説明

圧造装置

【課題】除去装置を用いずに帯状の突出部を除去することによって、作業時間を軽減し、作業効率を向上させること。
【解決手段】圧造装置は、線材または棒材からなる線状ブランク60aを所定の長さに切断することによって生成されたブランク(被処理体)60を収容する先細形状からなる凹部5aを有する金型5と、金型5内にブランク60を挿入して加圧し、先細形状からなるブランク60を生成する加圧部10と、を備えている。圧造装置は、さらに、先細形状となったブランク60を小径側から収容する凹部30aを有する追加金型30と、追加金型30に対向する位置に配置され、追加金型30からの加圧力によってブランク60を大径側から挿入して通過させることができる開口45を有する絞り部40と、を備えている。ブランク60は、絞り部40を通過することによって、ブランク60に形成された帯状の突出部60pが絞られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧造することによって、先細形状からなる被処理体を製造する圧造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
先細形状からなる被処理体を製造する従来の圧造装置について、以下説明する。まず、線材または棒材からなる線状ブランク60aが、切断部1によって所定の大きさに切断されて、ブランク(被処理体)60が生成される(図2(a)参照)。次に、このブランク60がダイス金型5の先細形状からなる凹部5a内に挿入される。その後、第一パンチ金型10によって加圧されて先細形状からなるブランク60が生成される(図2(b)参照)。
【0003】
次に、ダイス金型5から外方に出ているブランク60の後端が、面取り凹部20aを有する第二パンチ金型20によって押圧されて、ブランク60の後端の角が面取りされる。このとき、ダイス金型5と第二パンチ金型20との間のブランク60の後端側(大径側)には、帯状の突出部60pが形成される(図2(c)参照)。
【0004】
次に、ブランク60の後端側に形成された帯状の突出部60pが、除去装置70によって、研削または切削されて除去される(図2(d)参照)。最後に、突出部60pが除去されたブランク60が、研磨装置80によって、バレル研磨またはタンブラー研磨されて、テーパー軸60tが生成される(図2(e)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来では、圧造装置によって線状ブランク60aから先細形状のブランク60が生成され、その後、除去装置70によって帯状の突出部60pが研削または切削されて除去され、最後に、研磨装置80によってバレル研磨またはタンブラー研磨されて仕上げられ、テーパー軸60tが製造される。
【0006】
このため、線状ブランク60aからテーパー軸60tを製造するまでに、圧造装置、除去装置70および研磨装置80の三つの装置を用いる必要があり、作業時間がかかり、作業効率が悪かった。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、作業時間を軽減し、作業効率を向上させることができる圧造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の圧造装置は、
被処理体に形成された帯状の突出部を除去可能な圧造装置であって、
前記被処理体を収容する先細形状からなる凹部を有する金型と、
前記金型内に前記被処理体を加圧し、先細形状からなる被処理体を生成する加圧部と、
先細形状となった前記被処理体を小径側から収容する凹部を有する追加金型と、
前記追加金型に対向する位置に配置され、該追加金型からの加圧力によって前記被処理体を大径側から挿入して通過させることができる開口を有する絞り部と、を備え、
前記絞り部は前記被処理体の帯状の突出部に当接し、該被処理体が該絞り部の開口を通過することによって、該被処理体に形成された帯状の突出部が絞られて除去される。
【0009】
このような構成によって、帯状の突出部を研削または切削して除去する除去装置を用いる必要がなくなり、作業時間を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【0010】
本発明の圧造装置において、
前記金型の凹部内に収容された前記被処理体の大径側を収容する凹部を有し、該凹部に収容された前記被処理体を該金型に向かって加圧する追加加圧部をさらに備え、
前記絞り部の開口の横断面の大きさは、前記追加加圧部の凹部の最大横断面の大きさと一致することが好ましい。
【0011】
このような構成によって、被処理体に形成された帯状の突出部以外の箇所が、絞り部によって変形させられることを防止することができる。
【0012】
本発明の圧造装置において、
前記金型の凹部と前記追加金型の凹部が、同一形状からなるこことが好ましい。
【0013】
このような構成によって、被処理体の先端側の形状が、追加金型から加わる力によって変形することを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、絞り部が被処理体の帯状の突出部に当接し、被処理体が絞り部の開口を通過することによって、被処理体に形成された帯状の突出部が絞られて除去される。このため、帯状の突出部を研削または切削して除去する除去装置を用いる必要がなくなり、作業時間を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態
以下、本発明に係る圧造装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1(a)−(e)は本発明の実施の形態を示す図である。
【0016】
図1(a)(b)に示すように、パーツフォーマーなどからなる圧造装置は、線材または棒材からなる線状ブランク60aを所定の長さに切断してブランク(被処理体)60を生成する切断部1と、生成されたブランク60を収容することができる先細形状からなる凹部5aを有するダイス金型(金型)5と、このダイス金型5内にブランク60を挿入して加圧し、先細形状からなるブランク60を生成する第一パンチ金型(加圧部)10と、を備えている。なお、ダイス金型5の内面底部は丸みを帯びている。
【0017】
また、第一パンチ金型10の直径は、ダイス金型5の凹部5aの入口側の直径よりも小さくなっており、第一パンチ金型10はダイス金型5の凹部5a内に入り込むことができる。また、ダイス金型5の内面底部には、長手方向に移動可能な押ピン19が連結されている。
【0018】
また、図1(c)に示すように、圧造装置は、ダイス金型5の凹部5a内に収容されたブランク60の大径側を収容する内面が丸みを帯びた面取り凹部(凹部)20aを有し、この面取り凹部20aに収容されたブランク60を該金型に向かって加圧する第二パンチ金型20(追加加圧部)を備えている。この第二パンチ金型20は、加圧時に、ダイス金型5から2〜3mm程度の距離まで移動するように構成されている(図1(c)参照)。なお、第二パンチ金型20の面取り凹部20aの横断面は円形状からなっている。
【0019】
また、図1(d)に示すように、圧造装置は、加圧部に押圧されて先細形状となったブランク60を、先端側(小径側)から収容する凹部30aを有する第三パンチ金型(追加金型)30と、当該第三パンチ金型30に対向する位置に配置され、ブランク60を後端側(大径側)から挿入して通過させることができる開口45を有する絞りランド(絞り部)40と、を備えている。なお、この絞りランド40は、外方へ連通した貫通孔43が設けられた基部41と、この基部41から内方に向かって突出した絞り突出部42と、を有している。
【0020】
また、第三パンチ金型30は、ブランク60の先端と当接する当接部34と、この当接部34に連結されたバネ35を有しており、このバネ35が縮むことによって、ブランク60に付勢力が働くようになっている。なお、第三パンチ金型30の凹部30aは、当接部34と、第三パンチ金型30の内壁33とから構成されている。
【0021】
なお、この絞りランド40の開口45の横断面は円形状からなっており、この開口45の直径は、第二パンチ金型20の面取り凹部20aの横断面の最大直径と一致している。また、ダイス金型5の凹部5aと第三パンチ金型30の凹部30aは、同一形状からなっている。
【0022】
また、図1(e)に示すように、上述した圧造装置とは別に、ブランク60をバレル研磨またはタンブラー研磨して仕上げる研磨装置80も設けられている。
【0023】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0024】
まず、切断部1によって、線材または棒材からなる線状ブランク60aが所定の大きさに切断されてブランク(被処理体)60が生成される(切断工程)(図1(a)参照)。
【0025】
次に、このブランク60が、ダイス金型5の先細形状からなり内面底部が丸みを帯びている凹部5a内に挿入され、第一パンチ金型10によって加圧される(第一圧造工程)(図1(b)参照)。このことによって、先細形状からなり、先端の角が面取りされた(R形状となった)ブランク60が、生成される。
【0026】
このとき、第一パンチ金型10はダイス金型5の凹部5a内に入り込むこととなる。その後、第一パンチ金型10がダイス金型5の凹部5aから引き出される。そして、ダイス金型5の内面底部に連結された押しピン19が、第一パンチ金型10に向かって長手方向に移動される(図1(c)の矢印参照)。このことによって、ダイス金型5の凹部5a内に押し込まれたブランク60の後端が、ダイス金型5の凹部5a内から押し出される。
【0027】
次に、ダイス金型5の凹部5a内に収容されたブランク60の後端が、内面が丸みを帯びている面取り凹部20a内に収容される。その後、このブランク60の後端は、第二パンチ金型20によって押圧されて、この後端の角が面取りされる(第二圧造工程)(図1(c)参照)。このとき、ダイス金型5と第二パンチ金型20との間は、2〜3mm程度となっており、ブランク60の後端側(大径側)に、帯状の突出部60pが形成されることとなる。
【0028】
次に、ダイス金型5の凹部5aからブランク60が取り出されて、180°反転させられる。そして、先細形状となったブランク60が、第三パンチ金型30の凹部30a内に先端側(小径側)から収容される(図1(d)参照)。その後、この第三パンチ金型30が絞りランド40に向かって移動し、ブランク60の後端側に形成された帯状の突出部60pが、絞りランド40の絞り突出部42に当接することとなる(図1(d)参照)。
【0029】
次に、第三パンチ金型30を絞りランド40に向かって加圧すると、当接部34に連結されたバネ35が縮み、ブランク60に付勢力が働く(図1(d)参照)。このとき、ダイス金型5の凹部5aと第三パンチ金型30の凹部30aが、同一形状からなっているので、ブランク60の先端側の形状が、第三パンチ金型30から加わる力によって変形することを防止することができる。
【0030】
そして、バネ35からブランク60に対してある程度の付勢力が働くと、ブランク60の後端側に形成された帯状の突出部60pが絞り突出部42によって絞られて除去され、ブランク60がこの絞り突出部42を通過する(絞り工程)(図1(d)参照)。ここで、絞りランド40の開口45の横断面の直径は、第二パンチ金型20の面取り凹部20aの横断面の最大直径と一致しているので、ブランク60に形成された帯状の突出部60p以外の箇所が、絞り突出部42によって変形させられることを防止することができる。
【0031】
このようにして絞り突出部42を通過したブランク60は、バネ35の付勢力による発條作用によって、基部41の貫通孔43を通過して外方へ放出される(図1(d)の矢印参照)。
【0032】
次に、このようにして帯状の突出部60pが絞られたブランク60が、ベルトコンベア(図示せず)や作業者の手によって研磨装置80へと搬送される。その後、この研磨装置80によって、バレル研磨またはタンブラー研磨されて仕上げられ、テーパー軸60tが製造される(研磨工程)(図1(e)参照)。
【0033】
上述のように、本実施の形態によれば、圧造装置と研磨装置80の二つの装置を用いるだけで、線状ブランク60aからテーパー軸60tを生成することができる。このため、従来技術のように帯状の突出部60pを研削または切削して除去する除去装置70(図2(d)参照)を用いる必要がないので、作業時間を軽減し、作業効率を向上させることができる。
【0034】
より具体的には、従来技術において、除去装置70による帯状の突出部60pの研削または切削による除去工程と、研磨装置80によるバレル研磨またはタンブラー研磨による研磨工程に係った総時間を、本実施の形態による圧造装置を用いることによって、1/3にまで短縮することができ、作業効率を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態による圧造装置による被処理体の加工態様を示す概略図。
【図2】従来の圧造装置による被処理体の加工態様を示す概略図。
【符号の説明】
【0036】
1 切断部
5 ダイス金型(金型)
5a 凹部
10 第一パンチ金型(加圧部)
20 第二パンチ金型(追加加圧部)
20a 面取り凹部(凹部)
30 第三パンチ金型(追加金型)
30a 凹部
35 バネ
40 絞りランド(絞り部)
41 基部
42 絞り突出部
43 貫通孔
45 開口
60 ブランク(被処理体)
60a 線状ブランク
60p 突出部
70 除去装置
80 研磨装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に形成された帯状の突出部を除去可能な圧造装置であって、
前記被処理体を収容する先細形状からなる凹部を有する金型と、
前記金型内に前記被処理体を加圧し、先細形状からなる被処理体を生成する加圧部と、
先細形状となった前記被処理体を小径側から収容する凹部を有する追加金型と、
前記追加金型に対向する位置に配置され、該追加金型からの加圧力によって前記被処理体を大径側から挿入して通過させることができる開口を有する絞り部と、を備え、
前記絞り部は前記被処理体の帯状の突出部に当接し、該被処理体が該絞り部の開口を通過することによって、該被処理体に形成された帯状の突出部が絞られて除去されることを特徴とする圧造装置。
【請求項2】
前記金型の凹部内に収容された前記被処理体の大径側を収容する凹部を有し、該凹部に収容された前記被処理体を該金型に向かって加圧する追加加圧部をさらに備え、
前記絞り部の開口の横断面の大きさは、前記追加加圧部の凹部の最大横断面の大きさと一致することを特徴とする請求項1に記載の圧造装置。
【請求項3】
前記金型の凹部と前記追加金型の凹部が、同一形状からなることを特徴とする請求項1に記載の圧造装置。

【図1】
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【図2】
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