説明

地階立坑掘削方法

【課題】 立坑の施工スペースの制限を抑え、施工費用および時間を削減することができる立坑掘削方法を提供する。
【解決手段】 建築工事における地階部分の立坑を掘削するに際して、立坑構築部分3に所定の間隔をあけて複数の基礎杭2を構築した後に、基礎杭2のうち立坑構築部分3の外周部に位置する基礎杭2を土留め用杭5として利用して土留め壁4を形成するようにし、基礎杭2は、立坑構築部分3に杭用孔を形成しながら、筒状の函体を基礎杭2の軸方向に連結するとともに上部から元押しして杭用孔に挿入することで構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事における地階部分の立坑を掘削する地階立坑掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建築工事における地下階の施工方法としては、例えば、以下に示すようなものがあった。
(1)基礎杭施工後、仮設土留めを形成して掘削して地下階を施工した後に、基礎杭上に上部構造の柱を立設して、地上階を施工する。
(2)基礎杭施工後、基礎杭上に建物地上部の柱を立設して、地上階を施工しながら、逆打ち工法によって地下階を施工する。
(3)基礎杭施工後、基礎杭上に建物地上部の柱を立設して、地上階を施工しながら、仮設土留めを設けて地下部分を掘削して地下階を施工する。
【0003】
前記の(1)の施工方法は、最も基本的な工法であって、建物の下部から順に施工する工法である。(2)の施工方法は、地上一階のコンクリートを打設した後に、上階から下階へとコンクリートを打設していく逆打ち工法(例えば、特許文献1および特許文献2参照)を採用した工法であって、地上階を施工しながら地下階を施工するので、施工時間を短縮することができる。(3)の施工方法も、(2)の施工方法と同様に、地上階を施工しながら地下階を施工するので、施工時間を短縮することができる。
【特許文献1】特開2003−34939号公報
【特許文献2】特開2002−275921号公報
【特許文献3】特開平9−125427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した従来の施工方法では、何れの工法も仮設土留めを必要としており、仮設土留め用杭を基礎杭とは別途に施工した後に矢板を設けるので、土留めの仮設に多くの費用と時間を要するとともに、支保工などが内側の施工スペースに張り出すため制限条件下での施工となる。さらに、急速の施工も要求される。
【0005】
そこで、本発明は、前記の問題を解決すべく案出されたものであって、立坑の施工スペースの制限を抑え、施工費用および時間を削減することができる地階立坑掘削方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、建築工事における地階部分の立坑を掘削する地階立坑掘削方法において、立坑構築部分に所定の間隔をあけて複数の基礎杭を構築した後に、前記基礎杭のうち前記立坑構築部分の外周部に位置する基礎杭を土留め用杭として利用して土留め壁を形成することを特徴とする地階立坑掘削方法である。
【0007】
前記方法によれば、基礎杭を土留め用杭として利用して土留め壁を形成しているので、仮設土留め用杭を別途に設ける必要がなく、その分の施工費用および時間を削減することができる。また、基礎杭は仮設の杭よりも大きい強度を有しているので、支保工を削減することができ、施工スペースの制限を抑えることができる。さらに、仮設土留め用杭を基礎杭の外側に設けなくて済むので、立坑構築部分の掘削量を低減することができ、施工費用および時間をさらに低減することができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記基礎杭が、前記立坑構築部分に杭用孔を形成しながら、筒状の函体を基礎杭の軸方向に連結するとともに上部から元押して前記杭用孔に挿入することで構築されることを特徴とする請求項1に記載の地階立坑掘削方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記基礎杭が、前記立坑構築部分で地上に形成された反力壁あるいは既設の杭外殻に反力をとりながら下方に推進して杭用孔を掘削しつつ、杭外殻を順次組み立てることで構築されることを特徴とする請求項1に記載の地階立坑掘削方法である。
【0010】
請求項2または請求項3に係る地階立坑掘削方法によれば、基礎杭の施工時間を短縮することができる。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記基礎杭が、側方にスライドして突出するスライドプレートを備え、前記基礎杭を前記杭用孔に挿入した後に、前記スライドプレートを隣り合う基礎杭に向かって押し出して、隣り合う基礎杭間に架け渡して前記土留め壁を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0012】
前記方法によれば、スライドプレートが矢板の役目を果たし、軟弱な地盤でも迅速かつ容易に土留め壁を形成することができ、施工時間を短縮することができる。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記基礎杭が、建物の梁などの構造部材を接続するための接続部材を備え、前記立坑構築部分を掘削するとともに、前記構造部材を基礎杭に順次接続することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0014】
前記方法によれば、基礎杭の周囲を掘削した後、直ぐに構造部材を接続することができる。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記接続部材が、前記基礎杭の内部に設けられており、前記基礎杭の表面のスキンプレートを切断して前記接続部材を露出させて、この接続部材に前記構造部材を接続することを特徴とする請求項5に記載の地階立坑掘削方法である。
【0016】
前記方法によれば、基礎杭の構築を円滑に行えるとともに、接続部材に土砂が付着しないので、構造部材の接続作業が行いやすい。
【0017】
請求項7に係る発明は、前記基礎杭から前記スライドプレートを押し出した後に、前記基礎杭の内部に補強鉄筋籠を挿入して、コンクリートを充填することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0018】
前記方法によれば、基礎杭の強度を確保できるとともに、土留め壁の強度も確保できるので、支保工を大幅に削減することができる。
【0019】
請求項8に係る発明は、前記基礎杭の上部に、建物地上部の柱を立設し、建物地上部の構築と並行して、建物地下部を構築することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0020】
前記方法によれば、基礎杭の上部に建物地上部の柱を立設して、建物地上部を構築しながら、建物地下部の構築を行うことで、建物全体の施工時間を短縮することができる。
【0021】
請求項9に係る発明は、前記基礎杭が、隣り合う基礎杭側に開口するガイド溝が基礎杭の軸方向に沿って形成され、前記ガイド溝が形成された基礎杭と対向する基礎杭には、前記ガイド溝に遊嵌する突条が形成されており、前記突条を隣り合う基礎杭に形成された前記ガイド溝に遊嵌することで隣り合う前記基礎杭同士を連接することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の地階立坑掘削方法である。
【0022】
前記方法によれば、矢板を設ける必要がなく、その分の施工費用および時間を低減することができる。
【0023】
請求項10に係る発明は、前記立坑構築部分の内側に位置する基礎杭に、垂直ベルトコンベヤを形成し、前記立坑構築部分の掘削土砂を前記垂直ベルトコンベヤで排出することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0024】
前記方法によれば、立坑構築部分の掘削を効率的に行うことができる。
【0025】
請求項11に係る発明は、前記立坑構築部分の内側に位置する基礎杭に、クラムシェルバケットを昇降自在に取り付け、このクラムシェルバケットで前記立坑構築部分を掘削することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法である。
【0026】
前記方法によれば、立坑構築部分の掘削を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、立坑の施工スペースの制限を抑え、施工費用および時間を削減することができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
[第一の実施の形態]
図1は本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第一の形態の基礎杭の構築状態を示した断面図、図2は図1(b)のA−A線断面図、図3は基礎杭の構築後の状態を示した斜視図、図4は土留め壁の構築状態を示した基礎杭の断面図、図5はスライドプレートの押出装置を示した斜視図、図6は立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図、図7は立坑構築部分の掘削状態を示した断面図、図8は基礎杭の接続部材を示した断面図および側面図である。なお、図6において、基礎杭と函体とを明確に区別するために、基礎杭の函体の境界線は図示を省略している。
【0030】
なお、本実施の形態では、軟弱な地盤に建物を建築する場合を例に挙げて地階立坑掘削方法を説明する。
【0031】
まず、本実施の形態に係る地階立坑掘削方法によって構築される地下構造部の各部構成を説明する。
【0032】
図6に示すように、本実施の形態に係る地階立坑掘削方法によって構築される地下構造部1は、建物の外周部に位置する基礎杭2が、立坑構築部分3の掘削時に土留めを行う土留め壁4の土留め用杭5として利用されている。基礎杭2は、立坑構築部分3に所定の間隔をあけて複数構築されている。基礎杭2は、主に地上構造部6の柱7が立設される部分に構築されている。
【0033】
図1に示すように、基礎杭2は、鋼板にて形成された筒状の函体8,8・・を基礎杭2の軸方向に連結して構成されている。函体8,8・・は、ボルトあるいは溶接などによって互いに連結されている。図2に示すように、函体8は、断面正方形を呈しており、その対角線の長さが、アースドリル9(図1参照)によって掘削される杭用孔11の直径よりも若干大きくなるように構成されている。函体8には、防錆材が塗布されている。
【0034】
図4に示すように、基礎杭2の内部には、スライドプレート12が挿入されている。スライドプレート12は、函体8に形成されたスリット13から、函体8の外部側方にスライド可能に形成されており、基礎杭2の内部に設けられた押出装置14で函体8の外部側方に押し出されるように構成されている。スライドプレート12が押し出される前は、スライドプレート12の端面がスリット13を塞いで、函体8の内部に土砂や水が浸入しないようになっている。全ての函体8が杭用孔11に挿入されて、基礎杭2の構築が完了した後に、スライドプレート12を、隣り合う基礎杭2に向かって押し出して、隣り合う基礎杭2,2間に架け渡して土留め壁4を形成するようになっている。
【0035】
図5に示すように、押出装置14は、箱状に形成された架台15と、架台15の一辺に形成されたガイド部材16と、このガイド部材16に沿って移動する押出部材17と、押出部材17を移動させる移動装置18とを備えている。押出部材17は棒状に形成されており、スライドプレート12の押出方向(図4(a)中、矢印にて示す)の基端側端面に当接するように構成されている。移動装置18は、一端が押出部材17に連結されるワイヤ19と、このワイヤ19を巻き取るウインチ21とを有している。ワイヤ19は、2本設けられ、押出部材17の両端にそれぞれ連結されている。ワイヤ19は、ガイド部材16の押出方向の先端側端部まで延出して、ガイド部材16と直交する側面板22に沿って屈曲している。側面板22に、一対のウインチ21,21が取り付けられており、これらウインチ21,21にワイヤ19,19の他端がそれぞれ接続されている。ウインチ21,21を同時に駆動させて、押出部材17をガイド部材16の押出方向先端側端部まで引き寄せることで、スライドプレート12が函体8の外部側方へ押し出される。ガイド部材16には、押出部材17を押出方向の基端側(図4中、右側)へと付勢する付勢手段(図示せず)が設けられている。これによって、スライドプレート12の押出が終了した後に、ウインチ21,21を逆回転させてワイヤ19,19を送り出すと、押出部材17がガイド部材16の押出方向の基端側へ移動する。
【0036】
押出装置14は、函体8の高さと略同等の長さLを有している。函体8の内面には、基礎杭2の軸方向に延びるラックギヤ23が設けられている。押出装置14の、ラックギヤ23に対向する位置には、走行装置20が設けられている。走行装置20は、ラックギヤに噛合するピニオンギヤ(図示せず)を備えている。そして、ピニオンギヤを駆動させることで、押出装置14は、ラックギヤ23に沿って基礎杭2の軸方向に移動する。函体8の内面のラックギヤ23の側部には、ガイドレール(図示せず)が、ラックギヤ23と平行に設けられている。押出装置14には、ガイドレールを挟み込んで、押出装置14を所定の位置に固定させるための固定手段(図示せず)が設けられている。
【0037】
一のスライドプレート12の押出が終了したら、押出部材17をガイド部材16の押出方向の基端側へ移動させた後、走行装置20を駆動させて、押出装置14を、隣接する函体8へと移動させ、隣接するスライドプレート12の押出を順次行っていく。
【0038】
図8に示すように、基礎杭2の内部には、建物の地下構造部1の梁24などの構造部材を接続するための接続部材25が設けられている。接続部材25は、函体8の内部に設けられた筒状の内部函体26の外面にボルト孔27が複数形成されたガセットプレート28を取り付けて構成されている。立坑構築部分3を掘削した後に、基礎杭2の表面のスキンプレート29を切断して接続部材25を露出させて、この接続部材25に梁24などの地下構造部1(構造部材)を接続する。
【0039】
スライドプレート12の押出が終了した後の基礎杭2には、補強鉄筋籠(図示せず)が挿入され、コンクリート30(図7参照)が打設、充填されている。図6に示すように、所定期間の養生が終了した後の基礎杭2の上部には、地上構造部6(建物地上部)の柱7が立設されている。
【0040】
次に、本実施の形態に係る地階立坑掘削方法の施工手順を説明する。
【0041】
まず、所定の寸法の函体8を工場などで製作しておく。このとき、函体8内に、スライドプレート12、押出装置14をガイドするためのガイドレール23、接続部材25などを形成しておく。そして、函体8を建築現場に搬入して、基礎杭2を構築する。函体8は、複数に分割して製作しておき、建築現場で、アースドリル9の支持部を囲むように組み立て、溶接あるいはボルトなどによって一体化するように構成しておく。
【0042】
建築現場では、図1に示すように、杭用孔11の掘削位置に函体8を押し込む元押し装置31を設置する。元押し装置31は、函体8を下方へと押し込む装置である。そして、アースドリル9の掘削部32をクレーン10によって吊り下げ、杭用孔11の掘削を開始する。所定深さ(アースドリル9の掘削部32と函体8の高さ分)の掘削が終了したならば、杭用孔11上部に函体8を組み立てて設置する。そして、元押し装置31で函体8を杭用孔11内に押し込む。このとき、函体8は、図2に示すように、杭用孔11の周囲から四隅が飛び出すように構成されているので、函体8は、杭用孔11内に落下することなく、押し込むことができる。函体8を押し込む間も、アースドリル9による掘削は継続的に行っておく。その後、押し込んだ函体8の上部に新たな函体8を組み立てて設置するとともに、函体8,8同士をボルトあるいは溶接にて接続する。その後、函体8の高さ分の掘削が終了したならば、元押し装置31で接続された函体8,8を一体的に下方へと押し込む(図1(a)参照)。以上の作業を順次行っていくことで、基礎杭2を形成していく。所定深さまでの掘削が終了したなら(図1(b)参照)、掘削部32を分解して、地上に引き上げて回収し、最後に函体8,8・・・を杭用孔11の底部まで押し込む。基礎杭2が所定深さまで達したら、杭用孔11に水中コンクリートを打設して底版(図示せず)を形成し、地山からの止水を行うとともに、内部の泥水を排水する。このとき、函体8内をドライアップして、内部を洗浄する。回収した掘削部32は、他の杭用孔11の掘削部分で組み立てて使用する。
【0043】
なお、杭用孔11の掘削は、アースドリル工法で行うのに限られるものではなく、リバースサーキュレーション工法やBH(borehole)工法など他の工法で行ってもよい。
【0044】
図3に示すように、全ての基礎杭2の構築が終了したならば、スライドプレート12の押出しを行う。立坑構築部分3の外周部で隣り合う基礎杭2間の距離tは、スライドプレート12の突出距離と略同等の距離、すなわち、基礎杭2の一辺の長さより、若干短い長さとなっている。
【0045】
図4(a)に示すように、押出装置14を、基礎杭2の上側から挿入して、最上部の函体8内にセットする。そして、ウインチ21でワイヤ19を巻き取ることで、押出部材17を移動させて、スライドプレート12をスライドさせる。ここで、隣り合う基礎杭2,2の離間距離は、スライドプレート12の突出距離と同等の距離tとなっているので、スライドプレート12の先端面は、隣り合う基礎杭2の外面に当接する。隣り合う基礎杭2の当接面には、立坑構築部分3の内側が突出した段部33を形成しておき、スライドプレート12の内側面(立坑構築部分3の内側面)を段部33に係止させる。このようにすることによって、スライドプレート12が、立坑構築部分3の掘削後の外側の地山の土圧に対抗できる。最上部の函体8のスライドプレート12の押出が終了したならば、押出装置14の押出部材17をガイド部材16の押出方向の基端側へ移動させた後、押出装置14を下側の函体8内へと移動させる。そして、前記と同等の手順で次のスライドプレート12の押出を行う。この手順を繰り返し行うことで、最下部の函体8まで、スライドプレート12の押出を順次行う。最下部のスライドプレート12の押出が終了した後には、押出装置14を地上まで移動させて基礎杭2内から取り出し、他の基礎杭2のスライドプレート12の押し出しを順次行う。
【0046】
スライドプレート12の押出作業が終了したならば、基礎杭2の内部に補強鉄筋籠(図示せず)を挿入して、コンクリート30(図7参照)を打設、充填する。そして、所定期間の養生が終了した後に、基礎杭2の上部に、地上構造部6(建物地上部)の柱7を立設する(図6参照)。そして、上層の地上構造部6を組み立てながら、立坑構築部分3の掘削を開始する。このとき、基礎杭2が土留め用杭5の役目を果たすとともに、基礎杭2間に架け渡されたスライドプレート12が矢板の役目を果たすので、基礎杭2とスライドプレート12とで土留め壁4が構成されることとなる。なお、基礎杭2への補強鉄筋籠の挿入およびコンクリートの充填の時期は、地上構造部6の荷重条件によっては、地上工事の進捗状況に合わせて遅らせる(例えば、地上構造部6の自重が、函体8の基礎形状で支持可能な荷重上限に達するまで)ことも可能である。また、柱7の立設時期は、地下工事の施工性と地上工事の工期などを考慮して決定してもよい。例えば、地下工事を先行させた後、柱7を立設するようにしてもよい。
【0047】
立坑構築部分3の掘削は、例えば、図7に示すように、柱7が立設されない基礎杭2aの内部に、垂直ベルトコンベヤ35を設けておき、バックホウ36を立坑構築部分3に搬入して、このバックホウ36で掘削した土砂を垂直ベルトコンベヤ35で上方に搬出するようにする。垂直ベルトコンベヤ35が設けられる基礎杭2aのスキンプレートには、開閉自在の開口部37が形成されている。開口部37は、上下方向に所定の間隔をあけて複数形成されており、掘削の進行状態に合わせて、掘削面上に露出した開口部37を開けて、掘削土砂の取込口として利用する。なお、開口部は、基礎杭2aの構造上の弱点とならない任意の箇所のスキンプレートを切断して形成するようにしてもよい。垂直ベルトコンベヤ35の上部の土砂排出部38の下部に、桟橋架台39を形成し、桟橋架台39上にダンプ41を走行させて、このダンプ41で掘削土砂を搬送する。このように、基礎杭2aの内部に垂直ベルトコンベヤ35を設ければ、予め基礎杭2aの底部まで延びる垂直ベルトコンベヤ35を形成できるので、掘削の進行状態に合わせて垂直ベルトコンベヤを延伸させる必要がなく、効率的に土砂の排出を行うことができる。なお、桟橋架台37に代えて地上部に水平ベルトコンベヤや横引きベルトコンベヤを設けておき、垂直ベルトコンベヤ35で地上に土揚げした後に、水平ベルトコンベヤや横引きベルトコンベヤによって、掘削土砂の建築建屋外へ横引きをし、地上階工事の支障とならない場所で掘削土砂の積込みを行うようにしてもよい。このようにすれば、桟橋架台37を設けなくても済む。
【0048】
立坑構築部分3の掘削が進行して、地下構造部1の梁接続部分43が露出したならば、図8(b)に示すように、接続部材25の周囲のスキンプレート29を切断して取り外す。これによって、基礎杭2の内部に設けられている接続部材25が露出する。そして、接続部材25に梁24などをボルト(図示せず)により接合する。このように、接続部材25を予め内部に設けておくことによって、地下構造部1の接合を容易に行うことができ、地下構造部1の一体化が図れるので、土留め壁4としての強度を向上させることができ、深い層でも十分な強度を得られる。したがって、必要以上に施工を急ぐ必要がなくなり、施工精度の高い地下構造部1を構築できる。ここで、接続部材25は、函体8の内部に設けられた筒状の内部函体26の外面にボルト孔27が複数形成されたガセットプレート28を取り付けて構成されているので、コンクリート30の打設前にスキンプレート29を取り外したとしても、内部函体26がコンクリート30の型枠の役目を果たす。
【0049】
なお、立坑構築部分3を掘削するに際しては、図9に示すように、基礎杭2に、クラムシェルバケット44を昇降自在に取り付けてもよい。クラムシェルバケット44は、アーム45の先端部に取り付けられている。アーム45の基端部は、基礎杭2aに旋回かつ昇降自在に取り付けられている。クラムシェルバケット44で掘削した土砂は、図示しない垂直ベルトコンベヤなどの搬出手段で地上に搬出する。このようにクラムシェルバケット44を用いれば、一回の掴み取りの土砂掘削量が多いので、高速の掘削が可能となり、工期短縮を達成できる。
【0050】
立坑構築部分3の掘削が終了した後に、函体8とスライドプレート12との接続部分に止水材を塗布あるいは設置するようにしてもよい。このようにすれば、地下構造部1を、地山からの水の浸入を防止できる防水構造とすることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態の地階立坑掘削方法によれば、基礎杭2を土留め用杭5として利用して土留め壁4を形成しているので、従来、必要としていた仮設土留め用杭を別途に設ける必要がなく、その分の施工費用および時間を削減することができる。また、基礎杭2は本設であって、仮設の杭よりも十分に大きい強度を有しているので、支保工を削減することができ、施工スペースの制限を抑えることができる。
【0052】
さらに、仮設の土留め用杭を設けなくて済むので、土砂の掘削は、基礎杭2で囲まれた内側だけでよく、従来、基礎杭の外側に仮設土留め用杭を設けてその内側を掘削していた場合と比較して、掘削量を大幅に低減することができ、施工費用および時間をさらに低減することができる。
【0053】
基礎杭2は、立坑構築部分3に杭用孔11を形成しながら、筒状の函体8を基礎杭2の軸方向に連結するとともに上部から元押して杭用孔11に挿入することで構築されるので、現場打ち杭などと比較して、施工時間を短縮することができる。また、基礎杭2を、函体8を連結して構成しているので、函体8の建築現場への搬送や組立てが行いやすく、効率的な施工を行うことができる。
【0054】
基礎杭2は、函体8の外部側方にスライドして突出するスライドプレート12を備え、基礎杭2を杭用孔11に挿入した後に、スライドプレート12を隣り合う基礎杭2に向かって押し出して、隣り合う基礎杭2,2間に架け渡して土留め壁4を形成するように構成されているので、立坑構築部分3の掘削前に土留め壁4を形成できる。したがって、立坑構築部分3が軟弱な地盤であっても、地盤改良を行う必要がなく、迅速に土砂掘削を開始でき、施工時間を大幅に短縮できるとともに施工費用を低減することができる。
【0055】
また、基礎杭2の内部に接続部材25を設け、立坑構築部分3を掘削するとともに、スキンプレート29を切断して接続部材25を露出させて、接続部材25に梁24などを順次接続することで、基礎杭2の周囲を掘削した後、直ぐに地下構造部1(構造部材)を接続することができる。したがって、地下構造部1としての強度を、土砂掘削後間もなく発現させることができ、土留め壁4として十分な強度を得ることができる。また、基礎杭2の構築時には、接続部材25は外部に露出していないので、基礎杭2(函体8)の杭用孔11への挿入を円滑に行えるとともに、接続部材25に土砂が付着しないので、梁24の接続作業が行いやすい。
【0056】
基礎杭2からスライドプレート12を押し出した後に、基礎杭2の内部に補強鉄筋籠を挿入して、コンクリート30を充填することで、基礎杭2としての強度を十分に発現できるとともに、土留め壁4の強度も確保できるので、基礎杭2やスライドプレート12間に架け渡される支保工を大幅に削減することができ、施工スペースの制限を抑え、広い施工スペースでの作業が可能となる。
【0057】
コンクリート30を充填した基礎杭2の上部に、地上構造部6の柱7を立設することによって、基礎杭2の構築後直ぐに地上構造部6の構築を開始でき、地上構造部6を構築しながら、地下構造部1の構築を同時に行うことができるので、建物全体での施工時間を短縮することができる。
【0058】
[第二の実施の形態]
図10は本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第二の形態の立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図である。なお、図10において、基礎杭と函体とを明確に区別するために、基礎杭の函体の境界線は、手前の基礎杭のみに図示して、他の基礎杭は図示を省略している。
【0059】
なお、本実施の形態は、強硬な地盤に建物を建築する場合の地階立坑掘削方法である。
【0060】
前記第一の実施の形態の地階立坑掘削方法が、基礎杭2の内部にスライドプレート12を設けて、立坑構築部分3の掘削前にスライドプレート12を押し出すことで土留め壁4を構築するのに対して、本実施の形態に係る地階立坑掘削方法は、立坑構築部分3を掘削しながら、基礎杭51間に矢板52を架け渡して設置することで土留め壁53を形成することを特徴とする。
【0061】
かかる地階立坑掘削方法の施工手順を説明する。
【0062】
まず、所定の寸法の函体54を工場などで製作する。このとき、函体54内に、図8と同様の構成の接続部材25を形成しておく。ここで、函体54内には、スライドプレート12やガイドレール23を設ける必要はないので、製作費用および時間が低減される。その後、函体54を建築現場に搬入して、基礎杭51を構築する。基礎杭51の構築手順は第一の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0063】
全ての基礎杭51の構築が終了したならば、基礎杭51の内部に補強鉄筋籠(図示せず)を挿入して、コンクリート30(図7参照)を打設、充填する。そして、所定期間の養生が終了した後に、基礎杭51の上部に、地上構造部6(建物地上部)の柱7を立設する。そして、上層の地上構造部6を組み立てながら、立坑構築部分3の掘削を開始する。なお、本実施の形態においても、基礎杭51への補強鉄筋籠の挿入およびコンクリート30の充填の時期は、地上構造部6の荷重条件によっては、地上工事の進捗状況に合わせて遅らせることも可能である。また、柱7の立設時期は、地下工事の施工性と地上工事の工期などを考慮して決定してもよい。例えば、地下工事を先行させた後、柱7を立設するようにしてもよい。
【0064】
立坑構築部分3の掘削の施工手順についても、第一の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。但し、本実施の形態では、立坑構築部分3を掘削しながら、掘削側面の地山が露出するが、掘削を行いつつ、露出した地山を覆うように、矢板52を公知の取付方法で基礎杭51間に設置する。この工程を繰り返しながら、立坑構築部分3を所定の深さまで掘削する。基礎杭51と矢板52との接続部分に止水材を塗布あるいは設置するようにしてもよい。これによれば、地下構造部1を、地山からの水の浸入を防止できる防水構造とすることができる。
【0065】
立坑構築部分3の掘削途中で、地下構造部1の梁接続部分43が露出したならば、立坑構築部分3の掘削作業および矢板52の取付作業と並行して、接続部材25の周囲のスキンプレート29を切断して取り外す。そして、露出した接続部材25に梁24などをボルト(図示せず)により接合する(図8(b)参照)。
【0066】
本実施の形態の立坑掘削方法によれば、基礎杭51の間隔を前記第一の実施の形態よりも大きくすることができる。すなわち、スライドプレート12は、基礎杭2内に設けられるので、基礎杭2の幅以上に長くできないが、矢板52はそれよりも長く形成できるので、基礎杭51の配置ピッチを長くでき、基礎杭51の設置本数を低減できる。したがって、施工費用および時間を低減することができる。
【0067】
[第三の実施の形態]
図11は本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第三の形態の基礎杭の構築状態を示した断面図、図12は基礎杭を示した断面図、図13は基礎杭のガイド溝と突条を示した断面図、図14は立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図である。
【0068】
図12に示すように、本実施の形態は、基礎杭61が、隣り合う基礎杭61側に開口するガイド溝62が基礎杭61の軸方向に沿って形成され、他方、このガイド溝62が形成された基礎杭61と対向する基礎杭61には、ガイド溝62に遊嵌する突条63が形成されており、この突条63を隣り合う基礎杭61に形成されたガイド溝62に遊嵌することで隣り合う基礎杭61,61同士を連接することを特徴とする。
【0069】
そして、本実施の形態においては、図11に示すように、基礎杭61は、推進工法によって構築される。つまり、本実施の形態では、基礎杭の杭外殻64は、複数の推進函体65から構成されており、杭口67に設けられた元押し装置68で、推進函体65を押し込んで推進させながら、先端(下端)に設けられた掘進機69で地山を掘削するようになっている。掘進機69は、先端にカッタヘッド71を備え、このカッタヘッド71を駆動させることで、地山を掘削して杭用孔72を構築する。杭用孔72は、第一の実施の形態と同様に、断面円形に形成され、断面正方形の推進函体65を、杭用孔72の上方から下方に押し込むようになっている。杭用孔72は、カッタヘッド71の掘削軌跡が隣り合う推進函体65に干渉しないような断面形状となっている。
【0070】
なお、杭用孔は断面矩形に形成するようにしてもよい。この場合、カッタヘッド71は、例えば、放射状に配置されたカッタスポーク(図示せず)を備えたメインカッタ(図示せず)と、このメインカッタの四隅に設けられたコーナカッタ(図示せず)とを備えるものを採用する。カッタスポークは、杭用孔の径方向に伸縮可能に構成されており、これにより、掘削断面を矩形にすることが可能となる。
【0071】
また、本実施の形態における掘進機69は、推進函体65を介して杭口67側から伝達された元押し装置68の推力により掘進するようになっているが、これに限られるものではなく、掘進方向後方の推進函体65に反力をとって自ら掘進するもの(つまり、掘進機内に推進ジャッキを装備しているもの)であっても差し支えない。
【0072】
図13に示すように、推進函体65の杭外殻64は、溶接により接合された複数枚の鋼製のスキンプレート73からなり、全体として断面正方形を呈している。推進函体65の一側面のスキンプレート73には、基礎杭61の軸方向に延びる長穴状の隙間62bが形成されている。この隙間62bは、ガイド溝62の開口部となっている。推進函体65には、ガイド溝62を形成する溝部材62aおよび突条63となる突部材63aが設けられている。
【0073】
図13(a)に示すように、溝部材62aは、スキンプレート73の内側において隙間62bに沿って配置されている。溝部材62aは、隙間62bを挟んで対向する一対の対向片62c,62cと、この一対の対向片62c,62cのそれぞれの先端部から側方に張り出す張出片62d,62dと、これら張出片62d,62dを覆うように架け渡された断面コ字形状の形材62eとを備えて構成されている。このような構成によって、幅狭部74aと幅広部74bとを備える断面T字形状の溝(いわゆるT溝)が形成されている。なお、対向片62c、張出片62dおよび形材62eはそれぞれ鋼製の部材からなり、溶接により互いに接合されている。
【0074】
図13(b)に示すように、突部材63aは、スキンプレート73の外側において、基礎杭61の軸方向に沿って配置されており、その突端部分がスキンプレート73の外側に突出している。突部材63aは、スキンプレート73の外面に配置されたレール63bと、スキンプレート73の内側に配置された押えプレート63cと、レール63bのフランジ631、スキンプレート73および押えプレート63cを貫通するボルト63d,63dと、各ボルト63d,63dを締結するナット63e,63eとを備えて構成されている。
【0075】
レール63bは、熱押形鋼、形鋼、鋳鉄、研き出し鋼などからなり、スキンプレート73の外面に固定されるフランジ631と、このフランジ631から立ち上がるウェブ632と、このウェブ632の突端部分に形成された頭部633とを備えている。レール63bのウェブ632の幅(厚さ)が、溝部材62aの幅狭部74aの幅(すなわち、ガイド溝62の開口幅)よりも小さくなっており、かつ、頭部633の断面積が、溝部材62aの幅広部74bの断面積よりも小さくなっている。このような構成によって、レール63bは、上下左右に動き得るクリアランスをもって溝部材62aの内部に入り込む。つまり、突条63は、ガイド溝62と遊嵌状態で結合することとなる。また、レール63bは、溝部材62aの幅狭部74aの幅(すなわち、ガイド溝62の開口幅)よりも大きい幅寸法に形成されている。このような構成によれば、レール63bの溝部材62aからの抜け出しが阻止されることから、隣り合う推進函体65,65同士を連結できるとともに、レール63bのウェブ632が、矢板の役目を果たすこととなる。
【0076】
本実施の形態において、基礎杭61を構築するに際しては、予め、ガイド溝62および突条63が形成された推進函体65を工場などで製作しておく。推進函体65は、予め筒状に形成しておく。梁などの構造部材が接続される部分の推進函体65内には、接続部材(図示せず)を形成しておく。この接続部材は、第一の実施の形態の接続部材25と同等の構成である。
【0077】
まず、図11(a)に示すように、杭用孔72の掘削位置に元押し装置68を設置する。元押し装置68は、推進函体65を下方へと押し込む装置であって、上下方向に伸縮する推進ジャッキ75を備えている。推進ジャッキ75の下部に掘進機69を設置して、推進ジャッキ75を伸長させて掘進機69に推進力を与えながら、カッタヘッド71を駆動させて、杭用孔72(図11(b)参照)を掘削する。所定深さ(推進函体65の高さ分)の掘削が終了したならば、掘進機69の上部に推進函体65を設置する。そして、元押し装置68で推進函体65および掘進機69を下方に押し込みながら、杭用孔72をさらに掘削する。そして、所定深さ(推進函体65の高さ分)の掘削が終了したならば、掘進機69の上部に新たな推進函体65を設置して、さらに杭用孔72の掘削を行う。このとき、推進函体65,65同士は、溶接あるいはボルトによって接合する。これらの工程を順次繰り返すことで、基礎杭61を所定深さまで掘削する。
【0078】
杭用孔72の掘削が終了したならば、掘進機69を分解して地上に引き上げて回収した後、元押し装置68によって、推進函体65を杭用孔72の底部まで押し込む。地上に引き上げた掘進機69は、隣り合う基礎杭61の構築位置に組み立てて設置する。そして、前記した工程と同等の工程によって、隣り合う基礎杭61を構築する。このとき、既設の基礎杭61のガイド溝62に新たに構築する基礎杭61の突条63が挿入されるように、推進函体65を設置する(図12参照)。なお、既設の基礎杭61の突条63が、新たに構築する基礎杭61のガイド溝62に挿入されるように、推進函体65を設置するようにしても差し支えない。ここで、突条63がガイド溝62に挿入されているので、推進函体65は、既設の基礎杭61に沿って推進するので、隣り合う基礎杭61,61同士を所定の間隔で構築することができる。また、突条63は、ガイド溝62に遊嵌されているので、掘進方向のずれを吸収することができる。
【0079】
図14に示すように、全ての基礎杭61の構築が終了すると、立坑構築部分3の外周部には基礎杭61,61,61・・・が形成され、隣り合う基礎杭61,61同士は、突条63およびガイド溝62によって接続されている。突条63は、基礎杭61の長手方向に沿って、基礎杭61の下端から上端まで延びて設けられているので、隣り合う基礎杭61,61間の隙間を塞いで、立坑構築部分3の内側と外側とを区画することとなる。つまり、突条63が矢板の役目を果たすこととなり、基礎杭61の構築と同時に土留め壁70が形成される。
【0080】
その後、基礎杭61の内部に補強鉄筋籠(図示せず)を挿入して、コンクリートを打設、充填する。そして、所定期間の養生が終了した後に、基礎杭61の上部に、地上構造部6(建物地上部)の柱7を立設する。さらに上層の地上構造部6を組み立てながら、立坑構築部分3の掘削を開始する。なお、基礎杭61への補強鉄筋籠の挿入およびコンクリートの充填の時期は、地上構造部6の荷重条件によっては、地上工事の進捗状況に合わせて遅らせる(例えば、地上構造部6の自重が、推進函体65の基礎形状で支持可能な荷重上限に達するまで)ことも可能である。また、柱7の立設時期は、地下工事の施工性と地上工事の工期などを考慮して決定してもよい。例えば、地下工事を先行させた後、柱7を立設するようにしてもよい。
【0081】
立坑構築部分3の掘削を含む以降の工程は、前記第一の実施の形態と同様の作業手順によって行うので、その説明を省略する。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態の地階立坑掘削方法によれば、前記第一および第二の実施の形態と同様の作用効果を得られる他に、以下に示すような作用効果を得ることができる。つまり、本実施の形態では、基礎杭61と一体的に設けられた突条63が矢板の役目を果たすこととなり、基礎杭61の構築と同時に土留め壁70が形成されるので、前記第一および第二の実施の形態のように、スライドプレート12を押し出す工程や矢板52を設置する工程を行う必要はなく、その分の施工時間の短縮を図ることができる。また、推進工法によって、基礎杭61を構築しているので、掘削速度が速く、効率的で迅速な施工を行うことができる。さらに、前記方法によれば、地階部分が井筒状の基礎杭61となる建物を施工することが可能である。
【0083】
[第四の実施の形態]
図15は本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第四の形態の基礎杭の構築状態を示した断面図である。
【0084】
図15に示すように、本実施の形態は、第三の実施の形態と同等の構成のガイド溝と突条とを備えた基礎杭80をシールド掘進機76によって構築するようにしたことを特徴とする。すなわち、基礎杭80は、立坑構築部分3で地上に形成された反力壁77あるいは既設の杭外殻78に反力をとりながら下方に推進して杭用孔79を掘削しつつ、杭外殻78を順次組み立てることで構築する。シールド掘進機76は、筒状の胴部81の先端にカッタ82を有し、カッタ82を駆動させて地山を掘削するとともに、胴部81の内部で杭外殻78となるセグメントを組み立てて基礎杭80を構築する。シールド掘進機76の胴部81の内側後端には、シールドジャッキ83が所定ピッチで複数配設されている。シールドジャッキ83は、シールド掘進機76内で組み立てられた杭外殻78に反力をとって、シールド掘進機76を推進させるようになっている。
【0085】
シールド掘進機76で基礎杭80を構築するに際しては、まず、杭用孔72の掘削位置に反力壁77を設置する。反力壁77は、下方に向いた固定壁面84を備えており、この固定壁面84に反力を得ることで、シールド掘進機76の推進力を得る。反力壁77の下部にシールド掘進機76を設置して、シールドジャッキ83を反力壁77の固定壁面84に当接させる。シールドジャッキ83を伸長させてシールド掘進機76に推進力を与えながら、カッタ82を駆動させて、杭用孔79を掘削する。シールド掘進機76は、杭用孔79を掘削しながら、胴部81の内部でセグメントを組み立てて、杭外殻78を順次構築していく。所定深さまで杭外殻78の組立が完了し、基礎杭80の構築が終了したならば、シールド掘進機76を分解して、胴部81を残して地上に引き上げて回収する。胴部81は、組み立てられたセグメントと固定する。基礎杭80の底部は、胴部81が杭外殻78を構成する。
【0086】
回収したシールド掘進機76を、新たな胴部とともに隣り合う基礎杭80の構築位置に組み立てて設置する。そして、前記工程と同等の工程によって、隣り合う基礎杭80を構築する。このとき、既設の基礎杭80のガイド溝に新たに構築する基礎杭80の突条が挿入されるように、杭外殻78を組み立てる。なお、既設の基礎杭80の突条が、新たに構築する基礎杭80のガイド溝に挿入されるように、杭外殻78を組み立てるようにしても差し支えない。
【0087】
以降の工程は、前記推進工法により基礎杭61を構築した場合と同様の作業手順によって行うので、その説明を省略する。
【0088】
以上説明したように、シールド掘進機76によって基礎杭80を構築すれば、推進工法で基礎杭61を構築する場合と同様の作用効果を得られる。
【0089】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施の形態では、基礎杭2,51,61,80はスチールにて形成されているが、これに限られるものではなく、ダクタイルやコンクリートなどを用いて形成するようにしてもよい。
【0090】
また、前記実施の形態では、基礎杭2,51,61,80の構築後、直ぐに柱7を立設して、地上部分の構築と並行して地階部分を構築しているが、これに限られるものではなく、地階部分を先行して構築してもよいのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第一の形態の基礎杭の構築状態を示した(a)は掘削開始時の断面図、(b)は掘削終了時の断面図である。
【図2】図1(b)のA−A線断面図である。
【図3】基礎杭の構築後の状態を示した斜視図である。
【図4】土留め壁の構築状態を示した(a)はスライドプレートの押出前の基礎杭の断面図、(b)はスライドプレートの押出後の基礎杭の断面図である。
【図5】スライドプレートの押出装置を示した斜視図である。
【図6】立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図である。
【図7】立坑構築部分の掘削状態を示した断面図である。
【図8】(a)は基礎杭の接続部材を示した断面図、(b)は基礎杭と梁との接続状態を示した側面図である。
【図9】立坑構築部分の掘削状態を示した断面図である。
【図10】本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第二の形態の立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図である。
【図11】本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第三の形態の基礎杭の構築状態を示した(a)は掘削開始時の断面図、(b)は掘削終了時の断面図である。
【図12】基礎杭を示した断面図である。
【図13】(a)は基礎杭のガイド溝を示した断面図、(b)は基礎杭の突条を示した断面図である。
【図14】立坑構築部分の掘削状態を示した斜視図である。
【図15】本発明に係る地階立坑掘削方法を実施するための最良の第四の形態の基礎杭の構築状態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0092】
2 基礎杭
3 立坑構築部分
4 土留め壁
5 土留め用杭
7 柱
8 函体
11 杭用孔
12 スライドプレート
24 梁
25 接続部材
29 スキンプレート
30 コンクリート
35 垂直ベルトコンベヤ
44 クラムシェルバケット
51 基礎杭
53 土留め壁
61 基礎杭
62 ガイド溝
63 突条
70 土留め壁
77 反力壁
78 杭外殻
79 杭用孔
80 基礎杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築工事における地階部分の立坑を掘削する地階立坑掘削方法において、
立坑構築部分に所定の間隔をあけて複数の基礎杭を構築した後に、前記基礎杭のうち前記立坑構築部分の外周部に位置する基礎杭を土留め用杭として利用して土留め壁を形成する
ことを特徴とする地階立坑掘削方法。
【請求項2】
前記基礎杭は、前記立坑構築部分に杭用孔を形成しながら、筒状の函体を基礎杭の軸方向に連結するとともに上部から元押して前記杭用孔に挿入することで構築される
ことを特徴とする請求項1に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項3】
前記基礎杭は、前記立坑構築部分で地上に形成された反力壁あるいは既設の杭外殻に反力をとりながら下方に推進して杭用孔を掘削しつつ、杭外殻を順次組み立てることで構築される
ことを特徴とする請求項1に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項4】
前記基礎杭は、側方にスライドして突出するスライドプレートを備え、
前記基礎杭を前記杭用孔に挿入した後に、前記スライドプレートを隣り合う基礎杭に向かって押し出して、隣り合う基礎杭間に架け渡して前記土留め壁を形成する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項5】
前記基礎杭は、建物の梁などの構造部材を接続するための接続部材を備え、
前記立坑構築部分を掘削するとともに、前記構造部材を基礎杭に順次接続する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項6】
前記接続部材は、前記基礎杭の内部に設けられており、
前記基礎杭の表面のスキンプレートを切断して前記接続部材を露出させて、この接続部材に前記構造部材を接続する
ことを特徴とする請求項5に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項7】
前記基礎杭から前記スライドプレートを押し出した後に、前記基礎杭の内部に補強鉄筋籠を挿入して、コンクリートを充填する
ことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項8】
前記基礎杭の上部に、建物地上部の柱を立設し、
建物地上部の構築と並行して、建物地下部を構築する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項9】
前記基礎杭は、隣り合う基礎杭側に開口するガイド溝が基礎杭の軸方向に沿って形成され、
前記ガイド溝が形成された基礎杭と対向する基礎杭には、前記ガイド溝に遊嵌する突条が形成されており、
前記突条を隣り合う基礎杭に形成された前記ガイド溝に遊嵌することで隣り合う前記基礎杭同士を連接する
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項10】
前記立坑構築部分の内側に位置する基礎杭に、垂直ベルトコンベヤを形成し、
前記立坑構築部分の掘削土砂を前記垂直ベルトコンベヤで排出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。
【請求項11】
前記立坑構築部分の内側に位置する基礎杭に、クラムシェルバケットを昇降自在に取り付け、
このクラムシェルバケットで前記立坑構築部分を掘削する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の地階立坑掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−85005(P2007−85005A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271272(P2005−271272)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】