説明

圧電素子による光学素子とその作成方法

【課題】酸化亜鉛(ZnO)により、片持ち梁構造圧電素子を作成し、作成した片持ち梁構造圧電素子により、光の分波器を構成する
【解決手段】 Ge層120を犠牲層として、過酸化水素水をエッチング液として用いて片持ち梁構造とする(a,b)。n型ZnO層(低抵抗層)140−ZnO層(圧電導膜)150−n型ZnO層(低抵抗層)160を圧電素子として形成する(c,d)。形成した圧電素子部分を印加電圧により変形し、犠牲層が除去された部分の多重反射による干渉により波長選択性を持たせて、反射光を出力とする光分波器を作製する(e)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片持ち梁構造酸化亜鉛圧電素子による光学素子とその作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デバイスとして、MEMS(Micro Electro Mechanical System)またはMST(Microsystem technology)を利用したものが、多くの研究者から注目されている。MEMSやMSTといった非常に小さな電気機械システムを構成するにあたり、それを機械的に動かすための駆動素子が必要となる。
さて、この駆動素子の構成として片持ち梁構造の圧電素子とすることが提案されている。これに用いる圧電材料はPZTが主に用いられているが、この材料は鉛を含むことから環境汚染の原因となっていた。この材料に代わる圧電材料として酸化亜鉛が提案されている。この駆動素子を安価かつ安全な材料である酸化亜鉛(ZnO)を用いて作成することは利点が多い。
最近、海外の研究機関からZnO圧電素子の応用に関する研究報告がなされている[非特許文献1,2参照]。このように、駆動にピエゾ効果を利用し、Si基板上に成長したZnO薄膜によるフリースタンディング(片持ち梁)構造を有するものは知られている。
しかしながら、国内で成功した事例はない。酸化亜鉛はデバイス作成に用いるエッチング剤で全て溶融してしまうことから、デバイス作成に必須な技術である選択エッチングが難しかった。
【非特許文献1】B.Rogers, L.Manning, T.Sulchek, D.J.Adams, Ultramicroscopy 100(2004)267.
【非特許文献2】Don L. DeVoe, Albert P. Pisano, Modeling and Optimal Design of Piezoelectric Cantilever Microactuators, J. of Microelectoromechanical Systems Vol.6, No.3 1997 p266-270
【特許文献1】再公表特許公報WO02/017368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、酸化亜鉛(ZnO)により、片持ち梁構造圧電素子を作成し、作成した片持ち梁構造圧電素子により、光の分波器及び光スイッチを構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は、シリコン(Si)基板上に、ゲルマニウム(Ge)層を形成し、該Ge層上に酸化シリコン(SiO)膜を形成し、該SiO膜上に酸化亜鉛(ZnO)の圧電素子層を形成した後、過酸化水素水により前記Ge層をエッチングして、前記Ge層を一部残して、片持ち梁構造とし、前記圧電素子層に電極を形成して、光学素子を形成することを特徴とする片持ち梁構造酸化亜鉛圧電素子による光学素子形成方法である。
【0005】
上述の光学素子形成方法で形成される光学素子も本発明であり、該光学素子は、ZnOの前記圧電素子層が前記電極に印加された電圧により駆動され、Ge層が除去された部分で、入射光に対する干渉を受けた後に反射して出る反射光を出力としてもよい。
Si基板の一部に形成したpn接合による光検出素子で、分波器で反射しない光を検出する構成としてもよい。
該光学素子は、ZnOの前記圧電素子層が前記電極に印加された電圧により駆動されて、入射光に対する光路が変化することにより、出力光の伝導路が切り替わる光スイッチとしてもよい。このとき、前記伝導路の一部が前記基板上に形成されていることが望ましい。
【0006】
また、上述の光学素子形成方法において、前記基板を可視光領域で透明な基板とし、前記基板上に半透明金属膜を形成後、ゲルマニウム(Ge)層を形成する。その後、前記半透明金属膜と同様の半透明金属膜を形成し、該半透明金属膜上に前記酸化シリコン(SiO)膜を形成して、光学素子を形成する。この光学素子は、圧電素子層に対する入射光が、Ge層が除去された部分での干渉を受けた後に、基板を透過して出る透過光を出力とする分波器とすることもできる。
【発明の効果】
【0007】
上述のような構造のZnOによる片持ち梁構造の圧電素子は、透明性が高いZnOの特性を生かして構成されており、周波数多重された光から特定の周波数を取り出す分波器や光の伝導路を切りかえる光スイッチとして、応答速度も高く、1本のファイバに波長の異なる複数の光信号を多重することにより、伝送容量を拡大することができる高密度波長分割多重(DWDM)による光通信に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、上述のように、酸化亜鉛(ZnO)はデバイス作成に用いるエッチング剤で全て溶融してしまうので、ゲルマニウム(Ge)を犠牲層として用い、このGeの犠牲層を過酸化水素水のエッチング剤でエッチングして、片持ち梁構造の圧電素子を作製している。
また、Geの犠牲層とZnO層との間にSiO等の酸化膜を挿入して、エッチングする際にZnO層を保護することも本発明の圧電素子作成の特徴である。
このような構造のZnOによる片持ち梁構造の圧電素子は、透明性が高いZnOの特性を生かして、周波数多重された光から特定の周波数を取り出す分波器や光の伝導路を切りかえる光スイッチとして用いることができる。これらの分波器や光スイッチは応答速度も高く、1本のファイバに波長の異なる複数の光信号を多重することにより、伝送容量を拡大することができる高密度波長分割多重(DWDM)による光通信に最適である。
以下に、本発明の実施形態を、図面を用いて詳しく説明する。
【0009】
<ZnOの薄膜堆積過程>
図1は、エッチングを行う対象であるGe層の犠牲層を有するZnOの薄膜堆積過程を説明するための模式図である。
(1)シリコン(Si)基板110をスパッタリング工程の前に洗浄する(図1(a)参照)。ここでは、ふっ酸で洗浄後、アセトン、エタノールの順で洗浄後、純水で洗浄後乾燥した。
【0010】
(2)犠牲層であるGe薄膜120を、Si基板110上にRFスパッタリング装置を用いて堆積する(図1(b)参照)。
Geを堆積する条件例;
RF電力:50−200W,基板温度:常温,堆積圧力:1−50Pa,
Arガスの流量:5−30sccm,膜厚:0.1−0.6μm
【0011】
(3)SiO薄膜130を、Ge薄膜120上にRFスパッタリング装置を用いて堆積する(図1(c)参照)。
SiO薄膜の堆積条件例;
RF電力:50−200W,基板温度:常温、堆積圧力:1−50Pa
Arガスの流量:5−30sccm,膜厚:0.1−0.5μm
【0012】
(4)Gaを不純物として10%添加したZnOターゲットを用い、n型ZnO薄膜140を、RFスパッタリング装置を用いて堆積する(図1(d)参照)。なお、以下の圧電素子を形成する酸化亜鉛(ZnO)の層の形成については、例えば再公表特許公報WO02/017368号等を参照されたい。
n型ZnOの堆積条件例;
RF電力:50−200W,基板温度:常温、堆積圧力:1−50Pa
Arガス:流量5−30sccm,膜厚:0.05−0.1μm,
抵抗率:1x10−2Ω・cm以下
【0013】
(5)不純物無しのZnOターゲットを用いて、基板に対してc軸に配向したZnO薄膜150を、RFスパッタリング装置を用いて堆積する(図1(e)参照)。
ZnOの堆積条件例;
RF電力:50−200W,基板温度:常温,堆積圧力:1−50Pa
Arガス:流量5−30sccm,膜厚:0.2−1.0μm
抵抗率:1x10Ω・cm以上
【0014】
(6)Gaを不純物として10%添加したZnOターゲットを用いて、n型ZnO薄膜160を、RFスパッタリング装置を用いて堆積する(図1(f)参照)。
n型ZnOの堆積条件例;
RF電力:50−200W,基板温度:常温,堆積圧力:1−50Pa
Arガス:流量5−30sccm,膜厚:0.05−0.1μm
抵抗率:1x10−2Ω・cm以下
【0015】
上述の(1)〜(6)の過程を経ると、基板上にゲルマニウム(Ge)膜を形成し、その上に酸化膜を介してZnOの薄膜を堆積した多層膜ができる。これを加工して、片持ち梁構造圧電素子を作成することができる。以下に、図面図2〜図4を用いて、透明性が高いZnOの特性を生かした、片持ち梁構造圧電素子による分波器,光スイッチの作製過程を説明する。
【0016】
<光分波器の作製>
上述の過程で作製したZnOの薄膜を堆積した多層膜を加工して、Ge層120を犠牲層として、過酸化水素水をエッチング液として用いて片持ち梁構造とする。n型ZnO層(低抵抗層)140−ZnO層(圧電導膜)150−n型ZnO層(低抵抗層)160を圧電素子として形成する。形成した圧電素子部分を印加電圧により変形し、ファブリペロー干渉計と同じ原理に基づいて、犠牲層が除去された部分の多重反射による干渉により波長選択性を持たせて、光分波器200,210を作製する。この過程を図2の模式図により説明する。
【0017】
(1)上述で説明した薄膜作成工程終了後の基板を準備する。(図2(a)参照)
(2)犠牲層であるGe薄膜120をエッチングにより、所定部分除去して、片持ち梁構造を形成する(図2(b)参照)。
ここで用いたエッチング法は、60−70℃に加熱した過酸化水素水30%溶液に基板を垂直に立てエッチング部分の高さまで浸して、Ge薄膜の一部を除去した。
【0018】
(3)圧電素子を形成するために、レジスト170を塗布後、フォトリソグラフィ工程によりレジスト170を除去する(図2(c)参照)。
(4)ドライエッチング法により、エッチング時間を制御して下部n型ZnO薄膜140の直前でエッチングを停止させる(図2(d)参照)。
【0019】
(5)Al電極181,182を形成し、n型ZnO層(低抵抗層)140−ZnO層(圧電導膜)151−n型ZnO層(低抵抗層)161の部分で圧電素子を構成する(図2(e)参照)。
図2(e)に示したように、Al電極181,182に電界を印加することにより、ZnO薄膜の圧電素子部分は、片持ち部分を軸として変形する。変形量により、ファブリペロー干渉計と同じ原理で波長選択性を持つことから、反射光を光センサに導光すれば、波長選択した検出が可能となり、反射光を利用する分波器200が構成される。
【0020】
<反射型分波器の条件>
上述の図2(e)に示した反射型分波器として使用するための条件について、以下に詳細に説明する。
界面における全反射の条件について、図3を用いて説明する。図3(a)は、屈折率n,nの物質間の界面を示している。図3(b)は空気(屈折率1)と屈折率nの物質との界面を示している。全反射の臨界角φは、図3(a)に関しては、sinφ=n/nであり、図3(b)に関してsinφ=1/nである。したがって、全反射の条件は、入射角θ>臨界角φであり、図3(a)に関してはnsinθ>nであり、図3(b)に関しては、nsinθ>1である。
【0021】
図2(e)に示した層構成における全反射条件が発生する部分は、上述で説明したように、入射光が高屈折率から低屈折率に至る界面であることから、n型ZnO層140とSiO層130の界面、SiO層130と空気層との界面となる。なお、構成している物質の屈折率は表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
n型ZnOとSiOの界面での全反射条件は、全反射の臨界角φとすると、sinφ=0.74なので、φ=47.5°となる。光はこの部分で反射してはいけないので、入射角θはおおよそ48°以上である必要がある。次に、SiO層と空気層の界面での全反射条件は、全反射の臨界角φとすると、sinφ=0.71なので、この場合、全反射条件はφ=45.23°となる。SiO層を透過してきた光は、この部分で全反射せず、また、少なくとも20−60%程度透過するように入射角を選択する必要がある。
なお、SiO層の代わりにSi層に変えればn型ZnOとSiの間で屈折率の違いがほとんど無いことから、この部分での反射は極めて小さくなる。
入射光のSi基板表面における反射に関して、光源として1000nm以下の波長の光を用いれば、SiO層を透過してきた光の多くは金属光沢を有するSi基板表面で効率的に反射する。反射効率をさらに上げるため、あるいはさらに長波長の光源を用いる場合には、Si表面をAl等の反射率の極めて高い金属でコーティングしておけば90%以上の高い反射率が期待できる。
【0024】
ファブリーペロー干渉計と同様の干渉を利用するには、SiO層と空気層の界面での反射光とSi基板表面からの反射光との干渉を利用すればよい。
干渉については、図4を用いて説明する。図4(a)は透過光による干渉であり、図4(b)は反射光による干渉である。図4に示されるdは、図2(e)におけるGe犠牲層121の膜厚に対応している。そのため、図2(e)の反射型分波器の、反射光同士の干渉が加算されて明るくなるのは、屈折率が空気の場合1とすると
2d=(2m+1)×λ/2
となる。m=0,1,2,3−−−−であるため、0次の干渉を考えると、m=0となることから、犠牲層のGeが除去された部分の厚さdは、d=λ/4となる。また、1次の干渉を考えるとm=1なので、d=λ×3/4となる。入射光の波長を0.5μmとすれば、m=0でd=0.125μm、m=1で0.375μmとなる。入射光の波長を変えるに従い、犠牲層の膜厚dは干渉の式に従い変化させて対応する。
以上の結果から、犠牲層の膜厚dは入射光の波長を干渉の式に代入すれば求められる。
また、Si基板表面に光センサを内蔵しておけば、Si基板表面に到達した光の光量を確認することにより、定量的な反射光量の制御が可能となる。この構成を図5で説明する。
【0025】
<光センサ内蔵型分波器の作製>
図5の模式図は、光センサも組み込んだ分波器の作製法及び構成を示している。
(1)図1,図2では、シリコン(Si)基板で作製した薄膜堆積をしたものを使用したが、ここでは、図5(a)に示すような、n型Si基板内部の所定の場所にp型Si領域112を形成した基板111を使用している。
(2)その基板111上に、図1と同様の過程で薄膜作製工程を終了したものが図5(b)に示されている。ここで、図1と同じものは同じ参照番号を付与している。
【0026】
(3)犠牲層であるGe薄膜120をエッチングにより、所定部分除去して、片持ち梁構造を形成する(図5(c)参照)。
ここでは、60−70℃に加熱した過酸化水素水30%溶液に、基板を垂直に立てエッチング部分の高さまで浸して、Ge薄膜120の一部を除去する。
(3)レジスト171を塗布後、フォトリソグラフィ工程により必要ではないレジスト171を除去する(図5(d)参照)。
(4)ドライエッチング法により、エッチング時間を制御して所定の構造を作成する(図5(e)参照)。
【0027】
(5)図5(f)に示すように、Al電極181,182,183,184を形成し、n型ZnO層(低抵抗層)140−ZnO層(圧電導膜)152−n型ZnO層(低抵抗層)162による圧電素子部、p型Si112−n型Si基板111によるpn受光素子部を構成する。図5(f)において、Al電極181,182に電界を印加することにより、圧電素子部が片持ち部分を軸として変形する。変形量により波長選択性を持つ。反射しない光をSi基板111上に形成したpn受光素子部で検出することができる。
【0028】
<透過型分波器>
干渉による分波器は、図4での干渉の説明から分かるように、透過光を利用して構成することもできる。これを図6で説明する。図6は透過型分波器の作製法である。また、図1,図2と同じ構成のものは、同じ参照番号とする。
(1)図6(a)に示すように、図1で説明した薄膜作成工程において、基板を可視光領域で透明度が高いサファイア基板115に変更し、その上に、半透明金属膜132を形成する。半透明金属膜132の上にゲルマニウム(Ge)層120を形成した後、半透明金属膜134を形成し、該半透明金属膜134上に前記酸化シリコン(SiO)層130を形成した基板を準備する。なお、サファイア基板115は可視光領域で透明度が高いガラス基板(屈折率1.4)でもよい。
半透明金属膜132,134の作成は、例えばスパッタリング法等により作成することができる。
(2)犠牲層であるGe薄膜120をエッチングにより、所定部分除去して、片持ち梁構造を形成する(図6(b)参照)。
ここで用いたエッチング法は、60−70℃に加熱した過酸化水素水30%溶液に基板を垂直に立てエッチング部分の高さまで浸して、Ge薄膜の一部を除去した。
【0029】
(3)圧電素子を形成するために、レジスト170を塗布後、フォトリソグラフィ工程によりレジスト170を除去する(図6(c)参照)。
(4)ドライエッチング法により、エッチング時間を制御して下部n型ZnO薄膜140の直前でエッチングを停止させる(図6(d)参照)。
(5)Al電極181,182を形成し、n型ZnO層(低抵抗層)140−ZnO層(圧電導膜)162−n型ZnO層(低抵抗層)172の部分で圧電素子を構成する(図6(e)参照)。
【0030】
透過型分波器の場合は、半透明金属膜132,134、及びサファイア基板115を透過した透過光と、半透明金属膜132で反射して、半透明金属膜134の表面で反射した後、サファイア基板115を透過する透過光とが干渉すればよい。
干渉条件は膜厚に対応しており、薄膜による干渉の図4(b)に示すように、透過光同士の干渉が加算されて明るくなるのは、屈折率が空気の場合1とすると2d=mλとなる。m=0,1,2,3−−−−であるため1次の干渉を考えるとm=1となる。Si層の厚さがGe層の厚さに比べ十分に小さいと仮定すると、犠牲層のGeが除去された部分の厚さdはd=λ/2となる。また2次の干渉を考えるとm=2なのでd=λとなる。入射光の波長を0.5μmとすれば、m=1でd=0.25μm、m=1で0.5μmとなる。分波する波長を変えるに従い、犠牲層の膜厚dを入力電圧により、干渉の式に従って変化させる。
【0031】
<光スイッチの作製>
透明性が高いZnOの特性を生かした、片持ち梁構造圧電素子による光スイッチの作製過程を、図7の模式図を用いて説明する。
(1)図7(a)により、図1で説明した薄膜堆積工程終了後の基板110の一部を、エッチング工程により露出し、Si基板面を出す。
【0032】
(2)エッチングにより、犠牲層であるGe薄膜126の一部を除去して、片持ち梁構造を形成する。ここでは、60−70℃に加熱した過酸化水素水30%溶液に基板を垂直に立てて、エッチング部分の高さまで浸し、Ge薄膜126の一部を除去する(図7(b)参照)。
【0033】
(3)ZnO層による圧電素子を作製するために、レジスト175を塗布後、フォトリソグラフィ工程によりレジスト175の一部を除去する(図7(c)参照)。
(4)ドライエッチング法により、エッチング時間を制御して下部n型ZnO薄膜145の直前でエッチングを停止させる(図7(d)参照)
【0034】
(5)Al電極181,182を形成する(図7(e)参照)。Al電極181,182に電圧を印加することにより、圧電素子を形成するZnO薄膜156が、片持ち部分を軸として変形する。この変形により、光路を切り替えることができる光スイッチとして働く。
【0035】
(6)SiO194とSi192の堆積工程を繰り返し、光スイッチ回路数に対応して光導入路512を形成し、その後エッチングにより所望の形状とする(図7(f)参照)。図7(f)に示した光スイッチは、3回路の構成例となる。ZnO薄膜側から光を薄膜に平行に入射させ、圧電素子に電圧を印加させて変形させることにより、3回路の光導波路に導入する光軸を決定する。
【0036】
上述のように、本発明では、ゲルマニウム(Ge)を犠牲層として用い、このGeの犠牲層を過酸化水素水のエッチング剤でエッチングして、片持ち梁構造の圧電素子を作製している。このような構造のZnOによる片持ち梁構造の圧電素子を用いて、透明性が高いZnOの特性を生かして、光の分波器や光スイッチを構成した。この構成の分波器や光スイッチは応答速度も高く、1本のファイバに波長の異なる複数の光信号を多重することにより、伝送容量を拡大することができる高密度波長分割多重(DWDM)による光通信に最適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】圧電素子のための薄膜堆積の作製工程を説明する模式図である。
【図2】反射型の分波器の作製工程とその構造を説明する模式図である。
【図3】全反射を説明するための図である。
【図4】光の反射・透過による干渉を説明するための図である。
【図5】光検出器内蔵分波器の作製工程とその構造を説明する模式図である。
【図6】透過型の分波器の作製工程とその構造を説明する模式図である。
【図7】光スイッチの作製工程とその構造を説明する模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)基板上に、ゲルマニウム(Ge)層を形成し、
該Ge層上に酸化シリコン(SiO)膜を形成し、
該SiO膜上に酸化亜鉛(ZnO)の圧電素子層を形成した後、
過酸化水素水により前記Ge層をエッチングして、前記Ge層を一部残して、片持ち梁構造とし、
前記圧電素子層に電極を形成して、光学素子を形成することを特徴とする片持ち梁構造酸化亜鉛圧電素子による光学素子形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子形成方法で形成される光学素子であって、
該光学素子は、ZnOの前記圧電素子層が前記電極に印加された電圧により駆動され、Ge層が除去された部分で、入射光に対する干渉を受けた後に反射して出る反射光を出力とする分波器であることを特徴とする光学素子。
【請求項3】
請求項2の光学素子は、Si基板の一部に形成したpn接合による光検出素子で、分波器で反射しない光を検出することを特徴とする光学素子。
【請求項4】
請求項1記載の光学素子形成方法で形成される光学素子であって、
該光学素子は、ZnOの前記圧電素子層が前記電極に印加された電圧により駆動されて、入射光に対する光路が変化することにより、出力光の伝導路が切り替わる光スイッチであることを特徴とする光学素子。
【請求項5】
請求項4記載の光学素子において、前記伝導路の一部が前記基板上に形成されていることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
請求項1記載の光学素子形成方法において、
前記基板を可視光領域で透明な基板とし、前記基板上に半透明金属膜を形成後、ゲルマニウム(Ge)層を形成し、その後、前記半透明金属膜と同様の半透明金属膜を形成し、該半透明金属膜上に前記酸化シリコン(SiO)膜を形成することを特徴とする光学素子形成方法。
【請求項7】
請求項6記載の光学素子形成方法で形成される光学素子であって、
前記光学素子は、圧電素子層に対する入射光が、Ge層が除去された部分での干渉を受けた後に、基板を透過して出る透過光を出力とする分波器であることを特徴とする光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−145506(P2008−145506A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329445(P2006−329445)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(302000081)株式会社メムス・コア (19)
【Fターム(参考)】