説明

地中管埋設工法

【課題】宅地内の階段や床面や石垣,植木等を何ら傷付けることなく、短時間で、低コストで地中管を埋設できる地中管埋設工法を提供する。
【解決手段】道路5側の本管6から宅地1内に地中管9を引き込む埋設工法であって、宅地1内に、開口面積0.2m以内の穴を縦掘りして受信坑10を形成し、この受信坑10に向かって本管6側の発信坑11からジャッキ12を介して横引き管13を押し出し、この横引き管13により形成された横穴内に地中管9を埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に配管を良好に埋設できる地中管埋設工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中管を埋設する作業においては、例えば特許文献1に開示されているような大型の掘削装置を用いて溝や穴を掘り、その中に地中管を埋め込んで埋設工事が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−168926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているような大型の掘削装置を用いて地中管埋設作業を行う場合、例えば道路側の本管から宅地内のメーターボックスまで地中管を埋設させる作業時に、宅地内の階段やコンクリート床面などを壊して溝掘り作業を行い、その溝内に地中管を埋設し、地中管を埋設した後に、壊した階段やコンクリート床面などを元の状態に補修せねばならず、作業工数および工事費用が掛かり過ぎるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、宅地内の階段やコンクリート床などを壊すことなく良好に地中に地中管を埋設することのできる地中管埋設工法の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、道路側の本管から宅地内に引き込む地中管の埋設工法であって、前記宅地内に、開口面積0.2m以内の穴を縦掘りして受信坑を形成し、該受信坑に向かって前記本管側の発信坑からジャッキを介し横引き管を押し出し、該横引き管により形成された横穴内に地中管を埋設することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の地中管埋設工法では、宅地内に小さな径の穴を縦掘りして受信坑を形成し、この受信坑に向かって本管側の発信坑から横引き管を押し出して横穴を形成し、この横穴内に地中管を埋設することができ、宅地内に小さな径の受信坑を縦掘りするだけで良く、宅地内の階段やコンクリート床面等には何ら影響を与えず、これらの階段や床面を壊す必要がなく地中管を埋設することができ、従来のように、地中管の埋設後に階段や床面の修復工事を行う必要がなく、地中管埋設工事における作業工数が少なくなり、期間を短縮させて低コストで地中管を良好に埋設できるものとなる。
【0007】
また、本発明の地中管埋設工法において、前記受信坑が、前記宅地内の地中に埋められたメーターボックスの位置に縦掘りされるものとすることもできる。
こうすれば、既に宅地内に設置されているメーターボックスのスペースを利用し、このメーターボックスのスペース内に受信坑を形成させることができ、宅地内の既設物に何ら損傷を与えることなく良好に受信坑を宅地内に形成させることができ、この受信坑に向かって本管側の発信坑から良好に横引き管を押し出すことができる。
【0008】
また、本発明の地中管埋設工法において、前記地中管が前記横引き管内に挿通されるものとすることもできる。
こうすれば、ジャッキにより横引き管を発信坑から受信坑に向かって押し出し、受信坑まで押し出された横引き管内に地中管を挿通させて、地中管を宅地内の地中に良好に配管することができる。
【0009】
また、本発明の地中管埋設工法において、前記ジャッキが手動による作動圧で作動されるものとすることもできる。
こうすれば、ジャッキは手動により発生される水圧あるいは油圧により作動されて良好に地中に横引き管を押し出してゆくことができ、小型の安価なジャッキで作業を行うことができ、しかも、横引き管を押し出す過程において、宅地内の地中に既存の設置物や石等が存在すると、ジャッキを操作する作業者は、横引き管が設置物や石等に当たったことを良好に感じ取ることができ、宅地内の既存の設置物等に横引き管が無理やり押し付けられてこれらを傷付けることを良好に回避することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施例の地中管埋設工事の説明図である。
【図2】第2実施例の地中管埋設工事の説明図である。
【図3】第3実施例の地中管埋設工事の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、道路5側の発信坑から、宅地内の受信坑に向かって横引き管を配管させた状態の説明図である。
一般の住宅あるいは料亭やガソリンスタンド等の建物2がある宅地1内には、道路5側に階段3が設けられ、雑排水枡7の建物2側にはメーターボックス8が地中に埋められて設置されている。
【0012】
なお、道路5の宅地1との境界線側には側溝4が設けられており、その内側の道路5に水道,ガス,電気等の本管6が配管されている。この本管6と宅地1内のメーターボックス8を繋ぐ地中管9を宅地1内に埋設するに際し、宅地1内のメーターボックス8の設けられているスペースに受信坑10を縦掘りする。この受信坑10は、例えば直径20〜25cmで、深さが40〜50cm程度の小さな穴であり、上面側から見た受信坑10は、丸,四角等の形状で、その開口面積は0.2m以内となっている。
【0013】
一方、道路5側の本管6の地中管を接続する接続部には、人が入ることのできる大きさの発信坑11が形成され、この発信坑11内にジャッキ12が配設される。このジャッキ12は、手動のポンプを備えた水圧または油圧で作動する小型のジャッキで構成されている。
このジャッキ12の先端に横引き管13を接続し、手動のポンプを操作してジャッキ12を作動させて、ジャッキ12を伸長させることで横引き管13を道路5側から宅地1内の地中に押し出すことができ、階段3の下方の地中内に発信坑11から受信坑10に向かって徐々に横引き管13を押し出してゆくことができる。
【0014】
この横引き管13は複数本を繋ぎ合わせて構成することができ、複数の横引き管は、ネジ式等で着脱できるもので、順次その本数を増加させて地中内に押し出される。即ち、ジャッキ12を伸長させて地中内に1本目の横引き管13を押し出し、この状態でジャッキ12を元に戻し、押し出した1本目の横引き管に2本目の横引き管13を接続し、ジャッキ12を再度伸長させることで、2本目の横引き管13を地中内に押し出すことができ、順次、複数の横引き管13を繋ぎ合わせて、ジャッキ12の伸長動作を繰り返すことで、横引き管13は徐々に宅地1内の受信坑10に向かって押し出され、やがては横引き管13の先端が受信坑10に達する。
【0015】
なお、横引き管13の先端には、地中内をスムーズに進むためのヤジリを取り付けておくこともでき、また、先端のヤジリには電波発信器等を取り付けておけば、横引き管13の先端位置を常に地上から確認できるものである。
なお、ジャッキ12は手動のポンプ等で操作されるため、横引き管13を押し出して行く時に、宅地1内の地中に既設の設備や石等が存在して当った場合に、作業者は横引き管13の先端が当ったことを手で感じ取ることができ、この場合は方向を少しずらし、宅地1内の別の位置に受信坑10を形成させる等して、これらの既設埋設物等を破損させることなく良好に横引き管13を受信坑10に向かって押し出すことができる。
【0016】
横引き管13が受信坑10に達した状態で、複数の横引き管13がネジ式で連結されたものであるような場合には、この横引き管13内にメーターボックス8側から地中管(パイプ等)9を挿通させ、地中管9を横引き管13内を通して発信坑11側に引き込み、地中管9の先端の接続金具9aを本管6の接続部位に接続することができるものである。
なお、横引き管13は、ジャッキ12を逆進させる等して順次発信坑11側に抜き取ることで、横引き管13により形成された地中の横穴内に地中管9を良好に埋設することができ、地中管9により本管6とメーターボックス8間を繋ぐことができるものである。
【0017】
なお、地中管9が大径のものであるような場合には、横引き管13も大径のものである必要があり、この場合は、ジャッキ12を介して小径の横引き管13を宅地1の地中内に押し出して小径の横穴を予め形成させておき、その後に大径の横引き管13に変えて、小径の横穴内に大径の横引き管13をジャッキ12を介して押し出して大径の横穴を形成させることができ、横引き管13による横穴の形成作業は、管径の異なる横引き管13を用いて2回以上行われる場合がある。
また、横引き管13を受信坑10まで押し出した後に、横引き管13の先端に地中管9の接続金具9aを接続して、この状態でジャッキ12を逆進させて横引き管13を発信坑11側へ引き戻し、これにより地中管9を横穴内に入れて発信坑11側に引き込むこともできる。
【0018】
このように宅地1側には小径の受信坑10を縦掘りして形成させておき、この受信坑10に向かって発信坑11から地中に横引き管13を押し出すものであるため、階段3は何ら損傷を受けることはなく、階段3はそのままの状態に保持されるため、地中管9の埋設工事後に階段3を何ら補修する必要はなく、コストを低減させて短期間で地中管9の埋設工事を完了することができるものである。
【0019】
次に、図2は第2実施例を示し、この図2では、宅地1内のメーターボックス8に至る床面が、大理石あるいはレンガあるいはコンクリートあるいはインターロッキングや敷石により仕上げられた仕上げ床面14となっている場合であり、仕上げ床面14を何ら傷付けることなく、この仕上げ床面14の下の地中内に良好に横引き管13を押し出して施工するものである。
【0020】
即ち、宅地1内の既存のメーターボックス8の位置に小径の受信坑10を縦掘りして形成させ、この受信坑10に向かって、道路5側の本管6が配管された発信坑11から、手動のジャッキ12を介して順次複数の横引き管13を繋ぎ合わせて水平に押し出し、横引き管13を発信坑11から受信坑10に到達するまで押し出して、受信坑10に到達した状態で、接続金具9aとともに地中管9を横引き管13内に挿通させて、横引き管13内を通し地中管9を発信坑11側に引き込み、地中管9の先端金具9aを本管6の接続部位に接続して、本管6とメーターボックス8間を地中管9により繋ぐことができ、横引き管13は発信坑11側へ引き戻すことで、良好に仕上げ床面14の下方の地中内に地中管9を埋設することができるものであり、本例においても、大理石やレンガやコンクリートで形成された仕上げ床面14には何ら損傷を与えることなく、地中管9の埋設工事を完了することができるものである。
【0021】
次に、図3は第3実施例を示すものであり、図3では、宅地1の道路5側に石垣15や植木16が配置され、その宅地1の石垣15の内側に、大理石やレンガあるいはコンクリート等で形成した仕上げ床面14が存在している場合である。
宅地1内には既存のメーターボックス8が設けられており、このメーターボックス8のスペースを利用して、この位置に、小径の受信坑10を縦掘りして形成させておき、道路5側の本管6の配管されている発信坑11側から、ジャッキ12を介して順次横引き管13を略水平に宅地1の地中内に押し出して、横引き管13を受信坑10に達するように押し出し、横引き管13の先端にメーターボックス8側から地中管9を挿通させて、地中管9を横引き管13内を通して発信坑11内に引き込み、地中管9を本管6に接続して、地中管9により本管6とメーターボックス8間を繋ぐことができるものであり、本例においても、石垣15,植木16,仕上げ床面14には何ら損傷を与えることなく、宅地1の地中内に横引き管13を押し出して良好に地中管9の埋設工事を行うことができるものであり、地中管9の埋設工事が短時間で、かつ低コストで行えるものである。
【符号の説明】
【0022】
1 宅地
2 建物
3 階段
4 側溝
5 道路
6 本管
8 メーターボックス
9 地中管
9a 接続金具
10 受信坑
11 発信坑
12 ジャッキ
13 横引き管
14 仕上げ床面
15 石垣
16 植木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路側の本管から宅地内に引き込む地中管の埋設工法であって、
前記宅地内に、開口面積0.2m以内の穴を縦掘りして受信坑を形成し、
該受信坑に向かって前記本管側の発信坑からジャッキを介し横引き管を押し出し、
該横引き管により形成された横穴内に地中管を埋設すること
を特徴とする地中管埋設工法。
【請求項2】
前記受信坑が、前記宅地内の地中に埋められたメーターボックスの位置に縦掘りされることを特徴とする請求項1に記載の地中管埋設工法。
【請求項3】
前記地中管が前記横引き管内に挿通されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の地中管埋設工法。
【請求項4】
前記ジャッキが手動による作動圧で作動されることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載の地中管埋設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−281184(P2010−281184A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137748(P2009−137748)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(598154752)
【出願人】(509017767)
【出願人】(509017778)
【Fターム(参考)】