説明

地盤改良工法用注入内管及びその地盤改良工法用注入内管を有する地盤改良工法用注入管並びにその地盤改良工法用注入内管が用いられる地盤改良工法

【課題】同時に複数ステージ注入できると共に、曲線形状の外管に全体的に追従して容易に挿入することが可能な内管を提供する。
【解決手段】細管2と細管2を継ぐ複数の継手部材3とを備え、継手部材3には細管2を挿入する挿入部8が形成され、細管2の両端部がそれぞれの側の継手部材3の挿入部8に挿入され、且つ細管2の挿入部8からの抜け出しが阻止された状態で、細管2の少なくとも一端部が細管2の軸方向に摺動可能とされ、細管2は一方の継手部材3に接続された別の細管2と細管2の軸方向に連通し、細管2の少なくとも1本は挿入部8に挿入された状態で継手部材3に取り付けられたパッカー10と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤改良工、特に薬液注入工に用いられる地盤改良工法用内管、及びその内管を有する地盤改良工法用注入管並びにその地盤改良工法用注入内管が用いられる地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の薬液注入工では1本の削孔内で1ステージ(削孔軸方向に対して1箇所)毎に注入するので、施工時間が長くなるため施工効率が良くない。したがって、1本の削孔内で同時に複数ステージ注入する方法が採用されることが往々ある。例えば、上下に台座を備える複数のパッカーによってグラウト送給通路、ガス送給通路及び支持棒からなる複数本の細管が一本に束ねられた内管を地盤に挿入された外管に挿入し、パッカー間に配置された、細管の先端部から、外管のスリーブを介して地盤に注入することによって、同時に複数ステージ注入する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
グラウト送給通路等の細管はそれぞれ連続した1本の管である。支持棒は所定ピッチでパッカーと一体的に螺合している。グラウト送給通路及びガス送給通路は可撓性部材を有し、リールに巻き取られるので、少なくともリールに巻き取られる程度の可撓性を有する。このようにリールとグラウト送給通路及びガス送給通路の可撓性との関係については明記されているが、グラウト送給通路及びガス送給通路の台座に対する接続構造や平面視配列等の台座とグラウト送給通路及びガス送給通路との関係は明記されていない。
【0004】
台座とグラウト送給通路及びガス送給通路との関係は明記されていないが、通常の内管の使用状態では、台座とグラウト送給通路及びガス送給通路とが固定されている。したがって、グラウト送給通路及びガス送給通路は台座に対して内管の軸方向に相対移動できない。また、通常の内管の使用状態では、特許文献1の図10に示すように、同時に複数ステージ注入するためにグラウト送給通路は複数本からなり、他の細管であるガス送給通路と支持棒と共に縦断面視平行に並設される。
【0005】
【特許文献1】特開2003−138552号公報(図5、図10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
外管を挿入するために地盤に形成される削孔は、地盤強度や地質等の地盤の特性によっては、直線状に形成される予定であっても必ずしも直線状に形成されず、曲線状に形成されることがある。特に、今後利用が期待される大深度まで削孔する場合においては削孔距離が長くなるので、削孔が曲線状に形成される確立が高くなる。
【0007】
更に近年、方向や曲率を制御する自在ボーリング技術が開発され、小曲率の曲がった注入外管に容易に挿入できることが求められてきている。このような曲線状の削孔に挿入された外管は、削孔の形状に沿って曲線状に変形することになる。
【0008】
曲線状に変形された外管に上記の内管が挿入されると、縦断面視平行に並設された細管群も外管の形状に追従して曲線状に形成されるので、細管群の曲線の中心に対して細管群の中立線より内側は中立線より短く、外側は中立線より長くなる。複数の細管は曲線の中心に対して細管群の中立線より内側か外側に位置し、各細管は台座に固定されている。
【0009】
したがって、曲線の中心に対して中立線より内側に位置する細管は縮もうとして、両端部で固定されている継手部材から圧縮力を受けて座屈する虞がある。一方、曲線の中心に対して外側に位置する細管は延びようとして、両端部で固定されている継手部材から引張力を受けて破断する虞がある。この結果、上記の内管では曲線形状の外管に追従して挿入することが困難である。
【0010】
ここで、曲線形状の外管に追従可能な内管として例えば実開昭55−21334号公報に開示されている内管は、軸方向に並設される内管同士を曲折ジョイントで連結するものであるが、複数の細管を有する内管の場合、構造が複雑になるので適用できない。
【0011】
また、実開昭59−56238号公報に開示されている内管は、パッカー間に挟まれた可撓短管を有するものであるが、可撓短管部分の一部のみが曲線状の外管に追従できるものである。
【0012】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、同時に複数ステージ注入できると共に、曲線形状の外管に全体的に追従して容易に挿入することが可能な地盤改良工法用内管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明の地盤改良工法用内管は、地盤に設けられた削孔に挿入された外管に挿入される内管であって、細管と該細管を継ぐ複数の継手部材とを備え、前記継手部材には前記細管を挿入する挿入部が形成され、前記細管の両端部がそれぞれの側の前記継手部材の前記挿入部に挿入され、且つ前記細管の前記挿入部からの抜け出しが阻止された状態で、前記細管の少なくとも一端部が前記細管の軸方向に摺動可能とされ、前記細管は前記一方の継手部材に接続された別の細管と前記細管の軸方向に連通し、前記細管の少なくとも1本は前記挿入部に挿入された状態で前記継手部材に取り付けられたパッカーと連通することを特徴とする。
曲線状に形成された削孔に挿入された外管に内管が挿入される場合、細管は軸方向に摺動可能であり、挿入部の中で抜け出しを阻止されているので、継手部材と接続した状態で、挿入部の更に奥へ相対的に前進し、又は、挿入部の外部へ相対的に後退する。したがって、細管は継手部材に接続された他の細管と軸方向に連続性を保持しながら、細管の全長が短縮する向き又は延長する向きに摺動することができる。
継手部材間に複数本の細管で構成される場合、曲線の中心に対して内管の中立線より内側に位置する細管はその位置における内管の周長に追従して短縮する向きに摺動し、曲線の中心に対して内管の中立線より外側に位置する細管はその位置における内管の周長に追従して延長する向きに摺動する。したがって、細管は継手部材から圧縮力又は引張力を受けずに、内管の曲線に沿って円滑に曲げ変形する。
さらに、継手部材間に複数本の細管で構成される場合、細管を注入材をゲル化時間の短い瞬結性注入材を供給する細管とゲル化時間の長い浸透性の浸透性注入材を供給する細管とで構成させ、2液式の薬液注入工法を行うことができる。
前記細管の摺動可能な端部の横断面は先端へ向かって小さくなる(請求項2)。横断面とは細管の細管の軸に直交する断面のことをいう。細管の横断面が小さくなる部分の外面と挿入部の内壁との間に空間が形成されるので、細管の摺動可能な端部は細管の軸方向に回動可能となる。この結果、内管は剛性による撓み以上に曲げ変形可能となる。また、横断面が細管の周方向全域において縮径する場合、当該細管のいかなる回動方向に対しても、細管の外面と挿入部の内壁との間に空間が形成されるので、回動範囲が拡大する。
前記継手部材間に前記複数本の細管が配設され、前記複数本の細管のうち1の細管が一方の継手部材の挿入部で摺動可能となり、他の細管のうち少なくとも1本が他方の継手部材の挿入部で摺動可能となる(請求項3)。この場合、継手部材間の細管は両端部で回動可能となるので、内管の曲げ変形できる曲率が増大する。
前記細管の端部の、前記挿入部からの抜け出しを防止する抜出防止手段が前記細管に設けられている(請求項4)。したがって、細管の一端部は摺動可能となっていても確実に挿入部の中に収まる。
細管は継手部材に脱着可能に取り付けられていることもある(請求項5)。
例えば、従来から行われている、外管と内管を使用する一般的な薬液注入工では、1ステージずつ注入する場合、ステージの移動毎に内管を1ステージ長だけ移動させるので、内管に設けられるパッカーの間隔は任意に設定されている。一方、同時に複数ステージ注入する場合、ステージの移動毎に内管をその複数ステージ長だけ移動させる。ここでステージ長はどの現場においても、主に33.3cm(稀に50cm)と規定されている(地盤工学会、「薬液注入工法の調査・設計から施工まで」、第9刷、地盤工学会、平成12年5月、p.100参照)ので、パッカーの間隔はステージ長に一致している。したがって、いずれの場合も、現場に応じてパッカーの間隔を変更する必要は無い。
これに対し、近年広く行われるようになった液状化対策の薬液注入工では、1ステージ長は現場によって1.5〜3m程度の範囲で異なる場合が多い。ここで、各現場毎に、同時に複数ステージ注入を行うためには、現場が替わる際にパッカーの間隔をその現場のステージ長に容易に一致させることが求められる。
しかし、内管は、例えば特許文献1のようにパッカーが設けられている台座(継手部材)が各供給通路(細管)に固定されているので、パッカーの間隔が容易に変更できない構造となっている。したがって、現場毎にパッカーの間隔をステージ長に一致させるためには、現場が替わる際に内管全体を交換する必要があり、段取りに手間を要する。
本発明の地盤改良工法用内管は、細管と継手部材とが脱着可能に構成されているので、現場が替わる際に既設の細管を適切な長さの細管と交換することでパッカーが取り付けられている継手部材間の長さ、すなわちパッカーの間隔を次の現場のステージ長に容易に一致させることができる。このように、パッカーの間隔を容易に設定・変更することができるので、段取りの手間が省かれると同時に、外管の軸方向に対する改良範囲の自由度が高まる。
請求項6に係る注入管は、請求項1乃至5のいずれかに記載の内管が前記外管に挿入されてなることを特徴とする。この注入管は、請求項1乃至5の発明と同等の作用・効果を有する。
請求項7に係る地盤改良工法は、地盤を削孔する削孔工程と、前記地盤に設けられた削孔に前記外管を挿入する外管挿入工程と、請求項1乃至5のいずれかに記載の内管を前記外管に挿入する内管挿入工程と、前記内管に改良材を供給し、前記外管から前記地盤へ前記改良材を圧入する圧入工程とを有することを特徴とする。この地盤改良工法は、請求項1乃至5の発明と同等の作用・効果を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の通り、細管の両端部がそれぞれの側の継手部材の挿入部に挿入され、且つ細管の挿入部からの抜け出しが阻止された状態で、細管の少なくとも一端部が細管の軸方向に摺動可能とされるので、同時に複数ステージ注入することができると共に、曲線形状の外管に全体的に追従して容易に挿入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本発明の内管1の例を示す。内管1は、例えば鋼製の細管2と、細管2同士をその細管2の同軸上に継ぐ継手部材3とからなる。継手部材3は例えば内管1の一端部において軸方向に複数個配設されており(図において4個)、継手部材3の間にはそれぞれ例えば複数本の細管2が内管1又は継手部材3の周方向に配設されて継手部材3と接続している。一の継手部材3の両端部で同軸上に接続する細管2の内部は連通し、細管2は同軸上に継手部材3を介して複数本連設され、1つの独立した細管群20を形成する。したがって、本実施の形態においては細管群20が内管1の周方向に4つ形成されている。
【0016】
図6(a)に示すように、内管1は地盤に形成された削孔11に挿入された外管12に、継手部材3と継手部材3の間に配設される細管2とで形成される先端部分Xを先頭に挿入される。以下、内管1の軸に沿って先頭の継手部材3へ向かう方向を先端方向と、それと反対側へ向かう方向を地上方向と称す。継手部材3は、最も地上側に位置する第1継手部材3a〜最も先端側に位置する第4継手部材3dで構成されている(以下、第1継手部材3a〜第4継手部材3dの全ての継手部材を指すときは継手部材3と云う)。
【0017】
図1に示すように、細管2は例えば改良材を供給するための改良材用細管2aと空気を供給するための空気用細管2bからなる(以下、改良材用細管2aと空気用細管2bの双方を指すときは細管2と云う)。細管群20は、空気用細管2bが同軸上に継手部材3を介して連設されてなる空気用細管群20bと、改良材用細管2aが同軸上に継手部材3を介して連設されてなる改良材用細管群20aとからなる。本実施の形態では、1つの空気用細管群20bと、3つの改良材用細管群20aとが形成されている。
【0018】
空気用細管群20bは、最も先端側の空気用細管2bが第3継手部材3cと第4継手部材3dの間に配設され、第4継手部材3dまで形成されている。一方、改良材用細管群20aは、最も先端側の改良材用細管2aが改良材用細管群20aによって第1継手部材3aと第2継手部材3bの間、第2継手部材3bと第3継手部材3cの間、第3継手部材3cと第4継手部材3dの間に配設され、それぞれ第2継手部材3b〜第4継手部材3dまで形成されている。この結果、先端部分Xでは先端方向へ進むに連れて、継手部材3間の細管2の本数が減少して継手部材3間の剛性が低くなる継手部材間は曲げ易くなる。
【0019】
また、同軸上に配設される改良材用細管2aの中で最も先端側に位置するものには、改良材を外部へ吐出するための吐出口4が設けられている。改良材用細管群20aによって先端側の改良材用細管2aの配設位置を異ならせ、先端側の改良材用細管2aに吐出口4が設けられることよって、複数ステップにおいて同時に注入することができると共に、継手部材3間の細管2の本数を削減することができる。
【0020】
さらに、各細管群20a、20bの中で最も先端側に配設されている細管2の先端側で接続する継手部材3の先端側端部では細管2が接続されずに閉塞されているので、細管2に供給される空気や改良材の外管12内への流出が阻止される。
【0021】
図2に示すように、細管2の一端部の外面には雄螺子部5が形成され、他端部の外面には例えば周方向にOリング溝6aと抜け出し防止手段溝6bが細管2の軸方向に、Oリング溝6aが外側に位置するように、形成されている(図にOリング溝6aが2つ、抜け出し防止手段溝6bが1つ)。Oリング溝6aにはOリング6aが嵌着し、抜け出し防止手段溝6bには例えばリング状の抜け出し防止手段14が取り付けられている。
【0022】
図3に示すように、継手部材3の端部には細管2が挿入して接続するための挿入部8が形成されている。挿入部の個数は、例えば継手部材3間に配設される細管2の本数に対応し、第1継手部材3aのように先端側で3本の細管2と、地上側で4本の細管2と接続する場合、第1継手部材3aの先端側端部には3つの挿入部8が、地上側端部には4つの挿入部8が形成されている。
【0023】
継手部材3の軸方向中央部には全周に亘って、例えばゴム製のパッカー10が装着されている。パッカー10は継手部材3の両端部の挿入部8に挿入した空気用細管2bと連通し、空気用細管2bに空気が供給されると継手部材3の軸に対して放射状に膨張する。
【0024】
挿入部8は、細管2が挿入して固定される固定挿入部8aと、細管2が挿入して内管1の軸方向に摺動可能となる摺動挿入部8bとからなる。継手部材3の一端部に複数の挿入部8が形成される場合においては、例えば継手部材3の周方向に固定挿入部8aと摺動挿入部8bとが混在している(以下、固定挿入部8aと摺動挿入部8bの双方を指すときは挿入部8と云う)。
【0025】
図4に示すように、固定挿入部8aの口径は細管2の外径と同一であり、固定挿入部8aの内壁には細管2の雄螺子部5と螺合する雌螺子部9が成型されている。摺動挿入部8bの口径は細管2の外径より大きく、かつOリング7の外径より小さい。したがって、摺動挿入部8bの内壁と細管2の外面との間はOリング7で密閉されるので、水等が摺動挿入部8bを通って細管2の外部から細管2の内部へ浸入することや、空気や改良材が摺動挿入部8bを通って細管2の内部から細管2の外部へ流出することが防止される。
【0026】
さらに、摺動挿入部8bの口径は、細管2の抜け出し防止手段14が取り付けられた部分の外径よりも大きい。したがって、摺動挿入部8bは細管2の抜け出し防止手段14が取り付けられた部分は摺動挿入部8bの中で摺動自在となる。
【0027】
摺動挿入部8bの外側端部に例えば側面に雌螺子部を有する円柱形状の係止体溝15が形成されている。係止体溝15には例えば雄螺子部を有する円筒状の係止体16が螺合する。係止体16の内径は、細管2の抜け出し防止手段14が取り付けられた部分の外径よりも小さい。
【0028】
したがって、細管2のOリング7及び抜け出し防止手段14が取り付けられた部分が摺動挿入部8bに挿入した状態で係止体16が係止体溝15に螺合している場合、細管2が摺動挿入部8bから抜け出る向き摺動するとき、係止体16が抜け出し防止手段14を係止し、細管2の摺動挿入部8bからの抜け出しを阻止する。
【0029】
細管2と継手部材3とが接続するとき、細管2の端部は挿入部8に挿入すると同時に、細管2の一端部が雄螺子部5と固定挿入部8aの雌螺子部9と螺合することによって継手部材3に固定されている。
【0030】
この状態において、内管1のOリングが取り付けられている端部は、摺動挿入部8bの軸方向中央辺りまで挿入されている。継手部材3間に配設される細管2は一端部のみで固定され、他端部は軸方向に対して地上側にも先端側にも摺動可能となっているので、先端部分Xは内管1の軸方向に延長又は短縮が可能となる。
【0031】
上記の様に構成された本発明の内管1は、図6(a)に示すように、地盤に形成された削孔11に挿入した外管12に先端部分Xを先頭に挿入される。外管12には軸方向に複数の注入口13が形成され、注入口13を外側から覆うスリーブ17が取り付けられている。注入口13の位置に合わせて、詳細には注入口13を外管12の軸方向にパッカー10で挟まれると同時に、吐出口4と連通するように内管1を設置する。
【0032】
内管1の位置が定まれば、空気用細管群20bに空気を供給してパッカー10を膨張させた後に、各改良材用細管群20aに改良材を供給して吐出口4から改良材を吐出させる。改良材用細管2aから吐出した改良材は外管12の内部を経由して外側にスリーブ17が設けられた注入口13から同時に複数ステージの地盤に注入される。
【0033】
所定の位置での注入が完了すると、図6(b)に示すように、内管1を次の目標位置に設置して、同様の作業を繰り返す。このように、同時に複数ステージ注入できるので、1本の削孔11に挿入された外管12において注入する回数が軽減され、作業時間の短縮を図ることができる。また、パッカー10の間には細管が載置され、着脱自在となっているので、細管2の長さを適宜調整することによって、注入するステージの間隔に容易に合わせることができる。
【0034】
上述したように、内管1は地盤中に形成された削孔11に挿入された外管12の中に挿入される。削孔11が直線状に形成され、直線状の外管12がその形状を維持したまま削孔11に挿入される場合、外管12に挿入された内管1の細管2と継手部材3との接続構造は、図4に示すように、地上で接続された状態と変わらず、細管2の端部が摺動挿入部8bの軸方向中央辺りに位置すると共に、内管1の周方向に並設する細管2は平行となる。
【0035】
しかしながら、外管12が直線状であっても、削孔が曲線状に形成されたり、削孔11内で地盤から土圧を受けることによって、外管12がその削孔11に挿入されることによって曲線状に形成されることもある。
【0036】
図5に示すように、内管1が曲線状に形成された外管12に挿入された場合、継手部材3間の細管2の一端部は挿入部8の中で摺動可能となっているので、曲線の中心に対して内管1の中立線より内側に位置する細管群20では摺動挿入部8bに挿入している細管2の端部が摺動挿入部8bの軸方向中央側へ相対的に摺動し、曲線の中心に対して内管1の中立線より外側に位置する細管群20では、摺動挿入部8bに挿入している細管2の端部が摺動挿入部8bの軸方向外側へ相対的に摺動する。
【0037】
すなわち、先端部分Xの内側が短縮され、外側が延長される。したがって、内管1が周方向に複数本の細管2を有する場合であっても、先端部分Xが全体で円滑に曲げ変形可能となるので、複数ステージ同時に注入できると共に、内管1は曲げ変形した外管12に容易に追従できる。
【0038】
また、摺動挿入部8bの径が細管2の外径より大きいので、細管2と摺動挿入部8bの双方とも細管2の軸に対して回動することができる。したがって、例えば第4継手部材3dが外管12の曲線形状に合わせて曲がる際に、第4継手部材3dの地上側端部に形成される固定挿入部8aに固定される細管2の地上側端部は、第4継手部材3dの挙動に合わせて、第3継手部材3cの先端側端部に形成される摺動挿入部8bの中で外管12の軸に対して回動する。
【0039】
また、第4継手部材3dの地上側に形成される摺動挿入部8bは、第3継手部材3cの先端側に形成される固定挿入部8aに固定されている細管2の先端側端部の周辺で、第4継手部材3dの挙動に合わせて外管12の軸に対して回動する。この結果、先端部分Xの曲げ変形量が大きくなり、内管1は細管2の剛性に起因する撓み以上に曲げ変形することが可能である。この第4継手部材3dの回動は、引き続いて外管12の曲線部分に差し掛かる第3〜1継手部材3c〜3aについても同様に起こる。
【0040】
さらに、継手部材3の一端部において固定挿入部8aと摺動挿入部8bとが混在するので、細管2の両端部で回動可能となり、内管2の曲げ変形量が一層大きくなる。また、継手部材3の間の細管2が着脱自在であるので、外管12の軸方向に対する注入範囲すなわち外管12の注入口13の設置間隔に対応して細管2の長さを変更できる。したがって、注入範囲の設計の自由度が高まるので、注入の対象地盤によって注入範囲を設計し、効果的に注入することができる。
【0041】
次に、継手部材3の一例について説明する。図7(a)に示すように、継手部材3は、その断面中心部に位置する芯体31と、芯体31が挿入する中空体32と、芯体31の端部が挿入すると共に、中空体32の端部に接続し、挿入部8を具備する係止体33とからなる。
【0042】
中空体32は、例えば略円筒状に形成されており、芯体31を挿入する挿入孔34が設けられている。中空体32の中央部にはパッカー10が装着されている。
【0043】
芯体31は、軸方向の両端部に位置し、係止体33と固定する例えば外観が円柱状の固定部材35と、固定部材35の間に位置する例えば複数の管36が束ねられてなる接続部材37とを有する。
【0044】
芯体31には、係止体33と接続された状態で挿入部8と連通する貫通孔38が形成されている。ここでは、各管36の内部が貫通孔38として機能している。また、管36には、内部で改良材用細管2aと連通する改良材用管36aと空気用細管2bと連通する空気用管36bからなり、空気用管36bには空気孔39が形成され、空気孔39を通じてパッカー10に空気が供給されるようになっている。
【0045】
図7(b)に示すように、芯体31の全長は中空体32の全長より長く、芯体31が中空体32に挿入した状態で中空体32の端部から芯体31の端部が突出する。この状態において、固定部材35が中空体32の端部から突出しており、固定部材35の中空体32の端部から突出している部分には、係止体33と固定するための固定手段43を差し込むための固定穴40が設けられている。
【0046】
係止体33は例えば外観が円柱状に形成され、一端部には芯体31を挿入させるための挿入穴41が設けられている。また、係止体33には芯体31が挿入した状態で芯体31の固定穴40と対応する箇所に固定孔42が形成されている。
【0047】
図7(a)〜(c)に示すように、中空体32に挿入された芯体31の両端部に、固定孔42と固定穴40が対向するように係止体33を被せると同時に、係止体33を中空体32に当接して、固定孔42及び固定穴40に例えばピン等の固定手段43を差し込む。この結果、芯体31と係止体33が固定されると同時に、中空体32が芯体31に固定された係止体33によって軸方向に係止されことによって、芯体31、中空体32及び係止体33が一体となる。
【0048】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
本発明は上述したように地盤注入工に限って適用されるものではなく、地盤に硬化材を圧入して地盤を圧密させる地盤改良工にも適用される。
【0050】
また、細管群20は1つの空気用細管群20bと3つの改良材用細管群20aからなる構成に限られず、例えば、1つの空気用細管群20bと2重管や3重管を用いた1つの改良材用細管群20aから構成されてもよい。
【0051】
複数の挿入部8が継手部材3の端部に形成される場合、周方向に配列させることを説明したが、これに限られるものではなく、直列等に配置することも可能であり、内管1が曲線状の外管12に追従して曲げ変形可能となればよい。
【0052】
細管2と継手部材3の固定方法は細管2の雄螺子部5と固定挿入部8aの雌螺子部9による螺合に限られるものではなく、細管2と継手部材3に孔を設けてそこにピンを通して固定する方法でもよい。また、細管2の一端部が必ずしも固定される必要はなく、継手部材3から抜け出ないような措置がされていればよい。
【0053】
また、Oリング7が取り付けられている側の先端部分は先端へ向かって縮径して形成されることもある。この場合、摺動挿入部8bの内壁と細管2の外面との距離が大きくなる。したがって、細管2又は摺動挿入部8bの回動範囲が拡大し、先端部分Xの曲げ変形量が一層大きくなる。ここで、当該縮径部分の軸に直角の断面がその軸に対して同心円となっていると、摺動挿入部8bの内壁と細管2の外面は軸に直角平面上いずれの方向に対しても回動範囲が拡大する。
【0054】
継手部材3の構造は、上記の構造に限られるものではなく、細管2が軸方向に摺動可能に接続され、パッカー10を膨張させることが可能であればよい。例えば、図8に示すように、芯体31の接続部材37が改良材用管36aのみからなり、空気用細管2bが挿入される挿入部8から直接パッカー10に空気が供給される構造とすることもできる。
【0055】
上記実施の形態においては、抜け出し防止手段14をリング状としたが、係止体16に係止される、例えば単数又は細管2の周方向に複数の突起状の被係止片としてもよい。係止体16も円筒状に限るものではなく、抜け出し防止手段14を係止できればよい。
【0056】
また、図9(a)に示すように、1組のパッカー10間に2本の改良材用細管2a、2cを配置させ、各々に吐出口4a、4cを形成させることで、ゲルタイムの短い注入材とゲルタイムの長い浸透性の注入材を同時に使用することができるので、2液式の薬液注入方法を採用することができ、施工形式に対する汎用性が高くなる。
【0057】
また、図9(b)に示すように、第1継手部材103a〜第3継手部材103cの間に、空気用細管2bと改良材用細管2aを2本と改良材用細管2cを2本配置させ、図9(c)に示すように第3継手部材103cと第4継手部材103dの間に空気用細管2b、改良材用細管2a、2cを1本ずつ配置させると2液式の薬液注入を同時に2ステージ注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】内管の斜視図である。
【図2】(a)は細管の正面における破断図、(b)は図2(a)のA−A断面図である。
【図3】内管の一部が分解された状態を示す図1の拡大図である。
【図4】直線状の外管に挿入された内管の拡大断面図である。
【図5】曲線状の外管に挿入された内管の拡大断面図である。
【図6】(a)は内管が外管内で最初に設置された状況を示す拡大縦断面図、(b)は内管が外管内で2回目に設置された状況を示す拡大縦断面図である。
【図7】(a)は継手部材が分解された斜視図、(b)は中空体に芯体が挿入した状況を示す正面図、(c)は継手部材の正面図である。
【図8】その他の実施形態における芯体の斜視図である。
【図9】(a)はその他の実施形態における内管が外管内に設置された状況を示す拡大断面図、(b)は図9(a)のB−B断面図、(c)は図9(a)のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1………内管
2………細管
2a……改良材用細管
2b……空気用細管
2c……改良材用細管
3………継手部材
3a……第1継手部材
3b……第2継手部材
3c……第3継手部材
3d……第4継手部材
4………吐出口
4a……吐出口
4c……吐出口
5………雄螺子部
6a……Oリング溝
6b……抜け出し防止手段溝
7………Oリング
8………挿入部
8a……固定挿入部
8b……摺動挿入部
9………継手部材の雌螺子部
10……パッカー
11……削孔
12……外管
13……注入口
14……抜け出し防止手段
15……係止体溝
16……係止体
17……スリーブ
20……細管群
20a…改良材用細管群
20b…空気用細管群
31……芯体
32……中空体
33……係止体
34……挿入孔
35……固定部材
36……管
36a…改良材用管
36b…空気用管
37……接続部材
38……貫通孔
39……空気孔
40……固定穴
41……挿入孔
42……固定孔
43……固定手段
101…内管
103a…第1継手部材
103b…第2継手部材
103c…第3継手部材
103d…第4継手部材
X………先端部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に設けられた削孔に挿入された外管に挿入される内管であって、
細管と該細管を継ぐ複数の継手部材とを備え、
前記継手部材には前記細管を挿入する挿入部が形成され、
前記細管の両端部がそれぞれの側の前記継手部材の前記挿入部に挿入され、且つ前記細管の前記挿入部からの抜け出しが阻止された状態で、前記細管の少なくとも一端部が前記細管の軸方向に摺動可能とされ、
前記細管は前記一方の継手部材に接続された別の細管と前記細管の軸方向に連通し、
前記細管の少なくとも1本は前記挿入部に挿入された状態で前記継手部材に取り付けられたパッカーと連通することを特徴とする地盤改良工法用内管。
【請求項2】
前記細管の摺動可能な端部の横断面は先端へ向かって小さくなることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法用内管。
【請求項3】
前記継手部材間に前記複数本の細管が配設され、
前記複数本の細管のうち1の細管が一方の継手部材の挿入部で摺動可能となり、他の細管のうち少なくとも1本が他方の継手部材の挿入部で摺動可能となることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良工法用内管。
【請求項4】
前記細管の端部の、前記挿入部からの抜け出しを防止する抜出防止手段が前記細管に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤改良工法用内管。
【請求項5】
前記細管は前記継手部材に脱着可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良工法用内管。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の内管が前記外管に挿入されてなることを特徴とする地盤改良工法用注入管。
【請求項7】
地盤を削孔する削孔工程と、
前記地盤に設けられた削孔に前記外管を挿入する外管挿入工程と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の内管を前記外管に挿入する内管挿入工程と、
前記内管に改良材を供給し、前記外管から前記地盤へ前記改良材を圧入する圧入工程とを有することを特徴とする地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−41280(P2009−41280A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208180(P2007−208180)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(591247798)原工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】