説明

地下貯留型融雪システム

【課題】地下に雨水の貯留タンクが設置された区域を除雪した雪の捨て場として利用し、この区域に降り積もり、集められた多量の雪を効率的に融雪することができるようにする。
【解決手段】広場や駐車場などの広域平坦面の地下に設置された貯留タンク1と、一側が貯留タンク1の内部又は周辺部を通り、他側が熱源部15を通るように配置されていて内部に熱交換水が流通する熱交換パイプ13と、熱交換パイプ13内で熱交換水を循環流通させる循環ポンプ14と、熱交換水を温水に加熱する熱源部15とにより構成し、地表面に開口させた投入口7から貯留タンク1内に投入した雪塊を、熱交換パイプ13内を循環流通していて熱源部15を通って加熱された熱交換水で融雪する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園やグラウンドなどの広場や、スーパーマーケットやマンションの駐車場など広域平坦面の地下に設置された雨水の貯留タンクを利用して、当該区域に降り積もった或いは区域に集められた雪塊を融雪するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市郊外の住宅地などでは、雨水の河川への流入が集中して河川が氾濫するのを防ぐことを目的として、雨水を貯留して河川への雨水の流入量を制御したり、地下に浸透させたりするための施設を設置することがある。
かかる施設としては、例えば図6に示されるように、地中に中空の充填体101を積み上げてなる貯留タンク100を設置し、宅地の側溝その他の排水溝に通ずる流入路102と河川に通ずる排出路103とをそれぞれ接続し、貯留タンク100に流入した雨水をタンク周側部と底部から地中に浸透させ、タンクの容量を超えて雨水が流入したときには排出路103から排出させる構造のものが知られている(例えば特許文献1〜5参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平4−35580号公報
【特許文献2】特許第3208379号公報
【特許文献3】特開2002−167723号公報
【特許文献4】特開2006−322148号公報
【特許文献5】特開2006−322149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冬季に度々大雪が降る寒冷地域では、交通の利便性からスーパーマーケットなどの広い駐車場や道路に隣接した広場が除雪した雪の一時的な捨て場として利用されることが多い。大雪に見舞われた場合、市街地で除雪トラクタや除雪車によって除雪された雪が駐車場や広場に集められてその一角にうず高く積まれ、そのまま自然に溶けるのを待つか、或いは雪量が多いときは集めた雪をダンプカーに積んで海や河川などに運んで捨てるかしていた。
しかし、駐車場を雪捨て場として利用した場合、雪がうず高く積まれたスペースは雪が溶けてなくなるまで駐車スペースとして利用することができず、スーパーマーケットなどにとっては営業上好ましいものではない。また、ダンプカーに除雪した雪を積んで市街地から遠方へ運んだのでは、除雪に要する費用が嵩んでしまい、車両が凍結した路面を走行するため危険も伴って好ましいものではない。市街地を除雪して集めた大量の雪を、市街地においてコストをかけずに効率的且つ安全に融雪する手段は実現されていないのが実情である。
【0005】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、雨水の貯留タンクが地下に設置された駐車場や広場を除雪した雪の捨て場として利用し、これらの場所に降り積もり、集められた多量の雪を効率的に融雪することができるようにすることを課題とする。
【0006】
前記課題を解決するため本発明の地下貯留型融雪システムは、広場や駐車場などの広域平坦面の地下に設置された貯留タンクと、一側が貯留タンクの内部又は周辺部を通り、他側が熱源部を通るように配置されていて内部に熱交換水が流通する熱交換パイプと、熱交換パイプ内で熱交換水を循環流通させる循環ポンプと、熱交換水を温水に加熱する熱源部とを有し、地表面に開口させた投入口から貯留タンク内に投入した雪塊を、熱交換パイプ内を循環流通していて熱源部を通って加熱された熱交換水で融雪するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成のシステムにおいて、貯留タンクは、集中豪雨などにより雨水の河川への流入が集中して河川が氾濫し、浸水被害がでることを防止することを目的として、市街地の駐車場や広場などの広域平坦面の地下に設置されるものであり、本発明はこの貯留タンクを利用して多量の雪を市街地においても融雪できるようにしたものである。
貯留タンクは、例えば雨水の貯留容量が1000m以上のものであれば、大雪に見舞われたときでも多量の雪の融雪処理に対応できて好ましい。また、貯留タンクに設ける投入口は、タンクの中央部に設けてあれば、投入した雪塊がタンク内部周辺に均一に拡散し、効率良く融雪することができる。投入口をタンク上面の複数箇所に設けてもよい。また、雪塊に混ざった異物を捕捉し、タンク内部から除去するため、投入口又はタンク内部に異物捕捉用スクリーンを設けることがより好ましい。
熱交換パイプは、耐熱性や耐腐食性などの耐久性に優れた温水用樹脂管、例えば耐熱用ポリエチレン管、ポリブデン管、架橋ポリエチレン管などを用いることができる。パイプの太さは、可撓性、施工性及び熱効率を考慮して10〜20mm程度の管径であることが好ましい。また、熱交換パイプの配管位置は、貯留タンクの投入口近辺の上方や、タンク底面の下方、或いはタンク内部など、冬季の降雪量を基に決定される融雪予定量やタンク容量、設置環境などを考慮して選定することができる。
また、熱交換パイプ内の熱交換水は、パイプ内を流通する過程で熱源部において温水に加熱され、この熱交換水の熱で貯留タンク内の雪塊を融雪する。熱交換水を加熱する熱源部は、ボイラーやヒートポンプを利用した給湯設備の廃熱や廃棄物焼却設備の廃熱、或いは地熱などを利用した熱交換手段として構成することができる。
【0008】
本発明の地下貯留型融雪システムによれば、貯留タンクの内部又は周辺部に配された熱交換パイプ内を流通する熱交換水の熱で、タンク内に投入された雪塊を効率的に融雪することができる。浸水被害対策として設置される貯留タンクを利用するとともに、熱交換水を加熱する熱源部として地熱などの自然エネルギーや諸施設の廃熱を利用することにより、ロードヒーティングなどと比較して、安価なコストで多量の雪を融雪することができ、また、融雪により溶けた水はタンクから地下に浸透させ、或いはタンクから河川に放流する他、タンクに貯留して利用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の地下貯留型融雪システムの構成を示した図、図2は本発明のシステムに用いられる貯留タンクの一形態をタンクの半面を破断して示した概略断面図、図3は図2の貯留タンクを構成する充填体の平面と側面を示した図、図4は図2の貯留タンクの周面に取付けられる平板の平面と側面を示した図、図5本発明の他の実施形態の地下貯留型融雪システムの構成を示した図である。
【0010】
図1に示されるように、本発明の地下貯留型融雪システムは、広場や駐車場などの市街地の広域平坦面の地下に設置される貯留タンク1と、一側が貯留タンク1の内部及び上下周辺部を通り、他側が後述する熱源部15を通るように配置されていて内部に熱交換水が流通する熱交換パイプ13と、熱交換パイプ13内で熱交換水を循環流通させる循環ポンプ14と、熱交換水を温水に加熱する熱源部15とを有し、地表面に開口させた投入口7から貯留タンク1内に投入した雪塊を、熱交換パイプ13内を循環流通していて熱源部15を通って加熱された熱交換水で融雪するように構成してある。
【0011】
貯留タンク1は、例えば図2に示されるように、地面を掘り下げて形成した空間部上に、充填体2を多段に積み上げ、一体に積み上げられた充填体2の周囲を透水性の保護シート4で覆うとともに、タンクの一側の側面の上部に接続管12を介して雨水流入路5、他側の側面の下部に接続管12を介して雨水排出路6を接続して、雨水流入路5からタンク内に雨水を流入させてタンク内部の空隙に貯留し、貯留した雨水を保護シート4から地中へと浸透させ、また、雨水排出路6から下水路へと放出することができるように構成することができる。
【0012】
タンク上面には、タンク内部と連通した管体である投入口7を地上近傍まで突出させてあり、この投入口7の上部は、地中に固定された台座8で支持された枠9でその周囲が覆われ、さらに枠9の頂部に設けた蓋体10で投入口7の上端を閉鎖してある。また、投入口7の鉛直下方位置のタンク底面には、雨水とともにタンク内に流入した夾雑物を堆積させる汚泥ピット11を設けてある。
【0013】
充填体2は、例えば図3に示されるように、500mm四方程度の大きさの枠体2aの下面に、高さ300mm程度、太さ50mm程度の中空の柱体2bを複数列設して形成されており、当該枠体2a上に他の充填体2を載せて多段に積み上げることができるように設けてある。また、枠体2aには100〜200mm程度の開口径の開口部2cが複数形成されており、充填体2を多段に積み上げた状態で、各段の開口部2cが鉛直方向に沿って連なり、貯留タンク1の頂部から底部までが各開口部2cで貫通するようになっている。
【0014】
最下段の充填体は、その下側に敷設された、図4に示される、表面に多数の細孔が形成された平板3で柱体2bが垂直に支持され、また、多段に積み上げられた充填体2の側部と上部にも平板3が一体に取り付けられる。
【0015】
前記投入口7は、貯留タンク1の点検口を兼ねており、作業者がタンク内に進入可能な大きさに形成され、内面には作業者が昇降するステップが取り付けてある。また、前記透水性の保護シート4に代えて、遮水性の保護シート4を用いても、或いは両部材を併用してもよい。
【0016】
熱交換パイプ13は、ポリブデン管などの温水用樹脂管が用いられ、図1に示されるように、その一側を貯留タンク1の下部から内部、上部に亘って蛇行状に配し、他側を循環ポンプ14を介して熱源部15に通してある。また、循環ポンプ15は、熱交換パイプ13内の熱交換水をパイプ内を循環流通させるように作動する。
【0017】
熱源部15は、熱交換パイプ13内の熱交換水を温水に加熱する手段であり、ボイラーやヒートポンプなどの加熱手段、或いはこれらを利用した給湯設備、廃棄物焼却設備の廃熱により熱交換水の加熱が行われるように構成してある。
【0018】
図1に示された地下貯留型融雪システムによれば、大雪が降った場合、貯留タンク1の上の広域平坦面に除雪した雪を集め、投入口7から雪塊を貯留タンク1内に投入すれば、タンク内部と周辺部に配した熱交換パイプ13を通る熱交換水の熱でタンク内が加熱され、投入した雪塊をタンク内で融雪することができる。溶けた水は、タンク底部から透水性の保護シート4を通って地下に浸透し、或いは雨水排出路6から河川へと放流される。
【0019】
地下に設置された貯留タンク1に対し、熱交換パイプ13は設置環境に応じて配管することができ、例えば図5(A)に示されるように、貯留タンク1の下側のみに配置してもよい。また、同図(B)に示されるように、貯留タンク1上方の地表面を透水性アスファルト16を敷き、その下側にロードヒーティングを兼用させて熱交換パイプ13を配置してもよい。この場合、地表面に堆積した雪は熱交換パイプ13の熱で溶け、透水性アスファルトを通って貯留タンク1内に進入するので、雪塊をタンク内に投入する投入口7を設けてなくてもよい。
さらに、熱源部15として地熱を利用してもよく、同図(C)に示されるように、地熱で加熱された熱交換水を貯留タンク1の下部に配置した熱交換パイプ13内を流通させてタンクが下側から加熱されるようにしたり、同図(D)に示されるように、地熱をロードヒーティングに兼用させるように熱交換パイプ13を配置してもよい。
【0020】
なお、図示したシステム構成や貯留タンクの形態は一例であり、本発明は図示した形態に限定されず、他の適宜な形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の地下貯留型融雪システムの構成を示した図である。
【図2】本発明のシステムに用いられる地下貯留タンクの一形態をタンクの半面を破断して示した概略断面図である。
【図3】図2の貯留タンクを構成する枠体ユニットの平面と側面を示した図である。
【図4】図2の貯留タンクの周面に取り付けられる平板の平面と側面を示した図である。
【図5】本発明の他の実施形態の地下貯留型融雪システムの構成を示した図である。
【図6】従来の地下貯留施設の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 貯留タンク、2 充填体、3 平板、4 保護シート、5 雨水流入路、6 雨水排出路、7 投入口、8 台座、9 枠、10 蓋体、11 汚泥ピット、12 接続管、13 熱交換パイプ、14 循環ポンプ、15 熱源部、16 透水性アスファルト




【特許請求の範囲】
【請求項1】
広場や駐車場などの広域平坦面の地下に設置された貯留タンクと、一側が貯留タンクの内部又は周辺部を通り、他側が熱源部を通るように配置されていて内部に熱交換水が流通する熱交換パイプと、熱交換パイプ内で熱交換水を循環流通させる循環ポンプと、熱交換水を温水に加熱する熱源部とを有し、
地表面に開口させた投入口から貯留タンク内に投入した雪塊を、熱交換パイプ内を循環流通していて熱源部を通って加熱された熱交換水で融雪するように構成されていることを特徴とする地下貯留型融雪システム。
【請求項2】
熱源部は、ボイラーやヒートポンプを利用した給湯設備の廃熱や廃棄物焼却設備の廃熱、或いは地熱などを利用した熱交換手段である請求項1に記載の地下貯留型融雪システム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−280778(P2008−280778A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126725(P2007−126725)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】