圧電アクチュエーターおよびその製造方法、液体噴射ヘッド、液体噴射装置
【課題】変位量の向上した圧電アクチュエーターおよびその製造方法、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置を得ること。
【解決手段】金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、下電極60と上電極80との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【解決手段】金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、下電極60と上電極80との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーターおよびその製造方法、この圧電アクチュエーターを用いた液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等に代表される結晶を含む圧電体は、自発分極、高誘電率、電気光学効果、圧電効果、焦電効果等を有しているため、圧電体素子等の広範なデバイス開発に応用されている。
圧電アクチュエーターは、圧電体素子が電圧の印加によって変形することを利用している。同じ印加電圧に対して変形による変位量が大きいほど電気機械変換効率がよく、圧電アクチュエーターとしての性能がよい。圧電体素子は、圧電体と電圧を印加するための電極とを備えている。
【0003】
圧電体に電圧を印加するための電極として、Pt、Ir等の金属またはRuO2、IrO2等の酸化物を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−223404号公報(4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極として、Pt、Ir等の金属またはRuO2、IrO2等の酸化物を用いた場合、これらの材料のヤング率が大きいため、圧電体の変形を阻害し、変位量をより大きくすることが難しい。したがって、より電気機械変換効率がよい圧電アクチュエーターを得ることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
基板と、前記基板上に形成された下電極と、前記下電極上に形成された圧電体と、前記圧電体上に形成され、導電性高分子を含む上電極とを備えたことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0008】
この適用例によれば、金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極が含んでいるので、圧電体の変形を阻害する効果が小さい。したがって、下電極と上電極との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0009】
[適用例2]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアニリンまたはポリアセチレンのうち、1つまたは複数を含むことを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、導電性高分子としてより抵抗の低い高分子を用いているので、上電極での抵抗による電力の損失が少なく、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0010】
[適用例3]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記圧電体は、ペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、圧電体が圧電性能の良好なペロブスカイト型酸化物を含んでいるので、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0011】
[適用例4]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記上電極は、金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む第1電極と、前記導電性高分子を含む第2電極とを備え、前記第1電極は前記圧電体上に形成され、前記第2電極は前記第1電極上に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、上電極の構造を、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電体に形成される第1電極として、無機物の圧電体と密着性のよい無機物である金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む電極と、第1電極に形成される第2電極として、金属および金属酸化物よりヤング率の小さい導電性高分子を含む電極とした。したがって、上電極と圧電体との密着性を確保しつつ、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0012】
[適用例5]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記下電極が振動板上に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、振動板によって変形がより阻害された圧電体においても、上電極を金属または金属酸化物の電極から導電性高分子を含む電極にすることで、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0013】
[適用例6]
上記圧電アクチュエーターを、圧力発生室内の液体をノズル開口から噴射させるための圧力を発生させる圧力発生手段として備えたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【0014】
この適用例によれば、前述の効果を有する液体噴射ヘッドが得られる。
【0015】
[適用例7]
上記液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0016】
この適用例によれば、前述の効果を有する液体噴射装置が得られる。
【0017】
[適用例8]
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、前記下電極上に圧電体を形成する圧電体形成工程と、前記圧電体上に導電性高分子を含む上電極を形成する上電極形成工程とを含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【0018】
この適用例によれば、金属電極あるいは酸化物電極と比べてヤング率が小さい導電性高分子を上電極が含んでいるので、圧電体の変形を阻害する効果が小さい。したがって、変位量のより大きい、下電極と上電極との間に印加される電圧に対して、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
【0019】
[適用例9]
上記圧電アクチュエーターの製造方法において、前記上電極形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
この適用例では、圧電体を形成した後に溶液を塗布する溶液プロセスにより成膜が可能であるため、導電性高分子の使用量が少なくて済み、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
また、圧電体を形成した後に溶液を塗布するので、フォト工程およびエッチング工程が省けるため、工程数が削減できるだけでなく、エッチングによる圧電体へのダメージを抑制できる。
【0020】
[適用例10]
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、前記下電極上に圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程と、前記圧電体膜上に導電性高分子を含む上電極膜を形成する上電極膜形成工程と、前記圧電体膜および前記上電極膜をフォトエッチングして、圧電体および上電極を形成するフォトリソ工程とを含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【0021】
この適用例によれば、一度のエッチングで圧電体および上電極が形成されるので、より簡便な圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
【0022】
[適用例11]
上記圧電アクチュエーターの製造方法において、前記上電極膜形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
この適用例では、溶液プロセスにより成膜が可能であるため、コストを抑えた前述の効果を有するアクチュエーターの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態におけるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図。
【図2】インクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図。
【図3】(a)は、インクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの図3(a)におけるB−B部分断面図。
【図5】圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図6】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【図7】変形例1における圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図8】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【図9】変形例2における圧電アクチュエーターを示す部分断面図。
【図10】変形例2における圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図11】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置1000の一例を示す概略図である。インクジェット式記録装置1000は、記録媒体である記録シートSにインクを噴射して記録を行う装置である。
図1において、インクジェット式記録装置1000は、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを備えている。記録ヘッドユニット1Aおよび1Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ2Aおよび2Bが着脱可能に設けられている。
ここで、インクジェット式記録ヘッド1は、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bの記録シートSと対向する側に設けられており、図1においては図示されていない。
【0025】
記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出するものである。
【0026】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動する。
一方、装置本体4にはキャリッジ3に沿ってプラテン8が設けられている。このプラテン8は図示しない紙送りモーターの駆動力により回転できるようになっており、給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0027】
以下、図2、図3および図4を参照して、インクジェット式記録ヘッド1について詳細に説明する。
図2は、インクジェット式記録ヘッド1の概略を示す分解斜視図であり、図3(a)は、インクジェット式記録ヘッド1の部分平面図、図3(b)は、(a)におけるA−A断面図である。図4に、図3(a)におけるB−B部分断面図を示した。
【0028】
図2、図3および図4において、インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とを備えている。
流路形成基板10は、例えば、面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した酸化シリコンからなる、厚さ0.50μm〜2.00μmの弾性膜50が形成されている。
【0029】
シリコン単結晶基板を、弾性膜50が形成された面に対向する面側から異方性エッチングすることにより、この流路形成基板10には、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が複数並設されている。このとき、弾性膜50はエッチングストッパーとして働く。
また、圧力発生室12の並設方向(幅方向)とは直交する方向(長手方向)の一方の端部の外側には、保護基板30の後述するリザーバ部32と連通される連通部13が形成されている。また、この連通部13は、各圧力発生室12の長手方向一端部でそれぞれインク供給路14を介して連通されている。
【0030】
また、流路形成基板10の弾性膜50が形成された面に対向する面側には、圧力発生室12を形成する際のマスク膜51が設けられており、このマスク膜51上には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0031】
一方、このような流路形成基板10とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.40μmの絶縁体膜55が形成され、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.20μmの下電極60と、厚さが例えば、約1.30μmの圧電体70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極80とが積膜形成されて、圧電体素子300を構成している。
【0032】
なお、圧電体素子300とは、下電極60、圧電体70および上電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電体素子300のいずれか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされたいずれか一方の電極および圧電体70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。
【0033】
いずれの場合においても、圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電体素子300と圧電体素子300の駆動により変位が生じる部分を合わせて圧電アクチュエーター310と称する。
【0034】
実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55および下電極60が振動板56として作用し、圧電体素子300の駆動により変位が生じるが、下電極60だけで振動板を構成してもよい。この場合、圧電体素子300が圧電アクチュエーターとなる。
【0035】
振動板56を構成する弾性膜50および絶縁体膜55は、酸化シリコンのほかに、例えば、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の膜、またはこれらの膜の積膜体とすることができる。
振動板56は、圧電体素子300が駆動することによって振動する機能を有する。振動板56は、圧力発生室12が形成された後、圧電体素子300の動作によって変形し、圧力発生室12の体積を変化させる。液体が充填された圧力発生室12の体積が小さくなれば、圧力発生室12内部の圧力が大きくなり、ノズルプレート20のノズル開口21より液体が噴射される。
【0036】
下電極60の材質は、導電性を有する限り特に限定されず、例えばニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物、ランタンとニッケルの複合酸化物などを用いることができる。
下電極60は、上電極80と対になり、圧電体70を挟む一方の電極として機能する。下電極60は、例えば、複数の圧電体素子300の共通電極とすることができる。下電極60は、図示しない外部回路と電気的に接続されている。
【0037】
圧電体70としては、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物を好適に用いることができる。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以下、「PZT」と略す。)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3)(以下、「PZTN(登録商標)」と略すことがある。)、およびチタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)などが挙げられる。
圧電体70は、下電極60および、上電極80によって電界が印加されることで伸縮変形し、これにより変形して機械的な出力を行うことができる。圧電体70の材質としては、PZTおよびPZTN(登録商標)が、圧電性能が特に良好であるためより好ましい。
【0038】
上電極80は、導電性高分子膜からなる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアリニン若しくはポリアセチレンなどを用いることができる。上電極80の一部には、リード電極90が形成されている。
上電極80は、導電性高分子を含んでいればよく、導電性が維持でき、ヤング率が小さく抑えられていれば、他の高分子またはカーボン粒、金属粒等との混合物であってもよい。
【0039】
保護膜75は、圧電体70表面のリード電極90が形成された部分以外を覆っている。保護膜75としては、例えば、シリコン系酸化膜である酸化シリコン、シリコン系窒化膜である窒化シリコン、シリコン系酸窒化膜である酸化窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機化合物を用いることができる。
【0040】
保護膜75は、できるだけ柔らかい材料、ヤング率の小さい材料が好ましい。例えば、パラキシリレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシアクリレート樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種あるいはそれらの変性体、などの有機化合物、または有機/無機ハイブリッド系の材料を用いる。
パラキシリレン系樹脂としては、パリレンC(Poly−Monochloro−Paraxylylene)、パリレンN(Poly−Paraxylylene)などがある。これらの樹脂は、疎水性が高く、ガスをほとんど透過しない。
【0041】
また、有機/無機ハイブリッド材料は、nmレベルで有機成分、無機成分を複合化することにより、有機成分、無機成分のメリットを相乗的に高めることができる。有機/無機ハイブリッド材料としては、シリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などの材料が代表的である。また、これらの材料は感光性を持たせることも可能なため、マスク露光によるパターニングも容易であり、プロセスを短縮し、低コスト化が可能となる。
保護膜75は、上記例示した材料から選ばれる少なくとも1種によって形成されることができる。
【0042】
なお、保護膜75は、必ずしも形成されていなくてもよいが、保護膜75を形成することにより以下の効果がある。
保護膜75は、水分等の不純物のバリア性を有し、外部から水分、水素、および還元性の気体などの不純物が圧電体70へ侵入あるいは拡散して、圧電体70が劣化することを防止する機能を有する。この機能により、圧電体70が不純物から保護され、圧電体70の側面を伝わって流れる漏れ電流を低減するなどの効果がある。
【0043】
以下に、圧電アクチュエーター310の製造方法について詳しく説明する。
図5は、圧電アクチュエーター310の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター310の製造方法は、下電極形成工程であるステップ1(S1)と、圧電体膜形成工程であるステップ2(S2)と、上電極膜形成工程であるステップ3(S3)と、フォトリソ工程としてのステップ4(S4)を、保護膜形成工程としてのステップ5(S5)とを含む。
ここで、保護膜75を形成しない場合は、ステップ5は省略される。以下、変形例においても同様である。
図6は、圧電体70の製造方法を示す部分断面図である。図6(a)は下電極形成工程(S1)を、図6(b)は圧電体膜形成工程(S2)を、図6(c)は上電極膜形成工程(S3)を、図6(d)はフォトリソ工程(S4)を、図6(e)は保護膜形成工程(S5)を図示している。
【0044】
図6(a)において、下電極形成工程(S1)では、弾性膜50および絶縁体膜55上に下電極60を形成する。
最初に、基板としての流路形成基板10となるシリコン単結晶基板に振動板56の一部である弾性膜50および絶縁体膜55を形成する。弾性膜50および絶縁体膜55は、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で形成することができる。
【0045】
下電極60の厚みは、例えば100nm〜300nmとすることができる。また、下電極60は、前述の材料の単層でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
下電極60は、弾性膜50および絶縁体膜55上の全面に、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で導電体の膜を形成した後、フォトリソ法等によりパターニングして形成することができる。また、下電極60は、印刷法などのパターニングが不要な方法によって形成してもよい。
【0046】
図6(b)において、圧電体膜形成工程(S2)では、圧電体膜71を、下電極60に形成する。圧電体膜71の厚みは、500nm〜1500nmとすることができる。
圧電体膜71は、ゾルゲル法やCVD法などによって形成することができる。ゾルゲル法においては、原料溶液塗布、予備加熱、結晶化アニールの一連の作業を複数回繰り返して所定の膜厚にしてもよい。
例えば、PZTを形成する場合は、Pb,Zr,Tiを含むゾルゲル溶液を用いて、スピンコート法、印刷法などにより形成することができる。
【0047】
図6(c)において、上電極膜形成工程(S3)では、上電極膜81を、圧電体膜71の上に形成する。上電極膜81の厚みは、例えば50nm〜500nmとすることができる。
上電極膜81は導電性高分子膜からなり、導電性高分子膜は、スピンコート法、スリットコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディッピング法などにより簡便に成膜が可能である。
例えば、代表的なポリチオフェンであるPEDOT/PSS(poly(3,4−Ethylenedioxythiophene)−Poly−(Styrenesulfonate))を水に分散させたインクを用いて、スピンコート法により成膜する。その後、ホットプレート上で150℃30min加熱することにより、導電性高分子膜からなる上電極膜81が得られる。導電性高分子膜は、金属電極と比べて耐熱性は劣るが、圧電体膜71の結晶化アニールで熱の加わる下電極60と比較して実用上問題ない。
【0048】
図6(d)において、フォトリソ工程(S4)では、圧電体膜71および上電極膜81をパターニングして圧電体70および上電極80を形成し、圧電体素子300を形成する。したがって、フォトリソ工程(S4)に、上電極形成工程が含まれる。
上電極膜81および圧電体膜71のパターニングは、フォトリソ法等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。またこの工程では、フォトリソ法等を複数回行ってもよい。本工程のエッチングは、例えばドライエッチング等の方法により行うことができる。
【0049】
図6(e)において、保護膜形成工程(S5)では、圧電体素子300に、保護膜75を形成する。保護膜75は、少なくとも圧電体70の側面に形成する。
保護膜75の厚みは、材質に依存するが、1nm〜2000nmとすることが好ましい。保護膜75の厚みが1nmよりも小さいと、不純物のバリア性能が十分に得られないことがあり、2000nmよりも大きいと、圧電体素子300の機械的な動作を拘束してしまう場合がある。保護膜75は、不純物のバリア性が高く、ヤング率のできるだけ小さい材質で形成されることが好ましい。
【0050】
また、圧電体素子300には、上電極80に電気的に接続するリード電極90を設ける。例えば、リード電極90は、上電極80と電気的に接続し延出して設けることができ、リード電極90は、回路素子等に接続される。
圧電体素子300が保護膜75を有する場合は、保護膜75にスルーホールを形成し、上電極80とリード電極90とを接続してもよい。
以上のようにして、圧電体素子300および圧電アクチュエーター310が形成される。
【0051】
また、ウェーハー状態で圧電体70、上電極80、リード電極90等の形成を行い、最終的にウェーハー状態から分割することによって、複数のインクジェット式記録ヘッド1、圧電体素子300、圧電アクチュエーター310が得られる。
【0052】
流路形成基板10の圧電体素子300側には、圧電体素子300に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電体素子保持部31を有する保護基板30が接着剤を介して接合されている。圧電体素子300は、この圧電体素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。
なお、圧電体素子保持部31は、空間が密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。
【0053】
また、保護基板30には、リザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、保護基板30の圧電体素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電体素子300から引き出されたリード電極90は、その端部近傍が貫通孔33内で露出されている。
【0054】
さらに、このような保護基板30上には、封止膜41および固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0055】
このようなインクジェット式記録ヘッド1では、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たす。その後、図示しない駆動ICからの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極60と上電極80との間に駆動電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極60および圧電体70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0056】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、下電極60と上電極80との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0057】
(2)導電性高分子としてより抵抗の低い高分子を用いているので、上電極80での抵抗による電力の損失が少なく、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0058】
(3)圧電体70が圧電性能の良好なペロブスカイト型酸化物を含んでいるので、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0059】
(4)振動板56によって変形がより阻害された圧電体70においても、上電極80を金属または金属酸化物の電極から導電性高分子を含む電極にすることで、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0060】
(5)前述の効果を有するインクジェット式記録ヘッド1およびインクジェット式記録装置1000を得ることができる。
【0061】
(6)金属電極あるいは酸化物電極と比べてヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、変位量のより大きい、下電極60と上電極80との間に印加される電圧に対して、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0062】
(7)一度のエッチングで圧電体70および上電極80が形成されるので、より簡便な圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0063】
(8)溶液プロセスにより成膜が可能であるため、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0064】
(変形例1)
図7は、本変形例における圧電アクチュエーター310の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター310の製造方法は、下電極形成工程であるステップ11(S11)と、圧電体膜形成工程であるステップ12(S12)と、圧電体形成工程であるステップ13(S13)と、上電極形成工程としてのステップ14(S14)と、保護膜形成工程としてのステップ15(S15)とを含む。
また、図8は、圧電アクチュエーター310の製造方法を示す部分断面図である。図8(a)は下電極形成工程(S11)を、図8(b)は圧電体膜形成工程(S12)を、図8(c)は圧電体形成工程(S13)を、図8(d)は上電極形成工程(S14)を、図8(e)は保護膜形成工程(S15)を図示している。
【0065】
実施形態との違いは、圧電体膜71とともに上電極膜81のパターニングを行う代わりに、上電極80の形成を圧電体70に直接行う点にある。
図8(a)、(b)および(e)において、下電極形成工程(S11)、圧電体膜形成工程(S12)および保護膜形成工程(S15)は、実施形態と同様に行うことができる。
【0066】
図8(c)において、圧電体形成工程(S13)では、圧電体膜71をパターニングして圧電体70を形成する。圧電体膜71のパターニングは、フォトリソ法等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。
【0067】
図8(d)において、上電極形成工程(S14)では、圧電体70に直接上電極80を形成する。上電極80は導電性高分子膜を加熱することによって得られる。導電性高分子膜は、凸版印刷法、凹版印刷法、転写印刷法、スクリーン印刷法、μCP法、インクジェット法などの印刷法を用いて形成できる。
【0068】
本変形例によれば、実施形態の効果に加えて以下の効果がある。
(9)圧電体70を形成した後に溶液を塗布する溶液プロセスにより成膜が可能であるため、導電性高分子の使用量を少なくでき、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
また、圧電体70を形成した後に溶液を塗布するので、フォト工程およびエッチング工程を省くことができ、工程数を削減できるだけでなく、エッチングによる圧電体70へのダメージを抑制できる。
【0069】
(変形例2)
実施形態では、下電極60を圧電体素子300の共通電極とし、上電極80を圧電体素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
図9に、本変形例における圧電体素子301の上電極82を共通電極とした場合の、図3(a)におけるB−B部分断面図に相当する圧電アクチュエーター320の部分断面図を示した。
図9において、下電極61はパターンニングされた電極であり、上電極82は第1電極83と第2電極84とを備えている。
【0070】
図10は、圧電アクチュエーター320の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター320の製造方法は、下電極形成工程であるステップ21(S21)と、圧電体膜形成工程であるステップ22(S22)と、第1電極膜形成工程であるステップ23(S23)と、フォトリソ工程としてのステップ24(S24)と、第2電極膜形成工程としてのステップ25(S25)と、保護膜形成工程としてのステップ26(S26)を含む。
また、図11は、圧電アクチュエーター320の製造方法を示す部分断面図である。図11(a)は下電極形成工程(S21)を、図11(b)は圧電体膜形成工程(S22)を、図11(c)は第1電極膜形成工程(S23)を、図11(d)はフォトリソ工程(S24)を、図11(e)は第2電極膜形成工程(S25)を、図11(f)は保護膜形成工程(S26)を図示している。
【0071】
図11(a)において、下電極形成工程(S21)では、弾性膜50および絶縁体膜55上に下電極61を形成する。下電極61は、エッチング等により個別電極とする。エッチング等により個別電極とした以外は、材質、膜厚等は実施形態および変形例1と同様である。
【0072】
図11(b)において、圧電体膜形成工程(S22)では、実施形態および変形例1と同様に圧電体膜71を形成する。
図11(c)において、第1電極膜形成工程(S23)では、第1電極膜85を圧電体膜71に形成する。第1電極膜85は、50nm以下が好ましい。50nmを超えると変位低下、コスト上昇の原因となる。
第1電極膜85の材質は、導電性を有する限り特に限定されず、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性金属酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物、ランタンとニッケルの複合酸化物などを用いることができる。
【0073】
図11(d)において、フォトリソ工程(S24)では、実施形態のフォトリソ工程(S4)と同様に、圧電体膜71および第1電極膜85をパターニングして圧電体70および第1電極83を形成する。第1電極83は、図2および図3に示した各圧力発生室12に形成された圧電体70に対応して個別に形成する。
【0074】
図11(e)において、第2電極膜形成工程(S25)では、個別に形成された第1電極83をそれぞれ接続して共通電極の上電極82とするために第2電極84を形成する。
第2電極84は、導電性高分子膜を加熱して形成することができる。導電性高分子膜は、実施形態および変形例1と同様にスピンコート法、スプレーコート法のような溶液プロセスで形成することができ、段差のある基板への成膜追従性に優れるというメリットもあり、高密度化にも優位である。
また、導電性高分子膜は、凸版印刷法、凹版印刷法、転写印刷法、スクリーン印刷法、μCP法、インクジェット法などの印刷法を用いて、直接パターニングを行うこともできる。
図11(f)において、保護膜形成工程(S26)は、実施形態と同様に行うことができる。
【0075】
本変形例によれば、実施形態および変形例1の効果に加えて以下の効果がある。
(10)上電極82の構造を、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電体に形成される第1電極83として、無機物の圧電体70と密着性のよい無機物である金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む電極と、第1電極83に形成される第2電極84として、金属および金属酸化物よりヤング率の小さい導電性高分子を含む電極とした。したがって、上電極82と圧電体70との密着性を確保しつつ、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター320を得ることができる。
【0076】
以下に、実施例に基づいて圧電アクチュエーター310についてより詳しく説明する。実施形態の構造において、各実施例および比較例は、上電極80の構成を変えたものである。その他の構成は、同じ構成とした。
【0077】
(実施例1)
上電極80として、ポリピロールからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0078】
(実施例2)
上電極80として、ポリピロールからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0079】
(実施例3)
上電極80として、ポリアニリンからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0080】
(実施例4)
上電極80として、ポリアニリンからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0081】
(実施例5)
上電極80として、PEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0082】
(実施例6)
上電極80として、PEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0083】
(実施例7)
第1電極83として白金を20nm、第2電極としてPEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を100nm形成し、2層構造の上電極80とした。
【0084】
(比較例)
上電極80として、白金を100nm形成した。
【0085】
得られた圧電アクチュエーター310について、耐電圧(V)と変位量(nm)を測定し、まとめて表に示した。
【0086】
【表1】
実施例および比較例の結果より、導電性高分子膜を上電極80として用いても耐電圧に大きな変化はなく、変位量が大きくなることがわかった。したがって、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られることがわかった。
【0087】
上述した実施形態および変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、実施形態および変形例1において、個別電極である上電極の構造を変形例2のように2層にしてもよいし、変形例2において共通電極である上電極を1層にしてもよい。
また、基板は特に限定されず、例えば、半導体基板、樹脂基板などを用途に応じて任意に用いることができる。
また、変形例2において、第1電極を第2電極と同様に、導電性高分子膜で形成してもよい。
また、振動板は、例えば、ステンレス鋼等の金属の膜が積膜されていてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド1を挙げて説明したが、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用できる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0089】
さらに、圧電体および圧電アクチュエーターは、広範なデバイス開発に応用でき、その用途等は特に限定されない。例えば、マイクロアクチュエーター、フィルター、遅延線、リードセレクター、音叉発振子、音叉時計、トランシーバー、圧電ピックアップ、圧電イヤホン、圧電マイクロフォン、SAWフィルター、RFモジュレーター、共振子、遅延素子、マルチストリップカプラー、圧電加速度計、圧電スピーカー等に応用できる。
【符号の説明】
【0090】
1…液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド、10…基板としての流路形成基板、12…圧力発生室、21…ノズル開口、56…振動板、60,61…下電極、70…圧電体、71…圧電体膜、80,82…上電極、81…導電性高分子膜としての上電極膜、83…第1電極、84…第2電極、90…リード電極、300,301…圧電体素子、310,320…圧力発生手段としての圧電アクチュエーター、1000…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエーターおよびその製造方法、この圧電アクチュエーターを用いた液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等に代表される結晶を含む圧電体は、自発分極、高誘電率、電気光学効果、圧電効果、焦電効果等を有しているため、圧電体素子等の広範なデバイス開発に応用されている。
圧電アクチュエーターは、圧電体素子が電圧の印加によって変形することを利用している。同じ印加電圧に対して変形による変位量が大きいほど電気機械変換効率がよく、圧電アクチュエーターとしての性能がよい。圧電体素子は、圧電体と電圧を印加するための電極とを備えている。
【0003】
圧電体に電圧を印加するための電極として、Pt、Ir等の金属またはRuO2、IrO2等の酸化物を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−223404号公報(4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極として、Pt、Ir等の金属またはRuO2、IrO2等の酸化物を用いた場合、これらの材料のヤング率が大きいため、圧電体の変形を阻害し、変位量をより大きくすることが難しい。したがって、より電気機械変換効率がよい圧電アクチュエーターを得ることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
基板と、前記基板上に形成された下電極と、前記下電極上に形成された圧電体と、前記圧電体上に形成され、導電性高分子を含む上電極とを備えたことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【0008】
この適用例によれば、金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極が含んでいるので、圧電体の変形を阻害する効果が小さい。したがって、下電極と上電極との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0009】
[適用例2]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアニリンまたはポリアセチレンのうち、1つまたは複数を含むことを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、導電性高分子としてより抵抗の低い高分子を用いているので、上電極での抵抗による電力の損失が少なく、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0010】
[適用例3]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記圧電体は、ペロブスカイト型酸化物を含むことを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、圧電体が圧電性能の良好なペロブスカイト型酸化物を含んでいるので、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0011】
[適用例4]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記上電極は、金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む第1電極と、前記導電性高分子を含む第2電極とを備え、前記第1電極は前記圧電体上に形成され、前記第2電極は前記第1電極上に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、上電極の構造を、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電体に形成される第1電極として、無機物の圧電体と密着性のよい無機物である金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む電極と、第1電極に形成される第2電極として、金属および金属酸化物よりヤング率の小さい導電性高分子を含む電極とした。したがって、上電極と圧電体との密着性を確保しつつ、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0012】
[適用例5]
上記圧電アクチュエーターにおいて、前記下電極が振動板上に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエーター。
この適用例では、振動板によって変形がより阻害された圧電体においても、上電極を金属または金属酸化物の電極から導電性高分子を含む電極にすることで、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られる。
【0013】
[適用例6]
上記圧電アクチュエーターを、圧力発生室内の液体をノズル開口から噴射させるための圧力を発生させる圧力発生手段として備えたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【0014】
この適用例によれば、前述の効果を有する液体噴射ヘッドが得られる。
【0015】
[適用例7]
上記液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【0016】
この適用例によれば、前述の効果を有する液体噴射装置が得られる。
【0017】
[適用例8]
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、前記下電極上に圧電体を形成する圧電体形成工程と、前記圧電体上に導電性高分子を含む上電極を形成する上電極形成工程とを含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【0018】
この適用例によれば、金属電極あるいは酸化物電極と比べてヤング率が小さい導電性高分子を上電極が含んでいるので、圧電体の変形を阻害する効果が小さい。したがって、変位量のより大きい、下電極と上電極との間に印加される電圧に対して、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
【0019】
[適用例9]
上記圧電アクチュエーターの製造方法において、前記上電極形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
この適用例では、圧電体を形成した後に溶液を塗布する溶液プロセスにより成膜が可能であるため、導電性高分子の使用量が少なくて済み、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
また、圧電体を形成した後に溶液を塗布するので、フォト工程およびエッチング工程が省けるため、工程数が削減できるだけでなく、エッチングによる圧電体へのダメージを抑制できる。
【0020】
[適用例10]
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、前記下電極上に圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程と、前記圧電体膜上に導電性高分子を含む上電極膜を形成する上電極膜形成工程と、前記圧電体膜および前記上電極膜をフォトエッチングして、圧電体および上電極を形成するフォトリソ工程とを含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【0021】
この適用例によれば、一度のエッチングで圧電体および上電極が形成されるので、より簡便な圧電アクチュエーターの製造方法が得られる。
【0022】
[適用例11]
上記圧電アクチュエーターの製造方法において、前記上電極膜形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含むことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
この適用例では、溶液プロセスにより成膜が可能であるため、コストを抑えた前述の効果を有するアクチュエーターの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態におけるインクジェット式記録装置の一例を示す概略図。
【図2】インクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図。
【図3】(a)は、インクジェット式記録ヘッドの部分平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図。
【図4】インクジェット式記録ヘッドの図3(a)におけるB−B部分断面図。
【図5】圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図6】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【図7】変形例1における圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図8】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【図9】変形例2における圧電アクチュエーターを示す部分断面図。
【図10】変形例2における圧電アクチュエーターの製造方法を示すフローチャート図。
【図11】圧電アクチュエーターの製造方法を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、実施形態における液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置1000の一例を示す概略図である。インクジェット式記録装置1000は、記録媒体である記録シートSにインクを噴射して記録を行う装置である。
図1において、インクジェット式記録装置1000は、液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド1を有する記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを備えている。記録ヘッドユニット1Aおよび1Bには、インク供給手段を構成するカートリッジ2Aおよび2Bが着脱可能に設けられている。
ここで、インクジェット式記録ヘッド1は、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bの記録シートSと対向する側に設けられており、図1においては図示されていない。
【0025】
記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出するものである。
【0026】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動する。
一方、装置本体4にはキャリッジ3に沿ってプラテン8が設けられている。このプラテン8は図示しない紙送りモーターの駆動力により回転できるようになっており、給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0027】
以下、図2、図3および図4を参照して、インクジェット式記録ヘッド1について詳細に説明する。
図2は、インクジェット式記録ヘッド1の概略を示す分解斜視図であり、図3(a)は、インクジェット式記録ヘッド1の部分平面図、図3(b)は、(a)におけるA−A断面図である。図4に、図3(a)におけるB−B部分断面図を示した。
【0028】
図2、図3および図4において、インクジェット式記録ヘッド1は、流路形成基板10とノズルプレート20と保護基板30とを備えている。
流路形成基板10は、例えば、面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した酸化シリコンからなる、厚さ0.50μm〜2.00μmの弾性膜50が形成されている。
【0029】
シリコン単結晶基板を、弾性膜50が形成された面に対向する面側から異方性エッチングすることにより、この流路形成基板10には、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が複数並設されている。このとき、弾性膜50はエッチングストッパーとして働く。
また、圧力発生室12の並設方向(幅方向)とは直交する方向(長手方向)の一方の端部の外側には、保護基板30の後述するリザーバ部32と連通される連通部13が形成されている。また、この連通部13は、各圧力発生室12の長手方向一端部でそれぞれインク供給路14を介して連通されている。
【0030】
また、流路形成基板10の弾性膜50が形成された面に対向する面側には、圧力発生室12を形成する際のマスク膜51が設けられており、このマスク膜51上には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0031】
一方、このような流路形成基板10とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.40μmの絶縁体膜55が形成され、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.20μmの下電極60と、厚さが例えば、約1.30μmの圧電体70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極80とが積膜形成されて、圧電体素子300を構成している。
【0032】
なお、圧電体素子300とは、下電極60、圧電体70および上電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電体素子300のいずれか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされたいずれか一方の電極および圧電体70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。
【0033】
いずれの場合においても、圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電体素子300と圧電体素子300の駆動により変位が生じる部分を合わせて圧電アクチュエーター310と称する。
【0034】
実施形態では、弾性膜50、絶縁体膜55および下電極60が振動板56として作用し、圧電体素子300の駆動により変位が生じるが、下電極60だけで振動板を構成してもよい。この場合、圧電体素子300が圧電アクチュエーターとなる。
【0035】
振動板56を構成する弾性膜50および絶縁体膜55は、酸化シリコンのほかに、例えば、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムから選ばれる少なくとも1種の膜、またはこれらの膜の積膜体とすることができる。
振動板56は、圧電体素子300が駆動することによって振動する機能を有する。振動板56は、圧力発生室12が形成された後、圧電体素子300の動作によって変形し、圧力発生室12の体積を変化させる。液体が充填された圧力発生室12の体積が小さくなれば、圧力発生室12内部の圧力が大きくなり、ノズルプレート20のノズル開口21より液体が噴射される。
【0036】
下電極60の材質は、導電性を有する限り特に限定されず、例えばニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物、ランタンとニッケルの複合酸化物などを用いることができる。
下電極60は、上電極80と対になり、圧電体70を挟む一方の電極として機能する。下電極60は、例えば、複数の圧電体素子300の共通電極とすることができる。下電極60は、図示しない外部回路と電気的に接続されている。
【0037】
圧電体70としては、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物を好適に用いることができる。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以下、「PZT」と略す。)、ニオブ酸チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti,Nb)O3)(以下、「PZTN(登録商標)」と略すことがある。)、およびチタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)などが挙げられる。
圧電体70は、下電極60および、上電極80によって電界が印加されることで伸縮変形し、これにより変形して機械的な出力を行うことができる。圧電体70の材質としては、PZTおよびPZTN(登録商標)が、圧電性能が特に良好であるためより好ましい。
【0038】
上電極80は、導電性高分子膜からなる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアリニン若しくはポリアセチレンなどを用いることができる。上電極80の一部には、リード電極90が形成されている。
上電極80は、導電性高分子を含んでいればよく、導電性が維持でき、ヤング率が小さく抑えられていれば、他の高分子またはカーボン粒、金属粒等との混合物であってもよい。
【0039】
保護膜75は、圧電体70表面のリード電極90が形成された部分以外を覆っている。保護膜75としては、例えば、シリコン系酸化膜である酸化シリコン、シリコン系窒化膜である窒化シリコン、シリコン系酸窒化膜である酸化窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機化合物を用いることができる。
【0040】
保護膜75は、できるだけ柔らかい材料、ヤング率の小さい材料が好ましい。例えば、パラキシリレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシアクリレート樹脂およびシリコーン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種あるいはそれらの変性体、などの有機化合物、または有機/無機ハイブリッド系の材料を用いる。
パラキシリレン系樹脂としては、パリレンC(Poly−Monochloro−Paraxylylene)、パリレンN(Poly−Paraxylylene)などがある。これらの樹脂は、疎水性が高く、ガスをほとんど透過しない。
【0041】
また、有機/無機ハイブリッド材料は、nmレベルで有機成分、無機成分を複合化することにより、有機成分、無機成分のメリットを相乗的に高めることができる。有機/無機ハイブリッド材料としては、シリコーン樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などの材料が代表的である。また、これらの材料は感光性を持たせることも可能なため、マスク露光によるパターニングも容易であり、プロセスを短縮し、低コスト化が可能となる。
保護膜75は、上記例示した材料から選ばれる少なくとも1種によって形成されることができる。
【0042】
なお、保護膜75は、必ずしも形成されていなくてもよいが、保護膜75を形成することにより以下の効果がある。
保護膜75は、水分等の不純物のバリア性を有し、外部から水分、水素、および還元性の気体などの不純物が圧電体70へ侵入あるいは拡散して、圧電体70が劣化することを防止する機能を有する。この機能により、圧電体70が不純物から保護され、圧電体70の側面を伝わって流れる漏れ電流を低減するなどの効果がある。
【0043】
以下に、圧電アクチュエーター310の製造方法について詳しく説明する。
図5は、圧電アクチュエーター310の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター310の製造方法は、下電極形成工程であるステップ1(S1)と、圧電体膜形成工程であるステップ2(S2)と、上電極膜形成工程であるステップ3(S3)と、フォトリソ工程としてのステップ4(S4)を、保護膜形成工程としてのステップ5(S5)とを含む。
ここで、保護膜75を形成しない場合は、ステップ5は省略される。以下、変形例においても同様である。
図6は、圧電体70の製造方法を示す部分断面図である。図6(a)は下電極形成工程(S1)を、図6(b)は圧電体膜形成工程(S2)を、図6(c)は上電極膜形成工程(S3)を、図6(d)はフォトリソ工程(S4)を、図6(e)は保護膜形成工程(S5)を図示している。
【0044】
図6(a)において、下電極形成工程(S1)では、弾性膜50および絶縁体膜55上に下電極60を形成する。
最初に、基板としての流路形成基板10となるシリコン単結晶基板に振動板56の一部である弾性膜50および絶縁体膜55を形成する。弾性膜50および絶縁体膜55は、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で形成することができる。
【0045】
下電極60の厚みは、例えば100nm〜300nmとすることができる。また、下電極60は、前述の材料の単層でもよいし、複数の材料を積層した構造であってもよい。
下電極60は、弾性膜50および絶縁体膜55上の全面に、スパッタ法、真空蒸着、CVD法などの方法で導電体の膜を形成した後、フォトリソ法等によりパターニングして形成することができる。また、下電極60は、印刷法などのパターニングが不要な方法によって形成してもよい。
【0046】
図6(b)において、圧電体膜形成工程(S2)では、圧電体膜71を、下電極60に形成する。圧電体膜71の厚みは、500nm〜1500nmとすることができる。
圧電体膜71は、ゾルゲル法やCVD法などによって形成することができる。ゾルゲル法においては、原料溶液塗布、予備加熱、結晶化アニールの一連の作業を複数回繰り返して所定の膜厚にしてもよい。
例えば、PZTを形成する場合は、Pb,Zr,Tiを含むゾルゲル溶液を用いて、スピンコート法、印刷法などにより形成することができる。
【0047】
図6(c)において、上電極膜形成工程(S3)では、上電極膜81を、圧電体膜71の上に形成する。上電極膜81の厚みは、例えば50nm〜500nmとすることができる。
上電極膜81は導電性高分子膜からなり、導電性高分子膜は、スピンコート法、スリットコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法、ディッピング法などにより簡便に成膜が可能である。
例えば、代表的なポリチオフェンであるPEDOT/PSS(poly(3,4−Ethylenedioxythiophene)−Poly−(Styrenesulfonate))を水に分散させたインクを用いて、スピンコート法により成膜する。その後、ホットプレート上で150℃30min加熱することにより、導電性高分子膜からなる上電極膜81が得られる。導電性高分子膜は、金属電極と比べて耐熱性は劣るが、圧電体膜71の結晶化アニールで熱の加わる下電極60と比較して実用上問題ない。
【0048】
図6(d)において、フォトリソ工程(S4)では、圧電体膜71および上電極膜81をパターニングして圧電体70および上電極80を形成し、圧電体素子300を形成する。したがって、フォトリソ工程(S4)に、上電極形成工程が含まれる。
上電極膜81および圧電体膜71のパターニングは、フォトリソ法等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。またこの工程では、フォトリソ法等を複数回行ってもよい。本工程のエッチングは、例えばドライエッチング等の方法により行うことができる。
【0049】
図6(e)において、保護膜形成工程(S5)では、圧電体素子300に、保護膜75を形成する。保護膜75は、少なくとも圧電体70の側面に形成する。
保護膜75の厚みは、材質に依存するが、1nm〜2000nmとすることが好ましい。保護膜75の厚みが1nmよりも小さいと、不純物のバリア性能が十分に得られないことがあり、2000nmよりも大きいと、圧電体素子300の機械的な動作を拘束してしまう場合がある。保護膜75は、不純物のバリア性が高く、ヤング率のできるだけ小さい材質で形成されることが好ましい。
【0050】
また、圧電体素子300には、上電極80に電気的に接続するリード電極90を設ける。例えば、リード電極90は、上電極80と電気的に接続し延出して設けることができ、リード電極90は、回路素子等に接続される。
圧電体素子300が保護膜75を有する場合は、保護膜75にスルーホールを形成し、上電極80とリード電極90とを接続してもよい。
以上のようにして、圧電体素子300および圧電アクチュエーター310が形成される。
【0051】
また、ウェーハー状態で圧電体70、上電極80、リード電極90等の形成を行い、最終的にウェーハー状態から分割することによって、複数のインクジェット式記録ヘッド1、圧電体素子300、圧電アクチュエーター310が得られる。
【0052】
流路形成基板10の圧電体素子300側には、圧電体素子300に対向する領域にその運動を阻害しない程度の空間を確保可能な圧電体素子保持部31を有する保護基板30が接着剤を介して接合されている。圧電体素子300は、この圧電体素子保持部31内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。
なお、圧電体素子保持部31は、空間が密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。
【0053】
また、保護基板30には、リザーバ部32が設けられている。このリザーバ部32は、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、保護基板30の圧電体素子保持部31とリザーバ部32との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電体素子300から引き出されたリード電極90は、その端部近傍が貫通孔33内で露出されている。
【0054】
さらに、このような保護基板30上には、封止膜41および固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0055】
このようなインクジェット式記録ヘッド1では、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たす。その後、図示しない駆動ICからの駆動信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極60と上電極80との間に駆動電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極60および圧電体70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0056】
以上に述べた実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)金属電極あるいは酸化物電極と比較してヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、下電極60と上電極80との間に印加される同一の電圧に対して変位量のより大きい、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0057】
(2)導電性高分子としてより抵抗の低い高分子を用いているので、上電極80での抵抗による電力の損失が少なく、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0058】
(3)圧電体70が圧電性能の良好なペロブスカイト型酸化物を含んでいるので、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0059】
(4)振動板56によって変形がより阻害された圧電体70においても、上電極80を金属または金属酸化物の電極から導電性高分子を含む電極にすることで、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310を得ることができる。
【0060】
(5)前述の効果を有するインクジェット式記録ヘッド1およびインクジェット式記録装置1000を得ることができる。
【0061】
(6)金属電極あるいは酸化物電極と比べてヤング率が小さい導電性高分子を上電極80が含んでいるので、圧電体70の変形を阻害する効果を小さくできる。したがって、変位量のより大きい、下電極60と上電極80との間に印加される電圧に対して、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0062】
(7)一度のエッチングで圧電体70および上電極80が形成されるので、より簡便な圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0063】
(8)溶液プロセスにより成膜が可能であるため、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
【0064】
(変形例1)
図7は、本変形例における圧電アクチュエーター310の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター310の製造方法は、下電極形成工程であるステップ11(S11)と、圧電体膜形成工程であるステップ12(S12)と、圧電体形成工程であるステップ13(S13)と、上電極形成工程としてのステップ14(S14)と、保護膜形成工程としてのステップ15(S15)とを含む。
また、図8は、圧電アクチュエーター310の製造方法を示す部分断面図である。図8(a)は下電極形成工程(S11)を、図8(b)は圧電体膜形成工程(S12)を、図8(c)は圧電体形成工程(S13)を、図8(d)は上電極形成工程(S14)を、図8(e)は保護膜形成工程(S15)を図示している。
【0065】
実施形態との違いは、圧電体膜71とともに上電極膜81のパターニングを行う代わりに、上電極80の形成を圧電体70に直接行う点にある。
図8(a)、(b)および(e)において、下電極形成工程(S11)、圧電体膜形成工程(S12)および保護膜形成工程(S15)は、実施形態と同様に行うことができる。
【0066】
図8(c)において、圧電体形成工程(S13)では、圧電体膜71をパターニングして圧電体70を形成する。圧電体膜71のパターニングは、フォトリソ法等の方法を用いマスク等を形成して行うことができる。
【0067】
図8(d)において、上電極形成工程(S14)では、圧電体70に直接上電極80を形成する。上電極80は導電性高分子膜を加熱することによって得られる。導電性高分子膜は、凸版印刷法、凹版印刷法、転写印刷法、スクリーン印刷法、μCP法、インクジェット法などの印刷法を用いて形成できる。
【0068】
本変形例によれば、実施形態の効果に加えて以下の効果がある。
(9)圧電体70を形成した後に溶液を塗布する溶液プロセスにより成膜が可能であるため、導電性高分子の使用量を少なくでき、コストを抑えた前述の効果を有する圧電アクチュエーター310の製造方法を得ることができる。
また、圧電体70を形成した後に溶液を塗布するので、フォト工程およびエッチング工程を省くことができ、工程数を削減できるだけでなく、エッチングによる圧電体70へのダメージを抑制できる。
【0069】
(変形例2)
実施形態では、下電極60を圧電体素子300の共通電極とし、上電極80を圧電体素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。
図9に、本変形例における圧電体素子301の上電極82を共通電極とした場合の、図3(a)におけるB−B部分断面図に相当する圧電アクチュエーター320の部分断面図を示した。
図9において、下電極61はパターンニングされた電極であり、上電極82は第1電極83と第2電極84とを備えている。
【0070】
図10は、圧電アクチュエーター320の製造方法を示すフローチャート図である。圧電アクチュエーター320の製造方法は、下電極形成工程であるステップ21(S21)と、圧電体膜形成工程であるステップ22(S22)と、第1電極膜形成工程であるステップ23(S23)と、フォトリソ工程としてのステップ24(S24)と、第2電極膜形成工程としてのステップ25(S25)と、保護膜形成工程としてのステップ26(S26)を含む。
また、図11は、圧電アクチュエーター320の製造方法を示す部分断面図である。図11(a)は下電極形成工程(S21)を、図11(b)は圧電体膜形成工程(S22)を、図11(c)は第1電極膜形成工程(S23)を、図11(d)はフォトリソ工程(S24)を、図11(e)は第2電極膜形成工程(S25)を、図11(f)は保護膜形成工程(S26)を図示している。
【0071】
図11(a)において、下電極形成工程(S21)では、弾性膜50および絶縁体膜55上に下電極61を形成する。下電極61は、エッチング等により個別電極とする。エッチング等により個別電極とした以外は、材質、膜厚等は実施形態および変形例1と同様である。
【0072】
図11(b)において、圧電体膜形成工程(S22)では、実施形態および変形例1と同様に圧電体膜71を形成する。
図11(c)において、第1電極膜形成工程(S23)では、第1電極膜85を圧電体膜71に形成する。第1電極膜85は、50nm以下が好ましい。50nmを超えると変位低下、コスト上昇の原因となる。
第1電極膜85の材質は、導電性を有する限り特に限定されず、例えば、ニッケル、イリジウム、白金などの各種の金属、それらの導電性金属酸化物(例えば酸化イリジウムなど)、ストロンチウムとルテニウムの複合酸化物、ランタンとニッケルの複合酸化物などを用いることができる。
【0073】
図11(d)において、フォトリソ工程(S24)では、実施形態のフォトリソ工程(S4)と同様に、圧電体膜71および第1電極膜85をパターニングして圧電体70および第1電極83を形成する。第1電極83は、図2および図3に示した各圧力発生室12に形成された圧電体70に対応して個別に形成する。
【0074】
図11(e)において、第2電極膜形成工程(S25)では、個別に形成された第1電極83をそれぞれ接続して共通電極の上電極82とするために第2電極84を形成する。
第2電極84は、導電性高分子膜を加熱して形成することができる。導電性高分子膜は、実施形態および変形例1と同様にスピンコート法、スプレーコート法のような溶液プロセスで形成することができ、段差のある基板への成膜追従性に優れるというメリットもあり、高密度化にも優位である。
また、導電性高分子膜は、凸版印刷法、凹版印刷法、転写印刷法、スクリーン印刷法、μCP法、インクジェット法などの印刷法を用いて、直接パターニングを行うこともできる。
図11(f)において、保護膜形成工程(S26)は、実施形態と同様に行うことができる。
【0075】
本変形例によれば、実施形態および変形例1の効果に加えて以下の効果がある。
(10)上電極82の構造を、ペロブスカイト型酸化物を含む圧電体に形成される第1電極83として、無機物の圧電体70と密着性のよい無機物である金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む電極と、第1電極83に形成される第2電極84として、金属および金属酸化物よりヤング率の小さい導電性高分子を含む電極とした。したがって、上電極82と圧電体70との密着性を確保しつつ、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーター320を得ることができる。
【0076】
以下に、実施例に基づいて圧電アクチュエーター310についてより詳しく説明する。実施形態の構造において、各実施例および比較例は、上電極80の構成を変えたものである。その他の構成は、同じ構成とした。
【0077】
(実施例1)
上電極80として、ポリピロールからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0078】
(実施例2)
上電極80として、ポリピロールからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0079】
(実施例3)
上電極80として、ポリアニリンからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0080】
(実施例4)
上電極80として、ポリアニリンからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0081】
(実施例5)
上電極80として、PEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を100nm形成した。
【0082】
(実施例6)
上電極80として、PEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を500nm形成した。
【0083】
(実施例7)
第1電極83として白金を20nm、第2電極としてPEDOT/PSSからなる導電性高分子膜を100nm形成し、2層構造の上電極80とした。
【0084】
(比較例)
上電極80として、白金を100nm形成した。
【0085】
得られた圧電アクチュエーター310について、耐電圧(V)と変位量(nm)を測定し、まとめて表に示した。
【0086】
【表1】
実施例および比較例の結果より、導電性高分子膜を上電極80として用いても耐電圧に大きな変化はなく、変位量が大きくなることがわかった。したがって、より電気機械変換効率のよい圧電アクチュエーターが得られることがわかった。
【0087】
上述した実施形態および変形例以外にも、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、実施形態および変形例1において、個別電極である上電極の構造を変形例2のように2層にしてもよいし、変形例2において共通電極である上電極を1層にしてもよい。
また、基板は特に限定されず、例えば、半導体基板、樹脂基板などを用途に応じて任意に用いることができる。
また、変形例2において、第1電極を第2電極と同様に、導電性高分子膜で形成してもよい。
また、振動板は、例えば、ステンレス鋼等の金属の膜が積膜されていてもよい。
【0088】
また、上述した実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッド1を挙げて説明したが、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用できる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0089】
さらに、圧電体および圧電アクチュエーターは、広範なデバイス開発に応用でき、その用途等は特に限定されない。例えば、マイクロアクチュエーター、フィルター、遅延線、リードセレクター、音叉発振子、音叉時計、トランシーバー、圧電ピックアップ、圧電イヤホン、圧電マイクロフォン、SAWフィルター、RFモジュレーター、共振子、遅延素子、マルチストリップカプラー、圧電加速度計、圧電スピーカー等に応用できる。
【符号の説明】
【0090】
1…液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録ヘッド、10…基板としての流路形成基板、12…圧力発生室、21…ノズル開口、56…振動板、60,61…下電極、70…圧電体、71…圧電体膜、80,82…上電極、81…導電性高分子膜としての上電極膜、83…第1電極、84…第2電極、90…リード電極、300,301…圧電体素子、310,320…圧力発生手段としての圧電アクチュエーター、1000…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下電極と、
前記下電極上に形成された圧電体と、
前記圧電体上に形成され、導電性高分子を含む上電極とを備えた
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアニリンまたはポリアセチレンのうち、1つまたは複数を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記圧電体は、ペロブスカイト型酸化物を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記上電極は、金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む第1電極と、前記導電性高分子を含む第2電極とを備え、
前記第1電極は前記圧電体上に形成され、前記第2電極は前記第1電極上に形成されている
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記下電極が振動板上に形成されている
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターを、圧力発生室内の液体をノズル開口から噴射させるための圧力を発生させる圧力発生手段として備えた
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、
前記下電極上に圧電体を形成する圧電体形成工程と、
前記圧電体上に導電性高分子を含む上電極を形成する上電極形成工程とを含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電アクチュエーターの製造方法において、
前記上電極形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項10】
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、
前記下電極上に圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程と、
前記圧電体膜上に導電性高分子を含む上電極膜を形成する上電極膜形成工程と、
前記圧電体膜および前記上電極膜をフォトエッチングして、圧電体および上電極を形成するフォトリソ工程とを含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の圧電アクチュエーターの製造方法において、
前記上電極膜形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された下電極と、
前記下電極上に形成された圧電体と、
前記圧電体上に形成され、導電性高分子を含む上電極とを備えた
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記導電性高分子は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリメチルチオフェン、ポリフラン、ポリピペラジン、ポリアニリンまたはポリアセチレンのうち、1つまたは複数を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記圧電体は、ペロブスカイト型酸化物を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記上電極は、金属または金属酸化物のうち少なくとも1つを含む第1電極と、前記導電性高分子を含む第2電極とを備え、
前記第1電極は前記圧電体上に形成され、前記第2電極は前記第1電極上に形成されている
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターにおいて、
前記下電極が振動板上に形成されている
ことを特徴とする圧電アクチュエーター。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の圧電アクチュエーターを、圧力発生室内の液体をノズル開口から噴射させるための圧力を発生させる圧力発生手段として備えた
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載の液体噴射ヘッドを備えた
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、
前記下電極上に圧電体を形成する圧電体形成工程と、
前記圧電体上に導電性高分子を含む上電極を形成する上電極形成工程とを含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電アクチュエーターの製造方法において、
前記上電極形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項10】
基板上に下電極を形成する下電極形成工程と、
前記下電極上に圧電体膜を形成する圧電体膜形成工程と、
前記圧電体膜上に導電性高分子を含む上電極膜を形成する上電極膜形成工程と、
前記圧電体膜および前記上電極膜をフォトエッチングして、圧電体および上電極を形成するフォトリソ工程とを含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の圧電アクチュエーターの製造方法において、
前記上電極膜形成工程は、前記導電性高分子を含む溶液を塗布、乾燥および加熱して導電性高分子膜を形成する工程を含む
ことを特徴とする圧電アクチュエーターの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−23682(P2011−23682A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169801(P2009−169801)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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