説明

圧電アクチュエーター、及び、圧電アクチュエーターの駆動方法

【課題】エネルギー効率の改善及び構成の簡素化を図る。
【解決手段】圧電素子を有し、駆動信号が圧電素子に供給されることによって振動する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体と、振動体に設けられた当接部であって、振動体の振動に応じて被駆動体に当接する当接部と、を備え、振動体を第1周波数で矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、振動体を第1周波数とは異なる第2周波数で矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を駆動信号によって発生し、第1振動及び第2振動に基づいて、当接部を被駆動体に当接させて被駆動体を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーター、及び、圧電アクチュエーターの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被駆動体(例えばローター)を駆動させる圧電アクチュエーターとして、圧電素子(ピエゾ素子)によって振動体を長さ方向に伸縮させる伸縮振動(縦振動ともいう)と、振動体を面方向に屈曲させる屈曲振動とを用いるものが知られている。例えば特許文献1では、伸縮振動と屈曲振動とによって、振動体に設けた当接部を略楕円運動させている。そして、楕円運動に応じて当接部を被駆動体に当接させて被駆動体を駆動するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−166816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように伸縮振動と屈曲振動を用いる場合、その各振動を発生させるための電極がそれぞれ必要になり、構成が複雑になるという問題があった。また、屈曲振動は伸縮振動に対して電力の消費量が多い(すなわちエネルギー効率が悪い)という問題があった。
本発明は、エネルギー効率の改善及び構成の簡素化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための主たる発明は、
圧電素子を有し、駆動信号が前記圧電素子に供給されることによって振動する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体と、前記振動体に設けられた当接部であって、前記振動体の振動に応じて被駆動体に当接する当接部と、を備え、前記振動体を第1周波数で前記矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、前記振動体を前記第1周波数とは異なる第2周波数で前記矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を前記駆動信号によって発生し、前記第1振動及び前記第2振動に基づいて、前記当接部を前記被駆動体に当接させて前記被駆動体を駆動することを特徴とする圧電アクチュエーターである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態おける圧電アクチュエーターを用いた駆動ユニットの構成の概略図である。
【図2】図2Aは、駆動ユニットにおける振動部とローターとの関係を示す平面図であり、図2Bは、図2Aの側面図である。
【図3】本実施形態の駆動信号生成回路の構成を示すブロック図である。
【図4】駆動信号と振動部の振動の関係を示す説明図である。
【図5】図4の駆動信号によるつつき部の動きを示す図である。
【図6】駆動信号と振動部の振動の関係の別の例を示す説明図である
【図7】図6の駆動信号によるつつき部の動きを示す図である。
【図8】第2実施形態の駆動信号生成回路の構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施形態における駆動信号の生成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0008】
圧電素子を有し、駆動信号が前記圧電素子に供給されることによって振動する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体と、前記振動体に設けられた当接部であって、前記振動体の振動に応じて被駆動体に当接する当接部と、を備え、前記振動体を第1周波数で前記矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、前記振動体を前記第1周波数とは異なる第2周波数で前記矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を前記駆動信号によって発生し、前記第1振動及び前記第2振動に基づいて、前記当接部を前記被駆動体に当接させて前記被駆動体を駆動することを特徴とする圧電アクチュエーターが明らかとなる。
このような圧電アクチュエーターによれば、エネルギー効率の悪い屈曲振動を用いずに伸縮振動のみで被駆動体を駆動することができる。また、屈曲振動の電極を設ける必要が無い。よって、エネルギー効率の改善及び構成の簡素化を図ることができる。
【0009】
かかる圧電アクチュエーターであって、前記nは2であることが望ましい。
このような圧電アクチュエーターによれば、駆動信号として単純な波形(三角波)を用いることができ、より簡素な構成にすることができる。
【0010】
かかる圧電アクチュエーターであって、前記駆動信号は、周波数が前記第1周波数と等しい三角波であることが望ましい。
このような圧電アクチュエーターによれば、駆動信号の波形によって被駆動体の駆動を制御できる。
【0011】
かかる圧電アクチュエーターであって、前記当接部は、前記振動体の一方の短辺の端部に設けられていることが望ましい。
このような圧電アクチュエーターによれば、被駆動体をより安定して駆動することができる。
【0012】
かかる圧電アクチュエーターであって、前記振動体の他方の短辺の中央部に、前記振動体を支持する支持部を有することが望ましい。
このような圧電アクチュエーターによれば、短辺方向の振動の変位を稼ぐことができる。
【0013】
かかる圧電アクチュエーターであって、前記矩形の平面形状と対応する形状の金属板を有し、前記振動体は、前記金属板の両面にそれぞれ前記圧電素子が配置されたものである
ことが望ましい。
このような圧電アクチュエーターによれば、振動体の撓みや割れを防止できる。また電圧を稼ぐことができる。
【0014】
また、圧電素子を有する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体の前記圧電素子に駆動信号を供給することによって、前記振動体を第1周波数で前記矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、前記振動体を前記第1周波数とは異なる第2周波数で前記矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を発生することと、前記第1振動及び前記第2振動に基づいて、前記振動体に設けられた当接部を被駆動体に当接させて前記被駆動体を駆動することと、を有することを特徴とする圧電アクチュエーターの駆動方法が明らかとなる。
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
===第1実施形態===
≪駆動ユニットの構成について≫
図1は、本実施形態おける圧電アクチュエーターを用いた駆動ユニットの構成の概略図である。また、図2Aは、駆動ユニットにおける振動部とローターとの関係を示す平面図であり、図2Bは、図2Aの側面図である。なお、本実施形態の駆動ユニットは、例えばマイクロポンプや携帯型機器などの機器を駆動するためのユニットである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の駆動ユニットは、駆動信号生成回路10と、振動部20と、ローター30とを備えている。
駆動信号生成回路10は、所定周波数の駆動信号を生成し、当該駆動信号を振動部20に供給する。なお、駆動信号生成回路10の詳細については後述する。
振動部20(圧電アクチュエーターに相当する)は、駆動信号生成回路10で生成された駆動信号に基づいて振動する。そして、その振動に基づいてローター30を回転させる。なお、振動部20の構成については後述する。
【0018】
ローター30は、円筒形状の回転体(被駆動体に相当する)であり、中央には回転軸31が設けられている。後述するつつき部24が振動部20の振動に応じてローター30と当接することによって、ローター30は、回転軸31を中心として回転する。なお、図2Aにおいて時計回り方向のことを正転方向といい、図2Aにおいて反時計回り方向のことを逆転方向という。
【0019】
≪振動部の構成について≫
振動部20は、圧電素子21、22、補強板23、つつき部24、及び固定部材25を有している。
補強板23は、例えばアルミニウムなどの金属によって形成された矩形状の板部材であり、金属板に相当する。補強板23のローター30側の短辺における幅方向の端部にはつつき部24(当接部に相当する)が設けられている。また、その反対側の短辺における幅方向の中央部には固定部材25(図2Aおよび図2B)が設けられており、螺子等によって当該補強板23が支持固定されている。また、補強板23は接地されている。
【0020】
圧電素子21、22は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛によって形成されたものであり、それぞれ補強板23と同様の矩形形状に設けられている。圧電素子21は、補強板23の上面側に配置され、圧電素子22は、補強板23の下面側に配置されている。すなわち、圧電素子21と圧電素子22によって補強板23を挟んだ構成となっている。また、圧電素子21及び圧電素子22の全面には電極が設けられている。そして圧電素子21の外側(上面)の電極部分、及び、圧電素子22の外側(下面)の電極部分に、駆動信号生成回路10で生成された駆動信号が共に供給される。
【0021】
なお、圧電素子21、22及び補強板23は、駆動信号が供給されることによって振動する。よって、以下の説明において圧電素子21、22及び補強板23のことを振動体ともいう。本実施形態では、振動体における矩形の長辺方向の長さ(図2Aのb)は、短辺方向の長さ(図2Aのa)のほぼ2倍である。すなわち、図2Aにおいて、aの長さとbの長さとの比は、1:2になっている。
【0022】
つつき部24は、前述したように補強板23の一方(ローター30側)の短辺における幅方向の端部に設けられており、振動体の振動に応じてローター30と当接してローター30を回転させる。なお、もし仮に、つつき部24が幅方向の中央部に設けられていると、後述する駆動信号によって振動体を振動させる際に、幅方向の変位が発生しなくなり、ローター30を回転させることができなくなる。そこで本実施形態では、幅方向の端部につつき部24を設けている。こうすることにより、つつき部24の幅方向の変位量を大きくすることができ、安定してローター30を回転させることができる。
【0023】
固定部材25は、補強板23におけるローター30側とは反対側の短辺に設けられており、螺子等によって不図示の基台に固定される。これにより、固定部材25は、補強板23を含めた振動体を支持する。
【0024】
≪駆動信号生成回路の構成について≫
図3は、本実施形態の駆動信号生成回路10の構成の一例を示すブロック図である。
図3に示す駆動信号生成回路10は、クロック発生器100、周波数設定部102、加算機104、減算機106、スイッチ108、波形メモリー110、デジタル−アナログ変換器(以下、DAコンバーターともいう)112、増幅回路(以下、アンプともいう)114、ゲイン設定部116を有している。
【0025】
クロック発生器100は、例えば水晶振動子を利用した発振回路であり、クロック信号を発生して出力する。
周波数設定部102は、クロック発生器100が発生するクロック信号の周期を設定する。
【0026】
加算機104は、クロック発生器100の出力(クロック)を順次加算していき、減算機106は、クロック発生器100の出力(クロック)を順次減算していく。なお、加算機104及び減算機106のカウント値は、駆動信号の1周期分に相当するカウント値になるとリセットされる。
【0027】
スイッチ108は、後述する波形メモリー110への入力を、加算機104の出力側、又は、減算機106の出力側の何れかに切り替える。例えば、スイッチ108が加算機104側に接続された場合は、加算機104の出力が波形メモリー110の入力となり、スイッチ108が減算機106側に接続された場合には、減算機106の出力が波形メモリー110の入力になる。このスイッチ108の接続の切り替えは、不図示の制御部によって適宜実行される。
【0028】
波形メモリー110には、予め駆動信号の一周期分のデータ(デジタル値)と、アドレスとが対応付けられて記憶されている。入力に対応するアドレスに対応付けられたデータ(デジタル値)が読み出されてDAコンバーター112に出力される。前述したように、加算機104及び減算機106のカウント値は駆動信号の1周期毎にリセットされるので、1周期分のデータが繰り返し読み出されることになる。なお、スイッチ108の切り替えに応じて、一周期分のデータの読み出し方向が変わる。
【0029】
DAコンバーター112は、波形メモリー110から読み出されたデジタル値をアナログ値に変換して出力する。
アンプ114は、DAコンバーター112の出力(アナログ信号)を増幅し、駆動信号として圧電素子21、22に出力する。
ゲイン設定部116は、アンプ114の増幅率(ゲイン)を設定する。
【0030】
≪駆動信号と変位との関係について≫
図4は、駆動信号と振動部の振動の関係の一例を示す説明図である。図4の横軸は時間を示しており、縦軸は電圧を示している。また、図4において、実線は駆動信号(アンプ114の出力)、破線は振動体の幅方向(短辺方向)の変位、一点鎖線は長手方向(長辺方向)の変位をそれぞれ示している。
【0031】
本実施形態の駆動信号は、図4に示すように周期Tの三角波である。この三角波の駆動信号の中には、第1周波数の信号(以下第1信号ともいう)と、第2周波数の信号(以下第2信号ともいう)が含まれている。第1信号によって振動体を長辺方向へ伸縮させる振動が励起され、第2信号によって振動体を短辺方向へ伸縮させる振動が励起される。本実施形態では、第1信号による長手方向の変位及び第2信号による幅方向の変位は、それぞれ図のようになる。具体的には、駆動信号の周期Tの間に、長手方向には1回振幅するのに対し、幅方向には2回振幅する。言い換えると、第1信号の周波数は駆動信号の周波数と同じであるのに対し、第2信号の周波数は駆動信号の周波数の2倍になる。
【0032】
図5は、図4の駆動信号によるつつき部24の動きを示す図である。幅方向の変位と長手方向の変位が図4のような場合、駆動信号の周期Tの間に、つつき部24は図5に示すように8の字を描く軌跡で移動する。このように8の字を描くようにするには、第1信号の振幅がゼロ(振幅の中心)であるときに、第2信号の振幅がゼロ(振幅の中心)であること、また、第1信号の振幅の絶対値が最大(最大振幅)のときに、第2信号の振幅がゼロになることが必要である。図5では、つつき部24は、第1信号の振幅(すなわち長手方向の変位量)がほぼ最大となる破線で囲まれた部分で、ローター30と当接して、ローター30を正転方向(図2Aの時計回り方向)に回転させる。このとき図4からわかるように第2信号(幅方向の変位)の傾きは減少している。なお、本実施形態において、つつき部24が8の字を描く際の変位量は1μm程度である。
【0033】
また、図6は、駆動信号と振動部の振動の関係の別の例を示す説明図である。図6においても横軸は時間を示しており、縦軸は電圧を示している。また、実線は駆動信号(アンプ114の出力)、破線は振動体の幅方向(短辺方向)の変位、一点鎖線は長手方向(長辺方向)の変位をそれぞれ示している。
【0034】
図4と比べると、駆動信号の電圧の上昇の傾きの大きさと下降の傾きの大きさが異なる。具体的には、図4では、駆動信号が急な傾きで上昇し、緩やかな傾きで下降しているのに対し、図6では、駆動信号が緩やかな傾きで上昇し、急な傾きで下降している。この場合、長手方向の変位(第1信号)と幅方向の変位(第2信号)の位相関係が図4の場合と180°変化している。
【0035】
図7は、図6の駆動信号によるつつき部24の動きを示す図である。幅方向(短辺方向)の変位と長手方向(長辺方向)の変位が図6のような場合においても、つつき部24は図7に示すように8の字を描く軌跡で移動する。ただし、この場合、8の字を描く軌跡方向が図5の場合とは逆になる。この場合も8の字を描くようにするには、第1信号の振幅がゼロ(振幅の中心)であるときに、第2信号の振幅がゼロ(振幅の中心)であること、また、第1信号の振幅の絶対値が最大(最大振幅)のときに、第2信号の振幅がゼロになることが必要である。図7では、つつき部24は、第1信号の振幅(すなわち長手方向の変位量)がほぼ最大となる破線で囲まれた部分で、ローター30と当接する。このとき図6からわかるように第2信号(幅方向の変位)の傾きは増加している。つまり、図5の場合と幅方向への変位の方向が逆になっている。よって、つつき部24は、ローター30と当接してローター30を逆転方向(図2Aの反時計回り方向)に回転させる。
【0036】
このように、駆動信号の波形を変えるだけでローター30の回転方向を変えることができる。本実施形態では、スイッチ108によって波形メモリー110への入力を加算機104の出力と減算機106の出力とに切り替えることができ、この切り替えによって、駆動信号の波形を図4の場合と図6の場合に変更することができる。これによりローター30の回転の方向を制御することが出来る。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略2対1の矩形形状の圧電素子21、22及び補強板23によって振動体を構成している。また、振動体の補強板23には、ローター30に当接するつつき部24が備えられている。
【0038】
そして、圧電素子21、22に三角波の駆動信号を供給することによって、振動体を周期Tの間に長手方向に1回伸縮させ、且つ、幅方向に2回伸縮させて、つつき部24を8の字を描くように移動させるとともに、その際につつき部24をローター30に当接させてローター30を回転している。
【0039】
このように、本実施形態では、エネルギー効率の悪い屈曲振動を使用しないので、エネルギー効率の改善を図ることが出来る。また、伸縮振動用の電極と屈曲振動用の電極を用意する必要が無く、圧電素子21、22の全面に電極を構成すればよいので、構成を簡易にすることができる。
【0040】
よって本実施形態によると、エネルギー効率の改善及び構成の簡素化を図ることができる。
【0041】
===第2実施形態===
第1実施形態では、駆動信号生成回路10において波形メモリー110を用いて三角波の駆動信号を生成していた。第2実施形態では、波形メモリー110を用いることなく駆動信号を生成する。
なお、第2実施形態において、駆動信号生成回路10以外の構成は第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0042】
図8は、第2実施形態の駆動信号生成回路10の構成を示すブロック図である。なお、図8において、図3と同一構成の部分には同一符号を付し、説明を省略する。
図3と比べると、図8では、波形メモリー110が設けられていない。このため、スイッチ108の切り替えに応じて加算機104又は減算機106の値が直接DAコンバーター112に入力される。また、図8ではフィルター113を有している。
フィルター113は、低域周波数成分を通し、3次以上の高調波成分を通さないフィルター(ローパスフィルター)である。フィルター113は、DAコンバーター112の出力の高調波成分をカットして、アンプ114に出力する。
【0043】
図9は、第2実施形態における駆動信号の生成を示す説明図である。なお、図9の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。また、図9の破線は、DAコンバーター112の出力であり、実線はフィルター113の出力を示している。なお、ここでは、スイッチ108は、加算機104側に接続されていることとする。
【0044】
DAコンバーター104には、加算機104の出力がクロックに応じて入力される。すなわち、出力値が次第に増加していく。加算機104による加算結果が最大値に到達すると、加算機104の加算値が初期化(リセット)される。そして、初期値から再度加算を始める。このようなことを繰り返すことにより、DAコンバーター112の出力は図9に示すような波形になる
この図9の破線の波形(DAコンバーター112の出力)がフィルター113に入力されると、その高調波成分がカットされる。これにより、フィルター113の出力は図9の実線のような波形になる。この波形がアンプ114で増幅されて、第1実施形態(図6)とほぼ同様の駆動信号が得られる。この駆動信号を圧電素子21、22に供給することにより第1実施形態と同様にローター30を逆転方向に回転させることができる。
【0045】
なお、ローター30を正転方向に回転させる場合は、スイッチ108の接続を減算機106側に切り替えればよい。この場合、図4と同様の駆動信号が生成されて、ローター30を正転方向に回転させることができる。
【0046】
===その他の実施形態===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0047】
<駆動対象物について>
前述した実施形態の圧電アクチュエーターでは、駆動の対象物(被駆動体)がローター30であったので、つつき部24によってローター30を回転するようにしていたが、これには限らない。例えば平板形状の被駆動体につつき部24を当接させることによって、該被駆動体を直線的に駆動するようにしてもよい。
【0048】
<振動体について>
前述した実施形態において振動体は、圧電素子21、22及び補強板23で構成されていたが、これには限らない。例えば、補強板23の一方の面に圧電素子を設けて振動体を構成してもよい。あるいは、補強板23を用いずに圧電素子だけで振動体を構成するようにしてもよい。ただし、この場合、撓みが生じやすくなるおそれがある。また、例えば、落下したときや、螺子止めの際に、割れてしまうおそれがある。本実施形態のように補強板23を圧電素子21、22で挟むような構成すると、固定を確実に行うことができるとともに、強度を高めることができ、割れの発生のおそれを軽減できる。
【0049】
また、本実施形態では補強板23にはアルミニウムが用いられていたが、アルミニウム以外の金属を用いて補強板23を形成してもよい。例えば42Niアロイを用いてもよい。
【0050】
また、本実施形態では圧電素子21、22にはチタン酸ジルコン酸鉛が用いられていたが、これには限られない。例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛などを用いてもよい。
【0051】
<振動体の長辺と短辺の比について>
前述した実施形態では、振動体の長辺方向(図2Aのb)の長さと短辺方向(図2Aのa)の長さとの比が2対1であったが、これには限られず、長辺方向の長さが短辺方向の長さの整数倍(2倍以上)であればよい。例えば長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が3対1であってもよい。この場合、駆動信号の1周期の間に、振動体が、長手方向には1回振動するのに対し、幅方向には3回振動することになる。この場合も、各振動によってつつき部24が長手方向及び幅方向に移動する際に、つつき部24をローター30に当接させて、ローター30を回転させることができる。
【0052】
<固定部材について>
前述した実施形態では、固定部材25は、補強板23の矩形の短辺(ローター30側とは反対側の短辺)の中央に設けられていたが、これには限られない。例えば長辺(図2Aにおける下側の長辺)の中央に固定部材25を設けてもよい。ただし、本実施形態のように短辺の中央に固定部材25を設ける方が、短辺方向の振動の変位を稼ぐことができ、ローター30を速く回転させることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 駆動信号生成回路、20 振動部、
21,22 圧電素子、23 補強板、
24 つつき部、25 固定部材、
30 ローター、31 回転軸、
100 クロック発生器、102 周波数設定部、
104 加算機、106 減算機、
108 スイッチ、110波形メモリー、
112 デジタル−アナログ変換器(DAコンバーター)、
114 増幅回路(アンプ)、116 ゲイン設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有し、駆動信号が前記圧電素子に供給されることによって振動する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体と、
前記振動体に設けられた当接部であって、前記振動体の振動に応じて被駆動体に当接する当接部と、
を備え、
前記振動体を第1周波数で前記矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、前記振動体を前記第1周波数とは異なる第2周波数で前記矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を前記駆動信号によって発生し、前記第1振動及び前記第2振動に基づいて、前記当接部を前記被駆動体に当接させて前記被駆動体を駆動することを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記nは2である
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記駆動信号は、周波数が前記第1周波数と等しい三角波である
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の圧電アクチュエーターであって、
前記当接部は、前記振動体の一方の短辺の端部に設けられている
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電アクチュエーターであって、
前記振動体の他方の短辺の中央部に、前記振動体を支持する支持部を有する
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の圧電アクチュエーターであって、
前記矩形の平面形状と対応する形状の金属板を有し、
前記振動体は、前記金属板の両面にそれぞれ前記圧電素子が配置されたものである
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項7】
圧電素子を有する振動体であって、長辺方向の長さと短辺方向の長さとの比が略n対1(nは2以上の整数)の矩形の平面形状の振動体の前記圧電素子に駆動信号を供給することによって、前記振動体を第1周波数で前記矩形の長辺方向へ伸縮させる第1振動、及び、前記振動体を前記第1周波数とは異なる第2周波数で前記矩形の短辺方向へ伸縮させる第2振動、を発生することと、
前記第1振動及び前記第2振動に基づいて、前記振動体に設けられた当接部を被駆動体に当接させて前記被駆動体を駆動することと、
を有することを特徴とする圧電アクチュエーターの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5639(P2013−5639A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136016(P2011−136016)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】