説明

均一系水素化触媒のための配位子としての置換フェロセニルジホスフィン

式Iの化合物[式中、Rは、C〜Cアルキル、C〜C10アリール又はC〜C11アラルキルであり、Rは、開鎖又は環状の第2級アミノ基であり、そして、Rは、式IIの基(式中、Rは、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシであり、そして、Rは、H、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシである)である]は、二重結合を含有するプロキラルな有機化合物のための均一系水素化触媒としての金属錯体のための配位子であり、これにより、非常に高い活性及び生産性、そしてエナンチオ選択性をも達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一系水素化触媒のための配位子としてのホスフィン基において3,5−又は3,4,5−置換フェニル基を有する2,2’−ビス(α−第2級アミノアルキル)−1,1’−ジホスフィノフェロセン;元素周期表第8族の遷移金属とのこれらの配位子の金属錯体;及びプロキラルなエチレン性不飽和有機化合物を水素化するための方法に関する。
【0002】
欧州特許公開A−0967015号公報には、全くの一般的な記載として、2,2’位において、全く異なるキラルなα−置換アルキル基で置換されている1,1’−ジホスフィノフェロセンが記載されている。α−第2級アミノフェニルメチル、例えばα−ジメチルアミノフェニルメチルにより2,2’位において置換される、いくつかの1,1’−ジフェニルホスフィノフェロセンについての具体的な言及がなされている。これらのジホスフィノフェロセンは、炭素−炭素二重結合又は炭素−ヘテロ原子二重結合の水素化のための、有効な、エナンチオ選択性の均一系金属触媒のための配位子として働く。2つのホスフィノ基におけるフェニル基の置換による可能性のある影響については、全く言及がなされていない。
【0003】
驚くべきことに、2個のホスフィノ基におけるフェニル基の3、5位と、おそらくは4位の特定の置換が、金属錯体において、相当に高い活性と、それによる水素化生成物に対する相当に高い生産性をも示し、かつプロキラルなエチレン性不飽和化合物の水素化において、非常に高いエナンチオ選択性をも示す配位子をもたらし、その結果、水素化を大気圧でさえ実施できることが見い出された。このような金属錯体を使用する水素化法は、意義のあるプロセスエンジニアリング及び経済的優位性をもたらす。
【0004】
本発明は、本質的に純粋なエナンチオマーの形態である、式I:
【0005】
【化5】

【0006】
[式中、
は、C〜Cアルキル、C〜C10アリール又はC〜C11アラルキルであり、
は、開鎖又は環状の第2級アミノ基であり、そして
Rは、式:
【0007】
【化6】

【0008】
(式中、
は、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシであり、そして、
は、H、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシである)で示される基である]で示される化合物を提供する。
【0009】
〜Cアルキル基Rは、直鎖又は分岐鎖であることができ、メチル、エチル、n−若しくはi−プロピル、及びn−、i−若しくはt−ブチルあることができる。アルキルは、好ましくは直鎖である。好ましいアルキル基Rは、メチル及びエチルである。
【0010】
〜C10アリール基Rは、例えば、フェニル又はナフチルであることができる。好ましいアリール基Rは、フェニルである。
【0011】
好ましいアラルキル基Rは、ベンジルである。
【0012】
好ましい実施態様においては、式Iの化合物のRは、フェニルである。
【0013】
第2級アミノ基は、好ましくは、合計2〜16個の炭素原子、より好ましくは2〜12個の炭素原子、そして特に好ましくは2〜6個の炭素原子を含有する。
【0014】
開鎖又は環状の第2級アミノ基Rは、式:RN−[式中、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル;C〜C10アリール、好ましくはフェニル;又はC〜C11アラルキル、好ましくはベンジルである(ここで、シクロアルキル基及びアリール基は、非置換であるか、又はC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシにより置換されている)か、あるいはR及びRは、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンチレンを形成している]に相当することができる。アルキル基(好ましくは直鎖である)の例は、メチル、エチル、プロピル及びブチルである。シクロアルキル基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロオクチルである。
【0015】
好ましい実施態様では、R及びRは、それぞれ、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシルであるか、あるいはR及びRは、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンチレンを形成している。R及びRは、それぞれ、メチルであるのがとりわけ好ましい。
【0016】
アルキル又はアルコキシ基Rは、直鎖又は分岐鎖であることができ、メチル、エチル、n−若しくはi−プロピル、及びn−、i−若しくはt−ブチル、あるいはメトキシ、エトキシ、n−若しくはi−プロポキシ、及びn−、i−若しくはt−ブトキシであることができる。好ましいアルキル基は、メチル及びt−ブチルである。好ましいアルコキシ基は、メトキシ及びt−ブトキシである。
【0017】
好ましい実施態様では、基Rの両方が、メチル、t−ブチル又はメトキシである。
【0018】
アルキル又はアルコキシ基Rは、直鎖又は分岐鎖であることができる。具体的な例は、Rに関して既に示した。
【0019】
好ましい実施態様では、Rは、水素又はメトキシである。
【0020】
式Iの特に好ましい化合物は、Rが、フェニルであり、Rが、ジ−C〜Cアルキルアミノ、特にジメチルアミノであり、Rが、メチル、t−ブチル又はメトキシであり、そしてRが、H、メチル又はメトキシであるものである。
【0021】
式Iの化合物は、例えば、欧州特許公開A−0965574号公報、又はTetrahedron: Asymmetry 10(1999),pp375-384中にJ.J. Almena Pereaによって記載されているような公知の方法により得られる。この化合物は、例えば式II:
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、
及びRは、式Iの化合物について与えられた意味を有し、Xは、H、Cl、Br又はI、好ましくはH又はBrである)
で示される化合物を、アルキルリチウム(メチルリチウム又はブチルリチウム)のような有機金属化合物と反応させ、次いで、式III:
【0024】
【化8】

【0025】
(式中、
Rは上記で定義されたとおりであり、そして、Xは、ハロゲン、好ましくはCl、Br又はIである)
で示されるモノハロホスフィンを加えることにより得られる。
【0026】
式II及び式IIIの化合物は、公知であり、また、類似の方法により製造することができる。反応は、一般的には、不活性溶媒、例えば、エーテル又は炭化水素中で行われる。この反応に関する更なる詳細は、実施例中に見い出すことができる。置換ハロホスフィンの製造は、当業者に知られており、発表された製造法によるか、又はそれらと類似の方法により、適切に置換された臭化アリールから出発して行うことができる。
【0027】
式Iの新規な化合物は、TM8金属の群、特に、Ru、Rh及びIrの群から選択される金属の錯体のための配位子であり、不斉合成、例えばプロキラルなエチレン性不飽和有機化合物の不斉水素化のための優れた触媒又は触媒前駆物質である。本金属錯体は、非常に高い活性及びエナンチオ選択性を示す。プロキラルな不飽和有機化合物が使用される場合は、有機化合物の合成において、極めて高い光学異性体過剰率をもたらすことができ、かつ短い反応時間で高い化学的転化率を達成することができる。選択された基質の活性及びエナンチオ選択性は、公知の非置換ジホスフィンを使用して得られるものよりもかなり高い。加えて、生産性もまた、この金属錯体によりかなり向上させることができる。この方法で、効率的な水素化処理を大気圧においてさえも行うことができる。
【0028】
本発明は更に、配位子としての式Iの化合物とのTM8金属の群より選択される金属の錯体を提供する。
【0029】
可能な金属は、例えば、Cu、Ag、Au、Ni、Co、Rh、Pd、Ir、Ru及びPtである。好ましい金属は、ロジウム及びイリジウムであり、そしてまたルテニウム、白金及びパラジウムでもある。
【0030】
特に好ましい金属は、ルテニウム、ロジウム及びイリジウムである。
【0031】
金属原子の酸化数及び配位数に依存して、金属錯体は、更なる配位子及び/又はアニオンを含有することができる。それらはまた、カチオン性金属錯体であることができる。そのような類似の金属錯体及びその製造法は、文献に広く記載されている。
【0032】
金属錯体は、例えば、式IV及び式V:
【0033】
【化9】

【0034】
(式中、Aは、式Iの化合物であり、
基Lは、同一又は異なるアニオン性若しくは非イオン性の単座配位子であり、あるいは基Lは、同一又は異なるアニオン性若しくは非イオン性の二座配位子であり、
Lが単座配位子である場合は、nは、2、3又は4であり、あるいはLが二座配位子である場合は、nは1又は2であり、
zは、1、2又は3であり、
Meは、Rh及びIrからなる群より選択される金属であり、この金属は、酸化状態0、1、2、3又は4を有しており、
はオキソ酸又は複合酸のアニオンであり、そして
アニオン性配位子は、金属の酸化状態1、2、3又は4の電荷と釣り合っている)
に相当することができる。
【0035】
上記の好ましい選択及び実施態様は、式Iの化合物に適用される。
【0036】
非イオン性単座配位子は、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)、アリル(アリル、2−メタリル)、溶媒和する溶媒(ニトリル、直鎖又は環状のエーテル、非アルキル化又はN−アルキル化アミド及びラクタム、アミン、ホスフィン、アルコール、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル)、一酸化窒素及び一酸化炭素からなる群より選択することができる。
【0037】
アニオン性単座配位子は、例えば、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、擬ハロゲン化物(シアン化物、シアネート、イソシアネート)、並びにカルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸のアニオン(カーボネート、ホルメート、アセテート、プロピオネート、メチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート、フェニルスルホネート、トシレート)からなる群より選択することができる。
【0038】
非イオン性二座配位子は、例えば、直鎖又は環状のジオレフィン(例えば、ヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン)、ジニトリル(マロノニトリル)、カルボン酸の非アルキル化又はN−アルキル化ジアミド、ジアミン、ジホスフィン、ジオール、アセチルアセトネート、ジカルボン酸ジエステル及びジスルホンジエステルからなる群より選択することができる。
【0039】
アニオン性二座配位子は、例えば、ジカルボン酸、ジスルホン酸及びジホスホン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、メチレンジスルホン酸及びメチレンジホスホン酸)のアニオンからなる群より選択することができる。
【0040】
好ましい金属錯体としては、錯体中のEが、−Cl、−Br、−I、ClO、CFSO、CHSO、HSO、BF、B(フェニル)、B(C、B(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)、PF、SbCl、AsF又はSbFであるものも挙げられる。
【0041】
水素化に適している特に好ましい金属錯体は、式VI及び式VII:
【0042】
【化10】

【0043】
(式中、
は、式Iの化合物であり、
Meは、ロジウム又はイリジウムであり、
Yは、2個のオレフィン又はジエンを意味し、
Zは、Cl、Br又はIであり、そして
は、オキソ酸又は複合酸のアニオンである。)
に相当する。
【0044】
上記の実施態様及び好ましい選択は、式Iの化合物に適用される。
【0045】
Yがオレフィンである場合、それはC〜C12−、好ましくはC〜C−、そして特に好ましくはC〜C−オレフィンであることができる。例は、プロペン、ブト−1−エン、そして特にエチレンである。ジエンは、5〜12個、好ましくは5〜8個の炭素原子を含有することができ、開鎖、環状又は多環状のジエンあることができる。ジエンの2つのオレフィン基は、好ましくは1又は2個のCH基により結合されている。例は、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−又は1,5−ヘプタジエン、1,4−又は1,5−シクロヘプタジエン、1,4−又は1,5−オクタジエン、1,4−又は1,5−シクロオクタジエン及びノルボルナジエンである。Yは、好ましくは、2個のエチレン又は1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンあるいはノルボルナジエン分子を意味する。
【0046】
式VI中、Zは、好ましくはCl又はBrである。Eの例は、ClO、CFSO、CHSO、HSO、BF、B(フェニル)、PF、SbCl、AsF又はSbFである。
【0047】
本発明のルテニウム錯体は、例えば、式VIII:
【0048】
【化11】

【0049】
(式中、
Zは、Cl、Br又はIであり、Aは、式Iの化合物であり、基Lは、同一又は異なる配位子であり、Eは、オキソ酸、鉱酸又は複合酸のアニオンであり、Sは、配位子として配位することが可能な溶媒であり、aは1〜3であり、bは0〜4であり、cは0〜6であり、dは1〜3であり、eは0〜4であり、fは1〜3であり、gは1〜4であり、hは0〜6であり、kは1〜4であり、そして錯体の正味電荷は0である)
に相当することができる。
【0050】
Z、A、L及びEに関する上記の好ましい選択は、式VIIIの化合物に適用される。配位子Lは加えて、アレーン又はヘテロアレーン(例えば、ベンゼン、ナフタレン、メチルベンゼン、キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン、ピリジン、ビフェニル、ピロール、ベンゾイミダゾール又はシクロペンタジエニル)及びルイス酸機能を有する金属塩(例えば、ZnCl2、AlCl3、TiCl4及びSnCl4)であることができる。溶媒配位子は、例えば、アルコール、アミン、酸アミド、ラクタム及びスルホンであることができる。
【0051】
このタイプの錯体は、以下に記載の文献、及びそこに引用されている文献に記載されている。
【0052】
【表1】

【0053】
相当する式を有するが、しかし他のジホスフィン配位子を有する、より具体的なルテニウム錯体は、次の文献に記載されている。
【0054】
【表2】

【0055】
いくつかの具体的な、そして好ましいルテニウム錯体は、〔Ru(アセテート)(A)〕、〔Ru(OOCCF(A)〕、〔RuCl(A)〕、[RuBr(A)]、〔RuI(A)〕、〔RuCl(A〕、(Nエチル)、〔RuCl(A〕(Nエチル)(キシレン)、〔RuCl(ベンゼン)(A)〕Cl、〔RuBr(ベンゼン)(A)〕Br、〔RuI(ベンゼン)(A)〕I、〔RuCl(p−クメン)(A)〕Cl、〔RuBr(p−クメン)(A)〕Br、〔RuI(p−クメン)(A)〕I、〔Ru(2−メタリル)(A)〕、〔RuCl(フェニル−CN)(A)〕、〔Ru(A1)(AcO)(エタノール)〕、〔(Cp)Ru(A)〕Cl、〔(Cp)Ru(A)〕PF、〔RuCl(Pフェニル)(A)〕(η−Cl)、〔RuCl(A)(dpen)〕及び〔RuCl(A)(daipen)〕である。Cpはシクロペンタジエニルであり、dpen及びdaipenはそれぞれキラルエチレンジアミン、例えば、1,2−ジフェニルエチレン−1,2−ジアミン又は1,1−ジ(p−メトキシフェニル)−2−イソプロピルエチレン−1,2−ジアミンである。
【0056】
本発明の金属錯体は、文献から知られた方法(米国特許A−5,371,256号明細書、米国特許A−5,446,844号明細書、米国特許A−5,583,241号明細書及びE. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto (Eds.), Comprehensive Asymmetric Catalysis I to III, Springer Verlag, Berlin, 1999、並びにそこに引用されている文献を参照)によって製造される。
【0057】
本発明の金属錯体は、均一系触媒、又は反応条件下で活性化され得る触媒前駆物質であり、これらはプロキラルなエチレン性不飽和有機化合物の不斉水素化に使用することができる。可溶性の均一系金属触媒を使用する、このような水素化は、例えば、Pure and Appl. Chem., Vol.68, No.1, pp. 131-138 (1996) に記載されている。本発明によれば、水素化のためにルテニウム、ロジウム及びイリジウムの錯体を使用するのが好ましい選択となる。特によい結果が、炭素二重結合を有するプロキラルな化合物の水素化において達成される。また、高い活性により触媒の量を減らすことも可能になり、これは経済的優位性をもたらす。
【0058】
本発明は、更に水素によるプロキラルなエチレン性不飽和有機化合物の不斉水素化のための均一系触媒として、式Iの化合物を含む配位子とのTM8金属の群から選択される金属の錯体の使用を提供する。
【0059】
本発明の更なる態様は、均一系触媒の存在下での水素による、少なくとも1個の炭素二重結合を含有するプロキラルな有機化合物の不斉水素化によって、キラル有機化合物を製造する方法であり、ここで、付加反応は、配位子として式Iの化合物とのTM8金属の群から選択される金属の錯体の少なくとも1種の触媒量での存在下で行われる。
【0060】
水素化される好ましいプロキラルな不飽和化合物は、開鎖又は環状有機化合物中に、1個以上の、同一又は異なる基C=Cを含有することができ、ここで基C=Cは、環系の一部又は環外の基であることができる。プロキラルな不飽和化合物は、アルケン、シクロアルケン、ヘテロシクロアルケンであることができる。これらは、例えば、式IX:
【0061】
【化12】

【0062】
(式中、R、R、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、水素、又は開鎖若しくは環状の炭化水素基、あるいはO、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するヘテロ炭化水素基(これらは、1〜30個、好ましくは1〜20個の炭素原子を含有する)であり、化合物がプロキラルとなるように選択され、
及びRは、それらが結合している炭素原子と一緒になって、3〜12個の環原子を有する、炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成し、
及びRは、それぞれが、それらが結合している基C=Cと一緒になって、3〜12個の環原子を有する、炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成し、
ヘテロ環中のヘテロ原子は、O、S及びNからなる群より選択され、そして
、R、R及びRは、非置換であるか、又はC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、シクロヘキシル、C〜C10アリール、C〜C12アラルキル、C〜Cアルキル−C〜C10アリール、C〜Cアルコキシ−C〜C10アリール、C〜Cアルキル−C〜C12アラルキル、C〜Cアルコキシ−C〜C12アラルキル、−OH、−NR1112、−CO−OR若しくは−CO−NR1011により置換されており、ここでRは、H、アルカリ金属、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであり、そしてR10及びR11は、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜Cアルキル、シクロヘキシル、フェニル又はベンジルであり、あるいはR10及びR11は、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンチレン基を形成する)に相当することができる。
【0063】
置換基の例及び置換基に関する好ましい選択は、先に記載した。
【0064】
〜Rの基は、例えば、C〜C20アルキル、好ましくはC〜C12アルキル;O、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するC〜C20ヘテロアルキル、好ましくはC〜C12ヘテロアルキル;C〜C12シクロアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル;O、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するC−結合したC〜C11ヘテロシクロアルキル、好ましくはC〜Cヘテロシクロアルキル;C〜C12シクロアルキル−C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cシクロアルキル−C〜Cアルキル;O、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するC〜C11ヘテロシクロアルキル−C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cヘテロシクロアルキル−C〜Cアルキル;C〜C14アリール、好ましくはC〜C10アリール;O、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するC〜C13ヘテロアリール、好ましくはC〜Cヘテロアリール;C〜C15アラルキル、好ましくはC〜C11アラルキル;O、S及びNからなる群より選択されるヘテロ原子を含有するC〜C12ヘテロアラルキル、好ましくはC〜C10へテロアラルキルであることができる。
【0065】
及びR、あるいはR及びRは、それらが結合している基と一緒になって、炭化水素環又はヘテロ炭化水素環を形成する各場合、その環は、好ましくは4〜8個の環原子を含有する。ヘテロ炭化水素環は、例えば、1〜3個、好ましくは1個又は2個のヘテロ原子を含有することができる。
【0066】
不飽和有機化合物のいくつかの例は、不飽和カルボン酸及びジカルボン酸、エステル、アミド及び塩、例えば、α−置換のアクリル酸又はクロトン酸であり、そしてβ−置換のアクリル酸又はクロトン酸であることもある。好ましいカルボン酸は、式:
【0067】
【化13】

【0068】
で示されるもの、並びにその塩、エステル及びアミド[式中、R12は、C〜Cアルキル、非置換C〜Cシクロアルキル、又は1〜4個の、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ若しくはC〜Cアルコキシ−C〜Cアルコキシ基で置換されているC〜Cシクロアルキル、あるいは非置換C〜C10アリール、又は1〜4個の、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ若しくはC〜Cアルコキシ−C〜Cアルコキシ基で置換されているC〜C10アリール、好ましくはフェニルであり、そしてR13は、直鎖又は分岐鎖のC〜Cアルキル(例えばイソプロピル)、非置換又は置換した(先に規定したように)、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル又は保護アミノ(例えばアセチルアミノ)である]でもある。水素化のための基質の、更なる具体的なクラスは、例えば、プロキラルなアリルアルコール及びα−若しくはβ−エナミドである。
【0069】
本発明の方法は、低温又は高温で、例えば−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは10〜80℃の範囲の温度で実施することができる。光学的収率は、一般的に、より高温でよりも、より低温での方がよい。
【0070】
本発明の方法は、大気圧又は大気圧超の圧力において実施することができる。圧力は、例えば10〜2×10Pa(パスカル)、好ましくは10〜2×10Pa、そして特に好ましくは大気圧〜10Paの範囲であることができる。
【0071】
触媒は、水素化しようとする化合物を基準にして、好ましくは0.00001〜10モル%、特に好ましくは0.0001〜10モル%、そして特に0.001〜5モル%の量で使用される。水素化しようとする化合物の均一系触媒に対するモル比は、例えば、10〜10000000、そしてより好ましくは20〜100000であることができる。
【0072】
触媒の製造並びに水素化及び付加反応は、不活性溶媒の存在下、又は非存在下で行うことができ、一種の溶媒又は溶媒の混合物を使用することが可能である。適切な溶媒は、例えば、脂肪族、環状脂肪族及び芳香族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)、脂肪族ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン及びテトラクロロエタン)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテル)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸エステル及びラクトン(酢酸メチル又はエチル、バレロラクトン)、N−置換ラクタム(N−メチルピロリドン)、カルボキサミド(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド)、非環状尿素(ジメチルイミダゾリン)及びスルホキシド及びスルホン(ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン)及びアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、ニトロメタン並びに水である。
【0073】
反応は、共触媒、例えばハロゲン化第4級アンモニウム(ヨウ化テトラブチルアンモニウム)の存在下、及び/又はプロトン酸、例えば鉱酸(米国特許A−5,371,256号明細書、米国特許A−5,446,844号明細書及び米国特許A−5,583,241号明細書並びに欧州特許A−0691949号公報を参照)の存在下で行うことができる。共触媒は特に水素化に有効である。
【0074】
触媒として使用される金属錯体は、別途製造し、単離した化合物として添加することができ、又は反応の前にインサイチュで形成し、次に水素化しようとする基質と混合することができる。単離された金属錯体を使用する反応において配位子を追加的に添加すること、又はインサイチュでの製造で過剰の配位子を使用することが有利である。過剰量は、製造に使用される金属化合物を基準にして、例えば、1〜30モル%、好ましくは1〜10モル%であることができる。触媒のインサイチュ製造において、ジホスフィン配位子の塩、例えば、ハロゲン化物又はテトラフルオロホウ酸塩を使用することも可能である。
【0075】
本発明の方法は、一般的に、最初に反応容器に触媒を入れ、次いで基質を加えるか又はその逆とし、適切ならば反応助剤を加え、そして次に水素を加え、その後反応を開始することで実施される。水素は、好ましくは圧力下で導入される。本方法は、様々なタイプの反応装置で連続式で、又は回分式で行うことができる。
【0076】
本発明によって製造することができるキラル有機化合物は、特に、医薬及び農薬の製造の分野における、そのような物質の製造のための活性物質又は中間物質である。
【0077】
次の実施例は、本発明を例示して説明する。
【0078】
A)ジホスフィンの調製
【0079】
実施例A1:(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]フェロセンの調製
(R,R)−1,1’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)フェロセンは、次の文献に記載されているようにして製造した。a)J. J. Almena Perea, A. Boerner, P. Knochel, Tetrahedron Lett. 1998, 39 (44), 8073-8076; b)J. J. Almena Perea, M. Lotz, P. Knochel, Tetrahedron: Asymmetry 1999, 10 (2), 375-384; c)L. Schwink, P. Knochel, Tetrahedron Lett. 1996, 37 (1), 25-28.; d)L. Schwink, P. Knochel, Chem. Eur. J., 1998, 4 (5), 950-968.)。
【0080】
t−ブチルリチウム(4.42ml、6.63mmol、3.0当量、ペンタン中1.5M)を、乾燥t−ブチルメチルエーテル(TBME)(20ml)中の(R,R)−1,1’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)フェロセン(1.00g、2.21mmol)の溶液に、0℃で、アルゴン下に、5分間にわたって滴下した。得られた溶液を0℃で1時間撹拌した。次いで、クロロビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)−ホスフィン(2.61g、7.74mmol、3.5当量)を5分間にわたって加え、反応混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を飽和NaHCO溶液(100ml)に注ぎ入れ、有機相を分離し、水相をTBME(3×100ml)で抽出した。合わせた有機相を飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、そして溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。粗生成物をCHClに溶解し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル250g、n−ヘプタン/TBME 2:1);R(n−ヘプタン/TBME 2:1):0.11)で精製した。生じた黄色の固体(1.10g)をメタノール(5ml)に懸濁させ、15分間還流した。室温に冷却後、懸濁液をろ過し、このようにして得られた固体を乾燥させた。標題の化合物(0.73g、0.69mmol、理論量の31%)を黄色の固体の形態で得た。31P−NMR(C):−22.7ppm(s);旋光度[α]D20:−61.5°(C=1.0、CHCl)。
【0081】
実施例A2:(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェロセンの調製
(R,R)−1,1’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)フェロセン20g(44.2mmol)を、TBME160mlと一緒に、0℃で、アルゴン下に、反応容器に入れた。次に、t−ブチルリチウム88.4ml(ペンタン中1.5M、132.6mmol)を0〜3℃で40分間にわたって滴下した。反応溶液を更に2時間0℃で撹拌した。次いで、TBME100mlに懸濁させたビス(3,5−ジメチルフェニル)クロロホスフィン42.82g(154.7mmol)を3〜7℃で滴下した。反応溶液を初め、0℃で2時間、次いで室温で一晩撹拌した。
次に、溶液を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液250mlで、0℃で加水分解し、混合物をTBMEで抽出した。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、次いで蒸発乾固させた。
これにより粗生成物62gが生じた。ヘキサン/酢酸エチル19:1(その後、ヘキサン/酢酸エチル9:1に変更)を使用するシリカゲル60での2回のクロマトグラフィーにより、標題の化合物12.9g(44.2mmol;31%)を得た。ジエチルエーテル/ペンタンからの再結晶により、分析的に純粋な(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェロセン6.56g(7.03mmol、15.9%)を得た。
【0082】
B)使用例
【0083】
実施例B1:メチルN−アセチルフェニルアラニンの調製
[Rh(ノルボルナジエン)]BF4.7mg(0.0126mmol)及び実施例A1からの化合物13.9mg(0.0132mmol)を、排気とフラッシングの繰り返しにより、アルゴン下に、マグネティックスターラーを備えたフラスコに入れた。脱気メタノール5mlの添加後、溶液を15分間撹拌した。次いで、cis−メチルアセトアミドシンナメート2.77g(0.01265mmol)及び脱気メタノール5mlをアルゴン雰囲気が支配的である10mlシュレンクフラスコに導入し、15分間撹拌した。基質/触媒の比率は1000であった。触媒溶液及び基質溶液を、アルゴンで満たされた100mlガラス反応器の中に、スチール製毛管を用いて連続して注入した。最後に、1.05barの水素を4回のフラッシングサイクル(アルゴン/水素)で導入した。ガラス反応器を25℃に加熱し、スターラーのスイッチを入れることにより水素化を開始した。反応の過程は、水素消費量(水素溜め容器の圧力降下)により、追跡することができた。2時間の反応時間後、転化率及び生成物のエナンチオマー純度を測定した(GC:カラム Chirasil-L-Val 50mを用いて)。転化率は100%であり、そしてエナンチオ選択率(ee)は98.7%(R)であった。
【0084】
比較例(実施例B1に対する)
実施例B1の手順を繰り返したが、しかし配位子(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(10.8mg、0.0132mmol)を使用した。反応はわずか4時間後には完結した。転化率は100%であり、メチルN−アセチルフェニルアラニンのエナンチオマー純度(ee)は97.6%(R)であった。
【0085】
実施例B2:メチルN−アセチルフェニルアラニンの調製
これは実施例B1と同様の方法で行った。cis−メチルアセトアミドシンナメート6.9g(31.48mmol)、[Rh(ノルボルナジエン)]BF1.2mg(0.0032mmol)、実施例A1からの化合物3.7mg(0.0035mmol)、及び合計40mlのメタノールを使用した。基質/触媒の比は10000であった。反応温度は35℃であり、そして水素圧力は1.05barであった。1.3時間後、反応を停止した。転化率は100%であり、メチルN−アセチルフェニルアラニンのエナンチオマー純度(ee)は98.6%(R)であった。
【0086】
実施例B3:メチルN−アセチルフェニルアラニンの調製
これは実施例B1と同様の方法で行った。cis−メチルアセトアミドシンナメート13.8g(63.01mmol)、[Rh(ノルボルナジエン)]BF1.2mg(0.0032mmol)、実施例A1からの化合物3.7mg(0.0035mmol)、及び合計80mlのメタノールを使用した。基質/触媒の比は19640であった。反応温度は25℃であり、水素圧力は1.05barであった。7時間後、反応を停止した。転化率は100%であり、メチルN−アセチルフェニルアラニンのエナンチオマー純度(ee)は98.6%(R)であった。
【0087】
実施例B4:2−メチル酪酸の調製
[RuI(クメン)]6.2mg(0.0063mmol)及び実施例A1からの(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ]フェロセン14.0mg(0.0133mmol)を排気とフラッシングの繰り返しにより、アルゴン下に、マグネティックスターラーを備えたフラスコに入れた。脱気メタノール5mlの添加後、溶液を15分間撹拌した。チグリン酸0.253g(2.53mol)、及び脱気メタノール5mlを、アルゴン雰囲気が支配的である10mlシュレンクフラスコに導入し、15分間撹拌した。基質/触媒の比率は200であった。触媒溶液及び基質溶液を、アルゴンで満たされた50mlオートクレーブの中に、スチール製毛管を用いて連続して注入した。最後に、1.05barの水素を4回のフラッシングサイクル(アルゴン/水素)で導入した。オートクレーブを25℃に加熱し、スターラーの電源を入れることにより水素化を開始した。反応の過程は、水素消費量(水素溜め容器の圧力降下)により追跡することができた。18時間の反応時間後、転化率及び生成物のエナンチオマー純度を測定した(GC:カラム Betadex 110、30mを用いて)。転化率は100%であり、そしてエナンチオ選択率(ee)は97.2%(R)であった。
【0088】
実施例B5:メチルN−アセチルフェニルアラニンの調製
実施例B1の手順をメチルアセトアミドシンナメート555mg(2.53mmol)を使用し繰り返した。基質/触媒の比率は100であった。実施例A2からの(αR,αR)−2,2’−ビス(α−N,N−ジメチルアミノフェニルメチル)−(S,S)−1,1’−ビス[ジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノ]フェロセンを配位子として使用した。1時間後の転化率100%;ee=98.7%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に純粋なエナンチオマーの形態である、式I:
【化1】


[式中、
は、C〜Cアルキル、C〜C10アリール又はC〜C11アラルキルであり、
は、開鎖又は環状の第2級アミノ基であり、そして
Rは、式:
【化2】


(式中、
は、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシであり、そして
は、H、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシである)で示される基である]で示される化合物。
【請求項2】
式Iの化合物中、Rがフェニルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
開鎖の第2級アミノ基Rが、式:RN−に相当し、式中、R及びRは、それぞれ、互いに独立して、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜C10アリール又はC〜C11アラルキルであり、ここで、シクロアルキル基及びアリール基は、非置換であるか、又はC〜Cアルキル若しくはC〜Cアルコキシにより置換されており、あるいはR及びRは、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン又は3−オキサペンチレンを形成している、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
及びRが、それぞれメチルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
基Rの両方が、メチル、t−ブチル又はメトキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
が、H又はメトキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
式Iの化合物中、Rが、フェニルであり、Rが、ジ−C〜Cアルキルアミノ、特にジメチルアミノであり、Rが、メチル、t−ブチル又はメトキシであり、そしてRが、H、メチル又はメトキシである、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
配位子としての請求項1記載の式Iの化合物とのTM8金属の群から選択される金属の錯体。
【請求項9】
TM8金属が、ロジウム、イリジウム又はルテニウムである、請求項8記載の金属錯体。
【請求項10】
式IV及び式V:
【化3】


(式中、Aは、請求項1記載の式Iの化合物であり、
基Lは、同一又は異なるアニオン性若しくは非イオン性の単座配位子であり、あるいは基Lは、同一又は異なるアニオン性若しくは非イオン性の二座配位子であり、
Lが単座配位子である場合は、nは2、3又は4であり、あるいはLが二座配位子である場合は、nは1又は2であり、
zは1、2又は3であり、
Meは、ロジウム及びイリジウムからなる群より選択される金属であり、該金属は、酸化状態0、1、2、3又は4を有し、
は、オキソ酸又は複合酸のアニオンであり、そして
アニオン性配位子は、金属の酸化状態1、2、3又は4の電荷と釣り合っている)
に相当する、請求項8記載の金属錯体。
【請求項11】
式VIII:
【化4】


(式中、
Zは、Cl、Br又はIであり、Aは、請求項1記載の式Iの化合物であり、基Lは、同一又は異なる配位子であり、Eはオキソ酸、鉱酸又は複合酸のアニオンであり、Sは、配位子として配位することが可能な溶媒であり、aは1〜3であり、bは0〜4であり、cは0〜6であり、dは1〜3であり、eは0〜4であり、fは1〜3であり、gは1〜4であり、hは0〜6であり、kは1〜4であり、そして錯体の正味電荷は0である)
で示されるルテニウム錯体である、請求項8記載の金属錯体。
【請求項12】
均一系触媒の存在下での水素による、少なくとも一個の炭素二重結合を含有するプロキラルな有機化合物の不斉水素化によって、キラル有機化合物を製造する方法であって、水素化が、配位子としての請求項1記載の式Iの化合物とのTM8金属の群より選択される金属の錯体の少なくとも1種の触媒量での存在下に実施される、方法。
【請求項13】
プロキラルなエチレン性不飽和有機化合物の水素による不斉水素化のための均一系触媒としての、請求項1に記載された式Iの化合物の配位子とのTM8金属の群より選択される金属の錯体の使用。

【公表番号】特表2006−525978(P2006−525978A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505593(P2006−505593)
【出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050731
【国際公開番号】WO2004/099226
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】