説明

均一な流量分布を有するスプレー・コーティング

液体コーティング材に対して平らなスプレー・パターンを生成するスプレー・ノズルであって、そのスプレー・パターンが、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一なコーティング材の流量分布を有するスプレー・ノズルを開示する。スプレー・ノズルは、そのようなスプレー・パターンを生成するために、矩形切削スプレー・オリフィスを備え得る。スプレー・パターンは、明確な両縁をさらに有し得、その結果、パターンが、それら縁の外側でのコーティング材のテーリングの大幅な減少を示す。一実施形態では、スプレー・パターンは、「矩形」のドリップ・パターンを生成する。別の実施形態では、スプレー・パターンは、その側方領域に比較してコーティング材の流量が減少した中央領域を含み得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
たとえば、飲食物産業に於いて使用される金属缶および容器など、円筒形の物体の内面をコーティングするために、今日、様々な方法および装置が使用されている。これらのコーティングは、通常、液体状態で、エアレス・スプレー・ノズルまたはエアアシスト・スプレー・ノズルから容器の開口端を通してスプレーすることによって塗布される。スプレー方法によっては、2つ以上のスプレー・ノズルを使用する。コーティングは、容器の中味の飲食物を金属から保護するために用いられる。
【0002】
その種の容器は、通常、2分割または3分割されている。2ピース缶では、缶本体は、密閉端部を有する深絞り円筒であり得る。第2のピースは、中味が入れられた後、缶を閉じるために最終工程で用いられる。3ピース缶では、円筒形本体または外殻は両端が開口端であり、さらに、別々の上端円盤および下端円盤を備える。下端円盤は、2ピース缶とそっくりにコーティング工程に先立って付け加えることができ、次いで、中味が入れられた後に、缶を閉じるために上端円盤を付け加えることができる。ただし、両端部とも開口している缶本体または外殻にはまた、たとえば、一方の開口端に単一のノズル、もしくは一方の開口端に2つのノズル、または各開口端に単一のノズルを用いるなど、それぞれのコーティング工程を実施することができる。
【0003】
その種の缶の内側表面の輪郭線または輪郭形状は、完全な平滑状態から、たとえばリブや他の輪郭もしくは形状などの成形部分を含む状態まで、変化し得る。さらに、下端円盤の形状および輪郭線が、特に円筒形側壁と下端円盤の外縁との継ぎ目に於いて、内部表面全体に適切なコーティングを確実に施すのにさらに別の難問を提起し得る。これらの複雑さが、適切なコーティングを生じ、他方で過剰スプレーを最小限に抑えようとするスプレー・パターンを生成する様々なスプレー・ノズルを導入してきた。過剰スプレーは、十分な被覆範囲を確保するために塗布された過剰なコーティング材、または缶本体の外縁近くをコーティングしようとするときの缶本体の外部への過剰スプレー材の散逸のいずれかとして、あるいはその両方として観察することができる。
【0004】
缶の内部表面をコーティングするために使用される通常のスプレー・パターンは、平らな扇状パターンである。これら平らな扇状パターンには、中央にコーティング材の最大流量を有し、パターンの中央から端部へ漸減または「フェザリング(間隔縮め)」して流量が次第に消滅する対称なスプレー・パターンが含まれ得る。そのような通常の対称なパターンが、本明細書では図2に示されている。他の平らな扇状スプレー・パターンには、「ドラムヘッド」・ノズルによって生成されるような、流量分布がスプレー・パターンの一方の端部または側部に大きく片寄る対称または「分布制御型」パターンが含まれる。平らな扇状スプレー・パターンを生成するために使用されるノズルの例は、ドラムヘッド・ノズルも含めて、米国特許第3,640,758号、第3,697,313号、第3,726,711号、第4,346,849号、および第4,378,386号に記載されており、それらのすべての開示の全体が、参照によって本明細書に完全に援用される。これら特許はまた、単一ノズル、2つのノズル、1つの開口端からのスプレー、2つの開口端からのスプレーなど、様々なスプレー方法および装置に関する優れた背景情報を提供する。これら方法および装置は、当業者には周知であり、したがって、本明細書で繰り返す必要はない。
【0005】
容器のスプレー・コーティング・プロセスは、2つの基本的な規準を考慮に入れている。第1は、コーティング作業に使用されるコーティング材の総重量である。総重量は全体コストに大きく影響を及ぼす。総重量は、たとえば側壁の外縁近くをスプレーするとき、容器の外部へ散逸する過剰スプレーと、内部表面に塗布される材料の量とを合わせたものである。第2の重要な規準は、コーティング厚さと被覆範囲である。十分な厚さと被覆範囲を確保するために十分なコーティングが施され得る一方で、コストおよび時間の観点からは、容器を過剰コーティングすることは無駄が多い。特定の用途では、ある表面領域が他よりも重要であり得、それ故、重要な領域を確実に十分にカバーするために、それほど重要でない領域を過剰コーティングすることは珍しくない。したがって、コーティング・プロセスは、容器外部への過剰スプレーを最小限に抑えながら、所望の総重量目標値内で、適切な被覆範囲およびコーティング厚さのバランスを取ることを目指すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3,640,758号
【特許文献2】米国特許第3,697,313号
【特許文献3】米国特許第3,726,711号
【特許文献4】米国特許第4,346,849号
【特許文献5】米国特許第4,378,386号
【特許文献6】米国特許第5,494,226号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、缶本体などの円筒体または容器の内部表面を液体コーティング材によってコーティングするためのスプレー・コーティング方法および装置に関するいくつかの発明および発明の態様を提示する。本開示に提示された第1の発明の態様によれば、コーティング方法が、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を示すスプレー・パターンを生成することを含み得る。コーティング方法の例示的実施形態では、そのスプレー・パターンは、金属缶のほぼ円筒形の内部表面をコーティングするために使用することができる。
【0008】
本開示に提示された別の発明の態様によれば、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を有するスプレー・パターンは、ほぼ対称な平らなスプレー・パターンであり得、明確な縁をさらに有し得、それにより、これらスプレー・パターンの縁の外側では尾引きまたはフェザリングが実質的に減少する。例示的実施形態では、そのようなスプレー・パターンは、円筒容器本体外部への過剰スプレーまたは材料の散逸を大幅に減少させながら、容器の円筒形内部表面をその表面の外縁または開口縁に至るまでコーティングするために使用することができる。別の例示的実施形態では、スプレー・パターンは、ほぼ「矩形」の形状のドリップ・パターンを生成する。
【0009】
本開示に提示された別の発明の態様によれば、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を有するスプレー・パターンが、コーティング材の流量を減少させたスプレー・パターン部分をさらに示し得る。例示的実施形態では、スプレー・パターンの側方領域のコーティング材の流量に比較して、流量が減少した部分が、ほぼ対称なスプレー・パターンの中央領域に示され得る。
【0010】
本開示に提示されたさらに別の発明の態様は、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一または均等なコーティング材の流量分布を有するスプレー・パターンを生成するほぼ矩形の形状の切削スプレー・オリフィスを有するスプレー・ノズルの設計を、そのようなスプレー・ノズルのスプレー・オリフィスを製作する方法を含めて、包含する。代替実施形態では、スプレー・ノズル設計が、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一または均等なコーティング材の流量分布を有するスプレー・パターンを生成し、コーティング材を減少させたスプレー・パターン部分をさらに示すほぼ矩形の形状の切削スプレー・オリフィスを含み得、同実施形態には、そのようなスプレー・ノズルを製作する方法も含まれる。スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一なコーティング材の流量分布を生成し、コーティング材を減少させたスプレー・パターン部分をさらに示すほぼ矩形の形状の切削スプレー・オリフィスを有するスプレー・ノズルの例示的実施形態では、ほぼ矩形の形状の切削スプレー・オリフィスは、拡張された端部部分、またはその代わりに寸法を減少させた中央部分を備え得る。さらに別の発明の態様は、たとえば、1つまたは複数の例示的スプレー・パターンおよびスプレー・ノズルを使用する、金属缶用などの、円筒形内部表面のコーティング方法を含む。
【0011】
本明細書に開示された本発明のこれらおよび他の態様および利点を、当業者は、以下の例示的実施形態の詳細な説明から、添付図面を勘案して、理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】容器が長手方向切欠側面図で示された、図2に示すようなスプレー・パターンを用いる従来技術のコーティング方法の概略図である。
【図1B】容器が長手方向切欠側面図で示された、図3または4に示すようなスプレー・パターンを用いるコーティング方法の概略図である。
【図2】従来技術の平らな扇状スプレー・パターンの典型的なドリップ・パターンの簡略図である。
【図3】1つまたは複数の本発明による矩形形状スプレー・パターンのドリップ・パターンの簡略図である。
【図4】1つまたは複数の本発明による矩形形状スプレー・パターンの代替実施形態のドリップ・パターンの簡略図である。
【図5】図2に示されるようなスプレー・パターンを生成する従来技術のノズル先端部および対称なスプレー・オリフィスの正面図である。
【図6】図3に示されるようなスプレー・パターンを生成する矩形切削スプレー・オリフィスを有するスプレー・ノズルの正面図である。
【図7】図4に示されるようなスプレー・パターンを生成する矩形切削スプレー・オリフィスを有するスプレー・ノズルの別の実施形態の正面図である。
【図7A】図7のスプレー・オリフィスの拡大図である。
【図8】スプレー・ノズル・アセンブリの例示的実施形態の斜視図である。
【図9】図5の従来技術のスプレー・ノズル先端部およびスプレー・オリフィスの斜視図である。
【図10】図6のスプレー・ノズル先端部およびスプレー・オリフィスの斜視図である。
【図11】図7のスプレー・ノズル先端部およびスプレー・オリフィスの斜視図である。
【図12】図10の線12−12に沿ったスプレー・ノズル先端部の長手方向断面図である。
【図13】図10のスプレー・ノズル先端部の輪郭線、さらに例示的ダイヤモンド・カッティング・のこぎりDSを示す図である。
【図14】図7に示されるようなスプレー・オリフィスを形成する切削工程の位置にあるダイヤモンド・カッティング・のこぎりの透視図である。
【図15】平坦な切削端を有するノズル先端部カッティング・ホイールの実施形態の側面図である。
【図16】図15の円で囲まれた領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、たとえば金属缶本体など、円筒体または容器の内部表面に、液体コーティング材を塗布する方法および装置を対象とする。液体コーティング材は、通常、容器の金属材料と接触することによって生じる有害な作用から内容物を保護するために、内部表面に塗布することができるあらゆる材料を意味する。液体コーティング材は、たとえば、溶剤または他の液体担体中の固体懸濁物質を含み得る。本明細書の例示的実施形態は、容器、特に開口端円筒体の内部表面をコーティングするためにスプレー・パターンを使用することを対象としているが、本発明は、本明細書に提示された発明の態様のある部分をなすスプレー・パターンの特性が、他のスプレー・パターンに勝る利点になり得る他のコーティング・プロセスに於いても、用法および用途を見出すことができる。たとえば、本発明は、内部表面、円筒面、または金属面のコーティングに使用することに限定されない。本明細書の発明の態様のあるものは、新規なスプレー・パターン特性を生成するために使用するノズル先端部およびスプレー・オリフィスに関するが、本発明は、いかなる特定のスプレー装置または技法にも限定されない。本明細書の例示的実施形態は、ただ1つの開口端を有する2ピース缶本体用のコーティング・プロセスを示すが、本発明はまた、3ピース缶本体または2つの開口端を有する円筒体をコーティングするために好都合に使用することもできる。さらに、例示的実施形態は、エアレス・スプレー・ノズルを示すが、本発明は、エアアシスト・ノズルにも同様に使用することができる。
【0014】
本発明の様々な発明の態様、思想、および特徴が、例示的実施形態に於いて組み合わされ具体化されて本明細書に記載され示され得るが、これら様々な発明の態様、思想、および特徴は、多くの代替実施形態に於いて、個々に、またはそれらの様々な組合せおよび部分的組合せのいずれでも使用することができる。本明細書に於いて明確に排除されない限り、そのようなすべての組合せまたは部分的組合せは、本発明の範囲内にあるものとする。さらに、代替の材料、構造、構成、方法、回路、デバイスおよび構成要素、ソフトウェア、ハードウェア、制御ロジック、形態に関する代替物、適合性、ならびに機能など、本発明の様々な態様、思想、および特徴に関する様々な代替実施形態が、本明細書に記載され得るが、そのような記載は、既知か今後開発されるかによらず、得られる代替実施形態の完全または網羅的なリストであることを意図するものではない。当業者は、本明細書にそのような実施形態が明確に開示されていなくても、さらに別の実施形態に本発明の1つまたは複数の態様、思想、または特徴を容易に取り入れ、本発明の範囲内で使用し得る。さらに、本発明の特徴、思想、または態様のあるものが、好ましい構成または方法であるとして本明細書記載されている場合にも、そのような記載は、そう明言されていない限り、そのような特徴が要件であり、または必要であることを示唆するものではない。さらに、例示的または代表的数値または範囲が、本開示の理解を助けるために含まれ得るが、そのような数値または範囲は、限定的意味で理解されるべきでなく、そう明言される場合にのみ、重要な数値または範囲とするべきものである。さらに、様々な態様、特徴、および思想が、本明細書に於いて、発明的であり、本発明の一部を形成するとして明確に確認され得るが、そのような確認は排他的なものではなく、むしろ、そのものとしてまたは特定の発明の一部分として明確に確認されることなく本明細書に十分に記載された発明の態様、思想、および特徴が存在し得、代わりに、本発明は、添付特許請求の範囲に於いて定義される。例示的方法またはプロセスの説明は、すべての場合に必要とされるすべてのステップを包含するとは限らず、また、ステップが示されている順序は、そう明言されていない限り、要件でありまたは必要であると理解されるべきではない。
【0015】
図1Aを参照すると、金属缶Cのような通常の飲食物容器などの開口端円筒体が、切欠側面図で示されている。そのような容器Cは、当技術分野では周知である2ピースまたは3ピース構造であり得、通常、中心長手方向軸Xを有するほぼ円筒形の内部表面または側壁Sを備える。端部円盤Bは、2ピース缶に関しては深絞りプロセス中などに円筒形側壁Sと一体に成形することができ、3ピース缶に関しては溶接などによって取り付けることができる。円筒形側壁Sは、あるいは平板から形成することもでき、その場合、側壁Sは、突合せ溶接または重ね溶接工程によって形成された長手方向の継ぎ目を有する(図示せず)。図1Aは、単一開口端Aを有する通常の2ピース缶本体を示すが、本発明は、両端部とも開口した容器本体、ならびに3ピース円筒形容器本体に使用することもできる。
【0016】
図1Aの例示的缶本体Cのほぼ円筒形内部表面または側壁Sは、食物容器に典型的なリブ付きの中央部分Dと、リブ付き中央部分Dの両側に位置するほぼ平滑であり得る2つの端部部分EおよびFとを備え得る(中央部分および端部部分は、便宜上、軸Xに沿って関係付けられている)。たとえば飲料用缶では普通であるような完全に平滑な内部表面を有する円筒形側壁を含めて、他の側壁輪郭線、形状、および輪郭形状を使用することもできる。端部円盤Bは、通常、長手方向軸Xがその端部円盤と交差する中心BCを有するほぼ平らな円盤であり得る。
【0017】
リブおよび平滑部分を有する例示的缶本体Cは、本明細書で教示されるスプレー・パターンの思想を用いることによって導き出すことができるいくつかの利点を説明する例示目的のために選択されている。ほぼ円筒形の内部表面Sにコーティング材を塗布するために使用される、典型的な従来技術の平らな扇状スプレー・パターンを示す図2をさらに参照されたい。
【0018】
図2は、本明細書では、便宜上ドリップ・パターンと呼ぶ。これは、特定のスプレー・ノズルからのコーティング材の流量の分布を測定する一般的な方法である。その方法は、真直ぐ垂直に立った基板VSに対して、スプレー・パターンの長軸を水平に向けた状態で、コーティング材を短時間噴射でスプレーすることを含み得る。基板VSは、真のスプレー・パターンの流失または乱れを生じ得るスプレー・ガンからの噴流などの悪影響の作用を相殺するために、波型板に於けるように、交互にランド(land)と溝とを備えることができる。任意の特定の領域にスプレーされたコーティング材の量(したがって、スプレー・パターン全体に亘るコーティング材の流量の示度)が、その領域の真下、垂直下方に延びる溝G中のドリップ・ラインまたは細流Rがより長いかより短いかの長さに反映される。
【0019】
図2に例示されたスプレー・パターンについて、パターンの上部の楕円領域は、扇状スプレー・パターンが波形板または基板VSに当たった標的部である。流れの最長ラインMFがスプレー・パターンのほぼ中央に生じ、両側に隣接するいくつかのラインがほぼ同じ長さであることに留意されたい。最も長いライン類、および特に最長ラインMFは、スプレー・パターン内のコーティング材の最大流量位置(すなわち分布)を表す。全体スプレー・パターンは、最大流量を示すスプレー・パターンの中央に対してほぼ対称であることにさらに留意されたい。スプレー・パターンは、コーティング材の流量が、なだらかだが、全体的には均等または均一でない分布をし、すなわち、スプレー・パターンの両端E1およびE2に向かって次第に減少する特性をさらに示す。ただし、両端の外れで、テーリングまたはフェザリングと呼ばれる顕著な流量部分Tが存在することが認められる。これらテーリングは、以下にさらに説明されるような過剰スプレー問題の可能性を示す。図2のスプレー・パターンは、さらに以下に例示するように、半球ドームを貫通するV字形ノッチによって基本的に形成された対称なスプレー・ノズル・スプレー・オリフィスによって生成された、典型的な従来技術の対称で平らな扇状スプレー・パターンである。
【0020】
次に、図2のようなスプレー・パターンを使用する、図1Aの缶本体Cの円筒形内部表面Sに対するスプレー・コーティング作業を考察する。ある缶製造業者にとっては、ほぼ円筒形の内部表面Sの平滑部分EおよびFは、コーティングにとって重要な領域とみなされ得る。これは、図2のような通常の対称なスプレー・パターンでは、流量分布の多くがスプレー・パターンの中央に来るからである。スプレー・パターンSPを生成するために、1つまたは複数のスプレー・ノズル先端部Nを使用することができる。さしあたり、スプレー・パターンSPが図2に示されるようになっていると考える。スプレー・パターンSP内のコーティング材の流量分布は、主としてスプレー・パターンの中央に集中するので、スプレー・パターンは、円筒形内部表面の中央部分Dをコーティングするように導かれる。ノズルが静止していれば、端部部分EおよびFを確実に十分にコーティングするために十分な材料をスプレーする必要がある。これによって、中央部分Dを多すぎる材料で過剰スプレーを行う結果になり得るだけでなく、テーリングTが、缶本体の開口端Aの外縁Pを越え、したがって缶の内部空間から外側へかなり広がり、無駄になり得る。これは、ノズル先端部Nが、缶本体の外縁Pに至るかまたはその近くまで内部表面Sをコーティングするために挿入または動かされる場合に、材料流量の大部分がスプレー・パターンの中央近くにあるので、特にそうなる。したがって、特に端部部分DおよびEが中央部分Dと同じように重要であるとみなされる場合、過剰な材料(すなわち重量または量)が、内部表面Sの全領域に十分な被覆範囲および厚さを確保するために塗布され得、テーリングおよびスプレー・パターンの端部領域に向かって次第に減少する流量のために缶本体の外側で無駄になるコーティング材の大幅な損失がそれに伴う。
【0021】
次に図3に移ると、本開示に提示されている1つまたは複数の発明によるスプレー・パターン10を示す。スプレー・パターン10と従来技術のスプレー・パターンSP(図2)との顕著な違いを十分に理解するために、両図を並べて見ることができる。先ず直ぐに分かる違いは、図3のスプレー・パターン10は、そのスプレー・パターン10全体に亘って、ほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を有することである。様々なドリップ・ライン12がほぼ同じ距離だけ下に延び、各溝中のコーティング材の量がほぼ同じであることを示している。したがって、スプレー・パターンの中央領域16は、顕著により大量なコーティング材または流量の分布を含まず、また、側方領域18に向かう外側のスプレー・パターン10残部の大部分より多く含むこともない。スプレー・パターン10は、平らなスプレー・パターンであり、ほぼ対称である。ところで、スプレー・パターン10は、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材分布の結果として、図2の従来技術のスプレー・パターンSPの幾分丸い円錐または弾丸形状とは全く対照的に、全体的に矩形形状の外観を有する。したがって、コーティング材のほぼ均一な流量分布の境界を画定するかなり明確な縁または縁領域14を有するスプレー・パターン全体に亘って、ほぼ均一または均等な流量分布が存在するので、本明細書では、スプレー・パターン10を矩形パターンであると称する(ほぼ平らなスプレー・パターンであり、図1Bの14aおよび14bとして認識される、スプレー・パターン10、30の上述の明確な2つの縁または境界が存在する)。これは、そのような、ほぼ均一な流量分布の明確な縁を有さず、むしろ次第に減少する流量分布を有する図2の従来技術のスプレー・パターンSPとは著しくかつ際立って対照的である。さらに、スプレー・パターン10のテーリングまたはフェザリング特性20が大きく低減しており、一部のノズル設計では、あらゆる有意な流れに関して殆ど消滅し得ることに留意されたい。側方領域から側方領域18まで、かつ中央領域16を通じて、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一または均等な流量分布に関して、スプレー・パターン10のほぼ矩形の形状を強調するために近似ラインYを引く。そのような矩形形状は、たとえば、図2の従来技術のスプレー・パターンには、中央で多量の流量分布およびスプレー・パターンSPの両端に向かって次第に減少する流量分布のために、重ねることはできない。
【0022】
次に、図1Bの缶本体Cのほぼ円筒形の内部表面Sをコーティングするために、スプレー・パターン10を用いることを考える。スプレー・パターン10の全体に亘ってほぼ均等な流量分布(たとえば、図3のスプレー・パターン10または図4のスプレー・パターン30を用いて)によって、十分なコーティング材が、ほぼ円筒形の内部表面Sの中央部分Dならびに第1および第2の端部部分EおよびFに確実にスプレーされる。ほぼ均等な流量分布によって、材料の厚さのより良好な制御、ならびにそれら目標厚さを達成するための材料の総重量の制御が可能になり、併せて、過剰スプレーが大幅に減少する。さらに、スプレー・パターン10の十分に確定された縁14によって、所望なら、スプレー・パターンを缶本体の外縁Pまで配置することが可能になり、缶本体内部から外側への材料の散逸が大幅に低減する。図1Bに示されるように、ノズル先端部N1によって生成されるスプレー・パターン10の一方の縁14aは、円筒形缶本体の上端縁15に導くことができ、他方の縁14bは、端部円盤Bの中心BCに導くことができる。ほぼ均等な流量分布はテーリングも著しく減っているので、明確な縁14aによって、殆ど円筒形缶本体内部から外側への過剰スプレーなしに、円筒形缶本体Cの開口外縁Pまでスプレーすることが可能になる。角度αは、円筒形本体Cの中心長手方向軸Xとスプレー・ノズル先端部N1の中心軸(72)との鋭角であり、角度αは、円筒形本体Cの大きさ、ノズル・スプレー・パターン10の大きさなどに基づいて選択することができる。
【0023】
次に図4に移ると、矩形形状スプレー・パターン30の代替実施形態が示される。このスプレー・パターン30は、それが、スプレー・パターン30の全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を有する平らなスプレー・パターンであり、したがって、十分に確定されたパターンの縁32を有する、ラインZによって輪郭が描かれたほぼ矩形の形状を表し示すことを含めて、図3のスプレー・パターン10の特性の多くを有する。図3のスプレー・パターン10のように、スプレー・パターン30もまた、縁または縁領域22を越える流量が大幅に減少し、したがって、図2の従来技術のスプレー・パターンSPに比較してテーリングまたはフェザリングが最小限に抑えられ、または大幅に減少する結果になる。
【0024】
しかし、スプレー・パターン30全体に亘るほぼ均等な流量分布に加えて、そのスプレー・パターンは、スプレー・パターンの側方領域36に向かう流量分布に比較して、流量分布が目立って減少した中央領域34をさらに含む。それでも、スプレー・パターン全体に亘って側方領域から側方領域36まで流量分布がほぼ均等なために、全体的に矩形形状を有すると全体スプレー・パターンを称するが、パターンは、流量が減少した中央領域34をさらに有する。これは、たとえば、図1Bの缶本体の平滑な端部部分EおよびFを確実に十分にコーティングするために、より多くの材料を両側方領域36に導く制御されたスプレー・パターン30を可能にする。これは、たとえば、中央部分Dより多い材料重量またはコーティング厚さが両端部部分EおよびFに必要な場合、さらに、両端部部分EおよびFに望みの厚さおよび重量を単に達成するために中央部分Dに過剰スプレーすることを回避する場合に望ましいことがある。総合的効果として、過剰スプレーを行う必要なく、必要とされるより多くのコーティング材全体重量に終わることなく、コーティングの所望の重量分布を達成して、たとえば、円筒形内部表面の様々な部分に異なる厚さを持たせることが可能になる。スプレー・パターン30の配向は、たとえば、本明細書の上記で説明された図1Bと同様に行うことができる。
【0025】
両方のスプレー・パターン10および30(図3および4)共に、たとえば、1つまたは2つのノズルを使用するコーティング作業に適用することができ、両端が開口した缶本体または1端のみ開口した缶本体に適用することができる。図4のスプレー・パターンに関しては、内部表面S全体に亘ってスプレー・パターンを重ねるように2つのノズルを使用することによって、やはり、中央部分Dに過剰コーティングを行わずに、両端部分EおよびFにより厚いコーティングを行うように重量分布を制御することができる。
【0026】
実際には、表面に塗布される実際のパターンは、ノズル先端部、温度、空気流などの状態を含む多くの要因によって影響を受けるので、スプレー・パターンの特徴のあるものの「全般的」形状および外観に言及することにこの時点で留意する。ところで、本発明、および特に従来技術のスプレー・パターンに勝る違いを理解するためには、一般に平らなスプレー・パターン10、30はそれぞれ、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一またはほぼ均等なコーティング材の流量分布を有することによって、ほぼ矩形のドリップ・パターン外観を示し、図4の実施形態は、スプレー・パターンの両側方領域に比較して流量が減少した中央領域をさらに含むと言うのが正確である。
【0027】
図8を参照すると、ノズル・アセンブリ50は、ノズル先端部保持具52と、ノズル先端部54とを備え得る。ノズル先端部保持具52は、スプレー・ガン(図示せず)の支持面に締め付けられる肩部58を有するフランジ56を備え得る。ノズル・アセンブリ50とスプレー・ガン内のコーティング材の流路との流体密封シールを行うためにシール部材(図示せず)を設けることができる。ノズル先端部54はまた、フランジ60を備え得、ノズル先端部54は、通常、ノズル先端部保持具52に圧入される。ノズル先端部54は、ノズル・アセンブリ50の加圧面でスプレー・ガンからのコーティング材の流路と連通する出口62を備える。スプレー・オリフィス設計およびスプレー・オリフィスを製作する方法が、本明細書に提示される残りの開示および発明の思想の主題である。
【0028】
本明細書に例示されるすべてのノズル先端部およびスプレー・オリフィス設計に関し、ノズル先端部54は、ノズル先端部54の加圧側または後側に、半球形めくらボアまたはドーム66を終端とする先細進入路64(たとえば図12参照)備え得る。ノズル先端部54は、通常タングステン・カーバイド製の進入路64およびドーム66を有する無開口半製品として始まる。次いで、スプレー・オリフィスを作成するためにドーム66を貫通する最初の溝またはVノッチをノズル先端部の前側に生成する円形ダイヤモンド・のこぎりDSまたはカッティング・ホイールを使用して、スプレー・オリフィスが加工され得る(たとえば、本明細書にさらに説明されるのこぎりDSの輪郭線形状の図13および15参照)。ドーム66が形成された後、スプレー・オリフィスを生成するためのノズル先端部の前側へのこの最初の切込みは、ダイヤモンド・のこぎりの回転軸が好ましくはノズル先端部中心軸72を横切る状態で、ダイヤモンド・のこぎりの切削端CEを中心軸72(本明細書ではZ軸とも表す)に沿って移動させることによって行うことができる。ダイヤモンド・のこぎりDSはまた、好ましくは、最初または第1の切削またはVノッチが実質的に中心軸72に関して放射状になるように配向される。一般に、ドーム66への切込みが深いほど、その結果得られるスプレー・オリフィスは大きい。スプレー・オリフィスの切削に先立って先細進入路64を有するノズル先端部は、周知であり、米国特許第5,494,226号に示されており、さらに米国特許第3,697,313号にも説明されている。スプレー・オリフィス形状およびその切削方法は本開示のさらに別の発明思想である。ダイヤモンド・のこぎりDSは、先細になされた真直ぐな2つの側面TS1とTS2の頂点に形成された小半径の切削端CEを有し得る。先細側面TS1とTS2は刃先角βを形成する。角度βの大きさを変えることによって、スプレー・オリフィスの大きさを変えることができ、切削溝の大きさを変えることができる。
【0029】
次に図5〜7を参照すると、複数のスプレー・オリフィスの実施形態が、比較のために並べて示されている。参考のために、Z軸がノズル先端部54の中心長手方向軸72である状態で、X−Y面内にあるスプレー・オリフィスを考える。図5は従来技術のスプレー・オリフィス68である。このスプレー・オリフィス68は、スプレー・オリフィスが存在する面(この場合、図面紙面からなるX−Y面)内で視たとき猫の眼の形状のような基本的に細いスリットであり、ノズル先端部54に単一のVノッチ70(図9)を切り込むことによって形成され、Vノッチ70は、ノズル先端部54の中心軸72(図8)に対して対称的に横向きにまたは放射状に切削されている(基準軸Zに対応する中心軸72は、ノズルの出口流方向軸とみなすことができ、ただし、平らなスプレー・パターンがその軸から外へ広がる)。Vノッチ70は、このように軸72に沿って切り下げられてドーム66を貫通し、それによって、スプレー・オリフィス68を形成する。ノッチ70は、ダイヤモンド・のこぎりDSの先細形状の故に、V形状になる。スプレー・オリフィス68は、この実施形態ではダイヤモンド・のこぎりが小半径の端部(約0.0015インチの代表的半径)を有するのでほぼ楕円形であり、スプレー・オリフィスの幅寸法74は、所与の寸法のドーム66に対していかに深くVノッチ70がドーム66を貫通するかにより、高さ寸法76は、のこぎりの端部とほぼ同じ寸法であり、角度βの関数になる。この対称な楕円スプレー・オリフィス68は、本明細書の図2に示された平らな扇状の従来技術のスプレー・パターンを生成する。
【0030】
図6は、本明細書の1つまたは複数の発明思想によるスプレー・オリフィス78の第1の実施形態である。スプレー・オリフィス78は、本明細書の図3に示されているような、スプレー・パターン全体に亘ってほぼ均一または均等な流量分布を有する平らなスプレー・パターンを生成する。そのほぼ矩形の外観故に、このスプレー・オリフィス78を矩形切削スプレー・オリフィスと呼ぶものの、矩形形状の「諸辺」は、スプレー・オリフィスが、円形の刃を用いてドーム66に切り込むことによって形成されるので、必ずしも真直ぐな辺ではない。ただし、矩形そっくりに、ほぼ平行な2つの短い方の辺にほぼ横向きに、ほぼ直角な交差角度で、交差するほぼ平行な2つの長い方の辺によって生成される明瞭、明確な矩形の外観が存在する(長い方と短い方の辺の交差は、必ずしも完全な直角ではなく、むしろ切削工程による小さな半径である)。長い方の辺80、82は、ドーム66の形状故の僅かな湾曲を有し、短い方の辺84、86は、やはり、のこぎりDSの小半径の切削端CEならびにドーム66の形状に拠る湾曲を有する。
【0031】
このスプレー・オリフィス78は、先ず、図9のVノッチ70と同様にVノッチを切削することによって、形成することができる。次に、横向き軸88に沿って側方に、中心軸72の両側に対称に、ダイヤモンド・のこぎりを割り出しする(図10および14参照)。図5〜7に示すXYZ基準を用いると、最初のVノッチが形成された後のダイヤモンド・のこぎりDSの割り出し側方移動に関して、横向き軸88はY軸に対応する。言い換えると、最初のVノッチが加工された後、ダイヤモンド・のこぎりは、最初のVノッチを切削したラインに垂直な方向に、側方に移動させられる。追加の切削の数は、スプレー・オリフィス78の必要寸法に基づくが、軸72の両側にそれを跨ぐこれら追加の側方切削の意図は、謂わば、「方形を作る」ことであり、スプレー・オリフィス78の短い方の辺84、86を形成する。これは、スプレー・オリフィス78の矩形状外観を生成する。ドーム66内への溝92(図10)の貫通深さ、およびドーム66の寸法に加えて、追加の側方切削の数が、スプレー・オリフィス78の高さ寸法または短い方の辺寸法76を決定する。溝92の深さが、所与の大きさのドーム66に対してスプレー・オリフィス78の長い方の辺寸法74を決定する。図13に最も良く示されているように、追加の側方切削は、結果として(断面図に表されるように)軸88に平行な平面内に存在する小さい方の底面92を有する台形溝90を形成する。台形の側壁94、96が、ダイヤモンド・のこぎりDSの刃先角βの関数となる角度で、基部92から斜めに出て行く。台形の大きい方の「底面」は、溝92が小さい方の底面92の反対側では開いているので、当然、仮想面である。したがって、スプレー・オリフィス78は、台形溝90が進入路上のドーム66またはノズル先端部54の前側を貫通する交差部として考えることができる。
【0032】
図7は、矩形切削スプレー・オリフィス100の別の実施形態を示す。スプレー・オリフィス100は、本明細書の図4の平らなスプレー・パターンを生成する。図6の実施形態と同様に、そのほぼ矩形の外観故に、このスプレー・オリフィス100を矩形切削スプレー・オリフィスと呼ぶが、ただし、矩形形状の「諸辺」は、スプレー・オリフィス100が、ドーム66に切り込むことによって形成されるので、真直ぐな辺ではない。長い方および短い方の辺の湾曲に拠って、スプレー・オリフィス100はまた、矩形楕円状外観を取り得る。ただし、矩形そっくりに、ほぼ平行な2つの短い方の辺にほぼ横向きに、ほぼ直角な交差角度で、交差するほぼ平行な2つの長い方の辺によって生成される明瞭、明確な矩形の外観が存在する。スプレー・オリフィス100は、長い方の2つの辺102、104および短い方の2つの辺106、108を有する。ただし、長い方の辺102、104のそれぞれがまた、スプレー・オリフィス100にほぼ中央部で狭窄部110を生じさせる内向き先細部を備える(図7A参照)ことが注目される。この狭窄部110が、結果として、図4に示されたスプレー・パターンの流量分布が減少した中央領域34を生成する。短い方の辺106、108の高さ寸法76は、部分的に、追加の切削を形成するためにのこぎりが動かされた切削の多少および総回転角度に依存する。のこぎりは比較的大きい直径(3〜6インチ)を有するので、短い方の辺106、108では、以下に説明するのこぎりの枢動による湾曲は小さい。
【0033】
中央狭窄部110は、スプレー・パターンの中央領域でコーティング材の流量分布を減少させるだけではなく、側方領域へより多くの流量を導く(図4の領域36のように)。スプレー・パターンは、それでも、ほぼ対称であり、平らなスプレー・パターンである。これは、短い方の辺106、108が、スプレー・オリフィスの中央領域に比較して広げられており、それによって、スプレー・パターンの側方領域でより多くの流量分布が可能になるからである。
【0034】
スプレー・オリフィス100は、以下のようにして形成することができる。図5の単一スリット・スプレー・オリフィス68を形成するのと同様に最初の切削を行った後、中心軸72の両側に、側方にのこぎりを割り出すのではなくて、のこぎりを、中心軸72の周りに枢動させ、または角度的に回転させることができる。切削端CEの枢動点は、好ましくは、中心軸72上にあり、その結果、その点ではノズル先端部の追加の材料が除去されることはない(領域110に対応する)。しかし、のこぎりを、軸72の回りに漸増的に時計方向および半時計方向に枢動させることによって、のこぎりは、両端または短い方の辺106、108をさらに切削し、広げる。その結果が、スプレー・オリフィス100の中央領域が狭窄した、スプレー・オリフィスの両側で幾分扇形状の溝112である(図11参照)。第1の追加切削は、たとえば、5度の回転で行われ得、もう1つの切削は10度の回転で行われ得、この場合、0度は、中心軸72に横向きの最初の切削の向きに対応する。次いで、のこぎりDSを、中心軸72周りに反対の方向に回転または枢動して、5および10度の切削を追加し、対称性を維持することができる。図11に示すように、その切削工程は、溝112のそれぞれの側に稜線118で交わる2つのほぼ平坦な壁114、116を有するスロットまたは溝112を生成する。この稜線118が、中央狭窄部110に対応する。
【0035】
図14は、中央狭窄部を有する矩形切削スプレー・オリフィス100の切削工程中ののこぎりDSの位置を概略的に表す。のこぎりDSは、スプレー・オリフィス100を形成するために、所望の数の角度だけ中心軸72の周りに一方向に、次いで反対方向に枢動する(矢印120によって示される通り)。枢動および追加切削は、最初の単一のスリット切削が行われた後に実施される。
【0036】
図6および7の両実施形態に関し、スプレー・パターンの大きさおよび流量分布は、スプレー・オリフィス78、100の全体の大きさおよび形状によって選択することができ、それら大きさおよび形状は、ドーム66の寸法と、ドーム66と交差する中心軸に沿う切削深さと、図7の実施形態についてはのこぎりDSの枢動の角度範囲と、のこぎりDSの刃先角βの大きさと、図6の実施形態については側方追加切削の幅との関数である。両実施形態に関し、短い方の辺の寸法76は幅Wを有し、長い方の辺の寸法74は長さLを有する。たとえば図3および4に示されるようなほぼ均等な流量パターンを生成するためには、必ずではないが、すべての場合、W≧0.25L、すなわちWがLの約0.25倍に等しいかもしくはそれより大きいことが好ましい。寸法WおよびLは、それらの最大長さによって測定される(長い方および短い方の辺は、通常、湾曲特性を有し得ることを考慮して)。
【0037】
図15および16を参照すると、ダイヤモンド・のこぎりまたはカッティング・ホイールの代替実施形態を示す。この実施形態では、カッティング・ホイール200は、204に於けるように、ホイール外縁の近傍で内側に先細になる2つのほぼ真直ぐな側面202を備える。しかし、上記で説明したダイヤモンド・のこぎりDSとは対照的に、先細の両側面は、細い頂点に集束せずに、先端を切り取られて平坦な切削端206を形成する。切削端206は、図16に於けるように断面図または側面図で視たとき初めて、「平坦」である。実際には、当然、切削端206は、カッティング・ホイール200の丸い外縁である。したがって、面204、206は、円錐台形輪郭線を形成する。
【0038】
本明細書の図6のスプレー・オリフィス78を形成するために、カッティング・ホイール200を好都合に使用することができる。平坦な切削端206により、単一の切削を用いて溝90を形成することができ、単一の切削でほぼ矩形のスプレー・オリフィスが生成される。この単一の切削により、ダイヤモンド・のこぎりDSの輪郭線によるような、複数の側方割り出し切削を行う必要が回避される。
【0039】
本発明が、例示的実施形態を参照して説明されてきた。本明細書を読み、理解することにより、他者に変更および代替が想起されるであろう。すべてのそのような変更および代替を、それらが添付特許請求の範囲またはその同等物の範囲に収まる限り、包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端円筒体の内部を液体コーティング材によってコーティングする方法であって、
ノズル先端部本体にスプレー・オリフィスを形成する工程であって、前記ノズル先端部本体がその後側に半球形のめくらボアを有し、前記スプレー・オリフィスは、真直ぐな側壁と、前記真直ぐな側壁間に切削端とを有するカッティング・ホイールを用いて、前記ノズル先端部本体の前面に形成され、前記カッティング・ホイールは、前記半球形めくらボアに切り込んで前記スプレー・オリフィスを形成するように移動させられ、前記スプレー・オリフィスは、第1の軸に沿って第1の寸法を有する2つの長い方の辺と、前記第1の軸に横向きの第2の軸に沿って第2の寸法を有する2つの短い方の辺とを有し、前記長い方の辺の長さがLであり前記短い方の辺の長さがWとしたときにWは約0.25L以上であるか、各前記長い方の辺は各前記短い方の辺の両端部とほぼ直角に結合する第1および第2の端部を有する前記工程と、
前記ノズル先端部本体をスプレー・ガンに取り付ける工程と、
前記スプレー・ガンにコーティング材を供給する工程と、
前記開口端円筒体の内部にコーティングを形成するために前記開口端円筒体を回転させながら、前記スプレー・オリフィスを通して前記開口端円筒体の中へコーティング材をスプレーする工程と
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが出口流軸を有し、前記スプレー・オリフィスが、前記出口流軸に垂直なX−Y面内でほぼ矩形の形状を有する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記長い方および短い方の辺は湾曲部分を有する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、長い方の辺と短い方の辺との各交差部が小さい半径によって形成される方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが、ほぼ均等な液体コーティング材分布をその全体に亘って有する平らなスプレー・パターンを生成する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが、第1および第2の外縁を有する平らなスプレー・パターンを生成する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記開口端円筒体が、開口上端部と、前記開口上端部の上端縁と、中心を有する底面とを有し、前記スプレー・オリフィスが出口流軸を有し、前記円筒体が長手方向軸を有し、前記出口流軸を前記長手方向軸に対して鋭角に配向して、第1の外縁を前記上端縁に整合させ、前記第2の外縁を前記底面の前記中心に整合させるように、前記スプレー・ガンを配置するステップをさらに含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが、前記カッティング・ホイールを、前記ノズル先端部本体の中心軸に垂直な方向に、前記半球形めくらボアと交わらせて側方に移動させることによって形成される方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが、前記カッティング・ホイールによる単一の切削で形成され、前記カッティング・ホイールが、前記真直ぐな側壁間に平坦な切削端を有する方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、ほぼ矩形の分布を有する平らなスプレー・パターンであって、その中央部で液体コーティング材の量が減少するスプレー・パターンを生成するために、前記スプレー・オリフィスに中央狭窄部を生成するように、前記長い方の両辺が、内側に向かう先細部を備える方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記スプレー・オリフィスが、前記カッティング・ホイールを前記ノズル先端部本体の中心軸周りに角回転させることによって形成される方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2013−503040(P2013−503040A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527887(P2012−527887)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/044990
【国際公開番号】WO2011/025653
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】