説明

地中埋設体の浮上抑止方法および埋設構造

【課題】 地中埋設体の浮上を抑止する効果が高く、しかも、施工性、耐久性が良好な地中埋設体の浮上抑止方法を提供する。
【解決手段】 マンホール1の側壁11に貫通孔11aを形成し、この貫通孔11aを介して地盤Gに注入棒2を挿入し、この注入棒2から地盤Gを固化する固化剤を地盤Gに注入して、マンホール1とその周辺の地盤G1と注入棒2とを一体化させる。一体化した地盤G1によって実質上マンホール1の重量が増し、浮上力に抗する重力(抵抗荷重)が増加して浮上が抑止される。さらに、一体化した地盤G1とその周辺の地盤Gとの摩擦抵抗によって、上方に浮上する力に対するせん断抵抗力が増し、マンホール1の浮上が抑止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マンホールや水道管や下水道管、送電管、共同溝などの地中埋設体が、地盤の液状化現象などによって地上に浮上するのを抑止する地中埋設体の浮上抑止方法および埋設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地震によって地盤が液状化すると、マンホールが地上に浮上する場合があり、このような浮上を抑止する方法として、次のようなものが知られている。第1に、コンクリートなどで形成した重量構造体を地盤に埋設してマンホールと一体化させ、この重量構造体の重量(重力)によってマンホールの浮上を抑止するものである(例えば、特許文献1参照。)。第2に、マンホールの周囲の地盤内にアンカーを打ち付け、マンホールとアンカーとを固定することで、マンホールの浮上を抑止するものである(例えば、特許文献2参照。)。第3に、マンホールの側壁に逆止弁を取り付け、地盤の過剰間隙水圧による地下水を逆止弁で吸い取り、液状化による浮力を消散することで、マンホールの浮上を抑止するものである(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2007−63803号公報
【特許文献2】特開2008−69557号公報
【特許文献3】特開2007−23679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、マンホールなどの浮上を抑止する対策は、新設のマンホールなどに対してのみならず、既設のマンホールなどに対しても当然に行う必要がある。しかしながら、上記第1の方法および第2の方法では、マンホール周辺の地盤を掘削して、重量構造体をマンホールに一体化させたり、アンカーを打ち付けてマンホールに固定したりしなければならない。このため、地盤の掘削やその補修工事、支持層までのアンカーの定着工事などに多大な労力と時間とを要するのみならず、道路を掘削して工事を行うため道路の交通を規制する必要がある。さらに、第2の方法では、アンカーを打ち付けるのに大きな打設重機を要し、大掛かりな工事となる。また、第1の方法では、重量構造体の重量と浮上力とのバランスが適正でないと、地震動による振れの増幅や、地盤沈下を引き起こすおそれがあり、第2の方法では、アンカーの配置バランスが適正でないと、マンホールが傾くおそれがある。
【0004】
一方、第3の方法では、マンホール内から逆止弁を取り付けることが可能ではあるが、逆止弁を取り付けるためにマンホールの側壁に大きな孔を開ける必要があり、削孔作業に多大な時間と労力とを要するとともに、その孔から地盤を引き込んでしまう場合がある。また、逆止弁で吸い取った地下水を外部に排出するドレン管などを配設する必要がある。さらに、逆止弁による取水(排水)効果を維持するには、つまり浮上抑止効果を維持するには、逆止弁の洗浄や交換などの保守、維持管理を要するとともに、液状化が発生すると逆止弁が外れる場合があり、その場合には再設置が必要となるなど、耐久性が低い。しかも、周辺地盤の地下水の変動によって抑止効果が変動し、安定した抑止効果を得ることが困難である。
【0005】
そこでこの発明は、地中埋設体の浮上を抑止する効果が高く、しかも、施工性、耐久性が良好な地中埋設体の浮上抑止方法および埋設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、空洞部を有し少なくとも一部が地盤に埋設された地中埋設体が、地上に浮上するのを抑止する地中埋設体の浮上抑止方法であって、前記空洞部を形成し前記地盤と接する地中埋設体の側壁に、前記空洞部から前記地盤まで貫通する貫通孔を形成し、前記地盤を固化する固化剤を前記貫通孔を介して前記地盤に注入して、前記地中埋設体とその周辺の地盤とを一体化させる、ことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、地中埋設体の周辺の地盤が固化し、地中埋設体とその周辺の地盤とが一体化されるため、一体化した地盤によって実質上地中埋設体の重量が増し、浮上力に抗する重力(抵抗荷重)が増加して地中埋設体の浮上が抑止される。さらに、地中埋設体に一体化した地盤とその周辺の地盤(固化、一体化していない地盤)との摩擦抵抗によって、上方に浮上する力に対するせん断抵抗力が増し、地中埋設体の浮上が抑止される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地中埋設体の浮上抑止方法において、前記貫通孔を介して前記地盤に注入棒を挿入し、この注入棒から前記固化剤を注入して、前記地中埋設体とその周辺の地盤と前記注入棒とを一体化させる、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の地中埋設体の浮上抑止方法において、前記貫通孔を介して前記地盤に支持棒を挿入し、前記地中埋設体とその周辺の地盤と前記支持棒とを一体化させる、ことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の地中埋設体の浮上抑止方法において、前記地中埋設体の上部周辺の地盤内に、前記上部周辺の地盤を上から押さえる抑止部材を配設する、ことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、空洞部を有する地中埋設体の少なくとも一部を地盤に埋設する地中埋設体の埋設構造であって、前記空洞部を形成し前記地盤と接する地中埋設体の側壁に、前記空洞部から前記地盤まで貫通する貫通孔が形成され、前記地盤を固化する固化剤が前記貫通孔を介して前記地盤に注入され、前記地中埋設体とその周辺の地盤とが一体化されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および5に記載の発明によれば、地中埋設体の重量化とせん断抵抗力の増強とによって、地中埋設体の浮上が効果的に抑止される。また、地中埋設体の側壁に貫通孔を形成して固化剤を注入するだけでよく、しかも、貫通孔の形成や固化剤の注入は、地中埋設体の空洞部内から行うことが可能であり、地盤の掘削やその補修工事などが不要である。このため、作業を容易かつ短時間に行うことができるとともに、道路の交通を規制する必要もなく、施工性が高い。さらに、適正な固化剤を選択することで、地中埋設体と地盤との一体化が永続されるため、耐久性、恒久性が高く、また、機構的(機械的、電気的)な要素を含まないため、保守などを要することもない。一方、貫通孔を形成して固化剤を注入だけでよいため、新設の地中埋設体にも既設の地中埋設体にも適用することができる。また、周辺の地盤の固化と地中埋設体との一体化によって、地中埋設体に発生する断面力や継ぎ手の変形(離れ)を抑制することができ、地中埋設体自体を補強する効果も得られる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、地中埋設体とその周辺の地盤と注入棒とを一体化させるため、注入棒が芯棒(ネイル、鉄筋)の役割をし、注入棒を介して地中埋設体と地盤との一体化が強固になる。この結果、地中埋設体の浮上がより効果的に抑止される。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の発明と同様に、支持棒が芯棒の役割をして地中埋設体と地盤との一体化が強固になるとともに、支持棒に凹凸などを設けることで一体化をさらに強固にできる。また、請求項2の注入棒が高価な場合に、注入棒の代わりに支持棒を挿入することで、注入棒を再利用して費用を抑えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、地中埋設体の上部周辺の地盤が抑止部材で押さえられることで、地中埋設体の浮上がより抑止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1〜5は、この実施の形態に係る地中埋設体の浮上抑止方法(以下、適宜「浮上抑止方法」という)を示す図である。この浮上抑止方法は、地盤に埋設された地中埋設体が地上に浮上するのを抑止する方法であり、この実施の形態では、地中埋設体が既設のマンホール1、つまり既に地盤Gに埋設されているマンホール1の浮上を抑止する場合について説明する。
【0018】
まず、マンホール1の空洞部1Aを形成し地盤Gと接するマンホール1の側壁11に、空洞部1Aから地盤Gまで貫通する貫通孔11aを形成する。すなわち、マンホール1内(空洞部1A)に作業者が入り、ハンドドリルなどでマンホール1内から貫通孔11aを削孔する。ここで、貫通孔11aの大きさ(直径)は、後述する固化剤を地盤Gに注入できる程度の比較的小さな大きさでよく、例えば、直径20mm程度でよい。また、形成する貫通孔11aの数は、後述する固化(一体化)させる地盤G1の大きさ(重量)により設定する。つまり、マンホール1の実質的な重量を増加させて浮上を抑止するのに要する地盤G1の容積によって設定し、例えば、1号(内径900mm)のマンホール1の場合、12〜18の貫通孔11aを形成する。さらに、固化した地盤G1による重量バランスを適正にするために、図5に示すように、同一水平面において放射線状に貫通孔11aを形成し、このような貫通孔11aをマンホール1の軸方向(上下方向)に沿って形成する。
【0019】
次に、貫通孔11aを介して地盤Gに注入棒2を挿入し、この注入棒2から地盤Gを固化する固化剤を注入して、マンホール1とその周辺の地盤G1と注入棒2とを一体化させる。ここで、注入棒2は、金属製の管状で、貫通孔11aに隙間なく挿入できるように(ほぼ同寸法に)その外径が設定され、図2に示すように、管を構成する側壁と先端部に複数の注入孔2aが形成されている。また、固化剤は、耐久性や注入性、地盤Gとマンホール1との一体化性(親和性)などが優れたものを選定し、例えば、セメント(モルタル)系やガラス系、合成樹脂などのグラウトを使用し、この実施の形態では、セメント系を主としたグラウトを使用する。なお、固化剤としては、セメントミルク、パウダー状のセメントミルク、超微粒子セメント、恒久グラウト(ハイブリッドシリカ)などが挙げられる。
【0020】
具体的には、マンホール1内に作業者が入り、図2に示すように、空洞部1Aから地盤Gに向けてほぼ水平方向に貫通孔11aから注入棒2を挿入(打設)する。次に、図3に示すように、固化剤が入ったタンク31からの注入ホース32の先端部を注入棒2の基端部(空洞部1A側の端部)に接続し、タンク31から固化剤を放出させる。これにより、注入ホース32および注入棒2を介して、複数の注入孔2aから周囲の地盤Gに固化剤が注入される。このとき、地盤Gの固化状況(固化スピード)を考慮して段階的に固化剤を注入するとともに、適正量が注入されるように注入量を管理する。また、貫通孔11aから漏れ出た固化剤や地盤Gの土などがマンホール1内に流入するのを防止するために、貫通孔11aの周りやマンホール1内を養生する。
【0021】
ここで、上記のような注入棒2の挿入や固化剤の注入は、固化剤による地盤Gの固化性やマンホール1の大きさなどに応じて、貫通孔11aごとに行ってもよいし、すべての貫通孔11aあるいは複数の貫通孔11aに対して同時に行ってもよい。例えば、同一水平面上のすべての貫通孔11aに対して注入棒2を挿入し、同時に固化剤を注入してもよい。また、固化剤の注入には、圧力をかけて単に注入するグラウト注入のほかに、固化剤を地盤G内に噴射させて撹拌する噴射撹拌も含む。
【0022】
そして、注入が完了した後に、注入ホース32を注入棒2から外し、注入棒2の基端部を蓋などで閉塞する。このような固化剤の注入によって、固化剤が注入された地盤G1、つまりマンホール1の周辺の地盤G1がグラウト固化すると同時に、マンホール1および注入棒2と接着(結合)する。この結果、図4に示すように、マンホール1とその周辺の地盤G1と注入棒2とが一体化する。ここで、地盤G1とマンホール1とが強固に接着しない(直接一体化しない)場合でも、注入棒2がマンホール1の側壁11を貫通した状態で配設されている(注入棒2がマンホール1に取り付けられた状態となっている)ため、地盤G1が注入棒2に接着することで、注入棒2を介して地盤G1とマンホール1とが一体化する。
【0023】
このようにして一体化した地盤G1によって実質上マンホール1の重量が増し、マンホール1を浮上させようとする力に抗する抵抗力(重力)が増加する。また、一体化した地盤G1は、マンホール1の側壁11から突出するように、しかも複数の凹凸状に形成される。このため、一体化した地盤G1とその周辺の地盤(固化、一体化していない地盤)Gとの摩擦抵抗が高くなり、上方に浮上する力に対するせん断抵抗力が増す。
【0024】
以上のように、この浮上抑止方法によれば、マンホール1の重量化とせん断抵抗力の増強とによって、浮上力に対するマンホール1の抵抗力が増し、地盤Gの液状化現象などが発生しても、マンホール1の浮上を効果的に抑止することができる。さらに、マンホール1とその周辺の地盤G1と注入棒2とが一体化するため、注入棒2が芯棒の役割をし、注入棒2を介してマンホール1と地盤G1との一体化が強固になる。この結果、マンホール1の浮上がより効果的に抑止される。しかも、固化剤(グラウト)を注入してマンホール1の周辺の地盤G1を固化させるため、例えば、締め固め不足の埋め戻し土の強度を改善したり、マンホール1に発生する断面力や継ぎ手の変形(離れ)を抑制したり、下水道施設周辺の空洞部や道路の陥没被害部などを改善、修繕することが可能となる。
【0025】
一方、マンホール1の側壁11に貫通孔11aを形成して固化剤を注入するだけでよく、しかも、貫通孔11aの形成や固化剤の注入は、マンホール1内から行うことができ、地盤Gの掘削やその補修工事などが不要である。また、比較的小さい貫通孔11aを削孔すればよいため、作業が容易で、かつ、周辺地盤Gを引き込むこともない。このため、浮上抑止の施工を容易かつ短時間に行うことができるとともに、道路の交通を規制する必要もなく、施工性が高い。例えば、上記の1号マンホール1の場合、1日当たり約2基の施工が可能であり、また、道路の専用面積は、タンク31を搭載したトラック3などを停車できる程度でよい。
【0026】
さらに、固化剤がセメント系のグラウトでマンホール1と同系統の材質であるため、マンホール1と地盤G1との一体化が永続され、マンホール1と同等の高い耐久性、恒久性を有し、また、機構的な要素を含まないため、保守などを要することもない。つまり、一度上記の施工を施せば、保守や管理などを要しないで、浮上抑止効果を維持することができる。
【0027】
(実施の形態2)
この実施の形態では、注入棒2に代わって、マンホール1とその周辺の地盤G1と支持棒4とを一体化させる点で、実施の形態1と異なる。ここで、実施の形態1と同等の構成要素については、同一符号を付することで、その説明を省略する。
【0028】
まず、実施の形態1と同様に、貫通孔11aを介して地盤Gに注入棒2を挿入し、注入棒2から固化剤を注入する。そして、注入を終えて地盤G1が固化する前に、注入棒2を抜き取り、支持棒4を貫通孔11aから地盤G1に挿入する。その後、一定時間放置することで、マンホール1とその周辺の地盤G1と支持棒4とを一体化させるものである。
【0029】
ここで、支持棒4の形状としては、鉄筋コンクリート構造における鉄筋のように、固化した地盤G1を強固に支持するとともに、マンホール1と地盤G1との一体化を強固にする形状が望ましい。例えば、図6(a)に示すように、軸方向に沿って複数の節(フランジ)41が設けられた鉄筋や、図6(b)に示すように、軸方向に沿って複数の矢形状のチャック(かえし)42が設けられた鉄筋、あるいは異形の鉄筋などで構成する。ここで、チャック42は、支持棒4に抜く力(図中左側への力)が働くと、チャック42が開いて抜け止めするものである。
【0030】
このような浮上抑止方法によれば、支持棒4によってマンホール1と地盤G1との一体化がさらに強固になり、マンホール1の浮上をより効果的に抑止することが可能となる。また、注入棒2は、管状で複数の注入孔2aが形成されているため、製作に時間と費用とを要し、支持棒4に比べて高価である。このため、注入棒2に代わって支持棒4を挿入(埋設)することで、注入棒2を再利用して費用を抑えることができる。
【0031】
(実施の形態3)
図7、8は、この実施の形態に係る浮上抑止方法による施工状態を示す断面図である。ここで、実施の形態1と同等の構成要素については、同一符号を付することで、その説明を省略する。
【0032】
この実施の形態では、マンホール1の上部1Bの周辺の地盤G内に、上部周辺の地盤Gを上から押さえるトップネット(抑止部材)5を配設する。すなわち、トップネット5は、金属製の網またはジオテキスタイルで、中央部にマンホール1の上部1Bを挿入する装着孔5aが形成されている。そして、マンホール1の上部1Bの周辺の地盤Gを掘り起こし、装着孔5aにマンホール1の上部1Bを挿入した状態でトップネット5を敷設し、その上から地盤Gを埋め戻して固めるものである。ここで、トップネット5の配設は、固化剤の注入の前後どちらでもよい。
【0033】
このような浮上抑止方法によれば、マンホール1の上部1Bの周辺の地盤Gがトップネット5で押さえられるため、当該地盤Gを介してマンホール1が下方に押さえられ、マンホール1の浮上がより抑止される。また、マンホール1の上部周辺の地盤Gを掘り起こすだけでよいため、掘削作業やその補修作業が容易で、短時間に行うことが可能である。
【0034】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、既設のマンホール1の浮上を抑止する場合について説明したが、新設のマンホール1にも適用できる。この場合、貫通孔11aが形成されたマンホール1を地盤Gに埋設することで、貫通孔11aの削孔作業を削減できる。
【0035】
また、マンホール1以外の地中埋設体にも適用できることは勿論である。例えば、図9に示すように、下水道管などの地中埋設管20に適用したり、図10に示すように、地中タンクや共同溝などの地中構造物21に適用したりすることができる。この際、例えば、地中埋設管20の継手部周辺で地盤Gと一体化させることで、継手部を補強して効果的に浮上を抑止することができる。さらに、上記の実施の形態では、地中埋設体(マンホール1)がすべて地盤Gに埋設されているが、空洞部を有し少なくとも一部が地盤Gに埋設されている地中埋設体であれば、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、この発明に係る地中埋設体の浮上抑止方法は、地中埋設体の浮上を抑止する効果が高く、しかも、施工性、耐久性が良好なものとして極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1において、マンホールの側壁に貫通孔を形成した状態を示す断面図である。
【図2】図1の状態から注入棒を配設した状態を示す拡大断面図である。
【図3】図2の状態から地盤に固化剤を注入している状態を示す断面図である。
【図4】図3の状態から地盤が固化した状態を示す断面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2における支持棒の形状例を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3に係る浮上抑止方法による施工状態を示す断面図である。
【図8】図7のB−B断面図である。
【図9】この発明の浮上抑止方法を地中埋設管に適用した状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の浮上抑止方法を地中構造物に適用した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 マンホール(地中埋設体)
1A 空洞部
11 側壁
11a 貫通孔
2 注入棒
31 タンク
32 注入ホース
4 支持棒
5 トップネット(抑止部材)
G 地盤
G1 固化、一体化された地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を有し少なくとも一部が地盤に埋設された地中埋設体が、地上に浮上するのを抑止する地中埋設体の浮上抑止方法であって、
前記空洞部を形成し前記地盤と接する地中埋設体の側壁に、前記空洞部から前記地盤まで貫通する貫通孔を形成し、
前記地盤を固化する固化剤を前記貫通孔を介して前記地盤に注入して、前記地中埋設体とその周辺の地盤とを一体化させる、
ことを特徴とする地中埋設体の浮上抑止方法。
【請求項2】
前記貫通孔を介して前記地盤に注入棒を挿入し、この注入棒から前記固化剤を注入して、前記地中埋設体とその周辺の地盤と前記注入棒とを一体化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の地中埋設体の浮上抑止方法。
【請求項3】
前記貫通孔を介して前記地盤に支持棒を挿入し、前記地中埋設体とその周辺の地盤と前記支持棒とを一体化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の地中埋設体の浮上抑止方法。
【請求項4】
前記地中埋設体の上部周辺の地盤内に、前記上部周辺の地盤を上から押さえる抑止部材を配設する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の地中埋設体の浮上抑止方法。
【請求項5】
空洞部を有する地中埋設体の少なくとも一部を地盤に埋設する地中埋設体の埋設構造であって、
前記空洞部を形成し前記地盤と接する地中埋設体の側壁に、前記空洞部から前記地盤まで貫通する貫通孔が形成され、
前記地盤を固化する固化剤が前記貫通孔を介して前記地盤に注入され、前記地中埋設体とその周辺の地盤とが一体化されている、
ことを特徴とする地中埋設体の埋設構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−281001(P2009−281001A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132119(P2008−132119)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000210908)中央開発株式会社 (25)
【出願人】(591066524)日本建設機械商事株式会社 (3)
【出願人】(592072377)日本ヘルス工業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】