説明

地山切削装置

【課題】ワイヤソー等の可撓性切削具の収納量を増大させることができ、これにより地山切削の施工区間を大幅に延長することが可能な地山切削装置を提供する。
【解決手段】無端状のワイヤソー等の可撓性切削具65により地山を溝状に切削するための地山切削装置であって、全体として直方体状をなす機枠50と、機枠50の内方に設けられ、水平方向の軸を有し、機枠の長手方向に沿って往復移動する主プーリ51と、機枠50の長手方向に沿った側面に、互いに間隔を置きかつ長手方向に沿った2つの列をなすように設けられ、主プーリ51の軸と平行な水平方向の軸を有する多数の調整プーリ54a,54bと、主プーリ51及び及び調整プーリ54a,54bに巻き掛けられた可撓性切削具65とを備え、各調整プーリは可撓性切削具65を複数段に巻き掛け可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地山切削装置に関し、より詳細には、例えば鉄道線路や道路などの車両走行路の下方の地盤に該走行路を横断するトンネルを構築するに際し、地山を防護する防護プレートを挿入するために該地山を溝状に切削する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道線路や道路などの車両走行路の下方の地盤に該走行路を横断するトンネル(地下構造物)を構築するに際し、予め防護プレートを地山に挿入して防護する工法が採用されている。
【0003】
この防護工法の1つとして、先にこの出願人は、地山をワイヤソーなどの可撓性切削具で水平方向に切削しながら、その切削部に防護プレート(鋼板)を挿入する工法を提案した(例えば特許文献1参照)。この工法は、地山の変状ひいては鉄道線路の場合は軌道変状を防止することができる極めて有効な工法である。
【0004】
以下、この工法の概要を従来例である図10(特許文献1に示された図1)を参照して説明する。鉄道線路や道路などの走行路1を挟む両側には発進立坑2及び到達立坑3が築造されている。これら発進立坑2及び到達立坑3間の地山内には、防護鋼板(防護プレート)4の幅寸法に対応した間隔を置いてガイド孔を形成する1対のガイド管5a,5bが挿入されている。これらのガイド管5a,5bとしては、塩化ビニルなどの合成樹脂管が用いられる。
【0005】
各ガイド管5a,5bの内部には管軸方向に移動自在に切削用プーリの支持機構6a,6bと、防護鋼板4のクランプ機構7a,7bとがそれぞれ収容されている。到達立坑3の外部及び内部にはワイヤソー8を循環走行させる主プーリ10、ワイヤソー8のガイド管5a,5b内への繰り出し長さを調整する調整プーリ9、ワイヤソー8の方向転換のための方向転換プーリ11が設置されている。
【0006】
これらの主プーリ10や調整プーリ9及び方向転換プーリ11に巻き掛けられたワイヤソー8は、一方のガイド管5a内に繰り出され,ガイド管5a,5b間の地山を横切るように支持機構6a,6bの切削用プーリに巻き掛けられたうえ、他方のガイド管5bを通って地山外部に引き出されている。この無端状のワイヤソー8はワイヤに適宜間隔を置いて多数のダイヤモンドビットを取り付けてなる周知のもので、鉄筋コンクリートを切断する際の切断具として知られている。ワイヤソーに代えてチェーンソーを使用することもできる。
【0007】
到達立坑3には反力壁12から反力を得て作動する牽引ジャッキ13が設置されている。この牽引ジャッキ13に把持されるPC鋼棒(引張材)14は各ガイド管5a,5bの内部を通ってクランプ機構7a,7bに連結されている。以上のような装置構成により、主プーリ10を回転させながら、これを到達立坑3から離間する方向に所定距離移動させ、ワイヤソー8に張力を与えてガイド管5a,5b間の地山を溝状に切削する。同時に牽引ジャッキ13によりPC鋼棒を牽引し、切削溝に防護鋼板4を挿入する。
【0008】
しかしながら、上記工法は発進立坑2での切削開始から切削が進行するにつれて、地山を切削するために必要な地山内部のワイヤソー8の長さが短くなる。言い換えれば、切削が進行するにつれて地山外部に引き出されるワイヤソー8の長さ(余長)が長くなる。このワイヤソー8の余長分を収納するために複数の調整プーリ9を設置しているのであるが、主プーリ10の駆動装置等、各部材の配置関係から収納可能なワイヤソーの余長長さには限度があった。このため、従来は15m程度の施工区間にしか適用できず、それ以上の長さの施工区間に適用するのは困難であった。
【0009】
また、従来の装置では、主プーリ10を含む駆動部全体を移動させ、ワイヤソー8を引っ張ることによりワイヤソーに張力を与え、そのすべり防止を図っていた。しかしながら、この方法では地盤切削にともなうワイヤソーの緩み、あるいは過度の緊張に完全に対応することができなかった。
【0010】
さらに、地盤切削にともないワイヤソーには切削土砂が付着するが、この切削土砂を除去するために、従来は支持機構6a,6bに支持された切削用ガイドプーリに注水し、ワイヤソーの洗浄を行っていた。しかしながら、ワイヤソーに付着した過剰水により土砂を必要以上に切削することになり、直後に挿入される防護鋼板にたわみが発生する原因となっていた。また、ワイヤソー8の引き戻し側のガイド管5b内に切削土砂が堆積し、高圧洗浄機などにより洗い流す必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−332733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、ワイヤソー等の可撓性切削具の収納量を増大させることができ、これにより地山切削の施工区間を大幅に延長することが可能な地山切削装置を提供することにある。
【0013】
この発明の別の目的は、可撓性切削具に加える張力を調整することが可能な地山切削装置を提供することにある。
この発明のさらに別の目的は、地山切削直後に挿入される防護プレートにたわみを生じさせることがなく、可撓性切削具のガイド孔の洗浄も不要となる地山切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、地山に形成された1対のガイド孔の一方に地山外部から繰り出され、ガイド孔間の地山を横切り他方のガイド孔を通って地山外部に引き戻される無端状のワイヤソー等の可撓性切削具により地山を溝状に切削するための地山切削装置であって、
全体として直方体状をなす機枠と、
この機枠の内方に設けられ、水平方向の軸を有し、機枠の長手方向に沿って往復移動する主プーリと、
前記機枠の長手方向に沿った側面に、互いに間隔を置きかつ長手方向に沿った2つの列をなすように設けられ、前記主プーリの軸と平行な水平方向の軸を有する多数の調整プーリと、
前記主プーリ及び及び前記調整プーリに巻き掛けられた前記可撓性切削具とを備え、
前記各調整プーリは前記可撓性切削具を複数段に巻き掛け可能となっていることを特徴とする地山切削装置にある。
にある。
【0015】
上記地山切削装置において、
前記主プーリ近くの前記可撓性切削具の繰り出し側部分及び引き戻し側部分にそれぞれ設けられた2つの押圧プーリと、
これら押圧プーリを前記繰り出し側部分及び引き戻し側部分が互いに接近するように付勢する付勢部材とを有する、可撓性切削具のすべり防止装置を備えた構成を採用することができる。
【0016】
また、上記地山切削装置において、
前記可撓性切削具の前記主プーリへの引き戻し側部分に設けられ、該可撓性切削具を昇降させるための方向変換プーリと、
前記可撓性切削具の上昇部分又は下降部分の一方が挿入される洗浄筒と、
この洗浄筒の上部に設けられ、筒体内部に洗浄水を供給する給水管とを有する、可撓性切削具の洗浄装置を備えた構成を採用することができる。
【0017】
この場合、前記洗浄筒は、サイクロン部を有している構成を採用することができる。また前記洗浄装置は、前記洗浄筒の下方にタンクを有し、このタンクは洗浄水流によって洗い流された土砂を受け入れる泥水室と、前記洗浄筒に洗浄水を供給するための洗浄水室とに仕切られ、前記泥水室の上澄水が洗浄水室にオーバーフロー可能となっている構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、機枠に2列に配列した調整プーリの各々が可撓性切削具を複数段に巻き掛け可能となっているので、地山切削が進行するにつれて可撓性切削具の余長が増加しても、その余長分を収納することができる。したがって、地山切削の施工区間を大幅に延長することができる。
【0019】
また、この発明によれば、主プーリの近くで可撓性切削具の繰り出し側部分及び引き戻し側部分を、付勢部材の付勢力によって互いに接近するように押圧する押圧プーリを設けたので、地山切削中に可撓性切削具に過度な力が加わった場合、あるいは可撓性切削具が緩んだ場合には、押圧プーリーが可撓性切削具の張力を調整し、可撓性切削具には常時所定の張力が作用することになる。したがって、可撓性切削具のすべりを防止することができ、地山切削中のトラブルを回避することができる。
【0020】
また、この発明によれば、可撓性切削具の主プーリへの引き戻し側部分に、その上昇部分又は下降部分が挿入される洗浄筒を有する洗浄装置を設けたので、可撓性切削具はそのの循環走行中、この洗浄装置により常時洗浄され、主プーリには洗浄水が付着していない可撓性切削具が戻されることになる。したがって、地山の切削効率を低下させることがなく、また従来のように送り側ガイド管内の先端プーリ部で洗浄水を噴射することが不要となるので、地山切削直後に挿入される防護プレートにたわみを生じさせることがなく、可撓性切削具のガイド孔の洗浄も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明による地山切削装置の実施形態を示す平面図である。
【図2】同実施形態の正面図である。
【図3】同実施形態の側面図である。
【図4】洗浄装置を示す正面図である。
【図5】主プーリの移動機構を示す正面図である。
【図6】同移動機構の側面図である。
【図7】地山切削装置の設置態様を示し、横置きとした場合の平面図である。
【図8】地山切削装置を縦置きとした場合の平面図である。
【図9】地山切削装置を牽引架台の内外に設置した場合の鉛直方向断面図である。
【図10】従来例を示し、(a)は水平方向断面図、(b)は鉛直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1〜図4に示すように、地山切削装置の機枠50は上面及び4つの側面がそれぞれ開放した直方体状のものであって、図10に示した防護鋼板の到達側に設置される。この機枠50の内方には、その長手方向に沿った一方の側面寄り位置に主プーリ51が設置されている。主プーリ51は機枠50の長手方向に直角な水平軸52を有し、この水平軸52は駆動モータ53に連結されている。駆動モータ53は、機枠50内にその長手方向に沿って設けられたガイド80に搭載され、ガイド80上を往復移動可能となっている。駆動モータ53の往復移動機構については後述する。
【0023】
機枠50の長手方向に沿った他方の側面には、多数の調整プーリ54a,54bが設けられている。調整プーリ54a,54bは、上下方向に互いに間隔を置いた2つの列をなすように設けられ、符号54aで示されるのが上部の列をなす調整プーリであり、符号54bで示されるのが下部の列をなす調整プーリである。これら調整プーリ54a,54bは、主プーリ51と平行な水平軸55を有している。そして、各調整プーリ54a,54bは、水平軸55に同軸となるように複数段に重ねられて配置された複数のプーリ56を有している。
【0024】
機枠50には上記主プーリ51及び調整プーリ54a,54bの他に、ワイヤソー65を地山内に繰り出すための複数の繰り出し側方向変換プーリ57,58,59と、ワイヤソー65を主プーリ51に引き戻すための複数の引き戻し側方向変換プーリ60,61,62,63が設けられている。主プーリ51に巻き掛けられたワイヤソー65は、図中破線で示されている繰り出し側部分65aが複数の方向変換プーリ57,58を通って上部の調整プーリ54a及び下部の調整プーリ54bに巻き掛けられている。この上下部の調整プーリ54a,54bにおいては、ワイヤソー65はその余長長さに応じて上下部調整プーリ54a,54bに交互に、あるいは互いに隣接する上部調整プーリ54a(調整プーリ54bも同様)に連続して巻き掛けられている。さらに、ワイヤソー65は、方向変換プーリ59に巻き掛けられて、地山内部に繰り出されている。
【0025】
地山内でのワイヤソー65の経路は、図10に示した従来のものとほぼ同様である。すなわち、地山に設けられた1対のガイド管5a,5bの一方に挿入され、図10に示したようなプーリ支持機構6a,6bのプーリにガイド管間の地山を横切るように巻き掛けられ、他方のガイド管を通って地山外部に引き出される。地山外部に引き出された、図1〜図3の図面中、実線で示されているワイヤソー65の引き戻し側部分65bは、複数の方向変換プーリ60,61,62,63を通って主プーリ51に戻されている。
【0026】
この発明の地山切削装置は、ワイヤソー65のすべり防止装置を備えている。すべり防止装置は、主プーリ近くのワイヤソーの繰り出し側部分65a及び引き戻し側部分65bに配置された方向変換プーリ57,63と、ワイヤソー65a、65bを互いに接近するように付勢べく各プーリ57,63に設けられたエアシリンダ76で構成されている。この実施形態では、方向変換プーリ57,63がワイヤソー65a,65bを押圧する押圧プーリの役目を兼ねている。
【0027】
また、この発明の地山切削装置は、ワイヤソー65の洗浄装置を備えている。洗浄装置は、引き戻し側のワイヤソー65bを昇降させる方向変換プーリ61,62,63と、洗浄筒66と、タンク67で構成されている。図4は洗浄装置の詳細を示している。洗浄筒66は、上部の大径部である給水部70と、中間部の下方にゆくにつれて径が減少するテーパ状のサイクロン部71と、下部の小径部である洗浄部72とを有している。
【0028】
引き戻し側のワイヤソー65bは、その上昇部分が洗浄筒66内に挿入されている。給水部70には洗浄水を供給するための給水管73が開口している。タンク67はその内部が仕切板74によって仕切られている。仕切板74によって仕切られた一方の室は、ワイヤソー65bの洗浄によって発生し、落下する泥水を貯溜する泥水室68である。他方の室は、洗浄水を貯溜する洗浄水室69である。泥水室68に貯まった泥水は、その切削土砂分が沈降し、上澄水がオーバーフローして洗浄水室69に流入する。この洗浄水室69にポンプ75が配置され、洗浄水が給水管73を経て給水部70に供給される。すなわち、洗浄水は循環使用される。
【0029】
図5,図6は、主プーリ51の駆動モータ53の往復移動機構を示している。ガイド80上には駆動モータ53の走行レール81が設けられている。ガイド80の内外にはその長手方向に沿って無端チェーン82が配置され、この無端チェーン82に駆動モータ53が連結されている。また、ガイド80の内部にはブロック83が配置され、このブロック83に無端チェーン82が連結されている。ブロック83はガイド80内に配置された油圧シリンダ84のロッドに連結されている。この油圧シリンダ84の作動により、無端チェーン82が正逆方向に走行し、これに伴って駆動モータ53がガイド80上を往復移動する。
【0030】
次に、上記地山切削装置の作用について説明する。駆動モータ53により主プーリ51を回転させると、ワイヤソー65は地山内部を通って循環走行する。そして、同時に油圧シリンダ84の作動により駆動モータ53を地山から離間する方向(図1矢印A方向)に移動させると、図10に示したガイド管5a,5b間の地山が切削される。地山切削によって形成された溝に防護鋼板が挿入されるのは、既述したところである。
【0031】
駆動モータ53の移動が1行程分に達すると、主プーリ51の回転が停止され、駆動モータ53は前記とは逆に地山に向かう方向に移動させられ停止する。これにより、ワイヤソー65には余長が生じ、この余長を吸収すべく、調整プーリ54a,54への巻き掛け数を増加させる。そして再び駆動モータ53を回転・移動させ、以下前記と同様の操作を繰り返して地山を切削する。
【0032】
上記のような地山切削において、切削が進行するにつれてワイヤソー65の余長が増加する。この発明では、機枠に2列に配列した調整プーリ54a,54bが複数段のプーリ56からなるので、ワイヤソー65の余長が増加しても、その余長分を収納することができる。したがって、地山切削の施工区間を大幅に延長することができる。
【0033】
また、この発明では、ワイヤソー65の主プーリ51でのすべり防止が図られている。すなわち、繰り出し側ワイヤソー65a及び引き戻し側ワイヤソー65bは、主プーリ51の近くでエアシリンダ76により押圧プーリ57,63を介して常時互いに接近するように押圧されている。これにより、地山切削中にワイヤソー65に過度な力が加わった場合、あるいはワイヤソー65が緩んだ場合には、押圧プーリー57,63がワイヤソー65の張力を調整するので、ワイヤソー65には常時所定の張力が作用することになる。したがって、ワイヤソー65のすべりを防止することができ、地山切削中のトラブルを回避することができる。
【0034】
また、この発明ではワイヤソー65の循環走行中、ワイヤソー65は図4に示した洗浄装置により常時洗浄される。すなわち、給水管73からは洗浄水が給水部70に常時供給される。引き戻し側のワイヤソー65bは、まず洗浄部72で洗浄水を浴びる。そして、サイクロン部71では螺旋状の水流を生じているので、この水流によりワイヤソー65bに付着した切削土砂が洗い流される。また、ワイヤソー65bには一般には撚りが入っているので、その戻り力により給水部70ではワイヤソー65bに残留した切削土砂や付着した洗浄水が吹き飛ばされる。さらに、洗浄装置より主プーリ51に至る経路に配置されている方向変換プーリあるいは押圧プーリ63で、ワイヤソーの走行経路の偏向にともない発生する遠心力により残留する洗浄水が吹き飛ばされる。
【0035】
したがって、地山には洗浄水が付着していないワイヤソー65aが繰り出されることになり、地山の切削効率を低下させることがない。これにより、従来のように送り側ガイド管内の先端プーリ部で洗浄水を噴射することが不要となるので、ワイヤソーに付着した洗浄水による切削土砂の過掘り、これによる地山切削直後に挿入される防護プレートのたわみが生じることがなく、ワイヤソー65の戻り側ガイド管に堆積する切削土砂の洗浄も不要となる。さらに、洗浄水は循環使用されるので、使用水量を低減することができる。なお、図4中、符号79で示す部材は、水滴の飛散防止蓋である。
【0036】
この発明の地山切削装置は、種々の設置態様を採ることができる。図7は、機枠50を横置き(設置面に対し機枠50の長手方向が平行となる設置の仕方)とする場合の平面図である。この場合、同図(a)のように防護鋼板の到達土留め面90に対し機枠50の長手方向が直角となるように設置する方法、あるいは同図(b)のように到達土留め面90に対し機枠50の長手方向が平行になるように設置する方法を採用できる。
【0037】
図8は、機枠50を縦置き(設置面に対し機枠50の長手方向が直角となる設置の仕方)とする場合の平面図である。さらに、機枠50を到達立坑外部に設置するに限らず、図9に示すように機枠50を到達立坑に設置する方法も採用できる。この場合、同図(a)に示すように、機枠50を防護鋼板の牽引架台内に設置したり、あるいは同図(b)に示すように牽引架台上に設置することもできる。
【0038】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の形態を採ることができる。例えば、上記実施形態では各調整プーリ54a,54bにワイヤソー65を複数段に巻き掛け可能とするために、調整プーリ54a,54bを同軸に重ねられた複数のプーリ56で構成したが、1つのプーリに複数のプーリ溝を設けたプーリ構造としてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では洗浄装置において、引き戻し側のワイヤソー65aの昇降部分のうち上昇部分が洗浄筒66を通るようにしたが、下降部分が洗浄筒66を通るようにしてもよい。さらに、主プーリ51の往復移動機構についても、チェーン82と油圧シリンダ84とによる方式に代えて、ラック・ピニオン方式を採用することもできる。
【符号の説明】
【0040】
50 機枠
51 主プーリ
53 駆動モータ
54a,54b 調整プーリ
57,58,59 方向変換プーリ
57,63 押圧プーリ
65 ワイヤソー
65a 繰り出し側ワイヤソー
65b 引き戻し側ワイヤソー
66 洗浄筒
69 洗浄水室
71 サイクロン部
73 給水管
76 エアシリンダ
80 ガイド
81 走行レール
82 無端チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に形成された1対のガイド孔の一方に地山外部から繰り出され、ガイド孔間の地山を横切り他方のガイド孔を通って地山外部に引き戻される無端状のワイヤソー等の可撓性切削具により地山を溝状に切削するための地山切削装置であって、
全体として直方体状をなす機枠と、
この機枠の内方に設けられ、水平方向の軸を有し、機枠の長手方向に沿って往復移動する主プーリと、
前記機枠の長手方向に沿った側面に、互いに間隔を置きかつ長手方向に沿った2つの列をなすように設けられ、前記主プーリの軸と平行な水平方向の軸を有する多数の調整プーリと、
前記主プーリ及び及び前記調整プーリに巻き掛けられた前記可撓性切削具とを備え、
前記各調整プーリは前記可撓性切削具を複数段に巻き掛け可能となっていることを特徴とする地山切削装置。
【請求項2】
請求項1記載の地山切削装置において、
前記主プーリ近くの前記可撓性切削具の繰り出し側部分及び引き戻し側部分にそれぞれ設けられた2つの押圧プーリと、
これら押圧プーリを前記繰り出し側部分及び引き戻し側部分が互いに接近するように付勢する付勢部材とを有する、可撓性切削具のすべり防止装置を備えたことを特徴とする地山切削装置。
【請求項3】
請求項1記載の地山切削装置において、
前記可撓性切削具の前記主プーリへの引き戻し側部分に設けられ、該可撓性切削具を昇降させるための方向変換プーリと、
前記可撓性切削具の上昇部分又は下降部分の一方が挿入される洗浄筒と、
この洗浄筒の上部に設けられ、筒体内部に洗浄水を供給する給水管とを有する、可撓性切削具の洗浄装置を備えたことを特徴とする地山切削装置。
【請求項4】
請求項3記載の地山切削装置において、
前記洗浄筒は、サイクロン部を有していることを特徴とする地山切削装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の地山切削装置において、
前記洗浄装置は、前記洗浄筒の下方にタンクを有し、このタンクは洗浄水流によって洗い流された土砂を受け入れる泥水室と、前記洗浄筒に洗浄水を供給するための洗浄水室とに仕切られ、前記泥水室の上澄水が洗浄水室にオーバーフロー可能となっていることを特徴とする請求項2記載の地山切削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−196133(P2011−196133A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65739(P2010−65739)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(399101337)株式会社ジェイテック (20)
【出願人】(505450940)株式会社ホクト (3)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【Fターム(参考)】