説明

均質なプラスチック付着性アプタマー磁性蛍光ビーズ(Plastic−adherentaptamer−magneticbead−fluorophore)の製造方法及びその他のサンドイッチアッセイ

【解決手段】
ガラス、ポリスチレン及び他のプラスチックへの付着を可能にするDNA−アプタマー磁性ビーズ(MB)複合体、アプタマー量子ドット(QD)、アプタマー蛍光性ナノ粒子又は他のアプタマー蛍光分子、アプタマー化学発光レポーター、アプタマー放射性同位体又はその他のアプタマー−レポーターサンドイッチアッセイのアセンブリを用いる方法が提供される。ガラス若しくはプラスチックへの付着により、アッセイ効率を高めるための外部磁場が除去された後であっても、表面に分離・凝集された蛍光分子からの蛍光を、バックグランド(バルク溶液)の蛍光からワンステップで(洗浄工程無しで)検出することができる。このアッセイフォーマットは、感度に影響を与えることなく、洗浄工程を経ずに多様な被分析物を迅速且つワンステップ(均質)でアッセイすることを可能にする。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第61/066,506号及び米国仮出願第61/132,147号に基づく優先権を請求する。これら各出願の開示は本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、アプタマーおよび核酸に基づく診断方法に関する。より詳細には、アプタマー量子ドット(aptamer−quantum dot、QD)又は他のアプタマー蛍光分子複合体アッセイと組み合わされる自己集合性の(自己凝集性の)DNAアプタマー磁性ビーズ(DNA aptamer−magnetic bead、MB)複合体の製造及び使用に関し、このアプタマー磁性ビーズはガラスやポリスチレン(又はその誘導体)のような所定のプラスチックに自然に付着し、外部磁場が取り除かれた後でも洗浄工程を必要としないワンステップの(均質な)テストを可能にする。アプタマーのMB又はQD及びその他の蛍光標識への接合は、2官能性の結合剤若しくはアルデヒド、カルボジイミド、カルボキシル基、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)エステル、N−オキシコハク酸イミド(NOS)エステル、チオール等の官能基を介した単純な化学結合反応か、又はビオチン−アビジン、ヒスチジン−ニッケル、若しくは他のハイアフィニティリンケージシステム(high affinity linkage system)によって達成されうる。このワンステップで洗浄不要のアッセイフォーマットは、食肉、家禽、漿液、乳製品、果物、野菜その他の食品の中や表面における食品由来の病原菌の高感度検出について多くの応用が可能である。このアッセイはまた、土壌や泥水試料等の環境分析や、血液全体、尿、唾液その他の体液を洗浄することなく、希釈をして若しくは希釈をせずに直接行われる臨床及び獣医学上の診断に応用することもできる。典型的な洗浄工程は、バックグランド蛍光に寄与する不要な物質を除去する精製を含む。
【背景技術】
【0003】
全ての診断アッセイにおいて最も望ましいストラテジーは、迅速なワンステップの「結合及び検出」又は「均質な」アッセイであり、これらは洗浄工程を必要とせず、高い感度を犠牲にすることもない。ワンステップアッセイのストラテジーとして成功した例には、蛍光偏向(FP)や蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に基づくアッセイがある。これらの方法はよく知られているが、試験結果の迅速な取得のために感度が犠牲になりがちである。したがって、FPやFRETに基づくアッセイは、典型的には血液や尿、その他体液中にかなりの高濃度(μMからmMの範囲)で存在する所定の被分析物の臨床診断方法に分類される。より低濃度でしか存在しない被分析物に対しては、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)や放射免疫測定(radioimmunoassays;RIA)等の多段階アッセイ及びその他免疫磁性−電気化学発光(immunomagnetic−electrochemiluminescense;IM−ECL)アッセイ等のサンドイッチアッセイが、nMやそれ以下の濃度の種々の標的となる被分析物の検出に必要である。典型的には、これらのサンドイッチアッセイにおいては1若しくはそれ以上の洗浄工程を必要とし、これがアッセイの実施速度を遅くしている。ここで、洗浄工程はバックグランド蛍光信号が高くなるのを防ぐために、不要な物質(検出された標的となる被分析物以外を)を取り除くために必要な工程であると当業者に知られている。多くのアッセイにおいてそのスピードや正確性を高めることができるため、洗浄工程の必要性をなくすことが好ましいことが本発明において見いだされた。
【0004】
DNAはガラス表面、特に摩擦により帯電しているガラス表面に付着することがよく知られている。この原理は細胞溶解物からのゲノムDNAの静電凝集に用いられ、これは帯電したガラス棒を用いたDNAのスプール処理として知られる。同様に、Allemandら、Bensimonら、BuckおよびAndrews、Dudleyら、Kleinら、Labitら、Michaletら、Moscosoら、及びTorreらは、DNA、バクテリア、バイオフィルム及びその他の物質が、静電的又は疎水的その他弱い力によりポリスチレンに付着することを報告している。しかしながら、Allemandら、Bensimonら、およびKleinらは、DNAは中間位置よりも3’又は5’末端でポリスチレンや他のプラスチックと結合することを強調しており、そのような結合は瞬間的に起こるものではなく(DNAがプラスチックに結合するためには1分かそれ以上の滞留時間が必要であり)、その結合時の最適pHは酸性である(およそpH5.5であり、大部分の生物学的アッセイにおけるpHの範囲より低い)。Bensimonら(1994)は、5’又は3’のリン酸末端(そのリン酸構造における)とスチレン環のπ二重結合又はポリスチレン繊維の重合化されていない遊離アルケン末端とが求電子付加をすることにより、DNAがポリスチレンと共有結合しうることも述べている。このようなDNAアプタマーのポリスチレンへの共有結合結合は、本願やBrunoら(2008)のカンピロバクターアッセイにおいて観測され報告されている、アッセイ材料の非常に安定で長期間の付着を説明する。
【0005】
いくつかの種のバクテリアはプラスチックやガラスに結合するが、全ての種がそのような付着性のバイオフィルムを形成できるわけではない。ここに記載されているアッセイにおいては、アッセイ成分の付随物(DNAアプタマー、MB及びQD)は、標的バクテリアが存在してもしなくても生じる。反対に、免疫磁気(抗体−MB)サンドイッチアッセイにおいては、中性又は酸性のpHではポリスチレンによく付着しない。これはおそらく、タンパク質抗体が中性又は酸性のpHではプラスチックやガラス材質によく付着しないためであると思われる。抗体のようなタンパク質は、普及しているELISA試験フォーマットにおいて、アルカリpH下、ポリスチレンマイクロタイタープレートに付着することがよく知られている。しかしながら、ELISAアッセイにおいては、抗体やタンパク質が付着するpHの条件は一般的には8.0〜9.5であり、ここで述べているDNA−付着アッセイのように酸性の条件で無いことは明らかである。したがって、DNAアプタマーは、ポリスチレンやガラス及びそれらの誘導体への付着を可能にし、これによりワンステップの洗浄不要アッセイを可能にする鍵となる要素であると考えられる。いくつかの種のバクテリアはキュベット内面への全体的な付着に寄与しうるが、DNAアプタマーは、磁化領域中で前述のアッセイにおける付着を可能にするのに十分であると思われる。これは、アッセイ成分(アプタマーMB複合体)は補足されたバクテリア細胞が無くてもプラスチックやガラスに付着するためである。
【0006】
【非特許文献1】Allemand J.F., et al. pH-dependent specific binding and combing of DNA. Biophys. J. 73:2064-2070, 1997.
【非特許文献2】Bensimon A., et al. Alignment and sensitive detection of DNA by a moving interface. Science. 265:2096-2098, 1994.
【非特許文献3】Bensimon D., et al. Stretching DNA with a receding meniscus: experiments and models. Phys. Rev. Lett. 74:4754-4757, 1995.
【非特許文献4】Bruno J.G., Phillips T., Carrillo M.P., Crowell R. Plastic-adherent DNA aptamer-magnetic bead and quantum dot sandwich assay for Campylobacter detection. J. Fluorescence. In Press, 2008.
【非特許文献5】Bruno J.G., Carrillo M.P., Phillips T., Crowell R. Initial development of competitive FRET-aptamer assays for monitoring bone metabolism. J. Clin. Ligand Assay. In Press, 2008.
【非特許文献6】Bruno J.G., Carrillo M.P., Crowell R. Preliminary development of DNA aptamer-Fc conjugate opsonins. J. Biomedical Materials Research-Part A, In Press, 2008.
【非特許文献7】Bruno J.G., Carrillo M.P., Phillips T. In vitro antibacterial effects of anti-lipopolysaccharide DNA aptamer-Clqrs complexes. Folia Microbiologica. 53:295-302, 2008.
【非特許文献8】Bruno J.G., Carrillo M.P., Phillips T., King B. Development of DNA aptamers for cytochemical detection of acetylcholine. In Vitro Cell. Develop. Biol. - Animal. 44:63-72, 2008.
【非特許文献9】Bruno J.G., Carrillo M.P., Phillips T. Development of DNA aptamers to a Foot-and-Mouth Disease peptide for competitive FRET-based detection. J. Biomolecular Techniques. 19:109-115, 2008.
【非特許文献10】Bruno J.G., Carrillo M.P., Phillips T. Effects of immobilization chemistry on enzyme-linked aptamer assays for Leishmania surface antigens. J. Clinical Ligand Assay. 30:37-43, 2007.
【非特許文献11】Bruno J.G., Francis K., Ikanovic, M., et al. Reovirus detection using immunomagnetic-fluorescent nanoparticle sandwich assays. J. Bionanoscience. 1:84-89, 2007.
【非特許文献12】Buck J.W. and Andrews J.H. Localized, positive charge mediates adhesion ofRhodosporidium torulides to barley leaves and polystyrene. Appl. Environ. Microbiol. 65:2179-2183, 1999.
【非特許文献13】Dudley E.G., et al. An Incll plasmid contributes to the adherence of the atypical enteroaggregative Escherichia coli strain C 1096 to cultured cells and abiotic surfaces. Infect. Immun. 74:2102-2114, 2006.
【非特許文献14】Dwarakanath S., Satyanarayana S., Bruno J.G., et al. Ultra sensitive fluorescent nanoparticle-based binding assays for foodborne and waterborne pathogens of clinical interest. J. Clinical Ligand Assay. 29:136-142, 2006.
【非特許文献15】Ikanovic M., Rudzinski W.E., Bruno J.G., Dwarakanath S., et al. Fluorescence assay based on aptamer-quantum dot binding to Bacillus thuringiensis spores. J. Fluorescence. 17:193-199, 2007.
【非特許文献16】Joshi S. et al. Selection, characterization, and application of DNA aptamers for the capture and detection of Salmonella enterica serovars. Molec. Cell Probes. In Press, 2008.
【非特許文献17】Klein D.C.G., et al. Ordered stretching of single molecules of deoxyribose nucleic acid between microfabricated polystyrene lines. Appl. Phys. Lett. 78:2396-2398, 2001.
【非特許文献18】Labit H., et al. A simple and optimized method of producing silanized surfaces for FISH and replication mapping on combed DNA fibers. BioTechniques. 45:649-658, 2008.
【非特許文献19】Michalet X., et al. Dynamic molecular combing: stretching the whole human genome for high-resolution studies. Science. 277:1518-1523, 1997.
【非特許文献20】Moscoso M. et al. Biofilm formation by Streptococcus pneumoniae: Role of choline extracellular DNA, and capsular polysaccharide in microbial accretion. J. Bacteriol. 188:7785-7795, 2006.
【非特許文献21】Quast B. A compact, handheld laboratory fluorometer. American Biotechnol Lab 18:68, 2001.
【非特許文献22】Torres A.G., et al. Differential binding of Escherichia coli O157:H7 to alfalfa, human epithelial cells, and plastic is mediated by a variety of surface structures. Appl. Environ.Microbiol. 71:8008-8015, 2005.
【発明の概要】
【0007】
本願では、新しいタイプのアプタマー−MB−アプタマー−QDサンドイッチアッセイと、そこから派生する蛍光成分(fluorophore component)の異なる方法が開示され、これは強い外部磁場によってガラスやポリスチレンその他のプラスチック又はキュベットの内壁のようなコーティングされた表面にMBを凝集させることにより、洗浄工程をなくしたワンステップ法を達成することができるものである。MBと、DNAアプタマーやMB、蛍光分子及び補捉された被分析物を含む全てのアッセイ成分をプラスチック上の小さな領域に凝集することで、被分析物を付着層の薄い平面領域に補足することになり、その結果アッセイにおける蛍光強度を高めることになる。したがって、食品や血液のようにほぼ不透明なものの中であっても、付着した物質に光が照射されると、付着領域にアッセイ材料や捕捉された被分析物が分離・集中されているために、バルク溶液からのバックグランド自己蛍光の下でも超高感度に蛍光を検出することができる。捕捉されていないアプタマーQDやアプタマー蛍光分子複合体からのバルク溶液中での蛍光は、バックグランド蛍光に寄与するが、これらはアッセイの付着領域に集中されていないためにトータルの蛍光信号に対する影響は最小化されている。いかなるアプタマーQD及びアプタマー蛍光分子複合体も被分析物とは結合せず、また、アプタマーMB複合体はプラスチック表面へ引き寄せられず、表面に有意に付着するものでもない。したがって、検出信号に重大な影響を与えるものではないが、バルク溶液による弱いバックグランド蛍光のノイズとして影響を与えうる。アプタマーの高い親和性、MBの特定の領域に凝集する能力、及び赤色発光QDの長いストークスシフト(つまり、高エネルギーの紫外線励起による波長600nm以上の赤色領域における発光)の組み合わせが、本願発明におけるワンステップで洗浄不要のアッセイフォーマットにおける超高感度検出に寄与している。しかしながら、アッセイ材料及び捕捉された被分析物のプラスチック若しくはガラス表面上の小さな領域への付着は、外部磁場が取り除かれた後であっても、ワンステップで洗浄不要の検出を可能にする重要な要素である。
【0008】
本発明は、標的となる被分析物をアプタマーQD又は他のアプタマー蛍光分子複合体によって捕捉するための、DNA及びRNAアプタマーMB複合体のアセンブリを提供する。標的となる被分析物は、病原性バクテリア、ウイルス、寄生虫、白血球、癌細胞、タンパク質、その他の高分子、毒素、汚染物質、薬剤、火薬、タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、ウイルスポリメラーゼ等の検出することが好ましい分子、バクテリア毒素やボツリヌス菌、コレラ、破傷風、ブドウ球菌エンテロトキシン、志賀毒素又はベロ毒素のような生物毒素、ブレベトキシン、シガトキシン、シアノトキシン又はサキシトキシンのような藻類毒素、ヘビやクモの毒素、骨マーカー(例えばCTx、NTx、OCF、カテプシンK又はその前駆体であるプロカテプシンK、デオキシピリジノリン、ピリジノリン、リジルピリジノリン又はヒドロキシリジルピリジノリン等のコラーゲン分解ペプチド)サイトカインやインターロイキン等の臨床的に関連するタンパク質又はタンパク質(ペプチド)の一部、心筋梗塞(トロポニン、ミオグロビン等)や腎疾患、抗体、自己免疫疾患、関節炎又はリポ多糖類(LPS、エンドトキシン)のような他の臨床的に関連する高分子等のマーカー、及びその他少なくとも2つの異なるエピトープを有する低分子(ここで「低分子」とは、1000ダルトン以下のものを指すものとする)であって、殺虫剤、天然又は合成アミノ酸及びその誘導体、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、ヒスタミン、ホモシステイン、DOPA、メラトニン、ニトロチロシン、短鎖タンパク質分解物、カダベリン、プトレッシン、ポリアミン、スペルミン、スペルミジン、デオキシピリジノリン、ピリジノリン、リジルピリジノリン若しくはヒドロキシリジルピリジノリン、DNA若しくはRNAの窒素塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アイソ型環状ヌクレオチド、cAMP、cGMP、細胞内代謝物、尿素、尿酸、薬剤、治療薬剤、ビタミン、違法薬物、麻薬、幻覚剤、ガンマ−ヒドロキシブチレート(GHB)、細胞メディエーター、サイトカイン、ケモカイン、免疫変調成分、神経変調成分、アセチルコリンや炎症モジュレータ、プロスタグランジンやプロスタグランジン代謝物、芳香族ニトロ化合物及びニトラミン火薬、火薬分解生成物(例えばDNT)若しくは副生成物等の神経伝達物質、AHLやステロイド、ホルモンおよびそれらの誘導体等の菌体感知分子、である。
【0009】
蛍光分子は、分子と結合する蛍光を発する成分又は官能基である。蛍光分子は染料、発光性粒子、発光性リポソーム、量子ドット(QD)、蛍光性又はリン光性ナノ粒子(NP)、蛍光性ラテックス粒子又はマイクロ粒子、フルオレセインやカルボキシフルオレセイン及び他のフルオレセイン誘導体、ローダミン及びその誘導体等の蛍光染料分子、分子鎖内若しくは競合的FRETアプタマーのような蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)複合体、又はアプタマーと共有結合できる他のいかなる発光物質であってもよい。本願で用いられている「他のアプタマー蛍光分子複合体」は、前述したものの他に、アプタマー蛍光分子染料複合体やアプタマー蛍光分子マイクロビーズ複合体、又は蛍光染料を含むアプタマーリポソーム複合体等の蛍光分子が結合したアプタマーを含む。本発明では、蛍光分子は、迅速で洗浄不要の工程において標的となる被分析物を検出したことを「レポートする」ために作用する。標的の唯一の要件は、同一又は異なる組成物の2つのアクセス可能なエピトープと、捕捉及びレポーターアプタマー成分によるサンドイッチアッセイを可能にする構造を有することである。
【0010】
本発明は、ワンステップアッセイフォーマットを利用するが、これはバルク溶液中で標的となる被分析物を検出し定量するサンドイッチアッセイと同様に、蛍光強度、時間分解蛍光、化学発光、電気的検出、電気化学的検出、電気化学的発光、リン光又は放射性同位体検出、を利用する。アッセイにおけるワンステップの機能は、アッセイ成分が被分析物を捕捉して、一般的にはポリスチレンやガラスであるアッセイ基板や、蛍光を伝播するのに十分透明又は半透明である他のキュベットの内側表面に、高磁場中短時間(5〜10分)で固着又は付着するという事実に起因する。
【0011】
より具体的には、アッセイにおけるワンステップの機能は、外部磁場の適用後に、アッセイ材料(アプタマーMB及びアプタマーQD又は他のアプタマーと蛍光分子との複合体)をバルク溶液から磁気的に分離又は分割して、これらをDNAとプラスチック若しくはガラスとの間の引力若しくは共有結合力を介してポリスチレンやガラスキュベットの内壁表面に結合又は吸着させる能力に起因する。その結果、磁石が置かれる表面において、当該磁石若しくは磁場が蛍光検出のために除去された後であっても、信号/ノイズ比が向上する。蛍光を発している被分析物のキュベット内表面への固着は、サンプルのより強い蛍光をバックグランドから、又は標的からの蛍光をバルク溶液から、又は信号をノイズから、区別してワンステップの均一なアッセイを可能にする。アッセイ材料のキュベットへの付着は、高濃度の食品試料(例えば牛乳、鶏肉や牛肉の肉汁、及び卵黄試料)における検出をも可能にする技術を構成する。
【0012】
典型的なワンステップのアプタマー磁性ビーズとアプタマー量子ドットキュベットアッセイ又は試験は、いかなる順序であれ合成され加えられた以下の二つの要素からなる:
1)標的となる被分析物上の一つのエピトープに特異的な5’−アミノ修飾アプタマーDNA100μgと、10mMのBS(ビス(3−スルホスクシンイミジル)スベラート)若しくはEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩)やスルホ−EGS(エチレングリコール ビス(スルホスクシンイミジルスクシネート))、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)−シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、グルタルアルデヒド等他の適切なアミノ反応性の二官能結合基と、8μMのQdot 655 ITK試薬(インビトロジェン コーポレーション)。これらの要素は、容積1mlの1X結合バッファー(1XBB;0.5MのNaCl、10mMのTris−HCl、1mMのMgCl、pH7.5〜7.6)中で30分、室温(RT)で攪拌される。このアプタマーQD成分は、Sephadex G−25やその他適切なサイズ排除クロマトグラフィーのマトリクスにより精製される。
2)標的となる被分析物上の第二のエピトープに対する特異性を有する第二の5’−アミノ修飾DNAアプタマー100μgと、10μlのトシル活性MB(約1×10MB、直径1〜5ミクロン)。このアプタマーMB成分は、37℃で2時間以上培養され、その後強磁石で収集されて1XBBで3回洗浄される。これら二つの主要な成分(アプタマーQDとアプタマーMB複合体)は、トータルの容積が2ml以下となるように1XBBと共にポリスチレンや他のプラスチックキュベットに加えられる。キュベットはその後長期保存のために凍結乾燥して窒素ガスでバックフラッシュされた後、封印される。
【0013】
上記においては、少量の病原性バクテリアを確認する食品安全性試験についての本発明の典型的な実施形態及びアッセイ成分の量を記載している。しかしながら、他の被分析物に対しては広い範囲での検出が求められている。したがって、アプタマー親和性の範囲と蛍光を検出できる範囲を考慮すると、ワンステップのキュベットアッセイは、前記二つの主たるアッセイ成分について以下に示す範囲の比率に基づいて記載されても良い。
【0014】
1)アプタマーQD試薬:0.5〜50nMの5’−アミノDNAアプタマー(又は10〜1000μgの60〜100塩基DNA)と、10〜20mMの二官能結合基(BS等。結合基過剰)および0.8〜80μMのQD。
【0015】
2)アプタマーMB試薬:10〜10のトシル−MB又は他の適切なDNA接合のためのMB誘導体に対して0.5〜50nMの5’−アミノDNA。
【0016】
一般的に、各アッセイ成分で10倍程度の範囲で差がある(つまり、10倍ほど低いか高い)抗体とアプタマーとの親和性が、本発明によって予測される。アッセイ成分の量は種々異なることとしているが、これは本発明では様々な感度のアッセイを想定しているからである。したがって、同じ基本アッセイにおいて特に高い感度を必要とされる状況ではアッセイ成分の量を変えることができ、他の低い感度でよいアプリケーションの場合には他の量とすることができる。
【0017】
使用に先立って、ワンステップキュベットアッセイは、好ましい標的となる被分析物の存在がテストされるバルク溶液で再構成される。その量が約2mlと予想されるバルク溶液は、あらゆる数の標的となる被分析物を含みうる種々のサンプル溶液マトリクスであってもよく、これに制限されるものではないが、以下のものを含む:
天然水、バッファー、希釈された若しくは希釈されていない食品試料(例えば牛乳、ヨーグルト、凝固する前のチーズ、肉汁、フルーツジュース、卵、果物や野菜表面の洗浄水、希釈されたピーナッツバター等)、希釈された血液、血清、尿、唾液又は他の体液サンプル。
【0018】
バルク溶液と共に、アプタマー磁性ビーズ複合体(アプタマーMB)とアプタマー蛍光分子複合体が加えられるか、又はこれらが一緒にそのまま(キュベットのまま)、標的となる被分析物が加えられる前に凍結乾燥されてもよい。アプタマー複合体は標的となる被分析物の第一の結合サイトで該被分析物と結合できるように、また、アプタマー蛍光分子複合体が標的となる被分析物の第二の結合サイトで該被分析物と結合できるように、アプタマーMBに基づいて選択される。従って、標的となる被分析物がバルク溶液中に存在する場合には、アプタマーMBとアプタマー蛍光分子複合体の両方が該標的となる被分析物に結合し、被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体を形成する。また、アプタマーMB同士が結合しないこと、塩基対を形成しないこと、又はバルク溶液中のアプタマー蛍光分子と混成しないことも必要である。もしそれらが何らかの形で互いに付着すると、標的となる被分析物と競合してアッセイは偽陽性の結果を生じるであろう。なぜなら、MBはアプタマー−MB−蛍光分子(標的となる被分析物なし)をアッセイされる半透明のキュベット表面領域に引き込むからである。
【0019】
前記キュベットは再びキャップを閉じ、15〜20分以上、周期的に振動され混合される。これにより、アプタマーMBは標的となる被分析物と第一の結合サイトで結合し、アプタマー蛍光分子複合体は標的となる被分析物と第二の結合サイトで結合し、被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体を形成する。その後、キュベットは外部磁石と共に、磁性ビーズを引きつけるための外部磁場を適用することにより、被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体がキュベットの半透明の表面領域に付着するよう、適切な高さでラック若しくは他の装置に加えられる。磁場によって引きつけられることにより、磁性ビーズは、蛍光光度計の光路のバンド(長方形又は正方形)若しくは円形パターン中で捕捉されたあらゆる被分析物を収集する被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体の残りを、引きつける。MBは、捕捉されたアッセイ試料と標的となる被分析物と共に5分以上収集され、その後外部磁石が除去される。付着した蛍光を発するMB、図1に示されるようにプラスチックのキュベット内表面に付着しているアッセイ試料及び標的となる被分析物がキュベット内に残る。このアッセイ成分及び捕捉された被分析物のキュベット内表面上の薄い付着フィルムへの分割及び凝縮が、付着した物質の後方からのバルク溶液による弱い蛍光と、アッセイによるより強い蛍光を区別することを可能にしている。したがって、被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体は検出感度を向上させるためにバルク溶液中から効果的に分割される。この分割により、付着したアッセイ試料が蛍光光度計にセットされて適切な励起波長及び発光波長で定量された際に、高い信号/ノイズ比の、ワンステップで均質なアッセイが提供される。
【0020】
上記においてはキュベットを記載しているが、いかなる数の容器及びその形状であっても本発明は効果を奏する。したがって、本発明の方法は、管、バイアル、皿、フローセル、カセット、カートリッジ、マイクロ流体チップ、及びその他類似するタイプのいかなる容器中においても実施することができる。また、容器は、アッセイ材料が付着する平面領域を目視できる「窓」が設置され、核酸アプタマーがその材質に付着できる限り、過剰の材料から、いかなる形状、型としてもよい。したがって、本アッセイフォーマットはまた、平面状のプラスチック又はガラスのカセット若しくはカートリッジにおいても適用可能で、これによりアッセイ成分が外部磁場によってその経路や道に沿って磁気的に引きつけられると考えられる。プラスチック又はガラスの検出窓に達することで、アッセイ成分は外部磁石によりバルク溶液から離れて、窓の表面に付着して凝集することのできる検出窓に留まることができる。それ故、キュベットが蛍光アッセイ可能な半透明の表面領域を有する限り、アッセイ容器におけるいくつかの例や形状が考えられる。例えば、前記被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体が付着するキュベットの半透明な表面領域は、正方形、長方形、円形、楕円形であってもよく、また、キュベットは平面状容器、バイアル、管、シリンダー、カセット又はカートリッジ等の形状であってもよい。
【0021】
キュベットはポリスチレンや透明プラスチック又はガラスから作られることが考えられる。しかし、さらに、DNAのガラスやプラスチックへの付着は、一般的なガラスや単純なポリスチレンに限定されない。むしろ、理論上派生するプラスチックの誘導体や、DNAへの求電子付加に用いられるアルケンや弱い相互作用(ファンデルワールス作用や双極子−双極子作用)によるDNAのコーティングされたガラス又はプラスチックへの付着を促進しうる疎水性コーティングを含むコーティング(例えばシラン等)が施されたものも、考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、ワンステップ付着のサンドイッチアッセイがどのように形成されるか、及び外部磁石がプラスチック又はガラスキュベットの内表面に引きつける様子を示した概略図である。
【0023】
【図2】図2は、カンピロバクター・ジェジュニ(C.jejuni)菌濃度に対する相対的蛍光強度をプロットした折れ線グラフである。
【0024】
【図3】図3は、割っていないバッファー(1XBB)及び図に示された種々の希釈された食品試料中で、連続して10回希釈されたカンピロバクター・ジェジュニ菌に由来する一連の蛍光発光スペクトルを示す。励起は、光電子増倍管チューブを900ボルトにセットし、380nmでおこなった。
【0025】
【図4】図4は、希釈されていない鶏肉の肉汁(調理前に鶏の足から集められた漿液)中における10のC.ジェジュニ菌を検出できる典型的なワンステップアッセイを示す図である。各データは、5回の独立した測定値(N=5)の平均と標準偏差を代表する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図を参照すると、図1はワンステップ付着のサンドイッチアッセイのコンセプトの概略を示している。このコンセプトにおいては、DNA若しくは場合によってはRNAアプタマーが磁性ビーズに結合し、標的となる被分析物(本実施例においてはバクテリア細胞)の捕捉に用いられる。捕捉はバクテリア表面のエピトープへのアプタマーの特異的な結合によりなされる。同様に、他のエピトープは、アプタマー量子ドット複合体若しくは他のアプタマー蛍光分子レポーター試薬によって蛍光検出と同時に結合される。サンドイッチアッセイはDNA若しくはRNAを含むため、帯電したガラス若しくはポリスチレン及びその誘導体のような帯電した若しくは非帯電のプラスチックに静電的及び/又は双極子−双極子作用やファンデルワールス相互作用並びに場合によってはアルケンやスチレン環への共有結合性の求電子付加作用等他の弱い相互作用による付着は避けられない(Bensimonら、1994)。付着は、強力なコバルトやネオジニウムその他の希土類磁石等からの外部磁場を加えることによって促進される。外部磁石を取り除いた後であっても、DNAとポリスチレン若しくはその他のプラスチック又はガラスとの相互作用によって、アッセイ材料は依然としてキュベットの内表面に付着している。この付着が、捕捉され標識を付されたバクテリア又はその他の被分析物と共にアッセイ試料を、他のバルク溶液から分割する。もし溶液が反対側から励起源によって照射され、アッセイ材料が付着したキュベット表面が光検出器に近接して配置されると、迅速かつ高感度な、ワンステップ検出が可能となる。全てのアプタマー−MB−バクテリア−アプタマーQD複合体が一度表面に付着すると、付着した材料は、遊離したアプタマーQD若しくはアプタマー蛍光分子複合体を含むバルク溶液よりも明るい蛍光信号を発する。
【0027】
図2は、割っていないバッファー(IX結合バッファー;IXBB)中で、洗浄工程のないワンステップの付着DNAアプタマー−MB−アプタマー赤色QD(Q−dot 655nm)サンドイッチアッセイを用いて、1ミリリットル中約2個のバクテリア細胞のレベルで検出されたカンピロバクター・ジェジュニ(C.jejuni)菌濃度に対する相対的蛍光強度をプロットした折れ線グラフを示す。ターナーバイオシステムズ社製ハンドヘルド蛍光光度計の緑色(ローダミン)チャネルを用いて行われた、5回の独立した測定の測定値が各データに用いられた。その数値が小さくて見えないが、エラーバーは5回の測定における標準偏差を代表する。ワンステップで洗浄不要のアプタマーMB/アプタマーQD又はアプタマー蛍光分子アッセイの好ましい実施形態は、プラスチックポリスチレンキュベット中で、必要に応じて再水和される貯蔵寿命の長い、凍結乾燥されたサンドイッチアッセイ材料を用いることである。それらの蛍光は、15〜20分捕捉され、5分の磁気的収集時間を経た後、卓上の蛍光光度計又はターナーバイオシステムズ社のPicofluorTMやインビトロジェン社のQ−BitTMのようなポータブル蛍光光度計又はその他の蛍光光度計によって評価される。図2や図4において見られるバクテリア濃度の対数的変化に対する主たる線形光応答はおそらく、PicofluorTM等に見られるように蛍光光度計のフォトダイオード検出器や、図3に示されるような蛍光光度計によるデータ収集に用いられるより高感度で指数的に応答する光電子増倍管チューブ(PMT)に起因するものである。
【0028】
図3は、1ml中にある2500万の熱殺菌されたC.ジェジュニ菌(一番高いピーク)を、1ml中に2.5個そして0個のバクテリア(一番低いピーク)を含むようになるまで連続して10回希釈したものに由来する一連の蛍光発光スペクトルを示し、これはCary Varian蛍光光度計を用い、洗浄工程を要しないワンステップのプラスチック付着アプタマーMB/アプタマー赤色QD(Q−dot 655nm)サンドイッチアッセイを前述のように種々の食品サンプルに適用して測定されたものである。図中の矢印は希釈回数の増加又はバクテリア濃度の減少の方向を示す。本願におけるアッセイは、被分析物とアプタマーの複合体を検出及び定量するために、シンプルに蛍光強度を測定する蛍光強度レポーターメソッドを用いるものとして一般的に記載されている。蛍光強度レポーターメソッドは、シンプルな蛍光強度検出の代わりに、時間分解蛍光、化学発光、電気的検出、電気化学的検出、電気化学的発光、リン光又は放射性同位体検出等を用いてもよい。
【0029】
図4は、鶏肉の肉汁(生鮮鶏肉雑貨店から収集した血液と脂肪球)中における10個のC.ジェジュニ生菌を検出できる典型的なワンステップアッセイを示す図である。ターナーバイオシステムズ社製ハンドヘルドPicofluorTM蛍光光度計の緑色(ローダミン)チャネルを用いて行われた、5回の独立した測定の測定値が各データに用いられた。その数値が小さくほとんど視認できないエラーバーは、5つのデータの標準偏差を示す。
【0030】
洗浄工程は不要で、検出は図3や図4に示されるように、種々の食品、環境又は生体試料マトリクスに対して直接行うことができる。
【0031】
実施例1
様々な食品試料中におけるカンピロバクター・ジェジュニの、洗浄工程不要なワンステップ超高感度検出
本発明は、図2〜4に示されるように、割っていないバッファー及び種々の食品サンプル中で、2程度の生きた若しくは死んだC.ジェジュニ菌細胞(ありふれた食品媒介病原菌である)の検出に用いられた。これらのアッセイにおいては、2つの異なるC.ジェジュニ菌シークエンス(C2及びC3又はSEQ ID No.2及び3とする)の5’が、固相DNA合成の際にアミノ置換され、試験ごとに1000トシル−M280(直径2.8ミクロン)Dynal(Invitrogen,Inc.)MB若しくは0.24ピコリットルのQ−dot 655 ITK試薬(Invitrogen,Inc.)に付着された。C2アプタマー(SEQ ID No.2)はトシル−MB表面への捕捉に用いられ、C3アプタマー(SEQ ID No.3)は、BS(Pierce Chemical社のビス−スベリン酸塩二官能結合基)を介したQ−dot 655ITK試薬への付着後にレポーター試薬として用いられた。これら試薬は精製・混合され、プラスチックキュベット中で凍結乾燥された。その後粉末状のアッセイ試料が窒素で払い落とされ、封印された。再水和では、図2〜4に示されるように、生きている若しくは死んでいる(熱殺菌された)C.ジェジュニ細胞を非常に高感度に検出するために、付着ワンステップサンドイッチアッセイが用いられた。カンピロバクターアッセイにおいては、捕捉及びレポーター機能を有するものとして、シークエンスID番号1〜6から選ばれた他のアプタマーを代わりに用いることもできるが、この場合機能的ではあるが得られる結果が多少感度の面で劣る。
【0032】
実施例2
様々な食品試料中における大腸菌O157 H7及び他の毒性(志賀又はベロ毒素産生性)大腸菌の、洗浄工程不要なワンステップ超高感度検出
本発明は、アプタマーをO157リポ多糖(LPS)類及びH7鞭毛抗原の外部糖類と結合させることで、様々な食品中若しくは食品表面上のエンテロヘモラジック(enterohemorraghic)大腸菌O157 H7の検出に使用できる可能性を持つ。アプタマーシーケンスNo.7〜20は、捕捉(アプタマーMB複合体)又はレポーター(アプタマー蛍光分子複合体)機能を有するものとして選択することができ、食品中若しくは食品表面上の大腸菌O157 H7の検出に利用できる。また、多くの種の大腸菌が共通して有する外膜タンパク質(OMPs)を、サンドイッチアッセイを完結させるための大腸菌株の特異的認識又は定型化されたLPS特異的アプタマーQDレポーター試薬の使用に続くアプタマー−MBによる大腸菌細胞の捕捉(又は識別)に利用することが可能である。アプタマーシーケンスNo.279〜322は、大腸菌OMPの認識と捕捉に利用できる。この他の実施例において、非O−157 H7毒性大腸菌が、その志賀又はベロ毒素(タイプ1及び2若しくはStx−1およびStx−2)の分泌により高感度に識別されうる。O126を含む多くの他の大腸菌の型は、人間が死に至る病気を引き起こし、これら致命的な病原菌に共通するスレッドは、Stxの分泌である。したがって、本発明の非常に有用な実施の例としては、シーケンスID No.323〜352によって識別されるDNAアプタマーシーケンスのいずれかを利用するStx−1及び/又はStx−2の検出が挙げられる。
【0033】
実施例3
様々な食品試料中におけるリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の、洗浄工程不要なワンステップ超高感度検出
本発明は、リステロリシン(listerolysin,LO)表面のタンパク質に結合することで、様々な食品中若しくは食品表面上のリステリア・モノサイトゲネスの検出に使用できる可能性を持つ。アプタマーシーケンスID No.21〜52は、捕捉(アプタマーMB複合体)又はレポーター(アプタマー蛍光分子複合体)機能を有するものとして選択することができ、食品中若しくは食品表面上のLO及びリステリア・モノサイトゲネスの検出に利用できる。
【0034】
実施例4
様々な食品試料中におけるネズミチフス菌の、洗浄工程不要なワンステップ超高感度検出
本発明は、様々な食品中若しくは食品表面上のネズミチフス菌及び他のサルモネラ菌(チフス菌等)の検出に使用できる可能性を持つ。ネズミチフス菌(S.typhimurium)は、チフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)に改名されているが、多くの微生物学者及び非専門家は未だにこれをネズミチフス菌(S.typhimurium)と呼ぶ。アプタマーシーケンスID No.53〜68は、捕捉(アプタマーMB複合体)又はレポーター(アプタマー蛍光分子複合体)機能を有するものとして、食品中若しくは食品表面上のネズミチフス菌LPSを検出するために選択されうる。さらに、アプタマーシーケンスID No.353〜392は、ネズミチフス菌OMPの捕捉若しくは識別のために用いられうる。これらのネズミチフス菌DNAアプタマーシーケンスはユニークなもので、Joshiら(2008年)の近年の報告にもその類似性は認められない。
実施例5
上水道中の糞便汚染の検出
本発明は、捕捉及びレポーター機能としてLPSの通常のコア要素が作用するアプタマーシーケンスNo.69〜122を使用することにより、施設で処理された排水又は飲料水中の全ての種の大腸菌を検出できる可能性を有する。本発明はまた、捕捉及びレポーター機能として一般的なテイコ酸部分が作用するアプタマーDNAシーケンスNo.123〜130を使用することにより、施設で処理された排水又は飲料水中の全ての種の腸球菌(他の一般的な糞便指標細菌)を検出できる可能性を有する。
【0035】
実施例6
皮膚損傷箇所又は内臓液中のリーシュマニア寄生虫の検出
本発明は、捕捉及びレポーター機能としてリーシュマニア種に共通する表面蛋白に作用するID No.131〜134から選ばれるアプタマーDNAーシーケンスを使用して、皮膚損傷箇所又は体液及び他のサンプル中のドノバン・リーシュマニア若しくはL.トロピカ寄生虫(L.tropica parasites)を検出できる可能性を有する。
【0036】
実施例7
血中及び体液中における被嚢性の植物性炭疽菌の検出
本発明は、捕捉及びレポーター機能として表面ポリ−D−グルタミン酸(PDGA)莢膜物質に作用する、ID No.135〜138から選ばれるアプタマーDNAーシーケンスを使用して、血液や体液及び他のサンプル中の被嚢性炭疽菌を検出できる可能性を有する。
【0037】
実施例8
環境及び臨床サンプル中の低分子(<1000ダルトン)の検出
対象物が、サンドイッチアッセイを可能にする捕捉及びレポーターアプタマーとの付着のための2つの異なる近接可能なエピトープを有する場合には、本発明は1000ダルトン以下の低分子を検出できる可能性を有する。そのような低分子の対象物としては、環境水、土壌若しくは泥サンプル及び血液や体液中の有機リン殺虫剤(ダイアジオンやマラチオン等)、及び捕捉及びレポーター機能によりペプチド分子の異なる末端に作用するID No.139〜154から選ばれるアプタマーDNAーシーケンスを使用する他のサンプルであってもよい。加えて、25−ヒドロキシビタミンD3(カルシジオール;シーケンスID No.243〜274)のようなビタミンや神経伝達アセチルコリン(ACh;シーケンスID No.393〜416)も本願の新規アッセイフォーマットの実行対象たり得る。
【0038】
実施例9
口蹄疫(FMD)及びそれに関連するウイルスの検出
本発明は、捕捉及びレポーター機能として、FMDのいくつかのO血清型からの保存16−アミノ酸ペプチドに作用する、ID No.155〜164から選ばれるアプタマーDNAーシーケンスを使用して、血液や体液及び他のサンプル中のFMD及びそれに関連するウイルスを検出できる可能性を有する。
【0039】
実施例10
血液及び体液中の骨吸収又は合成マーカーの検出
本発明は、各種骨マーカーにおける固有のエピトープに作用するID No.165〜242から選ばれるアプタマーDNAーシーケンスを使用して、長期にわたる宇宙飛行期間中の低重力状態や骨粗しょう症、及び老化に起因するカテプシンK、コラーゲンのC末端テロペプチド(CTx)やN末端テロペプチド、ヒドロキシリジン(HL)、オステオカルシン破片(OCF)等の骨粗しょうのマーカーを、血液や尿及びその他体液や他のサンプルの中から検出できる可能性を有する。本発明はまた、捕捉及びレポーター機能として、ID No.243〜274から選ばれる骨形成に関連するビタミンDの種々の異性体を検出し識別できる可能性を有する。
【0040】
実施例11
ボツリヌス毒素A及び関連する生物毒素の検出
本発明は、付着サンドイッチフォーマットにおいてアプタマーDNAシーケンスを使用することにより、人間や動物に影響を与えるボツリヌス毒素及び関連する細菌性有害青粉(HAB、渦鞭毛藻)、破傷風毒素、ジフテリア毒素、志賀及びベロ毒素、ブドウ球菌エンテロトキシン、シアノトキシン、アザスピラシド、ブレベトキシン、シガトキシン(ciguatoxins)、ゴニオトキシン、ドウモイ酸異性体、マイトトキシン、パリトキシン、イェッソトキシン(yessotoxins)、サキシトキシン、リシン、ゲロニン、アブリン、クモ及びヘビ毒素、等の海洋性(甲殻類関連)若しくは植物性毒素を、血液や体液及びその他のサンプル中から検出できる可能性を有する。シーケンスID No.275〜278より選ばれるアプタマーシーケンスは、特にボツリヌス毒素AのL鎖又はホロトキシンの検出に用いられ得る。
【0041】
実施例12
細菌感染における菌体数感知分子の検出
現在、多くの種の細菌が、分泌された低分子を介して化学的コミュニケーションを行うことが知られている。多くのグラム陰性菌は、細胞若しくは菌体の臨界濃度が宿生生物への効果的な感染を可能にするに至ったことを感知する際、細菌間でのコミュニケーションにアシルホモセリンラクトン(AHLs)と呼ばれる低分子のファミリーを一般的に用いている。AHLsは、付着タンパク質及び毒素の発現などの病因及び毒性因子の誘導を制御する。したがって、AHLsの早期の検出は、差し迫ったグラム陰性菌感染を示唆し、感染やより重大な敗血症を防止するための医者による適切な抗生物質の投与を促す。
AHLsは一般的には2つの異なる末端若しくはポテンシャルエピトープを有し、したがって、本願において記載されたワンステップのプラスチック付着DNAアプタマー−MB−アプタマー−QD若しくは他のアプタマー−レポーターサンドイッチアッセイの潜在的な候補である。シーケンスID No.417〜426は、診断のためのグラム陰性菌AHLsのファミリーと反応する潜在的なアプタマーDNAシーケンスの例となる。
【0042】
本願発明について特定の実施例と共に説明してきたが、本発明の実施形態は係るものに限定して解釈されるものではない。本願明細書の記載に接した当業者は、本願発明が、実施例に示されたものに関する多数の変更や、これ以外の実施例も含むことを明確に理解するであろう。したがって、本願の特許請求の範囲は、本願発明の範囲内において上記のような変更された実施形態も含むものと考えられる。そのような変更された実施形態は、これに限定されるものではないが、レポーターメソッドにおいて、蛍光ベースの検出に変えて化学発光、電気的検出、電気化学的検出、電気化学的発光、リン光及び放射性同位体検出等を用いることも含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA又はRNAアプタマー磁性ビーズ複合体を生産し組み合わせることでバルク溶液中の標的となる被分析物を補足及び検出するためのサンドイッチアッセイの方法であって、
バルク溶液と、前記標的となる被分析物と第一の結合サイトで結合可能なアプタマー磁性ビーズ複合体(アプタマーMB)と、前記標的となる被分析物と第二の結合サイトで結合して被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体を形成しうるアプタマー蛍光分子複合体とを、蛍光アッセイを可能とするための半透明の表面領域を有するキュベット中で混合する工程と
前記アプタマーMBを前記第一の結合サイトで標的となる被分析物と結合させ、前記アプタマー蛍光分子複合体を前記第二の結合サイトで標的となる被分析物と結合させることで前記被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体を形成する工程と
前記磁性ビーズを引きつけるために外部磁場を適用することによって、前記被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体を前記キュベットの半透明な表面領域に付着させる工程と
前記キュベットの半透明な表面領域に付着した被分析物−アプタマー蛍光分子複合体をアッセイする工程と
を有する方法。
【請求項2】
洗浄工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体が、検出能を向上させるために前記バルク溶液から効果的に分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キュベットが、ポリスチレン、透明プラスチックもしくはガラスのいずれかから成るものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被分析物−アプタマー−蛍光分子複合体が付着する前記キュベットの半透明な表面領域が正方形、長方形、円形、楕円形であるか、又はキュベットが平面状容器、バイアル、管、シリンダー、カセット又はカートリッジ状の形状である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アプタマーMBとアプタマー蛍光分子が、前記バルク溶液中で互いに結合せず、塩基対を形成せず、若しくは混成されないものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アプタマー−蛍光分子複合体中の蛍光分子が、量子ドット(QD)、蛍光性若しくはリン光性のナノ粒子(NP)、蛍光性のラテックス粒子若しくはマイクロビーズ、フルオレセイン、カルボキシフルオレセイン及びフルオレセイン誘導体又はローダミン若しくはその誘導体等の蛍光性の染料分子のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記蛍光分子が、鎖内又は競合的蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アプタマーのようなFRET複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アッセイの工程が、前記バルク溶液中の標的となる被分析物を検出及び定量するためのサンドイッチアッセイである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的となる被分析物が、バクテリア、寄生虫、白血球若しくはがん細胞等の全細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記標的となる被分析物が、タンパク質、ウイルスキャプシドタンパク質、ウイルスポリメラーゼ、バクテリア毒素やボツリヌス菌、コレラ、破傷風、ブドウ球菌エンテロトキシン、志賀毒素又はベロ毒素のような生物毒素、ブレベトキシン、シガトキシン、シアノトキシン又はサキシトキシンのような藻類毒素、ヘビやクモの毒素、骨マーカー(例えばCTx、NTx、OCF、カテプシンK又はその前駆体であるプロカテプシンK、デオキシピリジノリン、ピリジノリン、リジルピリジノリン又はヒドロキシリジルピリジノリン等のコラーゲン分解ペプチド)サイトカインやインターロイキン等の臨床的に関連するタンパク質又はタンパク質(ペプチド)の一部、心筋梗塞(トロポニン、ミオグロビン等)や腎疾患、抗体、自己免疫疾患、関節炎又はリポ多糖類(LPS、エンドトキシン)のような他の臨床に関する高分子のマーカー、のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的となる被分析物が、少なくとも2つの異なるエピトープを有する低分子(ここで「低分子」とは、1000ダルトン以下のものを指すものとする)であって、殺虫剤、天然又は合成アミノ酸及びその誘導体、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ヒスチジン、ヒスタミン、ホモシステイン、DOPA、メラトニン、ニトロチロシン、短鎖タンパク質分解物、カダベリン、プトレッシン、ポリアミン、スペルミン、スペルミジン、デオキシピリジノリン、ピリジノリン、リジルピリジノリン若しくはヒドロキシリジルピリジノリン、DNA若しくはRNAの窒素塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、アイソ型環状ヌクレオチド、cAMP、cGMP、細胞内代謝物、尿素、尿酸、薬剤、治療薬剤、ビタミン、違法薬物、麻薬、幻覚剤、ガンマ−ヒドロキシブチレート(GHB)、細胞メディエーター、サイトカイン、ケモカイン、免疫変調成分、神経変調成分、アセチルコリンや炎症モジュレータ、プロスタグランジンやプロスタグランジン代謝物、芳香族ニトロ化合物及びニトラミン火薬、火薬分解生成物(例えばDNT)若しくは副生成物等の神経伝達物質、AHLやステロイド、ホルモンおよびそれらの誘導体等の菌体感知分子、のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記標的となる被分析物のアッセイの工程が、蛍光強度、時間分解蛍光、化学発光、電気的検出、電気化学的検出、電気化学的発光、リン光又は放射性同位体検出、のいずれかを利用するものである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−527745(P2011−527745A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547266(P2010−547266)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/IB2009/000290
【国際公開番号】WO2009/104075
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510227528)オーティーシー バイオテクノロジーズ、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】