説明

地震センサ

【課題】縦揺れ(S波)を正確に検知できる地震センサであって、小型のものが望まれていた。
【解決手段】鉛直方向に配置される軸3と、軸3に外嵌され、軸3に沿って上下に自由移動し得る可動子9とを含む構成とする。可動子9はばね8で受けられている。地震による縦揺れが生じたとき、可動子9は軸3に沿って上方へ移動し、フレーム2に固定された固定接点11と接触する。可動子9が固定接点11と接触することにより、第1端子12と第2端子13との間が電気的に接続され、縦揺れが生じたことを検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は地震センサに関し、特に、地震による縦揺れ(S波)を良好に感知できる地震センサに関する。
【背景技術】
【0002】
センサにより地震の発生を迅速にかつ正確に検知することができると、そのセンサ出力に基づき種々の地震対策を講じることが可能である。
ところで、地震は、波の一種である地震波となって地中から地表に伝わる。この地震波にはP波(ラテン語のprimae(primaryの語源)の頭文字をとって、P波と呼ばれている。)とS波(ラテン語のsecundae(secondaryの語源)の頭文字をとって、S波と呼ばれている)とが含まれており、震源地からの距離によりP波とS波との到達時間が変わる。いずれにしろ、地表にいる人間や建造物は、最初に到達するP波により横揺れを感知し、次に到達するS波により縦揺れを感知する。なお、地震に関する専門文献等では、人間が感じる揺れの状態ではなく、地面を伝播する波の態様により、P波を縦波、S波を横波と説明しているものがあるが、この発明は、人間が感じる揺れ(地表において現象として現れる揺れ)に基づき地震を検知するセンサに関する技術であるから、本件明細書および請求の範囲では、P波を横揺れ、S波を縦揺れとして説明する。
【0003】
従来の地震センサは、たとえばマイクロスイッチのアクチュエータ上に球体が乗せられ、地震による横揺れが生じると、球体が横へ転がり、アクチュエータ上から球体が外れて、マイクロスイッチが切り換わるといった構成のものが提案されている(たとえば実公平6−6438号公報参照)。
【特許文献1】実公平6−6438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既提案の従来の地震センサは、主として横揺れを検知する構成になっており、縦揺れ(S波)を正確に感知できる地震センサではない。仮に、縦揺れを正しく感知できる地震センサを作る場合、その構成が複雑であったり、装置自身が大がかりなものになるといった課題があった。
そこでこの発明は、簡単な構成の小型の地震センサであって、縦揺れを正しく検知することのできる地震センサを提供することを主たる目的とする。
【0005】
この発明は、また、小型で、縦揺れおよび横揺れの両方をそれぞれ正しく検知することのできる地震センサを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、鉛直方向に配置される軸と、軸の上部が取り付けられたフレームと、軸に外嵌され、軸に沿って上下に自由移動し得る可動子と、フレームに取り付けられ、可動子が上方へ移動したときに、可動子が接触し得る固定接点と、軸の下部に備えられ、可動子を弾力的に受けているばねと、フレームに設けられ、固定接点と電気的に接続されている第1端子と、フレームに設けられ、固定接点および第1端子とは絶縁されており、軸およびばねを介して可動子と電気的に接続されている第2端子と、を含むことを特徴とする地震センサである。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記軸は、下方へ延びている長さが調整可能に、フレームに取り付けられていることを特徴とする、請求項1記載の地震センサである。
請求項3記載の発明は、上記フレームには、地震による横揺れが生じたとき、球体が横方向へ動き、それによってスイッチが切り換わる横揺れセンサが取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の地震センサである。
【0008】
請求項4記載の発明は、上記フレームは、可動子およびばねを囲っており、フレームの下部には、横揺れセンサが備えられており、当該横揺れセンサは、球体およびマイクロスイッチを有し、地震による横揺れが生じたとき、球体が横方向へ動き、それによって、スイッチが切り換わるセンサであることを特徴とする、請求項1または2記載の地震センサである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によれば、地震による縦揺れが生じたとき、ばねで受けられている可動子は軸に沿って上方へ移動し、固定接点と接触する。可動子が固定接点と接触することにより、第1端子と電気的に接続された固定接点および第2端子と軸およびばねを介して電気的に接続された可動子との間が導通し、第1端子および第2端子間が電気的につながる。よって、第1端子および第2端子間が導通したことに基づき、縦揺れが生じたことを検知できる。
【0010】
可動子は、使用時には、鉛直方向に配置された軸に沿って上下に自由移動可能に設けられており、かつ、ばねによって弾力的に受けられている。従って、地震による縦揺れが生じると、可動子は縦揺れに敏感に反応し、軸にそって上方へ移動する。
軸は、請求項2記載のように、フレームから下方へ突出している長さを調整可能である。従って、フレームから下方へ延びる軸の長さを長くすれば、軸に外嵌している可動子を下方に下げることになり、可動子とフレームに固定された固定接点との距離を長くすることができる。可動子の位置をフレームから相対的に下方に下げると、可動子が相対的に大きく上方へ移動することにより固定接点と接触する。従って、フレームから下方へ突出する軸の長さを調整すれば、縦揺れの検出感度を調整することが可能である。
【0011】
軸の突出量は、たとえばフレームと軸の上部とにねじを切っておくことにより、軸を回転させるだけで、容易にその調整が可能である。
請求項3,4の構成では、縦揺れは、鉛直方向に配置された軸、その軸に上下に自由移動し得る可動子および固定接点を含む構成によって検知することができる。また、横揺れは、上記縦揺れを検知するための構成とは別に設けられた、球体およびマイクロスイッチを含む横揺れ検知のためのセンサ構造によって検知することができる。かかる横揺れ検知のための簡易なセンサ構造は、既に公知であり、かかる公知の構成を本件発明にかかる縦揺れセンサ構造と組み合わせることにより、横揺れおよび縦揺れの双方を、独立して、正しく検知することのできる地震センサとすることができる。
【0012】
以上の構成の発明を用いることにより、横揺れおよび縦揺れをそれぞれ検知することができ、その信号を用いて地震対策を講じることに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る縦揺れを検知するための地震センサの構成を示す概要図である。
縦揺れセンサ1はフレーム2と軸3とを含んでいる。フレーム2は絶縁体で構成されており、軸3が貫通するねじ孔4が形成されている。軸3はたとえばステンレス棒等の導体で形成されている。軸3の上方周面には、ねじ孔4と螺合するねじ溝6が切られ、ねじ孔4に嵌められており、下方部はフレーム2の下方へ長く延び出している。また、軸3の上方部は、フレーム2の上部へ突出しており、その上端には調整つまみ5が取り付けられている。調整つまみ5を回転させることにより、軸3が回転し、ねじ孔4とねじ溝6との螺合関係が変化して、フレーム2の下方へ突出する軸3の長さを調整することができる。
【0014】
軸3の下端部には導体でできたロックナット7が固定されており、ロックナット7の上に導体でできたばね8が配置されている。ばね8は縮み方向の力が加わることに対して弾発力を有するコイルばねである。軸3には、平面視がいわゆるドーナツ状の可動子9が外嵌されており、可動子9は軸3に沿って上下に自由移動し得る。可動子9は所定の重量を有する導体の錘であって、ばね8によってその下端が受けられている。従って、ばね8は、可動子9の重量により、通常、縮み方向の力が加えられている。
【0015】
フレーム2の下面には、ねじ孔4に対して同心に、絶縁体で形成された平面視ドーナツ形の接点保持用突部10が取り付けられている。接点保持用突部10の外周面には固定接点11が備えられている。固定接点11は、その下端縁が接点保持用突部10よりも僅かに下方へ突出しており、可動子9が上方へ移動したとき、可動子9の上面が接触し得るようになっている。
【0016】
フレーム2の下面、接点保持用突部10、固定接点11および可動子9のの配置関係を、図2の斜視図に示す。
図1および図2を参照して、固定接点11は円筒状であり、その直径D2は可動子9の直径D1よりも僅かに小さくされている。これにより、可動子9が上方へ移動したとき、固定接点11の下端縁に接触し得る。
【0017】
固定接点11には第1端子12が接続され、第1端子12を介して外部回路と電気的に接続可能となっている。
さらに、フレーム2の上面には、軸3と同心に第2端子が配置されている。第2端子は軸3と電気的に接続されている。さらに、調整つまみ5が自然状態で回転しないように、第2端子13と調整つまみ5との間には、軸3を取り囲むように回転規制用のばね14が設けられている。
【0018】
第2端子13は軸3(ロックナット7およびばね8)を介して可動子9と電気的に接続されている。ばね8およびロックナット7を括弧で囲ったのは、可動子9が軸3と接触し、可動子9が軸3と直接電気的に繋がり得るからである。
地震による縦揺れが発生すると、可動子9は軸3に沿って上方へ移動し、固定接点11の下端縁と接触し得る。これにより、図3に示すように、第1端子12と第2端子との間が、固定用接点11、可動子9、(ばね8、ロックナット7)、軸3を介して電気的に短絡する。よって、第1端子12および第2端子13の間が電気的に短絡したことに基づき、縦揺れが生じたことを検知することができる。
【0019】
縦揺れに対する感度を調整する場合は、調整つまみ5を回し、フレーム2の下方へ突出する軸3の突出量を調整すればよい。軸3の突出量が長くなれば、軸3に外嵌された可動子9の位置が下がり、可動子9の上面と固定接点11の下端縁との間隔が開いて、縦揺れに対する感度が鈍くなる。つまり、相対的に大きな縦揺れに対して導通し得るようにできる。逆に、下方へ突出する軸3の突出量を短くすれば、可動子9の上面と固定接点11の下端縁との間隔を狭めることができ、小さな縦揺れでも検知することができる。
【0020】
上述の構成では、フレーム2の下面に接点保持用突部10を設けたが、接点保持用突部10をなくし、フレーム2の下面に、軸3と同心に、かつ、軸3とは絶縁状態で、固定用接点が配置されていてもよい。
図4は、この発明の他の実施形態に係る地震センサの構成を示す図であり、上部に縦揺れセンサ1が配置され、下部に横揺れセンサ20が配置された構成である。図4において、上方に設けられた縦揺れセンサ1の構成は、既に説明した縦揺れセンサ1の構成と同等であり、フレーム2がセンサ部を取り囲む容器形になっている。
【0021】
そして、縦揺れセンサ1のフレーム2の下面に、横揺れセンサ20が組み付けられている。横揺れセンサ20は、公知の構造であるが、簡単に説明すると次の通りである。ケーシング21は上室22および下室23に区画されており、上室22に球体28が収容され、下室23にマイクロスイッチが設けられている。上室22の底面24は中央が下方に凹んだ凹円錐状をしている。そしてその中央には、縦に軸孔25が穿たれており、軸孔25には上下スライド自在にピン26が挿入されている。ピン26の下端はマイクロスイッチのアクチュエータ27と接している。底面24中央に球体28が位置している非振動時には、球体28の重量によりピン26が下方に押され、アクチュエータ27は閉状態になっている。(図4(A))
図4(B)に示すように、地震による横揺れが生じたときは、上室22内で球体28が横方向に移動する。これにより、ピン26から球体28が外れ、アクチュエータ27はその弾性によって上方へ変位してスイッチが開く。
【0022】
横揺れに対しては、球体28は底面24上を横方向に転がるが、縦揺れが起こっても、その縦揺れが球体28を持ち上げる力の縦揺れでなければ、アクチュエータ27は開かない。
一方、横揺れセンサ20の上に備えられた縦揺れセンサ1は、縦揺れが生じたとき、可動子9が上下に容易に移動し得るので、微細な縦揺れが生じたとき、可動子9は固定接点11に接し、縦揺れを正確に検知することができる。(図4(C))
この発明に係る地震センサを用いると、横揺れおよび縦揺れをそれぞれ別のセンサによって個別に正しく検知することができる。このため、横揺れ発生時から縦揺れ発生時までの時間間隔を正確に検知でき、震源地の検出等に役立てることができる。
【0023】
また、横揺れを検知した後、所定時間内に縦揺れを検知しなければ、地震があったことを出力しない回路構成を付け加えることによって、誤動作を防止して、地震があったことをより正確に検知できるセンサとすることができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0024】
たとえば、縦揺れセンサ1と横揺れセンサ20との組み合わせは、この実施形態では縦揺れセンサ1を上にし、その下に横揺れセンサ20を配置した構成としたが、これに限らず、2つのセンサをそれぞれ横方向に並べたような構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施形態に係る縦揺れを検知するための地震センサの構成を示す概要図である。
【図2】フレームの下面、接点保持用突部、固定接点および可動子の配置関係を示す斜視図である。
【図3】第1接点と第2接点との間の導通を説明するための図である。
【図4】この発明の他の実施形態に係る地震センサの構成を示す図であり、(A)は平常時、(B)は横揺れ時、(C)は縦揺れ時のセンサの状態を表わしている。
【符号の説明】
【0026】
1 縦揺れセンサ(地震センサ)
2 フレーム
3 軸
4 ねじ孔
5 調整つまみ
6 ねじ溝
7 ロックナット
8 ばね
9 可動子
10 接点保持用突部
11 固定接点
12 第1端子
13 第2端子
20 横揺れセンサ
26 ピン
27 アクチュエータ
28 球体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に配置される軸と、
軸の上部が取り付けられたフレームと、
軸に外嵌され、軸に沿って上下に自由移動し得る可動子と、
フレームに取り付けられ、可動子が上方へ移動したときに、可動子が接触し得る固定接点と、
軸の下部に備えられ、可動子を弾力的に受けているばねと、
フレームに設けられ、固定接点と電気的に接続されている第1端子と、
フレームに設けられ、固定接点および第1端子とは絶縁されており、軸およびばねを介して可動子と電気的に接続されている第2端子と、
を含むことを特徴とする地震センサ。
【請求項2】
上記軸は、下方へ延びている長さが調整可能に、フレームに取り付けられていることを特徴とする、請求項1記載の地震センサ。
【請求項3】
上記フレームには、地震による横揺れが生じたとき、球体が横方向へ動き、それによってスイッチが切り換わる横揺れセンサが取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2記載の地震センサ。
【請求項4】
上記フレームは、可動子およびばねを囲っており、フレームの下部には、横揺れセンサが備えられており、
当該横揺れセンサは、球体およびマイクロスイッチを有し、地震による横揺れが生じたとき、球体が横方向へ動き、それによって、スイッチが切り換わるセンサであることを特徴とする、請求項1または2記載の地震センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226844(P2006−226844A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41322(P2005−41322)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(593209301)家研販売株式会社 (30)
【Fターム(参考)】