説明

地盤監視システム

【課題】リアルタイムで地盤を監視できると共に、高精度に地盤の変動を検出し、地盤の変動の位置を推定することができる地盤監視システムを提供する。
【解決手段】地滑り情報を事前に得るための地盤監視システム1であって、地盤の地表に配置された六角形状の地盤観測手段2と、地盤観測手段2の各点2A〜2Gに設けられたGPS受信機3と、地盤の変動の有無を判定するコンピュータ装置8とを具備し、地盤観測手段2が、上記六角形の中心に配置されて光源21及び照度計22を有する観測点2Gと、六角形の各頂点に配置されて受信した光源の光を転送する光中継点2A〜2Fとを備え、観測点2A及び光中継点2A〜2Fが光ファイバーケーブル4〜6で接続されると共に、コンピュータ装置8が、地盤の変動の有無を判定する第1判定部と、第1判定部で判定された地盤の変動が大規模であるかを判定する第2判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設、土木工事などの施工時には、安全上、法面などの斜面を適切に維持管理する必要がある。このため、各種の保護工や対策工事、または斜面の崩落を予測し得る防災監視システムを設置するなどの対策が行われている。
【0003】
このような防災監視システムとしては、光ファイバーケーブルで編成された防災ネットを、法面などの崩落現場に張設したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、法面の岩石の移動などで光ファイバーケーブルが引張、曲げなどのストレスを受けると、その光ファイバーケーブルを透過する光量が規定値以下まで減少するので、当該減少量を監視することにより、事前に崩落の兆候を知ることができる。
【0004】
また他には、一本の光ファイバーケーブルを格子状に敷設して、地盤の沈下および隆起を測定するためのシステムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
一般的に地盤沈下や地すべりが起こる場合は、急に地盤沈下や地すべりが起こるわけではなく、地盤沈下や地すべりが起こる前にミリ単位の地盤の揺れが計測されることがある。したがって、特許文献1または2のように、崩落が予見されそうな箇所に光ファイバーケーブルを張り、大災害を未然にまたは最小限に食い止めることができるので有効である。
【0005】
他の防災配信システムとしては、斜面にGPS受信機を複数配置し、この斜面の状態をリアルタイムで監視するものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−11677号公報
【特許文献2】特開2003−232631号公報
【特許文献3】特許第3742346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の防災監視システムでは、光ファイバーケーブルを透過する光量が規定値以下に減少して初めて崩落の兆候を知るものであるから、リアルタイムで斜面を監視することができない。さらに、このシステムでは、防災ネットが光ファイバーケーブルを縦横に編成したものであるため、張設した防災ネットの何の位置に崩落の兆候があるのかを特定することができないという問題もある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載のシステムでは、光ファイバーケーブルの敷設が複雑なためコスト高であるという問題と、一本の長い光ファイバーケーブルを用いるので計測精度が低下するという問題がある。さらに、上記特許文献3に記載の防災配信システムでは、GPS衛星からの電波に基づいて斜面の位置情報を得ているので、ミリメートルオーダーの精度で斜面の変動を計測することができず、斜面の僅かな変動が発生する段階、つまり崩落の兆候の初期段階を把握するのは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、リアルタイムで地盤を監視できるとともに、高精度に地盤の変動を検出し、当該変動の位置を推定することができる地盤監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る地盤監視システムは、地盤の変動を観測して当該地盤における地滑り情報を事前に得るための地盤監視システムであって、
上記地盤の地表に配置された地盤観測手段と、この地表に配置された地盤観測手段の位置を計測する位置計測手段と、上記地盤の変動の有無を判定する判定手段とを具備し、
上記地盤観測手段が、多角形状であるとともに、当該多角形の内側に配置されて光源および光量測定器を有する観測点と、当該多角形の各頂点に配置された光中継点とを備え、
上記観測点と各光中継点とが、当該観測点の光源から光中継点へ光を導く往路用光回線と、当該光中継点から観測点の光量測定器へ光を導く復路用光回線とで接続されるとともに、
上記光中継点同士が、上記多角形の各辺に配置された中継用光回線で接続され、
上記各光中継点が、上記往路用光回線からの光を一方の中継用光回線へ転送する往路用光転送器と、他方の中継用光回線からの光を上記復路用光回線へ転送する復路用光転送器とを有し、
上記位置計測手段が、上記観測点に設けられたGPS受信機と、上記各光中継点に設けられたGPS受信機とを備え、
上記判定手段が、上記光量測定器で測定された各光中継点からの光量を比較するとともに、この差が所定値以上であれば、当該光量が最小となる光の経路で囲まれた三角形領域または当該三角形領域の近傍で地盤の変動が有ると判定する第1判定部と、上記三角形領域の頂点における観測点および2個の光中継点の各位置を上記GPS受信機により計測して当該三角形領域の面積を算出するとともに当該三角形領域の面積の時間変位がしきい値以上であれば上記第1判定部で判定された地盤の変動が大規模であると判定する第2判定部とを備えたものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る地盤監視システムは、請求項1に記載の地盤監視システムにおいて、地表に配置された地盤観測手段の下方である地中に、他の地盤観測手段を配置し、
地表に配置された地盤観測手段と、地中に配置された地盤観測手段とが、略平行であるものである。
【0012】
さらに、本発明の請求項3に係る地盤監視システムは、請求項1または2に記載の地盤監視システムにおいて、多角形が六角形であるものである。
また、本発明の請求項4に係る地盤監視システムは、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の地盤監視システムにおいて、GPS受信機が設けられた観測点に、地盤を観測するためのカメラを設けたものである。
【発明の効果】
【0013】
上記地盤監視システムによると、GPSを利用することによりリアルタイムで地盤を監視できるとともに、光回線を具備することにより高精度に地盤の変動を検出でき、さらに光回線で導かれる光の経路を複数有することで、当該地盤の変動の位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る地盤監視システムの概念図である。
【図2】同地盤監視システムにおける観測点および1個の光中継点の横断面斜視図である。
【図3】同地盤監視システムにおけるコンピュータ装置のブロック図である。
【図4】本発明の実施例1に係る地盤監視システムにおけるユニットの配置図である。
【図5】本発明の実施例2に係る地盤監視システムの概念図である。
【図6】本発明の実施例3に係る地盤監視システムにおけるユニットの配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る地盤監視システムを図面に基づき説明する。
本発明の実施の形態に係る地盤監視システムは、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)および光ファイバーケーブル(光回線の一例である)を利用して、リアルタイムで高精度に地盤の変動を検出し、当該変動の位置を推定するものである。このように地盤の変動を検出し、地すべりなどによる被害を未然に防ぐことが、上記地盤監視システムの目的である。
【0016】
上記GPSの利用について簡単に説明すると、リアルタイム性を確保しつつセンチメートルオーダーの精度で計測が可能なリアルタイム・キネマティック(以下、RTKという)法が用いられる。RTK法とは、位置が既知であるGPS基準局からのデータを用いてGPS受信機設置点の位置を計測する相対測位方式で、詳しくは動的干渉測位方式である。RTK法によると、GPS衛星からの搬送波の位相を計測することで、高精度な計測を行うことができる。
【0017】
まず、上記地盤監視システムの全体構成について説明する。
図1に示すように、この地盤監視システム1は、観測したい地盤に配置されるとともに観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fを備えた地盤観測手段2と、これら観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fを接続する光ファイバーケーブル(詳細な接続は後述する)4〜6と、これら観測点2Gおよび各光中継点2A〜2Fにそれぞれ設けられたGPS受信機(位置計測手段の一例である)3と、上記地盤の変動による影響を受けない安定した地点(当該地盤から十分に離れた地点)に設けられて位置が既知であるGPS基準局7と、上記地盤の変動の有無を判定するコンピュータ装置(判定手段の一例である)8とを具備する。なお、上記地盤観測手段2および光ファイバーケーブル4〜6は、地表(正確には図2に示す地表直下)に配置される。
【0018】
上記観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの配置について図1に基づき説明すると、6個の光中継点2A〜2Fが六角形の各頂点に相当する位置に配置されており、観測点2Gが当該六角形の略中心に相当する位置に配置されている。すなわち、上記地盤観測手段2が六角形状であるとともに、上記観測点2Gが当該六角形の内側に配置されている。また、上記観測点2Gと6個の光中継点2A〜2Fとは、それぞれ往路用光ファイバーケーブル4および往路用光ファイバーケーブル5で直線状に接続されている。さらに、上記光中継点2A〜2F同士は、上記六角形の各辺に相当する位置に配置された中継用光ファイバーケーブル6で直線状に接続されている。
【0019】
ここで、上記観測点2Gは、図2に示すように、上記往路用光ファイバーケーブル4を介して光中継点2A〜2Fへ光を発信する光源21と、当該光中継点2A〜2Fから往路用光ファイバーケーブル5を介して受信した光の照度(光量の一例である)を測定する照度計(光量測定器の一例である)22とを有する。なお、この照度計22には、図示しないが、往路用光ファイバーケーブル5と同数の、つまり6つのセンサーが接続されている。これらセンサーは、照度を測定したい光を直接受信するものであり、各往路用光ファイバーケーブル5の観測点2G側の端部にそれぞれ接続されている。また、上記各光中継点2A〜2Fは、往路用光ファイバーケーブル4からの光を一方の中継用光ファイバーケーブル6へ転送する往路用光スプリッタ(往路用光転送器の一例である)24と、他方の中継用光ファイバーケーブル6からの光を往路用光ファイバーケーブル5へ転送する復路用光スプリッタ(復路用光転送器の一例である)25とを有する。したがって、往路用光ファイバーケーブル4は上記光源21からの光を光中継点2A〜2Fへ導くものであり、往路用光ファイバーケーブル5は当該光中継点2A〜2Fから上記照度計22へ光を導くものであり、中継用光ファイバーケーブル6は光中継点2Aから当該光中継点2Aに隣接する他の光中継点2Bへ光を導くものである。また、上記観測点2Gの光源21の光は、図1に示すように、往路用光ファイバーケーブル4を介して光中継点2Aへ発信され、この光中継点2Aの往路用光スプリッタ24で隣接する他の光中継点2Bへ転送され、当該他の光中継点2Bの復路用光スプリッタ25で観測点2Gの照度計(正確にはセンサー)22へ転送される。すなわち、上記光源21の光の経路は三角形を描くものであり、この三角形は、観測点2G(当該三角形の第1の頂点に相当)、往路用光ファイバーケーブル4(同第1の辺に相当)、光中継点2A(同第2の頂点に相当)、中継用光ファイバーケーブル6(同第2の辺に相当)と、隣接する他の光中継点2B(同第3の頂点に相当)、往路用光ファイバーケーブル5(同第3の辺に相当)および上記観測点2Gで形成される。このため、上記地盤監視システム1全体では、光の経路が、光中継点2A〜2Fの個数だけ、つまり6つ存在する。
【0020】
次に、上記コンピュータ装置8の構成について図3に基づき説明すると、このコンピュータ装置8は、地盤観測手段(観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2F)2が配置された地盤の変動の有無を判定する第1判定部10と、当該地盤の変動が大規模であるかを判定する第2判定部15とから構成される。
【0021】
上記第1判定部10は、GPS受信機3およびGPS基準局7からの搬送波データ並びに照度計22で測定された照度データが入力される入力部11と、この入力部11に入力された上記6つの光の経路の各照度データを比較する光量比較部12と、この光量比較部12で比較された照度データの最大値と最小値の差が所定値以上であれば地盤に変動が有ると判定する第1検出部13と、この第1検出部13で判定された地盤の変動の有無のデータを送信機(後述する)Tに出力する第1出力部14とから構成される。また、第2判定部15は、上記入力部11に入力された搬送波データに基づいてRTK法により観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置を計測する位置計測部16と、この位置計測部16で計測された観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置に基づいて6つの光の経路が描く各三角形領域の面積を算出する面積演算部17と、第1検出部13で地盤の変動が有ると判定された際に当該地盤の変動が大規模であるかを上記三角形領域の面積の時間変位に基づいて判定する第2検出部18と、この第2検出部18で地盤の変動が大規模であると判定された結果のデータを送信機Tに出力する第2出力部19とから構成される。
【0022】
ここで、第1判定部10の入力部11は、観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fに設けられた各GPS受信機3からの搬送波データと、GPS基準局7からの搬送波データと、上記6つの光の経路をそれぞれ通過して照度計22で計測された各照度データとが入力されるものである。また、上記光量比較部12は、入力部11に入力された6つの照度データを比較して最大値と最小値を抽出するものである。さらに、上記第1検出部13は、光量比較部12で抽出された最大値と最小値の差を算出し、この差が所定値以上であれば、照度データが最小値となる光の経路が描く三角形領域または当該三角形領域の近傍で地盤に変動が有ると判定するものである。この所定値は、少なくとも照度の計測誤差分を吸収できる範囲が必要であり、大きい値で設定されると照度計22の計測誤差による誤判定の確率が減少し、小さい値で設定されると地盤の僅かな変動でも検出するものである。具体的には、上記所定値として、第1検出部13で地盤の変動をミリメートルオーダーで検出できる程度の値に設定することが好ましい。
【0023】
一方、第2判定部15の位置計測部16は、入力部11に入力されたGPS受信機3およびGPS基準局7からの搬送波データに基づいてRTK法により観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置をリアルタイムで計測するものである。また、上記面積演算部17は、位置計測部16で計測された観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置に基づいて、6つの光の経路が描く各三角形領域の面積をリアルタイムで算出するものである。さらに、上記第2検出部18は、第1検出部13で地盤の変動が有ると判定された際に、当該地盤の変動が有ると判定された三角形領域の面積を上記面積演算部17から抽出して当該面積の時間変位を算出し、当該三角形領域の面積の時間変位がしきい値以上であれば、当該地盤の変動が大規模であると判定するものである。このしきい値は、RTK法による位置の計測誤差分を吸収できる範囲が必要であるから、例えば6〜15cm(光ファイバーケーブル4〜6の長さを30m程度とした場合)で設定される。
【0024】
図3に示すように、送信機Tは、上記コンピュータ装置8に併設されており、上記第1出力部14および第2出力部19からのデータである電気信号を光信号に変換する装置である。この光信号は、光通信ネットワークNを介して、上記地盤監視システム1を利用する利用者の受信機Rまで送信される。この受信機Rは、光通信ネットワークNを介して送信機Tから受信した光信号を電気信号に変換し、当該電気信号を併設された利用者のパソコンPに送信する装置である。このパソコンPは、当該電気信号である上記データを表示するものである。
【0025】
以下、上記地盤監視システム1を使用するための準備について説明する。
まず、図1および図2に示すように、斜面など監視したい地盤の中心近くに、観測点2G用のGPS受信機3Gを地表に設置し、そのGPS受信機3Gの直下に観測点2Gとして光源21および照度計22を埋設する。そして、この観測点2Gを中心とした六角形の各頂点に相当する位置に光中継点2A〜2F用のGPS受信機3A〜3Fを地表に設置し、これらGPS受信機3A〜3Fの直下に、それぞれ光中継点2A〜2Fとして往路用光スプリッタ24および復路用光スプリッタ25を埋設する。次に、観測点2Gの光源21と各光中継点2A〜2Fの往路用光スプリッタ24とを往路用光ファイバーケーブル4で直線状に接続するとともに、各光中継点2A〜2Fの復路用光スプリッタ25と観測点2Gの照度計(正確にはセンサー)22とを往路用光ファイバーケーブル5で直線状に接続する。一方で、光中継点2Aの往路用光スプリッタ24と隣接する他の光中継点2Bの復路用光スプリッタ25とを、中継用光ファイバーケーブル6で直線状に接続する。
【0026】
次に、上記地盤監視システム1の使用方法について説明する。
観測点2Gの光源21を起動することで、当該光源21からの光を、光中継点2Aへ発信し、この光中継点2Aの往路用光スプリッタ24で隣接する他の光中継点2Bへ転送し、当該他の光中継点2Bの復路用光スプリッタ25で上記観測点2Gの照度計(正確にはセンサー)22へ転送する。そして、この光の照度が照度計22で測定され、測定された照度データがコンピュータ装置8の入力部11に入力される。同様に、他の光の経路を通過した光の照度も照度計22でそれぞれ測定され、これら照度データも入力部11に入力される。入力された6つの照度データは、光量比較部12で比較されるとともに最大値と最小値が抽出される。抽出された最大値と最小値の差が第1検出部13で算出されるとともに、この差が所定値以上であれば、照度データが最小値となる光の経路が描く三角形領域または当該三角形領域の近傍で、地盤に変動が有ると判定される。そして、地盤の変動の有無のデータが、第1出力部14で送信機Tに出力される。
【0027】
一方、GPS受信機3およびGPS基準局7からは、搬送波データがコンピュータ装置8の入力部11に入力される。これら搬送波データに基づいて、位置計測部16でRTK法により観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置がリアルタイムで計測される。計測された観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fの位置に基づいて、面積演算部17で、6つの光の経路が描く各三角形領域の面積がリアルタイムで算出される。算出された6つの三角形領域の各面積うち、第2検出部18において、第1検出部13で地盤の変動が有ると判定された三角形領域の面積の時間変位が算出されるとともに、当該時間変位がしきい値以上であれば当該地盤の変動が大規模であると判定される。そして、当該地盤の変動が大規模であると判定された結果のデータが、第2出力部19で送信機Tに出力される。
【0028】
送信機Tに出力された第1出力部14および第2出力部19からのデータは、光通信ネットワークNおよび受信機Rを介して、利用者のパソコンPに送信されて表示される。
【0029】
このように、上記地盤監視システム1は、光ファイバーケーブル4〜6を用いることにより地盤の変動をミリメートルオーダーの精度で検出することができ、また6つの光の経路を有することで当該地盤の変動の位置を推定することができる。
【0030】
さらに、6つの三角形領域が、観測点2Gを頂点(上記第1の頂点)として共有するとともに1つの六角形を形成しているので、当該三角形領域が略正三角形となる。このため、往路用光ファイバーケーブル4および往路用光ファイバーケーブル5の長さと、中継用光ファイバーケーブル6の長さが略同一になることで、これら光ファイバーケーブル4〜6を通過する光の照度の各減少量が略同一となり、さらに地盤の変動の検出精度を上げることができる。
【0031】
以下、上記実施の形態をより具体的に示した複数の実施例に係る地盤監視システムについて説明する。なお、上記実施の形態と同一の構成については、同一の符号を用いて説明を省略する。
【実施例1】
【0032】
実施例1に係る地盤監視システムは、図4に示すように、上記実施の形態で説明した地盤観測手段(観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2F)2、GPS受信機3および光ファイバーケーブル4〜6からなるユニット30を、山地の斜面など、急勾配の斜面に配置したものである。
【0033】
この実施例1に係る地盤監視システムであっても、上記実施の形態に係る地盤監視システム1と同様の効果を奏する。
【実施例2】
【0034】
上記実施の形態に係る地盤監視システム1は、地盤観測手段2および光ファイバーケーブル4〜6が地表(正確には地表直下)に配置されたものであるが、本実施例2に係る地盤監視システム51は、図5に示すように、地表に配置された地盤観測手段2および光ファイバーケーブル4〜6の下方である地中に、さらに他の地盤観測手段52および光ファイバーケーブル54〜56が配置されたものである。
【0035】
上記地中に配置された地盤観測手段52は、地表に配置された地盤観測手段2と同様に、六角形状であるとともに、当該六角形の内側に配置されて光源および照度計(図示しない)を有する観測点52Gと、当該六角形の各頂点に配置された光中継点52A〜52Fとを備える。また、地中に配置された光ファイバーケーブル54〜56による観測点52Gおよび光中継点52A〜52Fの接続は、地表に配置された光ファイバーケーブル4〜6による観測点2Gおよび光中継点2A〜2Fの接続と同一である。さらに、地中における観測点52Gおよび6個の光中継点52A〜52Fは、地表における観測点2Gおよび6個の光中継点2A〜2Fと対応する位置に配置されている。すなわち、地表の観測点2Gと地中の観測点52Gとの距離は、地表の各光中継点2A〜2Fと地中の各光中継点52A〜52Fとの距離に等しく、言い換えれば、地表に配置された地盤観測手段2と、地中に配置された地盤観測手段52とが略平行である。
【0036】
このように、本実施例2に係る地盤監視システム51は、地表だけでなく、地中にも地盤観測手段52が配置されているため、地盤の変動が地中で発生した場合でも、当該地盤の変動を検出することができる。
【実施例3】
【0037】
上記実施例1に係る地盤監視システムは、地表に配置された地盤観測手段2、GPS受信機3および光ファイバーケーブル4〜6からなるユニット30を、図4に示すように1つのみ具備するが、本実施例3に係る地盤監視システムは、図6に示すように、上記ユニット30を複数具備するものである。
【0038】
本実施例3に係る地盤監視システム61では、上記ユニット30同士が、最も近い中継用光ファイバーケーブル6同士を平行にして配置されており、言い換えれば、上記ユニット30が地盤に蜂の巣状に配置される。また、上記両中継用光ファイバーケーブル6の間隔は、当該中継用光ファイバーケーブル6の長さよりも短い距離に設定され、具体的には2〜3メートル程度に設定される。
【0039】
このように、本実施例3に係る地盤監視システム61は、上記ユニット30が複数配置されているので、光の経路を伸ばすことなく、つまり検出精度を下げることなく、広範囲の地盤を監視することができる。
【0040】
ところで、上記実施の形態および実施例1〜3では、地盤観測手段2,52が六角形状であるとして説明したが、この形状に限定されるものではなく、多角形状つまりNを3以上の自然数とするN角形状であればよい。この場合、光中継点の個数並びに往路用光ファイバーケーブル4、往路用光ファイバーケーブル5および中継用光ファイバーケーブル6の本数は、それぞれN個とN本になる。
【0041】
また、上記実施の形態および実施例1〜3では説明しなかったが、GPS受信機3Gが設けられた観測点2Gに、地盤を撮影するためのビデオカメラ(カメラの一例である)を設けてもよい。このビデオカメラで撮影された地盤の動画のデータが、コンピュータ装置8を介して利用者のパソコンPに送信される構成とすることで、利用者は地盤の状態をリアルタイムで動画により把握することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 地盤監視システム
2 地盤観測手段
2A〜2F 光中継点
2G 観測点
3 GPS受信機
4 往路用光ファイバーケーブル
5 復路用光ファイバーケーブル
6 中継用光ファイバーケーブル
7 GPS基準局
8 コンピュータ装置
10 第1判定部
15 第2判定部
21 光源
22 照度計
24 往路用光スプリッタ
25 復路用光スプリッタ
30 ユニット
T 送信機
N 光通信ネットワーク
R 受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の変動を観測して当該地盤における地滑り情報を事前に得るための地盤監視システムであって、
上記地盤の地表に配置された地盤観測手段と、この地表に配置された地盤観測手段の位置を計測する位置計測手段と、上記地盤の変動の有無を判定する判定手段とを具備し、
上記地盤観測手段が、多角形状であるとともに、当該多角形の内側に配置されて光源および光量測定器を有する観測点と、当該多角形の各頂点に配置された光中継点とを備え、
上記観測点と各光中継点とが、当該観測点の光源から光中継点へ光を導く往路用光回線と、当該光中継点から観測点の光量測定器へ光を導く復路用光回線とで接続されるとともに、
上記光中継点同士が、上記多角形の各辺に配置された中継用光回線で接続され、
上記各光中継点が、上記往路用光回線からの光を一方の中継用光回線へ転送する往路用光転送器と、他方の中継用光回線からの光を上記復路用光回線へ転送する復路用光転送器とを有し、
上記位置計測手段が、上記観測点に設けられたGPS受信機と、上記各光中継点に設けられたGPS受信機とを備え、
上記判定手段が、上記光量測定器で測定された各光中継点からの光量を比較するとともに当該光量が最小となる光の経路で囲まれた三角形領域または当該三角形領域の近傍で地盤の変動が有ると判定する第1判定部と、上記三角形領域の頂点における観測点および2個の光中継点の各位置を上記GPS受信機により計測して当該三角形領域の面積を算出するとともに当該三角形領域の面積の時間変位がしきい値以上であれば上記第1判定部で判定された地盤の変動が大規模であると判定する第2判定部とを備えたことを特徴とする地盤監視システム。
【請求項2】
地表に配置された地盤観測手段の下方である地中に、他の地盤観測手段を配置し、
地表に配置された地盤観測手段と、地中に配置された地盤観測手段とが、略平行であることを特徴とする請求項1に記載の地盤監視システム。
【請求項3】
多角形が六角形であることを特徴とする請求項1または2に記載の地盤監視システム。
【請求項4】
GPS受信機が設けられた観測点に、地盤を観測するためのカメラを設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の地盤監視システム。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−198082(P2012−198082A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61883(P2011−61883)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】