説明

地盤改良用モニター、地盤改良用装置及びその地盤改良用モニターを用いた地盤改良工法

【課題】直接削孔方式のモニターでありながら大口径の改良体造成が可能で、作業時間を短縮できる地盤改良用モニターを提供する。
【解決手段】水を供給する水供給通路7を有し、水供給通路7を形成する壁面に水を地盤へ吐出させる削孔用吐出口3bが形成され、可逆的に変形し、壁面に密着して遮断する遮断手段12が削孔用吐出口3bの上流側で壁面に設けられている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液注入工法や高圧噴射工法等が適用される地盤改良工事に用いられる地盤改良用モニター、地盤改良装置及びその地盤改良用モニターを用いた地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧噴射攪拌工法における削孔方法は、ロッド接続されたモニターで直接削孔を行う方法と別途ケーシングで削孔を行いケーシング内にロッドとモニターを立て込む方法に分けられる。直接削孔方式はケーシングによる別途削孔工程が無い分施工が早いが、モニターには削孔用から噴射用に経路を切り替えるための機構が必要であるが、改良材を大吐出量、超高圧で噴射するためには、経路切り替え機構の信頼性に問題があり大口径の改良体造成には用いられてこなかった。
【0003】
一方、ケーシング削孔方式は、モニターに経路切り替え機構が無いため大吐出量、超高圧での噴射に対しての信頼性は高いものの、直接削孔が出来ないためケーシング削孔、ロッド・モニター立て込み、ケーシング引き抜きの工程が必要となっていた。
【0004】
また、大吐出量、超高圧での噴射では吐出量に対応した大量のスライムが発生・排出されることになるが、この大量のスライムが完全に排出されず施工上更には改良体の出来型・品質にまで悪影響を及ぼすケースがあり、有用なスライム排出の促進方法も求められてきた。
【0005】
直接削孔方式のモニターには、削孔水を供給するための削孔水供給通路と改良材を供給するための改良材供給通路を兼ね備えた1本の通路がある。削孔用吐出口と噴射口はロッドに接続するモニターに設けられ、共にその1本の通路へ通じており、削孔完了後に通路内へスチールボールを投入して改良材を圧送すると、スチールボールは改良材の圧力によって削孔用吐出口と噴射口の間に設けられている玉受台座まで運搬されて、玉受台座に嵌装する。この結果、削孔用吐出口への経路が噴射口より下流側で遮断されて噴射口への経路のみが残るので、改良材は噴射口のみから噴射する(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開昭51−150819号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
玉受台座はスチールボールと嵌合するために水や改良材の流れに正面から対向するように形成されているので、玉受台座に土砂等の異物が残存することで、また、玉受台座もスチールボールも改良材噴射のたびに僅かではあるが侵食・変形を重ねることでスチールボールと玉受台座は完全に密着せずに、改良材を通過させる隙間を形成することになる。
【0008】
そして、この隙間が大きい場合は削孔用吐出口への経路が完全に遮断されないので改良材の吐出圧を所望の圧力まで上昇させることができない。また、この隙間が微細な場合は、一旦改良材の吐出圧を所望の圧力まで上昇させることができるが暫くすると微細な隙間は改良材により急速に侵食され所望の圧力を得られなくなってしまう。これらの結果、直接削孔方式のモニターの場合、大口径の改良体造成は不可能である。
【0009】
また、1箇所での地盤改良工が完了する度に、毎回ロッドを解体してスチールボールを回収しモニターを清掃しなければならないので作業時間が長くなる。
【0010】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、直接削孔方式のモニターでありながら大口径の改良体造成が可能で、作業時間を短縮できる地盤改良用モニターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、地盤改良工において地盤を削孔し、前記地盤に改良材を注入又は噴射するために用いられ、ロッドに接続する地盤改良用モニターであって、水を供給する水供給通路を有し、当該水供給通路を形成する壁面に水を地盤へ吐出させる削孔用吐出口が形成され、可逆的に変形し、前記壁面に密着して遮断する遮断手段が前記削孔用吐出口の上流側で前記壁面に設けられていることを特徴とする。
ここで、上流側とは水供給通路において水が供給される装置と接続されている側のことを云う。
遮断手段は作動すると水供給通路を形成する壁面に密着すると共に凹凸に追従して変形する遮断手段が削孔用吐出口より上流側に設けられているので、その壁面が浸食や変形をしていたり、遮断手段と壁面の間に異物が介入していても、削孔用吐出口への経路が完全に遮断される。
また、遮断手段が可逆的に作動するので、特許文献1のようなスチールボールの投入作業や回収作業が不要となる。したがって、例えば一の施工箇所で改良体の造成が完了した後に遮断手段の作動を停止して作動前の状態に戻せば、地盤改良用モニターとロッドはそのままの状態で次の施工箇所へと移行される。
前記遮断手段はエアーが供給されることによって膨張し、前記遮断手段に通じるエアー供給通路を有していることもある(請求項2)。
高圧噴射工法においては改良材を噴射させる際に、公知で行われているように噴射する改良材を包み込む形でエアーを噴射させることによって、改良材の到達距離が伸びるので、地盤の切削能力が向上する。またエアーリフトによりスライムの排出が促進される。
遮断手段がこのような有効的な作用を講じるエアーを利用して膨張し、水供給通路を遮断するので、地盤改良用モニターの機能性は向上する。
前記水供給通路を形成する壁面の前記遮断手段より上流側に、前記水供給通路に供給される前記水を前記地盤へ吐出させるウォーターリフト用吐出口が設けられていることもある(請求項3)。
前記遮断手段より上流側にウォーターリフト用吐出口が設けられているので、遮断手段を作動することによって水供給通路の経路を切り替えることができる。高圧噴射工法の場合、一般的に水は削孔中にのみ使用されて高圧噴射中には使用されないが、経路が切り替えられることによって、この水を利用して水をウォーターリフト用吐出口から上向きに噴射させてスライムの排出を促進することができる。
前記削孔用吐出口から前記水供給通路への物質の浸入を阻止する逆止弁が前記削孔用吐出口に取り付けられ、前記ウォーターリフト用吐出口から前記水供給通路への物質の浸入を阻止する差圧弁が前記ウォーターリフト用吐出口に取り付けられ、前記逆止弁の作動圧力が前記差圧弁の作動圧力より低いこともある(請求項4)。
ここで、削孔用吐出口に取り付けられる及びウォーターリフト用吐出口に取り付けられるとは、例えばその吐出口に嵌装する態様やその吐出口を外側から覆う状態で地盤改良用モニターに固定する態様等のことを云い、所望の圧力以上で水供給通路から外部へ吐出すると共に、水や改良材等の水供給通路への浸入が阻止されればよい。
逆止弁の作動圧力が差圧弁の作動圧力より低いので、削孔時において所定圧力で逆止弁のみが作動して水は削孔用吐出口のみから吐出する。削孔に対してウォーターリフト用吐出口からの水の吐出は不要であるので、水の浪費が防止される。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良用モニターとロッドが接続して一体となることを特徴とする。この場合、請求項1乃至4の発明と同様な作用・効果を発揮することができる。
請求項6に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良装置は改良材を供給する改良材供給通路を有し、前記水供給通路に水を供給しながら前記地盤改良装置を用いて地盤を削孔する削孔工程と、前記遮断手段を作動させて前記水供給通路を遮断する遮断工程と前記改良材供給通路に改良材を供給して地盤に改良材を注入又は噴射する注入噴射工程とを有することを特徴とする。この場合、請求項1乃至4の発明と同様な作用・効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記の通り、膨張することによって水供給通路を遮断し、可逆的に作動する遮断手段が水供給通路を形成する壁面に設けられているので、直接削孔方式のモニターでありながら大口径の改良体造成が可能で作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
図1(a)に本発明の地盤改良用装置1の例を示す。地盤改良用装置1は例えば三重管2とモニター3からなり、三重管2は一端部で軸方向にモニター3と例えば螺合して一体となっている。三重管2の他端部は軸方向に図示されない別の三重管2と例えば螺合している。図1(b)に示すように、地盤改良用装置1はモニター3を先頭に地盤へ挿入される。以下、地盤改良用装置1の軸に沿ってモニター3に進む向きを先頭向き、その反対に進む向きを後尾向きと称す。また、任意の点においてそこより先頭向きに進んだ位置を先頭側、その反対側を後尾側と称す。
【0015】
図1(a)に示すように、三重管2は外管24、中管25及び内管26を具備する。外管24の内面と中管25の外面との間の空間は水を供給するための水供給通路27を形成し、中管25の内面と内管26の外面との間の空間は地盤の切削能力を向上させ、エアーリフトによりスライムの排出を促進するためと後述する遮断手段12であるパッカーを膨張させるためのエアーを供給するエアー供給通路28を形成し、内管26の内部は改良材を供給するための改良材供給通路29を形成している。
【0016】
モニター3は外管4、中管5及び内管6を具備する。外管4の内面と中管5の外面との間の空間は水を供給するための水供給通路7を形成し、中管5の内面と内管6の外面との間の空間は後述する遮断手段12であるパッカーを膨張させるための例えばエアーを供給するエアー供給通路8を形成し、内管6の内部は改良材を供給するための改良材供給通路9を形成している。
【0017】
モニター3の外管4、中管5及び内管6はそれぞれ三重管2の外管24、中管25及び内管26と接続している。また、モニター3の水供給通路7、エアー供給通路8及び改良材供給通路9は三重管2の水供給通路27、エアー供給通路28及び改良材供給通路29と連通している。
【0018】
外管4には、ウォーターリフト用吐出口4aが内面から設けられ、当該ウォーターリフト用吐出口4aと連通する差圧弁嵌合穴4bが外面から設けられている。差圧弁嵌合穴4bの断面はウォーターリフト用吐出口4aの断面より大きく、差圧弁嵌合4bの断面の中心より後尾側でウォーターリフト用吐出口4aが差圧弁嵌合穴4bに連通している。
【0019】
差圧弁嵌合穴4bには差圧弁10が嵌合してウォーターリフト用吐出口4aを外側から完全に覆った状態で、ピン等の差圧弁固定部材11によってウォーターリフト用吐出口4aより先頭側で外管4に固定されている。差圧弁10には、例えば板バネ10が用いられ、この場合その作動圧力は板バネ10の厚さ、大きさ等の規格や材質、更には差圧弁固定部材11の設置位置によって設計・調整される。
【0020】
中管5には、エアー吐出口5aがウォーターリフト用吐出口4aより先頭側に設けられている。中管5の外側面にはウォーターリフト用吐出口4aより先頭側に例えばゴム製のパッカー等の遮断手段12が取り付けられ、エアー吐出口5aを完全に覆っている。したがって、エアー供給通路8とパッカー12の内部はエアー吐出口5aを介して連通している。
【0021】
モニター3の三重管2と螺合する端部と別の端部には地盤を削孔するための例えばメタルクラウン3aがモニター3の先端に螺合され、例えばメタルクラウン3aの先端部周方向には複数個の硬質のチップ3cが設けられている。チップ3cは通常六角形または四角形の断面形状をしており削孔する土質に応じて使い分けられる。モニター3の端部中央辺りにメタルクラウン3aに囲まれるように削孔用吐出口3bが設けられている。削孔用吐出口3bから土砂や改良材等の不要物が逆流しないために、例えば削孔用吐出口3bを外側から覆うように逆止弁13が取り付けられている。
【0022】
逆止弁13は例えば短いホース状のゴムであり、この場合逆支弁は土砂や改良材が逆流しないように削孔用吐出口3bを完全に覆った状態で、図示しないボルトで削孔用吐出口3bより先端側から外管4に固定されている。逆支弁13は外側からの圧力に対しては高い逆止弁としての機能をもつが、内側からの力に対しては弱く差圧弁としての機能は極めて弱く、差圧弁10の作動圧力より充分に低圧に設定されている。図2(b)に示すように、削孔時に削孔用吐出口3bから水を地盤へ吐出させていても差圧弁10が開かないようになっている。
【0023】
内管6の例えば先頭側先端部には改良材用ノズル15が内管6の軸に略直交する方向に取り付けられている。改良材用ノズル15には改良材噴射口15aが内管6の軸と略直交する方向に形成されている。改良材用ノズル15の外面は、改良材用ノズル15の軸に直交する断面が先端へ向かって小さくなるように、すなわち外側に向かって改良材用ノズル15の軸に近づくように形成されている。
【0024】
中管5の例えば先頭側先端部にはエアー用ノズル16が改良材用ノズル15の外面に中管6の軸と略直交する方向に取り付けられている。エアー用ノズル16にはエアー噴射口16aが、噴射するエアーが改良材噴射口15aの軸に向かうように形成されている。エアー用ノズル16は改良材用ノズル15の外面に取り付けられるので、エアー用ノズル16の傾斜は改良材用ノズル15の外面の傾斜と同一になる。
【0025】
遮断手段12は例えばゴム製のパッカーであるので、作動状態においては凹凸に追従して変形することができる。したがって、外管4の内面が浸食や変形によって凹凸を有していても、遮断手段12はその凹凸に応じて外管4の内面に密着し、水供給通路7を完全に遮断する。
【0026】
パッカー12の許容圧力はエアー用ノズル16の噴射圧力以上に設定されている。したがって、エアー用ノズル16からエアーが噴射する際、パッカー12は破裂することなくエアーの吐出圧力と同一圧力で膨張状態を維持する。
【0027】
また、差圧弁10の作動圧力はエアー用ノズル16の吐出圧力以下に設定されている。パッカー12の内部とエアー噴射口16aが連通しているので、パッカー12の最大圧力はエアー用ノズル16からエアーが噴射している時である。したがって、エアー用ノズル16からエアーを噴射させると共にパッカー12を膨張させた状態で、水供給通路7に水を供給して水供給水路7内の圧力が差圧弁10の作動圧力に到達すると、パッカー12が変形することなくウォーターリフト用吐出口4aから水が吐出する。
【0028】
次に本発明の地盤改良用装置1を用いた高圧噴射攪拌工法が適用される地盤改良工の例を説明する。
【0029】
図2(a)に示すように、三重管2の一端部にスイベル17を介して高圧ホース18に接続した地盤改良用装置1を公知の削孔機19によって回転させながら目標深度まで推進させて削孔する。削孔中、水供給通路7に水を圧送して削孔用吐出口3bから地盤へ水を吐出させる。目標深度は例えば造成する改良体20の目標最深点P1(図において最下点)と一致する。
【0030】
尚、高圧ホース18の一端部は三重管2の外管24、中管25及び内管26のそれぞれとスイベル17を介して接続されており、他端部は図示されない公知の設備と接続されている。図示されない公知の設備には、圧力や流量を計測する機器が含まれており、地盤改良用装置1に供給する水、エアー及び改良材の圧力・流量を計測することができるようになっている。
【0031】
上述したように逆止弁13の作動圧力は差圧弁10の作動圧力より低圧に設定されているので、図2(b)に示すように、差圧弁10が作動しない状態で逆止弁13のみが作動して削孔用吐出口3bのみから水が先頭向きへ吐出する。削孔中、地盤改良用装置1の長さが不足した場合は、地上に突出している三重管2の後尾側端部とスイベル17との間に別の三重管2を継ぎ足して、地盤改良用装置1を延長する。
【0032】
次に、図3(a)に示すように、地盤改良用装置1を回転させながら目標深度まで引き上げて改良体20を造成する。目標深度は例えば造成する改良体の目標最浅点P2(図において最上点)と一致する。この間、改良材供給通路29、9に例えばセメント系硬化材等の改良材を供給し、エアー供給通路28、8にエアーを供給して、エアーを併せて改良材を高圧噴射することによって、地盤を切削して地盤に空洞を形成すると同時に、形成した空洞内で改良材と切削した土砂を攪拌する。空洞内で攪拌された改良材と土砂の混合物が硬化して改良体20となる。
【0033】
また、改良材20を造成する間に水供給通路27、7に水を供給してウォーターリフト用吐出口4aから上向きに水を噴射させる。水が地盤改良用装置1の外面と削孔21の孔壁の間にあるスライムを地上へ押し上げるので、スライムの排出促進が図られる。このように、削孔時は下向きに吐出していた水を噴射時は切り替えてウォーターリフト用吐出口から上向きに吐出しスライムの排出を促進して改良体の出来型・品質を確保することができる。
【0034】
削孔完了後、水の圧送を一端停止し、図3(b)に示すように、エアー供給通路28、8にエアーを供給して遮断手段12を作動させると同時にエアー噴射口16aから地盤にエアーを噴射させる。作動したパッカー12は押し広げられ、エアー用ノズル16の噴射圧力と同一圧力で外管4の内面に追従して完全に密着し、水供給通路7をウォーターリフト用吐出口4aと削孔用吐出口3bとの間で遮断する。この結果、水供給通路7に供給された水はウォーターリフト用吐出口4aのみから地盤へ吐出する。この時、改良材供給通路29、9に改良材を供給して改良材噴射口15aから地盤に改良材を噴射させる。
【0035】
次いで、再び水供給通路27、7に水を圧送して差圧弁10を作動させる。差圧弁10は板バネ10からなり、ウォーターリフト用吐出口4aより先頭側で固定手段11に固定されているので、水の圧力に押されて曲がった板バネ10の外管4と対向する面と外管4の外面で後尾側が開口した空間S1が形成する。したがって、水がウォーターリフト用吐出口4a・差圧弁嵌合穴4bから略後尾側へ向かって噴射する。
【0036】
改良材供給通路29、9に供給された改良材は改良材用ノズル15から噴射する。改良材用ノズル15の外面に取り付けられているエアー噴射口16aから噴射するエアーは改良材を包み込む形で噴射させることによって、改良材の到達距離が伸びると共に、エアーリフトによりスライム排出が促進される。このように、同一の経路に供給されるエアーを用いて、スライムの排出促進を図ると共に、水供給通路7の水の経路を切り替えて一層スライムの排出促進を図ることができる。
【0037】
改良体20の造成が終われば、改良材供給通路29、9への改良材の供給、エアー供給通路28、8へのエアーの供給、水供給通路27、7への水の供給を停止して、図4(a)に示すように、地盤改良用装置1を引き抜く。エアー供給通路28、8へのエアーの供給が停止されていることから、図4(b)に示すように、パッカー12は収縮して閉じているので、この段階で水供給通路7では削孔用吐出口3bへの経路の遮断が解除され、削孔できる状態に切り替えられている。
【0038】
次に、地盤改良工を実施する箇所があれば、その次の施工箇所にて削孔・改良体の造成を行う。水供給通路7は削孔できる状態に切り替えられているので、地盤改良用装置1はそのままの状態で次の施工箇所において使用することができる。このように、エアーの供給の操作によって地盤改良用装置1を削孔状態と改良体造成状態に切り替えることができるので、一の施工箇所から他の施工箇所へと移行する間に特許文献1に記載しているようなスチールボールの回収作業が不要となり、施工時間の短縮が図られる。
【0039】
(その他の実施の形態)
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0040】
本発明は上述したように高圧噴射攪拌工法を適用した地盤改良工に限って用いられるのではなく、薬液注入工法を適用した地盤改良工に用いられることもできる。
【0041】
また、水平な地盤に垂直に削孔し、改良体20を造成する以外にも、鉛直な地山に斜めに削孔し、改良体を造成することも、曲線状に削孔し、改良体を造成する場合にも本発明を適用することができる。
【0042】
さらに、削孔する目標深度を造成する改良体20の目標最浅点として削孔し、改良体造成の目標深度を造成する改良体20の目標最深点として改良体の造成をすることも可能である。
【0043】
遮断手段12は、プロピレン繊維以外にケプラー繊維、アラミド繊維、カーボン繊維等のシートから製造することもでき、エアーを供給されることによって膨張し、かつ凹凸に応じて変形自在であればよい。
【0044】
削孔完了後に水供給通路に供給する材料としては例えば、粘性土の場合はスライムの粘性を下げるために減粘剤や分散剤、礫質土の場合は礫を沈降させないように増粘剤や安定液を、あるいはやエアーを用いることができる。
【0045】
差圧弁10として板バネを外管4の外面に固定しているが、ウォーターリフト用吐出口4aに所定圧力で開くキャップを嵌装することも可能である。逆止弁13についても同様に、削孔用吐出口3bに所定圧力で開くキャップを嵌装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(a)は地盤改良装置の一例を示す断面図、(b)は図1(a)の地盤改良装置を用いて削孔し始めた状況を示した正面図である。
【図2】(a)は図1(a)の地盤改良装置を用いて削孔する状況を示した正面図、(b)は図2(a)の地盤改良装置の要部拡大図である。
【図3】(a)は図1(a)の地盤改良装置を用いて改良材及びエアーを地盤へ高圧噴射する状況を示した正面図、(b)は図3(a)の地盤改良装置の要部断面図である。
【図4】(a)は図1(a)の地盤改良装置を引き抜く状況を示した正面図、(b)は図4(a)の地盤改良装置の要部断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1………地盤改良装置
2………三重管(ロッド)
3………モニター
3a……メタルクラウン
3b……削孔用吐出口
3c……チップ
4………モニターの外管
4a……ウォーターリフト用吐出口
4b……差圧弁嵌合穴
5………モニターの中管
5a……エアー吐出口
6………モニターの内管
7………モニターの水供給通路
8………モニターのエアー供給通路
9………モニターの改良材供給通路
10……板バネ(差圧弁)
11……差圧弁固定部材
12……遮断手段(パッカー)
13……板バネ(逆止弁)
15……改良材用ノズル
15a…改良材噴射口
16……エアー用ノズル
16a…エアー噴射口
17……スイベル
18……高圧ホース
19……削孔機
20……改良体
21……削孔
24……三重管(ロッド)の外管
25……三重管(ロッド)の中管
26……三重管(ロッド)の内管
27……三重管(ロッド)の水供給通路
28……三重管(ロッド)のエアー供給通路
29……三重管(ロッド)の改良材供給通路
S1……空間
P1……目標最浅点
P2……目標最深点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良工において地盤を削孔し、前記地盤に改良材を注入又は噴射するために用いられ、ロッドに接続する地盤改良用モニターであって、
水を供給する水供給通路を有し、
当該水供給通路を形成する壁面に水を地盤へ吐出させる削孔用吐出口が形成され、
可逆的に変形し、前記壁面に密着して遮断する遮断手段が前記削孔用吐出口の上流側で前記壁面に設けられていることを特徴とする地盤改良用モニター。
【請求項2】
前記遮断手段はエアーが供給されることによって膨張し、
前記遮断手段に通じるエアー供給通路を有していることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良用モニター。
【請求項3】
前記水供給通路を形成する壁面の前記遮断手段より上流側に、前記水供給通路に供給される前記水を前記地盤へ吐出させるウォーターリフト用吐出口が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤改良用モニター。
【請求項4】
前記削孔用吐出口から前記水供給通路への物質の浸入を阻止する逆止弁が前記削孔用吐出口に取り付けられ、
前記ウォーターリフト用吐出口から前記水供給通路への物質の浸入を阻止する差圧弁が前記ウォーターリフト用吐出口に取り付けられ
前記逆止弁の作動圧力が前記差圧弁の作動圧力より低いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の地盤改良用モニター。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良用モニターとロッドが接続して一体となることを特徴とする地盤改良用装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の地盤改良用モニターは改良材を供給する改良材供給通路を有し、
前記水供給通路に水を供給しながら前記地盤改良用モニターを用いて地盤を削孔する削孔工程と、
前記遮断手段を作動させて前記水供給通路を遮断する遮断工程と
前記改良材供給通路に改良材を供給して地盤に改良材を注入又は噴射する注入噴射工程とを有することを特徴とする地盤改良工法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−35947(P2009−35947A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201810(P2007−201810)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(591247798)原工業株式会社 (20)
【出願人】(000128027)株式会社エヌ・アイ・ティ (18)
【Fターム(参考)】