許文献1参照)としている。
【0003】
この空気洗浄器は、電荷保持能力の高いエレクトレット粉末を利用するものであるが、表面電荷を持たせた有機繊維不織布状のエレクトレットフィルタ(以下、「エレクトレット不織布濾材」という)を利用するものではなく、圧縮空気を濾過する空気清浄器の分野の全般においても、エレクトレット不織布濾材が利用されてこなかった。
【0004】
このようにエレクトレット不織布濾材が利用されていない理由は、圧縮空気は、オイルミストや高い湿り気を含むことが多く、分子密度が高いため、エレクトレットによるダスト捕集効果が機能しにくいことにある。オイルミストを含む圧縮空気の場合は、エレクトレット不織布濾材の繊維に油分が皮膜状に付着しやすく、湿式状態となってエレクトレットによる表面電荷が奪われ、ダスト捕集機能を高めることができない。
【0005】
一方、コンプレッサーでは、現在もオイル潤滑式のものが主流ではあるが、圧縮空気をオイルによる汚染をなくして高品質の製品空気として供給するため、オイルフリー式のものが徐々に使用されてきている。なお、オイルフリー式コンプレッサーとしては、水潤滑式オイルフリースクリューコンプレッサー、ターボコンプレッサー、ドライオイルフリー式スクリューコンプレッサーなどがある。
【0006】
そして、コンプレッサーによって供給される圧縮空気の品質を向上させるため、その圧縮空気の湿分を除去するエアドライヤーを用いることが多くなってきている。なお、エアドライヤーには、シリカゲルなどを利用した吸着式(ヒートレス式)や、冷媒を利用して圧縮空気を冷却することで水分を結露させて乾燥させるものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−38934号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
圧縮空気用の空気清浄器に関して解決しようとする問題点は、オイルフリー式のコンプレッサーによって供給される圧縮空気について、微細なダスト粒子が多く発生する傾向にあり、エアフィルタの目詰まりが生じやすく、フィルタ寿命を短くすることにある。
そこで本発明の目的は、オイルフリー式のコンプレッサーによって供給される圧縮空気について、ダスト粒子を効果的に捕捉してフィルタ寿命を延長できる圧縮空気用の空気清浄器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器の一形態によれば、圧縮空気を供給するコンプレッサーと該コンプレッサーによって供給された圧縮空気を利用する空気圧機器とを接続する圧縮空気配管の中途部に配置され、エアフィルタが内蔵されて圧縮空気を濾過することで清浄化する圧縮空気用の空気清浄器において、前記コンプレッサーが、オイルフリー式であり、前記エアフィルタのフィルタエレメントが、積層された三層の濾材によって設けられ、圧縮空気流れの上流側層に、表面電荷を持ったエレクトレット不織布濾材が配され、圧縮空気流れの中間層に前記三層の中で最もダスト捕集効率の高いガラス繊維濾紙材が配され、圧縮空気流れの下流側層に前記ガラス繊維濾紙材を補強する補強用不織布濾材が配されている。
【0010】
また、本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器の一形態によれば、圧縮空気除湿装置によって湿分の除去された圧縮空気が前記エアフィルタによって濾過されるように、該圧縮空気除湿装置の圧縮空気流れの下流側に設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器の一形態によれば、前記フィルタエレメントが、前記三層に積層された濾材をプリーツ状に形成することで設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器によれば、オイルフリー式のコンプレッサーによって供給される圧縮空気について、ダスト粒子を効果的に捕捉してフィルタ寿命を延長できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器の形態例を示す一部を破断した斜視図である。
【図2】本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器が配設される圧縮空気ラインの形態例を示す空気清浄器の断面を含む模式的説明図である。
【図3】捕集効率の経時的変化を比較したグラフである。
【図4】圧力損失の経時的変化を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る圧縮空気用の空気清浄器の形態例を、添付図面(図1及び2)に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、この形態例は、圧縮空気を供給するコンプレッサー10とそのコンプレッサー10によって供給された圧縮空気を利用する空気圧機器15とを接続する圧縮空気配管13の中途部に配置され、エアフィルタ20が内蔵されて圧縮空気を濾過することで清浄化する圧縮空気用の空気清浄器12に関する。12aは空気清浄器12のエアインレットであり、12bはエアアウトレットである。12cは空気清浄器12のケーシングである。
【0015】
コンプレッサー10は、オイルフリー式のコンプレッサーである。オイルフリー式コンプレッサーとしては、水潤滑式オイルフリースクリューコンプレッサー、ターボコンプレッサーなどがある。特に、水潤滑式によるオイルフリー式コンプレッサーの場合、潤滑、冷却や圧縮封鎖用に用いる水に溶け込んでいるミネラル成分が析出することで、微細なダスト粒子を大量に発生しやすい。なお、水を清浄化することで、析出ダスト粒子の発生を低減できるが、コスト高になりやすい。
【0016】
エアフィルタ20のフィルタエレメント21は、積層された三層の濾材によって設けられ、圧縮空気流れの上流側層に、表面電荷を持ったエレクトレット不織布濾材21aが配され、圧縮空気流れの中間層に前記三層の中で最もダスト捕集効率の高いガラス繊維濾紙材21bが配され、圧縮空気流れの下流側層にガラス繊維濾紙材21bを補強する補強用不織布濾材21cが配されている。エレクトレット不織布濾材21a及び補強用不織布濾材21cは、ガラス繊維濾紙材21b表面の保護を兼ねるようにも機能している。なお、補強用不織布濾材21cは、主に補強のために設けられているもので、圧力損失とダスト捕集効率が前記三層の中で最も低いものになっている。単位厚み当たりのダスト捕集効率は、中間層>最上流層>最下流層の関係になっている。
【0017】
本形態例のエアフィルタ20は内側から外側へ圧縮空気が流れるように設けられており、内層の濾材がエレクトレット不織布濾材21aになっており、外層の濾材が補強用不織布濾材21cになっている。すなわち、本形態例では、内外層のポアサイズが大きく、中間層のポアサイズが小さくなっており、内層がエレクトレット化していることで、ポアサイズは大きいがダスト捕集効率は高いものとなっている。なお、圧縮空気の流れ方向は限定されるものではなく、外側から内側へ流れるようにしてもよく、その場合は濾材を反対に積層すればよい。
【0018】
これによれば、エレクトレット不織布濾材21aとガラス繊維濾紙材21bと関係において、上流側が粗で下流側が密な粗密勾配構造を有する積層濾材になっている。これによれば、表面電荷を利用してエレクトレット不織布濾材21aで量的に多くの粉塵(ダスト)を捕集し、目詰まりを生じやすいガラス繊維濾紙材21bの負担を軽減できる。したがって、圧力損失の上昇を遅らせることができ、エアフィルタ20が長寿命化する。
【0019】
また、形態例のフィルタエレメント21は、三層に積層された濾材をプリーツ状に形成することで設けられている。これによれば、有効な濾過面積を広く有する積層フィルタとなり、フィルタ寿命を延長できる。
【0020】
上端側エンドプレート22及び下端側エンドプレート23によって、フィルタエレメント21の両端がシール固定されている。また、有孔板状或いは網目状などの通気材によって設けられた内筒スクリーン24及び外筒スクリーン25によって、フィルタエレメント21を筒状に保持すると共に保護している。
【0021】
また、本形態例の圧縮空気用の空気清浄器12では、図2に示すように、圧縮空気除湿装置11によって湿分の除去された圧縮空気がエアフィルタ20によって濾過されるように、その圧縮空気除湿装置11の圧縮空気流れの下流側に設けられている。圧縮空気が乾燥することで、表面電荷が機能しやすくなり、エレクトレット不織布濾材21aの捕集効率が向上する。これにより、エレクトレット不織布濾材21aによるダスト捕集効率が高まり、目詰まりを生じやすいガラス繊維濾紙材21bの負担を軽減し、エアフィルタ20の寿命を延長できる。
【0022】
次に、以上の構成を備える圧縮空気用の空気清浄器12の性能について、図3及び4の表に基づいて説明する。
図3は経過時間(Hr)と、エアフィルタの捕集効率(%)の関係を示すグラフである。A線は本発明に係るエアフィルタ、B線はガラス繊維濾紙材の単体によるエアフィルタ、C線はエレクトレット不織布濾材の単体によるエアフィルタの経時的変化を示している。A線に示すように、本発明に係るエアフィルタは、ガラス繊維濾紙材の捕集効率が減退することがないことから、常に高いダスト捕集効率を維持することができる。
【0023】
図4は経過時間(Hr)と、エアフィルタの圧力損失(MPa)の関係を示すグラフである。A線は本発明に係るエアフィルタ、B線はガラス繊維濾紙材の単体によるエアフィルタ、C線はエレクトレット不織布濾材の単体によるエアフィルタ経時的変化を示している。なお、D線はガラス繊維濾紙材とエレクトレット不織布濾材の圧力損失を単純に加えた想定曲線である。
本発明に係るエアフィルタは、エレクトレット不織布濾材21aによって多くのダストを捕集でき、目詰まりを生じやすいガラス繊維濾紙材21bの負担を軽減できる。したがって、圧力損失の上昇を遅らせることができ、エアフィルタ20が長寿命化する。
【0024】
本発明係る圧縮空気用の空気清浄器は、圧縮空気に限定されず、他の圧縮気体についても適応して使用できる。
【0025】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0026】
10 コンプレッサー
11 圧縮空気除湿装置
12 空気清浄器
12a エアインレット
12b エアアウトレット
12c ケーシング
13 圧縮空気配管
15 空気圧機器
20 エアフィルタ
21 フィルタエレメント
21a エレクトレット不織布濾材
21b ガラス繊維濾紙材
21c 補強用不織布濾材
22 上端側エンドプレート
23 下端側エンドプレート
24 内筒スクリーン
25 外筒スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を供給するコンプレッサーと該コンプレッサーによって供給された圧縮空気を利用する空気圧機器とを接続する圧縮空気配管の中途部に配置され、エアフィルタが内蔵されて圧縮空気を濾過することで清浄化する圧縮空気用の空気清浄器において、
前記コンプレッサーが、オイルフリー式であり、
前記エアフィルタのフィルタエレメントが、積層された三層の濾材によって設けられ、圧縮空気流れの上流側層に、表面電荷を持ったエレクトレット不織布濾材が配され、圧縮空気流れの中間層に前記三層の中で最もダスト捕集効率の高いガラス繊維濾紙材が配され、圧縮空気流れの下流側層に前記ガラス繊維濾紙材を補強する補強用不織布濾材が配されていることを特徴とする圧縮空気用の空気清浄器。
【請求項2】
圧縮空気除湿装置によって湿分の除去された圧縮空気が前記エアフィルタによって濾過されるように、該圧縮空気除湿装置の圧縮空気流れの下流側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧縮空気用の空気清浄器。
【請求項3】
前記フィルタエレメントが、前記三層に積層された濾材をプリーツ状に形成することで設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮空気用の空気清浄器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86183(P2012−86183A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236247(P2010−236247)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】