説明

圧電振動子、その製造方法及び圧電振動子を有する線形アクチュエータ

【課題】小型で製造が容易で、かつ大量生産が可能な圧電振動子を提供する。
【解決手段】圧電素子の積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を有する圧電体と、各々の圧電素子間の圧電素子面に形成され、圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が圧電素子の外側まで延長される複数個の電極端子及び電極端子が形成された圧電素子と隣り合う圧電素子の面に形成された複数個の電極端子と対応するように形成された複数個のジャンプ端子を有する内部電極パターンと、圧電体の側面に形成され、複数個の震動部のうち相互対角線方向に位置した震動部に同時に電源を印加するよう、各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する複数個の側面電極を有する外部電極パターンと、圧電体の一側に形成されて震動部で発生した震動を外部に伝達する動力伝達部材とを含む圧電振動子が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子に関し、より詳しくは長手方向と屈曲方向の震動の合成によって楕円運動を発生する圧電振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁気モータに代わり、新たなモータとして圧電振動子を利用する超音波モータが注目を浴びている。このような圧電振動子を利用する超音波モータは従来の電磁気モータに比して分解能が高いこと、騷音が少ないこと、ノイズ発生が少ないことなど、様々な長所を有している。
【0003】
図1は従来技術による圧電振動子10の構造を示す概路図である。図1に示すように、上記圧電振動子10は4つの震動部11、12、13、14に分割され、対角線方向に位置した2つの震動部(11、14と12、13)に同一な位相の交番電圧を印加するためにワイヤから成る外部電極21、22を具備している。
【0004】
また、圧電振動子10の側面には駆動力を外部に伝達するための突起30が備えられている。
【0005】
このような従来技術による圧電振動子10の外部電極21、22は、ワイヤを装着するための空間が必要となり小型化が難しく、製造が難しいだけでなく大量生産が困難であるという問題点がある。
【0006】
したがって、構造が簡単でありながらも小型化が可能で、かつ製造が容易な圧電振動子が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消するためのものであって、大きさが小さく、製造が容易であり、かつ大量生産が可能な圧電振動子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は対角線方向に位置した震動部を簡単かつ容易に連結可能な構造を有する圧電振動子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明はこのような圧電振動子を利用して線形運動が可能な線形アクチュエータ(linear actuator)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するための一側面として本発明は、多数の圧電素子が交互に繰り返し積層して形成され、上記圧電素子の積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を具備する圧電体と、上記各々の圧電素子間の圧電素子面に形成され、上記圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が上記圧電素子の外側まで延長される複数個の電極端子及び上記電極端子が形成された圧電素子と隣り合う圧電素子の面に形成された複数個の電極端子と対応するように形成された複数個のジャンプ端子を具備する内部電極パターンと、上記圧電体の側面に形成され、上記複数個の震動部のうち相互対角線方向に位置した震動部に同時に電源を印加するように、各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する複数個の側面電極を具備する外部電極パターンと、上記圧電体の一側に形成され上記震動部から発生した震動を外部に伝達する動力伝達部材と、を含む圧電振動子を提供する。
【0011】
好ましくは、上記圧電体は第1圧電素子と第2圧電素子が交互に繰り返し積層して形成され、上記内部電極パターンは上記第1圧電素子面に形成された第1パターンと、上記第1パターンが形成された第1圧電素子と隣り合う第2圧電素子の面に形成された第2パターンとを含むことができる。
【0012】
この際、上記第1パターンは上記第1圧電素子面を左右方向に複数個に分割され、その一端が上記第1圧電素子の外側まで延長される複数個の第1電極端子と、上記第1圧電素子の外側と隣接する複数個の第1ジャンプ端子を含み、上記第2パターンは上記第2圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が上記第1ジャンプ端子と対応するように上記第2圧電素子の外側まで延長される第2電極端子及び上記第1電極端子と対応するように上記第2圧電素子の外側と隣接する複数個の第2ジャンプ端子を含むことができる。
【0013】
好ましくは、上記圧電体の各々の震動部は同一な枚数の圧電素子が積層して形成され得る。
【0014】
さらに好ましくは、上記圧電体は上下方向の震動部を分離する中間層を具備することができる。
【0015】
一方、上記圧電体の上部に形成された震動部に位置する内部電極パターンと、下部に形成された震動部に位置する内部電極パターンとは、圧電素子が積層される面に対して相互対称の形状を有することが好ましい。
【0016】
好ましくは、上記圧電体は4つの震動部を具備し、上記4つの震動部のうち対角線方向に位置する2つの震動部に同一な位相の交番電圧を印加して長手方向及び屈曲方向の震動を同時に発生させる。
【0017】
他の側面として本発明は、a)複数個の圧電素子が形成される圧電シート面に電極端子とジャンプ端子とを有する内部電極パターンを複数個形成する段階と、b)上記内部電極パターンが形成された圧電シートを積層し、上記圧電シートの積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を具備する複数個の圧電体を同時に形成する段階と、c)上記圧電シートを切断して複数個の圧電体を各々分離する段階と、d)上記圧電体の側面に複数個の側面電極を形成する段階と、e)上記圧電体の一側に動力伝達部材を装着する段階と、を含む圧電振動子の製造方法を提供する。
【0018】
好ましくは、上記a)内部電極パターンを形成する段階は、a1)第1圧電シート面に形成される各々の第1圧電素子に対して上記第1圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が上記第1圧電素子の外側まで延長される複数個の第1電極端子と、上記第1圧電素子の外側と隣接する複数個の第1ジャンプ端子を含む第1パターンを第1圧電シート面に形成する段階と、a2)第2圧電シート面に形成される各々の第2圧電素子に対して上記第2圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が上記第1ジャンプ端子と対応するように上記第2圧電素子の外側まで延長される複数個の第2電極端子と、上記第1電極端子と対応するように上記第2圧電素子の外側と隣接する複数個の第2ジャンプ端子を含む第2パターンを第2圧電シート面に形成する段階とを含み、上記b)段階は、上記第1圧電シートと第2圧電シートを交互に繰り返し積層することで行われることができる。
【0019】
好ましくは、上記b)段階は同一な枚数の圧電シートを積層して各々の震動部を形成するように行われ得る。
【0020】
さらに好ましくは、上記b)段階は上下方向の震動部を分離するように中間層に該当するシートを積層する段階を含むことができる。
【0021】
好ましくは、上記d)段階は上記複数個の震動部のうち相互対角線方向に位置した振動部に同時に電源を印加するよう、各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する。
【0022】
好ましくは、上記a)段階は上記圧電体の上部に形成された震動部に位置する内部電極パターンと、下部に形成された震動部に位置する内部電極パターンとが圧電素子が積層される面に対して相互対称の形状を有するように内部電極パターンを形成することができる。
【0023】
さらに他の側面として本発明は、上記圧電振動子と、上記圧電振動子の動力伝達部材と接触して直線移送される直線移送部材とを含む線形アクチュエータ(linear actuator)を提供する。
【0024】
好ましくは、上記アクチュエータは上記圧電振動子を上記直線移送部材側に加圧する予圧部材をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、電極端子とジャンプ端子を具備する内部電極パターンによって積層型の圧電振動子を容易に製造することができるばかりでなく、外部電極との連結が非常に容易であるという効果を得ることができる。
【0026】
また、本発明は圧電素子が積層して形成された圧電体の側面に電極を形成することで、小型化及び低電圧駆動が可能である。
【0027】
特に、本発明はジャンプ端子を具備することで、内部電極パターンの連結と同時に対角線方向に位置した震動部を連結することが可能となり製造工程が単純化され、側面電極の数が少なく、かつ材料費の節減及び製造の容易性を確保できる。
【0028】
さらに、本発明は圧電シートを利用して一度に多数個の圧電体を生産し、上記圧電体に外部電極パターンのみを形成することで圧電振動子の製造が終了することから、製造が容易であり、かつ大量生産が可能であるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例について添付された図面に従ってより詳しく説明する。
【0030】
図2は本発明による圧電振動子の斜視図であり、図3は本発明による圧電振動子の主要部分の分解斜視図であり、図4は本発明による圧電振動子の周波数に対するアドミタンス(admittance)を示すグラフである。
【0031】
また、図5aは本発明による圧電振動子の合成震動方向を示すもので、図5bは本発明による圧電振動子の長手方向震動を示すもので、図5cは本発明による圧電振動子の屈曲方向震動を示すものであり、図6aは本発明による圧電振動子の他の合成震動方向を示すもので、図6bは本発明による圧電振動子の他の長手方向震動を示すもので、図6cは本発明による圧電振動子の他の屈曲方向震動を示すものである。
【0032】
図2に示すように、本発明による圧電振動子100は複数個の震動部110、120、130、140を具備する圧電体170と、内部電極パターン200と、外部電極パターン300と、動力伝達部材190とを含む。
【0033】
図2及び図3に示すように、上記圧電体170は多数の圧電素子101、102が交互に繰り返し積層して形成される第1積層部150と、多数の圧電素子103、104が交互に繰り返し積層して形成される第2積層部160とを具備する。
【0034】
上記第1積層部150は、上記第2積層部160の上に位置し、左右に分離した2つの震動部110、120を具備する。また、上記第2積層部160は左右に分離した2つの震動部130、140を具備する。
【0035】
即ち、上記圧電体170は圧電素子の積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を具備する。
【0036】
本明細書では、上下及び左右に2つずつ分離して合計4つの震動部110、120、130、140を有する圧電体170について示して説明するが、これに限定されるものではない。例えば左右方向に4つ、上下方向に2つに分離した8つの震動部を有することもできる。
【0037】
図3に示すように、第1積層部150は第1圧電素子101と第2圧電素子102が交互に繰り返し積層して形成され、第2積層部160は第1圧電素子103と第2圧電素子104が交互に繰り返し積層して形成される。
【0038】
また、図3に示すように、上記内部電極パターン200は積層された各々の圧電素子101、102、103、104との間の圧電素子面に形成される。
【0039】
この際、上記内部電極パターン200は第1積層部150及び第2積層部160の第1圧電素子101、103の面に形成された第1パターン210、230と、上記第1パターン210、230が形成された第1圧電素子101、103と隣り合う第2圧電素子102、104の面に形成された第2パターン220、240とを含むことができる。
【0040】
この際、上記第1パターン210、230及び第2パターン220、240は、各々の圧電素子101、102、103、104の面に対して、2つの電極端子と2つのジャンプ端子とを具備する。
【0041】
例えば、第1積層部150の第1圧電素子101の上面に形成される第1パターン210は、左右方向に2つに分割され、その一端が第1圧電素子101の外側まで延長される2つの第1電極端子211、212と、第1圧電素子101と隣り合う第2圧電素子102の面に形成された第2電極端子223、224と対応するように形成された2つの第1ジャンプ端子213、214とを具備する。
【0042】
また、第1積層部150の第2圧電素子102の上面に形成される第2パターン220は左右方向に2つに分割され、その一端が第2圧電素子102の外側まで延長される2つの第2電極端子223、224と、第2圧電素子102と隣合う第1圧電素子101の面に形成された第1電極端子211、212と対応するように形成された2つの第2ジャンプ端子221、222とを具備する。
【0043】
さらに、第2積層部160の第1圧電素子103の上面に形成される第1パターン230は左右方向に2つに分割され、その一端が第1圧電素子103の外側まで延長される2つの第1電極端子231、232と、第1圧電素子103と隣合う第2圧電素子104の面に形成された第2電極端子243、244と対応するように形成された2つの第1ジャンプ端子233、234とを具備する。
【0044】
また、第2積層部160の第2圧電素子104の上面に形成される第2パターン240は、左右方向に2つに分割され、その一端が第2圧電素子104の外側まで延長される2つの第2電極端子243、244と、第2圧電素子104と隣合う第1圧電素子103の面に形成された第1電極端子231、232と対応するように形成された2つの第2ジャンプ端子241、242とを具備する。
【0045】
一方、上記圧電体170の上部に形成された第1積層部150の震動部110、120に位置する第1パターン210及び第2パターン220と、下部に形成された第2積層部160の震動部130、140に位置する第1パターン230及び第2パターン240とは、圧電素子101、102、103、104が積層される面に対して相互対称の形状を有するようにすることができる。
【0046】
即ち、第2積層部160の第1圧電素子103の上面に形成される第1パターン230は、第1積層部150の第1圧電素子101の上面に形成される第1パターン210と積層面(xy平面)に対して対称の形状であり、第2積層部160の第2圧電素子104の上面に形成される第2パターン240は第1積層部150の第2圧電素子102の上面に形成される第2パターン220と積層面(xy平面)に対して対称の形状である。
【0047】
また、第1積層部150の第2圧電素子102の上面に形成される第2パターン220は、第1積層部150の第1圧電素子101の上面に形成される第1パターン210をz軸を基準にして180度回転した形状であり、第2積層部160の第2圧電素子104の上面に形成される第2パターン240は、第2積層部160の第1圧電素子103の上面に形成される第1パターン230をz軸を基準にして180度回転した形状である。従って、このような圧電素子101、102、103、104とを回転させ適切に配置することにより圧電素子101、102、103、104に予め形成されるパターン形態の個数を減らすことができるという利点がある。
【0048】
図2及び図3に示すように、上記外部電極パターン300は圧電体170の側面にメッキなどによって形成される。
【0049】
上記外部電極パターン300は、上記4つの震動部110、120、130、140うち相互対角線方向に位置した震動部(110と140、120と130)に同時に交番電圧を印加するように、各々の震動部110、120、130、140及びその対角線方向に位置した震動部140、130、120、110とに対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する4つの側面電極310、320、330、340を具備する。
【0050】
例えば、第1側面電極310は第1積層部150の震動部110に位置する第1電極端子211と第2ジャンプ端子221とを交互に連結し、第2積層部160の第1電極端子231を介して振動部110の対角線方向に位置した震動部140に同時に交番電圧を印加するようになる。また、第1側面電極310は第2積層部160の第1電極端子231と第2ジャンプ端子241とを交互に連結する。
【0051】
また、第2側面電極320は第1積層部150の震動部110に位置する第2電極端子224と第1ジャンプ端子214とを交互に連結し、第2積層部160の第1ジャンプ端子234を介して振動部110の対角線方向に位置した震動部140に同時に交番電圧を印加するようになる。また、第2側面電極320は第2積層部160の第2電極端子244と第1ジャンプ端子234とを交互に連結する。
【0052】
そして、第3の側面電極330は第1積層部150の震動部120に位置する第1電極端子212と、第2ジャンプ端子222とを交互に連結し、第2積層部160の第1電極端子232を介して振動部120の対角線に方向に位置した震動部130に同時に交番電圧を印加するようになる。また、第3の側面電極330は第2積層部160の第1電極端子233と第2ジャンプ端子243を交互に連結する。
【0053】
また、第4の側面電極340は第1積層部150の震動部120に位置する第2電極端子223と第1ジャンプ端子213とを交互に連結し、第2積層部160の第1ジャンプ端子233を介して振動部120の対角線方向に位置した震動部130に同時に交番電圧を印加するようになる。また、第2側面電極320は第2積層部160の第2電極端子243と第1ジャンプ端子233を交互に連結する。
【0054】
即ち、上記第1側面電極310と第2側面電極320のうち一側に交番電圧を印加して他側を接地させることで、対角線方向に位置する2つの震動部110、140を同時に駆動可能となる。
【0055】
また、上記第3の側面電極330と第4側面電極340のうち一側に交番電圧を印加して他側を接地させることで、対角線方向に位置する2つの震動部120、130を同時に駆動可能となる。
【0056】
さらに、図2に示すように、第2側面電極320及び第4側面電極340は接地され、第1側面電極310及び第3側面電極330、または第1電極端子211、212は外部電源と直接連結され得る。
【0057】
好ましくは、上記圧電体170の各々の震動部110、120、130、140は同一な枚数の圧電素子101、102、103、104とを積層して形成することによって、各々の震動部110、120、130、140で同じ力(またはトーク)を有する駆動力を出力するようにすることができる。
【0058】
また、上記圧電体170は図2及び図3に示すように、上下方向の震動部を分離する中間層106を具備することができる。上記中間層106は活性層であり、他の圧電素子101、102、103、104のような厚さを有し得る。
【0059】
上記中間層106は、圧電体170の駆動時に内部電極パターン200を分離する機能を行い、その面には第1積層部150の第1または第2パターン210、220が形成され得る。
【0060】
好ましくは、上記圧電体170は第1圧電素子101、103と第2圧電素子102、104の分極方向が互いに逆になるように第1圧電素子101、103と第2圧電素子102、104を交互に繰り返し積層して形成することができる。これは積層された圧電素子101、102、103、104の内部電極パターン200に交番電圧を印加して同一な変形を発生するようにするためである。
【0061】
一方、上記動力伝達部材190は上記圧電体170の一側に形成され上記振動部110、120、130、140で発生した震動を外部に伝達する。
【0062】
図4乃至図6を参照して、本発明による圧電振動子100の作用について説明する。
【0063】
図4は、図2及び図3の圧電振動子100に第1側面電極310に交番電圧を印加して(Ch1)第2側面電極320を接地させた場合と、第3の側面電極330に交番電圧を印加して(Ch2)第4側面電極340を接地させる場合に対して、周波数とアドミタンス(admittance)の関係を示している。図4において、長手方向の振動モードは222kHz付近でピーク(peak)を有し、屈曲方向の振動モードは224kHz付近でピーク(peak)を有する(この際、アドミタンス値は第1チャンネル(Ch1)に交番電圧を印加する場合第2チャンネル(Ch2)は開放された状態にし、第2チャンネル(Ch2)に交番電圧を印加する場合第1チャンネル(Ch1)は開放された状態にして測定した)。
【0064】
したがって、第1チャンネル(Ch1)または第2チャンネル(Ch2)に略223kHzの共振周波数を印加する場合には長手方向と屈曲方向の震動を同時に発生させるようになる。
【0065】
つまり、第1チャンネル(Ch1)に交番電圧を印加して第2チャンネル(Ch2)を開放させた場合には、図6b及び図6cに示すように震動部110、140から発生した変形によって圧電震動子100の長手方向及び屈曲方向の変形が同時に発生するようになり、図6aに示された方向に楕円運動をするようになる。
【0066】
また、第2チャンネル(Ch2)に交番電圧を印加して第1チャンネル(Ch1)を開放させた場合には、図5b及び図5cに示すように震動部120、130から発生した変形によって圧電震動素子100の長手方向及び屈曲方向の変形が同時に発生するようになり、図5aに示された方向に楕円運動をするようになる。
【0067】
これとは異なって、第1チャンネル(Ch1)と第2チャンネル(Ch2)に位相を異にする交番電圧を同時に印加することによって、4つの震動部が全て震動するようにすることもできる。この際、第1チャンネル(Ch1)と第2チャンネル(Ch2)の位相差は90度または−90度ですることができる。
【0068】
次に図7を参照して圧電振動子の製造方法について説明する。本発明による圧電振動子は次の段階によって製造される。
【0069】
a)圧電シートに内部電極パターンを形成する段階
先ず、図3及び図7aに示すように、複数個の圧電素子が形成される圧電シート410の面に図3に示された電極端子とジャンプ端子から成る内部電極パターン401を複数個形成する。
【0070】
この際、上記a) 段階は、a1) 第1パターン210、230を第1圧電素子101、103が形成される第1圧電シート面に形成する段階と、a2) 第2パターン220、240を第2圧電素子102、104が形成される第2圧電シート面に形成する段階とを含むことができる。
【0071】
図2に示すように、上記a1) 段階に通して、第1圧電シート面に形成される各々の第1積層部150の第1圧電素子101に対して上記第1圧電素子101面を左右方向に2つに分割し、その一端が上記第1圧電素子101の外側まで延長される2つの第1電極端子211、212と、上記第1圧電素子101の外側と隣接する2つの第1ジャンプ端子213、214とを含む第1パターン210を第1圧電シート面に複数個形成する。これは第2積層部160の第1圧電素子103に対しても同様である。
【0072】
また、上記a2) 段階に通して、第2圧電シート面に形成される各々の第1積層部160の第2圧電素子102に対して上記第2圧電素子102面を左右方向に2つに分割し、その一端が上記第1ジャンプ端子213、214と対応するように上記第2圧電素子102の外側まで延長される2つの第2電極端子223、224及び上記第1電極端子211、212と対応するように上記第2圧電素子102の外側と隣接する2つの第2ジャンプ端子221、222とを含む第2パターン220を第2圧電シート面に複数個形成する。これは第2積層部160の第2圧電素子104に対しても同じである。
【0073】
この際、上記圧電体170の上部に形成された第1積層部150の震動部110、120に位置する第1パターン210及び第2パターン220と下部に形成された第2積層部160の震動部130、140に位置する第1パターン230及び第2パターン240は、圧電素子101、102、103、104が積層される面に対して相互対称の形状を有するようにすることができる。
【0074】
即ち、第2積層部160の第1圧電素子103の上面に形成される第1パターン230は、第1積層部150の第1圧電素子101の上面に形成される第1パターン210と積層面(xy平面)に対して対称の形状であり、第2積層部160の第2圧電素子104の上面に形成される第2パターン240は、第1積層部150の第2圧電素子102の上面に形成される第2パターン220と積層面(xy平面)に対して対称の形状である。
【0075】
また、第1積層部150の第2圧電素子102の上面に形成される第2パターン220は、第1積層部150の第1圧電素子101の上面に形成される第1パターン210をz軸を基準にして180度回転した形状であり、第2積層部160の第2圧電素子104の上面に形成される第2パターン240は、第2積層部160の第1圧電素子103の上面に形成される第1パターン230をz軸を基準にして180度回転した形状である。従って、このような圧電素子101、102、103、104を回転させ適切に配置することによって、圧電素子101、102、103、104とに予め形成されるパターン形態の個数を減らすことができるという利点がある。
【0076】
b)圧電シートを積層する段階
上記のように、第1パターン210、220と、第2パターン230、240とが形成された圧電シートを用意してこれを積層する。
【0077】
図2に示すように、第1積層部150を形成するためには第1パターン210と、第2パターン220が形成された圧電シートを交互に繰り返し積層し、第2積層部160を形成するためには、第1パターン230と第2パターン240とが形成された圧電シートを交互に繰り返し積層する。
【0078】
これによって、上記圧電シートの積層方向に対して上下及び左右に分離された4つの震動部を具備する複数個の圧電体を同時に形成することが可能となる。
【0079】
この際、圧電体170を形成する各々の震動部110、120、130、140が同一な力(またはトーク)を有する駆動力を出力するように上記震動部110、120、130、140は互いに同一な枚数の圧電シートを積層して形成されることが好ましい。
【0080】
また、図7bに示すように、積層された圧電シートアセンブリー400には、図2及び図3に示すように、上下方向の震動部110、120、130、140とを分離する中間層106を具備するシートを積層することができる。この際、上記中間層106は圧電体170の駆動時に内部電極パターン200を分離する機能を行い、その面には第1積層部150の第1または第2パターン210、220が形成され得る。
【0081】
好ましくは、上記圧電シートアセンブリー400は、分極方向が互いに逆になる第1圧電素子101、103に該当する圧電シートと第2圧電素子102、104に該当する圧電シートが交互に繰り返し積層して形成されるようにする。これは内部電極パターン200に印加される交番電圧によって震動部を成す各々の圧電素子に長手方向及び屈曲方向の震動を均一に発生するようにするためである。
【0082】
c)上記圧電シートを切断して複数個の圧電体を各々分離する段階
図7cに示すように、圧電シートアセンブリー400を切断線(L、C)を基準に切断して複数個の圧電体420が得られる。
【0083】
図7dは、このような過程後に得られる圧電体420を示している。
【0084】
d)上記圧電体の側面に複数個の側面電極を形成する段階
図7eに示すように、圧電体420の側面に4つの側面電極310、320、330、340とを形成する。
【0085】
図2乃至図3に示すように、このような側面電極310、320、330、340とは、4つの震動部110、120、130、140のうち相互対角線方向に位置した震動部に同時に電源を印加するように各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する。
【0086】
e)上記圧電体の一側に動力伝達部材を装着する段階
図7fに示すように、圧電体420で発生した駆動力を外部に伝達するための突起形状の動力伝達部材190を圧電体420の一側に装着する。
【0087】
このような動力伝達部材190は図7fに示すように、圧電体420の右側に形成され得るが、振動部の震動特性によって圧電体420のいずれかの面に形成され得る。さらに、上記動力伝達部材190は図7fに示すように一つが設置され得るが、これに限定されるものではなく、複数個を設けることもできる。
【0088】
一方、圧電シートアセンブリー400から圧電体420が分離された後の工程において、図7gに示すように、側面電極310、320、330、340、または外部に露出された電極パターン210、220、230、240に外部電源を連結する。
【0089】
最後に、図8乃至図10を参照して本発明による線形アクチュエーターについて説明する。
【0090】
図8は本発明による線形アクチュエーターの分解斜視図であり、図9は本発明による線形アクチュエーターの斜視図であり、図10は本発明による線形アクチュエーターの作用を示す断面図である。
【0091】
図8乃至図10に示すように、本発明による線形アクチュエーター500は前述したような構成を有する圧電振動子100と、上記圧電振動子100の動力伝達部材190と接触して直線移送される直線移送部材540と、上記圧電振動子100が装着されるフレーム510と、上記圧電振動子100を上記直線移送部材540の側に押し付ける予圧部材520と、上記予圧部材520を固定するための固定部材530とを含む。
【0092】
上記圧電振動子100は、フレーム510の上の安着部512と支持部材530の段差532の間に装着され、動力伝達部材190が形成された一側は直線移送部材540と接触し、他側は板スプリングなどから成る予圧部材520の加圧部522によって直線移送部材540の側に予圧される。
【0093】
上記直線移送部材540は一例としてフレーム510の結合孔511の間に回転可能となるように装着される2つのローラ550によってガイドされ、圧電振動子100の駆動によって上下方向に直線移送できるが、これに限定されるものではなく、リードスクリューなど公知の直線移送のための方式が採用され得る。一方、直線移送部材540が固定される場合にはフレーム510が直線移送できる。
【0094】
また、上記予圧部材520は結合開口521と支持部材530の組立ホール531を貫通するスクリュー560などによって支持部材530に固定され得るが、その他にもボンディング、溶接、嵌め合い、フックなど公知の固定方法を使用することもできる。
【0095】
本発明は、特定の実施例に関して図示して説明したが、当業界において通常の知識を有する者であれば、以下の特許請求範囲に記載された本発明の思想及び領域を外れない範囲内において本発明を多様に修正及び変更させることが可能であることを明らかにして置く。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】従来技術による圧電振動子の構造を示す概路図である。
【図2】本発明による圧電振動子の斜視図である。
【図3】本発明による圧電振動子の主要部分の分解斜視図である。
【図4】本発明による圧電振動子の周波数に対するアドミタンス(admittance)を示すグラフである。
【図5a】本発明による圧電振動子の合成震動方向を示す図である。
【図5b】本発明による圧電振動子の長手方向震動を示す図である。
【図5c】本発明による圧電振動子の屈曲方向震動を示す図である。
【図6a】本発明による圧電振動子の他の合成震動方向を示す図である。
【図6b】本発明による圧電振動子の他の長手方向震動を示す図である。
【図6c】本発明による圧電振動子の他の屈曲方向震動を示す図である。
【図7a】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7b】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7c】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7d】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7e】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7f】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図7g】本発明による圧電振動子の製造方法を順次に示す工程図である。
【図8】本発明による線形アクチュエータの分解斜視図である。
【図9】本発明による線形アクチュエータの斜視図である。
【図10】本発明による線形アクチュエータの作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
100 圧電振動子
101、103 第1圧電素子
102、104 第2圧電素子
106 中間層
110、120、130、140 震動部
150 第1積層部
160 第2積層部
170 圧電体
200 内部電極パターン
210、230 第1パターン
220、240 第2パターン
300 外部電極パターン
310、320、330、340 側面電極
400 圧電シートアセンブリー
401 内部電極パターン
410 圧電シート
420 圧電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の圧電素子が交互に繰り返し積層して形成され、前記圧電素子の積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を具備する圧電体と、
前記各々の圧電素子間の圧電素子面に形成され、前記圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が前記圧電素子の外側まで延長される複数個の電極端子及び前記電極端子が形成された圧電素子と隣り合う圧電素子の面に形成された複数個の電極端子と対応するように形成された複数個のジャンプ端子を具備する内部電極パターンと、
前記圧電体の側面に形成され、前記複数個の震動部のうち互いに対角線方向に位置した震動部に同時に電源を印加するよう、各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結する複数個の側面電極を具備する外部電極パターンと、
前記圧電体の一側に形成されて前記震動部で発生した震動を外部に伝達する動力伝達部材と、を含む圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電体は第1圧電素子と第2圧電素子が交互に繰り返し積層して形成され、
前記内部電極パターンは、前記第1圧電素子面に形成された第1パターンと、前記第1パターンが形成された第1圧電素子と隣り合う第2圧電素子の面に形成された第2パターンと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記第1パターンは前記第1圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が前記第1圧電素子の外側まで延長される複数個の第1電極端子と、前記第1圧電素子の外側と隣接する複数個の第1ジャンプ端子とを含み、
前記第2パターンは前記第2圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が前記第1ジャンプ端子と対応するように前記第2圧電素子の外側まで延長される第2電極端子及び前記第1電極端子と対応するように前記第2圧電素子の外側と隣接する複数個の第2ジャンプ端子を含むことを特徴とする請求項2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記圧電体の各々の震動部は、同一な枚数の圧電素子が積層して形成されることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記圧電体は、上下方向の震動部を分離する中間層を具備することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電体の上部に形成された震動部に位置する内部電極パターンと、下部に形成された震動部に位置する内部電極パターンとは、圧電素子が積層される面に対して相互対称の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項7】
前記圧電体は4つの震動部を具備し、前記4つの震動部のうち対角線方向に位置する2つの震動部に同一な位相の交番電圧を印加して長手方向及び屈曲方向の震動を同時に発生させることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の圧電振動子。
【請求項8】
a)複数個の圧電素子が形成される圧電シート面に電極端子とジャンプ端子とを有する内部電極パターンを複数個形成する段階と、
b)前記内部電極パターンが形成された圧電シートを積層し、前記圧電シートの積層方向に対して上下及び左右に分離した複数個の震動部を具備する複数個の圧電体を同時に形成する段階と、
c)前記圧電シートを切断して複数個の圧電体を各々分離する段階と、
d)前記圧電体の側面に複数個の側面電極を形成する段階と、
e)前記圧電体の一側に動力伝達部材を装着する段階と、
を含む圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
前記a)内部電極パターンを形成する段階は、
a1)第1圧電シート面に形成される各々の第1圧電素子に対して前記第1圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が前記第1圧電素子の外側まで延長される複数個の第1電極端子と、前記第1圧電素子の外側と隣接する複数個の第1ジャンプ端子を含む第1パターンを第1圧電シート面に形成する段階と、
a2)第2圧電シート面に形成される各々の第2圧電素子に対して前記第2圧電素子面を左右方向に複数個に分割し、その一端が前記第1ジャンプ端子と対応するように前記第2圧電素子の外側まで延長される複数個の第2電極端子と、前記第1電極端子と対応するように前記第2圧電素子の外側と隣接する複数個の第2ジャンプ端子を含む第2パターンを第2圧電シート面に形成する段階とを含み、
前記b)段階は、前記第1圧電シートと第2圧電シートを交互に繰り返し積層することで行われることを特徴とする請求項8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
前記b)段階は、同一な枚数の圧電シートを積層して各々の震動部を形成するように行われることを特徴とする請求項8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項11】
前記b)段階は、上下方向の震動部を分離するように中間層に該当するシートを積層する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項12】
前記d)段階は、前記複数個の震動部のうち相互対角線方向に位置した振動部に同時に電源を印加するよう、各々の震動部及びその対角線方向に位置した震動部に対応する各々の電極端子とこれに対応するジャンプ端子を連結することを特徴とする請求項8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項13】
前記a)段階は、前記圧電体の上部に形成された震動部に位置する内部電極パターンと下部に形成された震動部に位置する内部電極パターンが、圧電素子が積層される面に対して相互対称の形状を有するように内部電極パターンを形成することを特徴とする請求項9に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の圧電振動子と、
前記圧電振動子の動力伝達部材と接触して直線移送される直線移送部材と、を含む線形アクチュエータ。
【請求項15】
前記圧電振動子を前記直線移送部材側に加圧する予圧部材をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の線形アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図7e】
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【図7f】
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【図7g】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252626(P2010−252626A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137629(P2010−137629)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2006−239823(P2006−239823)の分割
【原出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】