在線位置検出方法、ブレーキ制御方法、進路制御方法、車上装置及び管理装置
【課題】在線位置を検出するための新たな仕組みを提案すること。
【解決手段】列車に搭載された車上装置1は、軌道に沿って設置されたICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行って、自列車の在線位置を検出する。すなわち、車上装置1は、走行予定区間の軌道に沿って設置されたICタグ3の識別情報であるタグIDが列車の走行順と対応付けられたICタグリスト情報を、走行予定区間の始点出発時に管理装置5から取得する。走行予定区間の走行時は、先頭側車両及び後尾側車両に設置されたタグリーダー120,130によってICタグ3のICタグ情報が読み取られる。そして、車上装置1は、タグリーダー120,130により読み取られたICタグ情報を、管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査することで、自列車が在線しているブロックを検知する。
【解決手段】列車に搭載された車上装置1は、軌道に沿って設置されたICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行って、自列車の在線位置を検出する。すなわち、車上装置1は、走行予定区間の軌道に沿って設置されたICタグ3の識別情報であるタグIDが列車の走行順と対応付けられたICタグリスト情報を、走行予定区間の始点出発時に管理装置5から取得する。走行予定区間の走行時は、先頭側車両及び後尾側車両に設置されたタグリーダー120,130によってICタグ3のICタグ情報が読み取られる。そして、車上装置1は、タグリーダー120,130により読み取られたICタグ情報を、管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査することで、自列車が在線しているブロックを検知する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の在線位置を検出する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の在線位置を検出する方法の1つとして、軌道回路を利用して列車が当該軌道回路内に存在するか否かの在線を検知する方法が実用化されている。この列車在線検知方法は、軌道回路内に車両が進入した際に、当該車両の車輪及び車軸でなる輪軸によって左右のレール間が短絡されることにより、軌道回路の送端側から送出された電圧の軌道回路の受信側での受電レベルが低下することを利用して、軌道回路内に車両が在線していることを検知するものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−207808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した列車在線検知方法により軌道回路内の列車を検知するためには、輪軸により左右のレール間を確実に短絡させる必要がある。ところが、列車の車輪踏面の表面状態や、線路のレール頭頂面の表面状態によっては、左右のレール間の短絡が十分に行われず、列車の在線を検知できない場合がある。これは、車輪踏面やレール頭頂面に形成された粉塵、油、錆等の絶縁性の被膜により、車輪踏面とレール間の電気的な接触抵抗が増大し、短絡不良が発生することによるものである。
【0005】
特に、ローカル線に代表されるような閑散線区では、大都市の線区と比べて列車の運行本数が少ない。そのため、列車の車輪踏面や線路のレール頭頂面に錆が形成され易く、上記の短絡不良が生じ易い。また、近年では、アルミニウム等の軽合金で作られた軽量化車両が実用化されている。このような軽量化車両では、従来の車両と比べて重量が軽いために輪軸によるレール間の短絡が不十分となる場合もある。
【0006】
また、従来の軌道回路は設置・メンテナンスの費用や工数が嵩む。そのため、ローカル線や第三セクター鉄道等では、費用や工数を低減できる代替設備が望まれている。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、在線位置を検出するための新たな仕組みを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための第1の形態は、
車上装置(例えば、図1及び図7の車上装置1)が搭載された自列車の在線位置を当該車上装置が検出する在線位置検出方法であって、
識別情報が記憶された小型無線タグ(例えば、図1及び図8のICタグ3)が軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間(例えば、図3〜図5の走行予定区間)に設置されている小型無線タグの識別情報(例えば、図12のタグID5845)が走行順(例えば、図12の走行順5843)と対応付けられたタグリスト情報(例えば、図12の区間別ICタグリスト情報584)を取得する取得ステップ(例えば、図14のステップB5)と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報(例えば、図2のICタグ情報;ID部)を読み取る読取ステップ(例えば、図15のステップC1又はC27)と、
前記読取ステップで読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出ステップ(例えば、図15のステップC3又はC29)と、
を含む在線位置検出方法である。
【0009】
また、第8の形態として、
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得手段(例えば、図7の管理装置用通信部140)と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取手段(例えば、図7の第1のタグリーダー120又は第2のタグリーダー130)と、
前記読取手段により読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出手段(例えば、図7の処理部110)と、
を備えた車上装置(例えば、図1及び図7の車上装置1)を構成してもよい。
【0010】
この第1又は第8の形態によれば、車上装置が、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する。そして、車上装置が、自列車の走行中に、軌道に沿って設置された小型無線タグと通信を行って識別情報を読み取り、当該識別情報をタグリスト情報と照査することで、自列車の在線位置を検出する。予めタグリスト情報を取得しておき、走行中に小型無線タグから読み取った識別情報をタグリスト情報と照査するといった簡易な手法により、自列車の在線位置を適切に検出することができる。
【0011】
また、第2の形態として、第1の形態の在線位置検出方法であって、
隣接する前記小型無線タグ間の距離である隣接距離(例えば、図2のICタグ情報の隣接タグ間距離部、又は、図19の隣接タグ間距離5847)を取得する隣接距離取得ステップと、
前記隣接距離取得ステップで取得された隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離(例えば、図16のステップC39の到達余裕距離)内で、前記タグリスト情報に従った順番で前記識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置(例えば、図7の速度発電機160)により計測されている計測値を用いて判定することで、前記車上装置と前記小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常の発生有無を判定する車上タグ間伝送系判定ステップ(例えば、図16のステップC39)と、
を含む在線位置検出方法を構成してもよい。
【0012】
この第2の形態によれば、隣接する小型無線タグ間の隣接距離を取得する。そして、取得した隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離内で、且つ、タグリスト情報に従った順番で識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測された計測値を用いて判定する。車上装置或いは小型無線タグに故障等の異常が発生した場合は、余裕距離内で正しい識別情報を取得することができない。かかる単純な手法により、情報伝送系統の異常の発生有無を適切に判定することができる。
【0013】
また、第3の形態として、第2の形態の在線位置検出方法であって、
前記小型無線タグには、隣接する小型無線タグまでの前記隣接距離が記憶されており(例えば、図2のICタグ情報の隣接タグ間距離部)、
前記隣接距離取得ステップは、前記読取ステップにおいて前記小型無線タグから前記識別情報を読み取る際に、当該小型無線タグに記憶された前記隣接距離を読み取って取得するステップである(例えば、図15のステップC1又はC27)、
在線位置検出方法を構成してもよい。
【0014】
この第3の形態によれば、小型無線タグに隣接距離を記憶させておくことで、小型無線タグから識別情報を読み取る際に、隣接する小型無線タグまでの距離情報をも併せて取得することができる。
【0015】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の在線位置検出方法であって、
在線地点の検知単位区間である検知ブロック(例えば、図1(A)のブロック)の境界に前記小型無線タグが少なくとも2つずつ設置されており(例えば、図22のICタグ3a及び3b)、
前記車上装置は前記自列車の先頭側及び後尾側の2箇所に設けられた前記小型無線タグと通信を行う通信アンテナ(例えば、図7の第1又は第2のタグリーダー120,130)を有し、
前記走行予定区間は連続する複数の前記検知ブロックで構成され、
前記位置検出ステップは、前記読取ステップで読み取られた識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するステップ(例えば、図22)を含む、
在線位置検出方法を構成してもよい。
【0016】
この第4の形態によれば、小型無線タグから読み取った識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出する。チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するようにしたことで、車上装置と小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常に対して頑健なシステムが構築される。
【0017】
また、第5の形態として、
第1〜第4の何れかの形態の在線位置検出方法を実行する列車の車上装置が実行するブレーキ制御方法であって、
前記走行予定区間の着点と、当該着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する着点到達距離取得ステップ(例えば、図15のステップC1又はC27)と、
前記読取ステップで読み取った識別情報が前記特定小型無線タグの識別情報である場合に、前記着点到達距離と、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターン(例えば、図6の速度照査パターン)を生成して、ブレーキのバックアップ制御を行うブレーキ制御ステップ(例えば、図15のステップC11;Yes→ステップC13,C15)と、
を含むブレーキ制御方法を構成してもよい。
【0018】
この第5の形態によれば、走行予定区間の着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する。そして、読み取った識別情報が特定小型無線タグの識別情報である場合に、着点到達距離と、計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターンを生成して、ブレーキのバックアップ制御を行う。
【0019】
第6の形態は、
前記タグリスト情報を記憶するとともに列車の進路構成を行う管理装置(例えば、図1及び図9の管理装置5)が、第1〜第4の何れかの形態の在線位置検出方法又は第5の形態のブレーキ制御方法を実行する列車の車上装置との間で通信を行って当該列車の進路を制御する進路制御方法であって、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定ステップ(例えば、図14のステップA1及びA3)と、
前記走行予定区間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信ステップ(例えば、図14のステップA5)と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定ステップで設定した進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了ステップ(例えば、図14のステップA7;Yes→ステップA9)と、
を含む進路制御方法である。
【0020】
また、第9の形態として、
第8の形態の車上装置との間で通信を行って列車の進路を制御する管理装置であって、
前記タグリスト情報を記憶する記憶手段(例えば、図9の記憶部580;区間別ICタグリスト情報584)と、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定手段(例えば、図9の処理部510)と、
前記走行予定空間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信手段(例えば、図9の通信部540)と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定手段により設定された進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了手段(例えば、図9の処理部510)と、
を備えた管理装置(例えば、図1及び図9の管理装置5)を構成してもよい。
【0021】
この第6又は第9の形態によれば、走行予定区間に対して進路の設定を行う。そして、走行予定区間に係るタグリスト情報を車上装置に送信し、車上装置からタグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、設定した進路の構成を完了として走行予定区間を在線状態とする。車上装置と管理装置との間で確認を取りながら進路構成を行うことで、列車運行の安全性を確保することができる。
【0022】
また、第7の形態として、第6の形態の進路制御方法であって、
前記走行予定区間の走行後に前記車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った前記識別情報を受信する識別情報受信ステップ(例えば、図17のステップD1)と、
前記識別情報受信ステップにより前記識別情報を受信した場合に、在線状態としていた前記走行予定区間を非在線状態とする進路開放ステップ(例えば、図17のステップD1;Yes→D7)と、
を更に含む進路制御方法を構成してもよい。
【0023】
この第7の形態によれば、走行予定区間の走行後に車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った識別情報を受信する。そして、識別情報を受信した場合に、在線状態としていた走行予定区間を非在線状態とする。車上装置と管理装置との間で確認を取りながら進路開放を行うことで、列車運行の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)在線位置検出システムのシステム構成図。(B)列車の車両の構成図。
【図2】ICタグ情報のデータ構成の一例を示す図。
【図3】走行予定区間の始点出発時における処理手順の説明図。
【図4】走行予定区間の走行時における処理手順の説明図。
【図5】走行予定区間の終点到着時における処理手順の説明図。
【図6】速度照査パターンの一例を示す図。
【図7】車上装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図8】ICタグの機能構成の一例を示すブロック図。
【図9】管理装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図10】ICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図11】区間定義情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図12】区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図13】区間別進路鎖錠情報のデータ構成の一例を示す図。
【図14】走行予定区間の始点出発時における処理の流れを示すフローチャート。
【図15】走行予定区間の走行時における処理の流れを示すフローチャート。
【図16】走行予定区間の走行時における処理の流れを示すフローチャート。
【図17】走行予定区間の終点到着時における処理の流れを示すフローチャート。
【図18】第2のICタグ情報のデータ構成の一例を示す図。
【図19】第2の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図20】第3のICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図21】第3の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図22】チェックイン・チェックアウト方式における在線位置検出の説明図。
【図23】第4のICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図24】第4の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図25】踏切制御の説明図。
【図26】踏切制御処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態が以下の実施形態に限定されるわけでないことは勿論である。
【0026】
1.システム構成
図1は、本実施形態における在線位置検出システム1000のシステム構成の一例を示す図である。在線位置検出システム1000は、主要な構成要素として、車上装置1と、IC(Integrated Circuit)タグ3と、管理装置5と、駅伝送装置7とを有する。
【0027】
本実施形態の在線位置検出システム1000は、主として閑散線区に適用されるシステムである。図1(A)に本実施形態における路線の概略を示す。簡明化のため、留置や検修のための側線を省略して本線のみを示す。本実施形態の線区は単線であり、各駅に上り線と下り線のホームを別個に設けて駅構内で列車がすれ違い可能となっている。各駅の駅構内には、上り/下りそれぞれのホームに入場/出場するためのポイントである転てつ機PMが備えられており、転てつ機PMは転てつ機制御端末装置CRからの制御信号に従って動作する。
【0028】
転てつ機PMは、いわゆる電気転てつ機であり、列車をある線路から他の線路へ移動させるための線路部分でなる分岐器と、分岐器のトングレールを移動して基本レールに密着させる転換装置及びトングレールを密着状態に保持して列車の振動・衝撃等の外力により転換できないように鎖錠する鎖錠装置で構成される転てつ装置とを備えて構成される。
【0029】
転てつ機制御端末装置CRは、転てつ機PMの転換・鎖錠及び解錠の動作を制御する端末装置である。本実施形態において転てつ機制御端末装置CRは、各転てつ機PMに一対一に対応付けられ、対応する転てつ機PMの制御装置と一体に、あるいは通信線で接続されて近隣に配置される。
【0030】
転てつ機制御端末装置CRは、車上装置1と通信を行うための不図示の通信部を備えており、車上装置1から送信される転てつ機PMの転換・鎖錠指示信号に従って転てつ機PMを制御し、レールを転換及び鎖錠させる。転てつ機制御端末装置CRは、対応する転てつ機PMの鎖錠指示をした列車のIDを記憶し、鎖錠した同一の列車からの解錠指示でもって転てつ機PMを解錠させる。
【0031】
本実施形態では、隣接する2駅間の区間を1つの「単位区間」と称する。具体的には、各駅における列車の停車位置を基準として、隣接する2駅の停車位置間を1つの単位区間とする。また、列車が駅に停車している場合には当該列車が次に走行する予定の単位区間のことを、或いは、列車が走行中の場合には当該走行中の単位区間のことを、当該列車の「走行予定区間」と称する。
【0032】
また、本実施形態において、軌道は列車の在線地点の検知単位である複数の「ブロック」で区切られている。ブロックとは、従来の軌道回路による閉そく区間に相当する検知単位であるが、勿論、従来の閉そく区間よりも短い区間をブロックとして定義してもよいし、長い区間をブロックとして定義してもよい。少なくとも1つのブロックの長さは、1編成が十分に在線可能な長さであると好適であり、本実施形態ではそのような長さであるとして説明する。
【0033】
軌道に沿って、各ブロックの端部には、1つのブロックにつき1つのICタグ3が設置されている。ICタグ3は、例えばレール間の枕木方向中央位置に設置される。そして、列車がブロックを通過する際に、列車の車両下部(車体下部であってもよいし、台車下部であってもよい。)の枕木方向中央位置に設けられたタグリーダー120,130がICタグ3と通信を行って、該タグリーダー120,130がICタグ3からICタグ情報を読み取り可能に構成される。
【0034】
車上装置1は、各列車に搭載される制御装置及び処理装置であり、軌道に沿って設置されたICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、自列車の在線位置を検出する。車上装置1は、運転士や車掌が操作可能な位置(例えば運転台や車掌室)に設置される。また、車上装置1は、ICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、列車のブレーキのバックアップ制御を行う。
【0035】
図1(B)に示すように、先頭側車両下部の枕木方向中央位置及び後尾側車両下部の枕木方向中央位置には、それぞれタグリーダー120,130が設置されており、車上装置1と有線(不図示)で接続されている。つまり、走行中は、先頭側車両に設置されたタグリーダー(以下、「先頭側タグリーダー」という。)と、後尾側車両に設置されたタグリーダー(以下、「後尾側タグリーダー」という。)とが、同一のICタグ3のICタグ情報を順次に読み取ることとなる。
【0036】
タグリーダー120,130は、ICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行ってICタグ3に記憶されたICタグ情報を読み取るリーダー装置である。タグリーダー120,130は、アンテナ部やチューナー部、プロセッサー部、電源部等を備えて構成される。
【0037】
ICタグ3は、RFID(Radio Frequency IDentification)の一種であり、列車車両に設置されたタグリーダー120,130との間で非接触式の近距離無線通信を行う小型の近距離無線装置である。本実施形態では、電源を内蔵せずに、電磁誘導作用を用いて外部からの電波を電力に変換して作動する、いわゆるパッシブ型のICタグ(パッシブタグ)を用いる場合を例示する。
【0038】
ICタグ3とタグリーダー120,130との間の通信可能距離は、長くても1メートル程度である。そのため、ICタグ3及びタグリーダー120,130の設置位置は、走行中に近接して通信可能な位置となるように位置決めされる。本実施形態では、車両下部の枕木方向中央位置にタグリーダー120,130を備え、レール間の枕木方向中央位置にICタグ3を設置することで、離隔距離が50センチメートル程度以下となるように位置決めする。また、列車の最高速度を考慮すると、ICタグ3とタグリーダー120,130との間で通信可能なデータ量に制限があるため、過剰なデータ量となるデータを送受することはできない。
【0039】
なお、ICタグ3は、屋外に設置されるため、風雨による影響を考慮して、防水構造を有する防護ケースに封入される。また、タグリーダー120,130についても、軌道に敷かれるバラストの飛散などによる衝撃を受けることを想定し、同様に防護ケースに封入される。
【0040】
管理装置5は、線区全体の情報を統括的に管理する装置であり、例えば鉄道事業者の事業所等に配設される。管理装置5は、駅伝送装置7と通信接続されており、駅伝送装置7を介して列車の出発指示を車上装置1に送信することで、列車への出発・進行を指示する。また、管理装置5は、列車の車上信号機の現示、走行予定区間の転てつ機PMの鎖錠・解錠、ブロックの進路鎖錠等を管理・把握し、進路の設定や進路の開放といった進路制御を行う。
【0041】
駅伝送装置7は、各駅に配設される伝送装置であり、列車が駅構内に進入した場合、或いは、所定の停車位置に停車した場合に当該列車の車上装置1との無線通信が可能な位置に配設される。駅伝送装置7は、例えば有線によって管理装置5と通信接続されており、車上装置1と管理装置5との間の通信を中継する機能を有する。この中継機能によって、車上装置1と管理装置5との間のデータのやり取りが可能となる。
【0042】
図2は、ICタグ3が記憶部に記憶しているICタグ情報のデータ構成の一例を示す図である。ICタグ情報は、例えば、ID部と、隣接タグ間距離部と、チェック符号部とを有するデータ列として構成される。
【0043】
ID部には、各ICタグ3をユニークに識別するために各ICタグ3に固有に割り当てられた識別情報(タグID)が格納される。
【0044】
隣接タグ間距離部には、自ICタグ3の設置位置から隣接するICタグ3の設置位置までの距離である隣接タグ間距離が格納される。本実施形態では線路を単線としているため、隣接するICタグ3には、自ICタグから見て上り寄りの位置に設置されたICタグ3と、下り寄りの位置に設置されたICタグ3との2つそれぞれについて隣接タグ間距離が格納される。なお、複線とする場合には、上り本線には上り寄りの隣接タグ間距離のみを格納し、下り本線には下り寄りの隣接タグ間距離のみを格納すればよい。
【0045】
チェック符号部には、ICタグ情報中のビット誤りを検出するための符号(データ)が格納され、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号が格納される。
【0046】
2.原理
次に、本実施形態における在線位置検出方法、ブレーキ制御方法及び進路制御方法について説明する。ここでは、図3〜図5を参照して、「ハ駅」の上り線に停車している列車が、「ハ駅」を出発して「ロ駅」の上り線に到着するまでの処理手順について説明する。
【0047】
2−1.走行予定区間の始点出発時
図3は、走行予定区間の始点出発時における処理手順の説明図である。走行予定区間は、隣接する駅間であって、出発駅の列車停止位置と到着駅の列車停止位置間と定められるため、出発駅の列車停止位置を「走行予定区間の始点」又は単に「始点」と呼び、到着駅の列車停止位置を「走行予定区間の終点」又は単に「終点」と呼ぶ。また、走行予定区間において、最も始点寄りに設置されているICタグ3を「発点ICタグ」と呼び、最も終点寄りに設置されているICタグ3を「着点ICタグ」と呼ぶ。また、着点ICタグの次に終点寄りに設置されているICタグ3を「直前着点ICタグ」と呼ぶ。
【0048】
管理装置5は全列車の在線状態を記録している。最初に管理装置5は、列車の走行予定区間である「ハ駅」の始点から「ロ駅」の終点までの進路設定を行う(A−1)。車上装置1は、駅伝送装置7を介して管理装置5から進路設定の通知を受けると、走行予定区間に係る転てつ機PMの転換鎖錠の指示を行う(A−2)。詳細には、図3において、車上装置1は、「ハ駅」近傍の転てつ機PM1を制御する転てつ機制御端末装置CR1との間で無線通信を行い、転てつ機PM1が鎖錠されていないことを確認する。確認がとれた場合、車上装置1は、転てつ機PM1を転換・鎖錠するための転換・鎖錠指示信号に自列車IDを含めて、転てつ機制御端末装置CR1に送信する。
【0049】
転てつ機制御端末装置CR1は、車上装置1から転換・鎖錠指示信号を受信すると、転てつ機PM1を制御してレールを転換・鎖錠させる。また、車上装置1は、「ロ駅」近傍に設置された転てつ機PM2を制御する転てつ機制御端末装置CR2との間で無線通信を行い、転てつ機PM2を同様に転換・鎖錠させる。
【0050】
転てつ機PM1及びPM2の転換・鎖錠により進路が開通すると、管理装置5は、駅伝送装置7を介して、走行予定区間に係るICタグリスト情報を車上装置1に送信する(A−3)。ICタグリスト情報は、列車の走行予定区間に設置されているICタグのタグIDが走行順と対応付けられた情報である。
【0051】
車上装置1は、管理装置5からICタグリスト情報を受信すると、駅伝送装置7を介して管理装置5に返信応答する(A−4)。この返信応答を受けて、管理装置5は、走行予定区間の進路構成を完了とし、走行予定区間を在線状態として確定させる(A−5)。その後、車上装置1は、車上信号機である出発信号機を進行現示とし、列車の運転士は進行現示の確認の元、列車を出発・進行させる。
【0052】
このように、走行予定区間の始点出発時は、管理装置5(ICタグリスト情報)→車上装置1(返信応答)→管理装置5の順番で情報伝送がループ状に行われて、管理装置5により走行予定区間の進路構成が行われる。つまり、管理装置5と車上装置1との間で情報伝送の閉じたループ(第1のクローズドループ)が形成される。この第1のクローズドループによる情報伝送により、情報伝送系統に異常が生じていないことが確認され、走行予定区間の始点出発前における進路構成が確実に行われて、列車運行の安全性が確保される。
【0053】
2−2.走行予定区間の走行時
図4は、走行予定区間の走行時における処理手順の説明図である。列車が走行予定区間を走行している間、車上装置1は、列車の走行距離を常駐的に監視する(B−1)。具体的には、走行中、車上装置1は、ICタグ3からICタグ情報を受信すると、その受信したICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離に所定の余裕を持たせた距離である到達余裕距離を算出する。到達余裕距離は、例えば隣接タグ間距離の1.2倍の距離等として設定する。そして、ICタグ情報の受信時点から、その到達余裕距離を走行するまでの間に、ICタグリスト情報に従った次順のICタグ3のICタグ情報を受信したか否かを判定する。走行距離は、例えば列車に搭載される速度発電機等の計測装置の計測値を用いて算出する。ICタグ情報の受信時点の走行距離を一時記録し、その後の走行距離が、一時記録した走行距離に到達余裕距離を加算した値(距離)に到達したことで、列車が到達余裕距離を進行したと判定する。
【0054】
ICタグ情報を受信する前に列車が到達余裕距離を超過した場合は、車上装置1は、車上装置1とICタグ3とで構成される情報伝送系統に異常が発生したものと判断し、異常時処理を行う(B−2)。情報伝送系統に異常がなければ、列車が到達余裕距離を進行するまでの間に、先頭側タグリーダーが、走行順に従った次順のICタグ3からICタグ情報を読み取るはずである。それにも関わらず、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取ることなく到達余裕距離を進行した場合は、先頭側タグリーダー及びICタグ3のうちの何れかに故障等の異常が発生したことが想定される。そこで、この場合は、例えば異常発生音声を出力したり、異常発生ランプを点灯させるなどして、運転士に警告を報知する処理を行う。
【0055】
列車が到達余裕距離を進行するまでの間に先頭側タグリーダーがICタグ3からICタグ情報を読み取ると(B−3)、車上装置1は、先頭側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報を、出発前に管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査する(B−4)。すなわち、車上装置1は、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報に含まれるタグIDと、ICタグリスト情報に定められている次順のICタグ3のタグIDとを比較する。そして、タグIDが一致していると判定した場合は、読み取ったICタグ情報を記録する。他方、タグIDが一致しなかったと判定した場合は、車上装置1は、情報伝送系統に異常ありと判断し、この場合も異常時の処理を行う(B−5)。ICタグ3の故障等が考えられるためである。
【0056】
次いで、車上装置1は、再び列車の走行距離を監視し(B−6)、列車の編成長に所定距離分の余裕を持たせた編成長余裕距離だけ列車が進行するまでの間に、後尾側タグリーダーにより同じICタグ3からICタグ情報が読み取られたか否かを判定する。編成長余裕距離は、例えば編成長の1.2倍の距離を設定する。後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取る前に列車が編成長余裕距離を超過した場合、車上装置1は、情報伝送系統に異常が発生したものと判断し、異常時処理を行う(B−7)。
【0057】
情報伝送系統に異常がなければ、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取った後、編成長余裕距離を進行するまでの間に、後尾側タグリーダーが同じICタグ情報を読み取るはずである。それにも関わらず、後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取ることなく編成長余裕距離を進行した場合は、後尾側タグリーダーとICタグ3との何れかに故障等の異常が発生したことが想定される。従って、この場合は情報伝送系統に異常ありと判定し、異常時の処理を行う。例えば、車上装置1は、列車を徐々に減速させて停止させたり、情報伝送系統の異常を無線で管理装置5に通知するなどの処理を行う。異常時の処理への対応としては、運転士が、列車を次駅まで徐行運転させるなどの方策が考えられる。他の異常時の処理においても同様である。
【0058】
列車が編成長余裕距離を進行するまでの間に後尾側タグリーダーがICタグ3からICタグ情報を読み取ると(B−8)、車上装置1は、後尾側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報をICタグリスト情報と照査する(B−9)。そして、タグIDが一致していると判定した場合は、読み取ったICタグ情報を記録する。他方、タグIDが一致しなかったと判定した場合は、車上装置1は、情報伝送系統に異常ありと判断し、この場合も異常時の処理を行う(B−10)。
【0059】
照査によりタグIDが一致していたならば、自列車が当該ブロックに位置していることがわかる。例えば、ICタグ3が各ブロックの上り端部に設置されており、列車が上り方向に進行していたとする。この場合、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報について照査を行った結果、タグIDが一致したならば、列車が当該ICタグ3の設置ブロックの次のブロック(上り側の隣接ブロック)に進入しようとしていることがわかる。また、後尾側タグリーダーが読み取ったICタグ情報について照査を行った結果、タグIDが一致したならば、当該ICタグ3の設置ブロックから列車が進出しようとしていることがわかる。これは、自列車の在線位置を検出していることを意味する。
【0060】
上記の処理を繰り返しながら列車は進行する。そして、先頭側タグリーダーが新たなICタグ3からICタグ情報を読み取り、タグリスト情報と照査することで当該ICタグ3が直前着点ICタグであると判明した場合には、車上装置1は、直前着点ICタグから着点ICタグを通過した所定位置に至るまでの速度照査パターンを生成して(B−36)、当該速度照査パターンに従ったブレーキ制御の実行を開始する(B−37)。
【0061】
図6は、速度照査パターンの説明図である。図6において、横軸は列車の位置を示し、縦軸は列車の制限速度を示す。速度照査パターンは、例えば、直前着点ICタグでの列車の制限速度を“V1”とし、制限速度“V1”から緩やかに減少して着点ICタグの位置で制限速度が徐行速度として予め定められた“V2(<V1)”となり、着点ICタグから停止発動距離だけ後方の位置で制限速度が“0”となるようなパターンとして生成される。
【0062】
停止発動距離は、着点ICタグから終点までの距離を含み、終点を超えて列車が走行していると判断できる距離として定められる。車上装置1は、直前着点ICタグからICタグ情報を読み取ると、直前着点ICタグからの走行距離を監視する。そして、現在位置における制限速度を速度照査パターンから求め、現在の列車速度が当該制限速度以下であるかを随時比較する。そして、速度が制限速度を超過している場合は、速度を制限速度以下に落とすようにブレーキを制御する。
【0063】
従って、着点ICタグからICタグ情報を受信した位置(着点)において、列車の速度が徐行速度を超えている場合には徐行速度以下となるようにブレーキ制御がなされる。これにより、運転士は、確実に走行予定区間の終点で列車を停止させることができる。また、走行予定区間の終点を通過したとしても、停止発動距離に至ると停止制御が発動されて列車が停止するため、列車運行の安全性を確保することができる。
【0064】
このように、走行予定区間の走行中は、車上装置1(電波)→ICタグ3(ICタグ情報)→車上装置1の順番で情報伝送がループ状に行われる。つまり、ICタグ3と車上装置1との間で情報伝送の閉じたループ(第2のクローズドループ)が形成される。この第2のクローズドループによる情報伝送により、在線位置の検出が適切に行われる。また、ICタグ3からのICタグ情報の受信状況を常駐的に監視することで、情報伝送系統の異常発生を確実に検知し、列車運行の安全性を確保することができる。
【0065】
2−3.走行予定区間の終点到着時
図5は、列車が走行予定区間の終点に到着する際の処理手順の説明図である。列車が走行予定区間の終点が定められている「ロ駅」に到着すると、車上装置1は、走行した走行予定区間に係る転てつ機制御端末装置CR1と通信を行い、自列車IDを含む転てつ機PM1の解錠指示信号を転てつ機制御端末装置CR1に送信して、転てつ機PM1を解錠させる(C−1)。同様に、車上装置1は、転てつ機制御端末装置CR2と通信を行い、自列車IDを含む転てつ機PM2の解錠指示信号を転てつ機制御端末装置CR2に送信して、転てつ機PM2を解錠させる(C−1)。
【0066】
次いで、車上装置1は、走行予定区間の走行中に、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーが読み取った全てのICタグ情報を読取順と対応付けた読取ICタグ情報を、駅伝送装置7を介して管理装置5に送信する(C−2)。管理装置5は、車上装置1から読取ICタグ情報を受信すると、その内容をICタグリスト情報と照合する(C−3)。そして、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーの読取ICタグ情報のタグIDがICタグリスト情報のタグIDと全て一致し、且つ、順番も一致しているならば、管理装置5は、在線状態としていた走行予定区間を非在線状態として、走行予定区間の進路を開放する(C−4)。
【0067】
それに対して、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーの読取ICタグ情報のタグIDがICタグリスト情報のタグIDと一致しない、又は、順番が一致しない場合は、管理装置5は、情報伝送系統の異常発生を疑い、異常時の処理を行う。例えば、管理装置5は、駅係員や検査員に対して情報伝送系統の異常発生を報知して、情報伝送系統の検査を促す。
【0068】
このように、走行予定区間の終点到着時には、車上装置1(受信ICタグ情報)→管理装置5の順番で情報伝送がループ状に行われる。つまり、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の閉じたループ(第3のクローズドループ)が形成される。この第3のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の終点到着時における進路開放が確実に行われ、列車運行の安全性が確保される。
【0069】
3.機能構成
3−1.車上装置1の機能構成
図7は、車上装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。車上装置1は、例えば、処理部110と、第1のタグリーダー120と、第2のタグリーダー130と、管理装置用通信部140と、転てつ機用通信部150と、速度発電機160と、記憶部180とを備えて構成される。
【0070】
処理部110は、記憶部180に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って車上装置1を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有して構成される。
【0071】
第1のタグリーダー120及び第2のタグリーダー130は、先頭側車両及び後尾側車両にそれぞれ設置されるリーダー装置であり、ICタグ3から読み取ったICタグ情報を処理部110に随時出力する。
【0072】
管理装置用通信部140は、駅伝送装置7を介して管理装置5と通信を行うための通信装置である。また、転てつ機用通信部150は、転てつ機制御端末装置CRとの間で通信を行うための通信装置である。これらの通信には、公知の通信技術を適用可能であり、例えば、管理装置用通信部140と駅伝送装置7間の通信には誘導無線を用い、転てつ機用通信部150と転てつ機制御端末装置CR間の通信にはPHS(Personal Handy-phone System)システムを利用した通信等を適用できる。
【0073】
速度発電機160は、車軸の回転数に応じた電圧又はパルスを発生させて、列車の速度を計測する計測装置である。速度発電機160により計測された速度は処理部110に出力され、走行距離の算出や速度制御(ブレーキ制御)等に利用される。速度発電機160は、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置の一種である。また、電動機制御用等に別途に速度発電機が列車に備えられている場合には、その速度発電機を兼用することとしてよいことは勿論である。
【0074】
記憶部180は、処理部110が車上装置1を統括的に制御するための各種プログラムや各種データ等を記憶した記憶装置であり、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)といった記憶装置を有して構成される。記憶部180には、例えば、車上制御プログラム181と、自列車ID182と、積算距離183と、走行予定区間ICタグリスト情報184と、第1のタグリーダー読取情報185と、第2のタグリーダー読取情報186と、速度照査パターン187と、編成長188とが記憶される。
【0075】
車上制御プログラム181は、処理部110により読み出され、車上制御処理(図14〜図17参照)として実行されるプログラムである。車上制御処理とは、処理部110が、上記の原理に従って、自列車の在線位置検出やブレーキ制御等の各種制御を実行する処理である。この車上制御処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0076】
自列車ID182は、各列車をユニークに識別するための識別情報(ID)のうち自列車に割り当てられた識別情報である。
【0077】
積算距離183は、速度発電機160により計測された速度と、ある基準時点からの経過時間とを用いて算出される自列車の累積走行距離である。積算距離183は、例えば、走行予定区間の始点(列車停止位置)に列車が停止している時点を基準に算出される。
【0078】
走行予定区間ICタグリスト情報184は、自列車の走行予定区間に含まれるICタグ3に係る情報がリスト化されたデータである。この走行予定区間ICタグリスト情報184は、車上装置1が駅伝送装置7を介して管理装置5から取得する情報であり、そのデータ構成例については後述する。
【0079】
第1のタグリーダー読取情報185は、第1のタグリーダー120によってICタグ3から読み取られたICタグ情報を、第1のICタグ情報,第2のICタグ情報,・・・と読み取り順に記録したデータである。同様に、第2のタグリーダー読取情報186は、第2のタグリーダー130によってICタグ3から読み取られたICタグ情報を読み取り順に記録したデータである。
【0080】
速度照査パターン187は、直前着点ICタグからの距離(位置)と制限速度との関係を定めたデータであり、例えば図6に示すような速度照査パターンが生成されて記憶される。
【0081】
編成長188は、列車の編成長であり、初期設定では固定値が記憶される。その後、列車が走行予定区間を走行中に、先頭側タグリーダーによるICタグ情報の読み取りタイミングにおける列車の積算距離と、後尾側タグリーダーによる同じICタグ情報の読み取りタイミングにおける列車の積算距離とから、編成長188が新たに算出されて更新される。
【0082】
3−2.ICタグ3の機能構成
図8は、ICタグ3の機能構成の一例を示す図である。ICタグ3は、例えば、アンテナ部310と、通信部320と、処理部330と、記憶部340と、電源部350とを備えて構成される。
【0083】
アンテナ部310は、車両に設置された第1及び第2のタグリーダー120,130との間で通信を実現するためのアンテナを有して構成される。ICタグ3は、いわゆるパッシブ型のICタグであるため、電源を内蔵していない。その代わりに、ICタグ3は、第1及び第2のタグリーダー120,130から送出される規定周波数の電波を利用して電磁誘導方式により電力を得る回路を内蔵している。アンテナ部310と電源部350とで、この電力生成回路が構成される。電源部350は、生成した電力の電圧を安定化させて、通信部320、処理部330及び記憶部340の電源として供給する。
【0084】
通信部320は、アンテナ部310を介して第1及び第2のタグリーダー120,130との間で非接触式の近距離無線通信を行うための通信装置である。
【0085】
処理部330は、ICタグ3の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU等のプロセッサーを有して構成される。処理部330が実行する動作は予め記憶部340に記憶されたプログラムにより規定されている。具体的には、電源部350から電源が供給されて作動開始すると、ICタグ情報341を通信部320及びアンテナ部310を介して発信させる動作である。電源が供給されている限り、繰り返しICタグ情報341を発信させる。第1及び第2のタグリーダー120,130が、ICタグ情報341の読み取り(受信)をできるだけ早期且つ確実にするためである。
【0086】
記憶部340は、例えば、ROMやフラッシュROMといった不揮発性の記憶装置を有して構成され、自ICタグ3に係るICタグ情報341を記憶する。
【0087】
3−3.管理装置5の機能構成
図9は、管理装置5の機能構成の一例を示すブロック図である。管理装置5は、例えば、処理部510と、操作部520と、表示部530と、通信部540と、記憶部580とを備え、各部がバス590で接続された一種のコンピューターシステムである。
【0088】
処理部510は、記憶部580に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って管理装置5を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU等のプロセッサーを有して構成される。
【0089】
操作部520は、例えばキーボードやタッチパネル等により構成される入力装置であり、押下されたキーやアイコンの信号を処理部510に出力する。この操作部520の操作により、列車の運行管理を行うための各種データの入力等がなされる。
【0090】
表示部530は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、処理部510から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部530には、列車の運行管理に係る各種の情報等が表示される。
【0091】
通信部540は、駅伝送装置7との間でデータのやり取りを行うための通信装置であり、駅伝送装置7と通信接続される。通信形態は有線であっても無線であってもよい。
【0092】
記憶部580は、処理部510が管理装置5を統括的に制御するための各種プログラムや各種データ等を記憶した記憶装置である。記憶部580には、管理処理プログラム581と、ICタグ情報データベース(以下、「DB(Data Base)」と表記する。)582と、区間定義情報DB583と、複数の区間別ICタグリスト情報584と、複数の区間別進路鎖錠情報585とが記憶される。
【0093】
管理処理プログラム581は、処理部510により読み出され、管理処理(図14及び図17参照)として実行されるプログラムである。管理処理とは、処理部510が、上述した原理に従って進路構成や進路開放といった進路制御を行って、列車の運行を管理する処理である。この管理処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0094】
図10は、ICタグ情報DB582のデータ構成の一例を示す図である。ICタグ情報DB582は、ICタグ3に関する情報が蓄積されたデータベースであり、例えば、ICタグ3の設置位置5821と、当該ICタグ3の識別情報であるタグID5823とが対応付けて記憶されている。設置位置5821には、当該ICタグ3が設置されているブロックの識別情報であるブロックIDと、当該ICタグ3が当該ブロックの上り端部と下り端部との何れに設置されているかを示す端部種別とが含まれる。例えば、図10に示すICタグ情報DB582では、ブロックBL1の上り端部に設置されるICタグ3は、タグIDが“T1”のICタグ3であることが記憶されている。
【0095】
図11は、区間定義情報DB583のデータ構成の一例を示す図である。区間定義情報DB583は、単位区間を定義する情報が蓄積されたデータベースであり、例えば、単位区間の識別情報である区間ID5831と、上り及び下りの種別である上下識別5833と、列車がブロックを通過する順序をブロックIDの順番で示したブロック通過順5835とが対応付けて記憶されている。例えば、図11において、単位区間“SEC1”を上り方向に進行する列車が通過するブロックの順序は、“BL1→BL3→BL4→BL5→BL6”である。
【0096】
図12は、区間別ICタグリスト情報584のデータ構成の一例を示す図である。区間別ICタグリスト情報584は、上下方向の各単位区間について、当該単位区間に設置されているICタグ3のタグIDが走行順と対応付けられたタグリスト情報であり、例えば、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845とが対応付けて記憶されている。例えば、図12において、単位区間“SEC1”を上り方向に走行する場合、“T1,T3,T4,・・・”の順番にICタグ3が設置されていることが記憶されている。
【0097】
この区間別ICタグリスト情報584は、処理部510が、ICタグ情報DB582に定められたデータと、区間定義情報DB583に定められたデータとに基づいて、上下方向の各単位区間について個別に生成する。そして、運行中の各列車が駅に停車した際に、当該列車が次に走行する予定の単位区間(走行予定区間)に対応するICタグリスト情報が、走行予定区間ICタグリスト情報184として当該列車の車上装置1に提供される。
【0098】
図13は、区間別進路鎖錠情報585のデータ構成の一例を示す図である。区間別進路鎖錠情報585は、上下方向の各単位区間それぞれの進路鎖錠に関する情報であり、例えば、区間識別5851と、転てつ機鎖錠データ5853と、ブロック鎖錠データ5855とが記憶される。
【0099】
転てつ機鎖錠データ5853には、当該単位区間に設置された転てつ機PMの名称と、当該転てつ機PMの鎖錠有無と、当該転てつ機PMを鎖錠した列車の識別情報である鎖錠列車IDとが対応付けて記憶される。鎖錠有無及び鎖錠列車IDは、当該単位区間の列車の進行状況に応じて随時更新される。
【0100】
ブロック鎖錠データ5855には、当該単位区間に含まれるブロックの名称と、当該ブロックに係る進路鎖錠の有無と、当該ブロックを鎖錠した列車の識別情報である鎖錠列車IDとが対応付けて記憶される。進路鎖錠有無及び鎖錠列車IDは、当該単位区間の列車の進行状況に応じて随時更新される。なお、説明の簡明化のため、接近鎖錠/保留鎖錠については説明を省略する。
【0101】
4.処理の流れ
4−1.走行予定区間の始点出発時の処理
図14は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理と、管理装置5の処理部510が実行する管理処理とのうち、走行予定区間の始点出発時の処理を示したフローチャートである。図の左側に管理装置5の処理を、図の右側に車上装置1の処理をそれぞれ示す。
【0102】
最初に、管理装置5の処理部510は、進路構成指示を駅伝送装置7を介して車上装置1に送信する(ステップA1)。すると、車上装置1の処理部110は、転てつ機PMの転換鎖錠制御を行う(ステップB1)。そして、転てつ機PMの転換鎖錠が完了すると、鎖錠完了を管理装置5に通知する(ステップB3)。
【0103】
管理装置5の処理部510は、転てつ機PMの転換鎖錠により進路が開通するまで待機し(ステップA3;No)、進路が開通したならば(ステップA3;Yes)、記憶部580に記憶された区間別ICタグリスト情報584の中から走行予定区間に係るICタグリスト情報を選択し、走行予定区間ICタグリスト情報184として車上装置1に送信する(ステップA5)。
【0104】
車上装置1の処理部110は、管理装置5から走行予定区間ICタグリスト情報184を受信するまで待機し(ステップB5;No)、走行予定区間ICタグリスト情報184を受信したならば(ステップB5;Yes)、管理装置5に対して返信応答を行う(ステップB7)。
【0105】
管理装置5の処理部510は車上装置1から返信応答があるまで待機し(ステップA7;No)、返信応答があったならば(ステップA7;Yes)、進路構成完了として列車の進路を鎖錠する(ステップA9)。すなわち、走行予定区間に含まれる各転てつ機PMを論理鎖錠して走行予定区間に含まれる各ブロックを在線状態とし、記憶部580の区間別進路鎖錠情報585を更新する。
【0106】
そして、管理装置5の処理部510は、車上装置1に進行現示を指示した後(ステップA11)、走行予定区間の終点到着時の処理へと移行する。また、車上装置1の処理部110は管理装置5から進行現示の指示を受けると、車上信号機を進行現示とする(ステップB9)。そして、走行予定区間の走行時の処理へと移行する。
【0107】
4−2.走行予定区間の走行時の処理
図15及び図16は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理のうち、走行予定区間の走行時における処理を示すフローチャートである。処理部110は、先頭側タグリーダーと、後尾側タグリーダーとのそれぞれについて、ICタグ3からのICタグ情報の読み取り状況を常駐的に監視する。
【0108】
処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取ったか否かを判定し(ステップC1)、読み取ったと判定した場合は(ステップC1;Yes)、読み取ったICタグ情報と、記憶部180に記憶された走行予定区間ICタグリスト情報184とを照査する(ステップC3)。そして、タグIDが一致したならば(ステップC5;Yes)、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報を、第1のタグリーダー読取情報185として記憶部180に記憶させる(ステップC7)。
【0109】
次いで、処理部110は、ステップC7で記憶させたICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離(自列車の走行方向に対応する距離データ)に基づいて、到達余裕距離を新たに算出して再設定する(ステップC8)。そして、処理部110は、現在の積算距離を先頭側積算距離として記憶部180に一時記憶する(ステップC9)。具体的には、列車が走行予定区間の始点を出発してから先頭側タグリーダーが今回ICタグ情報を読み取るまでの間に列車が走行した距離(先頭側積算距離)を、速度発電機160により計測された速度と、始点を出発してからの経過時間とを用いて算出して記憶部180に一時記憶する。
【0110】
その後、処理部110は、走行予定区間ICタグリスト情報184を参照し、ICタグ情報を受信したICタグ3が直前着点ICタグであるか否かを判定する(ステップC11)。そして、直線着点ICタグであると判定した場合は(ステップC11;Yes)、処理部110は、ステップC7で記憶させたICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離を参照して、速度照査パターン187を生成する(ステップC13)。
【0111】
その後、処理部110は、生成した速度照査パターン187を用いた列車の速度制御処理を開始する(ステップC15)。なお、速度照査パターンを用いた速度制御は、従来より保安装置として使用されているATS(Automatic Train Stop device)やATC(Automatic Train Control)における速度制御技術を同様に適用することができる。そのため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0112】
次いで、処理部110は、後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取ったか否かを判定し(ステップC17)、読み取ったと判定した場合は(ステップC17;Yes)、現在の積算距離を後尾側積算距離として記憶部180に一時記憶する(ステップC19)。具体的には、列車が走行予定区間の始点を出発してから後尾側タグリーダーが今回ICタグ情報を読み取るまでの間に列車が進行した距離(後尾側積算距離)を算出する。
【0113】
続けて、処理部110は、列車の編成長188を再設定する(ステップC21)。具体的には、ステップC19で一時記憶した後尾側積算距離と、ステップC9で一時記憶した先頭側積算距離との距離差を算出し、算出した距離差を列車の編成長188として新たに設定する。このように、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取る度に、列車の編成長を再設定する。そして、処理部110は、新たな編成長を用いて編成長余裕距離を新たに算出して、再設定する(ステップC22)。
【0114】
一方、ステップC17において後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取らなかったと判定した場合は(ステップC17;No)、処理部110は、列車が編成長余裕距離を進行したか否かを判定する(ステップC23)。そして、まだ進行していないと判定した場合は(ステップC23;No)、ステップC17に戻る。また、編成長余裕距離を進行したと判定した場合は(ステップC23;Yes)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC25)。
【0115】
異常時処理は、ステップC25の他に、ステップC37,C45でも実行され得る処理であり、例えば共通する処理とすることができる。具体的には、列車の乗務員(運転士や車掌)に向けて異常が発生した旨を報知する処理とし、例えば、運転台に設置された報知ランプのうち、異常と判定した理由に該当する報知ランプを点灯或いは点滅させたり、所定の音声を出力させる。また、報知のみにとどまらず、制動制御を行って列車を停止させたり所定速度以下での走行に制限させる制御を行うこととしてもよい。
【0116】
処理部110は、後尾側タグリーダーについても同様の処理を行う。すなわち、後尾側タグリーダーによりICタグ情報が読み取られたか否かを判定し(ステップC27)、読み取られたと判定した場合は(ステップC27;Yes)、当該ICタグ情報と走行予定区間ICタグリスト情報184とを照査する(ステップC29)。そして、タグIDが一致したならば(ステップC31;Yes)、当該ICタグ情報を第2のタグリーダー読取情報186として記憶部180に記憶させる(ステップC33)。
【0117】
その後、処理部110は、ステップC8と同様に、到達余裕距離を再設定する(ステップC34)。そして、先頭側タグリーダーが同じICタグ情報を読み取っていたか否かを判定し(ステップC35)、読み取っていたと判定した場合は(ステップC35;Yes)、ステップC17へと処理を移行する。また、読み取っていなかったと判定した場合は(ステップC35;No)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC37)。
【0118】
さて、ステップC1又はステップC27においてICタグ情報が読み取られなかったと判定した場合は(ステップC1;No又はステップC27;No)、処理部110は、列車が次ICタグ3までの到達余裕距離を超過したか否かを判定する(ステップC39)。そして、まだ超過していないと判定した場合は(ステップC39;No)、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0119】
また、到達余裕距離を超過したと判定した場合は(ステップC39;Yes)、処理部110は、乗務員(運転士、車掌)に対して警告を報知する(ステップC41)。報知としては、運転台に設けられた所定のランプを点灯させたり、表示装置に所定画面を表示させる処理などが考えられる。そして、処理部110は、次ICタグ3が直前着点ICタグであるか否かを判定し(ステップC43)、直前着点ICタグではないと判定した場合は(ステップC43;No)、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0120】
一方、次ICタグ3が直前着点ICタグであると判定した場合は(ステップC43;Yes)、処理部110は、乗務員(運転士、車掌)に対して列車の速度制御が不能である旨の警告を報知する(ステップC45)。次ICタグ3が直前着点ICタグである場合に、列車が到達余裕距離を超過したということは、速度照査パターンが生成されないことを意味するためである。従って、この場合は、速度制御が不能であることを警告する音声を出力したり、所定音声を出力するなどして、運転士に速度制御が不能であることを警告する。この警告を受けて、運転士は、列車の速度制御に一層注意することができる。
【0121】
なお、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーそれぞれについての照査処理(ステップC3、ステップC29)の結果、タグIDが一致しなかったと判定した場合は(ステップC5;No又はステップC31;No)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC45)。そして、処理部110は、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0122】
4−3.走行予定区間の終点到着時の処理
図17は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理と、管理装置5の処理部510が実行する管理処理とのうち、走行予定区間の終点到着時の処理を示したフローチャートである。図の左側に管理装置5の処理を、図の右側に車上装置1の処理をそれぞれ示す。
【0123】
車上装置1の処理部110は、列車が終点に到着するまで待機し(ステップE1;No)、到着したならば(ステップE1;Yes)、走行予定区間の走行中にタグリーダー120,130が読み取った第1及び第2のタグリーダー読取情報185,186を、駅伝送装置7を介して管理装置5に送信する(ステップE3)。終点到着の判定は、例えば、駅伝送装置7との間で通信が可能になったことをもって終点に到着したと判定したり、列車停止位置に地上子を配置しておき、その地上子と通信することで終点到着を判定するなど、公知の技術を適宜適用できる。そして、車上装置1の処理部110は、車上制御処理を終了する。
【0124】
管理装置5の処理部510は、車上装置1から第1及び第2のタグリーダー読取情報185,186を受信するまで待機し(ステップD1;No)、受信したならば(ステップD1;Yes)、記憶部580に記憶された当該走行予定区間のICタグリスト情報と照合する処理を行う(ステップD3)。この照合処理は、全てのタグIDが正しい順序で読み取られたか否かを判定する処理である。
【0125】
そして、照合結果がOKであれば(ステップD5;Yes)、管理装置5の処理部510は、当該走行予定区間の進路鎖錠を解錠し、記憶部580の区間別進路鎖錠情報585を更新した後(ステップD7)、管理処理を終了する。また、照合結果がNGである場合は(ステップD5;No)、管理装置の処理部510は、異常時の処理を行う(ステップD9)。
【0126】
5.作用効果
列車に搭載された車上装置1は、軌道に沿って設置されたICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行って、自列車の在線位置を検出する。すなわち、車上装置1は、走行予定区間の軌道に沿って設置されたICタグ3の識別情報であるタグIDが列車の走行順と対応付けられたICタグリスト情報を、走行予定区間の始点出発時に管理装置5から取得する。走行予定区間の走行時は、先頭側車両及び後尾側車両に設置されたタグリーダー120,130によってICタグ3のICタグ情報が読み取られる。そして、車上装置1は、タグリーダー120,130により読み取られたICタグ情報を、管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査することで、自列車が在線しているブロックを検知する。
【0127】
本実施形態では、各ブロックの境界にICタグ3を1つずつ設置することとした。これにより、車上装置1は、各ブロックを通過する際に、当該ブロックに設置されたICタグ3からICタグ情報を受信することになる。ICタグリスト情報には、列車の走行順とタグIDとが対応付けられている。そのため、車上装置1は、受信したICタグ情報に含まれるタグIDと、ICタグリスト情報に含まれるタグIDとを照査することで、正しい順序でICタグ情報を受信したか否かを判定することができる。そして、正しい順序でICタグ情報を受信したと判定したならば、当該ICタグ3の設置ブロックに列車が在線していると判断する。しかし、正しい順序でICタグ情報を受信しなかったと判定したならば、情報伝送系統に異常が発生したと判断する。
【0128】
また、ICタグ情報には、隣接するICタグ3までの距離情報である隣接タグ間距離が含まれている。車上装置1は、ICタグ3から受信したICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離に一定の余裕を持たせた到達余裕距離内で、且つ、ICタグリスト情報に定められた順でタグリーダー120,130によりICタグ情報が読み取られたか否かを判断する。これにより、走行途中における情報伝送系統の異常発生の有無を判定する。列車が到達余裕距離を進行するまでにタグリーダー120,130によりICタグ情報が読み取られないならば、タグリーダー120,130とICタグ3との何れかに故障等が発生した可能性が高い。そのため、この場合には異常時の処理を行うこととし、列車運行の安全性を確保する。
【0129】
また、本実施形態では情報伝送をより確実に行うため、先頭側車両と後尾側車両とにそれぞれタグリーダー120,130を設置した。一方のタグリーダーがICタグ3のICタグ情報を読み取ったとしても、他方のタグリーダーが同じICタグ3のICタグ情報を読み取らないのであれば、情報伝送系統の異常が疑われる。そのため、この場合もフェールセーフの原則に則って異常時の処理を行う。
【0130】
走行予定区間の始点出発時は、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の第1のクローズドループが形成され、この第1のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の進路が構成される。走行予定区間の走行時は、車上装置1とICタグ3との間で情報伝送の第2のクローズドループが形成され、この第2のクローズドループによる情報伝送により、在線位置検出やブレーキのバックアップ制御、情報伝送系統の異常検知等が行われる。走行予定区間の終点到着時は、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の第3のクローズドループが形成され、この第3のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の進路が開放される。このように車上装置1と管理装置5との間、車上装置1とICタグ3との間で情報伝送をループ状に行うことで、装置間でお互いの状態を監視・把握することが可能となり、情報伝送の健全性を担保することができる。
【0131】
6.変形例
本発明を適用可能な実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明するが、上記の実施形態と同一の構成要素やデータについては同一の符号を付して説明を省略し、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0132】
6−1.線区
上記の実施形態では、本発明を閑散線区に適用した場合の在線位置検出システムを例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしも閑散線区にのみ適用可能というわけではなく、都市部の線区についても同様に適用可能であることは勿論である。その場合、単位区間をより狭めると好適である。単位区間を狭めた場合に、単位区間の終点が列車停止位置とならないのであれば、当該単位区間の最も終点寄りに設置されているICタグの位置(すなわち着点)を終点とすればよい。また、この場合は、着点で制限速度が“0”となるように速度照査パターンを生成するとよい。
【0133】
6−2.小型無線タグ
上記の実施形態では、小型無線タグとして、非接触式の近距離無線通信を行うためのパッシブ型のICタグ(パッシブタグ)を例に挙げて説明したが、小型無線タグの種類はこれに限られない。例えば、アクティブ型のICタグ(アクティブタグ)を用いてもよいし、パッシブ型とアクティブ型とを組み合わせたセミアクティブ型のICタグ(セミアクティブタグ)を用いてもよい。
【0134】
また、アクティブ型のうちの電磁誘導方式で動作するICタグではなく、電波方式で動作するICタグを用いてもよい。何れの種類及び形式の小型無線タグを用いるにせよ、ICタグ3から車上装置1にICタグ情報を提供可能なシステムとすれば、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0135】
6−3.タグリーダー
上記の実施形態では、列車と先頭側車両と後尾側車両との2箇所にタグリーダーを設置してICタグ情報を読み取るものとして説明した。しかし、タグリーダーの設置位置及び設置数は適宜変更可能である。例えば、タグリーダーを先頭側車両或いは後尾側車両の1箇所だけに設置することとしてもよい。
【0136】
6−4.計測装置
上記の実施形態では、走行距離相当値を計測する計測装置として、列車の速度を計測する速度発電機を例に挙げて説明した。すなわち、速度発電機の計測値を用いて列車の走行距離を算出し、到達余裕距離内でICタグリスト情報に従った順番でタグリーダーによりICタグ情報が読み取られたか否かに基づいて、情報伝送系統の異常発生有無を判定した。この場合、速度発電機に限らず、走行距離又は走行距離相当値を計測する任意の計測装置の計測値を用いて、同様に情報伝送系統の異常発生有無を判定できる。
【0137】
例えば、加速度センサーやジャイロセンサー等の慣性センサーを具備するセンサー装置を列車に搭載しておき、このセンサー装置の計測値から列車の走行距離を算出して、情報伝送系統の異常発生有無を判定することとしてもよい。また、各種のセンサーの計測値を利用して走行距離を計測する公知の走行距離計測装置を列車に搭載し、走行距離計測装置から出力される走行距離を用いて情報伝送系統の異常発生有無を判定することとしてもよい。
【0138】
6−5.ICタグ情報
ICタグ3に記憶させておくICタグ情報の構成は、適宜設定変更可能である。例えば、図18に示すように、タグIDが格納されたID部と、チェック符号が格納されたチェック符号部とのデータ列で構成される第2のICタグ情報をICタグ3に記憶させることとしてもよい。図2のICタグ情報と異なるのは、第2のICタグ情報には隣接タグ間距離部が含まれないことである。
【0139】
この場合、車上装置1は、ICタグ3からではなく、管理装置5から隣接タグ間距離を取得することとすればよい。具体的には、管理装置5が、図19に示すような第2の区間別ICタグリスト情報584Bを上下方向の単位区間別に生成する。第2の区間別ICタグリスト情報584Bには、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845と、隣接タグ間距離5847とが対応付けて記憶されている。そして、列車が走行予定区間を進行する前に、管理装置5が、当該走行予定区間に係る第2の区間別ICタグリスト情報584Bを車上装置1に送信・提供する。
【0140】
この場合、車上装置1は、管理装置5から取得した第2の区間別ICタグリスト情報584Bに含まれる隣接タグ間距離に基づいて到達余裕距離を設定する。そして、設定した到達余裕距離内で、第2の区間別ICタグリスト情報584Bに従った順番でICタグ情報が読み取られたか否かを判定することで、情報伝送系統の異常の発生有無を判定する。
【0141】
6−6.チェックイン・チェックアウト方式
在線地点の検知単位区間であるブロックの境界にICタグ3を少なくとも2つずつ設置し、チェックイン・チェックアウト方式で在線位置を検出するシステムを構成することも可能である。
【0142】
図20は、この場合に管理装置5が図10のICタグ情報DB582の代わりに記憶部580に記憶する第3のICタグ情報DB582Cのデータ構成の一例を示す図である。第3のICタグ情報DB582Cには、ICタグ3の設置位置5821と、タグID5823とが対応付けて記憶されている。第3のICタグ情報DB582Cでは、各ブロックIDのブロックそれぞれについて、上り端部及び下り端部にICタグ3が1つずつ設置される。
【0143】
図21は、この場合に管理装置5が図12の区間別ICタグリスト情報584の代わりに作成する第3の区間別ICタグリスト情報584Cのデータ構成の一例を示す図である。第3の区間別ICタグリスト情報584Cには、区間識別5841の他、走行予定区間におけるブロックの通過順に、ブロックの識別情報(ID)であるブロックID5842と、当該ブロックに設置されているICタグ3のタグID5845と、当該ICタグ3の発点・着点の種別を示す発着種別5848とが対応付けて記憶されている。
【0144】
この場合も、車上装置1の処理部110は、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報を、上記の第3の区間別ICタグリスト情報584Cと照査することで、正しい順序でICタグ情報が読み取られたか否かを判定することができる。なお、在線位置検出やブレーキのバックアップ制御、情報伝送系統の異常検知等の各種処理は上記の実施形態と同様に行うことができる。
【0145】
図22は、各ブロックの始端部と終端部とにICタグ3(3a,3b)を1つずつ設置した場合の説明図である。図22では、列車が左方向から右方向に進行する場合として図示している。ここでは、列車が現在位置しているブロックを現ブロックとし、列車が次に進入するブロックを次ブロックとして説明する。
【0146】
先頭側タグリーダーが現ブロックの終端部のICタグ3bからICタグ情報を読み取ると、車上装置1は、列車の現ブロックからの進出を検知する(図22(A))。続けて、先頭側タグリーダーが次ブロックの始端部のICタグ3aからICタグ情報を読み取ることで、車上装置1は、列車の次ブロックへの進入を検知する。この場合、車上装置1は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信した順序を、第3の区間別ICタグリスト情報584Cを参照して判定する。そして、受信順序が正しければ、列車の進行方向を特定するとともに、列車の次ブロックへの進入を確定する(図22(B))。
【0147】
その後、後尾側タグリーダーがICタグ3bからICタグ情報を読み取ると、車上装置1は、列車の現ブロックからの進出を検知する(図22(C))。続けて、後尾側タグリーダーがICタグ3aからICタグ情報を読み取ることで、車上装置1は、列車の次ブロックへの進入を検知する。この場合、車上装置1は、後尾側タグリーダーがICタグ情報を受信した順序を、第3の区間別ICタグリスト情報584Cを参照して判定する。そして、受信順序が正しければ、列車の進行方向を特定するとともに、列車の現ブロックからの進出を確定する(図22(D))。
【0148】
このチェックイン・チェックアウト方式では、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーが、ブロックの境界に少なくとも2つずつ設置されたICタグ3から連続的にICタグ情報を受信する。そのため、各ブロックの境界に1つずつICタグ3を設置する場合と比べて、情報伝送をより確実に行うことができる。なお、ICタグ3は少なくとも2つずつ設置すればよく、3つ以上のICタグ3を設置する場合も同様である。
【0149】
6−7.踏切制御システム
車上装置1がICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、踏切の制御を行うシステム(踏切制御システム)を構成することも可能である。
【0150】
図23は、この場合に管理装置5が図10のICタグ情報DB582の代わりに記憶部580に記憶する第4のICタグ情報DB582Dのデータ構成の一例を示す図である。第4のICタグ情報DB582Dには、ICタグ3の設置位置5821と、タグID5823と、複数の制御命令5825(制御命令1,制御命令2,・・・)とが対応付けて記憶されている。制御命令5825には、当該制御命令による制御の実行条件と制御の内容とが定められている。
【0151】
例えば、図23の第4のICタグ情報DB582Dにおいては、ブロックとしてBL1〜BL6が定められているが、このうちのブロックBL4に踏切CR1が設置されているものとする。この場合は、踏切CR1の制御を実現するために、例えばブロックBL4の前後のブロックに、踏切CR1を制御するための制御命令5825をそれぞれ記憶させておけばよい。
【0152】
例えば、ブロックBL3については、制御命令1として、列車の上り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を開始させる制御内容を定めておき、制御命令2として、列車の下り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を停止させる制御内容を定めておく。また、ブロックBL5については、制御命令1として、列車の上り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を停止させる制御内容を定めておき、制御命令2として、列車の下り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を開始させる制御内容を定めておく。
【0153】
図24は、この場合に管理装置5が図12の区間別ICタグリスト情報584の代わりに作成する第4の区間別ICタグリスト情報584Dのデータ構成の一例を示す図である。第4の区間別ICタグリスト情報584Dには、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845と、制御命令5849とが対応付けて記憶されている。制御命令5849には、図23の第4のICタグ情報DB582Dに定められた制御命令5825のうち、当該区間の区間識別5841に対応する制御命令5825が記憶される。
【0154】
車上装置1は、走行予定区間の出発前に、当該走行予定区間に係る第4の区間別ICタグリスト情報584Dを管理装置5から取得する。そして、走行予定区間の走行中にICタグ3からICタグ情報を受信すると、当該ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査する。そして、当該ICタグ3に制御命令5849が定められている場合は、その制御内容に従った制御を実行する。
【0155】
図25は、この場合の踏切制御の説明図であり、列車が左方向から右方向に進行する場合を図示している。踏切には、車上装置1との間で無線通信を行う通信部を備え、遮断機や警報を制御する踏切制御装置が設置されている。また、車上装置1には、踏切制御装置との間で無線通信を行う通信装置が更に備えられている。
【0156】
踏切CR1が設置されたブロックの手前のブロックに列車が差し掛かると、先頭側タグリーダーが当該ブロックのICタグ3のICタグ情報を読み取る。車上装置1は、ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査し、踏切CR1の警報開始の制御命令が対応付けられていると判断する。この場合、車上装置1は、踏切の警報開始を指示する信号(以下、「踏切警報開始指示信号」という。)を踏切CR1の制御装置に送信する。踏切制御装置は、車上装置1から踏切警報開始指示信号を受信すると、踏切CR1の警報を開始させるとともに、遮断機を下ろすように制御する(図25(A))。
【0157】
列車が踏切CR1を通過し、1ブロック離隔したブロックに差し掛かると、先頭側タグリーダーが当該ブロックのICタグ3からICタグ情報を読み取る。車上装置1は、当該ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査し、踏切CR1の警報停止の制御命令が対応付けられていると判断する。この場合、車上装置1は、踏切の警報停止を指示する信号(以下、「踏切警報停止指示信号」という。)を、踏切CR1の制御装置に送信する。踏切制御装置は、車上装置1から踏切警報停止指示信号を受信すると、踏切CR1の警報を停止させるとともに、遮断機を上げるように制御する(図25(B))。
【0158】
図26は、この場合に車上装置1の処理部110が走行中に実行する処理の一部を部分的に抜き出したフローチャートである。図15のフローチャートのステップC5の後、処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信したICタグ3が、踏切の警報開始を指示するICタグ(以下、「踏切警報開始指示タグ」という。)であるか否かを判定する(ステップF1)。そして、踏切警報開始指示タグであると判定した場合は(ステップF1;Yes)、踏切警報開始指示信号を踏切制御装置に送信する(ステップF3)。
【0159】
次いで、処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信したICタグ3が、踏切の警報停止を指示するICタグ(以下、「踏切警報停止指示タグ」という。)であるか否かを判定する(ステップF5)。そして、踏切警報停止指示タグであると判定した場合は(ステップF5;Yes)、踏切警報停止指示信号を踏切制御装置に送信する(ステップF7)。そして、処理部110は、図15のステップC7へと処理を移行する。
【0160】
一方、ステップF1において踏切警報開始指示タグではないと判定した場合は(ステップF1;No)、処理部110は、ステップF5へと処理を移行する。また、ステップF5において踏切警報停止指示タグではないと判定した場合は(ステップF5;No)、処理部110は、図15のステップC7へと処理を移行する。
【0161】
また、この場合の処理において、次ICタグが踏切警報開始指示タグであるにも関わらず、次ICタグからICタグ情報を読み取ることなく列車が到達余裕距離を超過してしまうと、車上装置1は制御命令を取得することができず、踏切制御装置に警報開始を指示することができなくなる。この場合は、踏切において事故が発生する危険性が生ずることになる。
【0162】
そこで、次ICタグが踏切警報開始指示タグである場合において、図16のステップC39で列車が到達余裕距離を超過したと判定した場合は(ステップC39;Yes)、処理部110は、列車が踏切に接近していることを運転士に警告するとともに、例えば列車の速度を所定速度(例えば時速5km)以下とするように列車を制動制御するなどして、列車運行の安全性を確保することとすればよい。
【0163】
6−8.カーブにおける減速制御
線路が大きくカーブする部分では、カーブの手前で列車の速度を十分に減速しなければ、脱線等の大事故に繋がる危険性がある。そこで、カーブにおいて速度を所定速度以下に制限(制動)させる制御命令を定めておき、この制御命令に従って列車を制動させる制御を行ってもよい。
【0164】
具体的には、カーブの手前のブロックに設置されたICタグ3のICタグ情報に速度制限用の制御命令を埋め込んでおいてもよいし、管理装置5から提供されるICタグリスト情報(図23の第4のICタグ情報DB582D及び図24の第4の区間別ICタグリスト情報584D)のうちの当該ICタグ3に対応する制御命令として速度制限用の制御内容を定めておくこととしてもよい。何れにせよ、車上装置1の処理部110は、カーブの手前のブロックに設置されたICタグ3からICタグ情報を受信した場合に、当該ICタグ3に対応付けられた制御命令に従って列車を制動制御することができる。勿論、この場合において、速度照査パターンを生成して速度制限をかけることとしてもよい。
【0165】
6−9.異常発生判定
列車は高速走行しているため、タグリーダーによるICタグ情報の読み取りに失敗することも当然想定される。そこで、情報伝送に一定の許容度を持たせて情報伝送系統の異常発生有無を判定してもよい。
【0166】
例えば、先頭側タグリーダーと後尾側タグリーダーとの何れか一方のタグリーダーの読み取りが成功すれば、他方のタグリーダーが読み取りに失敗したとしても、情報伝送系統に異常なしと判定することとしてもよい。また、上記のチェックイン・チェックアウト方式において、各ブロックの境界に少なくとも2つずつ設置されるICタグのうち、1つのICタグからのICタグ情報の読み取りに失敗したとしても、他のICタグからのICタグ情報の読み取りに成功すれば、情報伝送系統に異常なしと判定することとしてもよい。
【0167】
6−10.転てつ機の制御
上記の実施形態では、車上装置1から転てつ機制御端末装置CRに対して指示信号を送信することで、転てつ機PMの転換・鎖錠や解錠の制御指示を車上装置1が行うものとして説明した。しかし、転てつ機PMへの制御指示は車上装置1が行うことに限らず、管理装置5が行うこととしてもよい。
【0168】
この場合、走行予定区間の始点出発時においては、管理装置5が駅伝送装置7を介して転てつ機制御端末装置CRに転てつ機PMの転換・鎖錠制御の指示信号を送信して、転てつ機PMの転換・鎖錠を行えばよい。また、走行予定区間の終点到着時においては、管理装置5が駅伝送装置7を介して転てつ機制御端末装置CRに転てつ機PMの解錠制御の指示信号を送信して、転てつ機PMの解錠を行えばよい。
【0169】
6−11.発点・着点と始点・終点
列車停止位置を始点/終点として説明したが、列車停止位置にICタグを設置することとすれば、始点/終点はそれぞれ発点/着点とすることが可能である。また、停車する駅の列車停止位置間を単位区間と定めたが、単位区間は任意に設定することが可能である。そのため、単位区間の区切りをブロックの区切りとしてもよい。この場合も、始点/終点はそれぞれ発点/着点となる。
【符号の説明】
【0170】
1000 在線位置検出システム
1 車上装置
110 処理部
120 第1のタグリーダー
130 第2のタグリーダー
140 管理装置用通信部
150 転てつ機用通信部
160 速度発電機
180 記憶部
3 ICタグ
310 アンテナ部
320 通信部
330 処理部
340 記憶部
350 電源部
5 管理装置
510 処理部
520 操作部
530 表示部
540 通信部
580 記憶部
590 バス
7 駅伝送装置
PM 転てつ機
CR 転てつ機制御端末装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の在線位置を検出する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
列車の在線位置を検出する方法の1つとして、軌道回路を利用して列車が当該軌道回路内に存在するか否かの在線を検知する方法が実用化されている。この列車在線検知方法は、軌道回路内に車両が進入した際に、当該車両の車輪及び車軸でなる輪軸によって左右のレール間が短絡されることにより、軌道回路の送端側から送出された電圧の軌道回路の受信側での受電レベルが低下することを利用して、軌道回路内に車両が在線していることを検知するものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−207808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した列車在線検知方法により軌道回路内の列車を検知するためには、輪軸により左右のレール間を確実に短絡させる必要がある。ところが、列車の車輪踏面の表面状態や、線路のレール頭頂面の表面状態によっては、左右のレール間の短絡が十分に行われず、列車の在線を検知できない場合がある。これは、車輪踏面やレール頭頂面に形成された粉塵、油、錆等の絶縁性の被膜により、車輪踏面とレール間の電気的な接触抵抗が増大し、短絡不良が発生することによるものである。
【0005】
特に、ローカル線に代表されるような閑散線区では、大都市の線区と比べて列車の運行本数が少ない。そのため、列車の車輪踏面や線路のレール頭頂面に錆が形成され易く、上記の短絡不良が生じ易い。また、近年では、アルミニウム等の軽合金で作られた軽量化車両が実用化されている。このような軽量化車両では、従来の車両と比べて重量が軽いために輪軸によるレール間の短絡が不十分となる場合もある。
【0006】
また、従来の軌道回路は設置・メンテナンスの費用や工数が嵩む。そのため、ローカル線や第三セクター鉄道等では、費用や工数を低減できる代替設備が望まれている。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、在線位置を検出するための新たな仕組みを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための第1の形態は、
車上装置(例えば、図1及び図7の車上装置1)が搭載された自列車の在線位置を当該車上装置が検出する在線位置検出方法であって、
識別情報が記憶された小型無線タグ(例えば、図1及び図8のICタグ3)が軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間(例えば、図3〜図5の走行予定区間)に設置されている小型無線タグの識別情報(例えば、図12のタグID5845)が走行順(例えば、図12の走行順5843)と対応付けられたタグリスト情報(例えば、図12の区間別ICタグリスト情報584)を取得する取得ステップ(例えば、図14のステップB5)と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報(例えば、図2のICタグ情報;ID部)を読み取る読取ステップ(例えば、図15のステップC1又はC27)と、
前記読取ステップで読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出ステップ(例えば、図15のステップC3又はC29)と、
を含む在線位置検出方法である。
【0009】
また、第8の形態として、
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得手段(例えば、図7の管理装置用通信部140)と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取手段(例えば、図7の第1のタグリーダー120又は第2のタグリーダー130)と、
前記読取手段により読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出手段(例えば、図7の処理部110)と、
を備えた車上装置(例えば、図1及び図7の車上装置1)を構成してもよい。
【0010】
この第1又は第8の形態によれば、車上装置が、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する。そして、車上装置が、自列車の走行中に、軌道に沿って設置された小型無線タグと通信を行って識別情報を読み取り、当該識別情報をタグリスト情報と照査することで、自列車の在線位置を検出する。予めタグリスト情報を取得しておき、走行中に小型無線タグから読み取った識別情報をタグリスト情報と照査するといった簡易な手法により、自列車の在線位置を適切に検出することができる。
【0011】
また、第2の形態として、第1の形態の在線位置検出方法であって、
隣接する前記小型無線タグ間の距離である隣接距離(例えば、図2のICタグ情報の隣接タグ間距離部、又は、図19の隣接タグ間距離5847)を取得する隣接距離取得ステップと、
前記隣接距離取得ステップで取得された隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離(例えば、図16のステップC39の到達余裕距離)内で、前記タグリスト情報に従った順番で前記識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置(例えば、図7の速度発電機160)により計測されている計測値を用いて判定することで、前記車上装置と前記小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常の発生有無を判定する車上タグ間伝送系判定ステップ(例えば、図16のステップC39)と、
を含む在線位置検出方法を構成してもよい。
【0012】
この第2の形態によれば、隣接する小型無線タグ間の隣接距離を取得する。そして、取得した隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離内で、且つ、タグリスト情報に従った順番で識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測された計測値を用いて判定する。車上装置或いは小型無線タグに故障等の異常が発生した場合は、余裕距離内で正しい識別情報を取得することができない。かかる単純な手法により、情報伝送系統の異常の発生有無を適切に判定することができる。
【0013】
また、第3の形態として、第2の形態の在線位置検出方法であって、
前記小型無線タグには、隣接する小型無線タグまでの前記隣接距離が記憶されており(例えば、図2のICタグ情報の隣接タグ間距離部)、
前記隣接距離取得ステップは、前記読取ステップにおいて前記小型無線タグから前記識別情報を読み取る際に、当該小型無線タグに記憶された前記隣接距離を読み取って取得するステップである(例えば、図15のステップC1又はC27)、
在線位置検出方法を構成してもよい。
【0014】
この第3の形態によれば、小型無線タグに隣接距離を記憶させておくことで、小型無線タグから識別情報を読み取る際に、隣接する小型無線タグまでの距離情報をも併せて取得することができる。
【0015】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の在線位置検出方法であって、
在線地点の検知単位区間である検知ブロック(例えば、図1(A)のブロック)の境界に前記小型無線タグが少なくとも2つずつ設置されており(例えば、図22のICタグ3a及び3b)、
前記車上装置は前記自列車の先頭側及び後尾側の2箇所に設けられた前記小型無線タグと通信を行う通信アンテナ(例えば、図7の第1又は第2のタグリーダー120,130)を有し、
前記走行予定区間は連続する複数の前記検知ブロックで構成され、
前記位置検出ステップは、前記読取ステップで読み取られた識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するステップ(例えば、図22)を含む、
在線位置検出方法を構成してもよい。
【0016】
この第4の形態によれば、小型無線タグから読み取った識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出する。チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するようにしたことで、車上装置と小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常に対して頑健なシステムが構築される。
【0017】
また、第5の形態として、
第1〜第4の何れかの形態の在線位置検出方法を実行する列車の車上装置が実行するブレーキ制御方法であって、
前記走行予定区間の着点と、当該着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する着点到達距離取得ステップ(例えば、図15のステップC1又はC27)と、
前記読取ステップで読み取った識別情報が前記特定小型無線タグの識別情報である場合に、前記着点到達距離と、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターン(例えば、図6の速度照査パターン)を生成して、ブレーキのバックアップ制御を行うブレーキ制御ステップ(例えば、図15のステップC11;Yes→ステップC13,C15)と、
を含むブレーキ制御方法を構成してもよい。
【0018】
この第5の形態によれば、走行予定区間の着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する。そして、読み取った識別情報が特定小型無線タグの識別情報である場合に、着点到達距離と、計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターンを生成して、ブレーキのバックアップ制御を行う。
【0019】
第6の形態は、
前記タグリスト情報を記憶するとともに列車の進路構成を行う管理装置(例えば、図1及び図9の管理装置5)が、第1〜第4の何れかの形態の在線位置検出方法又は第5の形態のブレーキ制御方法を実行する列車の車上装置との間で通信を行って当該列車の進路を制御する進路制御方法であって、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定ステップ(例えば、図14のステップA1及びA3)と、
前記走行予定区間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信ステップ(例えば、図14のステップA5)と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定ステップで設定した進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了ステップ(例えば、図14のステップA7;Yes→ステップA9)と、
を含む進路制御方法である。
【0020】
また、第9の形態として、
第8の形態の車上装置との間で通信を行って列車の進路を制御する管理装置であって、
前記タグリスト情報を記憶する記憶手段(例えば、図9の記憶部580;区間別ICタグリスト情報584)と、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定手段(例えば、図9の処理部510)と、
前記走行予定空間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信手段(例えば、図9の通信部540)と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定手段により設定された進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了手段(例えば、図9の処理部510)と、
を備えた管理装置(例えば、図1及び図9の管理装置5)を構成してもよい。
【0021】
この第6又は第9の形態によれば、走行予定区間に対して進路の設定を行う。そして、走行予定区間に係るタグリスト情報を車上装置に送信し、車上装置からタグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、設定した進路の構成を完了として走行予定区間を在線状態とする。車上装置と管理装置との間で確認を取りながら進路構成を行うことで、列車運行の安全性を確保することができる。
【0022】
また、第7の形態として、第6の形態の進路制御方法であって、
前記走行予定区間の走行後に前記車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った前記識別情報を受信する識別情報受信ステップ(例えば、図17のステップD1)と、
前記識別情報受信ステップにより前記識別情報を受信した場合に、在線状態としていた前記走行予定区間を非在線状態とする進路開放ステップ(例えば、図17のステップD1;Yes→D7)と、
を更に含む進路制御方法を構成してもよい。
【0023】
この第7の形態によれば、走行予定区間の走行後に車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った識別情報を受信する。そして、識別情報を受信した場合に、在線状態としていた走行予定区間を非在線状態とする。車上装置と管理装置との間で確認を取りながら進路開放を行うことで、列車運行の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)在線位置検出システムのシステム構成図。(B)列車の車両の構成図。
【図2】ICタグ情報のデータ構成の一例を示す図。
【図3】走行予定区間の始点出発時における処理手順の説明図。
【図4】走行予定区間の走行時における処理手順の説明図。
【図5】走行予定区間の終点到着時における処理手順の説明図。
【図6】速度照査パターンの一例を示す図。
【図7】車上装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図8】ICタグの機能構成の一例を示すブロック図。
【図9】管理装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【図10】ICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図11】区間定義情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図12】区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図13】区間別進路鎖錠情報のデータ構成の一例を示す図。
【図14】走行予定区間の始点出発時における処理の流れを示すフローチャート。
【図15】走行予定区間の走行時における処理の流れを示すフローチャート。
【図16】走行予定区間の走行時における処理の流れを示すフローチャート。
【図17】走行予定区間の終点到着時における処理の流れを示すフローチャート。
【図18】第2のICタグ情報のデータ構成の一例を示す図。
【図19】第2の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図20】第3のICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図21】第3の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図22】チェックイン・チェックアウト方式における在線位置検出の説明図。
【図23】第4のICタグ情報DBのデータ構成の一例を示す図。
【図24】第4の区間別ICタグリスト情報のデータ構成の一例を示す図。
【図25】踏切制御の説明図。
【図26】踏切制御処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態の一例について説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態が以下の実施形態に限定されるわけでないことは勿論である。
【0026】
1.システム構成
図1は、本実施形態における在線位置検出システム1000のシステム構成の一例を示す図である。在線位置検出システム1000は、主要な構成要素として、車上装置1と、IC(Integrated Circuit)タグ3と、管理装置5と、駅伝送装置7とを有する。
【0027】
本実施形態の在線位置検出システム1000は、主として閑散線区に適用されるシステムである。図1(A)に本実施形態における路線の概略を示す。簡明化のため、留置や検修のための側線を省略して本線のみを示す。本実施形態の線区は単線であり、各駅に上り線と下り線のホームを別個に設けて駅構内で列車がすれ違い可能となっている。各駅の駅構内には、上り/下りそれぞれのホームに入場/出場するためのポイントである転てつ機PMが備えられており、転てつ機PMは転てつ機制御端末装置CRからの制御信号に従って動作する。
【0028】
転てつ機PMは、いわゆる電気転てつ機であり、列車をある線路から他の線路へ移動させるための線路部分でなる分岐器と、分岐器のトングレールを移動して基本レールに密着させる転換装置及びトングレールを密着状態に保持して列車の振動・衝撃等の外力により転換できないように鎖錠する鎖錠装置で構成される転てつ装置とを備えて構成される。
【0029】
転てつ機制御端末装置CRは、転てつ機PMの転換・鎖錠及び解錠の動作を制御する端末装置である。本実施形態において転てつ機制御端末装置CRは、各転てつ機PMに一対一に対応付けられ、対応する転てつ機PMの制御装置と一体に、あるいは通信線で接続されて近隣に配置される。
【0030】
転てつ機制御端末装置CRは、車上装置1と通信を行うための不図示の通信部を備えており、車上装置1から送信される転てつ機PMの転換・鎖錠指示信号に従って転てつ機PMを制御し、レールを転換及び鎖錠させる。転てつ機制御端末装置CRは、対応する転てつ機PMの鎖錠指示をした列車のIDを記憶し、鎖錠した同一の列車からの解錠指示でもって転てつ機PMを解錠させる。
【0031】
本実施形態では、隣接する2駅間の区間を1つの「単位区間」と称する。具体的には、各駅における列車の停車位置を基準として、隣接する2駅の停車位置間を1つの単位区間とする。また、列車が駅に停車している場合には当該列車が次に走行する予定の単位区間のことを、或いは、列車が走行中の場合には当該走行中の単位区間のことを、当該列車の「走行予定区間」と称する。
【0032】
また、本実施形態において、軌道は列車の在線地点の検知単位である複数の「ブロック」で区切られている。ブロックとは、従来の軌道回路による閉そく区間に相当する検知単位であるが、勿論、従来の閉そく区間よりも短い区間をブロックとして定義してもよいし、長い区間をブロックとして定義してもよい。少なくとも1つのブロックの長さは、1編成が十分に在線可能な長さであると好適であり、本実施形態ではそのような長さであるとして説明する。
【0033】
軌道に沿って、各ブロックの端部には、1つのブロックにつき1つのICタグ3が設置されている。ICタグ3は、例えばレール間の枕木方向中央位置に設置される。そして、列車がブロックを通過する際に、列車の車両下部(車体下部であってもよいし、台車下部であってもよい。)の枕木方向中央位置に設けられたタグリーダー120,130がICタグ3と通信を行って、該タグリーダー120,130がICタグ3からICタグ情報を読み取り可能に構成される。
【0034】
車上装置1は、各列車に搭載される制御装置及び処理装置であり、軌道に沿って設置されたICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、自列車の在線位置を検出する。車上装置1は、運転士や車掌が操作可能な位置(例えば運転台や車掌室)に設置される。また、車上装置1は、ICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、列車のブレーキのバックアップ制御を行う。
【0035】
図1(B)に示すように、先頭側車両下部の枕木方向中央位置及び後尾側車両下部の枕木方向中央位置には、それぞれタグリーダー120,130が設置されており、車上装置1と有線(不図示)で接続されている。つまり、走行中は、先頭側車両に設置されたタグリーダー(以下、「先頭側タグリーダー」という。)と、後尾側車両に設置されたタグリーダー(以下、「後尾側タグリーダー」という。)とが、同一のICタグ3のICタグ情報を順次に読み取ることとなる。
【0036】
タグリーダー120,130は、ICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行ってICタグ3に記憶されたICタグ情報を読み取るリーダー装置である。タグリーダー120,130は、アンテナ部やチューナー部、プロセッサー部、電源部等を備えて構成される。
【0037】
ICタグ3は、RFID(Radio Frequency IDentification)の一種であり、列車車両に設置されたタグリーダー120,130との間で非接触式の近距離無線通信を行う小型の近距離無線装置である。本実施形態では、電源を内蔵せずに、電磁誘導作用を用いて外部からの電波を電力に変換して作動する、いわゆるパッシブ型のICタグ(パッシブタグ)を用いる場合を例示する。
【0038】
ICタグ3とタグリーダー120,130との間の通信可能距離は、長くても1メートル程度である。そのため、ICタグ3及びタグリーダー120,130の設置位置は、走行中に近接して通信可能な位置となるように位置決めされる。本実施形態では、車両下部の枕木方向中央位置にタグリーダー120,130を備え、レール間の枕木方向中央位置にICタグ3を設置することで、離隔距離が50センチメートル程度以下となるように位置決めする。また、列車の最高速度を考慮すると、ICタグ3とタグリーダー120,130との間で通信可能なデータ量に制限があるため、過剰なデータ量となるデータを送受することはできない。
【0039】
なお、ICタグ3は、屋外に設置されるため、風雨による影響を考慮して、防水構造を有する防護ケースに封入される。また、タグリーダー120,130についても、軌道に敷かれるバラストの飛散などによる衝撃を受けることを想定し、同様に防護ケースに封入される。
【0040】
管理装置5は、線区全体の情報を統括的に管理する装置であり、例えば鉄道事業者の事業所等に配設される。管理装置5は、駅伝送装置7と通信接続されており、駅伝送装置7を介して列車の出発指示を車上装置1に送信することで、列車への出発・進行を指示する。また、管理装置5は、列車の車上信号機の現示、走行予定区間の転てつ機PMの鎖錠・解錠、ブロックの進路鎖錠等を管理・把握し、進路の設定や進路の開放といった進路制御を行う。
【0041】
駅伝送装置7は、各駅に配設される伝送装置であり、列車が駅構内に進入した場合、或いは、所定の停車位置に停車した場合に当該列車の車上装置1との無線通信が可能な位置に配設される。駅伝送装置7は、例えば有線によって管理装置5と通信接続されており、車上装置1と管理装置5との間の通信を中継する機能を有する。この中継機能によって、車上装置1と管理装置5との間のデータのやり取りが可能となる。
【0042】
図2は、ICタグ3が記憶部に記憶しているICタグ情報のデータ構成の一例を示す図である。ICタグ情報は、例えば、ID部と、隣接タグ間距離部と、チェック符号部とを有するデータ列として構成される。
【0043】
ID部には、各ICタグ3をユニークに識別するために各ICタグ3に固有に割り当てられた識別情報(タグID)が格納される。
【0044】
隣接タグ間距離部には、自ICタグ3の設置位置から隣接するICタグ3の設置位置までの距離である隣接タグ間距離が格納される。本実施形態では線路を単線としているため、隣接するICタグ3には、自ICタグから見て上り寄りの位置に設置されたICタグ3と、下り寄りの位置に設置されたICタグ3との2つそれぞれについて隣接タグ間距離が格納される。なお、複線とする場合には、上り本線には上り寄りの隣接タグ間距離のみを格納し、下り本線には下り寄りの隣接タグ間距離のみを格納すればよい。
【0045】
チェック符号部には、ICタグ情報中のビット誤りを検出するための符号(データ)が格納され、例えばCRC(Cyclic Redundancy Check)符号が格納される。
【0046】
2.原理
次に、本実施形態における在線位置検出方法、ブレーキ制御方法及び進路制御方法について説明する。ここでは、図3〜図5を参照して、「ハ駅」の上り線に停車している列車が、「ハ駅」を出発して「ロ駅」の上り線に到着するまでの処理手順について説明する。
【0047】
2−1.走行予定区間の始点出発時
図3は、走行予定区間の始点出発時における処理手順の説明図である。走行予定区間は、隣接する駅間であって、出発駅の列車停止位置と到着駅の列車停止位置間と定められるため、出発駅の列車停止位置を「走行予定区間の始点」又は単に「始点」と呼び、到着駅の列車停止位置を「走行予定区間の終点」又は単に「終点」と呼ぶ。また、走行予定区間において、最も始点寄りに設置されているICタグ3を「発点ICタグ」と呼び、最も終点寄りに設置されているICタグ3を「着点ICタグ」と呼ぶ。また、着点ICタグの次に終点寄りに設置されているICタグ3を「直前着点ICタグ」と呼ぶ。
【0048】
管理装置5は全列車の在線状態を記録している。最初に管理装置5は、列車の走行予定区間である「ハ駅」の始点から「ロ駅」の終点までの進路設定を行う(A−1)。車上装置1は、駅伝送装置7を介して管理装置5から進路設定の通知を受けると、走行予定区間に係る転てつ機PMの転換鎖錠の指示を行う(A−2)。詳細には、図3において、車上装置1は、「ハ駅」近傍の転てつ機PM1を制御する転てつ機制御端末装置CR1との間で無線通信を行い、転てつ機PM1が鎖錠されていないことを確認する。確認がとれた場合、車上装置1は、転てつ機PM1を転換・鎖錠するための転換・鎖錠指示信号に自列車IDを含めて、転てつ機制御端末装置CR1に送信する。
【0049】
転てつ機制御端末装置CR1は、車上装置1から転換・鎖錠指示信号を受信すると、転てつ機PM1を制御してレールを転換・鎖錠させる。また、車上装置1は、「ロ駅」近傍に設置された転てつ機PM2を制御する転てつ機制御端末装置CR2との間で無線通信を行い、転てつ機PM2を同様に転換・鎖錠させる。
【0050】
転てつ機PM1及びPM2の転換・鎖錠により進路が開通すると、管理装置5は、駅伝送装置7を介して、走行予定区間に係るICタグリスト情報を車上装置1に送信する(A−3)。ICタグリスト情報は、列車の走行予定区間に設置されているICタグのタグIDが走行順と対応付けられた情報である。
【0051】
車上装置1は、管理装置5からICタグリスト情報を受信すると、駅伝送装置7を介して管理装置5に返信応答する(A−4)。この返信応答を受けて、管理装置5は、走行予定区間の進路構成を完了とし、走行予定区間を在線状態として確定させる(A−5)。その後、車上装置1は、車上信号機である出発信号機を進行現示とし、列車の運転士は進行現示の確認の元、列車を出発・進行させる。
【0052】
このように、走行予定区間の始点出発時は、管理装置5(ICタグリスト情報)→車上装置1(返信応答)→管理装置5の順番で情報伝送がループ状に行われて、管理装置5により走行予定区間の進路構成が行われる。つまり、管理装置5と車上装置1との間で情報伝送の閉じたループ(第1のクローズドループ)が形成される。この第1のクローズドループによる情報伝送により、情報伝送系統に異常が生じていないことが確認され、走行予定区間の始点出発前における進路構成が確実に行われて、列車運行の安全性が確保される。
【0053】
2−2.走行予定区間の走行時
図4は、走行予定区間の走行時における処理手順の説明図である。列車が走行予定区間を走行している間、車上装置1は、列車の走行距離を常駐的に監視する(B−1)。具体的には、走行中、車上装置1は、ICタグ3からICタグ情報を受信すると、その受信したICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離に所定の余裕を持たせた距離である到達余裕距離を算出する。到達余裕距離は、例えば隣接タグ間距離の1.2倍の距離等として設定する。そして、ICタグ情報の受信時点から、その到達余裕距離を走行するまでの間に、ICタグリスト情報に従った次順のICタグ3のICタグ情報を受信したか否かを判定する。走行距離は、例えば列車に搭載される速度発電機等の計測装置の計測値を用いて算出する。ICタグ情報の受信時点の走行距離を一時記録し、その後の走行距離が、一時記録した走行距離に到達余裕距離を加算した値(距離)に到達したことで、列車が到達余裕距離を進行したと判定する。
【0054】
ICタグ情報を受信する前に列車が到達余裕距離を超過した場合は、車上装置1は、車上装置1とICタグ3とで構成される情報伝送系統に異常が発生したものと判断し、異常時処理を行う(B−2)。情報伝送系統に異常がなければ、列車が到達余裕距離を進行するまでの間に、先頭側タグリーダーが、走行順に従った次順のICタグ3からICタグ情報を読み取るはずである。それにも関わらず、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取ることなく到達余裕距離を進行した場合は、先頭側タグリーダー及びICタグ3のうちの何れかに故障等の異常が発生したことが想定される。そこで、この場合は、例えば異常発生音声を出力したり、異常発生ランプを点灯させるなどして、運転士に警告を報知する処理を行う。
【0055】
列車が到達余裕距離を進行するまでの間に先頭側タグリーダーがICタグ3からICタグ情報を読み取ると(B−3)、車上装置1は、先頭側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報を、出発前に管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査する(B−4)。すなわち、車上装置1は、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報に含まれるタグIDと、ICタグリスト情報に定められている次順のICタグ3のタグIDとを比較する。そして、タグIDが一致していると判定した場合は、読み取ったICタグ情報を記録する。他方、タグIDが一致しなかったと判定した場合は、車上装置1は、情報伝送系統に異常ありと判断し、この場合も異常時の処理を行う(B−5)。ICタグ3の故障等が考えられるためである。
【0056】
次いで、車上装置1は、再び列車の走行距離を監視し(B−6)、列車の編成長に所定距離分の余裕を持たせた編成長余裕距離だけ列車が進行するまでの間に、後尾側タグリーダーにより同じICタグ3からICタグ情報が読み取られたか否かを判定する。編成長余裕距離は、例えば編成長の1.2倍の距離を設定する。後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取る前に列車が編成長余裕距離を超過した場合、車上装置1は、情報伝送系統に異常が発生したものと判断し、異常時処理を行う(B−7)。
【0057】
情報伝送系統に異常がなければ、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取った後、編成長余裕距離を進行するまでの間に、後尾側タグリーダーが同じICタグ情報を読み取るはずである。それにも関わらず、後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取ることなく編成長余裕距離を進行した場合は、後尾側タグリーダーとICタグ3との何れかに故障等の異常が発生したことが想定される。従って、この場合は情報伝送系統に異常ありと判定し、異常時の処理を行う。例えば、車上装置1は、列車を徐々に減速させて停止させたり、情報伝送系統の異常を無線で管理装置5に通知するなどの処理を行う。異常時の処理への対応としては、運転士が、列車を次駅まで徐行運転させるなどの方策が考えられる。他の異常時の処理においても同様である。
【0058】
列車が編成長余裕距離を進行するまでの間に後尾側タグリーダーがICタグ3からICタグ情報を読み取ると(B−8)、車上装置1は、後尾側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報をICタグリスト情報と照査する(B−9)。そして、タグIDが一致していると判定した場合は、読み取ったICタグ情報を記録する。他方、タグIDが一致しなかったと判定した場合は、車上装置1は、情報伝送系統に異常ありと判断し、この場合も異常時の処理を行う(B−10)。
【0059】
照査によりタグIDが一致していたならば、自列車が当該ブロックに位置していることがわかる。例えば、ICタグ3が各ブロックの上り端部に設置されており、列車が上り方向に進行していたとする。この場合、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報について照査を行った結果、タグIDが一致したならば、列車が当該ICタグ3の設置ブロックの次のブロック(上り側の隣接ブロック)に進入しようとしていることがわかる。また、後尾側タグリーダーが読み取ったICタグ情報について照査を行った結果、タグIDが一致したならば、当該ICタグ3の設置ブロックから列車が進出しようとしていることがわかる。これは、自列車の在線位置を検出していることを意味する。
【0060】
上記の処理を繰り返しながら列車は進行する。そして、先頭側タグリーダーが新たなICタグ3からICタグ情報を読み取り、タグリスト情報と照査することで当該ICタグ3が直前着点ICタグであると判明した場合には、車上装置1は、直前着点ICタグから着点ICタグを通過した所定位置に至るまでの速度照査パターンを生成して(B−36)、当該速度照査パターンに従ったブレーキ制御の実行を開始する(B−37)。
【0061】
図6は、速度照査パターンの説明図である。図6において、横軸は列車の位置を示し、縦軸は列車の制限速度を示す。速度照査パターンは、例えば、直前着点ICタグでの列車の制限速度を“V1”とし、制限速度“V1”から緩やかに減少して着点ICタグの位置で制限速度が徐行速度として予め定められた“V2(<V1)”となり、着点ICタグから停止発動距離だけ後方の位置で制限速度が“0”となるようなパターンとして生成される。
【0062】
停止発動距離は、着点ICタグから終点までの距離を含み、終点を超えて列車が走行していると判断できる距離として定められる。車上装置1は、直前着点ICタグからICタグ情報を読み取ると、直前着点ICタグからの走行距離を監視する。そして、現在位置における制限速度を速度照査パターンから求め、現在の列車速度が当該制限速度以下であるかを随時比較する。そして、速度が制限速度を超過している場合は、速度を制限速度以下に落とすようにブレーキを制御する。
【0063】
従って、着点ICタグからICタグ情報を受信した位置(着点)において、列車の速度が徐行速度を超えている場合には徐行速度以下となるようにブレーキ制御がなされる。これにより、運転士は、確実に走行予定区間の終点で列車を停止させることができる。また、走行予定区間の終点を通過したとしても、停止発動距離に至ると停止制御が発動されて列車が停止するため、列車運行の安全性を確保することができる。
【0064】
このように、走行予定区間の走行中は、車上装置1(電波)→ICタグ3(ICタグ情報)→車上装置1の順番で情報伝送がループ状に行われる。つまり、ICタグ3と車上装置1との間で情報伝送の閉じたループ(第2のクローズドループ)が形成される。この第2のクローズドループによる情報伝送により、在線位置の検出が適切に行われる。また、ICタグ3からのICタグ情報の受信状況を常駐的に監視することで、情報伝送系統の異常発生を確実に検知し、列車運行の安全性を確保することができる。
【0065】
2−3.走行予定区間の終点到着時
図5は、列車が走行予定区間の終点に到着する際の処理手順の説明図である。列車が走行予定区間の終点が定められている「ロ駅」に到着すると、車上装置1は、走行した走行予定区間に係る転てつ機制御端末装置CR1と通信を行い、自列車IDを含む転てつ機PM1の解錠指示信号を転てつ機制御端末装置CR1に送信して、転てつ機PM1を解錠させる(C−1)。同様に、車上装置1は、転てつ機制御端末装置CR2と通信を行い、自列車IDを含む転てつ機PM2の解錠指示信号を転てつ機制御端末装置CR2に送信して、転てつ機PM2を解錠させる(C−1)。
【0066】
次いで、車上装置1は、走行予定区間の走行中に、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーが読み取った全てのICタグ情報を読取順と対応付けた読取ICタグ情報を、駅伝送装置7を介して管理装置5に送信する(C−2)。管理装置5は、車上装置1から読取ICタグ情報を受信すると、その内容をICタグリスト情報と照合する(C−3)。そして、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーの読取ICタグ情報のタグIDがICタグリスト情報のタグIDと全て一致し、且つ、順番も一致しているならば、管理装置5は、在線状態としていた走行予定区間を非在線状態として、走行予定区間の進路を開放する(C−4)。
【0067】
それに対して、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーの読取ICタグ情報のタグIDがICタグリスト情報のタグIDと一致しない、又は、順番が一致しない場合は、管理装置5は、情報伝送系統の異常発生を疑い、異常時の処理を行う。例えば、管理装置5は、駅係員や検査員に対して情報伝送系統の異常発生を報知して、情報伝送系統の検査を促す。
【0068】
このように、走行予定区間の終点到着時には、車上装置1(受信ICタグ情報)→管理装置5の順番で情報伝送がループ状に行われる。つまり、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の閉じたループ(第3のクローズドループ)が形成される。この第3のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の終点到着時における進路開放が確実に行われ、列車運行の安全性が確保される。
【0069】
3.機能構成
3−1.車上装置1の機能構成
図7は、車上装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。車上装置1は、例えば、処理部110と、第1のタグリーダー120と、第2のタグリーダー130と、管理装置用通信部140と、転てつ機用通信部150と、速度発電機160と、記憶部180とを備えて構成される。
【0070】
処理部110は、記憶部180に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って車上装置1を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有して構成される。
【0071】
第1のタグリーダー120及び第2のタグリーダー130は、先頭側車両及び後尾側車両にそれぞれ設置されるリーダー装置であり、ICタグ3から読み取ったICタグ情報を処理部110に随時出力する。
【0072】
管理装置用通信部140は、駅伝送装置7を介して管理装置5と通信を行うための通信装置である。また、転てつ機用通信部150は、転てつ機制御端末装置CRとの間で通信を行うための通信装置である。これらの通信には、公知の通信技術を適用可能であり、例えば、管理装置用通信部140と駅伝送装置7間の通信には誘導無線を用い、転てつ機用通信部150と転てつ機制御端末装置CR間の通信にはPHS(Personal Handy-phone System)システムを利用した通信等を適用できる。
【0073】
速度発電機160は、車軸の回転数に応じた電圧又はパルスを発生させて、列車の速度を計測する計測装置である。速度発電機160により計測された速度は処理部110に出力され、走行距離の算出や速度制御(ブレーキ制御)等に利用される。速度発電機160は、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置の一種である。また、電動機制御用等に別途に速度発電機が列車に備えられている場合には、その速度発電機を兼用することとしてよいことは勿論である。
【0074】
記憶部180は、処理部110が車上装置1を統括的に制御するための各種プログラムや各種データ等を記憶した記憶装置であり、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、ハードディスク、RAM(Random Access Memory)といった記憶装置を有して構成される。記憶部180には、例えば、車上制御プログラム181と、自列車ID182と、積算距離183と、走行予定区間ICタグリスト情報184と、第1のタグリーダー読取情報185と、第2のタグリーダー読取情報186と、速度照査パターン187と、編成長188とが記憶される。
【0075】
車上制御プログラム181は、処理部110により読み出され、車上制御処理(図14〜図17参照)として実行されるプログラムである。車上制御処理とは、処理部110が、上記の原理に従って、自列車の在線位置検出やブレーキ制御等の各種制御を実行する処理である。この車上制御処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0076】
自列車ID182は、各列車をユニークに識別するための識別情報(ID)のうち自列車に割り当てられた識別情報である。
【0077】
積算距離183は、速度発電機160により計測された速度と、ある基準時点からの経過時間とを用いて算出される自列車の累積走行距離である。積算距離183は、例えば、走行予定区間の始点(列車停止位置)に列車が停止している時点を基準に算出される。
【0078】
走行予定区間ICタグリスト情報184は、自列車の走行予定区間に含まれるICタグ3に係る情報がリスト化されたデータである。この走行予定区間ICタグリスト情報184は、車上装置1が駅伝送装置7を介して管理装置5から取得する情報であり、そのデータ構成例については後述する。
【0079】
第1のタグリーダー読取情報185は、第1のタグリーダー120によってICタグ3から読み取られたICタグ情報を、第1のICタグ情報,第2のICタグ情報,・・・と読み取り順に記録したデータである。同様に、第2のタグリーダー読取情報186は、第2のタグリーダー130によってICタグ3から読み取られたICタグ情報を読み取り順に記録したデータである。
【0080】
速度照査パターン187は、直前着点ICタグからの距離(位置)と制限速度との関係を定めたデータであり、例えば図6に示すような速度照査パターンが生成されて記憶される。
【0081】
編成長188は、列車の編成長であり、初期設定では固定値が記憶される。その後、列車が走行予定区間を走行中に、先頭側タグリーダーによるICタグ情報の読み取りタイミングにおける列車の積算距離と、後尾側タグリーダーによる同じICタグ情報の読み取りタイミングにおける列車の積算距離とから、編成長188が新たに算出されて更新される。
【0082】
3−2.ICタグ3の機能構成
図8は、ICタグ3の機能構成の一例を示す図である。ICタグ3は、例えば、アンテナ部310と、通信部320と、処理部330と、記憶部340と、電源部350とを備えて構成される。
【0083】
アンテナ部310は、車両に設置された第1及び第2のタグリーダー120,130との間で通信を実現するためのアンテナを有して構成される。ICタグ3は、いわゆるパッシブ型のICタグであるため、電源を内蔵していない。その代わりに、ICタグ3は、第1及び第2のタグリーダー120,130から送出される規定周波数の電波を利用して電磁誘導方式により電力を得る回路を内蔵している。アンテナ部310と電源部350とで、この電力生成回路が構成される。電源部350は、生成した電力の電圧を安定化させて、通信部320、処理部330及び記憶部340の電源として供給する。
【0084】
通信部320は、アンテナ部310を介して第1及び第2のタグリーダー120,130との間で非接触式の近距離無線通信を行うための通信装置である。
【0085】
処理部330は、ICタグ3の各部を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU等のプロセッサーを有して構成される。処理部330が実行する動作は予め記憶部340に記憶されたプログラムにより規定されている。具体的には、電源部350から電源が供給されて作動開始すると、ICタグ情報341を通信部320及びアンテナ部310を介して発信させる動作である。電源が供給されている限り、繰り返しICタグ情報341を発信させる。第1及び第2のタグリーダー120,130が、ICタグ情報341の読み取り(受信)をできるだけ早期且つ確実にするためである。
【0086】
記憶部340は、例えば、ROMやフラッシュROMといった不揮発性の記憶装置を有して構成され、自ICタグ3に係るICタグ情報341を記憶する。
【0087】
3−3.管理装置5の機能構成
図9は、管理装置5の機能構成の一例を示すブロック図である。管理装置5は、例えば、処理部510と、操作部520と、表示部530と、通信部540と、記憶部580とを備え、各部がバス590で接続された一種のコンピューターシステムである。
【0088】
処理部510は、記憶部580に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って管理装置5を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU等のプロセッサーを有して構成される。
【0089】
操作部520は、例えばキーボードやタッチパネル等により構成される入力装置であり、押下されたキーやアイコンの信号を処理部510に出力する。この操作部520の操作により、列車の運行管理を行うための各種データの入力等がなされる。
【0090】
表示部530は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、処理部510から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部530には、列車の運行管理に係る各種の情報等が表示される。
【0091】
通信部540は、駅伝送装置7との間でデータのやり取りを行うための通信装置であり、駅伝送装置7と通信接続される。通信形態は有線であっても無線であってもよい。
【0092】
記憶部580は、処理部510が管理装置5を統括的に制御するための各種プログラムや各種データ等を記憶した記憶装置である。記憶部580には、管理処理プログラム581と、ICタグ情報データベース(以下、「DB(Data Base)」と表記する。)582と、区間定義情報DB583と、複数の区間別ICタグリスト情報584と、複数の区間別進路鎖錠情報585とが記憶される。
【0093】
管理処理プログラム581は、処理部510により読み出され、管理処理(図14及び図17参照)として実行されるプログラムである。管理処理とは、処理部510が、上述した原理に従って進路構成や進路開放といった進路制御を行って、列車の運行を管理する処理である。この管理処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0094】
図10は、ICタグ情報DB582のデータ構成の一例を示す図である。ICタグ情報DB582は、ICタグ3に関する情報が蓄積されたデータベースであり、例えば、ICタグ3の設置位置5821と、当該ICタグ3の識別情報であるタグID5823とが対応付けて記憶されている。設置位置5821には、当該ICタグ3が設置されているブロックの識別情報であるブロックIDと、当該ICタグ3が当該ブロックの上り端部と下り端部との何れに設置されているかを示す端部種別とが含まれる。例えば、図10に示すICタグ情報DB582では、ブロックBL1の上り端部に設置されるICタグ3は、タグIDが“T1”のICタグ3であることが記憶されている。
【0095】
図11は、区間定義情報DB583のデータ構成の一例を示す図である。区間定義情報DB583は、単位区間を定義する情報が蓄積されたデータベースであり、例えば、単位区間の識別情報である区間ID5831と、上り及び下りの種別である上下識別5833と、列車がブロックを通過する順序をブロックIDの順番で示したブロック通過順5835とが対応付けて記憶されている。例えば、図11において、単位区間“SEC1”を上り方向に進行する列車が通過するブロックの順序は、“BL1→BL3→BL4→BL5→BL6”である。
【0096】
図12は、区間別ICタグリスト情報584のデータ構成の一例を示す図である。区間別ICタグリスト情報584は、上下方向の各単位区間について、当該単位区間に設置されているICタグ3のタグIDが走行順と対応付けられたタグリスト情報であり、例えば、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845とが対応付けて記憶されている。例えば、図12において、単位区間“SEC1”を上り方向に走行する場合、“T1,T3,T4,・・・”の順番にICタグ3が設置されていることが記憶されている。
【0097】
この区間別ICタグリスト情報584は、処理部510が、ICタグ情報DB582に定められたデータと、区間定義情報DB583に定められたデータとに基づいて、上下方向の各単位区間について個別に生成する。そして、運行中の各列車が駅に停車した際に、当該列車が次に走行する予定の単位区間(走行予定区間)に対応するICタグリスト情報が、走行予定区間ICタグリスト情報184として当該列車の車上装置1に提供される。
【0098】
図13は、区間別進路鎖錠情報585のデータ構成の一例を示す図である。区間別進路鎖錠情報585は、上下方向の各単位区間それぞれの進路鎖錠に関する情報であり、例えば、区間識別5851と、転てつ機鎖錠データ5853と、ブロック鎖錠データ5855とが記憶される。
【0099】
転てつ機鎖錠データ5853には、当該単位区間に設置された転てつ機PMの名称と、当該転てつ機PMの鎖錠有無と、当該転てつ機PMを鎖錠した列車の識別情報である鎖錠列車IDとが対応付けて記憶される。鎖錠有無及び鎖錠列車IDは、当該単位区間の列車の進行状況に応じて随時更新される。
【0100】
ブロック鎖錠データ5855には、当該単位区間に含まれるブロックの名称と、当該ブロックに係る進路鎖錠の有無と、当該ブロックを鎖錠した列車の識別情報である鎖錠列車IDとが対応付けて記憶される。進路鎖錠有無及び鎖錠列車IDは、当該単位区間の列車の進行状況に応じて随時更新される。なお、説明の簡明化のため、接近鎖錠/保留鎖錠については説明を省略する。
【0101】
4.処理の流れ
4−1.走行予定区間の始点出発時の処理
図14は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理と、管理装置5の処理部510が実行する管理処理とのうち、走行予定区間の始点出発時の処理を示したフローチャートである。図の左側に管理装置5の処理を、図の右側に車上装置1の処理をそれぞれ示す。
【0102】
最初に、管理装置5の処理部510は、進路構成指示を駅伝送装置7を介して車上装置1に送信する(ステップA1)。すると、車上装置1の処理部110は、転てつ機PMの転換鎖錠制御を行う(ステップB1)。そして、転てつ機PMの転換鎖錠が完了すると、鎖錠完了を管理装置5に通知する(ステップB3)。
【0103】
管理装置5の処理部510は、転てつ機PMの転換鎖錠により進路が開通するまで待機し(ステップA3;No)、進路が開通したならば(ステップA3;Yes)、記憶部580に記憶された区間別ICタグリスト情報584の中から走行予定区間に係るICタグリスト情報を選択し、走行予定区間ICタグリスト情報184として車上装置1に送信する(ステップA5)。
【0104】
車上装置1の処理部110は、管理装置5から走行予定区間ICタグリスト情報184を受信するまで待機し(ステップB5;No)、走行予定区間ICタグリスト情報184を受信したならば(ステップB5;Yes)、管理装置5に対して返信応答を行う(ステップB7)。
【0105】
管理装置5の処理部510は車上装置1から返信応答があるまで待機し(ステップA7;No)、返信応答があったならば(ステップA7;Yes)、進路構成完了として列車の進路を鎖錠する(ステップA9)。すなわち、走行予定区間に含まれる各転てつ機PMを論理鎖錠して走行予定区間に含まれる各ブロックを在線状態とし、記憶部580の区間別進路鎖錠情報585を更新する。
【0106】
そして、管理装置5の処理部510は、車上装置1に進行現示を指示した後(ステップA11)、走行予定区間の終点到着時の処理へと移行する。また、車上装置1の処理部110は管理装置5から進行現示の指示を受けると、車上信号機を進行現示とする(ステップB9)。そして、走行予定区間の走行時の処理へと移行する。
【0107】
4−2.走行予定区間の走行時の処理
図15及び図16は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理のうち、走行予定区間の走行時における処理を示すフローチャートである。処理部110は、先頭側タグリーダーと、後尾側タグリーダーとのそれぞれについて、ICタグ3からのICタグ情報の読み取り状況を常駐的に監視する。
【0108】
処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を読み取ったか否かを判定し(ステップC1)、読み取ったと判定した場合は(ステップC1;Yes)、読み取ったICタグ情報と、記憶部180に記憶された走行予定区間ICタグリスト情報184とを照査する(ステップC3)。そして、タグIDが一致したならば(ステップC5;Yes)、先頭側タグリーダーが読み取ったICタグ情報を、第1のタグリーダー読取情報185として記憶部180に記憶させる(ステップC7)。
【0109】
次いで、処理部110は、ステップC7で記憶させたICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離(自列車の走行方向に対応する距離データ)に基づいて、到達余裕距離を新たに算出して再設定する(ステップC8)。そして、処理部110は、現在の積算距離を先頭側積算距離として記憶部180に一時記憶する(ステップC9)。具体的には、列車が走行予定区間の始点を出発してから先頭側タグリーダーが今回ICタグ情報を読み取るまでの間に列車が走行した距離(先頭側積算距離)を、速度発電機160により計測された速度と、始点を出発してからの経過時間とを用いて算出して記憶部180に一時記憶する。
【0110】
その後、処理部110は、走行予定区間ICタグリスト情報184を参照し、ICタグ情報を受信したICタグ3が直前着点ICタグであるか否かを判定する(ステップC11)。そして、直線着点ICタグであると判定した場合は(ステップC11;Yes)、処理部110は、ステップC7で記憶させたICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離を参照して、速度照査パターン187を生成する(ステップC13)。
【0111】
その後、処理部110は、生成した速度照査パターン187を用いた列車の速度制御処理を開始する(ステップC15)。なお、速度照査パターンを用いた速度制御は、従来より保安装置として使用されているATS(Automatic Train Stop device)やATC(Automatic Train Control)における速度制御技術を同様に適用することができる。そのため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0112】
次いで、処理部110は、後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取ったか否かを判定し(ステップC17)、読み取ったと判定した場合は(ステップC17;Yes)、現在の積算距離を後尾側積算距離として記憶部180に一時記憶する(ステップC19)。具体的には、列車が走行予定区間の始点を出発してから後尾側タグリーダーが今回ICタグ情報を読み取るまでの間に列車が進行した距離(後尾側積算距離)を算出する。
【0113】
続けて、処理部110は、列車の編成長188を再設定する(ステップC21)。具体的には、ステップC19で一時記憶した後尾側積算距離と、ステップC9で一時記憶した先頭側積算距離との距離差を算出し、算出した距離差を列車の編成長188として新たに設定する。このように、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取る度に、列車の編成長を再設定する。そして、処理部110は、新たな編成長を用いて編成長余裕距離を新たに算出して、再設定する(ステップC22)。
【0114】
一方、ステップC17において後尾側タグリーダーがICタグ情報を読み取らなかったと判定した場合は(ステップC17;No)、処理部110は、列車が編成長余裕距離を進行したか否かを判定する(ステップC23)。そして、まだ進行していないと判定した場合は(ステップC23;No)、ステップC17に戻る。また、編成長余裕距離を進行したと判定した場合は(ステップC23;Yes)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC25)。
【0115】
異常時処理は、ステップC25の他に、ステップC37,C45でも実行され得る処理であり、例えば共通する処理とすることができる。具体的には、列車の乗務員(運転士や車掌)に向けて異常が発生した旨を報知する処理とし、例えば、運転台に設置された報知ランプのうち、異常と判定した理由に該当する報知ランプを点灯或いは点滅させたり、所定の音声を出力させる。また、報知のみにとどまらず、制動制御を行って列車を停止させたり所定速度以下での走行に制限させる制御を行うこととしてもよい。
【0116】
処理部110は、後尾側タグリーダーについても同様の処理を行う。すなわち、後尾側タグリーダーによりICタグ情報が読み取られたか否かを判定し(ステップC27)、読み取られたと判定した場合は(ステップC27;Yes)、当該ICタグ情報と走行予定区間ICタグリスト情報184とを照査する(ステップC29)。そして、タグIDが一致したならば(ステップC31;Yes)、当該ICタグ情報を第2のタグリーダー読取情報186として記憶部180に記憶させる(ステップC33)。
【0117】
その後、処理部110は、ステップC8と同様に、到達余裕距離を再設定する(ステップC34)。そして、先頭側タグリーダーが同じICタグ情報を読み取っていたか否かを判定し(ステップC35)、読み取っていたと判定した場合は(ステップC35;Yes)、ステップC17へと処理を移行する。また、読み取っていなかったと判定した場合は(ステップC35;No)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC37)。
【0118】
さて、ステップC1又はステップC27においてICタグ情報が読み取られなかったと判定した場合は(ステップC1;No又はステップC27;No)、処理部110は、列車が次ICタグ3までの到達余裕距離を超過したか否かを判定する(ステップC39)。そして、まだ超過していないと判定した場合は(ステップC39;No)、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0119】
また、到達余裕距離を超過したと判定した場合は(ステップC39;Yes)、処理部110は、乗務員(運転士、車掌)に対して警告を報知する(ステップC41)。報知としては、運転台に設けられた所定のランプを点灯させたり、表示装置に所定画面を表示させる処理などが考えられる。そして、処理部110は、次ICタグ3が直前着点ICタグであるか否かを判定し(ステップC43)、直前着点ICタグではないと判定した場合は(ステップC43;No)、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0120】
一方、次ICタグ3が直前着点ICタグであると判定した場合は(ステップC43;Yes)、処理部110は、乗務員(運転士、車掌)に対して列車の速度制御が不能である旨の警告を報知する(ステップC45)。次ICタグ3が直前着点ICタグである場合に、列車が到達余裕距離を超過したということは、速度照査パターンが生成されないことを意味するためである。従って、この場合は、速度制御が不能であることを警告する音声を出力したり、所定音声を出力するなどして、運転士に速度制御が不能であることを警告する。この警告を受けて、運転士は、列車の速度制御に一層注意することができる。
【0121】
なお、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーそれぞれについての照査処理(ステップC3、ステップC29)の結果、タグIDが一致しなかったと判定した場合は(ステップC5;No又はステップC31;No)、処理部110は、異常時処理を行う(ステップC45)。そして、処理部110は、ステップC1又はステップC27の対応するステップに戻る。
【0122】
4−3.走行予定区間の終点到着時の処理
図17は、車上装置1の処理部110が実行する車上制御処理と、管理装置5の処理部510が実行する管理処理とのうち、走行予定区間の終点到着時の処理を示したフローチャートである。図の左側に管理装置5の処理を、図の右側に車上装置1の処理をそれぞれ示す。
【0123】
車上装置1の処理部110は、列車が終点に到着するまで待機し(ステップE1;No)、到着したならば(ステップE1;Yes)、走行予定区間の走行中にタグリーダー120,130が読み取った第1及び第2のタグリーダー読取情報185,186を、駅伝送装置7を介して管理装置5に送信する(ステップE3)。終点到着の判定は、例えば、駅伝送装置7との間で通信が可能になったことをもって終点に到着したと判定したり、列車停止位置に地上子を配置しておき、その地上子と通信することで終点到着を判定するなど、公知の技術を適宜適用できる。そして、車上装置1の処理部110は、車上制御処理を終了する。
【0124】
管理装置5の処理部510は、車上装置1から第1及び第2のタグリーダー読取情報185,186を受信するまで待機し(ステップD1;No)、受信したならば(ステップD1;Yes)、記憶部580に記憶された当該走行予定区間のICタグリスト情報と照合する処理を行う(ステップD3)。この照合処理は、全てのタグIDが正しい順序で読み取られたか否かを判定する処理である。
【0125】
そして、照合結果がOKであれば(ステップD5;Yes)、管理装置5の処理部510は、当該走行予定区間の進路鎖錠を解錠し、記憶部580の区間別進路鎖錠情報585を更新した後(ステップD7)、管理処理を終了する。また、照合結果がNGである場合は(ステップD5;No)、管理装置の処理部510は、異常時の処理を行う(ステップD9)。
【0126】
5.作用効果
列車に搭載された車上装置1は、軌道に沿って設置されたICタグ3と非接触式の近距離無線通信を行って、自列車の在線位置を検出する。すなわち、車上装置1は、走行予定区間の軌道に沿って設置されたICタグ3の識別情報であるタグIDが列車の走行順と対応付けられたICタグリスト情報を、走行予定区間の始点出発時に管理装置5から取得する。走行予定区間の走行時は、先頭側車両及び後尾側車両に設置されたタグリーダー120,130によってICタグ3のICタグ情報が読み取られる。そして、車上装置1は、タグリーダー120,130により読み取られたICタグ情報を、管理装置5から取得したICタグリスト情報と照査することで、自列車が在線しているブロックを検知する。
【0127】
本実施形態では、各ブロックの境界にICタグ3を1つずつ設置することとした。これにより、車上装置1は、各ブロックを通過する際に、当該ブロックに設置されたICタグ3からICタグ情報を受信することになる。ICタグリスト情報には、列車の走行順とタグIDとが対応付けられている。そのため、車上装置1は、受信したICタグ情報に含まれるタグIDと、ICタグリスト情報に含まれるタグIDとを照査することで、正しい順序でICタグ情報を受信したか否かを判定することができる。そして、正しい順序でICタグ情報を受信したと判定したならば、当該ICタグ3の設置ブロックに列車が在線していると判断する。しかし、正しい順序でICタグ情報を受信しなかったと判定したならば、情報伝送系統に異常が発生したと判断する。
【0128】
また、ICタグ情報には、隣接するICタグ3までの距離情報である隣接タグ間距離が含まれている。車上装置1は、ICタグ3から受信したICタグ情報に含まれる隣接タグ間距離に一定の余裕を持たせた到達余裕距離内で、且つ、ICタグリスト情報に定められた順でタグリーダー120,130によりICタグ情報が読み取られたか否かを判断する。これにより、走行途中における情報伝送系統の異常発生の有無を判定する。列車が到達余裕距離を進行するまでにタグリーダー120,130によりICタグ情報が読み取られないならば、タグリーダー120,130とICタグ3との何れかに故障等が発生した可能性が高い。そのため、この場合には異常時の処理を行うこととし、列車運行の安全性を確保する。
【0129】
また、本実施形態では情報伝送をより確実に行うため、先頭側車両と後尾側車両とにそれぞれタグリーダー120,130を設置した。一方のタグリーダーがICタグ3のICタグ情報を読み取ったとしても、他方のタグリーダーが同じICタグ3のICタグ情報を読み取らないのであれば、情報伝送系統の異常が疑われる。そのため、この場合もフェールセーフの原則に則って異常時の処理を行う。
【0130】
走行予定区間の始点出発時は、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の第1のクローズドループが形成され、この第1のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の進路が構成される。走行予定区間の走行時は、車上装置1とICタグ3との間で情報伝送の第2のクローズドループが形成され、この第2のクローズドループによる情報伝送により、在線位置検出やブレーキのバックアップ制御、情報伝送系統の異常検知等が行われる。走行予定区間の終点到着時は、車上装置1と管理装置5との間で情報伝送の第3のクローズドループが形成され、この第3のクローズドループによる情報伝送により、走行予定区間の進路が開放される。このように車上装置1と管理装置5との間、車上装置1とICタグ3との間で情報伝送をループ状に行うことで、装置間でお互いの状態を監視・把握することが可能となり、情報伝送の健全性を担保することができる。
【0131】
6.変形例
本発明を適用可能な実施形態は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明するが、上記の実施形態と同一の構成要素やデータについては同一の符号を付して説明を省略し、上記の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0132】
6−1.線区
上記の実施形態では、本発明を閑散線区に適用した場合の在線位置検出システムを例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしも閑散線区にのみ適用可能というわけではなく、都市部の線区についても同様に適用可能であることは勿論である。その場合、単位区間をより狭めると好適である。単位区間を狭めた場合に、単位区間の終点が列車停止位置とならないのであれば、当該単位区間の最も終点寄りに設置されているICタグの位置(すなわち着点)を終点とすればよい。また、この場合は、着点で制限速度が“0”となるように速度照査パターンを生成するとよい。
【0133】
6−2.小型無線タグ
上記の実施形態では、小型無線タグとして、非接触式の近距離無線通信を行うためのパッシブ型のICタグ(パッシブタグ)を例に挙げて説明したが、小型無線タグの種類はこれに限られない。例えば、アクティブ型のICタグ(アクティブタグ)を用いてもよいし、パッシブ型とアクティブ型とを組み合わせたセミアクティブ型のICタグ(セミアクティブタグ)を用いてもよい。
【0134】
また、アクティブ型のうちの電磁誘導方式で動作するICタグではなく、電波方式で動作するICタグを用いてもよい。何れの種類及び形式の小型無線タグを用いるにせよ、ICタグ3から車上装置1にICタグ情報を提供可能なシステムとすれば、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0135】
6−3.タグリーダー
上記の実施形態では、列車と先頭側車両と後尾側車両との2箇所にタグリーダーを設置してICタグ情報を読み取るものとして説明した。しかし、タグリーダーの設置位置及び設置数は適宜変更可能である。例えば、タグリーダーを先頭側車両或いは後尾側車両の1箇所だけに設置することとしてもよい。
【0136】
6−4.計測装置
上記の実施形態では、走行距離相当値を計測する計測装置として、列車の速度を計測する速度発電機を例に挙げて説明した。すなわち、速度発電機の計測値を用いて列車の走行距離を算出し、到達余裕距離内でICタグリスト情報に従った順番でタグリーダーによりICタグ情報が読み取られたか否かに基づいて、情報伝送系統の異常発生有無を判定した。この場合、速度発電機に限らず、走行距離又は走行距離相当値を計測する任意の計測装置の計測値を用いて、同様に情報伝送系統の異常発生有無を判定できる。
【0137】
例えば、加速度センサーやジャイロセンサー等の慣性センサーを具備するセンサー装置を列車に搭載しておき、このセンサー装置の計測値から列車の走行距離を算出して、情報伝送系統の異常発生有無を判定することとしてもよい。また、各種のセンサーの計測値を利用して走行距離を計測する公知の走行距離計測装置を列車に搭載し、走行距離計測装置から出力される走行距離を用いて情報伝送系統の異常発生有無を判定することとしてもよい。
【0138】
6−5.ICタグ情報
ICタグ3に記憶させておくICタグ情報の構成は、適宜設定変更可能である。例えば、図18に示すように、タグIDが格納されたID部と、チェック符号が格納されたチェック符号部とのデータ列で構成される第2のICタグ情報をICタグ3に記憶させることとしてもよい。図2のICタグ情報と異なるのは、第2のICタグ情報には隣接タグ間距離部が含まれないことである。
【0139】
この場合、車上装置1は、ICタグ3からではなく、管理装置5から隣接タグ間距離を取得することとすればよい。具体的には、管理装置5が、図19に示すような第2の区間別ICタグリスト情報584Bを上下方向の単位区間別に生成する。第2の区間別ICタグリスト情報584Bには、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845と、隣接タグ間距離5847とが対応付けて記憶されている。そして、列車が走行予定区間を進行する前に、管理装置5が、当該走行予定区間に係る第2の区間別ICタグリスト情報584Bを車上装置1に送信・提供する。
【0140】
この場合、車上装置1は、管理装置5から取得した第2の区間別ICタグリスト情報584Bに含まれる隣接タグ間距離に基づいて到達余裕距離を設定する。そして、設定した到達余裕距離内で、第2の区間別ICタグリスト情報584Bに従った順番でICタグ情報が読み取られたか否かを判定することで、情報伝送系統の異常の発生有無を判定する。
【0141】
6−6.チェックイン・チェックアウト方式
在線地点の検知単位区間であるブロックの境界にICタグ3を少なくとも2つずつ設置し、チェックイン・チェックアウト方式で在線位置を検出するシステムを構成することも可能である。
【0142】
図20は、この場合に管理装置5が図10のICタグ情報DB582の代わりに記憶部580に記憶する第3のICタグ情報DB582Cのデータ構成の一例を示す図である。第3のICタグ情報DB582Cには、ICタグ3の設置位置5821と、タグID5823とが対応付けて記憶されている。第3のICタグ情報DB582Cでは、各ブロックIDのブロックそれぞれについて、上り端部及び下り端部にICタグ3が1つずつ設置される。
【0143】
図21は、この場合に管理装置5が図12の区間別ICタグリスト情報584の代わりに作成する第3の区間別ICタグリスト情報584Cのデータ構成の一例を示す図である。第3の区間別ICタグリスト情報584Cには、区間識別5841の他、走行予定区間におけるブロックの通過順に、ブロックの識別情報(ID)であるブロックID5842と、当該ブロックに設置されているICタグ3のタグID5845と、当該ICタグ3の発点・着点の種別を示す発着種別5848とが対応付けて記憶されている。
【0144】
この場合も、車上装置1の処理部110は、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーにより読み取られたICタグ情報を、上記の第3の区間別ICタグリスト情報584Cと照査することで、正しい順序でICタグ情報が読み取られたか否かを判定することができる。なお、在線位置検出やブレーキのバックアップ制御、情報伝送系統の異常検知等の各種処理は上記の実施形態と同様に行うことができる。
【0145】
図22は、各ブロックの始端部と終端部とにICタグ3(3a,3b)を1つずつ設置した場合の説明図である。図22では、列車が左方向から右方向に進行する場合として図示している。ここでは、列車が現在位置しているブロックを現ブロックとし、列車が次に進入するブロックを次ブロックとして説明する。
【0146】
先頭側タグリーダーが現ブロックの終端部のICタグ3bからICタグ情報を読み取ると、車上装置1は、列車の現ブロックからの進出を検知する(図22(A))。続けて、先頭側タグリーダーが次ブロックの始端部のICタグ3aからICタグ情報を読み取ることで、車上装置1は、列車の次ブロックへの進入を検知する。この場合、車上装置1は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信した順序を、第3の区間別ICタグリスト情報584Cを参照して判定する。そして、受信順序が正しければ、列車の進行方向を特定するとともに、列車の次ブロックへの進入を確定する(図22(B))。
【0147】
その後、後尾側タグリーダーがICタグ3bからICタグ情報を読み取ると、車上装置1は、列車の現ブロックからの進出を検知する(図22(C))。続けて、後尾側タグリーダーがICタグ3aからICタグ情報を読み取ることで、車上装置1は、列車の次ブロックへの進入を検知する。この場合、車上装置1は、後尾側タグリーダーがICタグ情報を受信した順序を、第3の区間別ICタグリスト情報584Cを参照して判定する。そして、受信順序が正しければ、列車の進行方向を特定するとともに、列車の現ブロックからの進出を確定する(図22(D))。
【0148】
このチェックイン・チェックアウト方式では、先頭側タグリーダー及び後尾側タグリーダーが、ブロックの境界に少なくとも2つずつ設置されたICタグ3から連続的にICタグ情報を受信する。そのため、各ブロックの境界に1つずつICタグ3を設置する場合と比べて、情報伝送をより確実に行うことができる。なお、ICタグ3は少なくとも2つずつ設置すればよく、3つ以上のICタグ3を設置する場合も同様である。
【0149】
6−7.踏切制御システム
車上装置1がICタグ3から受信したICタグ情報に基づいて、踏切の制御を行うシステム(踏切制御システム)を構成することも可能である。
【0150】
図23は、この場合に管理装置5が図10のICタグ情報DB582の代わりに記憶部580に記憶する第4のICタグ情報DB582Dのデータ構成の一例を示す図である。第4のICタグ情報DB582Dには、ICタグ3の設置位置5821と、タグID5823と、複数の制御命令5825(制御命令1,制御命令2,・・・)とが対応付けて記憶されている。制御命令5825には、当該制御命令による制御の実行条件と制御の内容とが定められている。
【0151】
例えば、図23の第4のICタグ情報DB582Dにおいては、ブロックとしてBL1〜BL6が定められているが、このうちのブロックBL4に踏切CR1が設置されているものとする。この場合は、踏切CR1の制御を実現するために、例えばブロックBL4の前後のブロックに、踏切CR1を制御するための制御命令5825をそれぞれ記憶させておけばよい。
【0152】
例えば、ブロックBL3については、制御命令1として、列車の上り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を開始させる制御内容を定めておき、制御命令2として、列車の下り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を停止させる制御内容を定めておく。また、ブロックBL5については、制御命令1として、列車の上り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を停止させる制御内容を定めておき、制御命令2として、列車の下り方向への進行を実行条件として踏切CR1の警報を開始させる制御内容を定めておく。
【0153】
図24は、この場合に管理装置5が図12の区間別ICタグリスト情報584の代わりに作成する第4の区間別ICタグリスト情報584Dのデータ構成の一例を示す図である。第4の区間別ICタグリスト情報584Dには、区間識別5841と、走行順5843と、タグID5845と、制御命令5849とが対応付けて記憶されている。制御命令5849には、図23の第4のICタグ情報DB582Dに定められた制御命令5825のうち、当該区間の区間識別5841に対応する制御命令5825が記憶される。
【0154】
車上装置1は、走行予定区間の出発前に、当該走行予定区間に係る第4の区間別ICタグリスト情報584Dを管理装置5から取得する。そして、走行予定区間の走行中にICタグ3からICタグ情報を受信すると、当該ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査する。そして、当該ICタグ3に制御命令5849が定められている場合は、その制御内容に従った制御を実行する。
【0155】
図25は、この場合の踏切制御の説明図であり、列車が左方向から右方向に進行する場合を図示している。踏切には、車上装置1との間で無線通信を行う通信部を備え、遮断機や警報を制御する踏切制御装置が設置されている。また、車上装置1には、踏切制御装置との間で無線通信を行う通信装置が更に備えられている。
【0156】
踏切CR1が設置されたブロックの手前のブロックに列車が差し掛かると、先頭側タグリーダーが当該ブロックのICタグ3のICタグ情報を読み取る。車上装置1は、ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査し、踏切CR1の警報開始の制御命令が対応付けられていると判断する。この場合、車上装置1は、踏切の警報開始を指示する信号(以下、「踏切警報開始指示信号」という。)を踏切CR1の制御装置に送信する。踏切制御装置は、車上装置1から踏切警報開始指示信号を受信すると、踏切CR1の警報を開始させるとともに、遮断機を下ろすように制御する(図25(A))。
【0157】
列車が踏切CR1を通過し、1ブロック離隔したブロックに差し掛かると、先頭側タグリーダーが当該ブロックのICタグ3からICタグ情報を読み取る。車上装置1は、当該ICタグ情報を第4の区間別ICタグリスト情報584Dと照査し、踏切CR1の警報停止の制御命令が対応付けられていると判断する。この場合、車上装置1は、踏切の警報停止を指示する信号(以下、「踏切警報停止指示信号」という。)を、踏切CR1の制御装置に送信する。踏切制御装置は、車上装置1から踏切警報停止指示信号を受信すると、踏切CR1の警報を停止させるとともに、遮断機を上げるように制御する(図25(B))。
【0158】
図26は、この場合に車上装置1の処理部110が走行中に実行する処理の一部を部分的に抜き出したフローチャートである。図15のフローチャートのステップC5の後、処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信したICタグ3が、踏切の警報開始を指示するICタグ(以下、「踏切警報開始指示タグ」という。)であるか否かを判定する(ステップF1)。そして、踏切警報開始指示タグであると判定した場合は(ステップF1;Yes)、踏切警報開始指示信号を踏切制御装置に送信する(ステップF3)。
【0159】
次いで、処理部110は、先頭側タグリーダーがICタグ情報を受信したICタグ3が、踏切の警報停止を指示するICタグ(以下、「踏切警報停止指示タグ」という。)であるか否かを判定する(ステップF5)。そして、踏切警報停止指示タグであると判定した場合は(ステップF5;Yes)、踏切警報停止指示信号を踏切制御装置に送信する(ステップF7)。そして、処理部110は、図15のステップC7へと処理を移行する。
【0160】
一方、ステップF1において踏切警報開始指示タグではないと判定した場合は(ステップF1;No)、処理部110は、ステップF5へと処理を移行する。また、ステップF5において踏切警報停止指示タグではないと判定した場合は(ステップF5;No)、処理部110は、図15のステップC7へと処理を移行する。
【0161】
また、この場合の処理において、次ICタグが踏切警報開始指示タグであるにも関わらず、次ICタグからICタグ情報を読み取ることなく列車が到達余裕距離を超過してしまうと、車上装置1は制御命令を取得することができず、踏切制御装置に警報開始を指示することができなくなる。この場合は、踏切において事故が発生する危険性が生ずることになる。
【0162】
そこで、次ICタグが踏切警報開始指示タグである場合において、図16のステップC39で列車が到達余裕距離を超過したと判定した場合は(ステップC39;Yes)、処理部110は、列車が踏切に接近していることを運転士に警告するとともに、例えば列車の速度を所定速度(例えば時速5km)以下とするように列車を制動制御するなどして、列車運行の安全性を確保することとすればよい。
【0163】
6−8.カーブにおける減速制御
線路が大きくカーブする部分では、カーブの手前で列車の速度を十分に減速しなければ、脱線等の大事故に繋がる危険性がある。そこで、カーブにおいて速度を所定速度以下に制限(制動)させる制御命令を定めておき、この制御命令に従って列車を制動させる制御を行ってもよい。
【0164】
具体的には、カーブの手前のブロックに設置されたICタグ3のICタグ情報に速度制限用の制御命令を埋め込んでおいてもよいし、管理装置5から提供されるICタグリスト情報(図23の第4のICタグ情報DB582D及び図24の第4の区間別ICタグリスト情報584D)のうちの当該ICタグ3に対応する制御命令として速度制限用の制御内容を定めておくこととしてもよい。何れにせよ、車上装置1の処理部110は、カーブの手前のブロックに設置されたICタグ3からICタグ情報を受信した場合に、当該ICタグ3に対応付けられた制御命令に従って列車を制動制御することができる。勿論、この場合において、速度照査パターンを生成して速度制限をかけることとしてもよい。
【0165】
6−9.異常発生判定
列車は高速走行しているため、タグリーダーによるICタグ情報の読み取りに失敗することも当然想定される。そこで、情報伝送に一定の許容度を持たせて情報伝送系統の異常発生有無を判定してもよい。
【0166】
例えば、先頭側タグリーダーと後尾側タグリーダーとの何れか一方のタグリーダーの読み取りが成功すれば、他方のタグリーダーが読み取りに失敗したとしても、情報伝送系統に異常なしと判定することとしてもよい。また、上記のチェックイン・チェックアウト方式において、各ブロックの境界に少なくとも2つずつ設置されるICタグのうち、1つのICタグからのICタグ情報の読み取りに失敗したとしても、他のICタグからのICタグ情報の読み取りに成功すれば、情報伝送系統に異常なしと判定することとしてもよい。
【0167】
6−10.転てつ機の制御
上記の実施形態では、車上装置1から転てつ機制御端末装置CRに対して指示信号を送信することで、転てつ機PMの転換・鎖錠や解錠の制御指示を車上装置1が行うものとして説明した。しかし、転てつ機PMへの制御指示は車上装置1が行うことに限らず、管理装置5が行うこととしてもよい。
【0168】
この場合、走行予定区間の始点出発時においては、管理装置5が駅伝送装置7を介して転てつ機制御端末装置CRに転てつ機PMの転換・鎖錠制御の指示信号を送信して、転てつ機PMの転換・鎖錠を行えばよい。また、走行予定区間の終点到着時においては、管理装置5が駅伝送装置7を介して転てつ機制御端末装置CRに転てつ機PMの解錠制御の指示信号を送信して、転てつ機PMの解錠を行えばよい。
【0169】
6−11.発点・着点と始点・終点
列車停止位置を始点/終点として説明したが、列車停止位置にICタグを設置することとすれば、始点/終点はそれぞれ発点/着点とすることが可能である。また、停車する駅の列車停止位置間を単位区間と定めたが、単位区間は任意に設定することが可能である。そのため、単位区間の区切りをブロックの区切りとしてもよい。この場合も、始点/終点はそれぞれ発点/着点となる。
【符号の説明】
【0170】
1000 在線位置検出システム
1 車上装置
110 処理部
120 第1のタグリーダー
130 第2のタグリーダー
140 管理装置用通信部
150 転てつ機用通信部
160 速度発電機
180 記憶部
3 ICタグ
310 アンテナ部
320 通信部
330 処理部
340 記憶部
350 電源部
5 管理装置
510 処理部
520 操作部
530 表示部
540 通信部
580 記憶部
590 バス
7 駅伝送装置
PM 転てつ機
CR 転てつ機制御端末装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車上装置が搭載された自列車の在線位置を当該車上装置が検出する在線位置検出方法であって、
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得ステップと、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出ステップと、
を含む在線位置検出方法。
【請求項2】
隣接する前記小型無線タグ間の距離である隣接距離を取得する隣接距離取得ステップと、
前記隣接距離取得ステップで取得された隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離内で、前記タグリスト情報に従った順番で前記識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値を用いて判定することで、前記車上装置と前記小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常の発生有無を判定する車上タグ間伝送系判定ステップと、
を含む請求項1に記載の在線位置検出方法。
【請求項3】
前記小型無線タグには、隣接する小型無線タグまでの前記隣接距離が記憶されており、
前記隣接距離取得ステップは、前記読取ステップにおいて前記小型無線タグから前記識別情報を読み取る際に、当該小型無線タグに記憶された前記隣接距離を読み取って取得するステップである、
請求項2に記載の在線位置検出方法。
【請求項4】
在線地点の検知単位区間である検知ブロックの境界に前記小型無線タグが少なくとも2つずつ設置されており、
前記車上装置は前記自列車の先頭側及び後尾側の2箇所に設けられた前記小型無線タグと通信を行う通信アンテナを有し、
前記走行予定区間は連続する複数の前記検知ブロックで構成され、
前記位置検出ステップは、前記読取ステップで読み取られた識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するステップを含む、
請求項1〜3の何れか一項に記載の在線位置検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の在線位置検出方法を実行する列車の車上装置が実行するブレーキ制御方法であって、
前記走行予定区間の着点と、当該着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する着点到達距離取得ステップと、
前記読取ステップで読み取った識別情報が前記特定小型無線タグの識別情報である場合に、前記着点到達距離と、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターンを生成して、ブレーキのバックアップ制御を行うブレーキ制御ステップと、
を含むブレーキ制御方法。
【請求項6】
前記タグリスト情報を記憶するとともに列車の進路構成を行う管理装置が、請求項1〜4の何れか一項に記載の在線位置検出方法又は請求項5に記載のブレーキ制御方法を実行する列車の車上装置との間で通信を行って当該列車の進路を制御する進路制御方法であって、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定ステップと、
前記走行予定区間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信ステップと、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定ステップで設定した進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了ステップと、
を含む進路制御方法。
【請求項7】
前記走行予定区間の走行後に前記車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った前記識別情報を受信する識別情報受信ステップと、
前記識別情報受信ステップにより前記識別情報を受信した場合に、在線状態としていた前記走行予定区間を非在線状態とする進路開放ステップと、
を更に含む請求項6に記載の進路制御方法。
【請求項8】
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得手段と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出手段と、
を備えた車上装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車上装置との間で通信を行って列車の進路を制御する管理装置であって、
前記タグリスト情報を記憶する記憶手段と、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定手段と、
前記走行予定空間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信手段と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定手段により設定された進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了手段と、
を備えた管理装置。
【請求項1】
車上装置が搭載された自列車の在線位置を当該車上装置が検出する在線位置検出方法であって、
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得ステップと、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取ステップと、
前記読取ステップで読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出ステップと、
を含む在線位置検出方法。
【請求項2】
隣接する前記小型無線タグ間の距離である隣接距離を取得する隣接距離取得ステップと、
前記隣接距離取得ステップで取得された隣接距離に所定の余裕を持たせた余裕距離内で、前記タグリスト情報に従った順番で前記識別情報が読み取られたか否かを、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値を用いて判定することで、前記車上装置と前記小型無線タグとで構成される情報伝送系統の異常の発生有無を判定する車上タグ間伝送系判定ステップと、
を含む請求項1に記載の在線位置検出方法。
【請求項3】
前記小型無線タグには、隣接する小型無線タグまでの前記隣接距離が記憶されており、
前記隣接距離取得ステップは、前記読取ステップにおいて前記小型無線タグから前記識別情報を読み取る際に、当該小型無線タグに記憶された前記隣接距離を読み取って取得するステップである、
請求項2に記載の在線位置検出方法。
【請求項4】
在線地点の検知単位区間である検知ブロックの境界に前記小型無線タグが少なくとも2つずつ設置されており、
前記車上装置は前記自列車の先頭側及び後尾側の2箇所に設けられた前記小型無線タグと通信を行う通信アンテナを有し、
前記走行予定区間は連続する複数の前記検知ブロックで構成され、
前記位置検出ステップは、前記読取ステップで読み取られた識別情報と、当該識別情報を読み取った通信アンテナが先頭側か後尾側かに基づき、チェックイン・チェックアウト方式で自列車が位置する検知ブロックを検出するステップを含む、
請求項1〜3の何れか一項に記載の在線位置検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の在線位置検出方法を実行する列車の車上装置が実行するブレーキ制御方法であって、
前記走行予定区間の着点と、当該着点までの距離を明示するために特定された特定小型無線タグ間の距離である着点到達距離を取得する着点到達距離取得ステップと、
前記読取ステップで読み取った識別情報が前記特定小型無線タグの識別情報である場合に、前記着点到達距離と、走行距離又は走行距離相当値を計測する計測装置により計測されている計測値と、現在の走行速度とを用いて速度照査パターンを生成して、ブレーキのバックアップ制御を行うブレーキ制御ステップと、
を含むブレーキ制御方法。
【請求項6】
前記タグリスト情報を記憶するとともに列車の進路構成を行う管理装置が、請求項1〜4の何れか一項に記載の在線位置検出方法又は請求項5に記載のブレーキ制御方法を実行する列車の車上装置との間で通信を行って当該列車の進路を制御する進路制御方法であって、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定ステップと、
前記走行予定区間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信ステップと、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定ステップで設定した進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了ステップと、
を含む進路制御方法。
【請求項7】
前記走行予定区間の走行後に前記車上装置から、当該走行予定区間の走行中に読み取った前記識別情報を受信する識別情報受信ステップと、
前記識別情報受信ステップにより前記識別情報を受信した場合に、在線状態としていた前記走行予定区間を非在線状態とする進路開放ステップと、
を更に含む請求項6に記載の進路制御方法。
【請求項8】
識別情報が記憶された小型無線タグが軌道に沿って設置された当該軌道のうち、自列車の走行予定区間に設置されている小型無線タグの識別情報が走行順と対応付けられたタグリスト情報を取得する取得手段と、
自列車の走行中に前記小型無線タグと通信を行って当該小型無線タグに記憶された識別情報を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた識別情報を、前記タグリスト情報と照査することで自列車の在線位置を検出する位置検出手段と、
を備えた車上装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車上装置との間で通信を行って列車の進路を制御する管理装置であって、
前記タグリスト情報を記憶する記憶手段と、
前記走行予定区間に対して進路の設定を行う進路設定手段と、
前記走行予定空間に係る前記タグリスト情報を前記車上装置に送信する送信手段と、
前記車上装置から前記タグリスト情報の受信完了信号を受信した場合に、前記進路設定手段により設定された進路の構成を完了として前記走行予定区間を在線状態とする進路構成完了手段と、
を備えた管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−66756(P2012−66756A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214785(P2010−214785)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】
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