説明

地上デジタル放送受信チューナ

【課題】 回路規模を小さくして小型化を図るとともに、簡単な操作によって選局できるようにする。
【解決手段】 UHF帯のデジタルテレビジョン信号を第1の中間周波信号に直交変換する第1の混合器26、27と、VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF帯に周波数変換する第二の混合器30とを備え、UHF帯に変換されたVHF帯のテレビジョン信号を第1の混合器26、27に入力すると共に第1の混合器26、27によって第1の中間周波信号に直交変換することで、直交変換の系統を1つにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地上デジタル放送受信チューナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地上デジタル放送受信チューナを図3に示す。図3において、アンテナ1で受信されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号とUHF帯のデジタルテレビジョン信号とは分波器2によって分離され、VHF帯のデジタルテレビジョン信号はVHFバンドパスフィルタ3によって選択され、VHF増幅器4を介して後段の二つの混合器5、6に入力される。
【0003】
混合器5及び6には位相が直交した局部発振信号LO/I、LO/Qがそれぞれ供給される。各混合器5、6に入力されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号は直交変換され、位相が直交するベースバンド信号(I信号、Q信号)が出力される。各ベースバンド信号はそれぞれIFバンドパスフィルタ7、8を介してA/D変換器9、10によってデジタル信号に変換される。
【0004】
同様に、分波器2によって分離されたUHF帯のデジタルテレビジョン信号はUHFバンドパスフィルタ11によって選択され、UHF増幅器12を介して二つの混合器13、14に入力される。混合器13及び14には位相が直交した局部発振信号LO/I、LO/Qがそれぞれ供給される。各混合器13、14に入力されたUHF帯のデジタルテレビジョン信号は直交変換され、位相が直交するベースバンド信号(I信号、Q信号)が出力される。各ベースバンド信号はそれぞれIFバンドパスフィルタ15、16を介してA/D変換器17、18によってデジタル信号に変換される。
【0005】
A/D変換器9から出力されたI信号と、A/D変換器17から出力されたI信号とは第一の切替回路19に入力され、A/D変換器10から出力されたQ信号と、A/D変換器18から出力されたQ信号とは第二の切替回路20に入力される。第一及び第二の切替回路19、20は局部発振部21から出力されるバンド切替信号BSによって連動し、VHF信号に基づくI信号及びQ信号を出力するか又はUHF信号に基づくI信号及びQ信号を出力するように切り替えられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
【特許文献1】特開2005−064764号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のデジタル放送受信チューナでは、UHF帯のデジタルテレビジョン信号を直交変換してA/D変換するまでの構成とVHF帯のデジタルテレビジョン信号を直交変換してA/D変換するまでの構成とが独立していたので、全体の回路規模が大きくなり、携帯電話機等に使用するには不向きであった。
【0008】
本発明は、回路規模を小さくして小型化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の解決手段として、UHF帯のデジタルテレビジョン信号を第1の中間周波信号に直交変換する第1の混合器と、VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF帯に周波数変換する第二の混合器とを備え、UHF帯に変換された前記VHF帯のテレビジョン信号を前記第1の混合器に入力すると共に前記第1の中間周波信号に直交変換した。
【0010】
また、第2の解決手段として、前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF放送帯の下端側に隣接した帯域に変換した。
【0011】
また、第3の解決手段として、前記第1の混合器に局部発振信号を供給するための発振器を設け、前記発振器から出力される発振信号を1/2に分周するするための第1の分周器を介して前記第1の混合器に供給し、前記第1の分周器によって分周された発振信号をさらに1/2に分周するための第2の分周器を介して前記第2の混合器に供給した。
【0012】
また、第4の解決手段として、前記UHF帯のデジタルテレビジョン信号と前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号とが入力される分波器を設け、分波された前記UHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記第1の混合器に入力し、分波された前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記第2の混合器に入力した。
【0013】
また、第5の解決手段として、前記分波器と前記第1の混合器との間に可変同調回路を設け、UHF帯に変換されて前記第2の混合器から出力される前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記可変同調回路を介して前記第1の混合器に入力した。
【0014】
また、第6の解決手段として、前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号は特定チャンネルに配列されており、前記分波器と前記第2の混合器との間に前記特定チャンネルを通過するバンドパスフィルタを設けた。
【0015】
また、第7の解決手段として、前記第1の中間周波信号を第2の中間周波信号に直交変換する第3の混合器と、前記発振器を制御するPLL回路と、前記PLL回路に基準信号を供給する基準発振器とを設け、前記基準信号を1/2に分周して前記第3の混合器に供給した。
【発明の効果】
【0016】
第1の解決手段によれば、UHF帯のデジタルテレビジョン信号を第1の中間周波信号に直交変換する第1の混合器と、VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF帯に周波数変換する第二の混合器とを備え、UHF帯に変換されたVHF帯のテレビジョン信号を第1の混合器に入力すると共に第1の中間周波信号に直交変換したので、UHF帯のデジタルテレビジョン信号とVHF帯のデジタルテレビジョン信号とを同じ混合器によって中間周波信号に直交変換でき、構成が簡単となり、回路規模を小さくできる。
【0017】
また、第2の解決手段によれば、VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF放送帯の下端側に隣接した帯域に変換したので、UHF帯のデジタルテレビジョン信号とVHF帯のデジタルテレビジョン信号とを切り替えることなく受信できる。
【0018】
また、第3の解決手段によれば、第1の混合器に局部発振信号を供給するための発振器を設け、発振器から出力される発振信号を1/2に分周するするための第1の分周器を介して第1の混合器に供給し、第1の分周器によって分周された発振信号をさらに1/2に分周するための第2の分周器を介して第2の混合器に供給したので、共通の発振器を使用してUHF帯のデジタルテレビジョン信号とVHF帯のデジタルテレビジョン信号とを受信できる。
【0019】
また、第4の解決手段によれば、UHF帯のデジタルテレビジョン信号とVHF帯のデジタルテレビジョン信号とが入力される分波器を設け、分波されたUHF帯のデジタルテレビジョン信号を記第1の混合器に入力し、分波されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号を第2の混合器に入力したので、入力系統を1つにすることができる。
【0020】
また、第5の解決手段によれば、分波器と第1の混合器との間に可変同調回路を設け、UHF帯に変換されて第2の混合器から出力されるVHF帯のデジタルテレビジョン信号を可変同調回路を介して第1の混合器に入力したので、可変同調回路によってUHF帯のデジタルテレビジョン信号とVHF帯のデジタルテレビジョン信号とを選局できる。
【0021】
また、第6の解決手段によれば、VHF帯のデジタルテレビジョン信号は特定チャンネルに配列されており、分波器と第2の混合器との間に特定チャンネルを通過するバンドパスフィルタを設けたので、VHF帯のデジタルテレビジョン信号以外の信号を除去できる。
【0022】
また、第7の解決手段によれば、第1の中間周波信号を第2の中間周波信号に直交変換する第3の混合器と、発振器を制御するPLL回路と、PLL回路に基準信号を供給する基準発振器とを設け、基準信号を1/2に分周して第3の混合器に供給したので、第3の混合器に供給する局部発振信号源を基準発振器で共用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る地上デジタル放送受信チューナの構成を図1に示す。図1において、アンテナ21で受信されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号とUHF帯のデジタルテレビジョン信号とは分波器22によって分波される。
【0024】
ここで、本発明で取り扱うデジタルテレビジョン信号について説明する。現在計画されているデジタルテレビジョンの放送チャンネルは、VHF帯のハイチャンネル(チャンネル4〜チャンネル12のうちのチャンネル7及びチャンネル8)とUHF帯のチャンネル13〜チャンネル36の中のいくつかのチャンネルである。これらの放送チャンネルは帯域内を13のセグメント(各セグメントの帯域は3/7MHz)に分割され、中心の1セグメント又は隣接する3セグメントを使用してOFDM変調されたデジタルテレビジョン信号が放送される。放送内容は主として音楽であるが映像放送も計画されており、将来は携帯電話機等に使用されることが予想される。また、放送チャンネル数も増えることが予想される。
【0025】
図1の説明に戻る。分波器22から出力されたUHF帯のデジタルテレビジョン信号は、縦続接続された第1の増幅器23、可変同調回路24、第2の増幅器25を介して直交変換用の第1の混合器26、27に入力される。可変同調回路24はUHF帯の受信チャンネルに同調するように構成されている。
【0026】
一方、分波器22から出力されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号は、バンドパスフィルタ28、第3の増幅器29を介して周波数変換用の第2の混合器30に入力される。バンドパスフィルタはVHF帯のデジタルテレビジョン信号が放送されるチャンネルの帯域(例えば、チャンネル7とチャンネル8の全帯域)を通過する。また、VHF帯のデジタルテレビジョン信号は第2の混合器30によってUHF帯に変換される。UHF帯に変換されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号は、可変同調回路24によって選択され、第2の増幅器25を介して第1の混合器26、27に入力される。
【0027】
2つの第1の混合器26、27に供給する直交変換用の局部発振信号と第2の混合器30に供給する周波数変換用の局部発振信号は発振回路31から生成される。発振器31はPLL回路32によって制御され、第1の混合器26、27に入力されるデジタルテレビジョン信号の周波数に対応しておよそ800MHz〜1550MHzの間で発振する。なお、PLL回路32には、選局用のチャンネルデータが入力され、また、基準発振器33から位相比較のための基準信号(16MHz)が供給される。また、可変同調回路24もPLL回路32によって同調周波数が制御される。
【0028】
発振器31から出力される発振信号は第1の分周器34によって1/2に分周される。第1の分周器34は、例えば図2に示すようにマスタースレーブF/F回路34a、34bとインバータ34cとから構成される。発振信号はマスターF/F回路34aとスレーブF/F回路34bとに入力されるが、スレーブF/F回路34bにはインバータ34cを介して入力される。この第1の分周器34はジョンソンカウンタと呼ばれ、スレーブF/F回路34bのQ出力はマスターF/F回路34aのQ出力よりも位相が90°遅れる。この90°位相が異なる信号が局部発振信号(Lo/I、Lo/Q)としてそれぞれ第1の混合器25、26の供給される。
【0029】
また、第1の分周器34によって分周された発振信号は第2の分周器35によって1/2に分周され、局部発振信号として第2のミキサ30に供給される。第2の分周器35は図2に示す構成のものを使用しても良い。
【0030】
第1の混合器26、27の次段にはそれぞれバンドパスフィルタフィルタ36、37を介して第3の混合器38、39が接続される。第3の混合器38、39の出力は合成器40に接続される。第3の混合器38、39に供給する局部発振信号は第3の分周器41によって生成される。第3の分周器41は基準発振信号を1/2に分周して90°位相が異なる局部発振信号を生成するのでその構成は第1の分周器34と同じである。従って、この局部発振信号の周波数は8MHzとなる。
【0031】
以上の構成において、UHF帯のデジタルテレビジョン信号及びUHF帯に変換されたVHF帯のデジタルテレビジョン信号は、受信すべきチャンネルが可変同調回路24で選択されて第1の混合器26、27に入力される。
【0032】
例えば、UHF帯のチャンネル13を受信する場合、帯域の中央に配置されている第7セグメントの中心周波数は471.1429MHzである。第1の混合器から出力される第1の中間周波信号(I/Q)の中心周波数を8.4286MHzとすると、第1の混合器に供給する局部発振信号は481.5715MHzとなる。従って、この時の発振器31の発振周波数は963.143MHzとなる。また、第3の混合器38、39から出力される第2の中間周波信号(I/Q)の周波数は0.4286MHzとなる。
【0033】
また、VHF帯のチャンネル7を受信する場合、帯域の中央に配置されている第7セグメントの中心周波数は191.1429MHzである。VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF放送帯の下端に隣接する位置に変換する。従って、この場合、第2の混合器30に供給する局部発振信号の周波数は199.5715.MHzとする。その結果、VHF帯のテレビジョン信号は390.7144MHz(=191.1429+199.5715)に変換される。そして、第1の混合器26、27には399.143MHz(=199.5715×2)の局部発振信号が供給されているので、第1の中間周波信号は8.4286MHzとなる。発振器31は798.286MHzで発振する。
【0034】
上述の通り、VHF帯のデジタルテレビジョン信号は、UHF放送帯の下端(下側のバンドエッジ)よりも低い帯域に変換して第1の混合器26、27に入力するので、UHF帯とVHF帯との受信切替を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の地上デジタル放送受信チューナの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の地上デジタル放送受信チューナに使用する分周器の回路図である。
【図3】従来の地上デジタル放送受信チューナの構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0036】
21:アンテナ
22:分波器
23:第1の増幅器
24:可変同調回路
25:第2の増幅器
26、27:第1の混合器
28:バンドパスフィルタ
29:第3の増幅器
30:第2の混合器
31:発振器
32:PLL回路
33:基準発振器
34:第1の分周器
35:第2の分周器
36、37:バンドパスフィルタ
38、39:第3の混合器
40:合成器
41:第3の分周器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UHF帯のデジタルテレビジョン信号を第1の中間周波信号に直交変換する第1の混合器と、VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF帯に周波数変換する第二の混合器とを備え、UHF帯に変換された前記VHF帯のテレビジョン信号を前記第1の混合器に入力すると共に前記第1の中間周波信号に直交変換したことを特徴とする地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項2】
前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号をUHF放送帯の下端側に隣接した帯域に変換したことを特徴とする請求項1に記載の地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項3】
前記第1の混合器に局部発振信号を供給するための発振器を設け、前記発振器から出力される発振信号を1/2に分周するするための第1の分周器を介して前記第1の混合器に供給し、前記第1の分周器によって分周された発振信号をさらに1/2に分周するための第2の分周器を介して前記第2の混合器に供給したことを特徴とする請求項1又は2に記載の地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項4】
前記UHF帯のデジタルテレビジョン信号と前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号とが入力される分波器を設け、分波された前記UHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記第1の混合器に入力し、分波された前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記第2の混合器に入力したことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項5】
前記分波器と前記第1の混合器との間に可変同調回路を設け、UHF帯に変換されて前記第2の混合器から出力される前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号を前記可変同調回路を介して前記第1の混合器に入力したことを特徴とする請求項4に記載の地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項6】
前記VHF帯のデジタルテレビジョン信号は特定チャンネルに配列されており、前記分波器と前記第2の混合器との間に前記特定チャンネルを通過するバンドパスフィルタを設けたことを特徴とする請求項4又は5に記載の地上デジタル放送受信チューナ。
【請求項7】
前記第1の中間周波信号を第2の中間周波信号に直交変換する第3の混合器と、前記発振器を制御するPLL回路と、前記PLL回路に基準信号を供給する基準発振器とを設け、前記基準信号を1/2に分周して前記第3の混合器に供給したことを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の地上デジタル放送受信チューナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−339868(P2006−339868A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160210(P2005−160210)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】