説明

地熱・地下水を利用した施設園芸用のノンデフロストヒートポンプ装置

【課題】 温室における施設園芸栽培の方法として、温風暖房機・重油暖房機・温水暖房機等を使用し、温室内の暖房を行う。これらの機器は、いずれも原油をその動力源としているため、原油市場価格高騰により社会全般が原油コスト高の影響で利益を圧迫するという問題が発生している。
【構成】 施設園芸栽培を行う温室の内部に設けた室内機と、室内機に接続する冷媒の流入又は流出を行う冷媒配管と、室内機に冷媒配管を接続したノンデフロストヒートポンプ室外機と、ノンデフロストヒートポンプ室外機に接続した地熱又は地下水の水冷熱源(潜熱)を吸熱するために熱交換器と、この熱交換器の近傍に送風機を設けたことを特徴とした施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花き・野菜・果物等の作物及び/又は植物の施設園芸栽培においては、温室、育苗装置、植物工場等(以下、温室とする)の一定の温度環境・湿度環境の生成が必要とされる(要求される)。この温室を用いる施設園芸栽培においては、その目的とする温度環境・湿度環境を生成するために、地熱及び/又は地下水を利用したノンデフロストヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室を用いた施設園芸栽培の方法として、温風暖房機・重油暖房機・温水暖房機等を使用し、温室内の暖房を行っている。そして、これらの機器を用いて暖房を行うことは、いずれも原油をその動力源としているため、昨今の様に、原油市場価格高騰で社会全般が原油コスト高の影響で利益を圧迫しており、この花き・野菜・果物等を代表する温室に用いる施設園芸栽培に代表する施設園芸業界も、前記のように、温室加温用暖房機の燃料である重油・灯油の高騰で代替エネルギーが最大の関心事であり、事業継続の可否を左右すると言っても過言ではない状況にある。
【0003】
現在、この状況下において、クリーンエネルギーで重油と比較すると、50%〜60%も、そのランニングコストが安価で二酸化炭素の排出量も少ない電気式農事用ヒートポンプが脚光を浴びており、既に多方面に亘り使用されている。
【0004】
しかし、この電気式の空気熱源用ヒートポンプは、暖房運転時において、暖房能力を保持するため、除霜サイクルという運転を行い、そのために、約30%程度の暖房能力を要していた。その結果、約30%程度の暖房能力が不足し、1時間に1回、室外機内に設けた熱交換器に付着した霜を取り除くために、除霜運転を行うため、連続的に暖房運転を実施できず、温室に用いる施設園芸栽培において、温度調整等が効率よく行うことができない等の問題点が生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、空気熱源用ヒートポンプの欠点である除霜運転サイクル温度域に到達しないように、熱交換器に地熱・地下水を循環させて、連続的な暖房運転を可能とするノンデフヒートポンプ装置を採用したものである。
【0006】
そこで、本発明に関し、先行技術文献の調査を行ったので、下記に例示する。
【0007】
文献(1)は、特開2004−360957「空気調和機」である。その概要は、加湿ロータを介し、加湿空気を室内に供給するための加湿通路と、加湿通路の加湿ロータの上流側に配置されたヒータを備え、加湿ロータの風下側に配置されたダンパーにより、加湿通路から除霜用通路に切り換えて、ヒータの加熱空気を除霜用通路により、室外熱交換器に供給する構造とし、除霜時間を短縮し暖房運転時間の短縮化を図ることを意図する。
【0008】
また文献(2)は、特開2003−161546の「熱源設備製造方法、及び、熱源ユニット」である。その概要は、熱源ユニットに埋設外部熱媒管に接続して、ヒートポンプの熱源交換器又は出力側交換器に熱媒を伝導する熱源設備を構築し、外部熱媒管をその管端部が基礎設置予定箇所に突出する状態とし、基礎上へと臨ませる状態に挿通する孔又は切欠き状の管挿管部を形成してある既成の基礎を、外部熱媒管の管端部に挿通した状態で、基礎設置予定箇所に設置し、熱源ユニットを設置して、管挿通部に挿通した状態である外部熱媒管の管端部を熱源ユニットに接続する構造であり、ヒートポンプをケースに内装した熱源ユニットを使用する熱源設備に合理的な施行形態を採用することで、設備の施工を容易に、効率よく行なうことを意図する。
【0009】
最後に文献(3)は、特許登録第3972839号の「温水利用システム」である。その概要は、水道水や井戸水が流入する貯湯タンクに、この貯湯タンクの下部から低温水を取り出し、このヒートポンプ等の熱源により加熱する貯湯タンクの上部に高温水とし、戻す加熱用循環経路を接続して、貯湯タンクの上部に先端に給湯口を有する出湯経路を接続する出湯経路の途中から分岐した分岐路を熱交換器の一次側を介し、この貯湯タンクの下部に接続して一次側循環路を形成し、熱交換器の二次側を熱負荷端末の入側と出側とに接続して二次側循環路を形成すると共に、二次側循環路の往路側に、熱負荷端末からの復水の少なくとも一部と熱交換器の二次側から流出する高温水とを混合状態にする構造であり、温度領域の異なる複数の負荷端末(高負荷端末、低負荷端末)を順に加熱することができ、効率よく熱利用が行うことを意図する。
【0010】
【特許文献1】特開2004−360957
【特許文献2】特開2003−161546
【特許文献3】特許登録第3972839号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
文献(1)は、ダンパーにより、加湿通路から除霜用通路に切り換えて、除霜用通路からヒータの加熱空気を供給することを意図しているが、除霜を完全に排除できる構造ではなく、除霜運転を間欠的に行う必要性が生じること、特に、冬季の厳寒時に除霜運転が頻繁に入り加温能力が低下する等の問題点が発生する。
【0012】
また文献(2)は、この構造に関しては、熱源ユニットを使用する熱源設備に合理的な施行形態を採用しており、安定した熱源の設備を供給できることを意図しているが、前記文献(1)と同様に、間欠的に除霜運転を行う必要性が生じ、前記文献(1)と同様な問題点が生じると考えられる。
【0013】
最後に文献(3)として、水道水や井戸水が流入する貯湯タンクに、この貯湯タンクの下部から低温水を取り出すものであるが、前記文献(1)と同様な問題が発生するとともに、熱負荷端末からの復水の少なくとも一部と熱交換器の二次側から流出する高温水とを混合状態にする構造を採用するため、熱の損失が生じると考えられる。
【0014】
なお、このような問題点に加えて、上記(1)〜(3)の文献は、家庭・工場等の分野に限定しており、本願発明のように、温室等の施設園芸栽培の分野で使用するノンデフロストヒートポンプ装置ではなく、この点についても、文献(1)〜(3)と本願発明は、相違すると考えられる。
【0015】
そこで、本出願人は、下記のような効果を生じる発明を完成させたので、下記に列挙する。
(イ)暖房運転時における除霜サイクルによる約30%のロスを補填できるため、そのヒートポンプ本来の能力を完全な状態で発揮し、連続的に暖房運転を行うことができる。また、作物・植物等の栽培をその作物等の個々の生育状況(生育条件)に応じて、効率的な冷暖房運転を行う。
(ロ)夏季においては、その熱交換器内の凝縮温度を下げることにより、消費電力(ランニングコスト)を抑え、電気代を節約することができる。さらに、夏季の夜間冷房運転を実施可能として、施設園芸栽培の拡大が図れる。また、上記の夜間冷房運転を実施できるため、昼間に局所的に電気を使用することが回避でき、24時間にわたり安定した電気の使用(供給)が図れる。
(ハ)地中温度は1年を通じて安定しており、その外気温度と比較しても、夏季は低く、冬季は高いため、この水冷熱源を利用することにより、冷房・暖房能力の効率よく発揮することができる。
(ニ)二酸化炭素の排出量が石油燃料と比較すると、約40〜50%程度減量することができ、地球環境に優しい運転を行える。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明は、前記(イ)〜(ニ)の目的を達成すること、この目的を達成するために最適な熱交換器を提供することを意図する。
【0017】
請求項1は、施設園芸栽培を行う温室の内部に設けた室内機と、この室内機に接続する冷媒の流入又は流出を行う冷媒配管と、前記室内機に冷媒配管を接続したノンデフロストヒートポンプ室外機と、このノンデフロストヒートポンプ室外機に接続した地熱又は地下水の水冷熱源(潜熱)を吸熱するために熱交換器と、この熱交換器の近傍に送風機を設けたことを特徴とした施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置である。
【0018】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するために最適な地中熱交換器と地熱配管を提供することを意図する。
【0019】
請求項2は、請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、
前記熱交換器に、地中に埋設した地中熱交換器と、この地中熱交換器で吸熱した水冷熱源を熱交換器へ流入する又は熱交換器からの排熱を地中へと還元する地熱配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフヒートロストポンプ装置である。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するために最適な井水配管を提供することを意図する。
【0021】
請求項3は、請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、
前記熱交換器を、地下水・井戸水・貯水槽等の水槽(地下水とする)に浸積した、水冷熱源を流入する又は水冷熱源を地下水へと還元する井水配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明は、施設園芸栽培を行う温室の内部に設けた室内機と、この室内機に接続する冷媒の流入又は流出を行う冷媒配管と、前記室内機に冷媒配管を接続したノンデフロストヒートポンプ室外機と、このノンデフロストヒートポンプ室外機に接続した地熱又は地下水の水冷熱源(潜熱)を吸熱するために熱交換器と、この熱交換器の近傍に送風機を設けたことを特徴とした施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置である。
【0023】
従って、請求項1は、下記の特徴を有する。
(イ)暖房運転時における除霜サイクルによる約30%のロスを補填できるため、そのヒートポンプ本来の能力を完全な状態で発揮し、連続的に暖房運転を行うことができる。また、作物・植物等の栽培をその作物等の個々の生育状況(生育条件)に応じて、効率的な冷暖房運転を行う。
(ロ)夏季においては、その熱交換器内の凝縮温度を下げることにより、消費電力(ランニングコスト)を抑え、電気代を節約することができる。さらに、夏季の夜間冷房運転を実施可能として、施設園芸栽培の拡大が図れる。また、上記の夜間冷房運転を実施できるため、昼間に局所的に電気を使用することが回避でき、24時間にわたり安定した電気の使用(供給)が図れる。
(ハ)地中温度は1年を通じて安定しており、その外気温度と比較しても、夏季は低く、冬季は高いため、この水冷熱源を利用することにより、冷房・暖房能力の効率よく発揮することができる。
(ニ)二酸化炭素の排出量が石油燃料と比較すると、約40〜50%程度減量することができ、地球環境に優しい運転を行える。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、熱交換器に、地中に埋設した地中熱交換器と、地中熱交換器で吸熱した水冷熱源を熱交換器へ流入する又は熱交換器からの排熱を地中へと還元する地熱配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置である。
【0025】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するために最適な地中熱交換器と地熱配管を提供できること等の特徴を有する。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、熱交換器を、地下水・井戸水・貯水槽等の水槽(地下水とする)に浸積した、水冷熱源を流入する又は水冷熱源を地下水へと還元する井水配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置である。
【0027】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するために最適な井水配管を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面の説明をすると、図1はノンデフロストヒートポンプ装置の地中熱交換器を利用した例における全体の概略を示したシステム図、図2は図1の他の一例であり、地下水を利用した例における全体の概略を示したシステム図、図3−1はノンデフロストヒートポンプ室内機の正面図、図3−2は図3−1の平面図、図3−3は図3−1の側面図、図4−1はノンデフロストヒートポンプ室外機の立面図、図4−2は図4−1の側面図、図4−3は図4−1の裏面図、図5は地中熱交換器の正面図、図6は地中の一年間における温度の変化をグラフ化した模式図、図7は監視画面の一例を示した正面図である。
【0029】
以下に本願発明に基づく一例について説明する。
【0030】
1は、花き・野菜・果物等の作物及び/又は植物の施設園芸栽培を行う温室・育苗装置・植物工場等(以下、温室Aとする)の近傍に設置するノンデフロストヒートポンプ装置である。温室Aの作物への直接的な又は間接的な(総合的な又は個別的な送風を行うことで、)暖房又は冷房を行う(温風又は冷風の吹き出しを行う)温室Aの内部に設けた室内機2を冷媒配管3により接続し、その温熱又は冷熱の冷媒量(循環流量)を決定し、前記施設園芸栽培で生育する作物及び/又は植物に対して、安定した温度環境・湿度環境を生成し、良質な作物を提供する。
【0031】
そして、冷媒配管3の一方端に、室内機2を接続し、その他方端に、温室Aの外部に設けたノンデフロストヒートポンプ室外機4を接続する。このノンデフロストヒートポンプ室外機4に、地熱又は地下水の水冷熱源(潜熱)を吸熱するために熱交換器10を設ける。また、熱交換器10の近傍に送風機15を設ける。
【0032】
そこで、地中にある地熱の吸熱又は排熱を行う地熱利用の一例を挙げて説明する。
【0033】
まず、地盤及び地下水(地下水について詳細は後述する。)の保有エンタルピーを熱源とし、さらに、排熱吸収源として、ノンデフロストヒートポンプ室外機4を介して、水冷熱源として利用する(吸熱する)。なお、この地熱は、図6に示すように、略地下10mよりも浅い地盤に賦存する温度が数十℃以下の低温の熱エネルギーであり、外界の気候変動によらず、年間を通じて、略一定である。また、ノンデフロストヒートポンプ装置1の設置場所は、農地であるため、水冷熱源の吸熱を行う地中熱交換器6を埋設するためのスペースが充分に確保できる。なお、この地熱用熱交換器6を埋設に当たり、地中に水分が多く含まれている場合、その潜熱熱量(水分を含む熱量)が多いため、熱の有効利用が図れる等の効果が考えられる。
【0034】
熱交換器10は、具体的には、地熱配管50を介して、地中熱交換器6と接続する。なお、この地熱配管50は、2本の地熱配管50を用い、その一方端を地中熱交換器6に接続し、その他方端を熱交換器10と接続する。この地熱配管50は、前記2本の配管のうちの1本の配管を吸熱用、もう1本の配管を排熱用とし、この水冷熱源の流入又は流出を平均的に行い、この2本の配管を介して、水冷熱源が循環するような構造を採用し、熱の損失、漏れ等を防止する。なお、この地熱配管50は、その構造上、漏水の可能性が高いため、継ぎ手を少なくすることが望ましく、熱伝導率のよい、肉厚な形状の方が好ましい。また、耐久性・防食性が備わり、施行時に折曲げを要するため、可撓性を備える必要がある。例えば、この要件を全て満たすための材質として、樹脂・ステンレス・管径13〜50Aの高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0035】
次に、地中熱交換器6は、長尺のチューブであり、水平方向に折り返すよう(束ねるように)、蛇腹状態に積層する。なお、この長さは、もちろんその掘削孔を施行(組付)時のコスト及び時間を考慮する。
【0036】
次に、ノンデフロストヒートポンプ室外機4について説明を行う。このノンデフロストヒートポンプ室外機4内は、この地熱配管50から潜熱(熱源)の吸熱量の調整を行う循環ポンプ8と、この循環ポンプ8を稼動する動力手段8aと、この動力手段8aにより、循環ポンプ8で前記水冷熱源を流入する熱交換器10が設置されている。なお、この熱交換器10は、空冷式熱交換器11に付設するものであり、その水冷熱源の保存容量が、例えば、7:3となるように、空冷式熱交換器11の割合が大きくなるように設ける。この比率は、空冷式熱交換器11と熱交換器10を拡大又は縮小することで、変更可能であるが、熱交換器10は、地熱・地下水(詳細は後述する)の水冷熱源(潜熱)を循環利用することにより、除霜運転サイクル温度域に到達しないように、暖房運転時における除霜サイクルによる約30%のロスを補填できる容量が確保できればよい。
【0037】
なお、熱交換器10の空冷式熱交換器11から、冷媒配管3を介して、圧縮機30を接続する。そして、この圧縮機30から室内機2へと冷媒配管3を介して、接続する。なお、この冷媒配管3は、前記圧縮機30で生成された冷媒を通過させるため、その冷媒配管3は、開閉弁3aを有しており、周囲の温度・湿度等の気候条件に照合して、この冷媒量を制御する。
【0038】
前記制御は、制御器14により、行われる。例えば、制御器14は、その温室Aの内部に設け、この温室A内の温湿度を測定することにより、生育されている作物・植物等の生育環境(生育条件)に応じて、ノンデフロストヒートポンプ室内機2から適宜温風又は冷風を送風する。なお、この制御器14により、地中内の温度を検知し、例えば、冬季時、夏季時以外において、その暖房運転時において、地中温度が外気温よりも低い場合、また、冷房運転時において、地中温度が外気温よりも高い場合等は、水冷熱源を利用しないことも、制御器14の制御により、選択することができ、温室A内の作物にとって、効率的な冷暖房が行える。例えば、冬季においては、降雪・吹雪等で、その貯水槽31の水温が低下する場合等は、地下水の利用において、水冷熱源(潜熱)の利用回収が大きく図ることができないため、その際は、前記制御器14により、水冷熱源(潜熱)の流入は停止することができる。この制御器14は、ノンデフロストヒートポンプ装置1の故障時・停電時等にも、対応を講ずる。これらの制御以外にも、個別又は総合的な制御を行い、温室A内の作物の生育環境に合わせた送風(冷暖房)を行うものとする。そして、この制御14は、その温室Aの作地面積に応じて、そのノンデフロストヒートポンプ装置1が、複数台設置される場合等も、一方の装置と、その他の装置を連動させて、総合的に演出することも可能である。
【0039】
その制御盤14について、詳細に説明すると、監視画面140が付与されている。例えば、この監視画面140は、2つの表示画面を設けてあり、その一方の監視画面140aを、多連棟(例えば、温室A・B・C等にある場合)の中から個別に選択された温室A内の乾球温度・湿球温度を折れ線グラフでグラフ化したものを表示する。この温室Aの選択は、その他の一方の監視画面140bで温室A・B・C等の中から個別又は複数(グループ毎)で選択する。災害時等の緊急を要する場合は、総合的に、複数の温室Aの制御が可能となるように、温室全部の平均温度が検出され、表示画面に表示される。また、一方の監視画面140aに表示される前記の折れ線グラフによるグラフ化は、その乾球温度・湿球温度の推移が目視確認することができる形態であればよく、色を付すこと、破線を使用すること等の方法もその他の例として考えられる。なお、その他の一方の監視画面140bは、複数ある温室A・B・C等の乾球温度・湿球温度をデジタル表示し、例えば、温室Aの1棟は、乾球温度23℃・湿球温度18℃等と表示される。また、例えば、目標の温度設定と、実際の温度が著しく異なる場合等は、その温室Aの1棟が赤色の画面で表示されたりし、その室内機2からの送風が的確に行えていない、又は地熱(水冷熱源)の温度が、著しく低い等の原因が、一方の監視画面140aに詳細に表示される。なお、この一方の監視画面140aを視認できない時、管理者が遠方にいている時、夜間時等は、管理者の携帯電話等にメール送信を行うことができ、管理者は、その異常時等を早急に認識することができ、迅速な対応策を講ずることができる。このことで、温室Aの作物・植物への損失を軽減でき、悪化を回避することができる。上述以外にも、監視画面140を2つ以上設けて、使用することで、前述の効果に寄与できることも考えられる。この監視画面140で温室A内の状況を目視するため、監視カメラ等を設置することも望ましい。そして、この監視カメラを設けることで、防犯上にも寄与することができる。
【0040】
以下、このノンデフロストヒートポンプ室外機4の各機器について、その詳細を説明する。
【0041】
循環ポンプ8は、地熱配管50から地中熱交換器6を介して、その定格の循環水量を確保する必要があり、この循環水量は、ノンデフロストヒートポンプ室外機4の使用に応じて、変更する。この循環水量(水冷熱源)が、不足した場合は、熱交換器10の循環水量の流速が不足(低下)し、熱交換率が非常に悪化するおそれが生じる。このような場合は、前記制御器14を介して、対応を行う。
【0042】
圧縮機30は、ピストン、シリンダーによって、冷媒を圧縮して、スクリュー、ロータリー、スクロールによる容積変化で冷媒を圧縮する容積圧縮式と、遠心力を利用する圧縮する遠心式のどちらの方式でもよく、その圧縮形態は、断熱圧縮が望ましいと思われる。
【0043】
熱交換器10は、空冷式熱交換器11に付設したものであり、この空冷式熱交換器11は、液体〜気体又は気体〜液体への変更を行うものである。なお、この空冷式熱交換器11は、チタン製、SUS製、銅製等の材質が挙げられる。そして、この形態は、空冷式熱交換器11は、複数段のアルミフィン11aと銅管11bを幾重にも積層させたものであり、その銅管11b内部に冷媒を通過させて、この冷媒を、例えば、凝縮器としての役割を担うため、気体を冷却して、液体へと熱交換を行うものであり、また、蒸発器としての役割を担うため、液体を加熱し気体へと熱変換を行うものであり、水冷熱源(潜熱)の効率的な利用を行う。
【0044】
次に、室内機2は、ダクト20(筒体)部分に設けたフック等の係止手段21を介して、温室Aの天井付近に設けた杆、梁等から吊架する。この係止手段21の係止位置は任意であり、室内機2が、安定した状態で、懸架することができ、温室Aの全体に、作物・植物を中心として、その送風自体が万遍なく均等に行え、その温室A内にある作物に対して、最適な温度環境・湿度環境を生成する。室内機2の設置位置は、この温室Aの妻面に面するように、温室Aの外側(温室Aの屋外)から、温室A内へと送風を行えることも考えられ、雨、風等の水、埃の浸入を回避するため、室内機2にフード・カバー・網体等の被覆物を設ける構造も可能である。
【0045】
この室内機2には、その吐出口にその温室Aのダクトホースを添設する。なお、このダクトホース22は伸縮性、可撓性を備えたものであり、例えば、温室Aの長手方向に沿って、このダクトホース22を設置する。このダクトホース22の下端部に開設した噴出孔22aから適宜直下するように、温風又は冷風を送風する。なお、前述の通り、伸縮性のものを採用することで、ダクトホース22の交換時、停止時等において、収納保管に最適である。また、可撓性を備えたことにより、このダクトホース22を、俯角調整や角度調整を行うことが可能となる。
【0046】
次に、水冷熱源の流れを冬季の暖房運転時を例に説明すると、地中熱交換器6を介して、その温室Aの地中にある潜熱(地熱)を地熱又は地下水の水冷熱源を地熱配管50によって、循環ポンプ8により、吸い込まれる。
【0047】
そして、吸熱された水冷熱源は、ノンデフロストヒートポンプ室外機4内にある熱交換器10まで導かれ、熱交換が行われ、高温の気体の冷媒が生成される。そして、この高温の気体の冷媒は、この熱交換器10の近傍に設けられた送風機15により、空冷式熱交換機11へと送風され、除霜サイクル温度域に達しない容量の冷媒量が送られる。この空冷式熱交換器11へと送風された高温の気体の冷媒は、空冷式熱交換器11の着霜を防止し、空冷式熱交換器11の温度が低下することを防ぐ。
【0048】
この送風機15は、整流翼(整流板)を設けると、直線的な風の流れを生成することができ、この送風機15により、冷媒が効率よく送ることができる。なお、この送風機15は、吐出口にダクトを付設し、ダクトの形状・羽根の形状、枚数・モーターの出力量等を変更することで、その冷媒の送り量を、調整することはでき、熱交換器10と空冷式熱交換器11の容量に応じて、冷媒の損失を軽減する。
【0049】
つまり、この交換器10で生成された冷媒は、除霜サイクル温度域へと達しないように、暖房の役割を担い、温度域の調整を行うものである。なお、空冷式熱交換器11で生成された冷媒は、除霜サイクルを行うことなく、連続的に暖房運転を行うことができる。なお、この圧縮機30へと至った冷媒は、より高温の気体の冷媒へ生成される。そして、この圧縮機30で生成された冷媒が、冷媒配管3を介して、室内機2へ流入し、温室Aに温風が送風される。なお、夏季時においては、前述のように、地中熱交換器6で吸熱した水冷熱源(潜熱)は、熱交換器10へと至る。そして、熱交換器10で生成した冷媒は、その凝縮温度を下げることができるため、その電力を消費する割合を押さえる。なお、排熱(放熱)の方法としては、室内機2からの冷媒を、冷媒配管3を介して、熱交換器10まで還元させる。そして、この熱交換器10により熱交換された熱源は、地熱配管50を介して、地中へと還元される役割を果たす。
【0050】
次に、地下水利用を行う方法について、説明する。
【0051】
まず、31は、温室Aの近傍、地下に設けた井戸水、地下水、水道水、貯水槽等(以下、井戸水とする)の水を貯水する貯水槽であり、この貯水槽31の水を循環ポンプ10に汲み上げるための井水配管51と、この井水配管51に連通するノンデフロストヒートポンプ室外機4に接続する。この水は、普通の水を使用しているが、液体であれば、必ずしも水でなくてもよい。循環ポンプ8の動力を軽減することができ、さらに、配管の大きさ、径の大きさをより小さくすることができるならば、他の液体を使用することも充分に使用が可能となる。また、熱伝導率の考慮を必要とする。なお、これらの水(液体)以外にも、温泉施設、工場等から流出される排湯を利用したり、また、下水熱等を利用したりすることも考えられ、冬季における外気温度が非常に寒い場合等は、これらの水を利用して、その地下水の有効利用を図ることができると考えられる。地下水利用を行うにあたり、温室の農事用に設けられた専用井戸を使用することで、わざわざ配管を掘削する必要性もなく、地下水による安定した供給を行うことができる。
【0052】
そして、貯水槽31が、地中熱交換器6と同様の働きを担うため、地中熱交換器6と地熱配管50の関係と同様に、井水配管51と貯水槽31で、水冷熱源を吸熱する。
【0053】
そして、地下水を利用した貯水槽31によるノンデフロストヒートポンプ室外機4及び室内機2を利用した冷暖房を行う際における水冷熱源・冷媒の流れは、原則として、地熱利用を図る場合と、その構造及び用途は、同一であるため、省略する。
【0054】
次に、この冷媒について、説明すると、ノンデフロストヒートポンプ室外機4及び室内機2内の冷媒は、液体〜気体(蒸気)の相変化を行うものであれば、その原理的には、空気、水を含め、どのようなものでも使用可能であるが、使用温度、熱源温度レベルに照合して、冷媒を使用するものとする。なお、この冷媒は、HFCの混合冷媒であるR410Aが、挙げられ、ODP(オゾン破壊係数)が0であるため、地球環境にもやさしく、使用に適していると考えられる。なお、この冷媒以外にも、混合冷媒の種類として、R404A、R407A等が挙げられる。そして、この新冷媒R410A採用により省エネルギーにもつながり、成績係数が3.5以上と高い熱エネルギーが得られると考えられる。
【0055】
そして、補助的な機能として、使用前日の夜間中に、熱源機を利用して、夏季においては、冷水(水)等の冷蓄熱を蓄熱槽に貯蔵し、冬季においては、温水等の温蓄熱を同じく蓄熱槽に貯蔵し、昼間中に使用する構造を採用することで、蓄熱槽を利用することにより、夜間時の安価な電力を利用し、昼間時の冷暖房時における経済性を高め、さらに、定格で効率よく運転できる省エネ性を確保でき、昼間時のピーク時間に空調に使用される電力を夜間時に使用することで、夜間時へと移行する1日を通じての電力負荷平準化効果を発生し、二酸化炭素の削減にも寄与できる等が挙げられる。そして、この使用温度範囲(設定温度範囲)が広範に亘り、例えば、冷房運転時においては、室外乾球温度が25℃〜43℃で使用可能であり、また暖房運転時においては、室外乾球温度でー10℃〜21℃で使用可能であり、多岐に亘り、使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1はノンデフロストヒートポンプ装置の地中熱交換器を利用した例における全体の概略を示したシステム図
【図2】図2は図1の他の一例であり、地下水を利用した例における全体の概略を示したシステム図
【図3−1】図3−1は室内機の正面図
【図3−2】図3−2は図3−1の平面図
【図3−3】図3−3は図3−1の側面図
【図4−1】図4−1はノンデフロストヒートポンプ室外機の立面図
【図4−2】図4−2は図4−1の側面図
【図4−3】図4−3は図4−1の裏面図
【図5】図5は地中交換器の正面図
【図6】図6は地中の一年間における温度の変化をグラフ化した模式図
【図7】図7は監視画面の一例を示した正面図
【符号の説明】
【0057】
1 ノンデフロストヒートポンプ装置
2 ノンデフロストヒートポンプ室内機
20 ダクト
21 係止手段
22 ダクトホース
22a 噴出孔
3 冷媒配管
3a 開閉弁
4 ノンデフロストヒートポンプ室外機
50 地熱配管
51 井水配管
6 地中熱交換器
8 循環ポンプ
8a 動力手段
10 熱交換器
11 空冷式熱交換器
14 制御器
140 監視画面
140a 一方の監視画面
140b 他の一方の監視画面
15 送風機
30 圧縮機
31 貯水槽
A 温室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設園芸栽培を行う温室の内部に設けた室内機と、この室内機に接続する冷媒の流入又は流出を行う冷媒配管と、前記室内機に冷媒配管を接続したノンデフロストヒートポンプ室外機と、このノンデフロストヒートポンプ室外機に接続した地熱又は地下水の水冷熱源(潜熱)を吸熱するために熱交換器と、この熱交換器の近傍に送風機を設けたことを特徴とした施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、
前記熱交換器に、地中に埋設した地中熱交換器と、この地中熱交換器で吸熱した水冷熱源を熱交換器へ流入する又は熱交換器からの排熱を地中へと還元する地熱配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置において、
前記熱交換器を、地下水・井戸水・貯水槽等の水槽(地下水とする)に浸積した、水冷熱源を流入する又は水冷熱源を地下水へと還元する井水配管とを設けたことを特徴とする施設園芸栽培用のノンデフロストヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−236329(P2009−236329A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79175(P2008−79175)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(591178551)菱名工業株式会社 (1)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】