説明

地震観測システム、地震観測方法、地震観測プログラム及び携帯端末装置

【課題】携帯端末を使用して地震観測のネットワークを構成して、ネットワーク内で地震判定、警告、連絡などを行う。
【解決手段】地震観測ローカルネットワーク7を構成する各携帯電話1〜5は、設定された時間帯になると各部屋11〜14で本体に装着される振動センサによる本体の振動を観測する。各携帯電話1〜5は、各携帯電話間の通信結果により、振動を検出した携帯電話本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する。各携帯電話1〜5は、地震による振動であるとの判定結果により、警告動作を行うと共に、情報家電制御システム6に対する予め設定された緊急停止動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話などによりネットワークを形成して地震観測を行う地震観測システム、地震観測方法、地震観測プログラム及び携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、例えば、様々な場所に設置された観測端末から地震波形データを収集できる地震観測システムが提案されていた(特許文献1参照)。すなわち、この地震観測システムでは、地震が発生すると、観測端末は、その地震の波形データ及び加速度データを取得する。
【0003】
地震波形データ収集装置は、ユーザからの指示に応答して、又は所定の時刻に到達すると自動的に、観測端末に加速度データを要求する。観測端末は、この要求に応答して、加速度データを地震波形データ収集装置へ送信する。
【0004】
地震波形データ収集装置は、その加速度データが所定の収集条件を満たすか否かを判断し、加速度データが収集条件を満たすと判断すると、地震波形データを観測端末に要求する。観測端末は、この要求に応答して、波形データを地震波形データ収集装置へ送信する。地震波形データ収集装置は、その波形データを受信して記憶する。
【特許文献1】特開2003−207577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載の技術では、地震波形データ収集装置が、通信回線網を介して、観測端末および震源情報管理装置と通信し、観測端末から地震波形データを収集し、地震波形データの2次利用を可能にする。また、地震波形データ収集装置は、通信回線網を介して、震源情報管理装置から震源情報を受信し、こうして受信した様々な地震情報を用いて共通地震データを作成している。
【0006】
このため、地震波形データ収集装置は、観測端末のうちのいずれかが故障又は通信不能になっても残りの観測端末からデータを収集できる。しかし、地震波形データ収集装置が故障又は通信不能になった場合には、地震波形データを収集することが不可能になってしまうという不都合が発生する。
【0007】
また、上述した特許文献1に記載の技術では、観測端末は、全国範囲の地方自治体の各市町村の役所内に設置されるものである。このため、この公共の地震観測システムとネットワークが非接続の家庭内において、夜に寝ている間に地震が発生した場合に、携帯端末を使用して警告を発生させて目覚めさせる用途には直接適用できない。
【0008】
また、このとき、携帯端末を使用して家庭内の家族同士で連絡を取ったり、家電製品の電源を切断したりすることができない。さらに、携帯端末を使用してガスを止めたり、玄関のドアロックを解除したりすることもできないという不都合があった。
【0009】
そこで、本発明は、携帯端末を使用して地震観測のネットワークを構成して、ネットワーク内で地震判定、警告、連絡などを行うことができる地震観測システム、地震観測方法、地震観測プログラム及び携帯端末装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の地震観測システムは、複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行うものである。
すなわち、ネットワークを構成する各携帯端末は、携帯端末本体に装着されることにより、携帯端末本体の振動を検出する振動検出手段と、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、携帯端末本体の振動を観測する観測手段とを備えている。
【0011】
また、ネットワークを構成する各携帯端末は、ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に携帯端末の数を通知すると共に、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信する通信手段を備えている。
【0012】
また、ネットワークを構成する各携帯端末は、通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段とを備える。
【0013】
また、本発明の地震観測方法は、複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行うものである。
すなわち、地震観測方法は、ネットワークを構成する各携帯端末において、ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に携帯端末の数を通知するステップと、携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、携帯端末本体の振動を観測するステップとを含んでいる。
【0014】
また、地震観測方法は、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信するステップを含んでいる。
【0015】
また、地震観測方法は、振動の検出情報の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定するステップと、地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行うステップとを含む。
【0016】
また、本発明の地震観測プログラムは、複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行うためのものである。
すなわち、地震観測プログラムは、ネットワークを構成する各携帯端末を制御するために各携帯端末のコンピュータを、携帯端末本体に装着される振動検出手段による、携帯端末本体の振動の検出を起動させる起動手段と、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、携帯端末本体の振動を観測する観測手段として機能させる。
【0017】
また、地震観測プログラムは、ネットワークを構成する各携帯端末を制御するために各携帯端末のコンピュータを、ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、通信手段を介して、各携帯端末に携帯端末の数を通知すると共に、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信するように制御する制御手段として機能させる。
【0018】
また、地震観測プログラムは、ネットワークを構成する各携帯端末を制御するために各携帯端末のコンピュータを、通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段として機能させる。
【0019】
また、本発明の携帯端末装置は、複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行うものである。
すなわち、ネットワークを構成する各携帯端末は、携帯端末本体に装着されることにより、携帯端末本体の振動を検出する振動検出手段と、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、携帯端末本体の振動を観測する観測手段を備えている。
【0020】
また、ネットワークを構成する各携帯端末は、ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に携帯端末の数を通知すると共に、振動検出手段による携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信する通信手段を備えている。
【0021】
また、ネットワークを構成する各携帯端末は、通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、振動検出手段を装着している携帯端末が、条件に応じて自立的にローカルエリアネットワークを構成し、各携帯端末が観測した振動情報を交信しながら、閾値に応じて地震であるか局部のみの振動であるかを各携帯端末が地震判定をすることができるという効果を奏する。
【0023】
このとき、ネットワーク内で各携帯端末がそれぞれ分散して地震判定するため、いずれからの携帯端末が故障又は通信不能となっても、残りの各携帯端末が地震判定をすることができる。
【0024】
従って、各携帯端末が地震の判定をしたとき、各携帯端末から直ちに警告を発生させることができる。さらに、例えば、各携帯端末の無線ローカルエリアネットワークの機能を用いて家庭内の家族同士で連絡を取ることができ、FM放送の受信による詳細情報を通知することができる。
【0025】
また、予め設定された通信回線により家電製品の電源を切断したりすることができる。さらに、各携帯端末を用いて通信回線によりガスを止めたり、玄関のドアロックを解除したりすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態を、図1〜5を参照して説明する。
図1は、本実施の形態例の地震観測・警告システムのネットワーク構成例を示す図である。
図1において、本実施の形態例の地震観測・警告システムは、家庭内の各部屋11〜14などの近距離範囲に存在する複数の携帯端末1〜5で、地震観測ローカルネットワーク7を構成する。そして、各携帯端末1〜6本体の振動に基づいて地震の観測を行う。
【0027】
例えば、地震観測ローカルネットワーク7を構成する距離の条件として、家庭内の各部屋11〜14などの10数メートル程度の近距離範囲が設定される。また、例えば、地震観測モードを起動させる時間帯の条件として、夜11から朝7時までなどの夜間から早朝の時間帯が設定される。
【0028】
このため、各携帯端末1〜5は、地震観測モードを実行するための以下に示す各種機能を備えている。
すなわち、地震観測ローカルネットワーク7を構成する各携帯端末1〜5は、携帯端末本体の振動を検出する振動センサが本体に装着されている。また、各携帯端末1〜5は、振動センサによる携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、携帯端末本体の振動を観測する機能を備えている。
【0029】
従って、各携帯端末1〜5は、上述した距離の条件及び時間帯の条件が満たされると、自動的に地震観測モードを起動させる。これにより、各携帯端末1〜5は、家庭内の各部屋11〜14内において、振動センサによる携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、リアルタイムで携帯端末本体の振動を観測する。
【0030】
また、地震観測ローカルネットワーク7を構成する各携帯端末1〜5は、地震観測ローカルネットワーク7に入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末1〜5に携帯端末の数を通知する機能を備えている。また、各携帯端末1〜5は、振動センサによる携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信する機能を備えている。
【0031】
これにより、各携帯端末1〜5が、地震観測ローカルネットワーク7に入っている携帯端末の振動の検出情報を共有することができる。従来、必要であった、振動の検出情報を集計して記憶する中央集計装置が不要となる。このため、振動の検出情報の集計、記憶及び読み出しの各処理が不要となる。また、中央集計装置の故障又は通信不能による地震観測処理の停止を防止することができる。
【0032】
また、地震観測ローカルネットワーク7を構成する各携帯端末1〜5は、振動の検出情報の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する機能を備えている。また、各携帯端末1〜5は、地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末1〜5が予め設定された警告動作を行う機能を備えている。
【0033】
従って、各携帯端末1〜5が、閾値を超える数の携帯端末が振動を検出したときに地震による振動であると判定することができる。各携帯端末1〜5いずれかが、故障又は通信不能となった場合でも、残りの各携帯端末1〜5が、地震判定することができる。この閾値は、予め地震観測ローカルネットワーク7内で同期してデフォルト設定される。
【0034】
例えば、デフォルト設定される閾値が70%であるとき、地震観測ローカルネットワーク7を構成する各携帯端末1〜5のうち、携帯端末5のみが振動を検出しなかったとする。このとき、振動を検出した携帯端末の数は4台であり、地震観測ローカルネットワーク7全体の5台に対して80%の割合となり、閾値70%を超えている。従って、各携帯端末1〜4は、地震による振動であると判定する。
【0035】
また、このとき、各携帯端末1〜5は、本体に警告を発音又は表示し、他の端末に通知し、他の端末間で連絡をとることが可能である。例えば、部屋11の私の携帯端末1から部屋14の祖父の携帯端末5に対して連絡をとり、その状況を他の部屋12の父親の携帯端末2及び母親の携帯端末3,部屋13の兄の携帯端末5へ通知することができる。
【0036】
さらに、各携帯端末1〜5は、台所15の情報家電制御システム6に対して電源の切断やドアロックの解除の制御指令を送ることができる。
各携帯端末1〜5は、例えば、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの主として通信機能を有している端末であれば適用可能である。
【0037】
図2は、本実施の形態例の地震観測・警告システムのネットワークを構成する携帯電話の構成例を示すブロック図である。
図2において、携帯電話20は、基地局に対して送受信を行うアンテナ21及び送受信データに送受信のための通信信号処理を行う通信回路22を備えている。ここでは、通信回路22は、通常の公衆電話網を用いた通信回線による通信モードの他に、地震観測モードを備えている。
【0038】
すなわち、地震観測モードの際に無線によるローカルエリアネットワーク内の通信を可能にするブルーツゥース等の無線通信機能、予め登録された相手の電話番号又はURL(Uniform Resource Locator)アドレスへの緊急連絡機能等も備えている。
【0039】
また、携帯電話20は、受話音声、動画ファイルの音声、及び音楽データの音声を出力するスピーカ部24と、送話音声等を集音するマイクロホン23とを備えている。
また、携帯電話20は、操作情報や送受信データ等を表示する表示部27と、操作情報や送受信データ等を入力するための複数のキーを含む操作部26とを備えている。
【0040】
また、携帯電話20は、通信アプリケーションプログラム及び地震観測アプリケーションプログラム等の各種アプリケーションプログラムを記憶するメモリ25を備えている。
また、携帯電話20は、携帯電話20本体に加えられる衝撃を検出するタッチセンサ28と、携帯電話20本体の振動を検出する振動センサ29とを備えている。タッチセンサ28としては、例えば、圧電センサが用いられる。また、振動センサ29としては、例えば、加速度センサが用いられる。
【0041】
また、携帯電話20は、制御ライン31及びデータライン32を介して各部と相互に接続されて各部の制御を司る制御部30を備えている。
また、携帯電話20は、地震観測モードの際に予め受信周波数に同調するように設定されたFM放送を受信することにより詳細情報を取得可能なアンテナ33及びFM受信回路34を備えている。
【0042】
受信回路34で受信する詳細情報としては、例えば、VICS(Vehicle Information and Communication System)によって提供される、渋滞情報、所要時間、事故・故障車・工事情報、速度規制・車線規制情報、駐車場の位置、駐車場・サービスエリア・パーキングエリアの満車・空車情報などがある。VICSにより、これらの情報がFM放送波に多重化されて、都道府県単位の広域情報として携帯電話20に提供される。
【0043】
図3は、携帯電話のソフトウエア構成とハードウエアの制御を示す図である。
図3において、アプリケーションプログラム37、オペレーティングシステム(OS)40、ドライバープログラム41からなるソフトウエア36が図2に示した携帯電話20のメモリ25に記憶されている。
【0044】
ソフトウエア36は、図2に示した携帯電話20のコンピュータである制御部30のCPUに、通信モード及び地震観測モードの際に各種機能を実行させるプログラムである。アプリケーションプログラム37は、通信モードに用いられる通信アプリケーション38の他に、地震観測モードに用いられる地震観測アプリケーション39が設けられている。
【0045】
また、ハードウエア35は、図2に示した携帯電話20のタッチセンサ28、制御部30、操作部26、FM受信回路34、表示部27、通信回路22、メモリ25、スピーカ24、振動センサ29が設けられている。
【0046】
このとき、通信モードでは、通信アプリケーション38がオペレーティングシステム(OS)40上で、動作・実行される。この通信アプリケーション38の動作・実行により、オペレーティングシステム(OS)40がドライバープログラム41に動作指令を出す。
【0047】
ドライバープログラム41は動作指令に対応する駆動信号をハードウエア35の各部に出力する。制御部30は、操作部26、表示部27、通信回路22、メモリ25、スピーカ24に制御信号を出力する。これにより、送信及び受信による通信機能が実行される。
【0048】
また、地震観測モードでは、地震観測アプリケーション39がオペレーティングシステム(OS)40上で、動作・実行される。この地震観測アプリケーション39の動作・実行により、オペレーティングシステム(OS)40がドライバープログラム41に動作指令を出す。
【0049】
ドライバープログラム41は動作指令に対応する駆動信号をハードウエア35の各部に出力する。制御部30は、タッチセンサ28、制御部30、操作部26、FM受信回路34、表示部27、通信回路22、メモリ25、スピーカ24、振動センサ29に制御信号を出力する。これにより、タッチセンサ28及び振動センサ29、通信回路22及びFM受信回路34による、地震観測機能が実行される。
【0050】
ここで、上述した振動センサ29として用いることができる加速度センサの例を説明する。加速度センサの性能は、例えば、最大記録範囲:±1.5G、分解能:0.001G、AD 変換器:12bit、ダイナミックレンジ:64dB、サンプリング周波数:100sps、記録周波数特性:100Hz、出力内容:X、Y、Z各軸の加速度値に対応する電圧、である。
【0051】
地震観測アプリケーション39の震度計算は、例えば、気象庁が公開しているアルゴリズム(計算法)によって求める。計測震度は、地震観測アプリケーション39内部で以下のようなディジタル処理によって計算される。
【0052】
すなわち、振動センサ29の出力であるディジタル加速度記録3成分(水平動2成分(X、Y)、上下動1成分(Z))のそれぞれに、フーリエ変換・フィルター処理・逆フーリエ変換の手順で、以下に示す特性のフィルターを掛ける。計測震度の計算で使われているフィルター処理は、加速度と速度の中間の特徴を表すフィルター、ハイカットフィルター、ローカットフィルターである。
【0053】
加速度出力に低周波数側を強調する上記のようなフィルターを施したうえ、最大値そのものではなく0.3秒以上継続する値を使う。得られたフィルター処理済みの出力3成分から、ベクトル波形を合成する。ベクトル波形の絶対値がある値a以上となる時間の合計を計算したとき、これがちょうど0.3秒となるようなaを求める。
このaから数1式により計測震度 I を計算する。
【0054】
[数1]
I = 2 log a + 0.94
【0055】
上述したように構成される携帯電話20の動作を以下に示すフローチャートを用いて説明する。以下に、図3に示したアプリケーションプログラム37のうちの地震観測アプリケーション39が、図2に示した携帯電話20のコンピュータである制御部30のCPUに、地震観測モードの際に各種機能を実行させる動作を示す。
【0056】
図4は、携帯電話20の動作を示すフローチャートである。図2に示した携帯電話20の制御部30は、メモリ25に記憶された地震観測アプリケーション39に基づいて、以下の動作を行う。
【0057】
すなわち、携帯電話20の制御部30は、地震観測モードの起動条件に関する情報をメモリ25から読み込むことにより、設定された条件を満たすか否かを調べて、満たす場合には地震観測モードに切り替えて以下の処理を実行する(ステップS1)。
【0058】
例えば、地震観測ローカルネットワーク7を構成する距離の条件として、家庭内の各部屋11〜14などの10数メートル程度の近距離範囲が設定される。また、例えば、地震観測モードを起動させる時間帯の条件として、夜11から朝7時までなどの夜間から早朝の時間帯が設定される。
【0059】
各携帯電話20の制御部30は、上述した距離の条件及び時間帯の条件が満たされると、自動的に地震観測モードを起動させる。
次に、携帯電話20の制御部30は、地震観測ローカルネットワーク7に入った携帯電話の数を数えて、この携帯電話数を各携帯電話に通知する(ステップS2)。そして、携帯電話20の制御部30は、振動センサ29から出力される振動を観測する(ステップS3)。
【0060】
また、携帯電話20の制御部30は、振動センサ29による携帯電話20本体の振動の検出情報を他の携帯電話へ送信し、他の携帯電話による他の携帯電話本体の振動の検出情報を受信する。このとき、携帯電話20の制御部30は、ある携帯電話が振動を検出したことを認識する(ステップS4)。
【0061】
ここで、携帯電話20の制御部30は、振動の検出情報の通信結果により、振動を検出した携帯電話の数が、設定された閾値を超えたか否かを判断する(ステップS5)。
判断ステップS5で、振動を検出した携帯電話の数が設定された閾値を超えたとき、携帯電話20の制御部30は、地震による振動であると判定する。
【0062】
また、携帯電話20の制御部30は、判断ステップS5で地震による振動であると判定されたとき、各携帯電話が予め設定された以下の警告動作を行う。判断ステップS5で地震による振動でないと判定されたとき、ステップS6へ進み、検出した情報をクリアして、ステップS3へ戻って、ステップS3〜ステップS5までの処理及び判断を繰り返す。
【0063】
また、判断ステップS5で地震による振動であると判定されたとき、携帯電話20の制御部30は、本体に警告を発音又は表示する(ステップS7)。このステップS7の警告動作は、各携帯電話20で必須の動作であるが、以下のステップS8〜ステップS12までの処理は、各携帯電話20で選択的に設定可能な動作である。
【0064】
また、上述した判断ステップS5で地震による振動であると判定されたとき、携帯電話20の制御部30は、電話網を介して、予め設定された救急連絡先の119番にSOSのメッセージを送出する(ステップS8)。
また、この他に、携帯電話20の制御部30は、FM受信回路34を介して、VICSなどのより深い文字放送情報を受信して、これを他の携帯電話に通知する(ステップS9)。
【0065】
また、この他に、携帯電話20の制御部30は、通信回路22を用いた無線によるローカルネットワークを介したプッシュアンドトークの機能を自動的に起動させて、他の携帯電話との間でお互いに連絡を取ることができるようにする(ステップS10)。
【0066】
さらに、この他に、携帯電話20の制御部30は、情報家電制御システム6に対して電源の切断の制御指令を送ると共に(ステップS11)、ガスの元栓を切って、さらにドアロックを解除する制御指令を送る(ステップS12)。
【0067】
これらのステップS7〜ステップS12までの処理の後に、携帯電話20の制御部30は、地震観測モードを終了するか否かを判断する(ステップS13)。ここでは、携帯電話20の制御部30は、ステップS1で示した地震観測モードの起動条件に関する情報をメモリ25から読み込む。これにより、観測中に携帯電話20の数が増減したときには、地震観測ローカルネットワーク7を再構築する。
【0068】
このときにも、設定された地震観測モードの起動条件を満たすか否かを調べて、満たす場合には、ステップS2へ戻って、ステップS2〜ステップS12までの処理及び判断を繰り返す。
また、満たさない場合には、ステップS14へ移行して、通信モードに切り替えて(ステップS14)、終了する。
【0069】
図5は、携帯電話の情報家電への制御を示す図である。
図5において、地震観測ローカルネットワーク7を構成する携帯電話51−1〜51−nが、上述した図4に示した地震観測モードにより地震による振動であると判定したとき、各携帯電話51−1〜51−nが情報家電制御システム6に対して予め設定された以下の警告動作を行う。この警告動作は、各携帯電話51−1〜51−nが本体に警告を発音又は表示する動作の他に、又はこの動作と共に行う緊急停止動作である。
【0070】
ここでは、情報家電ゲートウエー52のメモリ又は設定ポートには、携帯電話51−1〜51−nからの警告指令に対しては、冷蔵庫53、電子レンジ54、エアコン(エアコンディショナー)55に対する電源の切断の制御指令を出力する内容の制御テーブルが記憶又は設定されている。
【0071】
また、情報家電ゲートウエー52のメモリ又は設定ポートには、携帯電話51−1〜51−nからの警告指令に対しては、ガス56の元栓を止める制御指令、ドア57のロックの解除の制御指令を出力する内容の制御テーブルが記憶又は設定されている。
【0072】
すなわち、携帯電話51−1〜51−nが、情報家電ゲートウエー52に対して警告指令を送信する。すると、情報家電ゲートウエー52は、予め設定された冷蔵庫53、電子レンジ54、エアコン(エアコンディショナー)55に対する電源の切断の制御指令を送ると共に、ガス56の元栓を止める制御指令、ドア57のロックの解除の制御指令を送る。
これにより、地震観測モードによる地震判定の際に、情報家電制御システム6に対する予め設定された緊急停止動作を行うことができる。
【0073】
なお、上述した本実施の形態例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り、適宜変更しうることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施の形態例の地震観測・警告システムのネットワーク構成例を示す図である。
【図2】本実施の形態例の地震観測・警告システムのネットワークを構成する携帯電話の構成例を示すブロック図である。
【図3】携帯電話のソフトウエア構成とハードウエアの制御を示す図である。
【図4】携帯電話の動作を示すフローチャートである。
【図5】携帯電話の情報家電への制御を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1〜5…携帯電話、6…情報家電制御システム、7…地震観測ローカルネットワーク、11〜14…部屋、15…台所、20…携帯電話、21…アンテナ、22…通信回路、23…マイク、24…スピーカ、25…メモリ、26…操作部、27…表示部、28…タッチセンサ、29…振動センサ、30…制御部、31…制御ライン、32…データライン、33…アンテナ、34…FM受信回路、35…ハードウエア、36…ソフトウエア、37…アプリケーションプログラム、38…通信アプリケーション、39…地震観測アプリケーション、40…オペレーティングシステム(OS)、41…ドライバープログラム、51−1〜51−n…携帯電話、52…情報家電ゲートウエー、53…予め設定された冷蔵庫、54…電子レンジ、55…エアコン(エアコンディショナー)、56…ガス、57…ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行う地震観測システムであって、
前記ネットワークを構成する各携帯端末は、
前記携帯端末本体に装着されることにより、前記携帯端末本体の振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、前記携帯端末本体の振動を観測する観測手段と、
前記ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に前記携帯端末の数を通知すると共に、前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信する通信手段と、
前記通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、
前記判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段と
を備えたことを特徴とする地震観測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の地震観測システムにおいて、
前記ネットワークは、近距離の無線によるローカルエリアネットワークであることを特徴とする地震観測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の地震観測システムにおいて、
前記振動検出手段は、前記携帯端末本体の加速度により振動を検出する加速度センサであることを特徴とする地震観測システム。
【請求項4】
請求項1に記載の地震観測システムにおいて、
前記判定手段の閾値は、前記ネットワークに入った携帯端末の全体数に対する振動を検出した携帯端末本体の相対的な割合を示す値であることを特徴とする地震観測システム。
【請求項5】
請求項3に記載の地震観測システムにおいて、
前記判定手段の閾値は、前記ネットワークに入った携帯端末の全体で同期をとることを特徴とする地震観測システム。
【請求項6】
請求項3に記載の地震観測システムにおいて、
前記判定手段の閾値は、デフォルト値を設定しておき、判定結果に応じて可変可能とすることを特徴とする地震観測システム。
【請求項7】
請求項1に記載の地震観測システムにおいて、
前記警告手段は、FM放送の受信による詳細情報を含めた情報を、本体から発音し、本体に表示し又は通信回線により各携帯端末に通知する
ことを特徴とする地震観測システム。
【請求項8】
請求項1に記載の地震観測システムにおいて、
前記警告手段は、通信回線により予め設定された情報家電の切断をおこなうことを特徴とする地震観測システム。
【請求項9】
複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行う地震観測方法であって、
前記ネットワークを構成する各携帯端末において、
前記ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に前記携帯端末の数を通知するステップと、
前記携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、前記携帯端末本体の振動を観測するステップと、
前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信するステップと、
前記振動の検出情報の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定するステップと、
前記地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行うステップと
を含むことを特徴とする地震観測方法。
【請求項10】
複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行うための地震観測プログラムであって、
前記ネットワークを構成する各携帯端末を制御するために各携帯端末のコンピュータを、
前記携帯端末本体に装着される振動検出手段による、前記携帯端末本体の振動の検出を起動させる起動手段と、
前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、前記携帯端末本体の振動を観測する観測手段と、
前記ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、通信手段を介して、各携帯端末に前記携帯端末の数を通知すると共に、前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信するように制御する制御手段と、
前記通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、
前記判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段と
として機能させることを特徴とする地震観測プログラム。
【請求項11】
複数の携帯端末でネットワークを構成して、携帯端末本体の振動に基づいて地震の観測を行う地震観測システムに用いる携帯端末装置であって、
前記ネットワークを構成する各携帯端末は、
前記携帯端末本体に装着されることにより、前記携帯端末本体の振動を検出する振動検出手段と、
前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出を開始することにより、前記携帯端末本体の振動を観測する観測手段と、
前記ネットワークに入った携帯端末の数を認識して、各携帯端末に前記携帯端末の数を通知すると共に、前記振動検出手段による前記携帯端末本体の振動の検出情報を他の携帯端末へ送信し、他の携帯端末による他の携帯端末本体の振動の検出情報を受信する通信手段と、
前記通信手段の通信結果により、振動を検出した携帯端末本体の数が閾値を超えたとき地震による振動であると判定する判定手段と、
前記判定手段の地震による振動であるとの判定結果により、各携帯端末が予め設定された警告動作を行う警告手段と
を備えたことを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−271122(P2008−271122A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110717(P2007−110717)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】