説明

地中埋設鋼管類の切断方法および切断装置

【課題】地中に埋設されている鋼管類を切断する際に、交通障害を最小限に抑えるとともに、効率的に作業ができる鋼管類の切断方法および切断装置を提供する。
【解決手段】ライニング鋼管23に、複数の回転刃3を備えた切断装置1を挿入させ、その回転刃3によって、管内側から鋼管24の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行ない、この切断作業の際に、切断装置1に設置した回転刃切換え機構4により、使用する回転刃3の切換えを行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中埋設鋼管類の切断方法および切断装置に関し、さらに詳しくは、地中に埋設されている鋼管類を切断する際に、交通障害を最小限に抑えるとともに、効率的に作業を行なうことができる鋼管類の切断方法および切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陸地の地中には、原油を輸送するための輸送管(パイプライン)や水などの各種流体を輸送するための輸送管が埋設されている。これら輸送管には、鋼管や鋼管の外周面にコンクリートをライニングしたコンクリートライニング鋼管等の鋼管類が用いられている。また、土木工事等の際には、鋼管を地中に打ち込んだ鋼管杭が使用されている。
【0003】
従来、地中に埋設されている鋼管を撤去するには、鋼管を覆っている土砂を除去した後、露出した鋼管を管外側から所定長さに切断する切断作業を行なっていた。次いで、所定長さに切断された鋼管をクレーン等を用いて吊上げて撤去していた。この撤去方法では、鋼管の切断作業のために上方地盤を開削する必要があるので、鋼管の上方に道路等の交通網が存在すると、長期間、交通が遮断、規制される等の障害が生じる。
【0004】
その他の鋼管類として、地中に打ち込まれた鋼管杭を撤去する場合には、管内に切断装置を挿入して、管内側から切断装置の切断刃によって鋼管の周壁を周方向全周に渡って切断し、所定長さに切断した鋼管の部分をクレーンを用いて吊上げる方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、切断装置に取付けられている切断刃が1枚であるため、切断刃が破損した場合や複数箇所の切断を行なうには、切断装置を鋼管の外に取り出して、破損、摩耗した切断刃を新たな切断刃に交換する必要がある。そのため、作業効率を向上させるには不利であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−328570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、地中に埋設されている鋼管類を切断する際に、交通障害を最小限に抑えるとともに、効率的に作業を行なうことができる鋼管類の切断方法および切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明の地中埋設鋼管類の切断方法は、地中に埋設または打設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された保護材被覆鋼管に、複数の回転刃と回転刃切換え機構とを備えた切断装置を挿入し、鋼管内に挿入した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を行ない、前記回転刃切換え機構により使用する回転刃の切換えを行なうことを特徴とするものである。
【0008】
本発明では前記切断作業の際に、使用している回転刃を前記鋼管の管内側から周壁に押し付けるシリンダの油圧またはシリンダロッドのストローク量を検知し、この検知データに基づいて鋼管の切断状況を把握することもできる。或いは、前記切断作業の際に、使用している回転刃を回転させる駆動軸の駆動モータの電流値を検知し、この検知データに基づいて鋼管の切断状況を把握することもできる。本発明では、例えば、予め設定された使用時間毎に、前記複数の回転刃を1枚ずつ順次切換える。
【0009】
本発明の地中埋設鋼管類の切断装置は、地中に埋設または打設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された保護材被覆鋼管を、切断するに際して、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管に内挿される切断装置であって、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管の鋼管の周壁を切断する切断手段と、この切断手段を管長手方向に移動させる移動手段と、管内側からその鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断するように前記切断手段を駆動させる駆動部とを有し、前記切断手段に複数の回転刃を設けるとともに、この複数の回転刃を使用位置に配置する回転刃切換え機構を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、前記使用位置に配置した回転刃を前記鋼管の管内側から周壁に押し付けるシリンダの油圧またはシリンダロッドのストローク量を検知するセンサを設け、このセンサの検知データが入力される制御装置と、入力された検知データに基づいて算出された鋼管の切断状況を表示するモニタとを設けることもできる。或いは、前記使用位置に配置した回転刃を回転させる駆動軸の駆動モータの電流値を検知するセンサを設け、このセンサの検知データが入力される制御装置と、入力された検知データに基づいて算出された鋼管の切断状況を表示するモニタとを設けることもできる。本発明では、例えば、予め設定された使用時間毎に、前記複数の回転刃を1枚ずつ順次切換えて使用位置に配置する設定にする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼管類に挿入した複数の回転刃を備えた切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を行なう際に、前記切断装置に設置した回転刃切換え機構によって、使用する回転刃の切換えを行なうことができるので、回転刃が破損した場合や複数箇所の切断を行なう場合であっても、切断装置を鋼管の外に取り出すことなく、破損、摩耗した回転刃を新たな回転刃に交換することができる。そのため、作業効率を向上させるには有利になる。
【0012】
この切断作業は、切断装置を鋼管類に内挿した状態で行なうので、鋼管類の上方地盤を開削する必要がない。そのため、鋼管類の上方に道路等の交通網が存在しても交通が遮断、規制される等の障害の発生を回避できる。また、この切断作業は、鋼管類の埋設されている地域の環境条件(雨、風等)に影響を受けることなく行なうことができるので、時間的な制約を受け難く、効率よく作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の鋼管類の切断装置を例示する全体概要図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図1のC−C断面図である。
【図5】圧着固定ローラを鋼管の周壁内面に圧着している状態を例示する図1のC−C断面相当図である。
【図6】回転刃により鋼管の周壁を切断している状態を例示する図1のA−A断面相当図である。
【図7】所定長さに分断された鋼管の部分に相当するコンクリートライニング鋼管の部分を地中から吊上げる状態を例示する説明図である。
【図8】コンクリートライニングを破壊して所定長さのコンクリートライニング鋼管を吊上げている状態を例示する説明図である。
【図9】地中に打ち込まれた鋼管杭の所定長さに分断された鋼管の部分を吊上げる状態を例示する説明図である。
【図10】コンクリートライニング鋼管の所定長さに分断された鋼管の部分を水底から吊上げる状態を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の地中埋設鋼管類の切断方法および切断装置を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0015】
図1に例示するように、本発明の地中埋設鋼管類の切断装置1(以下、切断装置1という)は、切断手段となる切断モジュール2と移動手段となる移動モジュール11を備えている。切断モジュール2と移動モジュール11とは、ユニバーサルジョイントを介在させた回転駆動軸5によって着脱可能に連結されている。
【0016】
切断モジュール2は、移動ローラ6が取付けられたベース10を有し、複数の回転刃3が着脱可能に設けられているとともに、前方および後方には固定機構7が配置されている。切断モジュール2全体は、駆動モータ5aにより回転駆動される回転駆動軸5を中心にして回転する構造になっている。駆動モータ5aおよび回転駆動軸5が、管内側から鋼管24の周壁を周方向全周にわたって切断するように切断モジュール2を駆動させる駆動部となっている。
【0017】
さらに、この実施形態では、後述するセンサ20a、20b、20cと、制御装置18とモニタ19とを備えている。
【0018】
図2、図3に例示するように、ベース10に設けられた回転刃切換え機構4は、中心軸4bに固定されて中心軸4bを中心に回転する切換え回転板4aと回転板駆動部4cとを有している。複数の回転刃3は、フリーに回転できるように支軸3aに軸支されて、切換え回転板4aに取り付けられている。
【0019】
図3に例示するように、回転板駆動部4cはラチェット機構になっており、リンク部材4hを介して連結された作動シリンダ4dと回転駆動爪4eとを有している。回転駆動爪4eは中心軸4bに固定された歯車4fを回転させる。歯車4fには逆回転を防止するストッパ4gが設けられていて、切換え回転板4aは、所定の回転位置で固定できる構造になっている。
【0020】
作動シリンダ4dのロッドを伸長移動させることにより、回転駆動爪4eが歯車4fを1歯分回転させ、これに伴い中心軸4bおよび切換え回転板4aが回転する。このような回転板駆動部4cの動作により、切換え回転板4aに取付けられている回転刃3を1枚ずつ順次、使用位置に移動させて配置できるようになっている。
【0021】
図4に例示するように、固定機構7は、ベース10に取付けられた油圧シリンダ9aと一対のアーム8とで構成されている。一対のアーム8は、先端に圧着固定ローラ9cを有し、リンク部材を介してベース10およびシリンダロッド9bに接続されている。一対のアーム8の数は特に限定されるものではなく、切断モジュール2を鋼管24の管長手方向に固定しつつ管円周方向に回転移動させることができればよい。
【0022】
図4に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッド9bが後退した状態では、それぞれのアーム8はベース10に対して格納されるような状態になっている。図5に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッド9bが前進すると、それぞれのアーム8はベース10の半径方向外側に向かって移動する。このように固定機構7は、油圧シリンダ9aの作動によってそれぞれのアーム8を、鋼管24の半径方向に縮径および拡径させる構造になっている。
【0023】
この油圧シリンダ9aは、使用位置に配置された1枚の回転刃3を鋼管24の周壁に押し付けるように機能する。そして、油圧シリンダ9aの油圧を検知するセンサ20a、或いは、シリンダロッド9bのストローク量を検知するセンサ20bが設けられている。
【0024】
移動モジュール11は、水密構造のケーシング17を有し、ケーシング17の内部に駆動モータ5aおよび駆動モータ5aの電流値を検知するセンサ20cが設置されている。尚、3種類のセンサ20a、20b、20cのうち、いずれか1つを設ければよい。
【0025】
ケーシング17の外面には、駆動ローラ13aと従動ローラ13bとの間に架け回された駆動走行ベルト12が設けられている。ケーシング17の外面には、さらに、ケーシング17の半径方向外側に突出移動する圧着移動ローラ14およびアウトリガー15が設けられている。駆動走行ベルト12の駆動によって、移動モジュール11に連結された切断モジュール2は、管長手方向に前進移動および後進移動することができる。
【0026】
ケーシング17には、コンクリートライニング鋼管23(以下、ライニング鋼管23という)の外から延設された電力ケーブル16aや接続ワイヤ16bが接続されている。電力ケーブル16aを通じて切断装置1に必要な電力が供給される。
【0027】
制御装置18には、設置されたいずれかのセンサ20a、20b、20cの検知データが入力される。その入力された検知データに基づいて、制御装置18により鋼管24の切断状況が算出される。算出された鋼管24の切断状況は、モニタ19に表示される構成になっている。
【0028】
次いで、本発明を適用して地中に埋設されているライニング鋼管23を撤去する手順を説明する。
【0029】
図7に例示するように、ライニング鋼管23が陸地の土砂Gの中に埋設されている。ライニング鋼管23の内径は、例えば、1m〜2m程度である。
【0030】
まず、図1に例示するようにライニング鋼管23に内挿した切断装置1を、移動モジュール11によって、ライニング鋼管23の管長手方向の設定された所定位置まで移動させる。切断装置1を移動させる際には、移動モジュール11の圧着移動ローラ14を鋼管24の周壁内面に当接させつつ、駆動走行ベルト12を駆動させる。切断モジュール2では、固定機構7のそれぞれのアーム8を格納状態にすることにより、圧着固定ローラ9cを鋼管24の周壁内面に非接触状態にして、移動ローラ6のみを鋼管24の周壁内面に当接させた状態にする。
【0031】
移動モジュール11のケーシング17は、水密構造になっていて内部に気体が充填されているので、ライニング鋼管23の内部に水が浸入した場合には浮力が生じる。この浮力によって、駆動走行ベルト12による駆動力が得られにくくなるが、駆動走行ベルト12と対向する位置に設けた圧着移動ローラ14を鋼管24の周壁内面に圧着させることにより、駆動走行ベルト12を鋼管24の周壁内面に圧着させるので、確実に駆動走行ベルト12による駆動力を得ることが可能になっている。
【0032】
切断モジュール2を管長手方向に移動させる移動手段は、上記のような移動モジュール11に限らず、他の構成を採用することもできる。例えば、切断装置1の前後端部にそれぞれワイヤ等の紐状体を接続する。そして、切断装置1をコンクリートライニング鋼管23に内挿した際に、一方の紐状体をコンクリートライニング鋼管23の長手方向一方端部の外まで延設し、他方の紐状体をコンクリートライニング鋼管23の長手方向他方端部の外まで延設する。そして、これら紐状体の一方をコンクリートライニング鋼管23の外から引張ることにより、切断装置1(切断モジュール2)を任意の位置に移動させることができる。
【0033】
切断装置1を所定位置に移動させた後は、図5に例示するように油圧シリンダ9aのシリンダロッド9bを前進させることにより、それぞれの固定機構7のそれぞれのアーム8を格納状態からベース10の半径方向外側に拡径移動させて、圧着固定ローラ9を鋼管24の周壁内面に圧着させる。これにより切断モジュール2を、ライニング鋼管23の管長手方向の所定位置で管長手方向に固定する。また、移動モジュール11のアウトリガー15をケーシング17の半径方向外側に突出移動させて、その先端を鋼管24の周壁内面に圧着する。これにより移動モジュール11をライニング鋼管23の管長手方向の設定された所定位置に固定する。
【0034】
アーム8をベース10の半径方向外側に拡径移動させる油圧シリンダ9aのシリンダロッド9bの前進移動により、移動モジュール11のベース10は、ライニング鋼管23の周壁内面に近接移動する。このベース10の移動に伴って、切断モジュール2全体もライニング鋼管23の周壁内面に近接移動する。
【0035】
この切断モジュール2全体の移動によって、図6に例示するように複数の回転刃3のうち、使用位置に配置されている1枚の回転刃3のみが鋼管24の周壁内面に圧着する状態にする。そして、駆動モータ5aの駆動によって、回転駆動軸5を中心にして切断モジュール2全体を回転させる。これにより、使用位置に配置された1枚の回転刃3が、その刃先をライニング鋼管23の周壁内面に圧着させつつ支軸3aを中心にして回転する。
【0036】
このようにして回転刃3の刃先を、鋼管24の周壁に圧着させつつ、この回転刃3を周方向に移動させることにより、鋼管24の管内側からコンクリートライニング25を残して鋼管24の周壁を周方向全周に渡って切断する。コンクリートライニング25を切断してもよいが、少なくとも、鋼管24の周壁については、周方向全周に渡って切断する。切断モジュール2は、鋼管24の周壁内面に圧着固定ローラ9cを圧着させているので、鋼管24の周壁内面に沿って管周方向に円滑に回転移動する。
【0037】
1つの所定位置で鋼管24の切断作業が終わると、図4に例示するように、それぞれのアーム8を格納状態に戻すとともに、突出移動させたアウトリガー15を元の位置に戻す。
【0038】
鋼管24の切断状況は、設置されたいずれかのセンサ20a、20b、20cの検知データに基づいて把握することができる。センサ20aを設置した場合には、油圧シリンダ9aの油圧の変化具合によって切断状況を把握できる。この油圧が切断中の高圧状態から低下した場合に、使用している回転刃3の刃先が鋼管24の周壁を貫通して切断作業が完了したと判断できる。したがって、モニタ19にはこの油圧の経時変化が表示される。
【0039】
センサ20bを設置した場合には、シリンダロッド9bのストローク量の変化具合によって切断状況を把握できる。このストローク量が切断中の状態(緩やかな増加状態)から急激に増加した場合に、使用している回転刃3の刃先が鋼管24の周壁を貫通して切断作業が完了したと判断できる。したがって、モニタ19にはこのストローク量の経時変化が表示される。
【0040】
センサ20cを設置した場合には、駆動モータ5aの電流値の変化具合によって切断状況を把握できる。この電流値が切断中の一定範囲の状態から外れた場合に、使用している回転刃3の刃先が鋼管24の周壁を貫通して切断作業が完了したと判断できる。したがって、モニタ19にはこの電流値の経時変化が表示される。
【0041】
1つの所定位置での切断作業の完了後には、移動モジュール11によって切断装置1を管長手方向に所定長さあけた位置に移動させる。新たに移動した位置においても、既述したように鋼管24の切断作業を行なう。切断装置1を移動させる所定長さは、例えば、10m〜30m程度である。
【0042】
このように、順次、管長手方向の所定長さをあけた位置で、切断装置1によって既述した鋼管24の切断作業を行なうことにより、鋼管24を所定長さに分断する。例えば、ライニング鋼管23の管長手方向一方端側から他方端側に順次、既述した鋼管24の切断作業を行なう。そして、管長手方向の予め設定されたそれぞれの所定位置での鋼管24の切断作業を完了させる。その後、移動モジュール11によって切断装置1をライニング鋼管23の他方端側に向かって移動させてライニング鋼管23の外に移動させる。
【0043】
鋼管24の切断作業によって、回転刃3は消耗するので、回転刃切換え機構4によって切換え回転板4aを回転させて新たな回転刃3を順次、使用位置に配置する。このようにして複数の回転刃3を1枚ずつ順次切換えて鋼管24の切断作業を行なう。
【0044】
例えば、制御装置18に予め設定された1枚の回転刃3の使用時間を入力しておき、この予め設定された使用時間毎に、複数の回転刃3を1枚ずつ順次使用位置に配置して、切換えて使用する。
【0045】
本発明では、切断装置1に設置した回転刃切換え機構4によって、複数の回転刃3を1枚ずつ順次切換えて使用するので、回転刃3が破損した場合や複数箇所の切断を行なう場合であっても、回転刃3の交換のために、その都度、切断装置1をライニング鋼管23から外へ移動させることなく、破損、摩耗した回転刃3を新たな回転刃3に交換することができる。また、鋼管24が極厚(40mm〜60mm程度)であったり、高張力鋼管である場合には、一箇所の切断であっても、複数枚の回転刃3が必要になることもある。このような場合でも、切断装置1をライニング鋼管23に内挿したままで、回転刃3を交換することができる。そのため、本発明では作業効率を向上させるには有利になる。
【0046】
尚、センサ20a、20b、20cの検知データが、途中で著しく変化した場合には、回転刃3が破損したと判断することもできる。
【0047】
次いで、図7に例示するように、鋼管24の切断作業を行なった位置周辺の土砂Gを除去する。土砂Gを除去するに際して、ライニング鋼管23の長手方向に沿って、ライニング鋼管23の両側に矢板等を打ち込んでおき、土砂Gの除去によって地盤が崩れないようにしておく。そして、ライニング鋼管23が埋設されている地域に、クレーン22を移動させて、露出したライニング鋼管23に吊りワイヤ22aを係止する。
【0048】
図7および図8では、鋼管24の切断作業を行なった位置を点線によって示している。したがって、隣り合う点線と点線との間が、所定長さに分断された鋼管の部分24aに相当するライニング鋼管の部分23a(以下、分断相当部分23aという)となる。吊りワイヤ22aを分断相当部分23aに係止する方法は特に限定されないが、実施形態では、ライニング鋼管23の外周面に固定した部材等に吊りワイヤ22aを係止している。
【0049】
次いで、図8に例示するように、分断相当部分23aを吊りワイヤ22aを介してクレーン22によって吊上げる。鋼管24の周壁は、既に周方向全周に渡って切断されているので、吊りワイヤ22aによって吊上げることにより、吊上げる分断相当部分23aの鋼管24の切断作業を行なった位置周辺のコンクリートライニング25は、特別な切断作業を行なうことなく破壊される。
【0050】
このようにして分断相当部分23aを吊りワイヤ22aによってそのまま地上に引き揚げて撤去する。残りの分断相当部分23aについても、この吊上げ作業を順次行なって、対象となるライニング鋼管23を撤去する。
【0051】
このように本発明によれば、鋼管24の切断作業の際には、ライニング鋼管23の上方地盤を開削する必要がない。そのため、ライニング鋼管23の上方に道路等の交通網が存在しても交通が遮断、規制される等の障害の発生を回避できる。そのため、ライニング鋼管23の上方地盤の交通障害を最小限に抑えることができる。
【0052】
また、この切断作業は、ライニング鋼管23の埋設されている地域の環境条件(雨、風等)に影響を受けることなく行なうことができる。これにより、作業が時間的に大きな制約を受けることなくなり、作業の時間的な自由度が増大して効率よくライニング鋼管23の切断作業を行なうことができる。また、ライニング鋼管23の埋設角度によらず、切断作業を行なうことができる。
【0053】
地中に埋設されているライニング鋼管23は、本発明を適用して以下の手順によっても撤去することができる。
【0054】
まず、先の実施形態と同様に、切断装置1をライニング鋼管23に内挿して、ライニング鋼管23の管長手方向の設定された所定位置で、管内側からコンクリートライニング25を残して鋼管24の周壁を周方向全周にわたって切断する。ここで、予め設定された管長手方向のすべての所定位置での鋼管24の切断作業がすべて終わる前に、既に切断作業を行なった部分に対して、上記した分断相当部分23aの吊りワイヤ22aによる吊上げ作業を行なう。
【0055】
例えば、ライニング鋼管23の管長手方向一方端側から他方端側に順次、鋼管24の切断作業を行ないつつ、ライニング鋼管23の一方端側から他方端側の順に、既に所定長さに分断された分断相当部分23aの吊上げ作業を行なって地上に引き揚げて撤去する。吊上げる分断相当部分23aは、鋼管24の切断作業に影響が生じないように、切断作業を行なっている位置から2〜3部分以上離れたものにするとよい。
【0056】
この手順によれば、鋼管24の切断作業と、分断相当部分23aの吊上げ作業とを並行して行なうことができるので、先の実施形態に比べて作業に必要な時間を短縮することが可能になる。
【0057】
上記実施形態では、鋼管24の外周面に保護材を被覆した保護材被覆鋼管としてコンクリートライニング鋼管23を例にしたが、本発明は、その他の保護材被覆配管に適用することができる。保護材被覆鋼管としては、保護材をアスファルトにしたアスファルト被覆鋼管、保護材を合成樹脂にした樹脂被覆鋼管等を例示できる。
【0058】
本発明は、図9に例示するような地中に打ち込まれた鋼管24(鋼管杭)の一部を撤去する際にも適用することができる。鋼管杭の場合も基本的な手順は、上記した実施形態と同様である。ただし、この場合は、切断モジュール2を移動させる移動手段(移動モジュール11)として、切断モジュール2を吊り下げて、管長手方向に移動させるウインチやクレーン等を用いるとよい。
【0059】
そして、管長手方向の所定位置(1箇所)で、切断装置1によって既述した鋼管24の切断作業を行なうことにより、鋼管24を所定長さに切断する。その後、移動手段によって切断装置1を鋼管24の上方端側に向かって移動させて鋼管24の外に移動させる。次いで、所定長さに切断された鋼管の部分24aを吊りワイヤ22aによってそのまま地上に引き揚げて撤去する。
【0060】
本発明は、保護材被覆鋼管に限らず、保護材が被覆されていない単なる鋼管24に適用することもできる。単なる鋼管24が地中に埋設されている場合も同様の手順によって、鋼管24を切断、撤去することができる。
【0061】
また、本発明は、陸地の地中に埋設されている鋼管類(単なる鋼管24やライニング鋼管23)だけでなく、水底の地中に埋設されている鋼管類に適用することもできる。水底の地中に埋設されている鋼管類を切断、撤去する手順も、上記した実施形態と同様である。
【0062】
即ち、水底の地中に埋設されている鋼管類を、鋼管類に内挿した切断装置1によって、管内側から鋼管24の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を、順次、管長手方向に所定長さをあけた位置で行なう。次いで、図10に例示するように、鋼管24の切断作業により所定長さで分断された鋼管の部分24a(或いは分断相当部分23a)を吊上げる吊上げ作業を、順次行なうことによって水上に引き揚げて撤去する。吊上げ作業には、図10に例示するように作業船21に搭載されたクレーン22を用いる。
【0063】
このように本発明によれば、鋼管24の切断作業の際には、水上交通の障害となる作業船21が不要になる。そのため、この水域の水上交通に対する障害を最小限にすることができる。
【0064】
また、鋼管24の切断作業は、この水域の環境条件(波、風、潮流等)に影響を受けることなく行なうことができ、昼夜を問わず行なうことができる。これにより、作業が時間的に大きな制約を受けることなくなり、作業の時間的な自由度が増大して効率よく鋼管類の切断作業を行なうことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 切断装置
2 切断モジュール(切断手段)
3 回転刃
3a 支軸
4 回転刃切換え機構
4a 切換え回転板
4b 中心軸
4c 回転板駆動部
4d 作動シリンダ
4e 回転駆動爪
4f 歯車
4g ストッパ
4h リンク部材
5 回転駆動軸
5a 駆動モータ
6 移動ローラ
7 固定機構
8 アーム
9a 油圧シリンダ
9b シリンダロッド
9c 圧着固定ローラ
10 ベース
11 移動モジュール(移動手段)
12 駆動走行ベルト
13 駆動ローラ
14 従動ローラ
15 アウトリガー
16a 電力ケーブル
16b 接続ワイヤ
17 ケーシング
18 制御装置
19 モニタ
20a、20b、20c センサ
21 作業船
22 クレーン
22a 吊りワイヤ
23 ライニング鋼管
23a 分断相当部分
24 鋼管
24a 所定長さに分断された鋼管の部分
25 コンクリートライニング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設または打設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された保護材被覆鋼管に、複数の回転刃と回転刃切換え機構とを備えた切断装置を挿入し、鋼管内に挿入した切断装置によって、管内側から鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断する切断作業を行ない、前記回転刃切換え機構により使用する回転刃の切換えを行なう地中埋設鋼管類の切断方法。
【請求項2】
前記切断作業の際に、使用している回転刃を前記鋼管の管内側から周壁に押し付けるシリンダの油圧またはシリンダロッドのストローク量を検知し、この検知データに基づいて鋼管の切断状況を把握する請求項1に記載の地中埋設鋼管類の切断方法。
【請求項3】
前記切断作業の際に、使用している回転刃を回転させる駆動軸の駆動モータの電流値を検知し、この検知データに基づいて鋼管の切断状況を把握する請求項1に記載の地中埋設鋼管類の切断方法。
【請求項4】
予め設定された使用時間毎に、前記複数の回転刃を1枚ずつ順次切換える請求項1〜3のいずれかに記載の地中埋設鋼管類の切断方法。
【請求項5】
地中に埋設または打設されている鋼管または鋼管の外周面が保護材で被覆された保護材被覆鋼管を、切断するに際して、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管に内挿される切断装置であって、前記鋼管または前記保護材被覆鋼管の鋼管の周壁を切断する切断手段と、この切断手段を管長手方向に移動させる移動手段と、管内側からその鋼管の周壁を周方向全周にわたって切断するように前記切断手段を駆動させる駆動部とを有し、前記切断手段に複数の回転刃を設けるとともに、この複数の回転刃を使用位置に配置する回転刃切換え機構を設けた地中埋設鋼管類の切断装置。
【請求項6】
前記使用位置に配置した回転刃を前記鋼管の管内側から周壁に押し付けるシリンダの油圧またはシリンダロッドのストローク量を検知するセンサを設け、このセンサの検知データが入力される制御装置と、入力された検知データに基づいて算出された鋼管の切断状況を表示するモニタとを設けた請求項5に記載の地中埋設鋼管類の切断装置。
【請求項7】
前記使用位置に配置した回転刃を回転させる駆動軸の駆動モータの電流値を検知するセンサを設け、このセンサの検知データが入力される制御装置と、入力された検知データに基づいて算出された鋼管の切断状況を表示するモニタとを設けた請求項5に記載の地中埋設鋼管類の切断装置。
【請求項8】
予め設定された使用時間毎に、前記複数の回転刃を1枚ずつ順次切換えて使用位置に配置する設定にした請求項5〜7のいずれかに記載の地中埋設鋼管類の切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−260156(P2010−260156A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114724(P2009−114724)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(391015236)大裕株式会社 (11)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【Fターム(参考)】