説明

圧送塗装システム用刷毛

【課題】 柄本体Hの周囲にパイプやホースがまつわりつかないようにして、塗装効率を上げる。
【解決手段】 柄本体Hの少なくとも先端は一対の板部材8,8を対向させてなり、柄本体の基端部7でこれら板部材を一体にしている。そして、上記柄本体の先端である一対の板部材の対向部間には、刷毛部20に連通させた刷毛接続部材Mを介在させ、柄本体の基端部には管継ぎ手Jを設けている。この管継ぎ手と上記刷毛接続部材とを、上記板部材間に配置したパイプで接続する一方、上記管継ぎ手を図示していない塗料圧送装置に接続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗料を圧送して塗装するための圧送塗装システム用刷毛に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシステムとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この従来の圧送塗装システム用刷毛を図7に示したが、塗料用タンクTに接続したコック1と、刷毛本体Bとを供給ホース2を介して接続している。そして、上記刷毛本体Bと供給ホース2とを接続する構成は次のとおりである。
【0003】
つまり、上記刷毛本体Bは、その柄3と、この柄3の先端に連続させた刷毛保持部4と、刷毛保持部4に保持させた刷毛部5とからなる。そして、上記供給ホース2は、コック1から上記刷毛保持部4に設けたコック6に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−165119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにした従来の圧送塗装システム用刷毛では、供給ホース2を刷毛保持部3に設けたコック6に接続しているので、供給ホース2が柄3の周りを経由することになる。しかし、柄3の部分は、それを手に持って塗装作業をするところなので、供給ホース2が周囲にあると、それが手にまつわりついて、塗装作業の邪魔になるという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、供給ホースが塗装作業者の手にまつわりついたりしない圧送塗装システム用刷毛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、柄本体の少なくとも先端は一対の板部材を対向させてなり、柄本体の基端部でこれら板部材を一体にしている。そして、上記柄本体の先端である一対の板部材の対向部間には、刷毛部に連通させた刷毛接続部材を介在させ、柄本体の基端部には管継ぎ手を設けている。この管継ぎ手と上記刷毛接続部材とを、上記板部材間に配置したパイプで接続する一方、上記管継ぎ手を塗料圧送装置に接続している。
【0008】
上記のようにした柄本体は、一対の板部材を別々にして、それらの基端部を連結してもよいし、一対の板部材をひとつの部材で構成して基端部を一体にし、この基端部から一対の板部材を二股状に連続させるようにしてもよい。
また、上記刷毛接続部材は、ひとつの部材で構成してもよいし、複数の部材で構成してもよい。
【0009】
第2の発明は、上記刷毛接続部材に、上記パイプを導く貫通穴を設け、この貫通穴を貫通した上記パイプ先端にノズルヘッドを設けている。
第3の発明は、上記管継ぎ手に、上記塗料圧送装置に接続した塗料用ホースに接続する回転自在な回転部材を備えている。
【0010】
第4の発明は、上記管継ぎ手と塗料圧送装置との間に流量制御機構を設けている。そして、この流量制御機構によって、管継ぎ手を介して刷毛接続部材に接続された刷毛部に供給する塗料の流量を制御可能にしている。さらに、上記管継ぎ手と流量制御機構とを低圧対応のフレキシブルな塗料用ホースで接続し、上記流量制御機構は、この塗料用ホース内の圧力が、このホースの耐圧力以下に保たれるように塗料の供給流量を制御する構成にしている。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、板部材間に配置したパイプを介して管継ぎ手と上記刷毛接続部材とを接続するとともに、圧送装置に接続する塗料用ホースは、柄本体の基端部に設けた管継ぎ手に接続されるので、柄本体の周囲にホース類がまつわりつくことがない。したがって、柄本体を握って塗装作業をするときに、従来のようにホースが手などにまつわりついて、塗装作業を邪魔したりしなくなる。
【0012】
第2の発明によれば、刷毛接続部材にパイプを導く貫通穴を設け、この貫通穴を貫通したパイプ先端にノズルヘッドを設けたので、パイプを介して管継ぎ手から刷毛接続部に供給された圧送塗料は、刷毛部に勢いよく噴出される。したがって、刷毛部には圧送塗料が満遍なく行き渡り、むらのない塗装をすることができる。
【0013】
第3の発明によれば、管継ぎ手に、塗料圧送装置に接続した供給パイプを回転自在に接続する回転部材を設けたので、柄本体をどのように回しても、塗料用ホースがねじれたりしない。もし、塗料用ホースがねじれると、塗料圧送時の圧力損失が大きくなったり、ホースが破損したりするので、作業途中でそのねじれを解かなくてはならず、塗装作業が中断することになる。しかし、上記したように柄本体をどのように回しても、塗料用ホースがねじれないので、塗装作業が中断されることはない。
【0014】
第4の発明によれば、管継ぎ手と流量制御機構とを低圧対応のフレキシブルな塗料用ホースで接続できるので、柄本体を軽く滑らかに動かすことができる。したがって、塗装作業者の疲労も少なくなり、その分、時間当たりの塗装面積も大きくなって、塗装効率が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】柄本体部分の斜視図である。
【図2】刷毛部、柄本体および流量制御機構までの全体を示した図である。
【図3】柄本体の先端部分の拡大断面図である。
【図4】管継ぎ手部分の拡大断面図である。
【図5】流量制御機構の拡大断面図である。
【図6】流量制御機構の他の実施形態を示した要部拡大断面図である。
【図7】従来の圧送塗装システム用刷毛を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図示の実施形態の柄本体Hは、木製であって、その基端部7に一対の板部材8,8を二股状に連続させている。また、上記基端部7には、図3に示すように管継ぎ手Jを連結しているが、この管継ぎ手Jは、固定部材9と、連結部材10と、カップリング11と、回転部材12とを備えている。
【0017】
上記固定部材9は、その先端に管部9aを設け、この管部9aを、柄本体Hの基端部7に形成した接続孔13に挿入するようにしている。また、この固定部材9であって、管部9aとは反対側に凹部9bを形成し、この凹部9bに上記連結部材10を挿入してねじ結合させる。
【0018】
上記連結部材10は、その中に回転部材12を回転自在に挿入するとともに、固定部材9とは反対側からカップリング11を挿入してねじ結合し、回転部材12が抜け出るの防止している。このようにした回転部材12はその先端をカップリング11の外方に突出させるとともに、この突出部分に低圧対応のフレキシブルな塗料用ホース14をはめ入れている。
なお、図中符号15は、塗料用ホース14が回転部材12から抜けるのを防止するリングである。
【0019】
一方、上記一対の板部材8,8の先端には、刷毛接続部材Mを設けているが、この刷毛接続部材Mの具体的な構成は図4に示すとおりである。
上記刷毛接続部材Mは、パイプ導入穴16を形成した保持部17と、この保持部17と一体にしたパイプ部18とを備えているが、このパイプ部18の外周には雄ねじを形成している。
なお、上記保持部17を貫通する穴とパイプ部18とで、この発明の貫通穴を構成する。
【0020】
そして、上記刷毛接続部材Mは、その保持部17を板部材8,8の先端の対向部間に挿入するとともに、ボルト19で板部材8,8に固定している。
上記のようにして板部材8,8間に固定した刷毛接続部材Mは、そのパイプ部18が板部材8,8から突出する構成にしている。
【0021】
また、刷毛部20は、その基端を筒部材21に固定しているが、この筒部材21には雌ねじを形成したねじ管22を一体的に組み込んでいる。そして、上記刷毛接続部材Mのパイプ部18をねじ管22に挿入するとともに、それらをねじ結合している。
上記のようにパイプ部18をねじ管22にネジ結合したとき、パイプ部18の先端が刷毛部20内に突出する構成にしている。
なお、上記刷毛部20と一体にした筒部材21は、刷毛接続部材Mのパイプ部18に対して、上記ねじを介して着脱可能にしている。
【0022】
そして、柄本体Hの基端部7に挿入した上記管部9aに、図3に示すようにパイプ23の一端を圧入するが、このパイプ23の他端は、図4に示すように刷毛接続部材Mに形成したパイプ部18を貫通して刷毛部20に突出させている。このように刷毛部20に突出させたパイプ23の先端には、複数の噴出孔24を形成したノズルヘッド25を圧入している。
上記のようにパイプ23は、柄本体Hの板部材8,8間に設けているので、パイプ23が柄本体Hの周囲にまつわりついたりしない。
【0023】
また、管継ぎ手Jの回転部材12に接続した塗料用ホース14は、図5に示した流量制御機構Fに接続しているが、この流量制御機構Fに設けたニップル26を介して、図示していない塗料圧送装置に接続している。
そして、流量制御機構Fの本体27にはボール弁28を設け、ハンドル29を介してボール弁28を開閉制御する構成にしている。また、上記本体27にはニードル弁30を設け、このニードル弁30によって流量を制御できるようにしている。
なお、上記ニードル弁30に代えて、図6に示すように、固定オリフィス部材30aを用いてもよい。このように固定オリフィス部材30aを用いれば、供給流量は一定に制御されることになる。
【0024】
上記のようにした流量制御機構Fは、上記塗料用ホース14内の圧力が、このホースの耐圧力以下に保たれるように塗料の供給流量を制御するものである。
したがって、塗料用ホース14として低圧対応のフレキシブルなホースを用いたときには、流量制御機構Fによって流量を制御しながら、ホースの耐圧力以下の圧力に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
例えば、船舶の溶接部分のように長いところを一気に塗装するのに最適である。
【符号の説明】
【0026】
H 柄本体
7 基端部
8 板部材
J 管継ぎ手
12 回転部材
14 塗料用ホース
M 刷毛接続部材
20 刷毛部
23 パイプ
25 ノズルヘッド
F 流量制御機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄本体の少なくとも先端は一対の板部材を対向させてなり、柄本体の基端部でこれら板部材を一体にしてなり、上記柄本体の先端である一対の板部材の対向部間には、刷毛部に連通させた刷毛接続部材を介在させ、柄本体の基端部には管継ぎ手を設け、この管継ぎ手と上記刷毛接続部材とを、上記板部材間に配置したパイプで接続する一方、上記管継ぎ手を塗料圧送装置に接続した圧送塗装システム用刷毛。
【請求項2】
上記刷毛接続部材は、上記パイプを導く貫通穴を設け、この貫通穴を貫通した上記パイプ先端にノズルヘッドを設けた請求項1記載の圧送塗装システム用刷毛。
【請求項3】
上記管継ぎ手は、上記塗料圧送装置に接続した塗料用ホースを接続する回転自在な回転部材を備えた請求項1または2記載の圧送塗装システム用刷毛。
【請求項4】
上記管継ぎ手と塗料圧送装置との間に流量制御機構を設け、この流量制御機構によって、管継ぎ手を介して刷毛接続部材に接続された刷毛部に供給する塗料の流量を制御可能にするとともに、上記管継ぎ手と流量制御機構とを低圧対応のフレキシブルな塗料用ホースで接続し、上記流量制御機構は、この塗料用ホース内の圧力が、このホースの耐圧力以下に保たれるように塗料の供給流量を制御する構成にした請求項1〜3のいずれかに記載の圧送塗装システム用刷毛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−41891(P2011−41891A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190899(P2009−190899)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(505302948)財団法人日本船舶技術研究協会 (13)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【出願人】(000206934)株式会社マルテー大塚 (26)
【Fターム(参考)】