説明

地下ガスタンク及び該地下ガスタンクを用いたガス貯留設備の施工方法

【課題】大きくコストを増大させることなく浮力に抵抗でき、また埋設も容易な地下タンクを得る。また、施工が容易で土地の形状などに制限の受けることの少ない地下式タンクの施工方法を得る。
【解決手段】地下に埋設する金属製のガスタンク1であって、その周面にガスタンク1が浮上するのを防止するための突起3を備え、突起3がガスタンク1を地中に埋設するときにガスタンク1を回転・貫入させる回転貫入用羽根として機能することを特徴とする地下ガスタンク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下に埋設する地下ガスタンク及び該地下ガスタンクを用いたガス貯留設備の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスタンクとしては、球形あるいは円筒形からなり地上に設けられるのが一般的である。
しかしながら、地上にガスタンクを建設するには広い土地を必要とするため、建設用地を確保することが難しい。また、用地確保が難しいことに加えて、周辺環境や住民への配慮が従来にも増して必要となってきていること等から建設地の選定にさらに困難さを増している。
このような地上にガスタンクを建設することに伴う用地確保の問題を解決する一つの方法として地下にガスタンクを設置することが考えられる。
このような地下式のタンクとしては、例えば特許文献1に記載された地下式鏡餅状タンクが提案されている。
この地下式鏡餅状タンクは、底部分に曲面部分を経て肩部分が連設された球面状の上面部分を有する扁平球形状の鏡餅状タンクを地中に埋設したことを特徴とする地下式鏡餅状タンクである。
この特許文献1に開示された鏡餅状タンクはその一部を地下に埋設することによって局部的に応力を受けることがないようにした点に特徴がある。
【特許文献1】特開昭58−171380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ガスタンクを地下に埋設する場合に、地下水位よりも下方に設置するとガスタンクに浮力が作用する。
しかしながら、特許文献1の場合にはこの点については何らの考慮もされていない。
貯留するものがガスであることから大きな浮力を受けるためこれに対する対策は重要である。
この浮力に対する対策としては、タンク自体の自重を増やすことも考えられるが、浮力が大きいためタンク自体の自重を増やすとすればかなり大きな自重にする必要がある。それ故、例えばタンクの厚みを大きくするとすればコストが大きく増大する。
【0004】
また、特許文献1に示された地下式タンクのように大容量のものを地下に埋設施工しようとすると、それだけの土地が必要となり、埋設のための工事も大掛かりとなる。
また、例えば三角地のような変形地にタンクを埋設するような場合には、特許文献1のような形状のタンクでは、必要な土地面積を確保できず、結局、所定の貯留容量を確保できないという問題もある。
【0005】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、大きくコストを増大させることなく浮力に抵抗でき、また埋設も容易な地下タンクを得ることを目的としている。
また、施工が容易で土地の形状などに制限の受けることの少ない地下式タンクの施工方法を得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る地下ガスタンクは、地下に埋設する金属製のガスタンクであって、その周面にガスタンクが浮上するのを防止するための突起を備えていることを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、突起がガスタンクを地中に埋設するときにガスタンクを回転貫入させる回転貫入用羽根として機能することを特徴とするものである。
突起を設けることで通常はタンクの埋設が難しくなるが、本発明の突起は、地盤に対してガスタンクを回転貫入する機能を備えているので、タンク埋設が容易になると共に埋設後の浮上を防止できるという相乗効果が得られている。
【0008】
(3)また、上記の(1)または(2)に記載のものにおいて、突起がガスタンクの上下方向に複数段に設けられていることを特徴とするものである。
突起を複数段に設けることにより、例えばガスタンクが縦長のような場合には一つの突起が負担する荷重が小さくできるので、突起の接合部の強度を小さくしたり、突起の厚みを薄くしたりできる。
【0009】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のものにおいて、地下ガスタンクを用いたガス貯留設備の施工方法であって、複数の前記地下ガスタンクを回転させて地下に埋設する工程と、埋設した複数の地下ガスタンク同士を連通可能にする連通管を設ける工程とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、地下に埋設するガスタンクであって、その周面にガスタンクが浮上するのを防止するための突起を有するので、簡易な構造で地下水の浮揚力に抵抗できる地下タンクを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施の形態に係る地下ガスタンクの断面図である。以下、図1に基づいて本実施の形態を説明する。
本実施の形態に係る地下ガスタンク1は金属製からなり、図1に示すように、断面が円形で、かつ縦長の管状の形状をしており、その軸方向に複数段の突起3が設けられている。地下ガスタンク1の大部分は地表面5の下に埋設され、その頭部が地表面5から突出して、頭部にはガスの出入口7が設けられている。
【0012】
図2は図1に示した地下ガスタンク1の突起3の部分を拡大して示す側面拡大図である。突起3は、地下ガスタンク1を地下に埋設する際に回転貫入させる回転貫入羽根として機能すると共に埋設後においては浮力に抵抗する抵抗部材として機能する。
この2つの機能を有する突起3は、回転貫入の機能の点からはその形状が、例えば図2に示すように、螺旋翼からなるものが挙げられる。もっとも、これに限定されるものではなく、例えば図3に示すように、螺旋翼を2分割した分割型の翼であってもよい。
【0013】
また、浮力に対する抵抗部材としての機能の面から、突起3は、その面積を、タンクに作用する浮力と、突起3に作用する土の荷重とがバランスするように設定されている。
なお、突起3は、図1に示すようにタンクの軸方向に複数段に設けることで、各突起3の受ける力を小さくでき、突起3の厚みを薄くでき、また突起3の付け根の破損を防止できる。
また、地下ガスタンク1の先端に埋設施工時の貫入を容易にするために、図1に示すような、例えば三角形からなる掘削板9を設置してもよい。
【0014】
上記のように構成された地下ガスタンク1を地下に埋設するには、回転貫入式の杭の施工と同様に、地下ガスタンク1の頭部を図示しない保持具によって保持した状態で回転させながら地中に押し込むことによって地下に埋設する。
地下ガスタンク1が地中に貫入されるにしたがって、地下ガスタンク1の体積分の土が排除されることになるが、この土は地下ガスタンク1の周囲にしめ固められるため、施工に際しては排出される土は少なくなる。
【0015】
図4は、図1に示した地下ガスタンク1を複数個用いて構成されるガス貯留設備の施工例を示す図である。
本実施形態のガス貯留設備の施工方法は、複数の地下ガスタンク1を地下に埋設する埋設工程と、埋設した複数の地下ガスタンク1同士を連通可能にする連通管11を設ける連通管設置工程とを備えたものである。
【0016】
<埋設工程>
埋設工程に先立って、予定されるガス貯留量、各地下ガスタンク1の容量、土地の形状に基づいて埋設する地下ガスタンク1の個数、配置を決定する。この決定に基づいて、上述したように、各地下ガスタンク1を地中に回転貫入する。
【0017】
<連通管設置工程>
連通管設置工程では、埋設された各地下ガスタンク1の出入口7を連通管11によって連通可能に接続するものである。そして、連通管11には、図4に示すようにバルブを設ける。この連通管11やバルブの設け方によって各地下ガスタンク1が異なる機能を有するようにすることも可能である。例えば、複数の地下タンク同士をグループ分けして、定期点検を行ったり、必要に応じて順次増設を行ったりすることが可能になる。
【0018】
本実施の形態の地下ガスタンク1の場合、各地下ガスタンク1を回転貫入させるので各タンクは近接して配置できる。そして、必要とされるガス貯留容量に応じて必要な本数の地下ガスタンク1を設置すればよい。その場合に、地下ガスタンク1を埋設する予定地の地形が変形地であったとしてもその形状に合わせた配置が可能である。このようなことが簡易な構造でありながらも実現できるのは、各地下ガスタンク1がそれぞれ回転貫入の機能を有する突起3を備え、しかも各突起3が浮力に対して抵抗できる機能を有しているという相乗効果によるものである。
【0019】
以上のように、本実施の形態の地下ガスタンク1は、コストを増大させることなく浮力に抵抗でき、かつ埋設のための施工も容易となる。
また、本実施の形態に示したガス貯留設備の施工方法によれば、土地の形状などに制限の受けることの少ない地下式タンクの施工を実現できる。
【0020】
なお、上記の実施の形態においては、図1に示したように地下ガスタンク1の頭部を地表に突出させる例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、地下式タンク1の頭部まで地中に埋設して、地表面を緑地や公園として利用することも望ましい態様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係る地下ガスタンクの説明図である。
【図2】図1に示した地下ガスタンクの突起を詳細に説明する説明図である。
【図3】図1に示した突起の他の態様の説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るガス貯留設備の施工方法の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 地下ガスタンク
3 突起
5 地表面
7 出入口
9 掘削板
11 連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設する金属製のガスタンクであって、その周面にガスタンクが浮上するのを防止するための突起を備えていることを特徴とする地下ガスタンク。
【請求項2】
突起がガスタンクを地中に埋設するときにガスタンクを回転貫入させる回転貫入用羽根として機能することを特徴とする請求項1記載の地下ガスタンク。
【請求項3】
突起がガスタンクの上下方向に複数段に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の地下ガスタンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の地下ガスタンクを用いたガス貯留設備の施工方法であって、複数の前記地下ガスタンクを地下に埋設する工程と、埋設した複数の地下ガスタンク同士を連通可能にする連通管を設ける工程とを備えたことを特徴とするガス貯留設備の施工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−197924(P2009−197924A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40792(P2008−40792)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】